(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態に係るロボットシステム10について説明する。なお、以下の説明においては、図中の直交座標を基準とし、便宜上、x軸プラス方向を左方、y軸プラス方向(
図1の紙面裏側へ向かう方向)を前方、z軸プラス方向を上方とする。
【0015】
ロボットシステム10は、ロボット12、ロボット制御部14、通知部16、撮像部18、および記憶部20を備える。ロボット12は、例えば垂直多関節ロボットであって、ロボットベース22、旋回胴24、ロボットアーム26、およびロボットハンド28を備える。ロボットベース22は、ワークセルの床に固定されている。旋回胴24は、ロボットベース22に鉛直軸周りに旋回可能に取り付けられている。
【0016】
ロボットアーム26は、旋回胴24に回転可能に取り付けられた下腕部30と、該下腕部30の先端に回転可能に取り付けられた前腕部32とを有する。ロボットハンド28は、手首部34を介して、前腕部32の先端に取り付けられている。ロボットハンド28は、物体の把持および解放といった作業を行うことができる。
【0017】
本実施形態においては、ロボット制御部14および記憶部20は、ロボット制御装置36に内蔵されている。ロボット制御部14は、ロボット12に内蔵されたサーボモータ(図示せず)に指令を送り、ロボット12の動作を制御する。
【0018】
記憶部20は、例えば、例えばEEPROM(登録商標)等のような、電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAM等のような、高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリによって構成される。
【0019】
撮像部18は、ロボットアーム26に設置されている。撮像部18は、例えばCCDまたはCMOSセンサからなる撮像素子を含む。撮像部18は、レンズを透過して入射する被写体像を光電変換し、画像データとして出力する。
【0020】
撮像部18は、ロボット制御部14からの指令に応じて、後述するクーラントノズル62およびワークWを撮像し、撮像した画像データをロボット制御部14へ送信する。
【0021】
本実施形態においては、ロボット制御装置36の外部に設置された外部機器としてのPC(Personal Computer)38が、通知部16としての機能を担う。なお、通知部16の機能に関しては、後述する。
【0022】
ロボット制御部14は、バス40を介して、撮像部18、記憶部20、およびPC38と通信可能に接続されている。
【0023】
次に、工作機械50について説明する。工作機械50は、治具Jの上に設置されたワークWを加工する。工作機械50は、主軸52、工具54、主軸駆動部56、工作機械制御部58、およびクーラントノズル62を備える。主軸52は、上下方向に延在し、その下端に工具54を保持する。
【0024】
工作機械制御部58は、工作機械50の各構成要素を直接的または間接的に制御する。工作機械制御部58は、ロボット制御部14と通信可能に接続されている。ロボット制御部14および工作機械制御部58は、互いに通信しつつ、ワークWへの加工を実行する。
【0025】
主軸駆動部56は、例えばサーボモータを有し、工作機械制御部58からの指令に応じて、主軸52を上下方向へ移動させる。また、主軸駆動部56は、工作機械制御部58からの指令に応じて、主軸52を鉛直軸周りに回転駆動する。
【0026】
クーラントノズル62は、取り付け具60を介して、工作機械50の主軸頭(図示せず)に取り付けられている。主軸頭は、ワークセルに対して固定されており、主軸52を上下方向へ移動可能に保持する。
【0027】
本実施形態においては、クーラントノズル62は、軸線O
1に沿って延在する中空の管状部材であって、取り付け具60の先端部60aに、回動軸64を介して回動可能に取り付けられている。
【0028】
回動軸64は、前後方向に延びており、クーラントノズル62は、回動軸64の周りに回動可能である。クーラントノズル62は、工作機械50の外部に設置された冷媒供給装置(図示せず)に接続されている。冷媒供給装置から供給された冷媒は、クーラントノズル62の内部を通って、該クーラントノズル62の先端に設けられた吐出口62aから吐出される。
【0029】
次に、工作機械50の動作について説明する。ワークWを加工するとき、工作機械制御部58は、主軸駆動部56に指令を送り、主軸52をワークWへ向かって下方へ移動させる。その結果、工具54の先端が、加工ポイントPにて、ワークWの上面と当接する。
【0030】
ワークWを加工するとき、加工ポイントPに冷媒を供給する必要がある。したがって、クーラントノズル62は、ワークWを加工するときには、該クーラントノズル62から吐出された冷媒が加工ポイントPに衝突するように、ワークWに対して適切に位置決めされる必要がある。
【0031】
そこで、本実施形態においては、ロボットシステム10が、クーラントノズル62をワークWに対して適切に位置決めすべく、ロボット12によって、クーラントノズル62の位置を調整する。
【0032】
以下、
図1〜
図6を参照して、ロボットシステム10の動作について説明する。
図3は、ワークWの加工フローの一例を示している。
図3に示す動作フローは、ロボット制御部14および工作機械制御部58が、ユーザまたは上位コントローラから、ワークWへの加工指令を受け付けたときに、開始する。
【0033】
ステップS1において、ロボット制御部14は、通知部16からワークWの種類を取得する。ワークWの種類は、例えば、加工前のワークの寸法または形状に応じて、ユーザによって予め設定される。例えば、ワークWの種類は、加工前のワークWの寸法および形状に応じて、以下に示す表のように分類される。
【0035】
ユーザは、PC38を操作して、加工されるワークWの種類を入力する。PC38は、通知部16として機能して、ユーザによって指定されたワークWの種類に関する情報を、ロボット制御部14へ通知する。
【0036】
ステップS2において、ロボット制御部14は、PC38から受信したワークWの種類に基づいて、ワークWに対するクーラントノズル62の目的位置を決定する。ここで、目的位置とは、クーラントノズル62から吐出された冷媒を、加工ポイントPに衝突させることのできる、ワークWに対するクーラントノズル62の位置に相当する。
【0037】
クーラントノズル62が目的位置に配置された状態を、
図5に示す。この状態においては、クーラントノズル62は、上下方向に延びる仮想軸O
2に対して、角度θ
tだけ傾斜するように配置されており、冷媒Aは、加工ポイントPに衝突するようにクーラントノズル62から吐出されている。
【0038】
クーラントノズル62から吐出された冷媒Aの噴射経路は、吐出される冷媒の流量(すなわち、冷媒供給装置による冷媒の供給圧力)と、仮想軸O
2に対するクーラントノズル62の傾斜角度θとに依存する。
【0039】
したがって、冷媒の流量と、傾斜角度θと、そのときの冷媒の噴射経路との関係を実験的に予め求めておけば、クーラントノズル62から冷媒を所望の位置へ送達することができる。
【0040】
例えば、上記の表1のようにワークWの種類がユーザによって設定されたとすると、タイプA〜Cは、それぞれ異なる上下方向の高さを有しているので、タイプA〜Cの間で、加工ポイントPの座標は、異なることになる。
【0041】
したがって、タイプA〜Cの間で、クーラントノズル62の目的位置、すなわち角度θ
tは、異なることになる。そこで、本実施形態においては、記憶部20は、ワークWの種類と、角度θ
tとの関係を予め記憶する。例えば、記憶部20は、以下に示すようなデータテーブルを予め記憶する。
【0043】
ロボット制御部14は、PC38から受信したワークWの種類に対応する角度θ
tを、記憶部20から読み出し、読み出した角度θ
tに対応するクーラントノズル62の位置を、クーラントノズル62の目的位置として決定する。
【0044】
ステップS3において、ロボット制御部14は、ステップS2にて決定した目的位置にクーラントノズル62を配置させる。このステップS3について、
図4を参照して説明する。
【0045】
ステップS3が開始された後、ステップS11において、ロボット制御部14は、クーラントノズル62を撮像する。具体的には、ロボット制御部14は、ロボット12を動作させて、撮像部18をクーラントノズル62の後方側へ移動させる。
【0046】
そして、ロボット制御部14は、撮像部18に指令を送り、クーラントノズル62を後方から撮像する。撮像部18は、クーラントノズル62の画像データを、ロボット制御部14へ送信する。
【0047】
ステップS12において、ロボット制御部14は、ステップS2にて決定した目的位置と、クーラントノズル62の現在位置との間の差を算出する。例えば、ステップS11の終了時点において、クーラントノズル62が、
図6中の実線P
0に示す現在位置に配置されていたとする。
【0048】
現在位置に配置されたクーラントノズル62の軸線O
3は、仮想軸O
2に対して、角度θ
0だけ傾斜している。本実施形態においては、ロボット制御部14は、ステップS11にて撮像されたクーラントノズル62の画像データと、このときの撮像部18の座標および視線データとに基づいて、角度θ
0を算出する。次いで、ロボット制御部14は、角度θ
tと角度θ
0との差δθ
0=θ
t−θ
0を算出する。
【0049】
ステップS13において、ロボット制御部14は、ロボット12によってクーラントノズル62を移動させる。具体的には、ロボット制御部14は、ロボット12に内蔵されたサーボモータに指令を送り、ロボットハンド28をクーラントノズル62の位置まで移動させ、該クーラントノズル62を把持する。
【0050】
例えば、ロボット制御部14は、ステップS11にて撮像されたクーラントノズル62の画像データと、撮像部18の座標および視線データとに基づいて、ロボットハンド28をクーラントノズル62の位置まで移動させる。
【0051】
そして、ロボット制御部14は、ロボットハンド28を動作させて、ステップS12にて算出した差δθ
0が小さくなる方向(本実施形態においては、
図6の紙面表側から見て時計回り方向)へ、クーラントノズル62を回動軸64周りに回動させる。
【0052】
ステップS14において、ロボット制御部14は、ステップS11と同様に、撮像部18に指令を送り、クーラントノズル62を撮像する。
【0053】
ステップS15において、ロボット制御部14は、ステップS12と同様に、この時点におけるクーラントノズル62の現在位置と、目的位置との間の差を算出する。具体的には、ロボット制御部14は、ステップS14にて撮像されたクーラントノズル62の画像データに基づいて、この時点での角度θ
1を算出し、次いで、角度θ
tと角度θ
1との差δθ
1=θ
t−θ
1を算出する。
【0054】
ステップS16において、ロボット制御部14は、クーラントノズル62が目的位置に配置されたか否かを判断する。具体的には、ロボット制御部14は、ステップS15にて算出した差δθ
1がゼロとなったか否かを判断する。
【0055】
ロボット制御部14は、ステップS15にて算出した差δθ
1がゼロとなった場合、クーラントノズル62が目的位置に配置された(すなわちYES)と判断し、ステップS17へ進む。
【0056】
一方、ロボット制御部14は、ステップS15にて算出した差δθ
1がゼロとなっていない場合、クーラントノズル62が目的位置に配置されていない(すなわちNO)と判断し、ステップS14へ戻る。
【0057】
なお、このステップS16において、ロボット制御部14は、ステップS15にて算出した差δθ
1が、予め定められた閾値の範囲内になった場合に、YESと判断してもよい。例えば、
図6の紙面表側から見て時計回り方向を正方向とした場合、ロボット制御部14は、−1°<δθ
1<1°の関係を満たした場合に、YESと判断してもよい。
【0058】
ステップS17において、ロボット制御部14は、ロボット12に内蔵されたサーボモータに指令を送り、ロボット12の動作を停止させ、
図3に示すフローを終了する。このステップS3によって、クーラントノズル62を、
図5に示す目的位置に配置させることができる。
【0059】
再度、
図3を参照して、ステップS4において、ロボット制御部14は、ワークWを工作機械50に設置する。具体的には、ロボット制御部14は、ロボット12に内蔵されたサーボモータに指令を送り、所定位置に配置されたワークWを把持し、該ワークWを運搬し、治具Jの上に設置する。例えば、ロボット制御部14は、予め記憶されたロボットプログラムに従って、ワークWを治具Jの上に設置する。
【0060】
ステップS5において、工作機械制御部58は、工具54を駆動して、ワークWを加工する。具体的には、工作機械制御部58は、主軸駆動部56に指令を送り、主軸52をワークWへ向かって下方へ移動させ、主軸52をワークWに加工ポイントPにて当接させる。
【0061】
次いで、工作機械制御部58は、冷媒供給装置に指令を送り、クーラントノズル62に冷媒を供給する。このとき、ステップS3によってクーラントノズル62が目的位置に適正に配置されているので、
図5に示すように、冷媒Aを加工ポイントPに衝突させることができる。次いで、工作機械制御部58は、主軸駆動部56に指令を送り、主軸52を下方へ送りつつ、工具54を鉛直軸周りに回転駆動する。これにより、ワークWが加工される。
【0062】
ステップS6において、ロボット制御部14は、ワークWを工作機械50から取り除く。具体的には、ロボット制御部14は、ロボットプログラムに従って、ロボット12に内蔵されたサーボモータへ指令を送り、ロボットハンド28によって加工済みのワークWを把持し、所定の場所まで搬送する。
【0063】
ステップS7において、ロボット制御部14は、ユーザから受け付けた他のワーク加工指令が有るか否かを判断する。ロボット制御部14は、他のワーク加工指令が有る(すなわちYES)と判断すると、ステップS8へ進む。一方、ロボット制御部14は、ユーザから受け付けたワーク加工指令を全て完了した(すなわちNO)と判断すると、
図3に示すフローを終了する。
【0064】
ステップS8において、ロボット制御部14は、加工すべきワークWの種類が変更されたか否かを判断する。具体的には、ロボット制御部14は、ステップS7にて認識したワーク加工指令において、ワークWの種類が変更されているか否かを判断する。
【0065】
ロボット制御部14は、ワークWの種類が変更されている(すなわちYES)と判断すると、ステップS1へ進む。一方、ロボット制御部14は、ワークWの種類が変更されていない(すなわちNO)と判断すると、ステップS3へ進む。
【0066】
上述のように、本実施形態においては、ロボット12によって、クーラントノズル62を目的位置へ配置させている。この構成によれば、クーラントノズル62を目的位置へ高精度に配置させることができるので、冷媒を加工ポイントPに確実に供給できる。
【0067】
また、本実施形態においては、ロボット12によって、クーラントノズル62の位置調整(ステップS3)と、ワークWの取り換え(ステップS4、S6)を行っている。この構成によれば、クーラントノズル62を移動させるための駆動装置を別途設ける必要がない。したがって、装置の構成を簡単とすることができるので、コストを低減できる。
【0068】
また、本実施形態においては、ロボット制御部14は、クーラントノズル62の目的位置と現在位置との間の差δθを算出し、該差に基づいて、クーラントノズル62を目的位置に配置させている。このような動作をプログラム化することによって、クーラントノズル62を自動的に目的位置に配置できるので、ワークWの加工作業の自動化に有利である。
【0069】
また、本実施形態においては、ロボット制御部14は、撮像部18によって撮像された画像に基づいて、上記の差δθを算出している。この構成によれば、差δθを自動的且つ高精度に算出できる。
【0070】
なお、上述の実施形態においては、ロボット制御部14は、ロボット制御装置36の外部に設置されたPC38を介して、ユーザから指定されたワークWの種類を受信する場合について述べた。
【0071】
しかしながら、これに限らず、ロボット制御部14は、上位コントローラからワークWの種類を受信してもよい。この場合、上位コントローラは、ロボット制御部14に通信可能に接続され、通知部16としての機能を担う。
【0072】
また、上述の実施形態においては、撮像部18がロボットアーム26に設置されている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、撮像部18は、ワークセルの任意の位置に固定されてもよい。例えば、
図6に示す画像を撮像する場合、撮像部18は、クーラントノズル62の後方側に固定される。
【0073】
次に、
図7〜
図9を参照して、本発明の他の実施形態に係るロボットシステム100について説明する。なお、上述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0074】
ロボットシステム100は、ロボット12、ロボット制御部102、通知部104、第1の撮像部106、第2の撮像部108、第3の撮像部109、および記憶部20を備える。本実施形態においては、ロボット制御部102、通知部104、および記憶部20は、ロボット制御装置36に内蔵されている。
【0075】
第1の撮像部106、第2の撮像部108、および第3の撮像部109の各々は、上述の撮像部18と同様に、例えばCCDまたはCMOSセンサからなる撮像素子を含む。
【0076】
第1の撮像部106および第2の撮像部108は、ワークセル内の予め定められた2つの位置に固定されており、後述するクーラントノズル110を、それぞれ異なる角度から撮像する。
【0077】
一例として、第1の撮像部106は、クーラントノズル110の前方に配置され、第2の撮像部108は、クーラントノズル110の上方に配置される。一方、第3の撮像部109は、ロボットアーム26に固定される。第3の撮像部109は、治具Jに設置されたワークWを撮像する。
【0078】
ロボット制御部102は、バス40を介して、第1の撮像部106、第2の撮像部108、第3の撮像部109、記憶部20、および通知部104と通信可能に接続されている。
【0079】
クーラントノズル110は、取り付け具60を介して、主軸頭(図示せず)に取り付けられている。以下、
図8を参照して、本実施形態に係るクーラントノズル110の構成について説明する。
【0080】
クーラントノズル110は、形状記憶式の多関節アーム112と、該多関節アーム112の先端に設けられた吐出管114とを有する。多関節アーム112は、先端に設けられた吐出管114を、任意の位置に配置できる。吐出管114は、軸線O
4に沿って延在する中空の管状部材であって、先端に吐出口114aを有する。
【0081】
次に、
図7〜
図11を参照して、本実施形態に係るロボットシステム100の動作について説明する。
図10は、ワークWの加工フローの他の例を示している。なお、
図3に示すフローと同様のステップには、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0082】
図10に示す動作フローは、ロボット制御部102および工作機械制御部58が、ユーザまたは上位コントローラから、ワークWへの加工指令を受け付けたときに、開始する。
【0083】
図10に示す動作フローの開始後、ロボット制御部102は、ステップS4を実行し、ロボット12を動作してワークWを治具Jに設置する。
【0084】
ステップS21において、ロボット制御部102は、第3の撮像部109に指令を送り、ステップS4にて治具Jに設置したワークWを撮像する。第3の撮像部109は、ワークWの画像データを、ロボット制御部102へ送信する。
【0085】
ステップS22において、通知部104は、ステップS21にて撮像されたワークWの画像に基づいて、ワークWの種類を特定する。一例として、通知部104は、撮像されたワークWの画像を解析し、画像中の特徴点を検索する。
【0086】
この特徴点とは、静止画像中の輝度の変化の大きい箇所や、物体のエッジ等を示す点であって、静止画像において何らかの変化を有する点である。一方、記憶部20は、様々な種類のワークの特徴点のデータを予め記憶する。なお、記憶部20に記憶された種々のワークWの特徴点は、ステップS21と同じ条件の下、第2の撮像部108によって撮像された画像に基づいて、検索されたものである。
【0087】
通知部104は、ステップS21にて撮像されたワークWの画像の特徴点と、記憶部20に記憶された種々のワークの特徴点とを照らし合わせて、撮像されたワークWの種類を特定する。そして、通知部104は、特定したワークWの種類を、ロボット制御部102に通知する。
【0088】
ステップS23において、ロボット制御部102は、ステップS22にて取得したワークWの種類に基づいて、ワークWに対するクーラントノズル110の目的位置を決定する。
【0089】
この目的位置とは、クーラントノズル110の吐出口114aから吐出された冷媒を、加工ポイントPに衝突させることのできる、ワークWに対するクーラントノズル110の位置に相当する。
【0090】
本実施形態に係るクーラントノズル110から吐出された冷媒の噴射経路は、吐出される冷媒の流量(すなわち、冷媒供給装置による冷媒の供給圧力)と、吐出管114の位置および軸線O
4のz軸に対する傾きに依存する。
【0091】
吐出管114の位置および軸線O
4の傾きは、例えば、
図8に示すように、軸線O
4と吐出管114の先端面との交点Q
1、および、軸線O
4と吐出管114の基端面との交点Q
2の座標によって、評価できる。
【0092】
したがって、冷媒の流量と、交点Q
1およびQ
2の座標と、そのときの冷媒の噴射経路との関係を実験的に予め求めておけば、クーラントノズル110から冷媒を所望の位置へ送達することができる。
【0093】
例えば、上記の表1のようにワークWの種類が設定されていた場合、記憶部20は、タイプA〜CのワークWと関連付けて、吐出口114aから吐出された冷媒を加工ポイントPに衝突させることのできる交点Q
1−tおよびQ
2−tの座標を、予め記憶する。例えば、記憶部20は、以下に示すようなデータテーブルを予め記憶する。
【0095】
ロボット制御部102は、ステップS22にて特定されたワークWの種類に対応する交点Q
1−tおよびQ
2−tの座標を、記憶部20から読み出し、読み出した交点Q
1−tおよびQ
2−tの座標に対応する吐出管114の位置を、クーラントノズル110の目的位置として決定する。
【0096】
ステップS24において、ロボット制御部102は、ステップS23にて決定した目的位置にクーラントノズル110を配置させる。このステップS24について、
図11を参照して説明する。なお、
図4と同様のステップには同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0097】
ステップS24が開始された後、ステップS31において、ロボット制御部102は、第1の撮像部106および第2の撮像部108に指令を送り、クーラントノズル110を撮像する。
【0098】
具体的には、第1の撮像部106は、クーラントノズル110を前方から撮像し、画像データをロボット制御部102へ送信する。また、第2の撮像部108は、クーラントノズル110を上方から撮像し、画像データをロボット制御部102へ送信する。
【0099】
ステップS32において、ロボット制御部102は、ステップS23にて決定した目的位置と、クーラントノズル110の現在位置との間の差を算出する。
【0100】
具体的には、ロボット制御部102は、ステップS31にて2つの異なる角度から撮像されたクーラントノズル110の画像データと、第1の撮像部106および第2の撮像部108の座標と、第1の撮像部106および第2の撮像部108の視線データとに基づいて、現時点での吐出管114の交点Q
1−0およびQ
2−0の座標を算出する。
【0101】
そして、目的位置に対応する交点Q
1−tの座標と、現在位置に対応するQ
1−0の座標との差δQ
1−0、および、目的位置に対応する交点Q
2−tの座標と、現在位置に対応するQ
2−0の座標との差δQ
2−0を、それぞれ算出する。
【0102】
ステップS33において、ロボット制御部102は、ロボット12によってクーラントノズル110を移動させる。具体的には、ロボット制御部102は、ロボット12に内蔵されたサーボモータに指令を送り、ロボットハンド28を吐出管114の位置まで移動させ、該吐出管114を把持する。
【0103】
そして、ロボット制御部102は、ロボット12(例えばロボットハンド28)を動作させて、ステップS32にて算出した差δQ
1−0およびδQ
2−0が小さくなる方向へ、吐出管114を移動させる。
【0104】
ステップS34において、ロボット制御部102は、ステップS31と同様に、第1の撮像部106および第2の撮像部108に指令を送り、クーラントノズル110を撮像する。
【0105】
ステップS35において、ロボット制御部102は、ステップS32と同様に、この時点におけるクーラントノズル110の現在位置と、目的位置との間の差を算出する。具体的には、ロボット制御部102は、ステップS34にて撮像されたクーラントノズル110の画像データに基づいて、この時点での吐出管114の交点Q
1−1およびQ
2−1の座標を算出する。
【0106】
次いで、ロボット制御部102は、目的位置に対応する交点Q
1−tの座標と、現在位置に対応するQ
1−1の座標との差δQ
1−1、および、目的位置に対応する交点Q
2−tの座標と、現在位置に対応するQ
2−1の座標との差δQ
2−1を、それぞれ算出する。
【0107】
ステップS36において、ロボット制御部102は、クーラントノズル110が目的位置に配置されたか否かを判断する。具体的には、ロボット制御部102は、ステップS35にて算出した差δQ
1−1およびQ
2−1がゼロ(または、予め定められた閾値の範囲内)となったか否かを判断する。
【0108】
ロボット制御部102は、ステップS35にて算出した差δQ
1−1およびQ
2−1がゼロ(または、予め定められた閾値の範囲内)となった場合、クーラントノズル110が目的位置に配置された(すなわちYES)と判断し、ステップS17へ進む。
【0109】
一方、ロボット制御部102は、ステップS35にて算出した差δQ
1−1およびQ
2−1がゼロ(または、予め定められた閾値の範囲内)となっていない場合、クーラントノズル110が目的位置に配置されていない(すなわちNO)と判断し、ステップS34へ戻る。ステップS24の終了後、ロボット制御部102は、
図3に示すフローと同様に、ステップS5〜S8を順次実行する。
【0110】
上述のように、本実施形態によれば、クーラントノズル110は、形状記憶式の多関節アーム112を有するので、吐出管114を任意の位置に配置できる。したがって、冷媒を任意の位置へ送達できるので、より広範なワークWの加工に対応できる。
【0111】
また、本実施形態においては、ロボット12によって、クーラントノズル110を目的位置へ配置させている。この構成によれば、クーラントノズル110を目的位置へ高精度に配置させることができるので、冷媒を加工ポイントPに確実に供給できる。
【0112】
また、本実施形態においては、ロボット12によって、クーラントノズル110の位置調整(ステップS24)と、ワークWの交換(ステップS4、S6)を行っている。この構成によれば、クーラントノズル110を移動させるための駆動装置を別途設ける必要がない。したがって、装置の構成を簡単とすることができるので、コストを低減できる。
【0113】
また、本実施形態においては、ロボット制御部102は、第3の撮像部109によって撮像したワークWの画像に基づいて、ワークWの種類を特定している(ステップS22)。この構成によれば、ロボット制御部102は、ユーザからの指定を受けることなく、自動でワークWの種類を特定できるので、ワークWの加工作業の自動化に有利である。
【0114】
なお、上述の実施形態においては、クーラントノズル62、110が1つ設けられている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、複数のクーラントノズルが設けられてもよい。
【0115】
この場合において、ロボットハンドは、複数のクーラントノズルを同時に把持できるように構成されてもよい。この場合、ロボット制御部は、
図3または
図10と同様のフローによって、クーラントノズルを目的位置へ配置できる。または、ロボット制御部は、複数のクーラントノズルの各々に対して
図3または
図10のフローを実行し、複数のクーラントノズルを1つずつ目的位置に配置させてもよい。
【0116】
また、上述の実施形態においては、表1に示すようにワークの種類を規定した場合について述べた。しかしながら、これに限らず、ワークの種類は、例えば、ワークWの材質や硬度、または加工ポイントPの座標等、様々なパラメータに応じて定義され得る。
【0117】
また、上述の実施形態においては、加工ポイントPを、加工開始時の工具54とワークWとの当接点に設定した場合について述べた。しかしながら、これに限らず、加工ポイントPは、加工開始から予め定められた時間経過後の工具54の先端点に設定されてもよい。
【0118】
また、上述の実施形態においては、上下方向に移動する工具54によってワークWを加工する工作機械50について述べた。しかしながら、これに限らず、工作機械は、例えばフライス盤のように、ワークの外周を切削するものであってもよい。
【0119】
また、
図9に示す実施形態においては、ロボット制御部102と通知部104が別々の機能を担う場合について説明した。しかしながら、通知部104がロボット制御部102に組み込まれ、ロボット制御部102が通知部104の機能を担ってもよい。
【0120】
また、上述の実施形態においては、記憶部20がロボット制御装置36に内蔵されている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、記憶部20が、ロボット制御装置36の外部機器として設けられてもよい。
【0121】
また、上述の実施形態においては、ロボットシステム10、100が、撮像部18、106、108、109と、記憶部20を備える場合について述べた。しかしながら、ロボットシステムは、撮像部および記憶部を備えていなくてもよい。このようなロボットシステム120を、
図12に示す。
【0122】
ロボットシステム120は、ロボット122と、ロボット122を制御するロボット制御部124と、工作機械によって加工されるワークの種類をロボット制御部124に通知する通知部126とを備える。
【0123】
この実施形態においては、例えば、ロボット制御部124は、通知部126から、ワークの種類に関する情報として、加工プログラムに格納されている加工ポイントPの情報を取得する。
【0124】
そして、ロボット制御部124は、加工ポイントPに基づいて、例えば
図1に示すクーラントノズル62の角度θtを決定し、該角度θtにクーラントノズル62を配置させるように、ロボット122によってクーラントノズル62を移動させることができる。
【0125】
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本発明の実施形態の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得るが、これら特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることも当業者に明らかである。
【0126】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、工程、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。