特許第6208697号(P6208697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208697
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】円切りカッター
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/10 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   B26D3/10 H
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-10889(P2015-10889)
(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公開番号】特開2016-135515(P2016-135515A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002406
【氏名又は名称】エヌティー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】村中 勝己
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02269510(US,A)
【文献】 特開昭48−102400(JP,A)
【文献】 実開昭53−024590(JP,U)
【文献】 特開昭49−045923(JP,A)
【文献】 実開昭49−103079(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/10
B26F 1/38
C03B 33/04
B43L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のフレームと、該フレームに設けられて該フレームを被切断板上で水平方向へ旋回自在に支持する支持手段と、前記フレームに設けられた刃物台と、該刃物台に前記フレームと直交する姿勢で固定されたカッター刃とを備え、前記支持手段と前記刃物台との距離を可変調整できると共に、前記フレームを前記支持手段により被切断板上で水平方向へ旋回させ、前記カッター刃で前記被切断板の表面を円形に切り欠いたり、或いは、被切断板を円形に切り抜いたりする円切りカッターであって、前記刃物台は、前記フレームの側方から旋回方向側へ突出形成され、前記フレームの旋回時に被切断板の表面上を摺動して前記カッター刃の刃先部と被切断板の表面とが成す切り込み角度を一定に保つ当接部を備え、前記支持手段は、被切断板の表面に吸着される吸盤と、吸盤の中心部に立設されてフレームに回転自在に挿通支持された支持軸と、支持軸の外周面に回転自在に螺合されて支持軸に締め付け操作される摘み部と、支持軸を貫通した状態でフレームの下面と吸盤との間に介設されて吸盤の外周縁部を被切断板の表面側へ押圧する押え盤とを備え、摘み部の支持軸への締め付け操作により被切断板の表面に吸着させた吸盤の中央部が支持軸を介して引き上げられ、吸盤の吸着面と被切断板の表面との間に真空空間を形成すると共に、吸盤の外周縁部が押え盤により被切断板の表面側へ押圧される構成としたことを特徴とする円切りカッター。
【請求項2】
前記刃物台の当接部は、被切断板の表面に線接触又は点接触する形状としたことを特徴とする請求項1に記載の円切りカッター。
【請求項3】
前記刃物台の当接部は、断面アール状の凸部を有することを特徴とする請求項2に記載の円切りカッター。
【請求項4】
前記カッター刃の刃先部は、側面視において倒立三角形状を呈し、カッター刃の進行方向側の刃先部の辺と被切断板の表面とが成す切り込み角度を鋭角としたことを特徴とする請求項1に記載の円切りカッター。
【請求項5】
前記フレームの上面側に鉛直軸線回りに回転自在に設けられ、フレームを水平方向へ旋回操作する旋回操作部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の円切りカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂板等の硬質プラスチック板、合板等の木製板材、アルミ板等の軟質性金属板等の被切断板の表面を円形に切り欠いたり、或いは、被切断板を円形に切り抜いたりするための円切りカッターの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の円切りカッターとしては、図示していないが、長尺状のフレームと、フレームに設けられてフレームを被切断板上で水平方向へ旋回自在に支持する支持手段と、フレームに設けられた刃物台と、刃物台にフレームと直交する姿勢で固定されたカッター刃(プラスチック切断刃とも言う。)とを備えており、前記支持手段と刃物台との距離を可変調整できるように構成されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
而して、前記円切りカッターを使用する際には、先ず、被切断板の表面を円形に切り欠いたり、或いは、被切断板を円形に切り抜いたりする寸法に合わせて支持手段と刃物台との距離を調整した後、支持手段によりフレームを被切断板上で水平方向へ旋回自在に支持し、カッター刃の先端を被切断板の表面に押圧接触させた状態で前記フレームを支持手段を中心にして前記フレームを被切断板上で水平方向へ旋回させ、カッター刃の先端で被切断板の表面を引き切りで削るようにカッター刃を動かす。そうすると、フレームに設けた刃物台のカッター刃が円形の軌道を描きつつ、被切断板の表面に円形に円形の溝を掘ることにより、円形に切り欠いたり、或いは、被切断板を円形に切り抜いたりすることができる。
【0004】
しかし、上述した従来の円切りカッターは、フレームとこのフレームを旋回自在に支持する支持手段との間に若干のクリアランスがあるため、支持手段を中心にしてフレームを水平方向へ旋回させたときに、前記クリアランスによりフレームが支持手段に対してがたつくことがある。そのため、カッター刃による切り欠き作業中にカッター刃が揺動し、カッター刃の被切断板への切り込み角度が変化することがある。その結果、カッター刃による被切断板の切り欠きや切り抜きを円滑且つ良好に行えないと言う問題があった。
【0005】
また、従来の円切りカッターは、フレームの旋回中心がずれるのを防止するため、被切断板の表面に突き刺す針状体や比較的面積の広い円板状の座体を備えているが、針状体を備えた円切りカッターにおいては、被切断板に突き刺し傷が付き、被切断板の円形部分以外が必要な場合には問題がないが、円形部分自体が必要な場合には傷跡が残ると言う問題があり、また、円板状の座体を備えた円切りカッターにおいては、被切断板を切り欠いたり、切り抜いているときに、座体が被切断板に対して動き、芯ズレを起こして被切断板を真円に切り欠いたり、真円に切り抜いたりすることができないこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭53−023090号公報
【特許文献2】実開昭58−191994号公報
【特許文献3】実開昭59−132795号公報
【特許文献4】実開平02−130798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、カッター刃による被切断板の切り欠きや切り抜きを円滑且つ良好に行える円切りカッターを提供することを主たる目的とする。
また、本発明は、被切断板表面の損傷や芯ズレを防止できて被切断板を真円に切り欠いたり、真円に切り抜いたりすることができる円切りカッターを提供することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の円切りカッターは、長尺状のフレームと、該フレームに設けられて該フレームを被切断板上で水平方向へ旋回自在に支持する支持手段と、前記フレームに設けられた刃物台と、該刃物台に前記フレームと直交する姿勢で固定されたカッター刃とを備え、前記支持手段と前記刃物台との距離を可変調整できると共に、前記フレームを前記支持手段により被切断板上で水平方向へ旋回させ、前記カッター刃で前記被切断板の表面を円形に切り欠いたり、或いは、被切断板を円形に切り抜いたりする円切りカッターであって、前記刃物台は、前記フレームの側方から旋回方向側へ突出形成され、前記フレームの旋回時に被切断板の表面上を摺動して前記カッター刃の刃先部と被切断板の表面とが成す切り込み角度を一定に保つ当接部を備え、前記支持手段は、被切断板の表面に吸着される吸盤と、吸盤の中心部に立設されてフレームに回転自在に挿通支持された支持軸と、支持軸の外周面に回転自在に螺合されて支持軸に締め付け操作される摘み部と、支持軸を貫通した状態でフレームの下面と吸盤との間に介設されて吸盤の外周縁部を被切断板の表面側へ押圧する押え盤とを備え、摘み部の支持軸への締め付け操作により被切断板の表面に吸着させた吸盤の中央部が支持軸を介して引き上げられ、吸盤の吸着面と被切断板の表面との間に真空空間を形成すると共に、吸盤の外周縁部が押え盤により被切断板の表面側へ押圧される構成としたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の円切りカッターは、請求項1に記載の円切りカッターにおいて、前記刃物台の当接部が、被切断板の表面に線接触又は点接触する形状としたことに特徴がある。
【0010】
本発明の請求項3に記載の円切りカッターは、請求項2に記載の円切りカッターにおいて、前記刃物台の当接部が、断面アール状の凸部を有することに特徴がある。
【0011】
本発明の請求項4に記載の円切りカッターは、請求項1に記載の円切りカッターにおいて、前記カッター刃の刃先部が、側面視において倒立三角形状を呈し、カッター刃の進行方向側の刃先部の辺と被切断板の表面とが成す切り込み角度を鋭角としたことに特徴がある。
【0012】
本発明の請求項5に記載の円切りカッターは、請求項1に記載の円切りカッターにおいて、前記フレームの上面側に鉛直軸線回りに回転自在に設けられ、フレームを水平方向へ旋回操作する旋回操作部を更に備えることに特徴がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の円切りカッターは、カッター刃を固定する刃物台が、フレームの側方から旋回方向側へ突出形成され、フレームの旋回時に被切断板の表面上を摺動してカッター刃の先端部と被切断板の表面とが成す切り込み角度を一定に保つ当接部を備えているため、フレームと該フレームを旋回自在に支持する支持手段との間にクリアランスがあっても、前記刃物台の当接部によりフレーム及びカッター刃ががたつくのを防止することができ、カッター刃の被切断板への切り込み角度が一定の好適な角度に常時保たれることになる。その結果、カッター刃による被切断板の切り欠きや切り抜きを円滑且つ良好に行うことができる。
【0014】
また、本発明の円切りカッターは、刃物台の当接部を被切断物の表面に線接触又は点接触する形状としているため、カッター刃による被切断板の切り欠きや切り抜き時に、刃物台の当接部が被切断板の表面上を摺動しても、摩擦抵抗が大きくなることが無く、フレームの旋回操作に支障を来たすことがない。
【0015】
更に、本発明の円切りカッターは、支持手段が被切断板の表面に真空吸着される吸盤を備えているため、被切断板表面の損傷や芯ズレを防止できると共に、被切断板を真円に切り欠いたり、真円に切り抜いたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る円切りカッターの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す円切りカッターの正面図である。
図3図1に示す円切りカッターの平面図である。
図4図1に示す円切りカッターの底面図である。
図5図1に示す円切りカッターの右側面図である。
図6図2のA−A線拡大断面図である。
図7図2のB−B線拡大断面図である。
図8図5のC−C線拡大断面図である。
図9】円切りカッターのフレームの分解斜視図である。
図10図1に示す円切りカッターを用いて被切断板(プラスチック板)を円形に切り欠いたり、切り抜いたりする状態を示す斜視図である。
図11】同じく被切断板(プラスチック板)を円形に切り欠いたり、切り抜いたりする状態を示す円切りカッターの一部省略拡大正面図である。
図12図11のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る円切りカッターの一実施形態について、以下に図面を参照しつつ説明する。尚、全図を通し、同一又は類似の構成部分には同一符号を付している。
【0018】
本発明の円切りカッターは、アクリル樹脂板やポリエチレン樹脂板等の硬質プラスチック板、合板等の木製板材、アルミ板等の軟質性金属板等の被切断板Pの表面を所望の大きさの円形に切り欠いたり、或いは、被切断板Pを円形に切り抜いたりするものである。
【0019】
即ち、前記円切りカッターは、図1図8に示す如く、長尺状のフレーム1と、フレーム1の一端部に設けられてフレーム1を被切断板P上で水平方向へ旋回自在に支持する支持手段2と、フレーム1の他端部に設けられてフレーム1を水平方向へ旋回操作する旋回操作部3と、フレーム1に当該フレーム1の長手方向にスライド自在に設けられて支持手段2との距離を可変調整できる刃物台4と、刃物台4にフレーム1と直交する姿勢で固定されたカッター刃5とを備えており、フレーム1を支持手段2により被切断板P上で水平方向へ旋回自在に支持した後、フレーム1を旋回操作部3により水平方向へ旋回させることにより、刃物台4に固定したカッター刃5で被切断板Pの表面を円形に切り欠いたり、或いは、被切断板Pを円形に切り抜いたりすることができるようになっている。
【0020】
具体的には、前記フレーム1は、図1及び図9に示す如く、長尺な略矩形状の天板1a及び天板1aの長辺に沿って下向きに垂設された一対の側板1bから成る金属製のフレーム本体1Aと、基端部側がフレーム本体1Aの一端部開口に挿着されて先端部側がフレーム本体1Aの一端から外方へ突出するプラスチック製の第1支持盤1Bと、基端部側がフレーム本体1Aの他端部開口に挿着されて先端部側がフレーム本体1Aの他端から外方へ突出するプラスチック製の第2支持盤1Cとを備えている。
【0021】
また、フレーム本体1Aの天板1aには、刃物台4をフレーム本体1Aにスライド自在に取り付けるためのガイド穴1cが形成されている。このガイド穴1cは、上下方向に貫通してフレーム本体1Aの長手方向に沿って形成されている。
【0022】
更に、フレーム本体1Aの天板1aの一端部には、上下方向に貫通する円形の第1貫通穴1dが形成されていると共に、フレーム本体1Aの天板1aの他端部には、上下方向に貫通する円形の第2貫通穴1eが形成されている。
【0023】
そして、第1支持盤1Bには、フレーム本体1Aの第1貫通穴1dに合致して支持手段2を支持するための第1支持穴1fが上下方向に貫通状に形成され、また、第2支持盤1Cには、フレーム本体1Aの第2貫通穴1eに合致して旋回操作部3を支持するための第2支持穴1gが上下方向に貫通状に形成されている。尚、第1支持盤1Bの上面には、フレーム本体1Aの下面側からフレーム本体1Aの第1貫通穴1dに挿入されて第1支持盤1Bをフレーム本体1Aに位置決めするための環状突起部1hが形成されている。
【0024】
上記の実施形態においては、フレーム1をフレーム本体1A、第1支持盤1B及び第2支持盤1Cの三つの部材から構成したが、フレーム1の構造及び形状は、上述したフレーム1に限定されるものでなく、支持手段2及び旋回操作部3を設けることができ、且つ刃物台4をスライド自在に設けることができれば、如何なる構造及び形状のものであっても良い。例えば、フレーム1は、フレーム本体1A、第1支持盤1B及び第2支持盤1Cをプラスチック材又は金属材により一体的に形成したフレーム1であっても良い。また、フレーム1は、フレーム1の旋回中心(第1支持盤1Bの第1支持穴1fの中心)をゼロとするスケール(図示省略)を備えた構成としても良い。フレーム1にスケールを設ければ、スケールを見ながら刃物台4を移動させ、フレーム1の旋回中心からカッター刃5までの距離を所望の距離に容易に調節することができる。
【0025】
前記支持手段2は、フレーム1の一端部に設けられており、被切断板Pの表面の所望の位置に真空吸着により保持されてフレーム1を被切断板P上で水平方向へ旋回自在に支持するものである。
【0026】
即ち、前記支持手段2は、図8に示す如く、被切断板Pの表面に吸着される吸盤6と、フレーム1の第1支持盤1Bの第1支持穴1fに回転自在に挿通支持された鍔付きの第1スリーブ7と、吸盤6の中心部に立設されて第1スリーブ7に回転自在に挿通支持された支持軸8と、支持軸8の上端部外周面に回転自在に螺合されて支持軸8に締め付け操作される摘み部9と、支持軸8を貫通した状態でフレーム1の第1支持盤1Bの下面と吸盤6との間に介設されて吸盤6の外周縁部を被切断板Pの表面側へ押圧する押え盤10とを備えている。
【0027】
具体的には、吸盤6は、可撓性を有するプラスチック材又はゴム材により円形の皿状に形成されており、凹面6aが下を向く姿勢でフレーム1の第1支持盤1Bの下方位置に配置されている。
【0028】
第1スリーブ7は、プラスチック材又は金属材により形成されており、フレーム1の第1支持盤1Bの第1支持穴1fに上面側から挿入されて鉛直軸線回りに回転できるようになっている。
【0029】
支持軸8は、プラスチック材又は金属材により形成されており、吸盤6の上面中央部に埋設された円板状の基板部8aと、基板部8aの中心部に立設されて上端部外周面に雄ネジを形成した軸部8bとを備えている。この支持軸8は、その軸部8bが第1支持盤1Bの下面側から鍔付きの第1スリーブ7に挿通されており、第1スリーブ7を介して第1支持盤1Bの第1支持穴1fに鉛直軸線回りに回転自在に支持されている。
【0030】
摘み部9は、プラスチック材又は金属材により形成されており、支持軸8の雄ネジに螺合される雌ネジを形成した筒部9aと、筒部9aの上端に連設された円盤部9bとを備えている。この摘み部9は、支持軸8の軸部8bに螺合されており、摘み部9の下端面(筒部9aの下端面)を第1スリーブ7の上端面に当接させた状態で摘み部9を支持軸8側へ締め付け操作することにより、支持軸8を引き上げることができる。
【0031】
押え盤10は、硬質のプラスチック材又は金属材により円形のお椀状に形成されており、中心部には、支持軸8が挿通される貫通孔10aが形成されている。この押え盤10は、凹面10bが下を向く姿勢でフレーム1の第1支持盤1Bの下面と吸盤6との間に介設されており、その外周縁部下端が吸盤6の外周縁部に当接するようになっている。
【0032】
而して、前記支持手段2によれば、摘み部9を被切断板Pの表面側へ押圧操作して吸盤6を被切断板Pの表面に吸着させ、この状態で摘み部9を回して支持軸8側へ締め付けて行くと、摘み部9の下端面が第1スリーブ7の上端面に当接しているため、摘み部9の支持軸8への締め付け操作により支持軸8が引き上げられると共に、これに伴って被切断板Pの表面に吸着させた吸盤6の中央部も支持軸8を介して引き上げられ、吸盤6の吸着面と被切断板Pの表面との間に真空空間が形成されて行く。また、摘み部9の支持軸8への締め付け操作により押え盤10の外周縁部下端が吸盤6の外周縁部を被切断板Pの表面側へ押圧するため、吸盤6の外周縁部が内側へ引き込まれ難くなる。その結果、吸盤6は、吸着力が増大して被切断板Pの表面に確実且つ強固に真空吸着されることになる。
【0033】
このようにして、支持手段2が被切断板Pの表面の所望の位置に真空吸着により保持されたら、支持手段2は、フレーム1を被切断板P上で水平方向へ旋回自在に支持することができる。このとき、フレーム1は、第1支持盤1Bの第1支持穴1fの内周面が第1スリーブ7の外周面を摺動しながら支持軸8の軸線φを中心にして水平方向へ旋回することになる。
【0034】
また、支持手段2の吸盤6を被切断板Pの表面から取り外す場合には、摘み部9を前記と反対方向へ回して弛めれば、支持軸8及び吸盤6の中央部が引き下げられ、吸盤6の吸着面と被切断板Pの表面との間の真空状態が緩和されるので、吸盤6を被切断板Pの表面から容易に取り外すことができる。
【0035】
前記旋回操作部3は、フレーム1の他端部に鉛直軸線回りに回転自在に設けられており、フレーム1を水平方向へ旋回操作するものである。
【0036】
即ち、旋回操作部3は、図8に示す如く、フレーム1の第2支持盤1Cの第2支持穴1g及びフレーム本体1Aの第2貫通穴1eに回転自在に挿通支持された鍔付きの第2スリーブ11と、第2スリーブ11に回転自在に挿通支持されてナット12により抜け止めされた操作軸13とを備えている。
【0037】
具体的には、第2スリーブ11は、プラスチック材又は金属材により形成されており、フレーム1の第2支持盤1Cの第2支持穴1g及びフレーム本体1Aの第2貫通穴1eに下面側から挿入されて鉛直軸線回りに回転できるようになっている。
【0038】
操作軸13は、プラスチック材又は金属材により段付きの軸状に形成されており、第2スリーブ11に上面側から挿通されて下端部外周面に雄ネジを形成した小径軸部13aと、小径軸部13aの上端に連設されて下端面が第2スリーブ11の上端面に当接する大径軸13bとを備えている。
【0039】
而して、前記旋回操作部3によれば、操作軸13の大径軸部13bを指で摘んでフレーム1を支持手段1を中心にして水平方向へ旋回させれば、操作軸13が第2スリーブ11を介して鉛直軸線回りに回転し、フレーム1を水平方向へ簡単且つ容易に旋回させることができる。
【0040】
前記刃物台4は、プラスチック材又は金属材により形成されており、図1及び図8に示す如く、フレーム本体1Aの対向する側板1b間に位置して側板1b間の間隔と略同一の大きさに形成された平面形状が矩形状の摺動部4aと、摺動部4aの上面中央部に立設されてフレーム本体1Aのガイド穴1cに挿通されたネジ軸4bと、摺動部4aの下面側に連設されてフレーム1の側方からフレーム1の旋回方向側へ突出するアーム部4cと、アーム部4cの先端部下面に形成されてフレーム1の旋回時に被切断板Pの表面上を摺動してカッター刃5の刃先部5bと被切断板Pの表面とが成す切り込み角度α(図12参照)を一定に保つ当接部4dとを備えている
【0041】
刃物台4の当接部4dは、断面形状がアール状の凸部、具体的には数mmの幅を有する突条に形成されており、被切断板Pの表面に線接触する形状となっている(図11及び図12参照)。また、刃物台4の当接部4dは、ネジ軸4bの軸線から数cm離れた位置に形成されている。更に、刃物台4の一方の側面(支持手段2に対向する側面と反対の側面)には、カッター刃5を位置決めして所定の姿勢にする位置決めピン4eが突出形成されている。
【0042】
そして、刃物台4は、摺動部4aをフレーム本体1Aの側板1b間に挿入してネジ軸4bをフレーム本体1Aのガイド穴1cに挿通し、フレーム本体1Aの上面から突出するネジ軸4bに内周面に前記ネジ軸4bに螺合する雌ネジを形成した筒状の固定部材14を螺合することにより、フレーム本体1Aに取り付けられている。この刃物台4は、固定部材14を締め付けることにより、フレーム本体1Aに固定することができ、また、固定部材14を弛めることにより、フレーム本体1Aのガイド穴1cに沿ってフレーム本体1Aの長手方向へスライド移動させることができる。その結果、刃物台4をフレーム本体1Aに対してスライド移動させることにより、刃物台4と支持手段2との距離を可変調整することができる。
【0043】
尚、刃物台4は、上述した刃物台4に限定されるものではなく、被切断板Pの表面に摺動接触する当接部4dを有し、フレーム本体1Aにスライド自在に取り付けられることができれば、如何なる構造及び形状であっても良い。また、刃物台4の当接部4dは、被切断板Pの表面に線接触する形状としたが、当接部4dの形状はこれに限定されるものではなく、刃物台4の当接部4dを被切断板Pの表面に点接触する形状としても良いし、或いは面接触形状とすることもでき、また、一箇所に限らず複数箇所で接触するようにすることができる。
【0044】
前記カッター刃5は、被切断板Pの表面を円形に切り欠いたり、被切断板Pを円形に切り抜いたりするものであり、図12に示す如く、刃物台4の位置決めピン4eに嵌合される位置決め孔5cを形成した長尺板状の本体部5aと、本体部5aの一端部に連設されて側面視において倒立三角形状を呈する板状の刃先部5bとを備えている。
【0045】
また、カッター刃5の刃先部5bの進行方向(図6及び図12に示す矢印方向)と反対側の辺には、断面形状がテーパ状の両刃5dが形成されており、この両刃5dの下方側の端部で被切断板Pの表面を切り欠くようになっている。
【0046】
前記カッター刃5は、本体部5aの位置決め孔5cに刃物台4の位置決めピン4eを挿入し、この状態で本体部5aを固定ネジ15により刃物台4の一方の側面に締め付けることにより、刃物台4の一方の側面に固定されている。
【0047】
このとき、カッター刃5は、刃物台4にフレーム1と直交する姿勢で固定されており、刃先部5bが本体部5aよりも下方に位置する傾斜姿勢となっている。また、カッター刃5の刃物台4への取り付け位置は、刃物台4をフレーム1に取り付けた状態において刃先部5bの先端(下端)がフレーム1の幅方向中間位置に位置するように取り付けられている。更に、カッター刃5の進行方向側の刃先部5bの辺と被切断板Pの表面とが成す切り込み角度α(図12)が鋭角に設定されている。切り込み角度αを鋭角にしたのは、カッター刃5による被切断板Pの切り欠き抵抗を小さくするためである。
【0048】
尚、カッター刃5は、上述したカッター刃5に限定されるものではなく、刃先部5bを有し、刃物台4に取り付けることができれば、如何なる形状でものであっても良い。また、刃先部5bに形成した両刃5dを片刃としても良い。
【0049】
次に、上述した円切りカッターを用いて硬質プラスチック板等の被切断板Pの表面を円形に切り欠いたり、或いは、被切断板を円形に切り抜いたりする場合について説明する。
【0050】
先ず、固定部材14を弛めて刃物台4をフレーム1の長手方向にスライド可能とし、被切断板Pの表面を円形に切り欠いたり、或いは、被切断板を円形に切り抜いたりする寸法に合わせて刃物台4をフレーム1に沿って移動させ、刃物台4を所定の位置で固定部材14の締め付け操作によりフレーム1に固定する。
【0051】
次に、支持手段2を用いて支持手段2の吸盤6をカッティングマット等に載置した被切断板Pの表面に真空吸着させ、支持手段2の吸盤6により円切りカッターを被切断板Pの表面に吸着保持させる。
【0052】
その後、一方の手で支持手段2の摘み部9を被切断板P側へ押圧して支持手段2が被切断板Pに対して動かないようにすると共に、他方の手で旋回操作部3の操作軸13を摘まんでカッター刃5の刃先部5b先端を被切断板Pの表面に押圧接触させる。
【0053】
この状態において、一方の手で支持手段2の摘み部9を押圧保持しつつ、旋回操作部3の操作軸13を平面視において時計方向回りに周回させ、カッター刃5の刃先部5b先端で被切断板Pの表面を引き切りで削るようにカッター刃5を動かす(図10参照)。そうすると、フレーム1が支持手段2の軸線を中心にして水平方向へ旋回し、これに伴って刃物台4に設けたカッター刃5が円形の軌道を描きつつ、カッター刃5の刃先部5b先端で被切断板Pの表面に円形の溝が彫られ、被切断板Pを円形に切り欠いたり、或いは、被切断板Pを円形に切り抜いたりすることができる。
【0054】
尚、被切断板Pの表面を円形に切り欠く場合には、被切断板Pの厚さの半分位まで切り目が入るようにカッター刃5を支持手段2の軸線φを中心にして繰り返し周回させる。その後、先端部が二股状に形成された折取具(図示省略)を用い、被切断板Pの外周縁部を折取具の二股部で挟持し、折取具を被切断板Pの折曲げ方向へ揺動させることによって、被切断板Pの外周縁部を切り目に沿って折り取る。これにより、円形の板を得ることができる。
【0055】
また、被切断板Pを円形に切り抜く場合には、被切断板Pの厚さ分だけ切れ目が入るようにカッター刃5を支持手段2の軸線を中心にして繰り返し周回させる。これにより、被切断板Pの一部を完全に円形に切り抜くことができ、被切断板Pを円形に切り抜いたり、或いは、円形の板を得ることができる。
【0056】
上述した円切りカッターは、フレーム1の旋回時に刃物台4の当接部4dが被切断板Pの表面上を摺動し、カッター刃5の刃先部5bと被切断板Pの表面とが成す切り込み角度を一定に保つため、フレーム1と該フレーム1を旋回自在に支持する支持手段2との間にクリアランスがあっても、前記刃物台4の当接部4dによりフレーム1及びカッター刃5ががたつくのを防止することができ、カッター刃5の被切断板Pへの切り込み角度が一定の好適な角度に常時保たれることになる。その結果、カッター刃5による被切断板Pの切り欠きや切り抜きを円滑且つ良好に行うことができる。
【0057】
また、円切りカッターは、刃物台4の当接部4dが被切断板Pの表面に線接触(又は点接触)しているため、カッター刃5による被切断板Pの切り欠きや切り抜き時に、刃物台4の当接部4dが被切断板Pの表面上を摺動しても、摩擦抵抗が大きくなることが無く、フレーム1の旋回操作を容易に行える。
【0058】
更に、円切りカッターは、支持手段2が被切断板Pの表面に真空吸着される吸盤6を備えているため、被切断板P表面の損傷や芯ズレを防止できると共に、被切断板Pを真円に切り欠いたり、真円に切り抜いたりすることができる。
【0059】
尚、上記の実施形態においては、フレーム1に対して支持手段2の位置を一定とし、カッター刃5を設けた刃物台4をフレーム1にスライド自在に設けたが、他の実施形態においては、カッター刃5を設けた刃物台4をフレーム1の所定の位置に固定し、支持手段2をフレーム1にスライド自在に設けても良い。
【0060】
上記の実施形態においては、フレーム1の一端部に支持手段2を設けたが、他の実施形態においては、フレーム1の中央部に支持手段2を設けても良い。また、支持手段2は、上述した支持手段2に限定されるものではなく、フレーム1を一定位置で水平方向へ旋回自在に支持することができれば、如何なる構造及び形状のものであっても良い。
【0061】
上記の実施形態においては、フレーム1に旋回操作部3を設け、当該旋回操作部3によりフレーム1を水平方向へ旋回させるようにしたが、他の実施形態においては、旋回操作部3を省略し、フレーム1又は固定部材14を持ってフレーム1を水平方向へ旋回させるようにしても良い。
【0062】
上記の実施形態の図示例において、断面アール状の突条により形成した当接部4dを図示したが、当接部を半球状の凸部により形成して点接触するようにしても良い。
【符号の説明】
【0063】
1はフレーム、1Aはフレーム本体、1Bは第1支持盤、1Cは第2支持盤、1aは天板、1bは側板、1cはガイド穴、1dは第1貫通穴、1eは第2貫通穴、1fは第1支持穴、1gは第2支持穴、1hは環状の突起部、2は支持手段、3は旋回操作部、4は刃物台、4aは摺動部、4bはネジ軸、4cはアーム部、4dは当接部、4eは位置決めピン、5はカッター刃、5aは本体部、5bは刃先部、5cは位置決め孔、5dは両刃、6は吸盤、6aは凹面、7は第1スリーブ、8は支持軸、8aは基板部、8bは軸部、9は摘み部、9aは筒部、9bは円盤部、10は押え盤、10aは貫通孔、10bは凹面、11は第2スリーブ、12はナット、13は操作軸、13aは小径軸部、13bは大径軸部、14は固定部材、15は固定ネジ、Pは被切断板、αは切り込み角度、φは軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12