特許第6208680号(P6208680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208680
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 8/00 20060101AFI20170925BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170925BHJP
【FI】
   F21V8/00 310
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-548510(P2014-548510)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2013080137
(87)【国際公開番号】WO2014080771
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-256236(P2012-256236)
(32)【優先日】2012年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】椋本 英
(72)【発明者】
【氏名】牛山 孝夫
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−209237(JP,A)
【文献】 特開2011−198659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 8/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点光源素子の照射光を導光体を介して伝達し照射する照明装置において、
前記導光体は上部導光体、中部導光体および下部導光体の1つの部位から構成され、
前記上部導光体は中空円筒状に形成され、該上部導光体の上端面に配置され該上部導光体の壁面内部に向かって照明光を照射する前記点光源素子が配置され、
前記上部導光体に連続する前記中部導光体は、前記点光源素子から照射され前記上部導光体の壁面内部をほぼ直進する照明光を遮るよう、かつ前記上部導光体の外周方向に広がるように屈曲した裾広がりな中空形状を有し、
さらに前記中部導光体に連続する前記下部導光体は上部導光体と直交するようほぼ水平方向に伸びる中空なフランジ形状を有し、
前記中部導光体の屈曲部位において、前記点光源素子から照射された前記照明光が該屈曲部位で生じる反射、拡散ないしは透過過程を介して前記導光体の内側および外側へと照射されるとともに、
前記下部導光体の外周縁においては、前記点光源素子から照射され前記中部導光体から導光された前記照明光が該外周縁で生じる反射、拡散ないしは透過過程を介して前記導光体の下側および上側へと照射されることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、前記導光体の中空部位に向けて照明光を照射すべく、前記上部導光体の上端面に配置された前記点光源素子とは異なる点光源素子が配置されることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の照明装置において、前記下部導光体の中空部位を覆うよう拡散部材が配置され、該拡散部材により中空の前記導光体の内側領域において照明光を拡散して前記導光体の下部方向に照射することを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の照明装置において、前記下部導光体の外周縁が前記下部導光体全体の伸びる方向に対して斜交する傾斜面として構成され、かつ該傾斜面に粗面加工が施されていることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の照明装置において、前記下部導光体の上面に粗面加工が施されていることを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点光源素子の照射光を導光体を介して伝達し照明光として照射する照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低消費電力で寿命が長いLED照明が注目されており、LED光源の発光輝度の向上も相俟って、既設の白熱灯や蛍光灯などの光源をLED光源に置換するためのLED照明装置が種々提案されている。
【0003】
LED光源の特徴の一つである点光源で輝度が高い性質は、照明装置に用いる場合、グレア(ギラつき、まぶしさ)としてユーザを不快にさせる要素となる。たとえば下記の特許文献1では、白熱電球などに置換可能なLED照明装置の発光部の構成において、LED光源素子が点光源で前方向のみにしか照明光を照射しない特性を緩和し、LEDから出射された光を照明装置の前方だけではなく側方や後方へ広範囲に拡散することができるよう、上下2枚のレンズ素子を組み合わせて成る光束制御部材、およびこの光束制御部材を用いた簡単な構造の照明装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−163602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、LED光源のような点光源を用いて、グレアの少ない照明特性を得ようとする場合、考えられる1つの方法は、照射光を天井面に向け、その反射光で室内を照らすような間接照明方式をとることが考えられる。
【0006】
この間接照明方式は、照明光のうち相当の量、たとえばほぼ全てを天井面に向けるような構造とし、LED光源ないしその周辺部をユーザから視認できないように構成すれば、グレアを感じさせないで済む有効な手法となり得るが、そのような構成では結果として実際に照明光が必要な照射範囲に向かう光量が格段に落ちるため実用上効率が良いとはいえない。
【0007】
また、グレアの少ない照明特性を得るには、平板状の導光部材の側縁からLED光源の照明光を照射し、あるいはさらに導光部材の下部に拡散板などを配置することにより面発光の照明装置を構成することが考えられる。このような構成では、LED光源を導光部材の外側に隠すこともでき、また導光部材の導光特性や拡散板の特性を工夫することによりグレアの少ない照明光を得ることができ、さらに比較的大きな発光部の面積を確保することも容易であるが、照明装置の直下に比較的集中した配光分布が得られず、直下照度が得られない。
【0008】
ここで、近年のLED光源を用いた照明装置の技術動向につき考えると、白熱電球や蛍光灯などの光源を用いた旧来の照明装置に近い特性を得るべく発想された構成が多く、逆にLED光源や導光部材を用いることでしか得られない独特の照明装置に関する発想が少ない、ということに気付く。
【0009】
たとえば、上記特許文献1におけるようなレンズ型の光束制御部材(導光部材)により単純に照明装置の側方や後方への反射/拡散光量を増大させるだけではなく、導光部材により大胆な形状を採用することにより、旧来の照明装置では得られない独特かつ良好な照明特性を得られる可能性がある、と考えられる。
【0010】
そこで、本発明の課題は、LED光源のような点光源および導光部材を用いた照明装置において、導光部材の形状や光源の配置によって、旧来の照明装置では得られない独特かつ好ましい照明特性を有する照明装置、たとえば比較的ふんだんに照明装置後方への間接照明光を得られるとともに、照明装置直下(前方)に比較的集中した配光分布を得られ、しかも不快なグレアが少なく、かつ、照明光を照射する実質的な発光部位に比較的大きな面積を確保できる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明においては、点光源素子の照射光を導光体を介して伝達し照射する照明装置において、
前記導光体は上部導光体、中部導光体および下部導光体の1つの部位から構成され、
前記上部導光体は中空円筒状に形成され、該上部導光体の上端面に配置され該上部導光体の壁面内部に向かって照明光を照射する前記点光源素子が配置され、
前記上部導光体に連続する前記中部導光体は、前記点光源素子から照射され前記上部導光体の壁面内部をほぼ直進する照明光を遮るよう、かつ前記上部導光体の外周方向に広がるように屈曲した裾広がりな中空形状を有し、
さらに前記中部導光体に連続する前記下部導光体は上部導光体と直交するようほぼ水平方向に伸びる中空なフランジ形状を有し、
前記中部導光体の屈曲部位において、前記点光源素子から照射された前記照明光が該屈曲部位で生じる反射、拡散ないしは透過過程を介して前記導光体の内側および外側へと照射されるとともに、
前記下部導光体の外周縁においては、前記点光源素子から照射され前記中部導光体から導光された前記照明光が該外周縁で生じる反射、拡散ないしは透過過程を介して前記導光体の下側および上側へと照射される構成を採用した。
【0012】
あるいはさらに、前記導光体の中空部位に向けて照明光を照射すべく、前記上部導光体の上端面に配置された前記点光源素子とは異なる点光源素子が配置される構成を採用した。
【0013】
あるいはさらに、前記下部導光体の中空部位を覆うよう拡散部材が配置され、該拡散部材により中空の前記導光体の内側領域において照明光を拡散して前記導光体の下部方向に照射する構成を採用した。
【0014】
あるいはさらに、前記下部導光体の外周縁が前記下部導光体全体の伸びる方向に対して斜交する傾斜面として構成され、かつ該傾斜面に粗面加工が施されている構成を採用した。
【0015】
あるいはさらに、前記下部導光体の上面に粗面加工が施されている構成を採用した。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、導光体に上部導光体、中部導光体、および下部導光体から成る特徴的な形状を付与し、特に点光源素子から導光体の壁面内部に照射された照明光が該屈曲部位で生じる反射、拡散ないしは透過過程を介して導光体の内側および外側へと照射されるため、比較的ふんだんに照明装置後方(照明装置上方)への間接照明光を得られるとともに、不快なグレアを低減させることができ、また、下部導光体の外周縁において、点光源素子から照射され中部導光体から導光された照明光が該外周縁で生じる反射、拡散ないしは透過過程を介して導光体の下側および上側へと照射されるため、照明光を照射する実質的な発光部位に比較的大きな面積を確保できる優れた照明装置を提供することができる。
【0017】
また、導光体の中空部位に向けて照明光を照射すべく、上部導光体の上端面に配置された点光源素子とは異なる点光源素子を配置し、あるいはさらに、下部導光体の中空部位を覆うよう拡散部材が配置され、該拡散部材により中空の導光体の内側領域において照明光を拡散して導光体の下部方向に照射する構成を採用することにより、照明装置直下(照明装置前方)に比較的集中した配光分布を得ることができる。
【0018】
また、下部導光体の外周縁を下部導光体全体に対して斜交し粗面加工が施された傾斜面で構成することにより、該外周縁部でのグレアを低減するとともに、導光体の下側へ直接照明光、上側へ間接照明光を照射することができる。
【0019】
あるいはさらに、前記下部導光体の上面に粗面加工を施すことにより、下部導光体の部位における照明装置の前方への発光量を増大させることができ、また粗面加工の粗さなどを調節することにより、発光部の配光特性に関する仕様を適宜決定することができる。
【0020】
以上のようにして、本発明によって旧来の照明装置では得られない独特かつ好ましい照明特性を有する照明装置、特に比較的ふんだんに照明装置後方への間接照明光を得られるとともに、照明装置直下(前方)にも比較的集中した配光分布を得られ、しかも不快なグレアが少なく、かつ、照明光を照射する実質的な発光部位に比較的大きな面積を確保できる優れた照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を採用した照明装置の要部、特に中央部の断面構造を示した断面図である。
図2】本発明を採用した照明装置を上方から示した斜視図である。
図3】本発明を採用した照明装置を下方から示した底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明を実施するに好適な実施形態につき詳細に説明する。以下では天井埋め込みや釣り下げの形態で設置可能な照明器具を実施例として説明する。
【実施例】
【0023】
図1は本発明を採用した照明装置100の中央部の断面図、図2は同照明装置の上方からの斜視図、図3は同照明装置の底面図である。
【0024】
本実施例の照明装置100は、たとえば不図示の筐体や設置具(ワイヤやチェーンなど)を介して埋め込みないしは釣り下げなどの形式によって天井設置されることを想定して構成されている。
【0025】
図1および図2において、符号131および132は点光源素子としてのたとえばLED素子であり、本実施例の照明装置100はこれらLED素子131、132の照明光を全体がほぼ中空のたとえばベル型ともいうべき形状を有する導光体110を用いて導光、反射、ないしは拡散し、図の下方(照明装置100の前方。照明装置100が設置される天井から室内のユーザの作業面を向く方向)に直接的な照明光として照射するとともに、図の上方(照明装置100の後方。照明装置100が設置される天井面ないしその内部に向く方向)へ間接照明のための照明光として照射できるよう構成されている。
【0026】
本実施例の照明装置100は、光源としてのLED素子(下記の131、132)の配置、および導光体(同110)の形状を工夫することによって、主に照明装置100のほぼ前面における導光ないし拡散手段しか有していない従来装置(たとえば上述の特許文献1の装置)などよりもふんだんに図1図2の上方(照明装置100の後方)への間接照明のための照明光を照射でき、これにより図1図2の下方(照明装置100の前方)への照射光に関してはユーザに知覚されるグレアを低減できる。
【0027】
また、本実施例の照明装置100はその直下(照明装置100の前方、図の下方に相当)に比較的集中した配光分布を得られ、かつ、照明光を照射する実質的な発光部位に比較的大きな面積を確保でき良好な照明効率および照明特性を得られるよう構成されている。
【0028】
図1図2において、本実施例の導光体110は符号111、113、114で示す3つの部位から構成されている。以下では、便宜上これら3つの部位をそれぞれ上部導光体111、中部導光体113、下部導光体114と称する。
【0029】
これら導光体110の各部位111、113、114は別体で構成し、接着や嵌合などの適当な方法で相互に固着することも考えられるが、導光体110は上部から下部へとLED光源の照明光を効率よく導光できる必要があるため、導光体110の各部位111、113、114はアクリル樹脂などの導光材料から一体的に形成するのが好ましい。
【0030】
これらのうち上部導光体111は中空の円筒状であり、その上端面に円周状に複数(本実施例では8個)のLED素子131が均等な間隔で配置される。本実施例では、上部導光体111の上端面の円周上にLED素子131をそれぞれ収容可能な凹部115が設けられており、各凹部115には複数(8個)のLED素子131がそれぞれ収容される。
【0031】
LED素子131(および後述のLED素子132)は各LED素子に点灯電流を供給する回路基板130上に実装され、この回路基板130はたとえば上部導光体111の外周サイズとほぼ同等の直径を有する円盤状に構成され、上部導光体111の上端部に蓋をするよう装着される(固定方法は不図示のビスや位置決め部材を用いるなど任意である)。
【0032】
また、回路基板130の中央部で、上部導光体111の中空部位に相当する位置には複数(本実施例では4個)のLED素子132が実装される。好ましくは、LED素子131および132の配置位置は、たとえばそれぞれの素子が相互にほぼ等間隔となるような位置に選ばれる。
【0033】
上記のLED素子のうちLED素子131の照明光は導光体110の壁面内部に入射され、一方、LED素子132の照明光は中空の導光体110の内側の空気層に向けて照射される。LED素子131、132の照明光の光学的な振舞いについては、後でより詳しく説明する。
【0034】
なお、図2では回路基板130の図示は省略されており、LED素子131、132の位置のみを示してある。
【0035】
導光体110は以下のような構造を有する。
【0036】
導光体110の最上部を構成する上部導光体111の下部には裾広がりな(フレア)形状を有する中部導光体113が続き、中部導光体113のさらに下部は水平方向に伸びるフランジ形状の下部導光体114が続く。
【0037】
これら導光体110の上部〜中部〜下部111、113、114から成る導光体110の全体は、アクリル樹脂などの導光材料から一体的に形成(その手法は注型、あるいは削り出しおよび研磨など任意である)され、本実施例の場合、上部〜中部〜下部111、113、114は図示のようにほぼ同じ厚みで構成されている。
【0038】
導光体110の上部導光体111は、上端から下端に渡って内径および外径がほぼ等しい円筒状に構成されており、その下端からたとえば上部111の厚みを保ったまま適当な曲率で裾広がりに形成された中部導光体113へと連続している。
【0039】
なお、導光体110の上部111および中部113の連続する部位には、段差部112を設けることにより、LED素子131、132から導光体110の外部に漏れる光を遮光し、さらにグレアを低減する拡散部材もしくは反射部材を設置することもできる。
【0040】
さらに、中部導光体113が屈曲してほぼ上部導光体111とは直交する水平方向を向くあたりで、中部導光体113は水平方向に伸びるフランジ形状の下部導光体114へと連続している。
【0041】
下部導光体114の外周縁の部位は、テーパ状の傾斜面116として構成されている。この傾斜面116は下部導光体114全体の伸びる方向に対して斜交するような形状を有し、本実施例では下部導光体114の端部上面を斜めにカットした形状である。
【0042】
下部導光体114の外周端面は、最も簡単な構造では図の垂直方向に断ち切った形状とすることが考えられるが、その場合、主に該端面で生じる全反射によって(たとえば細く鋭い円周状の)グレアを生じるおそれがあるため、本実施例では図示のような傾斜面116を設けるとともに、本実施例ではさらにこの傾斜面116に破線で示すような粗面加工116b(いわゆる梨地加工やブラスト加工)を施してある。
【0043】
結果として、この粗面加工(116b)された傾斜面116の部位では、照明光の拡散、反射、ないしは拡散のランダム性が高められ、傾斜面116の部位から装置後方へ間接照明光を照射させると同時に、装置前方(作業面方向)への照明光を照射させることができる。特に、室内からユーザが見上げた時には、傾斜面116の部位は、照明装置100の最外周のリング状の照明部位(図3の116a)を構成することになる。
【0044】
なお、下部導光体114の上面にも傾斜面116の場合と同様に粗面加工114cを設けることもできるが、この点については後述する。
【0045】
一方、下部導光体114の開口部位の内周には円形の切り欠き部114aが設けられ、この切り欠き部114aの内周にほぼ一致するサイズの円盤形状の拡散部材120が下部導光体114の中空部位を覆うように装着されている。拡散部材120の固定方法は接着、ビス止めなど任意である。
【0046】
拡散部材120はたとえば乳白色アクリル樹脂などの材料から構成される。拡散部材120は均等な厚みの単純な円盤形状でもよいが、本実施例では中央上部がドーム上にわずかに盛り上がった凸レンズ状の断面形状に形成してある。
【0047】
拡散部材120は、LED素子132から導光体110内側の中空部位に照射された照明光を拡散して装置前方(作業面方向)へ照射(図1矢印C)するとともに、中部導光体113の凸状の内面113aで全反射された照明光および中部導光体113の内面113aから射出されるLED素子131からの照明光を拡散して装置前方(作業面方向)へ照射(図1矢印D)する。
【0048】
以下では、特にLED素子131から導光体110の壁面内部に照射された照明光の光学的な振舞いにつき、詳細に説明する。
【0049】
LED素子131から導光体110の壁面内部に照射された照明光は、上部導光体111の上端部から直進あるいは全反射を繰返して上部導光体111から中部導光体113の方向へと進む(図1矢印A、B)。
【0050】
図1に示すように、中部導光体113の部位は、上部導光体111の壁面内部を矢印AのようにLED素子131から(ほぼ)直進してくる照明光に対してはその進路を遮るよう、かつ上部導光体110の外周方向に広がるように屈曲している。
【0051】
したがって、中部導光体113の部位では、LED素子131の照明光はその内面113aを介して導光体110内側を透過するとともに(矢印D)、屈折、全反射(たとえば矢印H)、ないしは拡散の過程を経て中部導光体113の外面から中部導光体113の外側、照明装置100側方および後方へと照射される(矢印G)。
【0052】
また、中部導光体113の部位では、LED素子131の照明光の一部は全反射を繰返すなどして(矢印H)、さらに中部導光体113から下部導光体114へと導光体110の内部を進む(矢印E)。
【0053】
また、中部導光体113の屈曲部位では、拡散部材120の上面で反射されたり、導光体110の中空部で乱反射されたりした主にLED素子132起源の照明光が中部導光体113の内部に導入され、その一部は中部導光体113の外面から照明装置100側方および後方へと照射されるか、あるいは中部導光体113内部で全反射を繰返すなどして中部導光体113から下部導光体114方向に進むことになる。
【0054】
下部導光体114の内部を(ほぼ)水平方向に直進する照明光は最終的に下部導光体114の外周端部の粗面加工(116b)された傾斜面116に達し、傾斜面116の部位で乱反射され、装置側方および後方へ間接照明光として照射される(矢印F)とともに、また傾斜面116の部位で(乱)反射された照明光は装置前方(作業面方向)へと照射される(矢印I)。
【0055】
以上のようにして、本実施例の照明装置100は、導光体110を中空円筒状の上部導光体111〜外側にフレア状に広がる中部導光体113〜水平方向に伸びるフランジ状の下部導光体114から成る構造とし、上部導光体111端縁に配置したLED素子131により導光体110の壁面内部に照明光を照射するとともに、LED素子132から導光体110の中空の内部に照明光を照射する、導光体110底部の中空部を拡散部材120で覆う、下部導光体114の端縁を粗面加工(116b)された傾斜面116とする、といった特徴的な構造を有している。
【0056】
このため、中部導光体113の屈曲した部位、および下部導光体114端縁の粗面加工(116b)された傾斜面116からふんだんに照明装置100の後方への間接照明のための照明光を照射でき、これにより照明装置100の前方への照射光に関してはユーザに知覚されるグレアを低減できる。
【0057】
また、LED素子132から照明装置100の前方(作業面方向)に向かって導光体110の中空の内部に照射された照明光、あるいは中部導光体113の屈曲した部位から射出される照明光を導光体110底部の拡散部材120で拡散して照射することができるため、照明装置100はその直下(照明装置100の前方、図の下方に相当)に比較的集中した配光分布を得られる。
【0058】
さらに、下部導光体114端縁の粗面加工(116b)された傾斜面116を主に照明装置100の前方への照明光を照射するリング状の発光部として機能させることができ、照明光を照射する実質的な発光部位に比較的大きな面積を確保でき良好な照明効率および照明特性を得ることができる。
【0059】
ここで図3は照明装置100を底面から示しており、この状態は照明装置100を室内の天井に設置された照明装置100をユーザから見た状態に相当するが、照明装置100の底面中央部は図示のように照明装置100の前方(室内)方向へ主に散乱光を照射する拡散部材120の円形の発光面(120a)で構成されている。
【0060】
そして、円形の拡散部材120(120a)の周囲は下部導光体114の水平部分114bで囲まれた形になっているが、この部分114bでは下部導光体114それ自体から作業面方向へ射出される照明光の光量はかなり小さく、図3に同心円状に示した3つの部位120a、114b、116aで明暗の差が生じる可能性があるが、たとえば図1に示すように下部導光体114の上面に傾斜面116のものと同様の粗面加工114cを施し拡散面とすることで、この部分での反射特性を作業面(室内)方向に光を伝達させることができる。特に下部導光体114の上面に粗面加工114cを施した場合は、下部導光体114の水平部分114b(図3)はユーザーからはたとえば白色の発光部位として知覚される。
【0061】
さらに、下部導光体114の水平部分114bの周囲は下部導光体114端縁の傾斜面116となっており、この部分も上述の粗面加工(116b)によって拡散および反射特性が高められているため、室内のユーザからはたとえば白色の発光部位として知覚される。
【0062】
なお、たとえば下部導光体114の上面に粗面加工114cを設けない場合などにおいて下部導光体114の水平部分114bを透過して照射される照明光の光量が低ければ、下部導光体114端縁の傾斜面116の部位(116a)は拡散部材120の外周を離間して同心円状に囲むリング形状の白色の発光部位として知覚されることになる。
【0063】
一方、下部導光体114の上面に粗面加工114cを設けた場合には、この部分での反射および拡散により下部導光体114の水平部分114bを介して照射される間接照明光の光量が大きくすることができ、この場合には図3に同心円状に示した各部位120a、114b、116aの明暗の差異をそれほど目立たなくすることができる。
【0064】
したがって、用途や需要に応じて下部導光体114の上面に粗面加工114cを設けるか設けないか、あるいは粗面加工114cの粗さを調整することなどによってこの部分における反射ないしは拡散特性に関する仕様を適宜、決定しておくことにより、図3に同心円状に示した各部位120a、114b、116aに際立った明暗の差異を与えることができ、独特な発光部の形状を有する照明装置を構成するこができるし、また、これらの部位を明暗の差異の少ない一様な発光量を有する1つ発光面として機能させることもできる。
【0065】
以上のように、本実施例の照明装置は光源としてのLED素子131、132の配置、および導光体110に上記のような上部111、中部113、下部114から成る特徴的な形状を付与し、また、中空の導光体110の底面中央部を覆うように拡散部材120を設け、導光体110外周端縁に粗面加工(116b)された傾斜面116を配置する、といった特徴的な構造を採用しており、旧来の照明装置では得られない独特かつ好ましい照明特性を有する照明装置、たとえば比較的ふんだんに照明装置後方への間接照明光を得られるとともに、照明装置直下(前方)に比較的集中した配光分布を得られ、しかも不快なグレアが少なく、かつ、照明光を照射する実質的な発光部位に比較的大きな面積を確保できる優れた照明装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
110 導光体
111 上部導光体
112 段差部
113 中部導光体
114 下部導光体
116 傾斜面
120 拡散部材
130 回路基板
131、132 LED素子
図1
図2
図3