特許第6208773号(P6208773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208773排気ガスからのSOx及びNOx除去方法及び浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208773
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】排気ガスからのSOx及びNOx除去方法及び浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/04 20060101AFI20170925BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20170925BHJP
   F01N 3/02 20060101ALI20170925BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20170925BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F01N3/04 Z
   F01N3/24 L
   F01N3/24 E
   F01N3/24 S
   F01N3/02 101C
   F01N3/023 Z
   B01D53/94 241
   B01D53/94 230
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-554152(P2015-554152)
(86)(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公表番号】特表2016-511353(P2016-511353A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】EP2014051370
(87)【国際公開番号】WO2014114735
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2016年9月27日
(31)【優先権主張番号】1301451.9
(32)【優先日】2013年1月28日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515205978
【氏名又は名称】アルファ ラヴァル オールボー アクチセルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】メノン,モハン
(72)【発明者】
【氏名】エヴレベ,ダーグ
【審査官】 菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06240725(US,B1)
【文献】 特開2005−230678(JP,A)
【文献】 特開2001−227332(JP,A)
【文献】 特開2013−002314(JP,A)
【文献】 特表2010−538199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00 − 3/36
B01D 53/94
F02D 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の燃焼が内燃機関で行われる場合に発生するSO、NO、煤及び水蒸気を含む排気ガスからSO、NOを除去する方法であって、前記排気ガスは、酸化触媒を含む少なくとも1つの触媒反応器を通過し、通過の際に、前記触媒反応器で少なくともSO及びNOはそれぞれSO及びNOに変換され、前記排気ガスは凝縮器で、水の露点温度以下の温度まで冷却された後に、SO、NO及び水は凝縮され、さらにSO及びNOは凝縮水に溶解されて排気ガスから除去され
前記排気ガスは、少なくとも1つの触媒反応器を通過する前に、粒子状物質を除去する粒子フィルターを通過し、
前記触媒反応器の下流側及び前記凝縮器の上流側から取り出された少なくとも一部の排気ガスは、少なくとも1つの粒子フィルターの上流側に戻されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粒子フィルターの下流側及び前記触媒反応器の上流側から取り出された少なくとも一部の排気ガスは、前記内燃機関に戻されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子フィルターは、冷炎(cold flame)ガスを通過させることによって再生(regenerate)されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの触媒反応器内の前記触媒は、冷炎ガスを前記触媒反応器に通過させることによって前記触媒反応器の起動時に加熱されることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
排気ガスは、20℃−70℃の範囲の温度まで冷却されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水は凝縮器内に注入されることを特徴とする請求項1乃至に記載の方法。
【請求項7】
燃料の燃焼が内燃機関で行われる際に発生するSO、NO、煤及び水蒸気を含む排気ガスからSO、NOを除去する浄化装置であって、前記内燃機関に流体的に接続されている少なくとも1つの触媒反応器を備え、前記触媒反応器は、前記排気ガスが触媒反応器を通過する時にSO及びNOをそれぞれSO及びNOに変換する酸化触媒を含み、
さらに前記装置は、前記排気ガスが少なくとも1つの触媒反応器を通る前に、前記排気ガス内の粒子状物質を除去する粒子フィルターを含み、前記粒子フィルターは、前記内燃機関及び前記触媒反応器と流体的に接続され、
さらに前記浄化装置は、前記触媒反応器の下流側に流体的に前記触媒反応器と接続されている凝縮器を備えており、前記凝縮器内で前記排気ガスは、水の露点温度以下の温度まで冷却され、SO、NO及び水は凝縮され、さらにSO及びNOは凝縮水に溶解され、これによって、SOx及びNOxはて排気ガスから除去され、
前記装置は、前記触媒反応器の下流側及び前記凝縮器の上流側からの少なくとも一部の排気ガスを前記粒子フィルターの上流側に戻す導管を備えていることを特徴とする浄化装置。
【請求項8】
前記装置は、前記粒子フィルター下流側及び前記触媒反応器上流側からの少なくとも一部の排気ガスを排気ガス再循環ループ(EGR−Loop)内の内燃機関内に戻す導管を備えていることを特徴とする請求項に記載の浄化装置。
【請求項9】
さらに前記装置は、冷炎ガスを生成させる冷炎発生器(cold flame generator)を備え、前記冷炎ガスが前記粒子フィルターを通して流せるように前記冷炎発生器と前記粒子フィルターとが流体的に接続されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の浄化装置。
【請求項10】
さらに前記装置は、冷炎ガスを生成させる冷炎発生器を備え、前記冷炎ガスが前記触媒反応器を通して流れるように前記冷炎発生器は前記触媒反応器と流体的に接続されていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の浄化装置。
【請求項11】
前記凝縮器は、前記凝縮器内に水を注入できる水源に接続されている流体流路と接続されていることを特徴とする請求項乃至1のいずれか一項に記載の浄化装置。
【請求項12】
内燃機関と、SO、NO及び煤を排気ガスから除去する請求項乃至1いずれか一項に記載の浄化装置とを備える船舶であって、前記内燃機関から排出される前記排気ガスが前記浄化装置を通して流れるように、前記浄化装置は、前記内燃機関と流体的に接続されていることを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排気ガスを浄化する為の方法及び装置に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、硫黄の含有量が高いディーゼルまたは重油で走行する船舶上の内燃機関または他の輸送機器の内燃機関から生じる排気ガスからSO、NO及び粒子状物質(particulate matter)を除去することに係る。
【背景技術】
【0003】
硫黄の含有量が高いディーゼルまたは重油、即ち、およそ100ppm以上含有する硫黄が燃焼されると、SO、NO及び煤(soot)/粒子状物質を形成する。船舶には、SO、NO及び粒子状物質(粒子及び煤)に対する厳しい排出制限がある為、排気ガスを大気中に放出される前に、大部分を排気ガスから除去する必要がある。
【0004】
排気ガスからSOを除去する周知の方法は、水を用いてSOを除去するスクラバー(scrubber)を使用する方法である。スクラバーの問題点は、構築物が巨大であることと、相当な電力を使用することである。水でSOを除去した最終産物は、スラッジ(sludge)であり、更なる処置をする為に保管ないし堆積が必要な有害廃棄物である。スクラバーは巨大な構造物であるが故に、船舶または他の輸送機器用に改造する場合は、大きな空間と相当な改築が必要になる。
【0005】
特許文献1には、高濃度及び純硫酸を製造する方法として、硫黄源が燃焼室で燃焼されることや、流出物内のSOがSOに触媒酸化されることや、SOが硫酸に水と水和させることが開示されている。硫酸はその後、流出物から硫酸を分離する為に凝縮される。硫酸の分離は、硫酸の酸露点直下まで冷却されたSOを含むガスによって行われる。硫酸は、凝縮器内の配管の表面に堆積され、捕集されてから冷却される。この処理の代表的な温度は、以下の通りである:
凝縮器から排出される排気ガスの温度は、100℃以上であり、硫酸が生成される温度は、酸露点直下の温度(硫黄の含有量によるが、少なくとも125℃、通常はもっと高い)である。この処理のように高濃度で高温度の硫酸を取り扱ったり冷却したりするには、特殊な装置が必要である。さらに、この処理は、相当な量のエネルギーが必要とされ、配置そのものにスペースを要求する(space−requiring)。
【0006】
輸送機器の内燃機関(IC−engines)の使用においてスペースとエネルギーは重要な為、つまり特許文献1に開示された方法は現在の海事産業では使用されていない。さらに内燃機関を使用する船舶及び他の輸送機器では、腐食性凝縮物を取り扱うことに問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】豪州特許AU2007219270号公報
【特許文献2】米国特許US6,793,693号公報
【特許文献3】欧州特許EP2,198,133B号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を解決する為に、内燃機関から排出される排気ガスからSO、NO及び粒子や煤を除去する方法及び装置を提供するものである。
【0009】
さらに本発明の目的は、内燃機関から排出される排気ガスからSO、NO及び粒子や煤を、公知の方法よりもエネルギーを効率良く除去できる方法及び装置を得ることである。
【0010】
また本発明の目的は、内燃機関から排出される排気ガスからSO、NO及び粒子と煤を除去した最終生産物(the final products of process)は、船舶/車両に貯蔵することができ、且つ少なくとも市場価値を持つことができる方法及び装置を得ることである。
【0011】
さらに本発明の目的は、内燃機関から排出される排気ガスからSO、NO及び粒子や煤を除去でき、且つ既存の船舶及び車両をコンパクトに簡単に改造できる装置を提供するものである。
【0012】
さらなる目的は、スラッジの形成を回避する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、請求項1に記載する方法及び請求項9に記載する浄化装置、並びに独立請求項の請求項16、17及び18に記載する発明によって達成される。請求項に係る発明のその他の実施形態については、従属請求項に定義する。
【0014】
請求項に係る発明は、粒子、煤及び硫黄を除去し、且つ内燃機関(IC−engines)からNOの排出量を削減できる。処理中に粒子を除去することが可能であり、触媒反応器内でSOはSOに酸化され、NOはNOに酸化される。SO及びNOは、水と反応するとそれぞれ硫酸及び硝酸を形成する。その後、排気ガス内の排気ガスを水の露点直下まで冷却しながら凝縮器の排気ガスから硫酸及び硝酸を凝縮させる。このように排気ガス内の利用可能な水を用いて1つの工程で硫黄とNOの両方を除去できる。更なる利点は、排気ガス内を水の露点以下に冷却することによって酸ミストの形成を回避できることである。
【0015】
請求項に係る発明における代表的な温度は、以下の通りである:
凝縮器から排出する排気ガスの温度は、排気ガス内の水の露点(排気ガスの露点温度は、燃料の品質及びエンジンへの負荷にもよるが、常に70℃未満である)未満であり、好ましい温度範囲は、20℃−70℃で、より好ましい温度範囲は、20℃−50℃である。凝縮された酸の温度は、常に70℃よりも低くなる。凝縮物は、硫酸と硝酸の混合物である。
【0016】
低い動作温度により、上述の公知の方法と比べて処理をする為の装置は多くのスペースを取らなくてすみ、且つ動作中の必要エネルギーは少なくてすむ。
【0017】
凝縮物の純度は、請求項に係る発明において特に重要ではない。
【0018】
主な目的は、排気ガスから硫黄及び他の汚染物質を除去しつつ、廃棄物を有害物質(スクラバースラッジのような)として廃棄処置する代わりにいくつかの市場価値を得ることである。このような有害物質の廃棄には、費用がかかる。それでも前述した硫酸及び硝酸の混合物には、いくつかの市場価値を有している。
【0019】
また請求項に係る発明は、内燃機関から排出する排気ガスから粒子及び煤を除去する為の1つまたは複数の粒子フィルター(particle filters)を備えている。粒子フィルターまたはフィルターは、触媒反応器の前に配設されるので触媒の汚染が回避される。
【0020】
本発明の一態様に係る浄化装置によれば、内燃機関から排出される排気ガスから粒子及び煤を除去する為の1つまたは複数のフィルターが凝縮器及びまたはスクラバーの上流側に配設され、粒子状物質と共に凝縮器及びまたはスクラバー内の液体の汚染が回避できる。
【0021】
しばらく使用すると粒子フィルターまたはフィルターが詰まるので再生が必要になる。この再生は、通常、酸化条件下で排気ガスの温度を800℃まで上昇させて炭素堆積物を焼き尽くすことによって行われる。
【0022】
しかしながら、請求項に係る発明は、粒子フィルターまたはフィルターの再生が必要な場合、粒子フィルターを通過する冷炎(cold flame)ガスまたは低温炎(cool flame)と呼ぶガスを用いて、それらを再生する。冷炎ガスは、触媒が動作温度に到達する前に触媒反応器の触媒を加熱する為に用いられる。冷炎ガスは、冷炎が維持される冷炎発生器で生成される。冷炎中の燃料は、部分的に予熱空気中に酸化される。温度は500℃以下に一定に保たれており、空気/燃料比と滞留時間とは独立している。冷炎処理では、燃料の発生量の一部のみが放出され、多くの場合では50%未満、さらに多くの場合では40%未満、より多くの場合では2から30%または2から20%である。この熱は、残りの燃料を蒸発させる為に使用され、部分酸化生成物(products of the partial oxidation)を含む均一なガス状燃料(homogenous gaseous fuel)を投与しながら残りの燃料を蒸発させる。冷炎ガスを生成する方法の詳細及び完全な説明は、引用文献2に記載されている。冷炎ガスを用いて粒子フィルターまたはフィルターを再生する方法は、出願人の特許(引用文献3)に記載されている。
【0023】
前の段落に記載されている特に本明細書で用いる用語「冷炎」とは、低温炎現象(cool flame phenomenon)を指す。この現象は、当業者には公知であり、与えられた名称は、一般の火炎と燃料の自動点火温度と比較して、特定炎の比較的低い温度を指している。冷炎はこれらの低い温度でなければ得ることができなく、高温では、燃料が自動点火されるので通常の燃料の燃焼が行われだろう。
【0024】
「冷炎ガス」は、フリーラジカル(free radicals)及び未反応酸素または空気を含む気化燃料及び部分酸化燃料を有している。従って「冷炎ガス」は、部分酸化処理からのガスであって、燃料の完全燃焼または酸素の完全燃焼のいずれかによって制御または制限されるものではない。なぜなら、両方とも未反応酸素及び未気化燃料は冷炎ガスの一部を形成しているからである。
【0025】
請求項に係る発明は、硫黄及びNOを排気ガスから除去することができる方法及び装置を提供するものである。また請求項に係る発明の一実施形態では、粒子状物質、硫酸及びNO、3つ全ての汚染物質を排気ガスから除去することができる。硫酸の純度は重要ではないので、凝縮器を高温で動作する必要がない。この為、エネルギーは少なくなり、スペースも小さくなり、且つ、高温度で高濃度の硫酸を処置する特別な設備も不要になる。さらに、本発明の方法及び装置は、硫黄の含有量が高い燃料を使用する内燃機関の排気ガスを、処理する必要がある全ての廃棄物を生成せずに浄化できる。
【0026】
このように、SO、NO、煤及び水を含む排気ガスからSO及びNOを除去する方法が開示されている。その排気ガスは、内燃機関で燃焼された燃料から生じる。排気ガスは、酸化触媒を有する少なくとも1つの触媒反応器を通過させられる。その触媒反応器はSOをSOにさらにNOをNOに少なくとも変換することができる。排気ガスは、凝縮器を通過した後に凝縮器内の水の露点以下の温度まで冷却し、SO、NO及び水は凝縮され、さらにSO及びNOは凝縮水に溶解され、排気ガスから除去される。
【0027】
排気ガスが少なくとも1つの触媒反応器を通過する前に、排気ガスは、粒子状物質を除去する為に粒子フィルターを通過させることができる。
【0028】
本発明の一実施形態では、少なくともいくつかの排気ガスは、下流の触媒反応器及び上流の凝縮器から取り出せるようになっており、さらに少なくとも1つの粒子フィルターの上流に排気ガスをフィードバックできる。排気ガス内のNOは、粒子フィルター内の粒子状物質と反応し、Nが形成される。
【0029】
本発明の別の一実施形態では、少なくともいくつかの排気ガスは、触媒反応器下流及び凝縮器上流から取り出せるようになっており、さらに内燃機関へフィードバックできる。
【0030】
本発明の別の一実施形態では、冷炎を粒子フィルターに通過させることによって粒子フィルターを再生することができる。
【0031】
本発明の別の一実施形態では、少なくとも1つの触媒反応器内の触媒は、好ましくは冷炎発生器から触媒反応器に冷炎ガスまたは温風を通過させることによって、触媒反応器の起動(up−start)時に加熱できる。
【0032】
本発明の別の一実施形態では、排気ガスは、好ましくは20℃−70℃、より好ましくは、30℃−50℃の温度範囲に凝縮器内で冷却される。
【0033】
別の方法の態様では、追加の水(additional water)を凝縮器内に注入することである。この追加の水は、排気ガスを冷却できる。さらに排気ガスからSO及びNOをこの追加の水に溶解できる。
【0034】
追加の水を水滴の形で排気と接触させた時に、これらの水滴(water droplets)は、冷却された排気ガス内に形成された酸ミスト滴(mist droplets)を捕捉しながら洗い流すことができる。本発明のさらなる態様は、少なくとも部分的に追加の水、凝縮された水及び追加の水として凝縮器に凝縮器から回収された酸は、再循環することを含んでいる。
【0035】
さらなる態様では、追加の水は海水であってもよい。海水の中に溶解した塩は、硫酸と反応し、硫酸塩を形成する。硫酸塩は、海水の通常の成分であり、また粒子フィルター内の上流側で粒子が排気ガスから除去されている為、得られた凝縮物、追加の水及び硫酸塩を含む凝縮物ストリーム(condensate stream)を海に処分することも可能である。
【0036】
また、SO、NO、煤及び水を含む排気ガスからSO及びNOを除去する為の浄化装置が開示されている。排気ガスは、内燃機関における燃料の燃焼によって生じる。除去装置は、流体的に内燃機関に接続された少なくとも1つの触媒反応器を備えている。触媒反応器は、排気ガスが触媒反応器を通る際に、SOをSOに、NOをNOに少なくとも変換する酸化触媒を備えている。さらに装置は、触媒反応器の下流側に触媒反応器と流体的に接続されている凝縮器を備えている。凝縮器内の排気ガスは、凝縮器内の水の露点よりも低い温度まで冷却されと、SO、NO及び水は凝縮され、且つSO及びNOは凝縮水に溶解して排気ガスから除去されるので、SO及びNOが排気ガスから除去される。
【0037】
さらなる実施形態に係る浄化装置は、排気ガスが少なくとも1つの触媒反応器を通る前に、排気ガス内の粒子状物質を除去する為の粒子フィルターを備えてもよい。粒子フィルターは、内燃機関及び触媒反応器へ流体的に接続されていることが好ましい。
【0038】
別の実施形態に係る浄化装置は、少なくとも排気ガスの一部を触媒反応器の下流側及び凝縮器の上流側から粒子フィルターの上流側に戻す導管(conduit)を含んでいる。
【0039】
ここで用いる用語「導管」は、パイプライン、チャネル、流路または流体の為の任意の手段を含む流体連結を与えるその他の手段を指している。
【0040】
他の実施形態では、浄化装置は粒子フィルターの下流側及び触媒反応器の上流側から、排気ガスを部分的にEGRループ内の内燃エンジン中に戻す導管を含んでも良い。
【0041】
別の実施形態では、浄化装置は、冷炎ガスを生成する冷炎発生器をさらに備えることができる。冷炎発生器は、冷炎ガスが粒子フィルターを通して流すことができるように粒子フィルターに流体的に接続されているのが好ましい。
【0042】
別の実施形態では、浄化装置は、冷炎ガスを生成する冷炎発生器をさらに備えており、冷炎発生器を流体的に触媒反応器に接続させておくと、冷炎ガスや温風は触媒反応器を通して流すことができる。冷炎発生器は、温風注入口及び燃料注入口を備えている。温風及び燃料は、冷炎ガスを供給する為に、冷炎発生器で反応する。燃料が全く添加されない場合は、温風は触媒反応器内に未反応のまま流すことができる。この機能は、例えばエンジン始動前等、立ち上げ時の触媒反応器の加熱に用いるのが効果的である。
【0043】
別の一実施形態では、排気ガスは、凝縮器内で好ましくは20℃−70℃、より好ましくは30℃−50℃の温度範囲に冷却される。
【0044】
また、内燃機関及び上述した排気ガスからSO、NO及び煤を除去できる浄化装置を備えた船舶が得られる。浄化装置は、内燃機関からの排気ガスが浄化装置を通して流れることができるように内燃機関に流体的に接続されている。ここで使用する用語「船舶」は、ボートや船等の輸送用船舶を指している。
【0045】
ここで使用する用語「粒子状物質」は、内燃機関からの排気ガス中に存在する煤及び他の粒子を指している。
【0046】
さらに本発明は、粒子状物質及びSOを含む排気ガスからSO及び粒子状物質を除去する方法を提供する。具体的には、本発明では、排気ガスは内燃機関における燃料の燃焼によって生じる。前記排気ガスは、少なくともSOをSOに変換できる少なくとも1つのSO除去用の触媒反応器を通過させる前に、前記粒子状物質除去用粒子フィルターを通過され、前記排気ガスはスクラバーを通過され、SO及びSOが凝縮され、溶解する温度で、浄化液(scrubbing liquid)を接触されて、冷却され、また冷炎ガスを使用して前記粒子フィルターを再生する。本発明のこの態様は、この方法を使用しなければ粒子状物質としてスクラバー内に形成されるようなスラッジをスクラバーの上流側で除去することによって、スラッジの形成を回避する。
【0047】
さらに、この態様におけるNOの除去方法は、酸化触媒を含む少なくとも1つの触媒反応器を備え、触媒反応器はSOをSOに、NOをNOにそれぞれ変換される。
【0048】
さらに本発明は、燃料の燃焼が内燃機関で行われる際に生じる粒子状物質及びSOを含む排気ガスからSO及び粒子状物質を除去する浄化装置であって、前記装置は、前記内燃機関に流体的に接続された少なくとも1つの触媒反応器を備え、前記触媒反応器は、前記排気ガスが当該触媒反応器を通過する際、少なくともSOをSOに変換する酸化触媒を含み、前記装置は、前記排気ガスが少なくとも1つの触媒反応器を通る前に前記排気ガス内の粒子状物質を除去する粒子フィルターを備え、前記粒子フィルターは前記内燃機関及び前記触媒反応器と流体的に接続されており、さらに、前記装置は、前記触媒反応器の下流側で前記触媒反応器と流体的に接続されているスクラバーを備えており、前記スクラバー内で前記排気ガスは、SOが凝縮され、且つ、SOが溶解して前記排気ガスから除去される温度に冷却された洗浄液と接触し、更に、前記装置は、冷炎ガス(cold flame gas)を生成する冷炎発生器を備えており、前記冷炎発生器は前記冷炎ガスを前記粒子フィルター通過することによって前記粒子フィルターを再生できるように、前記粒子フィルターと流体的に接続されていることを特徴とする浄化装置を提供する。
【0049】
本発明のこの態様は、この装置でなければ粒子状物質としてスクラバー内に形成されるスラッジをスクラバーの上流側で除去することによって回避する。
【0050】
さらなる装置の態様では、さらに冷炎ガスが触媒反応器を通して流れるように触媒反応器に冷炎発生器を流体的に接続させてもよい。この態様では、粒子フィルター及び触媒反応器の両方が冷炎ガスによって再生される。
【0051】
以下、本発明の好適な実施形態は、添付図面を参照しながら説明をする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の第1の実施形態の概略図を示す。
図2】本発明の第2の実施形態の概略図を示し、排気ガスが酸化触媒反応器下流側から粒子フィルター上流側まで戻される例を示す。
図3図2の実施形態と同様な本発明の第3の実施形態の概略図を示し、ここでは、二つの平行な流路が存在する場合を示している。
図4】本発明の第4の実施形態の概略図を示し、排気ガスが流体フィルター下流側から内燃機関まで戻される場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0053】
全ての図1−4において、技術的特徴が同じ場合、同じ参照番号が与えられている。また、図面は本発明の要部を示しており、弁装置のような他の標準的な部品は含まれてないことに留意すべきである。そのような装置を浄化装置のどこに及びどの時に組み込むことが必要であることは当業者には明らかであろう。
【0054】
図1は、排気ガスからSO、NO及び煤/粒子状物質を除去する浄化装置10の第1の実施形態を示している。排気ガスは、内燃機関12、特に、船舶における内燃機関で生成される。しかし、内燃機関は、内燃機関によって駆動される車両や電動機のような他のタイプの機器の内燃機関であってもよい。
【0055】
燃料は、流体流路13を通して内燃機関12へ供給される。空気は、流体流路14を通して内燃機関に供給される。内燃機関の燃焼室(図示せず)内で、燃料は空気と燃焼して排気ガスを形成する。燃料は、内燃機関内で燃焼プロセス中に主にSOを発生させる高含有の硫黄を含んでいる。排気ガスの排出量の規制の為、大気中に放出される排気ガス内の硫黄含有量が、少なくとも公式の基準や要件によって設定された制限以下になるように、SOは排気ガスから除去しなければならない。例えば、船舶に対して、排気ガス中のSO、NO量の限度は、IMO(IMO=International Maritime Organization(国際海事機関))の規定に記載されている。
【0056】
本発明に係る浄化装置は、内燃機関12と流体流路25により接続されており、流体流路25は流体フィルター16を内燃機関に流体的に接続している。
【0057】
粒子フィルター16の下流側には、触媒反応器18が流体流路26を介して粒子フィルターと流体的に連通した状態で配置されている。触媒反応器18は少なくとも1つの酸化触媒を備えている。酸化触媒は、SO、典型的にはSOをSOに変換し、また、NO、典型的にはNOをNOに変換するような触媒である。酸化触媒は、例えば、5酸化バナジウム触媒(vanadium pentoxide catalyst)または他の適切な触媒であってもよい。粒子フィルター16は、排気ガス内に存在し、且つ、触媒反応器18内の酸化触媒の効率を毀損し、また、低下させる煤と粒子を除去する。
【0058】
さらに浄化装置10は、触媒反応器18の下流側で触媒反応器18と流体流路27で流体的に接続された凝縮器20を備えている。凝縮器20は、凝縮器20内に含まれた水の露点温度以下まで排気ガスを冷却する。即ち、排気ガスは、20℃−70℃、より好ましくは、20℃−50℃の温度範囲まで冷却される。水は、内燃機関における燃焼処理の結果として、排気ガスの一部となる。但し、浄化装置10は、必要に応じて水を凝縮器20に注入できるように、水の供給源に接続された流体流路21を設けてもよい。弁装置(valve device)22は、流体流路21を通る水の流れを制御する。
【0059】
排気ガスは、水の露点温度以下までより低い温度に冷却されると、水は凝縮され、さらに排気ガス内のSOが凝縮されて硫酸が形成され、また排気ガス内のNOが凝縮されて硝酸が形成される。液体流路23は、硫酸、硝酸及び水の混合物が凝縮器を通して排出される凝縮器20の第1の排出口に接続されている。流体流路28は、残りの排気ガスが凝縮器を通して排出される凝縮器20の第2の排出口に接続されている。
【0060】
図1に示す浄化装置10は、冷炎ガスを生成できる冷炎発生器30を備えている。予熱された空気が流体流路32を通して冷炎発生器に供給されている間、燃料は、流体流路31を通して冷炎発生器に供給される。燃料は、内燃機関10に供給される燃料と同じであってもよい。冷炎発生器では、燃料は上述の冷炎ガスを形成するように部分的に酸化される。流体流路33は、冷炎発生器30及び流体流路25に接続されており、冷炎発生器30内で生成される冷炎ガスは、冷炎発生器30から流体流路25内に流すことができる。流体流路33には、流体流路33を介して冷炎ガスの流れを制御できるように弁装置34が設けられている。冷炎ガスは、煤/粒子状物質によって部分的にまたは完全に詰まった時に、粒子フィルター16を再生する為に使用される。粒子フィルター16を再生する為に、冷炎発生器から及び粒子フィルター16を通して冷炎ガスが移送される。冷炎ガスが煤を酸化することで、粒子フィルター16が再生される。内燃機関からの排気ガスが触媒反応器を通る前に、冷炎ガスは、触媒反応器18内の酸化触媒の動作温度である300℃−700℃になるまで酸化触媒を加熱するのに使用できる。
【0061】
本発明の第1の実施形態では、浄化装置10を通過した後に得られた排気ガスは、極めて低い硫黄及び煤/粒子状物質の含量を有する。
【0062】
図2に示す本発明の実施形態は、図1に示す実施形態と非常に似ている。上述のように、全ての図面において同じ参照番号を有しているので同一の技術的特徴は、繰り返し説明しない。
【0063】
図2に示す実施形態の図1に示す第1の実施形態から異なっている点は、浄化装置10はさらに流体流路36を備えている点である。当該流体流路36は流体流路27に接続された一端と、粒子フィルター16と内燃機関(12)を流体的に接続している流体流路25に接続された他端とを有している。流体流路27は触媒反応器18及び凝縮器20に流体的に接続されると共に、流体流路25にも接続されている。当該流体流路25は粒子フィルター16及び浄化装置が動作している時、内燃機関に流体的に接続されている。流体流路36には、流体流路36を通る排気ガスの流れを制御できるように弁装置37が設けられているのが好ましい。流体流路36を含めることは、NOを含む触媒反応器18の下流側から粒子フィルター16の上流側まで排気ガスを戻すことが可能になることを意味している。NOは、粒子フィルター16を通過する際、煤がNOと反応してNが形成されるので、排気ガス内のNOの含有量の低減に寄与すると同時に、粒子フィルター16から煤を除去する。
【0064】
本発明の第2の実施形態では、浄化装置10を通過した後に得られた排気ガスは、極めて低い硫黄及び煤の含量及び極めて低いNOの含量を有する。
【0065】
図3に示す実施形態は、図2に示した実施形態と同様である。違いは、浄化装置10は、二つの粒子フィルター16a、16b及び二つの触媒反応器18a、18bを備えていることである。粒子フィルター16a及び触媒反応器18aは、排気ガスの為の二つの平行な流体流路の第1の支流(branch)に配置されており、同時に粒子フィルター16b及び触媒反応器18bは、二つの平行な流体流路の第2の支流に配置されている。
【0066】
浄化装置10が動作している時、内燃機関に流体的に接続されている流体流路25は、第1の流体流路接続部24で第1の支流44及び第2の支流45の2つの支流に分岐されている。図3に示すように、2つの支流44、45は、再び第2の流体流路接続部29で結合される。
【0067】
第1の支流44は、流体流路接続部24と流体流路25aで流体的に接続された粒子フィルター16aを備えている。粒子フィルター16aは、粒子フィルター16aの下流側に配置された触媒反応器18aと流体的に接続されている。さらに触媒反応器18aは、触媒反応器の下流側で流体流路27aにより第2の流体流路接続部29と接続されている。図2に示した実施形態と同様に、さらに流体流路36aが設けられており、その一端は、流体流路27aと接続されており、他端は、流体流路25aと接続されているので、流体流路27aを流れる触媒反応器18aの下流側の排気ガスを流体流路25aへ排気ガスを供給するように戻すことができる。流体流路36aは、弁装置37aを備えているのが好ましく、そのような流体経路36aを通して流れる排気ガスを制御することができる。
【0068】
第2の支流45は、流体流路接続部24と流体流路25bで流体的に接続された粒子フィルター16bを備えている。粒子フィルター16bは、粒子フィルター16bの下流側に配置された触媒反応器18bと流体的に接続されている。さらに触媒反応器18bは、触媒反応器の下流側で流体流路27bによりに第2の流体流路接続部29と接続されている。図2に示した実施形態と同様に、さらに流体流路36bが設けられており、その一端は、流体流路27bと接続されており、他端は、流体流路25bと接続されているので、流体流路27bを流れる触媒反応器18bの下流側の排気ガスを流体流路25bへ排気ガスを供給するように戻すことができる。流体流路36bは、弁装置37bを備えているのが好ましく、そのような流体経路36bを通して排気ガスの流れを制御することができる。
【0069】
流体流路36a、36bの他の経路として、流体経路36aの一端を流体経路27aと接続させ、流体経路36aの他端を流体経路25bと接続させて、触媒反応器18aの下流側から粒子フィルター16bの上流側に排気ガスを流すことも可能である。同様に、36bの一端を流体経路27bと接続させ、流体経路36bの他端を流体経路25aと接続させて、触媒反応器18bの下流側から粒子フィルター16aの上流側に排気ガスを流すことも可能である。
【0070】
本発明の第3の実施形態では、浄化装置10を通過した後に得られた排気ガスは、極めて低い硫黄、NO及び煤の含量を有する。
【0071】
図4では、再び図1−2に示す実施形態と同様である実施形態が示されている。図4図1の実施形態との唯一の違いは、図4の実施形態は、排気ガス再循環ループ(EGR−loop)(排気ガスリターン(exhaust gas return))を有していることである。浄化装置10は、流体流路39を備えており、その一端は、粒子フィルター16及び触媒反応器18を接続する流体流路26に接続されており、また他端は、浄化装置が動作している場合に流体流路26を通って排気ガスを内燃機関12の処理室に戻すことができる内燃機関12と接続されている。流体流路39は、排気ガスを処理室に戻される前に冷却できるような冷却器40と流体流路39を通る排気ガスを制御できるように弁装置41を備えていてもよい。排気ガスは燃焼室に戻されると、その結果、排気ガス内のNOの含有量が低下する。
【0072】
本発明の第4の実施形態では、浄化装置10を通過した後に得られた排気ガスは、極めて低い硫黄及び煤と極めて低いNOの含量を有する。
【0073】
流体流路13、14、21、23、25、26、26a、26b、27、27a、27b、28、31、32、31、33、33a、33b、36、36a、36b、39は、流体を流すことができるパイプ、チューブ、導管または同様な装置の形をした一般的な流体ライン(fluid line)である。
【0074】
本発明の様々な実施形態の説明から分かるように、浄化装置10を排気ガスが通った後に、内燃機関内の燃焼処理によって生じる排気ガスから相当な量のSO、NO及び煤/粒子状物質が除去される。SO、NOの含有量がIMO規制の要件よりはるかに下回る為、一般にとてもクリーンな排気ガスである。
【符号の説明】
【0075】
10 浄化装置
12 内燃機関
13 流体流路
14 流体流路
16、16a、16b 粒子フィルター
18、18a、18b 触媒反応器
20 凝縮器
21 流体流路
22 弁装置
23 流体流路
24 第1の流体流路接続部
25 流体流路
26、26a、26b 流体流路
27、27a、27b 流体流路
28 流体流路
29 第2の流体流路接続部
30 冷炎発生器
31 流体流路
32 流体流路
33、33a、33b 流体流路
34、34a、34b 弁装置
36、36a、36b 流体流路
37、37a、37b 弁装置
39 流体流路
43 弁装置
44 第1の支流
45 第2の支流
図1
図2
図3
図4