(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208691
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】安定な酸化セリウム有機コロイドの改良された生成方法
(51)【国際特許分類】
C01G 49/00 20060101AFI20170925BHJP
C10L 1/12 20060101ALI20170925BHJP
C01F 17/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
C01G49/00 D
C10L1/12
C01F17/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-555663(P2014-555663)
(86)(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公表番号】特表2015-512843(P2015-512843A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】US2013023790
(87)【国際公開番号】WO2013116300
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】61/632,778
(32)【優先日】2012年1月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514193096
【氏名又は名称】セリオン エンタープライジズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】プロク ゲイリー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ スティーブン チャールズ
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−172592(JP,A)
【文献】
特開昭53−012907(JP,A)
【文献】
特開昭62−038236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
B01J 21/00−38/74
C01F 1/00−17/00
C01G 49/00−49/08
H01F 1/12−1/38
H01F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイド分散液を調製するためのプロセスであって:
(a)セリウム含有酸化物ナノ粒子の水性コロイド分散液を調製する工程;
(b)非極性の溶媒及び両親媒性材料を添加する工程;
(c)工程(b)の液体混合物を混合して、エマルジョンを形成する工程;
(d)エマルジョンを20℃から60℃未満の温度に所定の時間加熱し、その後、エマルジョンが非極性のコロイド相とレムナント水相に分離する工程;及び
(e)セリウム含有酸化物ナノ粒子の分離した非極性のコロイド分散液を収集する工程
を含み、
前記方法は、前記少なくとも1種のグリコールエーテルを、工程(e)の前であって、工程(b)の間、工程(c)の後、又は工程(d)の間に添加することと、前記少なくとも1種のグリコールエーテルを、工程(e)の後、収集された前記セリウム含有酸化物ナノ粒子の非極性のコロイド分散液に添加することと
を更に含み、
前記グリコールエーテルは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれ、
前記非極性の溶媒、前記両親媒性材料、及び前記グリコールエーテルの量は、前記非極性の溶媒、前記両親媒性材料、及び前記グリコールエーテルの全量に基づいて、それぞれ、50〜63質量%、25〜33質量%、及び5〜25質量%である、前記プロセス。
【請求項2】
前記時間が、8時間以内の範囲にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記グリコールエーテルが、工程(d)の間に全体として添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記グリコールエーテルが、工程(c)の終わりの0〜4時間後に添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記グリコールエーテルが、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記両親媒性材料が、6〜22個の炭素原子を有するモノカルボン酸である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記モノカルボン酸が、オレイン酸である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記セリウム含有酸化物ナノ粒子が、Ce(1−x)FexO(2−δ)(ここで、xは0.01〜0.8の範囲にあり、δは1〜2の範囲にある)の組成式を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
セリウム含有酸化物ナノ粒子の前記水性コロイド分散液が、従来のナノ粒子単離工程を含まずに調製され、それにより、工程(a)のナノ粒子合成反応混合物から得られる水性コロイドを直接用いる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
請求項1に記載のセリウム含有酸化物ナノ粒子の非極性のコロイド分散液を、燃料添加剤の成分として燃料に添加することを含む、セリウム含有酸化物ナノ粒子の非極性のコロイド分散液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年1月30日に出願された仮出願番号61/632,778、IMPROVED METHOD FOR PRODUCTION OF STABLE CERIUM OXIDE ORGANIC COLLOIDSに対する優先権の恩典を主張するものであり、この開示内容は本願明細書に全体として援用されている。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的には、コロイドナノ粒子分散液、より詳細には、低極性を有する溶媒中のドープされた又はドープされていない酸化セリウムコロイド分散液の改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
セリウム含有酸化物ナノ粒子は、出現する多くの技術的適用と共に、現在多くの工業的使用がある。セリウム含有酸化物ナノ粒子は、例えば、自動車排気三元触媒、自動車燃料添加触媒、水性ガスシフト反応触媒、研磨及び平坦化剤、固体酸化物燃料電池、ハイブリッド太陽電池、紫外線サンブロッカーにおいて重要な成分として周知である。金属酸化物の生成には、特に、水性沈殿、水熱沈殿、噴霧沈殿、燃焼、プラズマ堆積及び電気化学的手法を含めて多くの合成プロセスがある。種々の溶媒がこれらの合成プロセスに用いることになるが、高材料スループットが望ましい製造プロセスには水性反応化学が特に好ましい。しかしながら、従来の水性プロセス - 特に沈殿 - は、しばしば時間とエネルギーを要するだけでなく、集中的な設備のある多工程を含むのでコストがかかる。
従来の大規模な金属酸化物製造プロセスは、典型的には3段階: 前駆体化合物の水性沈殿、化学反応を促進し且つ結晶化度を高める焼成、続いて最終粒径調整に分けることができる。更に詳細には、水性沈殿には、反応物送達、反応物分散、粒子沈殿、単離、洗浄、乾燥、及び任意の他の金属イオンによる含浸の初期工程が含められ; 焼成には、400〜1000℃に数時間加熱することが含まれ; 続いて他の工程の中に、粉砕、微粉砕又は分級して、最終粒径を調整することが含まれる。
【0004】
水性調製における工程数を減少させる一方法は、最初の反応物から直接最終粒子の安定な水性分散液(懸濁液、コロイド、ゾル)を生成し、それにより粒子沈殿、単離、及び乾燥の工程に固有な時間、コスト及び潜在的汚染を回避する方法を使うことである。更に、そのような直接法で生成される粒子が充分に純粋であり、粒子の化学組成が所望される通りであり、且つ粒子が充分に結晶性である場合には、焼成工程は除外されてもよい。更に、そのような直接法によって生成される粒径及び粒度分布が実質的に所望される通りである場合には、破砕、微粉砕及び分級の工程は除外されてもよい。沈殿、単離、乾燥、焼成、粉砕、微粉砕又は分級の工程を用いずに結晶セリウム含有酸化物ナノ粒子の水性分散液(懸濁液、コロイド、ゾル)を生成する直接法は、A.G. DiFrancescoらによる共同譲渡された米国特許出願番号12/779,602、現在は米国特許出願公開第2010/0242342A1号明細書に記載されている。'342の引例には、サイズ範囲、例えば、1〜5ナノメートルの結晶セリウム含有ナノ粒子の安定な水性分散液が開示されている。
金属酸化物ナノ粒子の安定な水性分散を調製する合成プロセスから製造工程を除外する点に実質的な進展がなされたが、燃料添加燃焼触媒のような用途におけるこれらのナノ粒子の使用には、これらのナノ粒子の分散液が燃料中でコロイド安定性を示すことが必要である。そのような安定性は、燃料に混和できる燃料添加剤にも必要とされる。従って、これらの粒子は、容易に形成され高度に極性の水性相に懸濁されるにもかかわらず、次に実質的に非極性の相、溶媒移行として知られているプロセスへ移動されなければならない。この問題は、従来は、粒子安定剤の使用によって対処されている。しかしながら、水性環境において粒子凝集を防止するために用いられるほとんどの粒子安定剤は、非極性環境における安定化作業には適していない。非極性溶媒中に入れたときに、そのような粒子は直ちに凝集し、その結果として、全てとまではいかないが、これらの望ましい微粒子特性の一部を失う傾向がある。安定剤を変えると、困難な置換反応又は別個の時間のかかる単離及び再分散方法、例えば、数日かかるはずであり且つ多分散粒径分布を生じる傾向があるボールミル粉砕プロセスを用いて、例えば、沈殿及び続いての新規な安定剤による再分散が必要とされ得る。
【0005】
溶媒移行プロセスを簡易化する一方法は、ダイアフィルトレーション方法及び水の極性と非極性炭化水素の極性の間の中間の極性を有するグリコールエーテル溶媒を使うものである。次に、Alstonらに共同譲渡された米国特許出願番号12/549776、現在は米国特許出願公開第2010/0152077A1号明細書にて開示されているように、中間の極性コロイドを更に移行して、セリウム含有ナノ粒子分散液の極性を低下させる。時にはクロスフロー精密ろ過と呼ばれるダイアフィルトレーションは、半透膜に接するバルク溶媒フローを使うタンジェンシャルフローフィルトレーション方法である。しかしながら、ダイアフィルトレーション方法の欠点には、以下のもの: ろ過速度が比較的に遅い、設備のかなりの財政投資(例えばポンプやマイクロフィルタ)、及び比較的大量の廃溶媒の生成(例えばいくつかの回転容積)が含まれる。
水性から非極性の溶媒まで酸化鉄ナノ粒子の移動を加速するプロモーター物質の使用は、従来技術において知られている。Blanchardらの米国特許第7,459,484号明細書には、アルコール機能性を有し且つ移動を促進し、また、そのようにして形成された有機コロイドの安定性を改善する6〜12個の炭素原子を有するプロモーター材料の使用が開示されている。Blanchardらの米国特許出願公開第2006/0005465A1号明細書には、希土類又は混合希土類/他の酸化物ナノ粒子の塩基性水性コロイドと酸及び希釈剤とを接触させて有機コロイド分散液を形成することが開示されている。Chane-Chingらの米国特許第6,271,269号明細書には、酸化セリウム又はドープされた酸化セリウムコロイド粒子の対応物の水性分散液からの直接移動が開示されている。アルコールベースのプロモーターの使用も同様に開示されている。しかしながら、コロイド微粒子の移動のための高いプロセス温度と長い時間は、従来のプロセスのかなりの制約を表している。イオン成分、及び水性反応混合物中でコロイド微粒子材料の形成をもたらすために必要とされる他の材料の存在に対する懸念が直接プロセスの実行可能性に影響を及ぼすことも明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、セリウム含有ナノ粒子の水性分散液の生成及び溶媒移動のコストを減少させる点で進展があった。しかしながら、特に燃料添加剤の低極性溶媒担体又は燃料自体の双方の分散安定性を必要とする燃料添加燃焼触媒として用いられるナノ粒子分散液の場合に製造効率の更なる改善が望ましい。
低温において、ナノ粒子が形成される水性沈殿反応混合物から直接酸化物ナノ粒子を実質的に非極性相に移動させて、可燃性液体を取扱う際の製造の危険性を減じることが非常に望ましい。同時に、燃料添加剤であるナノ粒子コロイド分散液が低周囲温度においてコロイド安定性が優れ且つ流体流れ特性が良好であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、低極性を有する溶媒系においてドープされた又はドープされていない安定な酸化セリウムナノ粒子分散液を製造するための簡単で急速な低温プロセスを提供する種々の実施態様を有する。
第1の態様において、本発明は、従来のセリウム含有酸化物ナノ粒子水性分散液を用いる改善されたプロセスに関する。水性分散液のナノ粒子を、1つ以上の両親媒性材料、1つ以上の低極性溶媒、及びグリコールエーテルプロモーター材料を含む実質的に非極性の液体へ移動させる。水性分散液と実質的に非極性の液体を混合し、ここで、エマルジョンが形成され、続いてレムナント極性溶液と実質的に非極性の分散相へ相分離され、次に実質的に非極性(低極性)分散相が収集されることによって、移動が達成される。プロモーターは、ナノ粒子の低極性相への移動速度を上げるように機能し得る。プロモーターは、相分離を加速することができ、最終の実質的に非極性の分散相の分散安定性を改善することもできる。具体的な実施態様において、グリコールエーテルプロモーターは、ナノ粒子の低極性相への高抽出収率を与えつつ相分離を達成するのに必要な温度を低下させる。低温及び処理の間の温度の時間短縮は、プロセスエネルギーコストが安くなり、更に、処理の間、しばしば可燃性の有機低極性溶媒を管理する際の危険のリスクを減少させるだけでなく、設備及び施設の要求を簡易化するという利点を有する。
【0008】
少なくとも1つの実施態様において、コロイド分散液を調製するためのプロセスは:
(a)セリウム含有酸化物ナノ粒子の水性コロイド分散液を調製する工程;
(b)実質的に非極性溶媒、両親媒性材料、及び少なくとも1種のグリコールエーテルを添加する工程;
(c)工程(b)の液体混合物を混合して、エマルジョンを形成する工程;
(d)エマルジョンを所定の温度に所定の時間加熱し、その後、エマルジョンが実質的に非極性のコロイド相とレムナント(remnant)水相に分離する工程; 及び
(e)セリウム含有酸化物ナノ粒子の分離した実質的に非極性のコロイド分散液を収集する工程
を含む。
第2の態様において、本発明は、形成された水性反応混合物から従来のセリウム含有酸化物ナノ粒子沈殿物が収集される改良されたプロセスに関する。収集は、ろ過、遠心分離等によることができ、水性反応混合物から不必要な成分を除去する洗浄を含めてもよい。次に、洗浄したナノ粒子は、粉末又はペーストの形であってもよい。次に、ナノ粒子を水性相に再分散させる。水性分散液のナノ粒子を、1つ以上の両親媒性材料、1つ以上の低極性溶媒、及びグリコールエーテルプロモーター材料を含む実質的に非極性の液体へ移動させる。水性分散液と実質的に非極性の液体を混合し、ここで、エマルジョンが形成され、続いてレムナント極性溶液相と実質的に非極性分散相へ相分離し、次に実質的に非極性(低極性)の分散相が収集されることによって、移動が達成され得る。プロモーターは、ナノ粒子の低極性相への移動速度を上げるように機能し得る。プロモーターは、相分離を加速することができ、最終の実質的に非極性の分散相の分散安定性を改善することもできる。具体的な実施態様において、グリコールエーテルプロモーターは、ナノ粒子の低極性相への高抽出収率を与えつつ相分離を達成するのに必要な温度を低下させる。低温及び処理の間の温度の時間短縮は、プロセスエネルギーコストが安くなり、更に、処理の間、しばしば可燃性の有機低極性溶媒を管理する際の危険のリスクを減少させるだけでなく、設備及び施設の要求を簡易化するという利点を有する。
【0009】
第3の態様において、本発明は、水性ナノ粒子の単離及び洗浄の従来の工程が除外されている改良されたプロセスを提供し、従来技術のプロセスを劇的に簡易化することにより、プロセス廃棄物を減じつつプロセス温度を有意な経済的利点まで低下させる。プロセス簡易化は、ナノ粒子の抽出のためのナノ粒子合成反応混合物から得られる水性コロイドを直接用いて、実質的に非極性の分散液を形成することにより達成され得る。水性コロイドは、1つ以上の両親媒性材料及びグリコールエーテルプロモーター材料と共に、実質的に非極性の溶媒又は溶媒混合物と混合して、エマルジョンを形成することができる。エマルジョンは、低プロセス温度で低極性コロイド相とレムナント水性溶液相へ急速に分離する。実質的に非極性のコロイドが収集され、それによって、水相に存在する汚染物をほぼ完全に含まない安定な実質的に非極性の分散液を得ることができる。プロモーター材料は、プロセス温度を低下させつつ、エマルジョンの分離を加速させ、低極性分散液を安定化し、且ついくつかの実施態様においては、低極性分散液に望ましい低温流れ特性を達成するように機能し得る。
他の態様においては、本発明は、第1の態様の変形例であって、グリコールエーテルプロモーターの添加に、水性分散液相、実質的に非極性の溶媒、及び両親媒性材料を混合することから形成されるエマルジョンのための熟成(すなわち保持)時間を続ける、前記変形例に関する。
【0010】
他の態様においては、セリウム含有酸化物ナノ粒子の水性分散液相から実質的に非極性の分散液相への本発明の移動プロセスは、低プロセス温度で及び/又はナノ粒子の実質的に非極性の分散液相への実質的に完全な移動によって達成され得る。
更なる態様において、本発明は、グリコールエーテル化合物、又は該化合物の混合物を分離した実質的に非極性の分散液に更に添加することによって、低プロセス温度で安定な実質的に非極性の分散液で、且つ望ましい低温流れ及び他の特徴を有するセリウム含有酸化物ナノ粒子を提供する。
更に他の態様においては、本発明の移動プロセスは、分散液の有効な動作温度範囲よりも優れた分散安定性を有するナノ粒子の急速で完全な移動によってセリウム含有酸化物ナノ粒子の実質的に非極性の分散液を提供する。
なお更なる態様においては、本発明は、酸化セリウム及び酸化鉄を含むナノ粒子の実質的に非極性の分散液が燃料添加剤である、上で記載されたプロセスに関する。本発明のプロセスによって生成される燃料添加剤は、イオン成分、水性安定剤材料、及び自由水からの汚染を減じたことを特徴とし、このような成分は水性合成反応混合物に由来している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一組の例示的な非極性溶媒、両親媒性物質、及びグリコールエーテルプロモーターの組み合わせを表している三成分状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
多くの最終使用の適用の有効性に対して、約100nm未満から約3nm未満までの範囲にある平均直径を有するナノ粒子粒度分布が有効である。
本明細書に用いられる用語分散、コロイド、懸濁液、ゾル、コロイド分散液、及びコロイドの分散液は、同じ意味で用いられ、連続相(例えば、液体又は他の溶媒媒体)中の不連続相(例えば、ナノ粒子)の安定な二相混合物を意味する。
本明細書に用いられる用語セリウム含有酸化物としては、ドープされた及びドープされていない酸化セリウムが含まれる。ドープされた酸化セリウム化合物としては、式Ce
(1-x)M
xO
(2-δ)(ここで、Mは2価又は3価の金属であり、δは酸素空孔を示している)を有する化合物が含まれる。ドーパント金属Mが、酸化セリウム結晶構造に置換的に又は介在的にドープされていることに加えて、金属Mの酸化物として、別個のナノ粒子又はナノ結晶としてか、又は他のドープされた又はドープされていない酸化セリウムナノ結晶と凝集(複合)したナノ粒子又はナノ結晶として存在し得ることが化学技術における当業者によって認識されなければならない。種々の実施態様において、置換的にドープされた又はドープされていない結晶酸化セリウム相から構成されたナノ粒子が存在する。他の実施態様においては、非晶質金属酸化物相、例えばアモルファス酸化鉄相から構成されるナノ粒子が存在する。種々の実施態様において、ドーパント金属Mは、Fe、Zr、Pd、Pt、Ag、Co、Cu、及びNiである。具体的な実施態様において、Ce
(1-x)Fe
xO
(2-δ)(ここで、xは約0.01〜0.8又は約0.5〜0.7の範囲にあり、δは約1〜2、例えば、約1.5〜2の範囲にある)の組成式のナノ粒子が本発明のプロセスにおいて使われる。
【0013】
本発明は、部分的には、低プロセス温度において、ドープされた又はドープされていない酸化セリウムナノ粒子又はその混合物の水性溶媒から実質的に非極性の溶媒への抽出又は移動を援助する際のある種のグリコールエーテルの有効性の発見によるものである。特に、水性コロイド溶液と、低極性溶媒又は低極性溶媒の混合物、1つ以上の両親媒性材料、及び1つ以上の特定のグリコールエーテルを含める実質的に非極性の材料(液体)とを混合することによって形成される水性相と実質的に非極性のコロイド相の相分離を加速するためのグリコールエーテル、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGME)の選択が、本発明者らによって発見された。水性コロイドと実質的に非極性の材料(液体)を混合すると、エマルジョンが形成される。ある特定のグリコールエーテルの存在下に、エマルジョンは、室温又はやや高温において、水溶液相と、水性コロイド、両親媒性材料、及び一部のグリコールエーテルからのナノ粒子の実質的に全てを含有する実質的に非極性のコロイドに分離する。ナノ粒子が実質的に呈色している具体的な実施態様においては、水性相から非極性相へのナノ粒子の移動の効率又は程度は、目視観察によって質的に評価され得る。
具体的な実施態様において、追加のグリコールエーテル材料を実質的に非極性のコロイドに添加して、コロイド安定性を強化させ、低温流れ特性を強化させ、且つ/又は実質的に非極性のコロイドの引火温度を上昇させ得る。他の実施態様において、低温流れ特性及び引火点を修正するのに有効な材料、実質的に非極性のコロイドとしては、アルコールやジオールのような低分子量有機液体が含まれる。
【0014】
具体的な実施態様において、グリコールエーテルプロモーターは、ナノ粒子の有機相への高抽出収率を与えつつ相分離を達成するのに必要な温度を低下させることができる。低温及び処理の間の温度の短い時間は、プロセスエネルギーコストが安くなり、更に、処理の間、可燃性の有機低極性溶媒を管理する際の危険のリスクを減少させるだけでなく、設備及び施設の要求を簡易化するという利点を有する。
上で述べたように、Chane-Chingらの米国特許第6,271,269号明細書には、対応する水性分散液から酸化セリウム又はドープされた酸化セリウムのコロイド粒子の直接移動が開示されている。移動反応のために開示された温度の範囲は60℃より高い温度から150℃まで、好ましい範囲は80〜100℃である。開示された実施例は、90℃で行われた。
具体的な実施態様において、実質的に非極性(低極性)の溶媒としては、脂肪族炭化水素及びその混合物、及び脂環式炭化水素及びその混合物が単独で又は組み合わせて含まれる。他の実施態様において、非極性溶媒としては、ディーゼル燃料、バイオディーゼル燃料、ナフサ、灯油、ガソリン、及び市販の石油誘導体、例えばイソパラフィン留出物(例えば、Isopar(登録商標))、水素処理した石油留出物(例えば、Bradford, PA(USA)のAmerican Refining Group, Ltdから入手可能なKensol(登録商標)48H及びKensol(登録商標) 50H; 又はCotton Valley, LA (USA)のCalumet Lubricants Co.から入手可能なCalumet 420-460)が含まれる。不飽和結合を有する成分の硫黄分が低く、引火点が高く、且つ濃度が低いことから、本発明の燃料添加剤用途の成分として具体的な実施態様においてKensol(登録商標)48H及び50Hが用いられる。ある濃度の芳香族を有する溶媒、例えば、Solvesso(登録商標)型溶媒が本発明のために有効であり得る。特に好ましい実質的に非極性溶媒の選択のための他の推進力が低コストであってもよい。種々の実施態様において、実質的に非極性溶媒は、エマルジョン混合物を形成するために用いられる全体の実質的に非極性の液体の約50〜65質量%を含んでいる。
【0015】
具体的な実施態様において、両親媒性材料としては、6〜22個の炭素原子を有するモノカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、及びこれらの組み合わせが含まれる。具体的な実施態様において、モノカルボン酸材料としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、及びこれらの異性体が単独で又は組み合わせて含まれる。具体的な実施態様において、ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸の誘導体、例えばポリイソブチレンコハク酸、及びその無水物が含まれる。両親媒性材料は、非極性炭化水素希釈剤、例えば灯油、イソパラフィン、水素処理された石油留出物に可溶であり、また、ほとんどの炭化水素燃料、例えばガソリン、ディーゼル、バイオディーゼル、潤滑油と適合するという特徴を有し得る。種々の実施態様において、両親媒性材料は、エマルジョン混合物を形成するために用いられる全体の実質的に非極性の液体の約25〜33質量パーセントを含んでいる。
具体的な実施態様において、グリコールエーテルプロモーターとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール-モノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及びこれらの混合物が含まれる。具体的なグリコールエーテルプロモーターの選択は、部分的には、ナノ粒子の水性相から実質的に非極性の相への抽出の低温促進の効力に基づくものであり得る。存在するグリコールエーテルのレベルが感受性であり得るが、安定な高収率の実質的に非極性コロイドを得るエマルジョンの分離の有益な促進に対して閾値があることがわかった。更に下で述べられるように、非極性溶媒、両親媒性物質、及びグリコールエーテルの三成分の組み合わせの混和性と安定性の問題は、プロセス及び最終生成物におけるグリコールエーテルの適切なレベルの決定の要因でもあり得る。グリコールエーテルの個々の選択及び相対量の他の問題には、コスト、低温流れ、引火点、及び健康/環境への配慮に関して生成物の要求を満たしていることが含まれる。種々の実施態様において、グリコールエーテルプロモーターは、エマルジョン混合物を形成するために用いられる全体の実質的に非極性の液体の約5〜25質量%を含んでいる。
【0016】
非極性相に直接移動又は抽出されるドープされた又はドープされていない水性酸化セリウムコロイドは、多くの既知の方法に従って形成され得る。例えば、Reedらの現在は米国特許出願公開第2010/0242342号明細書として公開されている同時係属中の米国出願第12/779,602号明細書に記載されているものが適用でき、この明細書の記載は本願明細書に援用されている。本発明のいくつかの実施態様において、その反応容器内で形成されるような水性コロイドは、水性コロイドが反応物のレムナント及び追加物を含む構成成分を有するとしても、実質的に非極性のコロイド相への移動に直接有効である。他の実施態様において、他の周知のプロセスを用いて水性コロイドとして形成されるナノ粒子は、単離され、洗浄され、次に水中に再分散されて、本明細書に述べられる本発明の移動プロセスの出発材料として使用し得る他の水性コロイドを形成することができる。
具体的な実施態様において、エマルジョンの形成、水性相と実質的に非極性の相の間のナノ粒子の移動、及びエマルジョンの分離のための温度範囲は、約20℃〜60℃の範囲にあり得る。具体的な実施態様において、短い時間量で高収量及び結晶化度を与えるために水性ナノ粒子合成の終わりにナノ粒子が直接形成される水性コロイドがしばしば実質的に40℃より高くなることから、約40℃の温度が用いられる。そのようにして形成された水性コロイドは、好都合には室温で、非極性成分を含むその他の材料と組み合わせたときに、ほぼ40℃の温度でエマルジョンを生じる。従来技術のプロセス温度と比較したそのような低温は、本発明の方法によってもたらされた重要な利点である。及びほぼこの温度で、具体的な実施態様において、本発明のグリコールエーテルプロモーターの存在によりエマルジョンを約1〜4時間以内に二相に分離させ、ナノ粒子が水性相から非極性相へ実質的に完全に抽出される。
【0017】
具体的な実施態様において、グリコールエーテルプロモーターの添加の前に、セリウム含有酸化物水性コロイド、実質的に非極性溶媒、及び両親媒性材料(例えば有機酸)の混合から形成されるエマルジョンを、所定の時間熟成(保持)することが有益であり得ることがわかった。種々の実施態様において、熟成(保持)温度は20〜60℃の範囲であり、熟成(保持)時間は0〜8時間、0〜4時間、又は0〜2時間の範囲である。
本発明者らは、非極性溶媒 - Kensol(登録商標) 50H、両親媒性材料 - オレイン酸、及びプロモーター - DEGMEを含む組み合わせ液体の三成分状態図を調べた。
図1は、室温における三成分系を示す三成分状態図である。2つの領域があることに留意されたい: 領域Aは、成分の3つの全てが混和できる単相液体に特徴を有する。領域Bは、2つの液相への分離に特徴を有する。単相領域にあるように3つの成分の比率を選択し、同時に生成物の他の望ましい特徴、例えば、有機コロイド(ゾル)生成物の長時間コロイド安定性を最適化することできることが好ましい。製造プロセス温度及び生成物暴露温度、高温及び低温双方に対するコロイド安定性が考慮されることを必要とする場合がある。関係がある生成物の特徴には、低い作業温度(冷たい屋外の周囲温度)における流動性及びより高い潜在的暴露温度における引火点が含められ得る。好都合に、また、予想外に、いくつかの実施態様において、三成分図の3つの材料の生成物比は、ナノ粒子の水性コロイドから実質的に非極性のコロイドへの抽出のために理想的な組成を提供している。
【0018】
いくつかの実施態様において、ナノ粒子の水性相から実質的に非極性の相への低温抽出が高剪断混合によりエマルジョンを形成することによって加速されることがわかった。
いくつかの実施態様において、本発明のプロセスによって生成される最終有機コロイド材料の分析によって、ナノ粒子が最初に形成された水性反応混合物の成分を実質的に含まないことが明らかである。水、硝酸塩、及びナノ粒子安定剤(例えばメトキシ酢酸)のレベルは、Alstonらに共同譲渡された米国特許出願第12/549,776号明細書、現在は米国特許出願公開第2010/0152077 A1号明細書に開示された比較プロセスよりも全て低かった。分析によって、1つ以上のグリコールエーテルプロモーター材料の一部が相分離後に水性相に保持され得ることも明らかである。必要により、以前に述べた問題に従って、単離された実質的に非極性のコロイドにグリコールエーテルの追加量が添加されてもよい。
本発明及びその利点を更に例示するために、下記の実施例を示すが、個々の実施例が限定していないことが理解される。
【実施例】
【0019】
実験の項
Ce
0.6Fe
0.4O
(2-δ)ナノ粒子水性分散液の調製
3つの混合バッフルを有する11リットルの丸底のType-316ステンレス鋼ケトル又は反応器に蒸留水(Kettle Water)を添加し、70℃に維持した。インペラを用いて、水を充分な速度で撹拌して、良好な混合を得た。次に、反応器に98%のメトキシ酢酸を添加した。インペラブレードに向けた2溶液導入噴流を反応器に入れ、固定した。水酸化アンモニウム溶液を69.3ml/分の速度の一方の噴流によってポンプで送った。セリウム-鉄含有溶液(334.5グラムのCe(NO
3)
3・6H
2O及び207.5グラムのFe(NO
3)
3・9H2Oを蒸留水で625mlにする)を125ml/分の送出量でもう一方の噴流によってポンプで送った。セリウム-鉄溶液を15mlの蒸留水で追い出してデリバリラインからパージした。次に、3つ目の噴流を用いて50% H
2O
2溶液を9.38ml/分で反応器にポンプで送り、続いて蒸留水で簡単にフラッシュした。反応混合物を70℃で更に60分間保持し、その後、20℃に冷却し、それがそこにおいて、安定なCe
0.6Fe
0.4O
2-δナノ粒子水性コロイド分散液を得、δは約1.5〜2の間である。
透過型電子顕微鏡(TEM)グレインサイジングにより、2.5±0.5nmの粒径が示された。電子回折により、異なったCeO
2立方蛍石電子回折パターンが示された。結晶酸化鉄相に特有の電子回折ピークは、検出されなかった。超高分解能TEM及び電子エネルギー損失分光により、結晶酸化セリウムの豊富な領域及びアモルファス酸化鉄の豊富な領域から構成される複数の複合ナノ粒子が示された。
【0020】
実施例 1
上記のように調製したCe
0.6Fe
0.40O
(2-α)水性ナノ粒子分散液の100mlのアリコートを500mlの反応容器に添加し、約60℃の温度に加熱した。次に、Kensol(登録商標) 50Hの74.0mlのアリコート及び37.6gのオレイン酸を添加し、これらの2つの材料は添加時に室温であった。容器を1分間手で振盪することによって混合物を撹拌し、エマルジョンを形成した。次に、エマルジョン混合物を40℃に保持して、2時間熟成した。次に、30mlのDEGMEをエマルジョンに添加し、約4時間分離して、ほとんど無色の水性相の上に、安定な暗褐色の混濁していない実質的に非極性のコロイド相を得た。非極性コロイド相をピペットで外へ分離した。100mlの分離した有機コロイド相に13.9mlのDEGME及び7.2mlのPGMEを添加した。上記の非極性コロイドの試料の長時間安定性観察を行い、試料を別々の10mlのバイアル内に保持した。一方を室温(約20℃)に保持し、もう一方を40℃保持した。6ヶ月の終わりに、非極性コロイドは本質的に非混濁のままであり、沈殿した沈殿物を含まなかった。
【0021】
実施例2
上記のように調製したCe
0.6Fe
0.4O
(2-α)水性ナノ粒子分散液の100mlのアリコートを500mlの反応容器に添加し、約60℃の温度に加熱した。次に、Kensol(登録商標) 50Hの75.0mlのアリコート及び35.9gのオレイン酸を添加し、これらの2つの材料は添加時に室温であった。容器を1分間手で振盪することによって混合物を撹拌した。次に、エマルジョン混合物を40℃に保持して、2時間熟成した。次に、30mlのDEGMEをエマルジョンに添加し、40℃に戻し、約4時間で完全に分離して、ほとんど無色の水性相の上に、安定な暗褐色の混濁していない実質的に非極性のコロイド相を得た。非極性コロイド相をピペットで外へ分離した。100mlの分離した有機コロイド相に12.2mlのDEGME及び9.1mlのPGMEを添加した。
上記の非極性コロイドの試料の長時間安定性観察を行い、試料を別々の10mlのバイアル内に、一方を室温(約20℃)に保持し、もう一方を40℃に保持した。6ヶ月の終わりに、非極性コロイドは本質的に混濁していないままであり、沈殿した沈殿物を含まなかった。低温安定性を-17℃で点検し、試料が混濁していない液体のままであり、沈殿物を含まないことがわかった。
【0022】
実施例 3
上記のように調製したCe
0.6Fe
0.4O
(2-δ)水性ナノ粒子分散液の500mlのアリコートを、約60℃の温度に加熱し、2Lの反応容器へ移した。液体を反応容器の中へ下げた1-9/16" R100(Rushton)インペラによって撹拌した。反応容器の底よりわずかに上にミキサーヘッドを位置決めした。ミキサーを1690rpmに設定した。370mlのKensol 50Hと188gのオレイン酸の混合物を、室温で、30秒間かけて容器に添加した。次に、全部の混合物を1750rpmで2分間撹拌し、結果としてエマルジョンが形成した。次に、反応をマグネチックスターラの付いたホットプレートへ移動し、高速度設定の2-1/2"磁気棒を用いて撹拌した。次に、50mlのDEGMEを15秒間かけて添加した。次に、容器を約45℃の温度で撹拌せずに保持した。約4時間後、エマルジョンが完全に分離して、水性レムナント相の上に約600mlの暗褐色の混濁していない有機コロイドを得た。
ガスクロマトグラフィー質量分析法による有機コロイドの分析から、上記のように調製したCe
0.6Fe
0.4O
(2-δ)水性ナノ粒子分散液中に検出可能な量のメトキシ酢酸、ナノ粒子安定剤が存在しないことが示された。最終の有機コロイド中のメトキシ酢酸のこの減少は、米国特許出願公開第2010/0152077号明細書にAlstonらにより記載された溶媒移動プロセスによって調製される同様のナノ粒子の有機分散液に相対して長時間安定性の改善に付随したものである。
本発明を特にそのある種の好ましい実施態様に関連して詳述してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって、本発明の範囲内で変更及び修正が行われ得ることが理解されるであろう。
以下、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
コロイド分散液を調製するためのプロセスであって:
(a)セリウム含有酸化物ナノ粒子の水性コロイド分散液を調製する工程;
(b)実質的に非極性の溶媒、両親媒性材料、及び少なくとも1種のグリコールエーテルを添加する工程;
(c)工程(b)の液体混合物を混合して、エマルジョンを形成する工程;
(d)エマルジョンを所定の温度に所定の時間加熱し、その後、エマルジョンが実質的に非極性のコロイド相とレムナント水相に分離する工程; 及び
(e)セリウム含有酸化物ナノ粒子の分離した実質的に非極性のコロイド分散液を収集する工程
を含む、前記プロセス。
[2]
前記温度が、約20℃から60℃未満までの範囲にある、項目1に記載のプロセス。
[3]
前記時間が、0〜8時間の範囲にある、項目1に記載のプロセス。
[4]
前記グリコールエーテルが、工程(d)の間に全体として添加される、項目1に記載のプロセス。
[5]
前記グリコールエーテルが、工程(c)の終わりの0〜4時間後に添加される、項目4に記載のプロセス。
[6]
前記グリコールエーテルが、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、項目1に記載のプロセス。
[7]
前記グリコールエーテルが、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、項目6に記載のプロセス。
[8]
前記グリコールエーテルが、工程(b)の間に添加された全材料の約5〜25質量%を含んでいる、項目6に記載のプロセス。
[9]
前記両親媒性材料が、6〜22個の炭素原子を有するモノカルボン酸である、項目1に記載のプロセス。
[10]
前記モノカルボン酸が、オレイン酸である、項目9に記載のプロセス。
[11]
前記カルボン酸の量が、工程(a)〜(e)の間に添加される実質的に非極性の溶媒、両親媒性材料、及びグリコールエーテルの全量の約25〜33質量%を含んでいる、項目10に記載のプロセス。
[12]
前記実質的に非極性の溶媒の量が、工程(a)〜(e)の間に添加される実質的に非極性の溶媒、両親媒性材料、及びグリコールエーテルの全量の約50〜63質量%を含んでいる、項目1に記載のプロセス。
[13]
前記セリウム含有酸化物ナノ粒子が、Ce(1−x)FexO(2−δ)(ここで、xは約0.01〜0.8の範囲にあり、δは約1〜2の範囲にある)の組成式を有する、項目1に記載のプロセス。
[14]
セリウム含有酸化物ナノ粒子の前記水性コロイド分散液が、従来のナノ粒子単離工程を含まずに調製され、それにより、工程(a)のナノ粒子合成反応混合物から得られる水性コロイドを直接用いる、項目1に記載のプロセス。
[15]
セリウム含有酸化物ナノ粒子の前記実質的に非極性のコロイド分散液が、燃料添加剤の成分として用いられる、項目1に記載のプロセス。