(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208648
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】汚染水または汚染土壌の処理剤および処理方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/02 20060101AFI20170925BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20170925BHJP
B09C 1/02 20060101ALI20170925BHJP
B09C 1/08 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B01J20/02 AZAB
C02F1/28 B
C02F1/28 J
B09B3/00 304K
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-235722(P2014-235722)
(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2015-127049(P2015-127049A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-243954(P2013-243954)
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年7月23日に富山国際会議場において開催された公益社団法人地盤工学会主催の第48回地盤工学研究発表会で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯島 勝之
(72)【発明者】
【氏名】古田 智之
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−177575(JP,A)
【文献】
特開2004−025166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
C02F 1/28
C02F 1/58− 1/64
C02F 1/70− 1/78
B09B 1/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属類を含有する汚染水または汚染土壌から、前記重金属類を除去するための処理剤であって、鉄粉と、アルカリ金属の硝酸塩を共存したものであることを特徴とする処理剤。
【請求項2】
前記アルカリ金属の硝酸塩が、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の処理剤。
【請求項3】
前記鉄粉はアトマイズ鉄粉である請求項1または2に記載の処理剤。
【請求項4】
前記鉄粉は硫黄を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の処理剤。
【請求項5】
前記鉄粉中の硫黄の含有量は0.6〜5質量%である請求項4に記載の処理剤。
【請求項6】
前記重金属類が、ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロムから選択される重金属類の少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の処理剤。
【請求項7】
重金属類を含有する汚染水と、請求項1〜6のいずれかに記載の処理剤とを接触させることを特徴とする汚染水の処理方法。
【請求項8】
重金属類を含有する汚染土壌と、請求項1〜6のいずれかに記載の処理剤とを接触させることを特徴とする汚染土壌の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロム等の重金属類の汚染物質に汚染された土壌、地下水、河川水、湖沼水、各種工業排水等から汚染物質を効率よく除去する方法と、これに用いる処理剤に関するものである。尚、本発明において「ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロムの重金属類」とは、ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロムの単体金属、化合物(特に酸化物)、塩およびイオンを含む趣旨である。
【背景技術】
【0002】
ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロム等の重金属類は、人体に対して有害であり、健康障害をもたらすことから、これらの汚染物質による環境汚染が問題となっている。上記重金属類は、土壌、地下水、河川水、湖沼水、各種工業排水等に含まれており、環境基準、排水基準が定められている。水中の重金属類がこれらの水質基準を超える場合には、水中からこれらの重金属類を除去する必要がある。
【0003】
これらの汚染物質で汚染された水(以下、「汚染水」と呼ぶことがある)を連続的に浄化処理する方法としては、吸着剤を用いて汚染物質を吸着除去する各種方法(以下、「吸着法」と呼ぶことがある)が提案されている。この吸着法は、吸着剤を充填した吸着塔に汚染物質を含む汚染水を連続的に通水し、汚染水を吸着剤に接触させて吸着除去するものである。
【0004】
上記のような吸着法で用いる吸着剤としては、活性炭、活性アルミナ、ゼオライト、チタン酸、ジルコニア水和物等が知られている。これらの吸着剤を使用する方法では、汚染物質の種類に応じて吸着剤の種類を選択することによって、優れた除去効率を達成できるが、これらの吸着剤は概して高価であるため、これらの吸着剤だけで処理すれば処理コストが高くなるという欠点がある。
【0005】
汚染水の処理方法として、鉄粉によって水中のヒ素を吸着させることは知られており、鉄粉の吸着能力を向上させるために、様々な提案がなされている。例えば特許文献1には、ヒ素の除去剤として、表面が鉄水酸化物で被覆された鉄粉が開示されている。また、特許文献2〜4には、所定量のSを含有する鉄粉を用いることで、Fe→Fe
2++2e
-で示される鉄のアノード反応が、硫黄の添加によって促進される。その結果、重金属類の還元反応または不溶化反応が促進されるというメカニズムで浄化性能を向上させる方法が提案されている。更に、特許文献5には、鉄粉と酸性溶液とを接触させることによって得られた酸処理鉄粉に、水中のヒ素を吸着させて除去する方法も提案されている。
【0006】
これらの技術の開発によって、吸着剤の重金属類に対する除去能力は改善されたのであるが、更に高い吸着効率を発揮する技術の開発が望まれているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−272260号公報
【特許文献2】特開2006−312163号公報
【特許文献3】特開2008−043921号公報
【特許文献4】特開2009−082818号公報
【特許文献5】特開2008−207071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、汚染水や汚染土壌から、重金属類であるヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロムから選択される汚染物質を除去するに際して、高い除去効率を発揮することができる様な処理剤、およびこうした処理剤を用いた有用な処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成し得た本発明の処理剤とは、重金属類を含有する汚染水または汚染土壌から、前記重金属類を除去するための処理剤であって、鉄粉と、アルカリ金属のハロゲン化物および硝酸塩の少なくとも1種を共存したものである点に要旨を有する。
【0010】
本発明で用いる「アルカリ金属のハロゲン化物」としては、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムから選ばれる少なくとも1種が挙げられ、「アルカリ金属の硝酸塩」としては、硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0011】
本発明の処理剤においては、(a)鉄粉はアトマイズ法によって製造されたもの、(b)鉄粉が硫黄を含有するもの、(c)(b)の場合に、鉄粉中の硫黄の含有量が0.6〜5質量%である、等の要件を満足するものが好ましい。
【0012】
本発明で対象とする重金属類としては、ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロムから選択される重金属類の少なくとも1種が挙げられる。
【0013】
上記のような処理剤を用いて、重金属類を含む汚染水と、前記処理剤とを接触させることによって汚染水中の重金属類が効果的に除去できる。また、重金属類を含む汚染土壌と、前記処理剤とを接触させることによって汚染土壌中の重金属類が効果的に除去できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉄粉に、アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩を共存したものを処理剤とすることにより、汚染水や汚染土壌から、ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロムの重金属類を効率よく除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の処理剤は、鉄粉に、アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩を共存したところに基本的な要旨がある。本発明で処理剤の原料として用いる鉄粉は、その種類に特に限定はなく、工業的に入手可能なあらゆる鉄粉を用いることができる。鉄粉の種類としては、例えばアトマイズ鉄粉、鋳鉄粉およびスポンジ鉄粉、並びにこれらの鉄基完全合金粉若しくは部分合金粉等が挙げられる。これらのうち前記鉄基完全合金粉は、プレアロイ合金粉と呼ばれており、前記部分合金粉はプレミックス合金粉と呼ばれている。これらの中でも、大量生産が可能であり、成分や粒径を揃えることができるという観点からして、アトマイズ法によって製造されたアトマイズ鉄粉が好ましい。
【0016】
本発明で用いる鉄粉は、その平均粒径が小さければ小さいほど比表面積が増大し、重金属類の汚染物質の除去性能が増大する。一方、鉄粉の粒径が大きいほど、歩留まりが高くなって取り扱い性も向上するのであるが、重金属類の除去速度が低下することになる。こうしたことから、原料の鉄粉の好ましい平均粒径は、1000μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。尚、本発明において「鉄粉の平均粒径」とは、JIS Z 8801に規定されるふるい(篩)を用いた乾式ふるい分け試験によって得られた粒度分布を累積ふるい上百分率、もしくは累積ふるい下百分率が50質量%となる粒子径をいう。
【0017】
本発明で処理剤の原料として用いる鉄粉は、必要によって硫黄(S)を含むものとすることも有用である。鉄粉に硫黄を含有させることによって、汚染水や汚染土壌から重金属類を除去する性能を更に向上させることができる。即ち、鉄粉に所定量の硫黄を含有させることによって、汚染水からセレン等の重金属類を除去する性能が向上することを見出し、その技術的意義が認められたので、先に出願されている。こうした技術として、特開2006−312163号公報、特開2008−43921号公報、特開2009−82818号公報等を提案されている。硫黄を含有した鉄粉を処理剤の原料として用いることによって、処理剤における重金属類への除去性能が向上することになる。
【0018】
重金属類を除去する上で、原料鉄粉中の硫黄含有量は、0.6質量%以上とすることが好ましい。尚、この硫黄含有量は、より好ましくは0.7質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上とするのが良い。
【0019】
一方、鉄粉中の硫黄の含有量が多いほど、鉄粉の重金属類の除去性能が向上する。しかしながら、硫黄の含有量が過度に多くなると、鉄粉本来の重金属吸着活性を阻害することになりかねない。また、必要以上の不用意な処理剤によるコストアップに繋がる。こうしたことから、鉄粉中の硫黄の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。
【0020】
鉄粉に硫黄を含有させることによって、重金属類の除去性能が向上する理由は、次の様に考えられる。即ち、鉄粉中に含まれる硫黄の作用で、Fe→Fe
2++2e
-で示される鉄のアノード反応が進行しやすくなって鉄粉表面の酸化が促進され、該鉄粉表面で効率良く生成する鉄イオン、急速に成長する鉄の酸化物や水酸化物によって、汚染水中や汚染土壌中に金属イオンや化合物イオンの形態で存在する重金属類の鉄粉への吸着が促進される。それに伴って重金属類の除去が効率良く進行するものと考えられる。
【0021】
本発明者らが、上記処理剤の性能をより高めるべく、更に検討した。その結果、鉄粉、または硫黄を含有させた硫黄含有鉄粉に、アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩を共存したものとすれば、汚染水中または汚染土壌中の重金属類に対する除去性能が格段に向上し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0022】
各重金属類が鉄に吸着される基本的な推定メカニズムは次のように考えることができる。まずヒ素やセレンは、水中でヒ酸イオン(AsO
43-)やセレン酸イオン(SeO
42-)の形態で溶解している。このヒ酸イオンやセレン酸イオンを除去するためには、これらのイオンと鉄イオンを反応させて化合物を生成させれば良い。そして、鉄粉または硫黄含有鉄粉を用いることによって、鉄イオンを水中に効率良く放出することができる。その結果、不溶性のヒ酸鉄やセレン酸鉄、即ちヒ酸やセレン酸と鉄との化合物を、鉄粉表面に析出させることによって、重金属類を鉄粉に吸着させ、水中からヒ酸イオンやセレン酸イオンを効率良く除去することができる。
【0023】
鉛およびカドミウムは、夫々鉛イオン(Pb
2+)およびカドミウムイオン(Cd
2+)の形態で水中に溶解している。硫黄を含有した鉄粉によって鉄のアノード反応が促進されるので、鉛イオンやカドミウムイオンが、夫々金属カドミウムや金属鉛に効率良く還元され、鉄粉表面に析出する(即ち、重金属類が鉄粉に吸着する)。その結果、カドミウムイオンや鉛イオンを、水中から効率良く除去することができる。
【0024】
クロムは、クロム酸イオン(CrO
42-)や二クロム酸イオン(Cr
2O
72-)の形態で水中に溶解している。硫黄を含有した鉄粉によって、鉄のアノード反応によって水に電子を供給し、水酸化物イオンを効率良く生成させる。これらクロムイオンと水酸化物イオンとが反応して、不溶性の水酸化クロムが鉄粉表面に析出する(即ち、重金属類が鉄粉に吸着する)。その結果、クロムイオンを水中から効率良く除去することができる。
【0025】
ところで、重金属類に汚染された地下水などのpHは、周囲の環境によって様々に変化することになる。例えば、炭酸水素ナトリウムやその他のアルカリ成分が溶存する地下水では、pH8程度の弱アルカリ性を示すものがある。また、排水等では、更に高いアルカリ性を示すものがある。しかしながら、これら汚染水のpHが高くなると、鉄粉への重金属吸着量が低下するという問題が生じることが判明している(前記特許文献5)。
【0026】
本発明の処理剤では、ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロムから選択される重金属類の汚染物質と、鉄粉との反応性を高めるためにアルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩を、混合する等して共存させている。アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩の共存で鉄粉との反応性が高くなる理由は、アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩が水に溶解するとその場の導電性が上昇し、イオンや電子のやりとりが促進されることが挙げられる。つまり、アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩が支持電解質として機能することで2価鉄イオン(Fe
2+)の反応性を高め、重金属イオンとの反応を促進させることで浄化性能をより向上させられると考えられる。
【0027】
上記したメカニズムは、汚染水だけに限らず、化学水、吸湿水、毛管水、重力水、雨水流入等の形態で土壌中に水分を含んでいるので、汚染土壌においても同様に考えることができる。
【0028】
本発明で用いる「アルカリ金属のハロゲン化物」としては、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムが挙げられ、「アルカリ金属の硝酸塩」としては、硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。このうち好ましいのは、安価な材料という観点から、塩化ナトリウムや硝酸ナトリウムである。
【0029】
本発明の処理剤において、鉄粉と、アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩の共存割合(質量割合)は、鉄粉の添加100質量部に対して1質量部以上2000質量部以下、好ましくは4質量部以上100質量部以下、より好ましくは5質量部以上50質量部以下である。
【0030】
ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロムの重金属類を含む汚染水や汚染土壌と、上記のような処理剤とを接触させることによって、高い吸着効率を発揮することができる。
【0031】
本発明は、重金属類等を含有する汚染水または汚染土壌と、本発明の処理剤とを接触させることによって、汚染水や汚染土壌から重金属類等を除去する方法も提供する。本発明において、汚染水または汚染土壌と本発明の処理剤(鉄粉+アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩)とを接触させる方法には特に限定は無く、例えば(1)処理剤を適当な容器に充填し、これに汚染水を連続的に通過させて接触させる方法、(2)処理剤を汚染水に添加した後、撹拌・分散させて重金属類等を捕捉する方法、(3)処理剤を汚染土壌に添加して混合し、重金属類等を捕捉する方法、等が挙げられる。尚、重金属類等を吸着除去した鉄粉は、重金属類等の再溶出を起こさないことを確認しており、回収せずとも土壌中に放置しても良い。但し、あえて回収する場合には、磁選による回収が可能であり好ましい。
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0033】
[実施例1]
〈鉄粉〉
原料鉄粉として、水アトマイズ法で製造した硫黄含有量が1質量%の鉄粉(平均粒径:70μm)を使用した。
【0034】
〈アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩〉
塩化ナトリウム(市販の試薬)
硝酸ナトリウム(市販の試薬)
〈対象物質〉
(a)ヒ酸二水素ナトリウム・7水和物(As(V):市販の試薬)
(b)セレン酸ナトリウム(Se(VI):市販の試薬)
(c)硝酸カドミウム(Cd:市販の試薬)
(d)硝酸鉛(Pb:市販の試薬)
(e)二クロム酸カリウム(Cr(VI):市販の試薬)
【0035】
上記「アルカリ金属のハロゲン化物または硝酸塩」として用いた塩化ナトリウムまたは硝酸ナトリウムと、鉄粉の共存量を変えた例を、実験条件と共に下記表1に示す。
【0036】
〈実験条件〉
重金属類の除去試験は、水平振とう機によるバッチ式試験法に基づき行なった。各種重金属類の標準溶液としては、5価ヒ素[As(V)]は、ヒ酸二水素ナトリウム・7水和物、6価セレン[Se(VI)]はセレン酸ナトリウム、カドミウム[Cd]は硝酸カドミウムによるカドミウム標準液(Cd−1000)
*、鉛(Pb)は硝酸鉛による標準液(Pb−1000)
**、および6価クロム[Cr(VI)]は1/60mol/Lの二クロム酸カリウム溶液を各々用い、所定の濃度となるようにイオン交換水、塩化ナトリウム溶液または硝酸ナトリウム溶液で希釈して使用した。このとき、各重金属の原水濃度(希釈後の濃度)は、5価ヒ素[As(V)]、6価セレン[Se(VI)]、鉛(Pb)およびカドミウム(Cd)は、1.0mg/L、6価クロム[Cr(VI)]は、5.0mg/Lである。
*(Cd−1000):硝酸カドミウム約0.1%溶液(Cd:1000mg/L,硝酸:0.1mol/L(0.6%))
**(Pb−1000):鉛0.1%溶液(Pb:1000mg/L,硝酸:0.1mol/L(0.6%))
【0037】
バッチ法による除去試験を、下記の手順で実施した。まず内容積500mLのポリエチレン製容器に、既知濃度の重金属類溶液を250mL加え、その中に鉄粉と、イオン交換水、塩化ナトリウム溶液または硝酸ナトリウム溶液の希釈水を所定の固液比で添加した。そして、常温(25℃)・常圧下で24時間の振とうを、水平振とう機を用いて、振とう回数:140rpm、振とう巾:4cmの条件で行なった。24時間の振とうを行なった後の試験溶液は、孔径が0.45μmのメンブレンフィルターで吸引濾過を行なった後、分析に供した。溶液中の定量濃度分析は、As(V)およびSe(VI)は、ICP発光分光分析法によって、Pb、CdおよびCr(VI)は、ICP質量分析法によって、夫々測定を行なった。
【0038】
処理後の重金属の濃度を、希釈水の種類および固液比と共に、下記表1に示す。表1の希釈水の種類については、Aはイオン交換水、Bは0.2mol/Lの塩化ナトリウム溶液、Cは0.2mol/Lの硝酸ナトリウム溶液の夫々を示す。また表1において「<」の欄は、定量下限値未満であることを意味する。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から明らかなように、鉄粉に対してアルカリ金属のハロゲン化物またはアルカリ金属の硝酸塩を共存させた試験No.3〜6では、初期濃度よりも試験後の重金属の濃度が大きく低下していることが分かる。