【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、本明細書の独立請求項の主題により本発明の目的を実現し得ることが判明し、驚嘆した。本明細書の従属請求項は、本発明のアイディアを更に発展させる。
【0009】
尿を対象とするホリスティックな
1H核磁気共鳴(NMR)分光測定アプローチ、並びに血清における標的質量分析法(MS)及びリピドミックアプローチの併用により、本発明者らは、100歳以上の高齢者、高齢者、及び若年成人を含む十分に定義された老化コホートの代謝プロファイルにおける変化を検出することができた。
【0010】
選択された老化群は、若年成人(平均31歳)、高齢者(70歳)、及び100歳以上の高齢者(100歳)を含む北部イタリア地域に限定された均一母集団を表す。3老化群のうち、100歳以上の高齢者は、健康的な老化及び長寿命に関する十分に受け入れられているモデルであり[Sansoni P.ら、Exp Gerontol.2008年;第43巻:61〜65頁;Franceschi C.ら、Mech Ageing Dev.2007年;第128巻:92〜105頁;Cevenini E.ら、Expert Opin Biol Ther.2008年;第8巻:1393〜1405頁]、またその者の後天的な適正な老化は、炎症促進力と炎症抑制力の間の最適な平衡によりもたらされると思われる[Franceschi C.ら、Mech Ageing Dev.2007年;第128巻:92〜105頁]。
【0011】
本発明者らは、高齢者の表現型と100歳以上の高齢者の表現型との間で顕著な差異を見出し、驚嘆したが、この場合腸内微生物叢と宿主との間の相互作用の動力学、及び炎症反応のニュートラルバランス化が、長寿命表現型において更に際立っている。
【0012】
本発明者らは、相補的なNMR−MSに基づくメタボロミクス及びリピドミックアプローチを用いることにより、尿及び血清の両方において老化及び長寿命の代謝表現型(メタボ型)について特徴づけを行った。
【0013】
100歳以上の高齢者は、その人生の後期まで疾患及び能力障害を遅らせる独特の能力を有することから、ヒトの生存期間の最長期まで到達する。古典的な臨床パラメーター(表1)は、100歳以上の高齢者は、インシュリン抵抗性の発生率が非常に低く、その年齢にとって最適である人体測定学上の数値(BMI)、代謝数値(コレステロール、LDL−C、HDL−C、トリグリセリド)を有することを指し示している。更に、100歳以上の高齢者の認知機能を、ミニメンタルステート検査(MMSE)を用いて計測したが、重度の認知低下の発生率が低いことを指し示している。
【0014】
特に、100歳以上の高齢者は、独特な代謝表現型を呈する。尿の代謝プロファイリングにより、長寿命表現型は、フェニルアセチルグルタミン(PAG)、p−クレゾール硫酸塩(PCS)の排泄がより高いことから指し示されるように、腸のミクロビオームの影響を強く受けることが明らかにされた。本発明者らは、腸の微生物叢は、タンパク質及びフェニルアラニン及びチロシンを含む芳香族アミノ酸を広範に異化して、フェニルアセチルグルタミン及びp−クレゾール硫酸塩を形成するものと仮定する。
【0015】
網羅的なMSに基づく標的型メタボノミクス分析により、長寿命及び健康的な老化と関連する重要な生物学的変化が、血清中で明らかにされた。更に、3年齢群間で、100歳以上の高齢者は、その人生の後期まで疾患及び能力障害を遅らせる独特の能力を有することから、ヒトの生存期間の最長期まで到達するものとして特徴づけられる魅力的な長寿命モデルである。加齢と共に、本発明者らはリソホスファチジルコリン(lysophospatidylcholine)(LPC 18:2、LPC 20:4)の減少を認めたが、その濃度は、100歳以上の高齢者ではより低下している。特に、LPC 18:0の減少は、100歳以上の高齢者に特有と思われる。LPCは、脂肪酸の鎖長及び飽和度に基づき異なる種を有し、物理的性質及び生物学的性質も異なることを指摘しておかなければならないが、リン脂質(phopsholipid)は、一般的に炎症促進性であり[Aiyar N.ら、Mol Cell Biochem.2007年;第295巻:113〜120頁]、アテローム生成性質を有し[Schmitz G.ら、Atherosclerosis.2010年;第208巻:10〜18頁]、またそのレベル増加は、2型糖尿病患者で多く認められる[Rabini RAら、Diabetes.1994年;第43巻:915〜919頁]。
【0016】
100歳以上の高齢者に関しては、いくつかのアシルエーテルPC種について、バランスの取れた濃度変化を呈し、3つのPC−O種、すなわちPC−O 34:3、PC−O 36:4、PC−O 40:1の含有量は有意に減少し、また2つのエーテルPC種、すなわちPC−O 32:1、PC−O 34:1は有意に高めである。エーテルリン脂質の生理学的役割はあまり理解されていないが、sn−1脂肪族鎖をグリセロール骨格に連結するビニルエーテル結合を含有するプラスマロゲンが、最も豊富なエーテルリン脂質である。この場合、酸化的損傷の取り扱いが異なることに起因して、アシルエーテルホスファチジルコリン種のレベルも異なると考えられる。
【0017】
加齢と共に、スフィンゴミエリン(SM)種の増加が認められ、100歳以上の高齢者においてSM 24:1及びSM16:0の増加が顕著である。なおも、本発明者らは、100歳以上の高齢者で、SM 24:0及びSM−OH 22:1濃度の特異的低下を見出した。SM種は、構築、代謝、及び輸送においてコレステロールと緊密に関連する重要な細胞膜の構成成分で、脂質ラフト内に濃縮している。SMの生理学的役割は、SMレベル上昇とアテローム性動脈硬化症との間の関連性を明らかにした過去の研究[Kummerow FAら、J Nutr Biochem.2001年;第12巻:602〜607頁]のようには依然として明確ではないが、一方その他の研究では、血漿スフィンゴミエリンレベルは、CVDイベントのリスク増加とは関連しないことが指し示された。最後に、ほとんどのジアシルホスファチジルコリン種(PC−O)のレベルについて、その有意な変化はないが、100歳以上の高齢者は、PC−O 36:2の個々のレベルにおける変動を呈している。
【0018】
PC及びPC−O含有量の変化は、宿主の生理学的反応の重要なメディエーター及び制御物質であり、酸化ストレス、アポトーシス、及び免疫調節、及び炎症機能に関係するアラキドン酸代謝合成物(プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン)の活性に影響を与え得る。確かに、100歳以上の高齢者は、炎症抑制及び炎症促進特性の両方を備える脂質メディエーターについて、独特のバランスが取れたネットワークも呈した。
【0019】
高齢者と比較して、より高濃度のロイコトリエン(leukotrines)、LTB−4、及びLTE−4が認められた。100歳以上の高齢者では、15−リポオキシゲナーゼ(15−LOX)酵素の主要な生成物である15−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15−HETE)がより高濃度で認められる。15−HETEは、5−リポオキシゲナーゼの形成を阻害し、ロイコトリエンB4及び12−HETEの生成を減少させ、また免疫反応を抑制する。高齢者と比較して、CYP経路の高活性化も、100歳以上の高齢者で認められ、8,9−EpETrE産生が増加する一方、11,12−DiHETrE濃度は低下している。EpETrEは、心臓組織及び心臓外組織の両方における多くの細胞内シグナリングの重要な成分である。いくつかの研究から、EpETrEは、核内因子(NF)−κB−媒介型遺伝子転写の活性化を阻害することにより抗炎症効果を呈することが明らかにされた。更に、EpETrEは、血管構造内で血栓溶解及び血管形成特性を呈する。EpETrEは、可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)によりジヒドロキシエイコサトリエン酸(DiHETrE)に更に代謝され得る。
【0020】
一般的に、EpETrEがsEHによりDiHETrEに代謝されると、EpETrEの生物学的活性は、あまり際立たなくなり、従ってこの場合、11,12−DHET濃度が減少することから、sEHがその前駆体11,12−EpETrEに及ぼす効果の減少として明らかとなり得る。100歳以上の高齢者では、生物学的活性分子で脂質過酸化のマーカーである9−HODE、及びリノール酸の安定な酸化生成物である9−オキソ−HODEの顕著な減少を呈するが、これらの産生は酸化ストレスが増加すると増加する。
【0021】
100歳以上の高齢者では、リノール酸の安定な酸化生成物である9−オキソ−HODEの顕著な減少を呈するが、これらの産生は酸化ストレスが増加すると増加する。ほとんどのリノール酸は、PC及びコレステリルリノレートとしてエステル化された形態で存在するが、両者はLDLの主要な成分であり、また多くの種類の酸化ストレスに連続的に曝露されてヒドロキシ種及びヒドロペルオキシ種を生成する。
【0022】
9−オキソ ODE等の脂質酸化生成物のレベル増加は、リウマチ性関節炎及び関節硬化症に罹患している患者の血漿サンプル中にこれまで検出された。
【0023】
更に、高齢者と比較して100歳以上の高齢者では、エイコサペンタノン酸(EPA)の枯渇が認められる。EPAは、ヒトではα−リノール酸から合成可能、又は油分の多い魚又は魚油サプリメントからより多量に直接合成可能であるが、EPAは、多様な機能を有するn−3エイコサノイドに転換可能である。EPAの枯渇は、n−3エイコサノイドの生合成の増加を呈し得る。
【0024】
従って本発明は、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避を可能にするライフスタイルを診断する方法と一部関連し、同法は
対象から血清サンプルを得るステップと、
前記サンプル中の1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)40:1レベルを測定するステップと、
対象のPC−O 40:1レベルを事前に決定された参照値と比較するステップと
を含み、
前記事前に決定された参照値が、対照集団のPC−O 40:1平均血清レベルに基づき、並びに前記サンプル中のPC−O 40:1血清レベルが、前記事前に決定された参照値と比較して低減した場合、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避の可能性が高いことを示す。
【0025】
この方法は、例えば対象から血清を得るのは十分に確立された手順であるという長所を有する。実際の診断法は、身体外部の血清サンプル中で実施可能である。
【0026】
サンプル中のPC−O 40:1レベルは、当技術分野において公知の任意の手段により検出及び定量可能である。例えば、質量分光測定法、例えばUPLC−ESI−MS/MS、又はNMR分光測定法、例えば
1H−NMR分光測定法が使用可能である。その他の方法、例えばその他の分光測定法、クロマトグラフィー法、標識法、又は定量化学的方法等も使用可能である。
【0027】
事前に決定された参照値は、対照集団のPC−O 40:1平均血清レベルに基づく。対照集団は、遺伝的背景、年齢、及び平均的な健康状態が類似した少なくとも3名、好ましくは少なくとも10名、より好ましくは少なくとも50名からなる群であり得る。
【0028】
対照集団は同一人であってもよく、従って事前に決定された参照値は、同一の対象から事前に得られる。この数値は、例えば現在のライフスタイルを以前のライフスタイルと直接比較できるようにし、改善を直接評価できる。
【0029】
代表的な老化関連の慢性炎症性障害は当業者に周知されている。大部分の老化表現型は、炎症ネットワークと炎症抑制ネットワークの間の不均衡により説明され、この不均衡により、老化の低グレード慢性炎症促進状態「炎症性の老化(inflamm−ageing)」が引き起こされる(Candore G.ら、Biogerontology.2010年10月;第11巻(5):565〜73頁)。
【0030】
したがって、本発明の方法は、炎症性の老化の診断に使用することができる。
【0031】
代表的な年齢関連の炎症性障害として、例えばアテローム性動脈硬化症、関節炎、痴呆、2型糖尿病、骨粗鬆症、及び循環器疾患が挙げられる。例えば、これらの疾患の場合、炎症は、老化と結びついた分子変質に対する考え得る潜在的基盤、及び年齢関連の病理学的プロセスとして認められる(Chungら、ANTIOXIDANTS & REDOX SIGNALING、第8巻、3&4号、2006年、572〜581頁)。
【0032】
PC−O 40:1は、本発明の目的のための唯一のマーカーとして使用可能である。
【0033】
単独のマーカーとしてのPC−O 40:1は、本発明の診断法のためのツールとして効果的であるが、診断がちょうど1つを超えるマーカーに依拠する場合、前記診断の質及び/又は予知力は改善する。
【0034】
従って、1つ又は複数のその他のマーカーが、PC−O 40:1と併用して、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避の可能性のために使用可能である。
【0035】
本発明者らは、その他のバイオマーカーも老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避の可能性を検出するのに使用可能であることを認め、驚嘆した。
【0036】
このように、本発明者らは、
1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)32:1、
1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)34:1、
15−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15−HpETE)、
ロイコトリエンE4(LTE4)、
ロイコトリエンB4(4LTB)、及び/又は
8,9−エポキシエイコサトリエン酸(8,9 EpETre)
の血清濃度増加から、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避を可能にするライフスタイルの診断が可能となること、一方
ヒドロキシスフィンゴミエリン(SM−OH)22:1、
リソホスファチジルコリン(LPC)18:0、
スフィンゴミエリン(SM)24:0、
1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)34:3、
1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)36:4、
ホスファチジルコリン(PC)36:2、
ヒドロキシオクタデカジエン酸(9−HODE)、
9−オキソ−オクタデカジエン酸(9−オキソ−HODE)
及び/又は
11,12−エポキシエイコサトリエン酸(11,12−DiHETre)
の血清濃度減少からは、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避を可能にするライフスタイルの診断が可能となることを識別した。
【0037】
個々の脂質種について以下のように注解した:
[脂質クラス][総炭素原子数]:[二重結合の総数]。例えば、PC34:1は、炭素原子34個及び二重結合1個を含むホスファチジルコリン種を表す。
【0038】
従って、本発明の方法では、予め得られた参照値とf比較して、1つ若しくは複数の下記のバイオマーカー、PC−O 32:1、PC−O 34:1、15−HpETE、LTE4、LTB4、8,9EpETreの血清濃度が増加しているか、及び/又は1つ若しくは複数の下記のバイオマーカー、SM−OH 22:1、LPC 18:0、SM 24:0、PC−O 34:3、PC−O 36:4、PC 36:2、9−HODE、9−オキソ−HODE、11,12−DiHETreの血清濃度が減少しているかも評価することにより、診断精度は高まる可能性がある。
【0039】
本発明の方法は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、又は少なくとも8個のバイオマーカーの評価を含み得る。
【0040】
例えば、PC−O 40:1は、SM−OH 22:1と共に評価可能である。
PC−O 40:1は、SM 24:0と共にやはり評価可能である。
PC−O 40:1は、LPC 18:0と共にやはり評価可能である。
PC−O 40:1は、LTE4と共に評価可能である。
PC−O 40:1は、PC−O 34:1と共に評価可能である。
PC−O 40:1は、SM−OH 22:1及びSM 24:0と共に評価可能である。
PC−O 40:1は、SM−OH 22:1、SM 24:0、及びPC−O 40:1と共に評価可能である。
PC−O 40:1は、SM−OH 22:1、SM 24:0、PC−O 40:1、及び9−HODEと共に評価可能である。
PC−O 40:1は、SM−OH 22:1、SM 24:0、PC−O 40:1、9−HODE、及び9−オキソ−HODEと共に評価可能である。
PC−O 40:1は、SM−OH 22:1、SM 24:0、PC−O 40:1、9−HODE、9−オキソ−HODE、及びLPC 18:0と共に評価可能である。
PC−O 40:1は、SM−OH 22:1、SM 24:0、PC−O 34:1、9−HODE、9−オキソ−HODE、LPC 18:0、及びLTE4と共に評価可能である。
【0041】
2つ以上のバイオマーカーを評価する長所は、より多くのバイオマーカーを判断すれば、診断がより信頼できるようになることにある。例えば、1、2、3、4、5、6、又は7個よりも多くのバイオマーカーが、上記のような濃度の上昇又は減少を見せた場合には、これは、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避の可能性が高いことの有力な指標である。
【0042】
従って、本発明の方法は、サンプル中のSM−OH 22:1、LPC 18:0、SM 24:0、PC−O 34:1、9−HODE、9−オキソ−HODE、又はLTE4のうち、少なくとも1つのレベルを測定するステップ、及び対象のSM−OH 22:1、LPC 18:0、SM 24:0、PC−O 34:1、9−HODE、9−オキソ−HODE、又はLTE4のうち、少なくとも1つのレベルを事前に決定された参照値と比較するステップを更に含むことができ、前記事前に決定された参照値が、対照集団のSM−OH 22:1、LPC 18:0、SM 24:0、PC−O 34:1、9−HODE、9−オキソ−HODE、若しくはLTE4の平均血清レベルに基づき、並びに前記事前に決定された参照値と比較して、前記サンプル中のPC−O 40:1血清レベルが低い場合、及び/若しくは前記サンプル中のSM−OH 22:1、LPC 18:0、SM 24:0、PC−O 34:1、9−HODE、若しくは9−オキソ−HODEの血清レベルが低い場合、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/若しくは回避の可能性が高いことを示し、並びに/又は前記サンプル中の血清LTE4、PC−O 34:1レベルが、前記事前に決定された参照値と比較して上昇した場合、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/若しくは回避の可能性が高いことを示す。
【0043】
本発明の診断精度は、予め得られた参照値と比較して、1つ若しくは複数の下記のバイオマーカー、PC−O 32:1、15−HpETE、LTB4、8,9EpETreが血清中で増加しているか、及び/又は1つ若しくは複数の下記のバイオマーカー、PC−O 34:3、PC−O 36:4、PC 36:2、11,12−DiHETreが血清中で減少しているかも評価することにより、更に高まる可能性がある。
本発明の方法は、健康的な及び/又はより健康的な老化を可能にするライフスタイルを診断するために、付加的又は二者択一的に使用可能である。
【0044】
より健康的な老化は、実際のPAG及び/又はPCSレベルを、同一の対象から予め得られた、事前に決定された参照値と比較することにより診断可能である。従って、この場合、同一の対象は対照集団の役目を果たし、そしてライフスタイルの改善を直接的に認めることができる一方、その他の平均的な対照集団について認められるわずかに異なる状態に由来する不確定要素は排除される。
【0045】
本発明の方法は、長寿命及び/又は長寿命の可能性について診断するのにも使用可能である。これは、より健全なライフスタイルの結果を直接検出可能であり、健全なライフスタイルの維持についてモニタリングが可能であり、また不健全なライフスタイルは、不健全なライフスタイルの最初の臨床症状が発現する前に矯正可能であるという長所を有する。
【0046】
本発明の方法は、より健全な腸の微生物叢−宿主相互作用を二者択一的及び/又は付加的に診断するのに更に使用可能である。腸のミクロビオームは、非常に多くの重要な生化学的機能を宿主のために行い、ミクロビオームの障害は多数の及び多様なヒト疾患プロセスと関連する(Kinrossら、Genome Medicine、2011年、第3巻:14頁)。好ましくない腸の微生物叢−宿主相互作用は、全身性の病態、例えば肥満及び循環器疾患、又は腸の状態、例えば炎症性の腸疾患等の多くの臨床症状を有し得る。
【0047】
腸の微生物叢−宿主相互作用は、あらゆる対象で診断可能であるが、成人又は高齢者の健全な微生物叢−宿主相互作用をモニタリングすることが特に重要であり得る。従って、より健全な腸の微生物叢−宿主相互作用は、高齢者を対象に診断され得る。
【0048】
対象は、その出身国の平均予想生存期間の最初の半分を過ぎた場合、好ましくはその出身国の平均予想生存期間の最初から2/3を過ぎた場合、より好ましくはその出身国の平均予想生存期間の最初から3/4を過ぎた場合、最も好ましくはその出身国の平均予想生存期間の最初から4/5を過ぎた場合には「高齢」と考えられる。
【0049】
例えば、対象がヒトの場合には、本発明の方法は、少なくとも45歳、少なくとも60歳、又は少なくとも75歳の成人を対象に実施され得る。
【0050】
本発明の方法で試験される対象は、例えばヒト又は動物、特に哺乳類であり得る。代表的な動物は、例えば家畜のネコ又はイヌ等の愛玩動物であり得る。
【0051】
本発明の方法は、ライフスタイル変更の結果を付加的又は二者択一的に検出するのに使用可能である。この際、PC−O 34:1レベル及び任意選択的に本明細書で言及したその他のバイオマーカーレベルを、対象から事前に、例えばライフスタイル変更前又はライフスタイル変更期間中の初期に得られたPC−O 34:1レベル及び任意選択的にその他のバイオマーカーレベルと比較する場合、有利であり得る。
【0052】
従って、本発明の方法は、より健全なライフスタイルの診断を可能にし、事前に決定された参照値は、ライフスタイル変更前の対象から得られたPC−O 40:1血清レベル、及び任意選択的にその他のバイオマーカー血清レベルに基づく。
【0053】
ライフスタイルの変更は、例えば職業の変更、睡眠の延長、飲酒の節制、やりがいの増加、ストレスの抑制、喫煙の節制、スポーツの増加、仕事の変更、及び/又は生活環境等のあらゆる変更であり得る。
【0054】
ライフスタイルの変更は、食事の変更でもあり得る。
【0055】
食事の変更は、例えば以前に摂取されなかった、又は異なる量で摂取された少なくとも1つの栄養製品の使用であり得る。
【0056】
従って、本発明の方法は、新規栄養療法、栄養製品、及び/又は薬剤の有効性を試験するのに使用可能である。
【0057】
栄養製品は、例えば健康的な老化及び/又は老化関連の慢性炎症性障害の回避に効果を有すると謳う生成物であり得る。
【0058】
典型的に、栄養製品は、食料品、飲料、ペット用食料品、食品サプリメント、機能性食品、食品添加物又は栄養製剤であり得る。
【0059】
バイオマーカーレベル、例えばサンプル中のLPC 18:0レベル及び任意選択的にその他のバイオマーカーレベルは、当技術分野において公知の任意の手段により検出及び定量可能である。事例として、質量分光測定法、例えばUPLC−ESI−MS/MS、又はNMR分光測定法、例えば
1H−NMR分光測定法が使用可能である。
【0060】
その他の方法、例えばその他の分光測定法、クロマトグラフィー法、標識法、又は定量化学的方法も使用可能である。
【0061】
本発明の方法は、試験対象のPC−O 40:1レベル及び任意選択的にその他のバイオマーカー濃度を、血清中のPC−O 40:1レベル、及び任意選択的に比較の対照となる対象からのその他のバイオマーカーのレベルに由来し得る事前に決定された参照値と比較するステップを含む。
【0062】
対象のPC−O 40:1レベル及び任意選択的にその他のバイオマーカーレベルと対応する対照値との間の差異の程度も、リスクの程度を特徴づけるのに有用であり、こうしてどの対象がある特定の療法から最も利益を享受するか測定する。
【0063】
PC−O 40:1及び任意選択的にその他のバイオマーカーに対応する参照値は、試験対象から得られたLPC 18:0及び任意選択的にその他のバイオマーカーのレベルを特徴づけるのに用いられる同一の単位を用いて計測するのが好ましい。従って、PC−O 40:1及び任意選択的にその他のバイオマーカーのレベルが絶対値である、例えばPC−O 40:1の単位がμmol/l(μM)である場合には、参照値もやはり、一般母集団又は対象の選択された対照集団に含まれる個人のμmol/l(μM)であるPC−O 34:1の単位に基づく。
【0064】
更に、参照値は、単一のカットオフ値、例えばメジアン又は平均値等であり得る。得られた血清サンプル中のPC−O 40:1及び任意選択的にその他のバイオマーカーの参照値、例えば平均レベル、メジアンレベル、又は「カットオフ」レベル等は、本明細書に参考として援用するKnapp、R.G.、及びMiller、M.C.(1992年)のClinical Epidemiology and Biostatistics.William and Wilkins、Harual Publishing Co.Malvern、Pa.の記載に従い、一般母集団又は選択された母集団に含まれる個人からなる大規模なサンプルをアッセイし、そして統計モデル、例えば陽性基準を選択する適中率法(predictive value method)又は最適な特異性(最高の真陰性率)及び感度(最高の真陽性率)を定義する受信者操作特性曲線(receiver operator characteristic curve)を用いることにより確立され得る。
【0065】
参照値は、例えば性別、人種、遺伝形質、健康状態、又は年齢により変わるが、当業者は正しい参照値を割り振る方法を知っている。
【0066】
例えば、事前に決定された平均参照値は、
1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)32:1の場合、2μM
1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)34:1の場合、7.80μM
15−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15−HpETE)の場合、1.25μg/血清100μl
ロイコトリエンE4(LTE4)の場合、0.013μg/血清100μl
ロイコトリエンB4(4LTB)の場合、0.020μg/血清100μl、及び/又は
8,9−エポキシエイコサトリエン酸(8,9EpETre)の場合、0.070μg/血清100μl
ヒドロキシスフィンゴミエリン(SM−OH)22:1の場合、16.07μM
リソホスファチジルコリン(LPC)18:0の場合、52.00μM
スフィンゴミエリン(SM)24:0の場合、25.00μM
1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)34:3の場合、5.07μM
1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)36:4の場合、14.30μM
1−O−アルキル−2−アシルグリセロホスホコリン(PC−O)40:1の場合、1.41μM
ホスファチジルコリン(PC)36:2の場合、10.00μM
ヒドロキシオクタデカジエン酸(9−HODE)の場合、0.34μg/血清100μl
9−オキソ−オクタデカジエン酸(9−オキソ−HODE)の場合、0.043μg/血清100μl、及び/又は
11,12−エポキシエイコサトリエン酸(11,12−DiHETre)の場合、0.017μg/血清100μl
であり得る。
【0067】
上で詳記したように、より高い値又は低い値は、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避の可能性が高いことを示す。
【0068】
本発明者らは、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避を可能にするライフスタイルを診断するための尿中バイオマーカーをも更に見出し驚嘆した。
【0069】
すなわち、本発明者らは、フェニルアセチルグルタミン(PAG)及び/又はp−クレゾール硫酸塩(PCS)の尿中濃度が増加すれば、その増加は、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避を可能にするライフスタイルの診断を可能にすることを識別した。
【0070】
フェニルアセチルグルタミン(PAG)及び/又はp−クレゾール硫酸塩(PCS)は、本発明の方法の後に評価可能であり、尿サンプルが用いられることが唯一異なる。
【0071】
尿サンプルは非侵襲的に得られる及び分析可能であるという点で長所を有する。
【0072】
PAG及びPCSに関する事前に決定された参照値は、当業者により測定することができ、また最大値は状況に応じて変化する。例えば、代表的な参照値は、PCSの場合、尿中クレアチニン63μmol/mmol、及びPAGの場合、尿中クレアチニン81μmol/mmolであり得る。これより高い数値は、老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避の可能性が高いことを示す。
【0073】
また本発明は、老化慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避を可能にするライフスタイルの診断で使用可能である新規バイオマーカーの発見にも拡張される。
【0074】
従って、本発明は、老化慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避を可能にするライフスタイルを診断するためのバイオマーカーを含み、前記バイオマーカーはPC−O 40:1である。
【0075】
このバイオマーカーは、血清中で検出され得るが、これは、試験されるサンプルは容易に得ることができ、他の目的の血清を分析する間に可能であるという長所を有する。
【0076】
当業者は、本明細書に記載する本発明のすべての特徴を、開示するような本発明の範囲から逸脱せずに自由に組み合わせることができると理解するであろう。特に、本発明の方法について記載する特徴は、本発明のバイオマーカーに適用可能であり、またその逆も同様である。
【0077】
また当業者は、バイオマーカー及び診断法におけるその適用は、
老化関連の慢性炎症性障害の遅延及び/又は回避を可能にするライフスタイルを診断する、
健康的な老化を可能にするライフスタイルを診断する、
長寿命を診断する、及び/又は
より健全な腸の微生物叢−宿主相互作用を診断する
こととして本明細書に記載されるが、
バイオマーカーは、
老化関連の慢性炎症性障害を発症しやすいライフスタイルを診断する、
健康的な老化を妨げる可能性があるライフスタイルを診断する、
生存期間が短縮するリスクを診断する、及び/又は
より不健全な腸の微生物叢−宿主相互作用を診断する
方法にも同様に好適に適用可能であると理解するであろう。
【0078】
更なる態様では、本発明は、
老化関連の慢性炎症性障害の発症を遅延させ、回避する、及び/又は予防する、
健康的な老化を促進する、
長寿命を促進する、
生存期間が短縮するリスクを低下させる、
より健全な腸の微生物叢−宿主相互作用を促進する、及び/又は
より不健全な腸の微生物叢−宿主相互作用を予防する
方法を提供する。
【0079】
典型的に、かかる方法は、対象に対して本明細書に記載するような診断法を行うステップ及びその結果に基づき対象のライフスタイルを修正するステップを含む。例えば、診断ステップの結果が、対象において
老化関連の慢性炎症性障害の発症について高い可能性、
健康的な老化を妨げる可能性があるライフスタイル、
生存期間の短縮に関するリスク、及び/又は
より不健全な腸の微生物叢−宿主相互作用
を示す場合には、方法は対象のライフスタイルを修正するステップを含み得る。
【0080】
対象のライフスタイルの修正は、本明細書に記載するようなあらゆる変更、例えば食事の変更、職業の変更、睡眠の延長、飲酒の節制、やりがいの増加、ストレスの抑制、喫煙の節制、スポーツの増加、仕事の変更、及び/又は生活環境等であり得る。
【0081】
変更は、以前に摂取されなかった、又は異なる量で摂取された少なくとも1つの栄養製品、例えば健康的な老化及び/又は老化関連の慢性炎症性障害の回避に効果を有する栄養製品(食料品、飲料、ペット用食料品、食品サプリメント、機能性食品、食品添加物、又は栄養製剤を含む)の使用であるのが好ましい。
【0082】
対象のライフスタイルの修正には、対象が自身のライフスタイルを変更する必要性を示すステップ、例えば上記のようなライフスタイルの変更を対象に対して処方、促進、及び/又は提案するステップも含まれる。例えば、方法は対象に対して上記のような少なくとも1つの栄養製品を投与又は提供するステップを含み得る。
【0083】
更に、本発明の長所及び特徴は、下記の表、実施例、及び図から明らかである。
【0084】
表1は、募集した老化コホートの人口統計学、臨床的特徴を表す表である。数値は、括弧内の範囲と共に、平均値(±SD)として提示する。
1BMI=肥満指数、
2糖尿病:糖尿病歴、空腹時血漿血糖値≧126mg/dl、
3HDL=高密度リポタンパク質、
4LDL=低密度リポタンパク質、
5MMSE=ミニメンタルステート検査(MMSE)を用いた認知機能指標。分析で用いたスコアは、老人について年齢及び教育年数により補正した。高齢者の認知障害に関するMMSEは、重度(スコア0〜17)、軽度(スコア18〜23)、又は無し(スコア24〜30)として等級化した。100歳以上の高齢者のMMSEが≧20の場合、重度の認知低下はなかったが、<12の場合、重度の認知低下があった。
6CRP=C反応性タンパク質、
7A−SAA=血清アミロイドA(SAA)タンパク質。
【0085】
表2は、選択された老化群間の判別モデルについて、特徴及びモデルの概要を指し示す表である。
【0086】
表3は、
1H−NMRにより検出した、3年齢群の有意に制御された全尿中代謝物を表す表である。半定量情報を得るために、これらの3代謝物についてオリジナルのスペクトル内のピーク面積を積分し、そして統計的有意性のある差異を、Wilcoxon順位和検定を用いて確認し、*p<0.05.、**p<0.01、***p<0.001のようにマークした。
【0087】
表4は、LC−MSにより検出した、3年齢群の有意に制御された全血清代謝物を指し示す表である。数値は、平均値±SDとして表現し、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001のようにマークした。
【0088】
表5は、3年齢群について、UPLC−ESI−MS/MSにより分析した炎症性マーカーの血清濃度レベル(ng/100μl)を指し示す表であり、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001のようにマークした。