【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、請求項1に記載する方法及び請求項9に記載する浄化装置、並びに独立請求項の請求項16、17及び18に記載する発明によって達成される。請求項に係る発明のその他の実施形態については、従属請求項に定義する。
【0014】
請求項に係る発明は、粒子、煤及び硫黄を除去し、且つ内燃機関(IC−engines)からNO
Xの排出量を削減できる。処理中に粒子を除去することが可能であり、触媒反応器内でSO
2はSO
3に酸化され、NOはNO
2に酸化される。SO
3及びNO
2は、水と反応するとそれぞれ硫酸及び硝酸を形成する。その後、排気ガス内の排気ガスを水の露点直下まで冷却しながら凝縮器の排気ガスから硫酸及び硝酸を凝縮させる。このように排気ガス内の利用可能な水を用いて1つの工程で硫黄とNO
Xの両方を除去できる。更なる利点は、排気ガス内を水の露点以下に冷却することによって酸ミストの形成を回避できることである。
【0015】
請求項に係る発明における代表的な温度は、以下の通りである:
凝縮器から排出する排気ガスの温度は、排気ガス内の水の露点(排気ガスの露点温度は、燃料の品質及びエンジンへの負荷にもよるが、常に70℃未満である)未満であり、好ましい温度範囲は、20℃−70℃で、より好ましい温度範囲は、20℃−50℃である。凝縮された酸の温度は、常に70℃よりも低くなる。凝縮物は、硫酸と硝酸の混合物である。
【0016】
低い動作温度により、上述の公知の方法と比べて処理をする為の装置は多くのスペースを取らなくてすみ、且つ動作中の必要エネルギーは少なくてすむ。
【0017】
凝縮物の純度は、請求項に係る発明において特に重要ではない。
【0018】
主な目的は、排気ガスから硫黄及び他の汚染物質を除去しつつ、廃棄物を有害物質(スクラバースラッジのような)として廃棄処置する代わりにいくつかの市場価値を得ることである。このような有害物質の廃棄には、費用がかかる。それでも前述した硫酸及び硝酸の混合物には、いくつかの市場価値を有している。
【0019】
また請求項に係る発明は、内燃機関から排出する排気ガスから粒子及び煤を除去する為の1つまたは複数の粒子フィルター(particle filters)を備えている。粒子フィルターまたはフィルターは、触媒反応器の前に配設されるので触媒の汚染が回避される。
【0020】
本発明の一態様に係る浄化装置によれば、内燃機関から排出される排気ガスから粒子及び煤を除去する為の1つまたは複数のフィルターが凝縮器及びまたはスクラバーの上流側に配設され、粒子状物質と共に凝縮器及びまたはスクラバー内の液体の汚染が回避できる。
【0021】
しばらく使用すると粒子フィルターまたはフィルターが詰まるので再生が必要になる。この再生は、通常、酸化条件下で排気ガスの温度を800℃まで上昇させて炭素堆積物を焼き尽くすことによって行われる。
【0022】
しかしながら、請求項に係る発明は、粒子フィルターまたはフィルターの再生が必要な場合、粒子フィルターを通過する冷炎(cold flame)ガスまたは低温炎(cool flame)と呼ぶガスを用いて、それらを再生する。冷炎ガスは、触媒が動作温度に到達する前に触媒反応器の触媒を加熱する為に用いられる。冷炎ガスは、冷炎が維持される冷炎発生器で生成される。冷炎中の燃料は、部分的に予熱空気中に酸化される。温度は500℃以下に一定に保たれており、空気/燃料比と滞留時間とは独立している。冷炎処理では、燃料の発生量の一部のみが放出され、多くの場合では50%未満、さらに多くの場合では40%未満、より多くの場合では2から30%または2から20%である。この熱は、残りの燃料を蒸発させる為に使用され、部分酸化生成物(products of the partial oxidation)を含む均一なガス状燃料(homogenous gaseous fuel)を投与しながら残りの燃料を蒸発させる。冷炎ガスを生成する方法の詳細及び完全な説明は、引用文献2に記載されている。冷炎ガスを用いて粒子フィルターまたはフィルターを再生する方法は、出願人の特許(引用文献3)に記載されている。
【0023】
前の段落に記載されている特に本明細書で用いる用語「冷炎」とは、低温炎現象(cool flame phenomenon)を指す。この現象は、当業者には公知であり、与えられた名称は、一般の火炎と燃料の自動点火温度と比較して、特定炎の比較的低い温度を指している。冷炎はこれらの低い温度でなければ得ることができなく、高温では、燃料が自動点火されるので通常の燃料の燃焼が行われだろう。
【0024】
「冷炎ガス」は、フリーラジカル(free radicals)及び未反応酸素または空気を含む気化燃料及び部分酸化燃料を有している。従って「冷炎ガス」は、部分酸化処理からのガスであって、燃料の完全燃焼または酸素の完全燃焼のいずれかによって制御または制限されるものではない。なぜなら、両方とも未反応酸素及び未気化燃料は冷炎ガスの一部を形成しているからである。
【0025】
請求項に係る発明は、硫黄及びNO
Xを排気ガスから除去することができる方法及び装置を提供するものである。また請求項に係る発明の一実施形態では、粒子状物質、硫酸及びNO
X、3つ全ての汚染物質を排気ガスから除去することができる。硫酸の純度は重要ではないので、凝縮器を高温で動作する必要がない。この為、エネルギーは少なくなり、スペースも小さくなり、且つ、高温度で高濃度の硫酸を処置する特別な設備も不要になる。さらに、本発明の方法及び装置は、硫黄の含有量が高い燃料を使用する内燃機関の排気ガスを、処理する必要がある全ての廃棄物を生成せずに浄化できる。
【0026】
このように、SO
X、NO
X、煤及び水を含む排気ガスからSO
X及びNO
Xを除去する方法が開示されている。その排気ガスは、内燃機関で燃焼された燃料から生じる。排気ガスは、酸化触媒を有する少なくとも1つの触媒反応器を通過させられる。その触媒反応器はSO
2をSO
3にさらにNOをNO
2に少なくとも変換することができる。排気ガスは、凝縮器を通過した後に凝縮器内の水の露点以下の温度まで冷却し、SO
3、NO
2及び水は凝縮され、さらにSO
3及びNO
2は凝縮水に溶解され、排気ガスから除去される。
【0027】
排気ガスが少なくとも1つの触媒反応器を通過する前に、排気ガスは、粒子状物質を除去する為に粒子フィルターを通過させることができる。
【0028】
本発明の一実施形態では、少なくともいくつかの排気ガスは、下流の触媒反応器及び上流の凝縮器から取り出せるようになっており、さらに少なくとも1つの粒子フィルターの上流に排気ガスをフィードバックできる。排気ガス内のNO
2は、粒子フィルター内の粒子状物質と反応し、N
2が形成される。
【0029】
本発明の別の一実施形態では、少なくともいくつかの排気ガスは、触媒反応器下流及び凝縮器上流から取り出せるようになっており、さらに内燃機関へフィードバックできる。
【0030】
本発明の別の一実施形態では、冷炎を粒子フィルターに通過させることによって粒子フィルターを再生することができる。
【0031】
本発明の別の一実施形態では、少なくとも1つの触媒反応器内の触媒は、好ましくは冷炎発生器から触媒反応器に冷炎ガスまたは温風を通過させることによって、触媒反応器の起動(up−start)時に加熱できる。
【0032】
本発明の別の一実施形態では、排気ガスは、好ましくは20℃−70℃、より好ましくは、30℃−50℃の温度範囲に凝縮器内で冷却される。
【0033】
別の方法の態様では、追加の水(additional water)を凝縮器内に注入することである。この追加の水は、排気ガスを冷却できる。さらに排気ガスからSO
3及びNO
2をこの追加の水に溶解できる。
【0034】
追加の水を水滴の形で排気と接触させた時に、これらの水滴(water droplets)は、冷却された排気ガス内に形成された酸ミスト滴(mist droplets)を捕捉しながら洗い流すことができる。本発明のさらなる態様は、少なくとも部分的に追加の水、凝縮された水及び追加の水として凝縮器に凝縮器から回収された酸は、再循環することを含んでいる。
【0035】
さらなる態様では、追加の水は海水であってもよい。海水の中に溶解した塩は、硫酸と反応し、硫酸塩を形成する。硫酸塩は、海水の通常の成分であり、また粒子フィルター内の上流側で粒子が排気ガスから除去されている為、得られた凝縮物、追加の水及び硫酸塩を含む凝縮物ストリーム(condensate stream)を海に処分することも可能である。
【0036】
また、SO
X、NO
X、煤及び水を含む排気ガスからSO
X及びNO
Xを除去する為の浄化装置が開示されている。排気ガスは、内燃機関における燃料の燃焼によって生じる。除去装置は、流体的に内燃機関に接続された少なくとも1つの触媒反応器を備えている。触媒反応器は、排気ガスが触媒反応器を通る際に、SO
2をSO
3に、NOをNO
2に少なくとも変換する酸化触媒を備えている。さらに装置は、触媒反応器の下流側に触媒反応器と流体的に接続されている凝縮器を備えている。凝縮器内の排気ガスは、凝縮器内の水の露点よりも低い温度まで冷却されと、SO
3、NO
2及び水は凝縮され、且つSO
3及びNO
2は凝縮水に溶解して排気ガスから除去されるので、SO
X及びNO
Xが排気ガスから除去される。
【0037】
さらなる実施形態に係る浄化装置は、排気ガスが少なくとも1つの触媒反応器を通る前に、排気ガス内の粒子状物質を除去する為の粒子フィルターを備えてもよい。粒子フィルターは、内燃機関及び触媒反応器へ流体的に接続されていることが好ましい。
【0038】
別の実施形態に係る浄化装置は、少なくとも排気ガスの一部を触媒反応器の下流側及び凝縮器の上流側から粒子フィルターの上流側に戻す導管(conduit)を含んでいる。
【0039】
ここで用いる用語「導管」は、パイプライン、チャネル、流路または流体の為の任意の手段を含む流体連結を与えるその他の手段を指している。
【0040】
他の実施形態では、浄化装置は粒子フィルターの下流側及び触媒反応器の上流側から、排気ガスを部分的にEGRループ内の内燃エンジン中に戻す導管を含んでも良い。
【0041】
別の実施形態では、浄化装置は、冷炎ガスを生成する冷炎発生器をさらに備えることができる。冷炎発生器は、冷炎ガスが粒子フィルターを通して流すことができるように粒子フィルターに流体的に接続されているのが好ましい。
【0042】
別の実施形態では、浄化装置は、冷炎ガスを生成する冷炎発生器をさらに備えており、冷炎発生器を流体的に触媒反応器に接続させておくと、冷炎ガスや温風は触媒反応器を通して流すことができる。冷炎発生器は、温風注入口及び燃料注入口を備えている。温風及び燃料は、冷炎ガスを供給する為に、冷炎発生器で反応する。燃料が全く添加されない場合は、温風は触媒反応器内に未反応のまま流すことができる。この機能は、例えばエンジン始動前等、立ち上げ時の触媒反応器の加熱に用いるのが効果的である。
【0043】
別の一実施形態では、排気ガスは、凝縮器内で好ましくは20℃−70℃、より好ましくは30℃−50℃の温度範囲に冷却される。
【0044】
また、内燃機関及び上述した排気ガスからSO
X、NO
X及び煤を除去できる浄化装置を備えた船舶が得られる。浄化装置は、内燃機関からの排気ガスが浄化装置を通して流れることができるように内燃機関に流体的に接続されている。ここで使用する用語「船舶」は、ボートや船等の輸送用船舶を指している。
【0045】
ここで使用する用語「粒子状物質」は、内燃機関からの排気ガス中に存在する煤及び他の粒子を指している。
【0046】
さらに本発明は、粒子状物質及びSO
Xを含む排気ガスからSO
X及び粒子状物質を除去する方法を提供する。具体的には、本発明では、排気ガスは内燃機関における燃料の燃焼によって生じる。前記排気ガスは、少なくともSO
2をSO
3に変換できる少なくとも1つのSO
X除去用の触媒反応器を通過させる前に、前記粒子状物質除去用粒子フィルターを通過され、前記排気ガスはスクラバーを通過され、SO
3及びSO
2が凝縮され、溶解する温度で、浄化液(scrubbing liquid)を接触されて、冷却され、また冷炎ガスを使用して前記粒子フィルターを再生する。本発明のこの態様は、この方法を使用しなければ粒子状物質としてスクラバー内に形成されるようなスラッジをスクラバーの上流側で除去することによって、スラッジの形成を回避する。
【0047】
さらに、この態様におけるNO
Xの除去方法は、酸化触媒を含む少なくとも1つの触媒反応器を備え、触媒反応器はSO
2をSO
3に、NOをNO
2にそれぞれ変換される。
【0048】
さらに本発明は、燃料の燃焼が内燃機関で行われる際に生じる粒子状物質及びSO
Xを含む排気ガスからSO
X及び粒子状物質を除去する浄化装置であって、前記装置は、前記内燃機関に流体的に接続された少なくとも1つの触媒反応器を備え、前記触媒反応器は、前記排気ガスが当該触媒反応器を通過する際、少なくともSO
2をSO
3に変換する酸化触媒を含み、前記装置は、前記排気ガスが少なくとも1つの触媒反応器を通る前に前記排気ガス内の粒子状物質を除去する粒子フィルターを備え、前記粒子フィルターは前記内燃機関及び前記触媒反応器と流体的に接続されており、さらに、前記装置は、前記触媒反応器の下流側で前記触媒反応器と流体的に接続されているスクラバーを備えており、前記スクラバー内で前記排気ガスは、SO
3が凝縮され、且つ、SO
3が溶解して前記排気ガスから除去される温度に冷却された洗浄液と接触し、更に、前記装置は、冷炎ガス(cold flame gas)を生成する冷炎発生器を備えており、前記冷炎発生器は前記冷炎ガスを前記粒子フィルター通過することによって前記粒子フィルターを再生できるように、前記粒子フィルターと流体的に接続されていることを特徴とする浄化装置を提供する。
【0049】
本発明のこの態様は、この装置でなければ粒子状物質としてスクラバー内に形成されるスラッジをスクラバーの上流側で除去することによって回避する。
【0050】
さらなる装置の態様では、さらに冷炎ガスが触媒反応器を通して流れるように触媒反応器に冷炎発生器を流体的に接続させてもよい。この態様では、粒子フィルター及び触媒反応器の両方が冷炎ガスによって再生される。
【0051】
以下、本発明の好適な実施形態は、添付図面を参照しながら説明をする。