特許第6208768号(P6208768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208768
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】低温保存装置、およびその作動方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 1/02 20060101AFI20170925BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A01N1/02
   F25D3/10 C
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-545692(P2015-545692)
(86)(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公表番号】特表2016-501880(P2016-501880A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013003664
(87)【国際公開番号】WO2014090383
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年6月28日
(31)【優先権主張番号】102012024105.4
(32)【優先日】2012年12月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】フューア,ギュンター,エール
(72)【発明者】
【氏名】ツィマーマン,ハイコ
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表平06−509782(JP,A)
【文献】 特開昭62−124398(JP,A)
【文献】 特開昭59−051201(JP,A)
【文献】 特表2001−514866(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0283197(US,A1)
【文献】 特開2009−190163(JP,A)
【文献】 特開2008−285181(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0219788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/02
F25D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に生体の試料(1)を低温保存状態で保存するよう適合化された低温保存装置(100)であって、
− 液体窒素の貯留層(12)にまたは液体窒素の前記貯留層(12)の上の窒素気化ガスに前記試料(1)を所定の保存温度で収容し冷却するための且つ蓋部(13)で閉じられる内部空間(11)を有する保存容器(10)と、
− 前記蓋部(13)に隣接するフード空間(22)を包囲するフード(21)を有するフード装置(20)と、
− 冷却剤容器を有し、冷却剤を前記フード空間(22)内に導くよう設けられたフラッシュ装置(30)と、
を含み、
− 前記フラッシュ装置(30)は少なくとも1つの冷却剤導管(31)を有し、前記少なくとも1つの冷却剤導管は、前記フード空間(22)に通じ、局所的に限定された冷却部(24)に冷却剤流(2)を当て前記冷却部(24)に前記保存温度を形成するよう配置され、
特徴として、
− 前記冷却剤容器が、液体窒素を収容するよう適合化され、前記保存容器(10)を含み、
− 前記少なくとも1つの冷却剤導管(31)は、前記保存容器(10)の前記内部空間(11)から前記蓋部(13)を通って前記冷却部(24)へ伸び、
− 前記フラッシュ装置(30)は、前記少なくとも1つの冷却剤導管(31)で、前記保存温度を、排他的に前記冷却部(24)に局所的に形成し、前記フード空間(22)の残部には形成しないよう配置され、
− 前記フード装置(20)は、前記冷却部(24)に配置され試料を保持するよう設けられた試料キャリア(25)を有するものである、
低温保存装置(100)。
【請求項2】
− 前記保存容器(10)および/または追加的な容器(32)には、窒素気化ガスから前記冷却剤流(2)を生成するよう適合化された加熱装置(14)が配置されているものである、請求項1に記載の低温保存装置。
【請求項3】
前記フラッシュ装置(30)は、
− 前記フラッシュ装置(30)に、前記冷却部(24)における温度を測定できる温度センサ(27)が設けられている、
− 前記フラッシュ装置(30)が遮蔽装置(26)を有し、前記遮蔽装置によって前記冷却部(24)が前記フード空間(22)における降下する気体に対して遮蔽できる、および
− 前記フラッシュ装置(30)が偏向装置を有し、前記偏向装置によって前記冷却剤流(2)を前記冷却剤導管(31)から前記冷却部(24)へ方向付けることができる、
という特徴のうちの少なくとも1つの特徴を含むものである、請求項1または2に記載の低温保存装置。
【請求項4】
− 前記蓋部(13)は前記冷却部(24)に隣接する閉鎖可能な蓋開孔(16)を有するものである、請求項1乃至3のいずれかに記載の低温保存装置。
【請求項5】
− 前記内部空間(11)と前記冷却部(24)の間で試料を移動させるよう適合化された第1の移動装置(50)、および/または
− 前記冷却部(24)と前記フード装置(20)の周囲領域との間で試料を移動させるよう適合化された第2の移動装置(60)、
を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の低温保存装置。
【請求項6】
− 前記第2の移動装置(60)は、前記冷却部(24)における前記フラッシュ装置(30)によって冷却できる移動容器(63)を含むものである、請求項5に記載の低温保存装置。
【請求項7】
− 試料表面から凝縮物を機械的におよび/または熱的に除去するよう適合化された清掃装置(70)を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の低温保存装置。
【請求項8】
− 前記フラッシュ装置(30)および/または前記閉鎖可能な蓋開孔(16)制御するよう適合化された制御装置(80)を含む、請求項に記載の低温保存装置。
【請求項9】
− 前記フラッシュ装置(30)前記第1の移動装置(50)、および/または前記第2の移動装置(60)制御するよう適合化された制御装置(80)を含む、請求項5または6に記載の低温保存装置。
【請求項10】
− 前記フラッシュ装置(30および/または前記清掃装置(70)を制御するよう適合化された制御装置(80)を含む、請求項に記載の低温保存装置。
【請求項11】
− 前記冷却部(24)が前記フード空間(22)の体積より小さい体積を有する、請求項1乃至10のいずれかに記載の低温保存装置。
【請求項12】
低温保存装置(100)を用いて試料(1)を低温保存状態で操作する方法であって、
前記低温保存装置は、液体窒素の貯留層(12)にまたは液体窒素の前記貯留層(12)の上の窒素気化ガスに前記試料(1)を収容し所定の保存温度で冷却するための内部空間(11)と、蓋部(13)とを有する保存容器(10)と、前記蓋部(13)に隣接するフード空間(22)を形成するフード装置(20)と、冷却剤流(2)を前記フード空間(22)内に導くよう設けられた冷却剤容器を有するフラッシュ装置(30)とを含み、
− 前記フラッシュ装置(30)は、前記フード空間(22)に通じる少なくとも1つの冷却剤導管(31)を有し、
− 局所的に限定された冷却部(24)が、前記少なくとも1つの冷却剤導管(31)を通して前記冷却部(24)に流れる冷却剤流(2)によって冷却され、
特徴として、
− 前記フラッシュ装置(30)は、前記少なくとも1つの冷却剤導管(31)で、前記保存温度を、排他的に前記冷却部(24)に局所的に形成し、前記フード空間(22)の残部には形成しないよう配置され、
− 前記フード装置(20)は、前記冷却部(24)に配置され試料を保持するよう設けられた試料キャリア(25)を有し、
− 前記試料(1)は、前記保存容器(10)の前記内部空間(11)から取り出された後で、または前記保存容器(10)の前記内部空間(11)に入れられる前に、前記保存温度の前記冷却部(24)に配置され、一方、前記フード空間(22)の残部の温度は前記冷却部(24)に対して高くされ、
− 前記冷却部(24)における前記試料(1)は、前記保存容器(10)からの液体窒素の気化ガスによって冷却され、
− 前記液体窒素の気化ガスは、前記保存容器(10)の前記内部空間(11)から前記蓋部(13)を通って前記冷却部(24)へと伸びる少なくとも1つの冷却剤導管(31)を通して供給されるものである、
方法。
【請求項13】
− 液体窒素の前記気化ガスの前記冷却剤流(2)は、前記保存容器(10)において加熱装置(14)によって調節されるものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
− 前記冷却部(24)における温度は、温度センサ(27)によって測定され、制御系によって調節されるものである、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
− 凝縮物が、清掃装置(70)によって、試料表面から機械的におよび/または熱的に除去される、請求項12乃至14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温保存装置に関し、特に、低温(凍結)状態で複数の試料(サンプル)を保存するための低温保存装置であって、複数の試料を収容して冷却する保存容器(コンテナ)と、保存容器に隣接するフード空間(Haubenraum:hood space、カバー空間、被覆空間)を形成するフード装置(カバー装置、被覆装置)と、フード空間に複数の試料を一時的に保持するために設けられた試料キャリア(Probentraeger:試料台、試料支持体、試料搬送器)とを含む低温保存装置に関する。また、本発明は、保存容器およびフード装置を含む低温保存装置を用いて低温状態で複数の試料を操作しまたは取り扱う(Handhabung)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数万乃至数百万の範囲の試料番号(数)を有する特に生体細胞材料を保管する低温保存庫(Kryo-Lagern:凍結保存庫)(または精子バンク(Kryo-Banken))がますます普及することによって、精子バンクを操作する手順またはプロセスの自動化への関心が高まっている。その自動化の目的は、コスト効率または費用効果の良い保存条件を達成することである。また、その自動化は、生物医学分野において要求されるような、SOP条件(SOP:標準操作手順、標準作業手順、標準業務手順)の改良された実現(実装)を可能にし、可能な限り完全な情報管理(ドキュメンテーション)を可能にし、操作誤りの最小化を可能にすること、を意図している。
【0003】
タンク(槽)内において液体窒素(LN)で−100℃よりかなり低い保存(貯蔵)温度で冷却する精子バンクの自動化は、次の問題によって現在まで困難であった。
− 精子バンクにおいて不可避であるような、各タンクを多数回開けるときに空気由来の水分の凝結(液化)および凍結に起因する、試料上、例えばジョイント、ガイド等の可動部品上、または電気接触面上での氷の蓄積。
− 通常の水分含有量(30乃至90%)を有する周囲空気中にその試料が移動されたときの試料表面上での氷の蓄積。
− 深い凍結(冷却)液体窒素(LN)雰囲気からその試料が取り出されたときに、それらの試料を加熱すると、次第に小さくなること(縮小化)。これは、管状試料容器(所謂ストロー)および0.5ml未満の試料体積の場合に、特に重要である。
− 試料容器が非無菌環境へ移送されたときの、試料容器表面の汚染。
【0004】
上述の複数の問題は、通常の精子バンクにおいてその(精子バンクの)設計に応じて個々にまたは組合せで生じ、長期間にわたって頑丈な貯蔵庫に対する試料の出し入れを含めて、現在まで自動試料管理に対する重要な障害であった。改良は、低温試料が保存されるタンクまたは保存容器の上に取り付けられるフード装置を使用することによってのみ達成された。例えば、独国特許出願公開(DE)第102011012887号A1明細書、米国特許出願公開(US)第2007/169488号A1明細書(欧州特許出願公開(EP)第1768782号A1明細書)または米国特許出願公開(US)第2006/156753号A1明細書(国際公開(WO)第2005/010499号(A2))を参照されたい。そのフードは、例えば、乾燥窒素ガスが溢れて、保存容器を開く前に完全に冷却されるものであり、試料操作のためのロック(Schleusen:エアロック、気閘、(水位調節用の)閘門)として使用することができる。
【0005】
保存容器の上に完全に冷却されるフードを有する別の低温保存装置が、米国特許出願公開(US)第2011/0219788号A1明細書(独国特許出願公開(DE)第102008057981号A1明細書)にも記載されている。フードの内部の流路は、冷却ガス入口を形成する複数の出口穴を有する導管である。複数の出口穴は、窒素ガスが流出してフードの内部に入りそのフードを均一に冷却する形態で、分散配置される。また、米国特許(US)第5233844号A1明細書(独国特許出願公開(DE)第69230405号T2明細書)にはフード状の取付部を有する冷却容器が記載されており、その(取付部の)内部は、冷却剤気化ガス(蒸気)による作用を受けることができ、従って完全に冷却できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011012887号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/169488号明細書(欧州特許出願公開第1768782号明細書)
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/156753号明細書(国際公開第2005/010499号)
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0219788号明細書(独国特許出願公開第102008057981号明細書)
【特許文献5】米国特許第5233844号明細書(独国特許出願公開第69230405号明細書)
【発明の開示】
【0007】
しかし、実際には、保存容器上でのフードの使用は、次の複数の問題に起因する欠点を有することが判明した。即ち、サイズを大きくしたフードの温度を−80℃未満に冷却すると、冷却剤の費用が高くなり、例えば10乃至30分の範囲でプロセス(処理)が遅延する。これらの問題は、フードを、保存容器内で、例えば−150℃ような保存温度まで冷却することが望ましいとき、さらに増大する。試料を多数回取り出しまたは挿入すると、液体窒素(LN)の消費量がかなり増大する。フードにおける温度が、比較的長い時間期間にわたって低レベルに保たれる場合、良好な熱絶縁が必要となり、フード装置の設計は重い(重量のある)空間的に大型のものとなり、それがコストおよび操作容易性に悪影響を与える。さらに、乱流を回避し、局所的な氷の蓄積が生じさせ得る湿潤空気のフード内への流入を防止するために、フードにおけるガス体積の排出および乾燥冷窒素の充満を非常に注意深く行う必要がある。
【0008】
さらに、凍結生体細胞を含む生物試料が保存温度(例えば−150℃)から−80℃への多数回の温度変化を受けた場合、凍結生体細胞を含む生物試料の品質が低下することが、実践的に知られている。しかし、数個の試料を取り出すために、数百本の低温管、ストロー、または袋(パウチ)を含む試料棚(ラック)全体がより高温の領域、例えばフードの下に引き入れられるので、そのような加熱と再冷却は精子バンクの操作期間において非常に頻繁に発生する。また、望ましくない温度変化は液体窒素(LN)を再充填するときにも発生し得る。従って、特に長期保存では、通常のフード装置の場合に過剰な冷却剤消費量および/または極端に高い熱絶縁の必要性と関連する保存温度を、できるだけ一定に保つことが望ましい。
【0009】
本発明の目的は、通常の技術の欠点をなくすことができる、改良された低温または凍結保存装置を実現することである。本発明の目的は、特に、最小限の可能な技術的な努力で、貯蔵庫から取り出しまたは貯蔵庫へ配置するときの試料の加熱、氷の蓄積、および/または試料容器表面の汚染を最小化し、特にフード冷却のための液体窒素(LN)消費を最小化しまたは回避し、および/または低温に対する脆弱性を減じつつでできるだけ軽量な小さいフード装置を可能にすることである。また、本発明の目的は、通常の技術の欠点をなくすことができる、低温保存装置を操作するための改良された方法を実現することでもある。
【0010】
これらの目的は、それぞれ、低温または凍結保存装置、および独立請求項の特徴を有する低温保存装置を操作する方法によって、達成される。本発明の有利な実施形態および適用例は従属請求項から明らかになる。
【0011】
発明の概要
本発明の第1の態様(特徴)によれば、上述の目的は、低温で試料を保存するよう、特に低温(凍結)保存状態で生体試料を保存するよう適合化された低温保存装置によって達成される。低温保存装置は、保存容器を含んでおり、例えば、蓋部によって周囲の環境から隔離または遮断された内部空間を有する熱的に絶縁された低温槽(タンク)を含んでいる。その内部空間は、液体窒素を収容するよう適合化され、典型的には、保存容器の底部に液体窒素貯留層(いわゆる窒素湖)を形成するものである。また、その内部空間は、各試料を収容するよう適合化されている。この目的を達成するために、例えば、キャリア装置(Traegereinrichtunggen:支持装置)(所謂“ラック”(Racks))が、内部空間に配置されてもよい。その試料は、保存容器内において、所定の保存温度に冷却される形態で、液体窒素の貯留層中で直接保存され、または液体窒素の貯留層の上の内部空間に形成される窒素気化ガス(蒸気)内で保存されてもよい。低温保存装置は、好ましくは−80℃以下の保存温度、特に好ましくは−150℃以下の保存温度に適合化される。
【0012】
低温保存装置は、さらに、保存容器に隣接する形態で配置されたフード装置を含んでいる。フード装置のおかげで、蓋部の上には、フード装置によって周囲の環境から区切られたフード空間が形成される。そのフード空間は、試料が、保存容器内に入れられる前または保存容器から取り出された後で、任意にキャリア装置の一部と共に、一時的に配置されるロック室(Schleusenkammer:閘室)を形成する。代替形態として、フード装置は、任意に、試料を一時的に保持する試料キャリア(Probentraeger)を備えてもよい。
【0013】
低温保存装置は、さらに、冷却剤(冷媒)容器(Gefaess:管、器)を有するフラッシュ装置(Spueleinrichtung:放流装置、掛流し装置、洗浄装置)を含んでいる。冷却剤容器から、冷却剤、例えば液体窒素の気化ガスまたは別の冷却ガスを、フード空間内へ移送することができる。本発明によれば、フラッシュ装置には、冷却剤容器からフード空間内に通じる少なくとも1つ(1本)の冷却剤導管が設けられている。冷却剤導管は、フード空間の部分領域に冷却剤を加えまたは注ぐように適合化されていて、保存容器内の試料の保存温度が問題の部分領域にも形成(設定)できるようになっている。その部分領域は、以下では冷却部と称し、試料の一時的配置のために設けられる。保存温度が冷却部に形成できる一方で、より高い温度への温度勾配(傾斜)がフード空間における冷却部を包囲する領域に形成される。冷却部は、機械的に区切られた領域ではないが、むしろ、保存温度が冷却剤流によって形成できる空間的領域である。従って、本発明の特定の用途に応じて、冷却部のサイズは、冷却剤導管の数および冷却能力に応じて決まるが、いずれにしても、そのサイズはフード空間の体積より小さい。利点として、少なくとも1つの冷却剤導管を有するフラッシュ装置は、保存温度が、局所的に排他的に冷却部に(だけ)形成され、しかしフード空間の残りの部分には形成されないように、設計される。
【0014】
本発明の第2の態様(特徴)によれば、上述の目的は、低温保存状態で試料を操作する方法によって実現され、その方法において、その試料は、例えば低温槽のような保存容器の内部空間から取り出された後、または保存容器の内部空間内に入れる前に、保存容器に隣接するフード装置のフード空間において、保存温度の局所的に限定された冷却部に配置され、一方、フード空間の残りの部分における温度は冷却部に対(比)して高くされる。本発明による局所的に限定された冷却部の配置のおかげで、保存容器の上のフード装置が僅かにだけまたは無視し得る小さい程度だけ冷却されるような状況が有利に実現される。試料がフード空間内に配置されると直ぐに、排他的に試料およびその直接的周辺部(だけ)が冷たい冷却剤流の一定の流量に晒される。フード装置の他の部分、特に機械的に可動な要素(コンポーネント)、または駆動装置、等は、保存温度より高い温度で、または最高でも室温で動作させることができる。従って、通常の技術と比較して、もはや熱的に絶縁されるフードを設ける必要がなくなる。さらに、フード空間における試料の局所的に限定された冷却によって、冷却剤の消費量はかなり減少する。また、低温に対する機械的要素の脆弱性は、通常の技術と比較して、問題にならない。
【0015】
少なくとも1つの冷却剤導管は、冷却剤流を冷却部に連続的に加えまたは注ぐよう適合化されているので、フード空間における試料の望ましくない加熱が阻止され、これと同程度に、試料表面上の氷蓄積および試料表面の汚染が阻止される。本発明によれば、コンパクトな(または重量のある)フードを使用することができ、そのフードでは、ロボット・システム、センサ・システム、およびその他の構成要素が、より高い温度で、最高で室温でも動作できる。
【0016】
用語“試料”(Probe)は、保存容器において低温保存または凍結保存される任意の物(Gegenstand:物体)を意味し、また、任意にキャリア装置の一部と組み合わされ得る、1つまたは複数の試料容器、例えば、管、ストロー、カプセル、または袋(パウチ)、等、およびその中の試料物質を含む。試料物質は、典型的には、生物材料(生体物質)、例えば、細胞、組織、細胞成分、または生体高分子を含んでいる。換言すれば、本発明による試料は、例えば、1つまたは複数の試料管、または1つまたは複数の試料管を有するキャリアを含み得る冷却部における保存温度で冷却状態に保たれる。フード空間における冷却部は、従って、適用例に応じて使用される試料に適合化された体積、少なくとも100cm、例えば少なくとも500cmであってもよい。相対的に小さい試料の場合、冷却のためには1つの単一冷却剤導管で充分であり得、より大きい試料の場合には複数の冷却剤導管が設けられる。
【0017】
利点として、本発明による低温保存装置のフラッシュ装置への冷却剤の供給には、様々な(相異なる)変形例が利用可能である。冷却剤は、冷窒素ガスを含み、特に、液体窒素の貯留層の上の通常の圧力で形成される液体窒素の気化ガスを含んでいることが好ましい。この場合、冷却剤容器は、液体窒素を収容するための容器である。冷却剤容器は、低温保存装置の保存容器によって形成されることが、より好ましい。この場合、利点として、保存容器内の液体窒素は、保存容器内の試料を冷却し、かつフード空間における冷却部を冷却するための冷却剤流を供給するのに用いられる。代替的にまたは追加的に、保存容器の外側に、液体窒素を収容するための、フラッシュ装置の冷却剤容器を形成する別の容器が配置されてもよい。そのような別の容器を設けると、通常の保存装置の利用可能な構成要素を用いて、本発明による低温保存装置を組み立てるのに有利である。代替的な変形例によれば、冷却剤は、窒素以外の気体を含んでもよく、特に無水(wasserfreies)気体、例えば、酸素、不活性ガスまたは二酸化炭素を含んでもよい。この場合、冷却剤容器および/または冷却剤導管に冷却剤の熱電冷却手段が設けられることが好ましい。本発明のこの実施形態は、低温保存装置のコンパクト性(重量性)および冷却部における温度の設定の速さに関連する利点を有し得る。
【0018】
窒素気化ガスが冷却剤として用いられるときに冷却部におけるフラッシュ装置の冷却効果に影響を与えることができるようにするために、本発明の別の実施形態によれば、例えば電気抵抗ヒータのような加熱装置が保存容器におよび/または液体窒素を収容する追加的な容器に配置されれていれば、有利である。加熱装置を作動させることによって、窒素気化ガスの形成が支援でき、従って冷却部への冷却剤流量を増大させることができる。
【0019】
冷却剤容器が本発明による低温保存装置の保存容器(低温槽)によって形成される場合、少なくとも1つの冷却剤導管は、保存容器の内部空間からその蓋部を通って冷却部へと伸びることが好ましい。冷却剤導管の内側端部は、保存容器における液体窒素の表面または液面の真上に配置されることが好ましく、一方、フード空間における冷却剤導管の外側端部は冷却部に向けて方向付けられ、特にその内部に配置された試料に向けて方向付けられる。冷却剤導管の方向付けの効果を高めるために、後者(冷却剤導管)はその外側端部にノズルを備えてもよい。
【0020】
本発明の別の変形例によれば、フード装置は、冷却部に配置されて試料を保持するよう設計された試料キャリアが設けられてもよい。試料キャリアは、例えば少なくとも1つの個々の試料、または1グループ(1群)の試料、または1つのラックの一部を固定して、例えば更なる試料の操作(取扱い)または試料プロセスのための準備が可能にされてもよい。
【0021】
本発明の他の有利な実施形態によれば、冷却部において、特に試料キャリア上で、局所的に限定された冷却効果を改善するために、次のような1つまたは複数の手段が実現されてもよい。第1の手段によれば、偏向装置が冷却部に設けられてもよく、それによって冷却剤導管からの冷却剤流を冷却部内へと方向付けることができる。その偏向装置は、例えば、冷却剤導管の外側端部と冷却部の間の冷却剤流を導くまたは案内する湾曲したまたは角度が付けられた表面を有する構成要素(方向付け要素)を含んでいる。従って、冷却剤は、周囲の領域内へ流出することが有利な形態で防止される。別の手段によれば、冷却部にわたって伸びる遮蔽(シールド)装置が設けられてもよい。その遮蔽装置は、湾曲した面積測定された構成要素を含み、それによってフード空間における降下するガスが冷却部から離れるように方向付けられる。本発明による低温保存装置の動作の期間において、特に冷却部の上にあるフード空間の各部品は冷却されてもよい。冷却ガスは、冷却部に向かって降下してもよいが、遮蔽装置によって冷却部における試料キャリアの側部へと導かれて、試料上の残留水分の望ましくない凝結または汚染が回避される。別の変形例によれば、冷却部における試料キャリアは、ヒート・シンクに、特に保存容器の内部空間へと、熱伝導要素を介して連結されてもよい。従って、試料キャリア上の試料は有利な形態で材料または熱容量と熱的に接触し、保存温度への冷却が追加的に支援される。
【0022】
冷却部には温度センサが設けられることが好ましい。例えば熱電センサのような温度センサが、冷却部において、特に試料キャリア上に、温度を測定するために設けられる。利点として、温度センサは、低温保存装置の自動化を支援する。低温保存装置には、フラッシュ装置が、特に冷却剤流の量および/または温度に関して、冷却部における現在の温度および目標温度の関数として制御されるような、制御系が設けられてもよい。
【0023】
本発明による低温保存装置の保存容器は、蓋部によって閉じられる。蓋部には、蓋部より小さい閉鎖可能な蓋(蓋部)開孔が設けられていることが好ましい。蓋開孔には、例えばフラップまたはスライド・パネルが設けられ、蓋開孔の配置によって、蓋部全体を開けることなく、保存容器から試料を取り出しまたは保存容器内に試料を入れることができる。従って、保存容器における冷却剤消費量は、有利な形態で最小化される。フラッシュ装置の冷却効果を改善するために、蓋開孔とフード空間における冷却部とは、互いに直接隣接するように配置されていることが好ましい。本発明のこの実施形態では、保存容器の内部とフード空間の間での移送の期間において試料に対する外来ガスの作用が減少し、移送期間であっても試料の連続的な冷却が改善される。
【0024】
本発明による低温保存装置の自動化の別の利点が得られるのは、低温保存装置に、保存容器の内部空間とフード空間における冷却部との間で試料を移動するための第1の移動装置が設けられ、および/またはフード空間における冷却部とフード装置の周囲領域との間で試料を移動するための第2の移動装置が設けられる場合である。利点として、第1および/または第2の移動装置は、冷却部から離れた位置にあるフード空間に配置してもよい。駆動装置に対する低温の不利な効果は有利に回避され、試料移動の信頼性が改善される。より好ましい変形例では、第2の移動装置は、試料を保持するよう適合化され冷却部でのフラッシュ装置によって冷却できる移動(輸送)容器を含んでいる。試料は、保存容器の内部空間内またはフード装置の外部の周囲領域内に移動される前に、移動容器における冷却部に配置されて直接冷却されてもよい。
【0025】
本発明の別の有利な実施形態によれば、低温保存装置には、冷却部おける表面から、特に試料表面から凝縮物を取り除くよう適合化された清掃(クリーニング)装置が設けられてもよい。清掃装置は、例えば振動ブラシのような機械的作用によっておよび/または例えば短い局所的な加熱のような熱作用によってその凝縮物を取り除くために、清掃されるその表面に対して機械的におよび/または熱的に作用する。清掃装置を設ける利点は、フラッシュ装置の可能性ある誤動作の発生時、または冷却部における試料の周囲気体からの不完全な遮蔽の発生時に、表面から、特に試料から望ましくない被着物または堆積物を除去することである。
【0026】
本発明による低温保存装置では、有利な形態で、通常技術と比較して高い信頼性で自動化動作が可能になる。多数の構成要素が、冷却されていないまたは僅かにだけ冷却されたフード空間の部分領域に配置され作動されるので、障害に対する低温保存装置の感受性は減少する。好ましくは制御装置が設けられ、それによって、特に上述の制御系を用いて、フラッシュ装置、蓋開孔、第1の移動装置、第2の移動装置、および/または清掃装置を制御することができる。制御装置は、保存の課題に応じて決まるプログラムに従って上述の構成要素を作動させることができる。
【0027】
本発明による更なる詳細および利点は、図面を参照して次のように説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1〜4は、本発明による低温保存装置の好ましい実施形態の斜視図である。
図2】.
図3】.
図4】.
図5図5および6は、本発明による低温保存装置に設けられてもよい清掃装置の概略図である。
図6】.
図7図7は、制御装置を有する、本発明による低温保存装置の別の実施形態の概略的な側面図である。
図8図8は、本発明による低温保存装置の蓋部の更なる細部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を、特にフラッシュ装置とその動作に関する例を参照して説明する。例の低温保存に関する詳細、特に、試料作成、および低温槽の設計および動作に関する詳細は、従来技術で既知のものなので、説明しない。
【0030】
図1は、本発明による低温保存装置100の第1の実施形態を示している。低温保存装置100は、保存容器10、フード装置20、およびここでは仮想線の斜視図で例示されたフラッシュ装置(放流装置、掛流し装置、洗浄装置)30を含んでいる。
【0031】
保存容器10は、内部空間11を有する低温槽(デュワー瓶)であり、内部空間11は、周辺の容器壁によって横方向および底部側が閉じており、蓋部13によって上部が閉じられている。蓋部13は閉鎖可能な蓋開孔16を有し、蓋開孔16を通して、概略的に示された試料1が、内部空間11から隣接のフード装置20内に移動できる。内部空間11の底部には、例えば約−200℃のような温度の液体窒素の貯留層12が配置されている。貯留層12の上の内部空間11は窒素の気化ガス(蒸気)で充填され、窒素の気化ガスにおいて、例えば−150℃の温度が得られる。窒素の気化ガスの温度は、保存容器10における保存温度である。低温保存の試料を保存するために、複数の生体試料を支持するラックの形態のキャリア装置(図示せず、図4および7参照)が、内部空間11内に、典型的には液体窒素の貯留層12の上に配置される。
【0032】
保存容器10は図1には概略的にだけ示されている。低温槽の実際の構成では、保存容器には、追加的に、液体窒素を供給するための導管、および任意に、過剰な液体窒素を排出するための導管が設けられる。また、保存装置10には、液体窒素の貯留層12に配置された抵抗ヒータを含む加熱装置14が設けられている。加熱装置14は、電気接続リード線15を介して外部電源(図示せず)に接続され、および任意に制御装置(図7)に接続される。
【0033】
フード装置20はフード(フード部)21を含み、フード21は、例えば、円筒状もしくは円柱状または直方体状であり、蓋部13の上部に配置されて蓋開孔16がフード21で覆われるようになっている。フード21は、周囲の空気または窒素でほとんど充填されたフード空間22を包囲する。過剰な気体は、フード空間22から、例えば、任意に設けられたサイフォン(逆U字型の管)23を通して排出される。サイフォン23を通した流出によって、外部から流入する空気によるフード空間22の汚染が阻止される。
【0034】
フラッシュ装置30は、例示された実施形態において、液体窒素の貯留層12を含む保存容器10によって形成された冷却剤容器32を含んでいる。また、フラッシュ装置30は、冷却剤容器32(保存容器10)から蓋部13を通してフード空間22内へと連通する冷却剤導管31を有する。冷却剤導管31の内側端部は、液体窒素の貯留層12の上の保存容器10の内部空間11に通じ(開口し)、一方、冷却剤導管31の外側端部は、フード空間22内の冷却部24(破線で囲まれた部分)に向けて方向付けられている。冷却剤導管31は、冷窒素の冷却剤流が、冷却部24において試料1上に直接放出される(gespuelt:掛け流される、当てられる、注がれる、放流される)形態で方向付けられている。従って、このように形成された冷却部24では、保存容器10の内部空間11で得られる保存温度は、フード空間22において局所的に限定された形態で形成される。これによって、保存容器10の内部空間11におけるように、試料1を、冷却部24において同じ低温保存状態にすることができる。
【0035】
本発明による方法を適用するために、例えば、内部空間11から、低温保存装置100を包囲する(周囲)領域へと試料1を移動させるために、試料1は、第1の移動装置または移送装置(図示せず、図4および7を参照)によって、蓋部13の蓋開孔16を通して冷却部24へと移動される。内部空間11におけるのと同じ窒素気相が冷却剤導管31を通して冷却部24に形成されるので、冷却部24における試料1の保存条件は、内部空間と比較して変わらない。次いで、試料1は、冷却部24から外部へと、第2の移動装置または移送装置によって(図示せず、例えば図4および7を参照)、例えばフード21の壁におけるアクセス開孔を通して、またはフード21が一時的に持ち上げられている期間中に、移動させることができる。
【0036】
冷却剤導管31を通した冷却剤としての窒素気化ガスの供給は、内部空間11における液体窒素から気化ガス状態の窒素への連続的な変換によって生じる。保存容器10が蓋部13によって機密(気密)に閉止されるので、全ての窒素気化ガスは冷却剤導管31を通って流れる。冷却剤流量が少なすぎて試料キャリア25における所望の保存温度を維持できない場合、冷却剤流量は加熱装置14を作動させることによって増大させることができる。
【0037】
図2は、本発明による低温保存装置100の変形された実施形態を示している。低温保存装置100は、保存容器10、フード装置20、およびフラッシュ装置30を含んでいる。図1に示された実施形態との相違点について、フラッシュ装置30は、冷却剤容器として、液体窒素を収容するための、別個の追加的な容器33、例えばデュワ瓶の形態のものを含んでいる。追加的な容器33から冷却剤導管24がフード空間22内の冷却部24へと伸びる。冷却部24は冷窒素の気化ガスの流入によって形成される。冷却剤導管31を通る冷却剤流は、図1に示された実施形態におけるように、追加的な容器33(図示せず)における加熱装置によって制御できる。
【0038】
追加的な容器33は、代替形態として、冷却剤導管31を通り抜けるときに熱電的に所望の保存温度まで冷却される無水ガスの容器(貯留層)であってもよい。別の変形例によれば、冷却剤容器32は、保存容器10と同じサイズおよび形状の別の隣接の保存容器によって形成されてもよい。例えば、複数の保存容器10を含む精子バンクにおいて、複数の保存容器の中の1つは、フラッシュ装置用の追加的な容器33として他の複数の保存容器の全てによって使用されてもよい。
【0039】
図3は、本発明による低温保存装置100の別の変形された実施形態を示している。図3の低温保存装置100では、図1および2に示された実施形態との相違点について、単一の冷却剤導管ではなくて、複数の冷却剤導管31が、配置されて、保存容器10の内部空間11と、フード装置20のフード空間22との間に伸びる。複数の冷却剤導管31の各外側端部は、蓋部13の上の冷却部24に向けて方向付けられている。複数の試料1は、任意に試料キャリア25上に配置され(図8参照)、冷却部24における冷却剤導管31から出る冷窒素の気化ガス2が掛け流される(当てられる、で洗浄される)。次いで、その窒素は、フード空間22に分布し、その期間に温度が上昇して、冷却部24の外側では上昇した温度が支配的になる。
【0040】
また、図1および2に示された実施形態との相違点について、図3は、フード装置20には保存容器10の直径と等しい直径を有するフード21が設けられてもよいことを示している。従って、より大きい体積のフード空間22が設けられるという利点があり、従ってそれによって試料操作(取り扱い)のためのより多くの構成要素、例えば移動装置用の駆動装置を収容することができる。
【0041】
図3に示された低温保存装置100は、完全にパッシブな(受動的)形態で(無電源で)動作することができる。これは、加熱装置14が設けられないかまたは作動されないことを意味する。試料キャリア25に保存温度を設定(形成)するのに必要な冷却剤流は、この場合、液体窒素の貯留層12からの窒素の気化によってのみ(排他的に)生成される。冷却剤流量の増大が必要な場合、加熱装置14を作動させることによって冷却部24をアクティブな(能動的)(電源による)冷却に切り替えることが可能である。
【0042】
複数の冷却剤導管31は試料キャリア25の周囲に均一に分散配置して、試料キャリア25上でできるだけ均一に全ての方向に試料1への掛け流し(の洗浄)が達成されるようにする。冷却剤(冷窒素ガス)はフード空間22内の周囲の雰囲気より低温なので、冷却剤導管31の各端部は試料キャリア25上の試料1の上に配置されることが好ましく、それによって冷却剤流は上から試料1上へと降下する。しかし、代替形態として、冷却剤流は、下からおよび/または側方から試料1上に方向付けられてもよい。
【0043】
試料1の取り出しまたは挿入が低温保存装置100の作動段階で発生しない場合、窒素ガスは、フード空間22中に連続的に流入することができる。この目的を達成するために、閉鎖可能な蓋開孔16は、開放状態を維持することができて、それによって気化窒素ガスは保存容器10を出て蓋開孔16および冷却剤導管31を通ってフード空間22へと流れる。これは、利点として、フード空間22が、周囲空気で充填されることなく、乾燥した窒素ガスで充填されることを意味する。その結果、保存容器10および試料1上での氷蓄積が阻止される。さらに、その流出するガスは、フード装置20において温度上昇して、個々の試料取出しと試料取出しの間に凝縮物の被着または堆積層(霜)が分解されまたは崩壊する。
【0044】
図4は、本発明による低温保存装置100の別の変形された実施形態を示している。図4の低温保存装置100では、保存容器10の内部空間と、フード空間22における試料キャリア25との間で試料を移動させるための第1の移動装置50が設けられ、また、試料キャリア25と、低温保存装置100を包囲する(周囲)領域との間で試料を移動させるための第2の移動装置60が設けられている。第1の移動装置50に含まれる第1の駆動装置51は、フード空間22内またはフード装置20の外側に配置され、シャフト(軸)52を介して内部空間11におけるプラットフォーム(台、壇)53に結合される。複数のキャリア装置(ラック)17は、複数の低温試料を含み、プラットフォーム53上に配置される。第1の駆動装置51を作動させることによって、蓋開孔16の下にある選択されたラック17を移動させることができ、それによって1つまたは複数の試料を試料キャリア25まで移動させるようにすることができる。この目的を達成するために、例えば、選択されたラック17を蓋開孔16を通して少なくとも部分的にフード空間22内へと引き出すことができる。
【0045】
第2の移動装置60は、試料キャリア25上の試料1を、移動させ、取り出し、挿入し、またはさらに操作し、例えばそれに接触しまたは識別するために使用することができる。第2の移動装置60には、第2の駆動装置61および操作腕(アーム)62が設けられ、それによって試料1を、例えば試料キャリア25から取り出して移動容器(図示せず)内に移動させることができる。操作腕62には、保護キャップの形態の遮蔽装置26が設けられている。遮蔽装置26は、フード空間22における降下する冷却ガスが試料1上に降下するのを防止する。遮蔽装置26は、例えば、平坦なプレート(板)(図示せず)、下向き開口の(下向きに開いた)湾曲したプレート、または下向き開口のビーカまたはカップを含んでもよい。代替形態として、遮蔽装置26は、複数の個々の重なり合った要素で形成されてもよい。別の変形例によれば、遮蔽装置は、降下する冷却ガスに対して冷却部24を遮蔽するために、第2の移動装置60の動作状態に応じて圧縮されまたは伸張されるベローズ(ふいご、蛇腹)を含んでもよい。
【0046】
本発明による低温保存装置100に設けられてもよい清掃装置70は、フード空間における試料キャリア25の隣に配置され、冷却部24における試料表面から凝縮物(霜、氷結晶)を熱的に(図5)および/または機械的に(図6)除去するよう適合化されている。有利な形態で、フード空間の非冷却領域から、試料1上に被着しまたは堆積した望ましくない凝縮物を、清掃装置70によって除去することができる。凝縮物は、図5および6に概略的に示されている。
【0047】
図5では、試料1の表面の熱的清掃が行われる。この目的を達成するために、清掃装置70は同軸の二重管71を含み、その内側の管は乾燥ガスの供給源であり、その外側の管は吸引装置(図示せず)に接続される。乾燥ガスの供給源は、室温のまたは保存温度と同程度に低下させた温度の乾燥ガス流を供給し、その効果により凝縮物3は、昇華(sublimation)によってまたは短いパルス状の加熱および蒸発によってその表面から除去され、外側の管内のガス流で離れた位置へ搬送される。必要な場合には、ガス反射器72を、二重管71の反対側に位置する試料1の側または一側部に配置してもよく、そのガス反射器によってガス流はガス反射器を通った後で試料1上へと反射される。従って、ガス反射器72は試料1の全ての側(方向)の表面の清掃(除氷)を助ける。
【0048】
図6に同様に示された機械的に作用する清掃装置70は同軸の二重管71を含み、その内側の管を通して乾燥ガスが試料1の表面へ供給され、その外側の管を通してガスが凝縮物成分と共に搬送される。この場合、例えばブラシのような清掃道具73が、さらに二重管71の開放端部に配置される。二重管71の長手方向の範囲を横断する例えば振動運動のような運動によって、凝縮物は清掃道具73によって試料1の表面から剥がすことができる。代替的にまたは追加的に、清掃装置70は、図6の左側の部分に概略的に示されているような排他的な機械的作用を有してもよい。この場合、清掃道具73は、試料1に隣接して配置され、例えば振動駆動装置(図示せず)によって試料1の表面を清掃するよう作動することができる。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態を示している。図7において、低温保存装置100には制御装置80が設けられている。制御装置80は、低温保存装置100における各試料を操作しまたは取り扱うための異なるプログラムを実行するよう、例えば、保存容器10内への試料の挿入、試料の保存、保存容器10からの試料の取り出し、および/または試料のリスト作成または在庫調査を行うよう適合化されている。この目的を達成するために、制御装置80は、以下で説明する低温保存装置100の概略的に示された複数の構成要素に結合される。
【0050】
以上説明したように、低温保存装置100は、保存容器10、フード装置20およびフラッシュ装置30を含んでいる。試料1を支持するキャリア装置17は、保存容器10の内部11に配置されている。第1の移動装置50によって、試料は、蓋部13の蓋開孔16を通して、フード空間22における局所的に限定された冷却部24(破線で囲まれた部分)内に移動させることができる。蓋開孔16は、制御装置80によって電気機械的に作動できる1つまたは複数の弁(Verschluesse)18を含んでいる。フラッシュ装置30は、冷却剤容器として、保存容器10および冷却剤導管31を含み、冷却剤導管31には、冷却剤導管31を通る冷却剤の流れを制御するための作動装置34が設けられる。作動装置34には、同様に、制御装置80に結合されている。冷却部24には温度センサ27が設けられ、それ(温度センサ27)によって、冷却部24における局所的な温度が測定できる。温度センサ27は制御装置80に結合される。また、制御装置80は、加熱装置14に接続されて、必要なときに、保存容器10の内部11において冷窒素ガスの生成を増大させるようにする。
【0051】
第2の移動装置60は、フード装置20内に配置され、図4を参照して説明したように、操作腕62および遮蔽装置26が設けられている。また、第2の移動装置60の駆動装置61は、搬送容器63を、試料を保持し、その試料を低温保存装置100を囲む(の周囲の)領域内に移動させるよう作動させることを可能にする。第1の移動装置50および第2の移動装置60は、同様に、制御装置80に結合される。
【0052】
上述の複数の構成要素は、格納された挿入、保存、取出しおよび/または在庫品調査プログラムに応じて、制御装置80によって操作される。試料挿入について、例えば、試料は、搬送容器63によって冷却部24内に移送される。試料の予備処理に応じて、試料は、既に保存温度になっているか、または冷却部24において保存温度に冷却される。その期間において、図5および6に示された変形例の1つによる清掃装置70によって、試料から凝縮物の除去または清掃が行われてもよい。例えば試料を凍結するときに、フラッシュ装置30の冷却能力が低すぎる場合、これが温度センサ27によって検出されて、加熱装置14が制御装置80によって作動されて、冷却剤導管31を通る冷却剤流量が増大される。試料がいったん供給されると、この試料は、挿入プログラムによって保存容器10内に挿入できる。この目的を達成するために、蓋開孔16の弁18が開放されて、試料が、第1の移動装置50によって保存容器50の内部11におけるキャリア装置17内に移動される。試料の取出しは、第1の移動装置50によって、逆の形態で、試料を蓋開孔16を通して冷却部24へ移動させることによって行われる。試料は、例えば−150℃のような保存温度を維持しつつ、第2の移動装置60によって搬送容器63内に移動され、例えば更なる使用のために、低温保存装置100を囲む領域内に移動される。
【0053】
図8には、低温保存装置の蓋部13に関する別の詳細が示されている。蓋部13に蓋開孔16が設けられ、その上に試料キャリア25が配置される。試料キャリア25は、例えば、複数の試料1用の保持器(低温管)を含んでいる。さらに、冷却剤導管31は蓋開孔16を通して連通し、各冷却剤導管31は試料キャリア25の複数の保持器の1つの保持器内に通じて(開口して)いる。この目的を達成するために、試料キャリア25における保持器は、冷却剤導管31が終端する横方向の開口を有する。冷却剤導管31を通して、冷窒素ガスの冷却剤流2が保存容器から複数の試料1へと放出されて、試料1が試料キャリア25における保存温度に保たれ、氷のない状態に維持される。試料キャリア25は、例えば、アルミニウム、銀、銅、ソープストーン(石けん石)またはセラミックのような、高い熱伝導性および/または熱容量を有する材料で形成されることが好ましい。試料の近傍の温度は、温度センサ(図示せず)によって検出されて、冷却剤導管31を通る冷却剤流量を調節することができるようにされる。
【0054】
特許請求の範囲、明細書および図面に提示された特徴は、重要であり、その相異なる実施形態において本発明を実現するために個々にまたは組み合わせでも重要である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8