(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208668
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】破裂可能でかつ再シール可能なグラフト
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20170925BHJP
【FI】
A61F2/07
【請求項の数】18
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-534664(P2014-534664)
(86)(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公表番号】特表2015-501173(P2015-501173A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】US2012058597
(87)【国際公開番号】WO2013052570
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年9月10日
(31)【優先権主張番号】13/644,160
(32)【優先日】2012年10月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/545,044
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エイチ.カリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ビー.ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】ポール ディー.ガスラー
【審査官】
伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−515665(JP,A)
【文献】
特表2008−511418(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0112618(US,A1)
【文献】
特表2011−512201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)表面を有する円筒形マンドレルを提供すること、
b)前記マンドレルの表面に対して実質的に円周方向に高強度配向を有する第一のグラフト材料のラッピングをマンドレル表面に提供すること、
c)エラストマー材料のカバリングを前記グラフト材料のラッピングに提供すること、
d)第二のグラフト材料のカバリングを前記エラストマー材料に提供すること、
e)得られるチューブ状構造を前記マンドレルから取り外し、チューブ状構造を裏返すことで、該エラストマー材料の実質的に全層厚を該第一のグラフト材料からの円周方向圧縮下に置くことを特徴とする、移植可能なチューブ状グラフトの製造方法。
【請求項2】
前記第一のグラフト材料はePTFEである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第二のグラフト材料はePTFEである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第一のグラフト材料はePTFEである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記エラストマー材料はシリコーンである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記エラストマー材料はフルオロエラストマーである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記エラストマー材料はテトラフルオロエチレンとポリアルキルビニルエーテルとのコポリマーである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記エラストマー材料はテトラフルオロエチレンとポリメチルビニルエーテルとのコポリマーである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記エラストマー材料はポリウレタンである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記エラストマー材料は異なるエラストマーの2つの層を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記異なるエラストマーの1つはシリコーンであり、前記異なるエラストマーのもう一方はフルオロエラストマーである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記裏返しされたチューブ状構造について、前記2つの層はフルオロエラストマーの外側層及びシリコーンの内側層を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記裏返しされたチューブ状構造について、前記2つの層はフルオロエラストマーの内側層及びシリコーンの外側層を含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記チューブ状構造は裏返しの後よりも裏返しの前のほうが大きい外径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記チューブ状構造は、裏返し前に第一のより大きな外径を有し、そして裏返し後に第二のより小さい外径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記チューブ状構造は裏返し前に第一のより大きな外径及び第一のより大きな内径を有し、裏返し後に第二のより小さい外径及び第二のより小さい内径を有し、第一の外径及び第二の外径の差異は第一の内径及び第二の外径の差異よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項17】
第一の外径を有するチューブ状構造を含み、裏返ししたときに、第一の外径よりも大きい第二の外径を有する、移植可能な脈管グラフトであって、該チューブ状構造はグラフト材料の内側層および外側層ならびにエラストマー材料の中間層を含み、該移植可能な脈管グラフトを裏返しする前は、該エラストマー材料の実質的に全層厚が該グラフト材料からの円周方向圧縮下に置かれていることを特徴とする、移植可能な脈管グラフト。
【請求項18】
チューブ状構造はある壁厚を有し、第二の外径は少なくとも前記壁厚と等しい量で第一の外径よりも大きい、請求項17記載の移植可能な脈管グラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2011年10月7日に出願された米国仮出願第61/545,044号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は移植可能なグラフト、特に、動静脈アクセスのための移植可能なグラフトの分野に関し、このようなグラフトは針などの物体により破裂可能であり、該物体の除去後に、破裂部位でのグラフトを通した流体漏洩をグラフトに典型的であるよりも少ない量まで低減する程度にまで、得られた孔を再シールするであろう。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
破裂用物体の取り外し後の破裂部位からの流体漏洩を低減する問題に対する解決方法を提供しようと試みる種々のグラフトは文献中に記載されてきた。動静脈アクセスを意図した最も典型的なグラフトであって、透析針により時折繰り返して穿孔されうるこれらのグラフトに典型的なグラフト材料はポリエチレンテレフタレート(PET)及び延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)である。これらのグラフトは、平板シートグラフトも知られているが、典型的にはチューブ状グラフトであり、それはチューブの表面の部分をパッチするのにしばしば使用される。
【0004】
漏洩を低減するために種々の形態で以前から記載されている構造物は移植可能なエラストマー材料などの自己シール性材料の層と上記の材料のラミネートの使用を伴う。これらのエラストマー材料は、典型的には、シリコーン、ポリウレタン又はフルオロエラストマーである。1層のエラストマー材料の層に結合した1層のグラフト材料の層の使用は記載されているが、最も頻繁に記載されているラミネートは、グラフト材料の層の両方の表面(例えば、内側表面及び外側表面)を被覆しているエラストマー材料の層を含む。グラフト材料の層は2つの表面上で同一であっても又は異なっていてもよく、グラフト材料は、本質的に化学的構成が同一であっても、厚さ、バルク密度、多孔度、配向又は他の属性の点で異なっていてよい。
【0005】
これらのラミネート、特にチューブ状構造物のためのこれらのラミネートの特定の変形形態は、チューブを1層以上のグラフト材料の層にラミネート化する前に、裏返しした(すなわち、内側を外側にひっくり返した)チューブ状エラストマー材料成分の使用を伴う。エラストマー材料の裏返したチューブは管腔側表面で円周方向圧縮下にあり、一方、反管腔側表面は円周方向張力下にある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図面の簡単な説明
【
図1A】
図1Aは筒型マンドレル上に製造された状態の、本明細書に記載のグラフトの1つの実施形態の横断断面図を記載している。
【0007】
【
図1B】
図1Bはマンドレルから取り外し、そして
図1Aのチューブの内側を外側にひっくり返すことにより裏返しされた後の
図1Aに示すグラフトの横断断面図を示している。
【発明の概要】
【0008】
移植可能なグラフトを記載し、特に、針などの物体により破裂可能であり、該物体の除去後に、破裂部位でのグラフトを通した流体漏洩をグラフトに典型的であるよりも少ない量まで低減する程度にまで、得られた孔を再シールする動静脈アクセスのための移植可能なグラフトを記載する。より詳細には、グラフトは3つの層:ePTFEなどの移植可能なグラフト材料の内側層、シリコーンなどの自己シール可能なエラストマー材料の中間層、及び、ePTFEなどの移植可能なグラフト材料の外側層を含む。製造後に、さらに記載されるとおり、3層グラフトのチューブ状形態を裏返しし、エラストマー材料層の実質的に全ての壁厚を円周方向圧縮下に置く。
【0009】
グラフト材料の外側層(チューブを裏返す前の内側層)はチューブ状グラフトの周囲で円周方向に配向された高強度方向を有する高引張強度材料である。グラフト材料の強度はチューブ状グラフトの長手方向において、評価可能により低いことができる。1つのこのような材料は幅よりも大きい長さのテープへと切断されており、テープの長さに平行な方向に高強度方向を有するePTFEフィルムである。このテープは、完成した(裏返した後)のチューブ状グラフトの外側表面を構成するらせん巻きを形成するように使用される。
【0010】
グラフトはマンドレルの表面の周囲にePTFEテープをらせん巻きすることにより製造されうる。テープを切断して得られるフィルムは一般に米国特許第3,953,566号明細書に記載されており、それを参照により本明細書中に取り込む。好ましいフィルムは一軸フィルムのフィブリル状配向の方向である1つの方向に高い強度を有し、フィブリルはこのようなフィルムから切断して得られるePTFEテープの長さに実質的に平行に配向されている。らせん巻きは選択されたマンドレルの長さに沿って単一の方向であることができ、結果として、巻物の強度方向は長手方向とは対照的に実質的に円周方向である。別の実施形態では、らせん巻きは長さ方向に沿って両方の方向に行うことができる。別の実施形態において、マンドレル長さに沿った複数巻き通過は所望ならば行ってよい。
【0011】
らせん巻きフィルム層の完成後に、エラストマー材料の層は提供される。選択されたジュロメータのシリコーンは1つの実施形態において使用することができ、他の実施形態では、ポリウレタンを使用することができる。なおも別の実施形態はこの層のためにフルオロエラストマーを提供し、例えば、テトラフルオロエチレンとポリアルキルビニルエーテル(TFE/PAVE)のコポリマーであり、1つのこのようなコポリマーはTFEとポリメチルビニルエーテル(TFE/PMVE)のコポリマーである。これらの材料は米国特許第7,049,380号及び米国特許公開第2006/00198866号明細書により教示されており、参照により本明細書中に取り込む。エラストマー材料はエラストマー材料の予備成形チューブの使用を含む種々の方法によりらせん巻きフィルム上に適用されることができ、又は、材料は浸漬塗布又はスプレイ塗布などにより、らせん巻きフィルム上に未硬化形態で適用されることができる。これらの方法の幾つかは米国特許第8,029,563号明細書により教示されており、これも参照により本明細書中に取り込む。エラストマー材料は適用後に硬化され又は部分的に硬化されてよい。
【0012】
さらに、上記のエラストマーの組み合わせも考えられる。例えば、フルオロエラストマー(例えば、TFE/PMVEコポリマー)の層は脈管グラフト基材チューブ上に塗布され、そして乾燥され、次いで、シリコーンの追加の層が適用されてよい。同様に、2つの異なるエラストマーの内側/外側関係を逆にしてもよい。また、異なる形態を有する同一のタイプのエラストマーの組み合わせを適用してよく、例えば、まず、シリコーンの内側層が脈管グラフト基材の上に適用され、次いで、未硬化層であるシリコーンの第二の層が適用されてよい。この様式で、1層の架橋エラストマーは針による破裂部位を圧縮しそしてシールするのに必要な力を提供し、一方、エラストマーの第二の外側層(同一のタイプのエラストマーの部分的に硬化された層であることもできる)は、使用時に、針の除去後に、流れそして破裂部位を「治癒」することが期待されうる。製造の間に、記載のとおりの内側層及び外側層の関係は製造されたチューブ形態の裏返しの後に逆になり(下記に詳述するとおり)、(適切な手段による滅菌の必要な工程後に)透析用途が意図された脈管グラフトとしての使用のために入手可能な完成チューブ上グラフトとなることは明らかである。
【0013】
最後に、グラフト材料の追加の層(例えば、PET又はePTFE)はエラストマー材料の上に適用される。1つの実施形態において、これはePTFEであり、より特定的には、長手方向に押出成形されそして延伸されたePTFEのチューブであることであることができる。1つの実施形態において、このチューブは壁厚が約0.1mmであり、平均フィブリル長さが約25〜35ミクロンである。これらの寸法は所望により変更可能であることが明らかである。又は、この層はらせん巻きePTFEフィルムから製造されうる。グラフト材料のこのグラフト層は移植可能なシリコーン医療用接着剤などの接着剤により、又は、外側グラフト材料を提供した後に、下層エラストマー材料を硬化させることにより、エラストマー材料である下層に結合されうる。
【0014】
上記の中間エラストマー材料層が含まれるかぎり、グラフト層は追加のエラストマー材料を含むことができることもさらに明らかである。
【0015】
グラフト材料で両側を被覆したエラストマー材料の中間層を含む上記の3層の完成後に、得られたチューブ状グラフト材料はマンドレルから取り外される。1つの実施形態において、この取り外しはチューブ自体を裏返し、裏返しプロセスの間にマンドレルからそれを取り外すことにより行われる。又は、チューブ状構造物はマンドレルからの取り外し後に裏返されてもよい。
【0016】
実質的に円周方向に配向された主な強度方向を有するらせん巻きグラフト材料の層はチューブの裏返し工程により実質的に変わらない直径を有する。なおも製造マンドレル上にある間にらせん巻き層の上に提供された材料はチューブの裏返しの間に円周方向に圧縮され、ここで、エラストマー材料層は直径が特に減じられ、そして円周方向に圧縮された状態のままであり、それにより、得られたグラフトの破裂部位での漏洩を減じることを有意に補助する。このことは透析を意図した脈管グラフト、側枝内部人工器官配置のための可能な現場穿孔術に特に有用であることが期待され、そして縫い合わせ針により破裂されたグラフトにも同様に有用である。
【0017】
エラストマー材料層が実質的にその全壁厚を通して円周方向に圧縮状態であることの指示は上記のとおりに製造されたある長さの裏返しチューブを取り、チューブの長手軸に平行な長手方向に壁を通して切断することにより見ることができる。切断後に、得られたシートは初期の裏返しチューブの曲面とは反対の方向にカールするであろう。すなわち、カールされたシートの外側表面は、以前には、裏返したチューブの管腔表面であったであろう。
【0018】
さらに、概して上記のとおりに製造された(例えば、マンドレル上で製造したものをマンドレルから取り外した後に裏返す工程を含む)、完成した移植可能な脈管グラフトは第一の外径を有するチューブ状構造を有し、ここで、そのチューブ状構造を裏返したときに、第一の外径よりも大きい第二の外径を有する。第二の、より大きい外径へのこの裏返しは、実際に、マンドレルからの取り外し及び製造の間の第一の裏返しの前のマンドレル上で製造したままの状態に戻す第二の裏返しである。第二の外径は、通常、少なくともチューブ状構造の壁厚に等しい量で第一の外径よりも大きい。
【0019】
壁厚は、チューブ構造の内径にぴったり合うマンドレル上にチューブ状構造を適合させることにより好ましくは測定され、ぴったり合うとはマンドレル表面上にチューブを適合させるのに小さい力を必要とするということである。チューブをマンドレルに適合させるための実質的な力の使用はチューブの外径を所望しないほど増加させることになり得る。適切な直径のマンドレル上に適合させたときに、チューブの外径は適切なレーザマイクロメータで測定されうる。壁厚はチューブの指示外径−マンドレル直径を2で割った値である。チューブの長さ方向に沿って異なる位置で少なくとも3つの測定を行うべきであり、壁厚は3つの測定の平均である。
【0020】
グラフトは、また、平坦な形態で提供されうる。1つの実施形態において、これは、上記のとおりに製造されたチューブをその長さに沿って切断することにより単純に得ることができる。
【0021】
エラストマーに対して圧縮応力を加える他の方法も考えられる。1つの方法は、ePTFEライナー及びシリコーンの硬化もしくは半硬化コーティングを有する複合材チューブとして1つの構成要素を製造し、第二の構成要素が有意な半径方向強度を有しそして第一の構成要素よりも若干小さい直径で製造したePTFEであり、その後、第一の構成要素を第二の構成要素中に入れることを含む。締まり嵌めが構成要素どうしを固定するようにして構成要素を滑らせて合わることができ、又は、2つのチューブを一緒に適合させる前にシリコーン接着剤の薄いコーティングを用いることにより、構成要素どうしを適合させそして接着固定することができる。いずれの場合であっても、構成要素2のePTFEは構成要素1の複合材チューブを当初に製造したものよりも小さいサイズで保持し、エラストマー層の厚さ全体にわたって残留圧縮応力をもたらすであろう。構成要素2は所望ならば、ステント構成要素とともに提供されてよく、それにより、ステントグラフトを形成する。
【0022】
エラストマー内部の残留圧縮応力を用いると、本発明の破裂許容度は劇的に増加する。許容度のこの増加により、有効な漏洩抵抗性をなおも維持しながら、従来のデバイスと比較して低減されたグラフト壁厚が可能になる。この厚さの低減は、適当な挿入プロファイルへと直径的に緻密化され、そして所望の部位でより大きな直径へと、続いて展開するためのデリバリーシステム上又はその内部に取り付けることができる真の腔内グラフト又はステントグラフトの製造のために提供されうる。
【0023】
ステント構造はチューブ状グラフト材料の長さの少なくとも一部分に提供されうる。ステント構造は自己拡張性であることができ、又は、バルーン拡張性であることができる。バルーン拡張性ステントは種々の移植可能なステンレススチールのいずれかなどの可塑変形可能な金属から機械加工されうる。自己拡張性ステントはニチノールから製造されてよく、より詳細には、ニチノールワイヤから製造されてよい。1つのこのような実施形態は概してチューブ状形態にらせん巻きされたニチノールワイヤを使用し、この実施形態の変形形態は反対方向に互い違いの頂点を有するヘビ状パターンに曲げられたワイヤを使用し、その後、このヘビ状ワイヤは概してチューブ形状へとらせん巻きされる。例えば、米国特許第6,551,350号明細書を参照されたい。参照により本明細書中に取り込む。ステント構造は1つの実施形態において、上記のチューブ状グラフトの外側表面上に提供されうる。別の実施形態において、ステントはグラフトの内側表面上に提供でき、そして別の実施形態において、ステント構造はグラフトの壁厚内に取り込まれてよい。別の実施形態において、ステント構造は米国特許公開第2007/0198077号及び同第2007/0076587号明細書中に一般に教示されているとおり、グラフトの一方の末端又は両末端に提供されてよい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面の詳細な説明
図1Aは筒型マンドレル上に製造された状態の、本明細書中に記載のグラフトの1つの実施形態の横断断面図を記載しており、一方、
図1Bはマンドレルから取り外し、そして
図1Aのチューブの内側を外側へと返すことにより裏返した後の同一のグラフトを示す。
図1Aに示されるとおり、マンドレル18は高い円周方向強度を有するグラフト材料のカバリング12を備えており、該グラフト材料は、例えば、薄いePTFEテープのらせん巻きであり、該テープはテープの長さに平行なテープの強度方向を有する一軸微細構造を有し、それにより、マンドレルがこのようなテープによりらせん巻きされたときに、円周方向の強度が提供される。次に、エラストマー材料の1層以上の層14はテープのらせん巻き12上に提供されており、その後、グラフト材料の別のカバリング16はエラストマー材料14上に提供される。1つの実施形態において、このカバリング16は多孔性ePTFEであり、そして長手方向に押出成形されそして延伸されたePTFEチューブであることができ、又は、ePTFEのらせん巻きとして提供されてもよい。
【0025】
図1Bはマンドレル18の取り外し後でかつ複合材チューブの裏返し後に、移植可能なチューブ状脈管グラフト10となった
図1Aのチューブの横断断面図である。グラフト10の外径「D」は裏返しの前の
図1Aに示すマンドレル18上に横たえた状態のカバリング12の外径と実質的に同一であることは注目に値する。移植可能なチューブ状脈管グラフトのエラストマー材料層14は
図1Bに示すとおりの裏返し後に、今や円周方向に圧縮されそしてカバー12により拘束されている。エラストマー層の実質的に全厚は円周方向に圧縮されており、選ばれたエラストマー材料の材料特性との組み合わせで、自己シール性能力をグラフト10が備えることは注目に値する。エラストマー材料の層の壁厚の外側部分は最も少量の円周方向圧縮下にあり(ほとんど又は全く円周方向圧縮がない)、エラストマー材料の壁厚の内側部分は最も大きい量の円周方向圧縮下にある。エラストマー材料のこの層の壁厚は裏返し後に若干増加することができる可能性がある。カバリング16も円周方向に圧縮されており、ここで、グラフト10の管腔表面を提供する。ePTFEチューブ状構造などの多孔性材料層16は管腔表面で評価可能な変形なしにこの圧縮を容易に受け入れる。
【実施例】
【0026】
例
【0027】
約2.5mm幅及び約0.0025mm厚さのePTFEテープであって、実質的に一軸フィブリル微細構造を有し、マトリックス引張強さがテープの高強度方向で(長さに沿って)約26000psi(180MPa)であるテープを得た。この材料はバルク密度が約0.6g/ccであり、非多孔性PTFEの密度が約2.2g/ccであるのと対比される。約8mm直径のステンレススチールマンドレルを得て、長手方向に押出成形しそして延伸したePTFE(厚さ約0.25mm)のチューブ状カバーを提供した。得られたテープのらせん巻きは、得られたチューブの長さに沿ってテープの5層厚さが得られるように、カバーされたマンドレル上にテープを一方向のみに巻くことにより適用された。アセンブリーを10分間、370℃に設定した熱対流炉内に入れ、その後、炉から取り出し、冷却した。マンドレルを取り外し、剥離性材料(Kapton)の表面カバリングを備えた同一サイズの別のもので置き換えた。ePTFEチューブを、その後、手動で滑らかにしたNusil MED-1137シリコーン(Nusil Technology, Carpenteria CA93013)のコーティングを提供した。シリコーンが硬化点まで硬化する前に、3パス(交互方向)で1パスあたりに同一のフィルムさらに5層(合計で15層)でらせん巻きした。これに次いで、別のシリコーン塗布を行い、1つの方向にらせん巻きした別の5層のフィルムを適用した。アセンブリを65℃に設定した炉内に20時間以上入れ、シリコーンを硬化した。脱イオン水の容器をこの時間にわたり炉内に入れ、硬化プロセスを支援した。この時間の終了後に、アセンブリを炉から取り出し、マンドレルをチューブ状構造物から取り外し、その後、チューブ状構造物を裏返して、チューブ状グラフトを形成した。
【0028】
得られたグラフトは約0.38mmの合計壁厚を有した。2.5psi(17.2KPa)の室温水で加圧し、その後、約45°の角度でグラフトの壁を通して新規の16ゲージ透析針を、針の斜角表面を上に向けて挿入することにより試験した。加圧されたグラフトから針を取り出したときに、破裂部位から少量の水流があり、それが約2秒間続き、その後、水滴は破裂部位に一時的に形成した。加圧されたグラフトの漏洩は、その後、完全に停止した。
【0029】
若干少量のシリコーンを用いて同一のプロセスで別のグラフトを製造し、得られた壁厚は約0.33mmであった。このグラフトを、ステンレスチールマンドレル上に適合させた後に、2.5cm幅のTFE/PMVEフルオロエラストマーテープ(米国特許第7,049,380号明細書により製造された材料)のらせん巻きカバリングを提供し、テープはこのテープの3層厚さ適用となるピッチで適用された。上記のePTFEテープの別の5層を外側表面周囲に巻き、フルオロエラストマーを固定し、均一な薄いカバリングを形成するように流動させた。この構造物を220℃に設定した熱対流炉に15分間入れ、その後、取り出しそして冷却させ、その後、マンドレルを取り外した。得られたグラフトは、裏返した後に、壁厚が約0.41mmであった。上記のとおりに圧力試験をしたときに、透析針を除去したときに、水滴は破裂部位で一時的に形成し、その直後に、すべての漏洩は停止した。
【0030】
エラストマー材料としてシリコーンのみを用いて、上記のとおりに製造したグラフトのある長さの外側表面に、ニチノールヘビ状ワイヤステント(ワイヤ直径約0.2mm)を装着した。ステントを溶融結合接着剤として上記のTFE/PMVEフルオロエラストマーを用いてステントの外側表面に接着した。米国特許第6,673,102号明細書に記載されるデバイスのステント−グラフト部分に関して一般に記載されているとおりにステントを製造した。該明細書を参照により本明細書中に取り込む。得られたステント−グラフトを、米国特許第6,673,102号明細書に記載されるとおりのファンネルタイプのコンパクターを用いて、約13フレンチ(約4.3mm)の直径へとコンパクト化した。これは、このようなステント−グラフトは移植可能であり、そして管腔内で展開できることを示す。
【0031】
上記に説明し、下記に特許請求した教示に関することに加えて、上記に説明し、下記に特許請求した特徴の異なる組み合わせを有するデバイス及び/又は方法が考えられる。このため、記載は下記の特許請求された独立の特徴の任意の他の可能な組み合わせを有する他のデバイス及び/又は方法にも関する。
【0032】
デバイス及び/又は方法の構造及び機能の詳細とともに、多くの特徴及び利点は、種々の変更形態を含めて、先行の説明に示されてきた。開示は例示のみであることが意図され、それ自体が網羅的であることは意図しない。添付の特許請求の範囲が表現している用語の広い一般的な意味により示される全範囲に、本発明の原理の範囲内での組み合わせを含む、部品の構造、材料、要素、構成要素、形状、サイズ及び配置の事柄に特に種々の変更がなされてよいことは当業者に明らかであろう。これらの種々の変更が添付の特許請求の範囲の精神及び範囲を逸脱しない程度まで、これらの種々の変更は包含されることが意図される。
本発明の好ましい態様は以下のとおり。
(1)a)表面を有する円筒形マンドレルを提供すること、
b)前記マンドレルの表面に対して実質的に円周方向に高強度配向を有する第一のグラフト材料のラッピングをマンドレル表面に提供すること、
c)エラストマー材料のカバリングを前記グラフト材料のラッピングに提供すること、
d)第二のグラフト材料のカバリングを前記エラストマー材料に提供すること、
e)得られるチューブ状構造を前記マンドレルから取り外し、チューブ状構造を裏返しすこと、
を含む、移植可能なチューブ状グラフトの製造方法。
(2)第一の外径を有するチューブ状構造を含み、裏返ししたときに、第一の外径よりも大きい第二の外径を有する、移植可能な脈管グラフト。