(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記細胞凝集体のための前記寸法縮小網(3)は、前記洗浄分離容器(1)の前記入口(102)に近い位置において前記洗浄チャンバ(101)内に内在するとともに、前記洗浄分離容器(1)の前記洗浄チャンバ(101)内に入る脂肪の流れの方向に対して垂直な位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
前記洗浄チャンバ(101)内に細胞凝集体のための第二の寸法縮小網(6)が内在し、該第二の寸法縮小網は、前記入口(102)の近くに位置する前記第一の寸法縮小網(3)から距離を置いて配置されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の装置。
前記細胞凝集体のための第二の寸法縮小網(6)は、前記洗浄分離容器(1)の前記出口(103)に近い位置において前記洗浄チャンバ(103)内に内在するとともに、前記洗浄分離チャンバ(101)が前記二つの網(3、6)の間に介在するよう前記洗浄分離容器(1)の前記洗浄チャンバ(101)内に入る脂肪の流れの方向に対して垂直な位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
前記細胞凝集体のための寸法縮小網(3、6)が、一方の網(3)と他方の網(6)とで異なるメッシュ又は開口部を有し、前記入口(102)の近くに配置された前記網(3)のメッシュ又は開口部は前記出口(103)の近くに配置された前記寸法縮小網(6)のメッシュ又は開口部よりも大きいことを特徴とする請求項2〜6の何れか一項に記載の装置。
前記細胞凝集体のための寸法縮小網(3,6)のメッシュ又は開口部の直径は、2000μmから50μmであることを特徴とする請求項2〜7の何れか一項に記載の装置。
前記細胞凝集体のための一以上の寸法縮小網(3)が、脂肪寸法縮小容器(2)の縮小チャンバ(201)に入ってくる脂肪を受けるために前記寸法縮小容器(2)の入口(202)の近くであって前記寸法縮小容器(2)の前記縮小チャンバ(201)内の入口(202)と出口(204)の間に内在するよう配置され、
前記寸法縮小容器(2)は出口(203)を有し、
前記脂肪吸引された脂肪は、前記入口(202)から注入され、前記寸法縮小網(3)
を通過して前記寸法縮小容器(2)の前記寸法縮小チャンバ(201)内に入り、前記出口(203)を通って前記縮小チャンバ(201)から出るよう構成され、
前記寸法縮小容器(2)の前記縮小チャンバ(201)と、前記洗浄分離容器(1)の前記洗浄チャンバ(101)と、の間を連通するために、前記出口(203)が前記分離収集容器(1)の前記入口(102)に連結されるよう設計されている
ことを特徴とする請求項2〜8の何れか一項に記載の装置。
前記寸法縮小網(6)に代えて又は加えて一以上のフィルタ(4)が、前記洗浄分離容器(1)の前記洗浄チャンバ(101)内の前記出口(103)に近い位置に配置され、
前記一以上のフィルタは、前記小葉脂肪の流体成分及び/又は固体成分を通過させるとともに前記かくはん要素(104)を前記洗浄チャンバ(101)内に維持するよう構成されている
ことを特徴とする請求項2〜10の何れか一項に記載の装置。
前記寸法縮小容器(2)及び/又は前記洗浄分離容器(1)の前記入口(102、202)及び前記出口(103、203)には、取り外し可能な流体密封連結手段(1021、1031、2021、2031)が設けられ、これにより、前記取り外し可能な流体密封連結手段(1021、1031、2021、2031)は、前記開口(102、202、103、203)に位置する前記手段と適合する取り外し可能な流体密封連結手段を有する一以上の医療器具と連結するよう構成されていることを特徴とする請求項2〜11の何れか一項に記載の装置。
前記小葉脂肪の流体成分及び/又は固体成分を前記洗浄分離容器(1)の前記洗浄チャンバ(101)及び/又は前記寸法縮小容器(2)の前記縮小チャンバ(201)の中に圧縮して入れる又は外に吸引するための手段が、前記装置に設けられていることを特徴とする請求項2〜12の何れか一項に記載の装置。
前記洗浄分離容器(1)は、内部に洗浄チャンバ(101)が形成された中央筒状部(111)と、該中央筒状部(111)の両端に設けられた二つの閉鎖端末(112、113)を有し、
前記洗浄分離容器(1)の前記洗浄チャンバ(101)の前記入口(102)及び前記出口(103)は、各前記キャップ(112、113)内に形成された、連結端末(1021、1031)及び/又は弁と連通する穴を構成する
ことを特徴とする請求項2〜13の何れか一項に記載の装置。
前記小葉脂肪の寸法を分割又は縮小又は均質化する工程は、異なる直径のメッシュ又は開口部を有する二以上の寸法縮小網(3、6)に小葉脂肪を通過させることによって段階的に実施することを特徴とする請求項17に記載の方法。
前記小葉脂肪の寸法の段階的な縮小は、互いに連結されるよう構成された一以上の容器(1、2)のチャンバ(101、201)内に内在する二以上の寸法縮小網に小葉脂肪を通過させることで行うことを特徴とする請求項18に記載の方法。
前記洗浄溶液を注入する工程及び前記エマルションを排出する工程を、前記出口(103)が下向き即ち地面に向くよう前記洗浄分離容器(1)を鉛直位置に配置して行い、
前記エマルションを作成するための前記かくはんする工程を、前記洗浄分離容器(1)
を前記地面に対して水平に配置して行う
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
前記洗浄する工程及び前記流体物質と細胞凝集体を分離する工程を、排出された流体成分が油及び/又は血液を含む不純物を含まなくなるまで複数回繰り返すことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、脂肪吸引された物質を再使用するために必要な準備は、液体麻酔薬又は体液(血清又は血液)、細胞残屑及び吸引された脂肪細胞の断裂によって生じる油から構成される廃棄物と、再注入される生活細胞成分と、を分離することを含む。
【0003】
そのような分離は、取り出しに用いられる注射器又は特別な容器内で、基本的に以下の三つの方法で行われ得る。
・沈殿による方法。物質を重力下で密度差によって分離する。
・遠心分離による方法。物質を遠心力の影響下で密度差によって分離する。
・洗浄による方法。脂肪吸引により除去された脂肪吸引除去物質(lipoaspirate)を薄いメッシュのろ過器内に配置して通常生理食塩水、徐々に置換されても又はされなくともよい、を用いて洗浄する。
【0004】
最も知られる技法(Coleman lipostructure法)によれば、脂肪吸引除去物質を含む注射器は、ルアーロック蓋で底が閉じられて液体相と固体状の生物学的物質を分離するために遠心分離機内に配置される。
【0005】
そのようにして得られた生物学的物質を使用する前に、遠心分離後に注射器の底に残った麻酔液及び体液を、注射器からルアーロック蓋を外して重力により流れ出るようにすることにより、手動で排出させるべきである。一方で、脂肪細胞の細胞壁の破壊により生じる細胞片及び油が移植される細胞物質上に存在し、余分な油は部分的に吸収するガーゼを用いて不完全に及び大雑把に除去されており、これによりしばしば吸引された物質の最後の部分が使用不可能となる。
【0006】
上記の技法はいくつかの欠点を有する。
【0007】
第一に、吸引及び遠心分離による分離の工程は、かなりの量の脂肪細胞を破壊して大量の油を放出し、放出された油はColeman法を用いて完全に除去することはできず、したがって脂肪吸引除去物質の大部分、即ち遠心分離後に注射筒の上部に位置し油と接触して当該油で汚染された細胞物質の部分、を使用不可能にする。
【0008】
なぜならば、注入される生物学的フィラー内の油の存在が感染症及び拒絶反応のリスクを増大させて炎症の増大を引き起こすからである。
【0009】
さらに、上述した工程は、脂肪吸引された物質と各種器具の表面との多重接触及び非無菌環境の空気との長時間接触を伴うので、脂肪吸引された物質の手術室内での使用が推奨される。
【0010】
ブレンダーの切断刃により脂肪小葉を分離して注入可能な細胞懸濁液を提供するような、ブレンダーを用いる吸引された細胞凝集体の機械的破砕を伴う技法も周知であるが、使用は稀である。
【0011】
この破砕法は多くの欠点を有する。
【0012】
第一に、遠心分離に続く破砕工程はかなりの量の脂肪細胞を破壊し、これによって脂肪吸引除去物質の半分以上が後続の美容治療に使用不可能となる。必然的に、移植する物質の準備中に生じる物質の損失を補償するために脂肪吸引回数を増やす必要があり、患者の不快感が増大する。
【0013】
さらに、上記の処置及び装置を用いて得ることができる使用可能な細胞懸濁液の量は、遠心分離機及びブレンダーの速度及び動作時間パラメータの設定に関する医療スタッフのスキル並びに器具の条件に大きく依存する。刃の回転速度が過度に速い場合又は例えばブレンダーの刃の切断力が十分でない場合は、脂肪小葉を分離ができず、脂肪細胞の大量の細胞壁に機械的損傷を与え、これによって油が形成されて、懸濁液からの細胞片と油の正確な分離が必要なだけでなく細胞懸濁液が使用不可能となる。なぜなら、注入される生物学的フィラー内の油の存在が感染症及び拒絶反応のリスクを増大させるからである。
【0014】
さらに、上述した工程は、脂肪吸引された物質と各種器具の表面との多重接触を伴うとともに、医者のオフィスの場合のように不完全滅菌環境内の空気との接触を伴う。物質が生物学的性質を有していることから、空気との長い接触又は完全に滅菌されていない複数の器具との接触は細菌又はウイルス感染のリスクを増大させて処置の結果を危うくする。
【0015】
ろ過器を介する洗浄を伴う技法もまたいくつかの欠点を有する。
【0016】
特に、ろ過器の網は脂肪吸引された物質によって簡単に詰まってしまい、メッシュから脂肪を手で除去しなければならないので準備工程の速度が低下し、具体的には注入される物質の汚染リスクを高める。
【0017】
単純なろ過器の使用は、脂肪吸引された物質を準備工程の間、即ち脂肪吸引工程から注入工程の間、に絶えず閉じた及び完全滅菌環境内に維持することはできない。
【0018】
細胞隔離装置を開示する特許文献が知られている。
【0019】
特許文献1は、脂肪吸引除去物質から細胞を隔離する方法及び装置が開示されている。
【0020】
特許文献1には、特に脂肪吸引除去物質中の非脂肪細胞画分と脂肪細胞及び油画分とを分離する方法が開示されている。
【0021】
関心細胞溶液上に浮かぶ脂質及び脂肪細胞並びにその他の小さな細胞を「分離チャンバ」と定義される容器内で得るために、脂肪組織が消化チャンバ内に配置され、フィルタを介して及び孔を有するヘッド部を介して前記「チャンバ」内に入れられる。
【0022】
組織を洗浄する工程、余分な液体を除去する工程、酵素を消化する工程、抗生物質を追加する工程及び細胞を選択する工程は、「消化チャンバ」と定義される容器内で行われ得る。消化チャンバは、組織を通過させず関連のない細胞及び流体を通過させるフィルタを有することができる。このチャンバ内で脂肪細胞脂質を含む水性エマルションが形成される。
【0023】
消化チャンバ内の関連のない物質は、第一の「分離チャンバ」内に含まれる分散ヘッド部上の孔よりも小さな孔を有する分散フィルタを通過することができる。このフィルタ115は分散ヘッドの孔の詰まりを防止するために用いられる。
【0024】
「分離チャンバ」内において、脂質及び脂肪細胞は細胞集団と分離される。
【0025】
前記装置は、遠心分離を用いることなく、さまざまな寸法の孔を有するフィルタに溶液を通過させることによって、組織から細胞集団を準備する。
【0026】
前記装置は、図示されるように、構造の観点から特に複雑である。
【0027】
さらに、多くの有機物質がチャンバ及びフィルタを通過することによって、上記方法の継続時間が長くなるとともに有機物質が汚染リスクにさらされる。
【0028】
また、例えば脂肪吸引除去物質からの注入可能物質の迅速な準備及び顔面及び体の欠陥の修正の迅速な実行を特別なスタッフの助けを借りずに行わなければならない外来患者環境において、上記方法及び装置はその複雑さから使用が適切でない。
【0029】
さらに、上記方法においては、エマルションは、機械的手段及び力の使用を介してのみでなく化学薬品を使用して形成される。
【0030】
特許文献2は、幹細胞含有組成物を準備する方法を開示している。幹細胞集団を準備するために、ある実施形態では、脂肪吸引された脂肪組織を物理的に処理し、即ちより小さく切断し又は刻み、酵素処理することによって、関心細胞をその他の組織成分から放出することを促進する。
【0031】
したがって、特許文献2に記載の方法は、脂肪組織を数々のふるいを通過させてより小さく分割し、これによってより均一に酵素処理可能なより小さい均一寸法の部分を得ることによって、幹細胞をより迅速に放出させるとともに、放出された細胞と酵素溶液の接触時間を低減させている。
【0032】
特許文献2によれば、脂肪組織のエマルションはペルフルオロカーボン溶液を用いて準備することができ、このエマルションは関心幹細胞と分離可能である。
【0033】
特許文献2には、脂質細胞又は小さい細胞凝集体と機械的に分離可能な液体のエマルションを準備することは記載されていない。
【0034】
切断手段を含む容器もまた患者への脂肪組織の注入に使用することができない。特許文献3は、微小血管内皮細胞を収集する方法を開示している。
【0035】
特許文献3には、吸引された脂肪組織の処理方法が記載されており、当該脂肪組織は、細胞成分へのストレスを最小化するとともに均等な脂肪組織を得るような寸法の開口部を有するカニューレを有する注射器によって吸引され、一方の注射器から他方の注射器へこれら二つの注射器の吸引ポート間に位置するフィルタ(74)を介して送られる。
【0036】
注射器のピストンを引くことによって、吸引された脂肪組織が一方の注射器から他方の注射器へとフィルタを介して送られて均等化される。
【0037】
吸引された物質の低い粘性により、内皮細胞を得るための汚染物質の除去が容易になるとともにサンプルの消化が改善される。
【0038】
特許文献3に開示された方法は、注入可能な脂肪の準備での使用に不適切となる原因になる以下のようないくつかの欠点がある。
・脂肪組織によってフィルタに詰まりが生じることがある。フィルタ保持装置によって一方の注射器から他方の注射器への流線が制限される。詰まりが生じたフィルタによって一方の注射器から他方の注射器への脂肪組織の通過が妨害され、脂肪組織の洗浄を続けるために注射器の離脱及びフィルタの取り替えが必要となる。これらの工程により、固体及び液体成分のエマルションの準備が困難且つ時間のかかるものとなり、有機物質が汚染にさらされる。
・結合した組織を分解するためにフィルタのメッシュを通過させることによっても脂肪細胞が切断されて余分な油が形成され、その後に損傷を受けていない脂肪と油を正確に分離することが必要となる。
【0039】
特許文献3は、コラゲナーゼ及び遠心分離の追加によって即ち化学的及び物理的作用の組合せを介して内皮細胞が抽出され得るホモジネートを提供する。特許文献3は、脂肪吸引された脂肪組織から得られた脂質細胞又は脂質細胞の小さい凝集体であって、特別な無菌環境を必要とせず即ち完全無菌手術室を必要とせずに適切な処理の後に患者に直接注入可能な細胞が浮かぶ液体成分のエマルションを形成することは含まない。
【0040】
特許文献3は、少数の単純な処理工程を介して脂肪吸引された物質の準備、収集及び再注入までの脂肪の一時貯蔵を行う単一の装置を提供する可能性を含まない。
【0041】
特許文献4は、臓器から細胞を抽出する装置を開示している。この装置は、臓器及びプロテアーゼを収容する消化チャンバと、一以上のキャビティを有するとともに臓器にのみ作用するボールなどのかくはん手段と、を有している。
【0042】
したがって、特許文献3のように特許文献4も有機物質の化学的攻撃性処理を伴う。
【0043】
第3欄の段落0026に記載されるように、かくはん手段14は消化チャンバ12とともに動いて臓器をかくはんして細胞の放出を促進する。
【0044】
特許文献4は、小葉脂肪から移植用の脂肪組織を準備する可能性を含まず、具体的にはボールを使用して臓器をかくはんして該臓器からの細胞の放出を促進させることを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0046】
本発明の目的は、シンプル且つ安価な装置であって、上記の欠点を解消可能な組織を準備する装置、特に脂肪吸引を用いて得られた小葉脂肪即ち細胞巨視的凝集体、細胞及び細胞片からなる脂肪から移植用の脂肪組織を準備する装置、を提供することである。
【0047】
本発明の目的は、準備のために化学薬品を使用しない、即ち化学的攻撃性のない又は脂肪吸引除去物質への他の化学処理のない、移植用の組織を提供できる装置を提供することである。これによって、シンプル且つ使用が簡単な装置であって、手動で与えられる機械的力のみを使用し、医学的用途のための試験が不要な又は簡単な試験のみを必要とする装置を提供することができる。本発明の装置はまた診察外来患者環境でも使用することができ、手術室内で要求される状態などの特別な無菌状態を必要としない。
【0048】
本発明のさらなる目的は、組織、特に移植用の脂肪組織、を準備するために前記装置を使用する方法を提供することであり、前記方法及び前記装置は、完全に閉じた系即ち患者の吸引された物質が外部環境と接触することを防止する系の中に生物学的物質を維持する。
【0049】
本発明の別の目的は、体及び顔面の体積欠陥の治療、皮膚の基礎栄養の改善及び/又は前記装置及び前記方法を介して得られた脂肪組織による生物学的刺激を行う方法を提供することである。
【0050】
特に、本発明の装置は、細胞凝集体、特に脂肪細胞凝集体、を準備するものであって、少数のシンプルな器具と少数の処理工程を使用し、化学薬品又は物理化学処理は使用せずに機械的(mechanical)かくはんのみを使用し、同時に油成分の大部分を取り除き、そして不完全無菌環境での生物学的物質の扱いを防止する。
【0051】
したがって、特別に細い針を使用することにもよって、脂肪組織の移植はさほど侵襲的でなくなり、損傷が少なくなり、より有効となる。さらに、本発明の装置により産出された細胞凝集体は、外部環境との接触が最小化されて又は接触がなく準備されるとともに、生物学的物質の汚染のリスク、器具の劣化のリスク並びに洗浄及び再滅菌に関連する欠点を低減する使い捨て器具を用いて準備される。
【0052】
そのようにして得られた生物学的物質は任意の組織又は臓器内に注入されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0053】
上述した目的は、脂肪吸引された物質を洗浄するための洗浄チャンバを有する一以上の洗浄分離容器を備えた装置によって達成され、前記洗浄分離容器には入口及び出口が設けられ、前記脂肪吸引された物質が前記入口を通って前記洗浄チャンバ内に進入するとともに前記脂肪吸引された物質、特に液体成分の少なくとも一部、が前記出口を通って前記洗浄チャンバから出るよう構成され、前記洗浄チャンバには液体成分のエマルションを機械的に形成する手段が設けられ、前記液体成分のエマルションの上には前記液体成分とは別に後の移植に使用される細胞成分が浮かぶよう構成されている。
【0054】
そのようにして準備された組織は自己移植に用いられることが好ましいが、それにもかかわらず前記装置は同種間移植用組織の準備にも使用されてもよい。
【0055】
本発明の装置及び方法は、生物学的フィラーとして使用される即ち顔及び体の体積欠陥の修正に使用される脂肪組織を提供するだけでなく、脂肪組織の巨視的凝集体を提供し、該巨視的凝集体はその表面に幹細胞を有し注入領域の組織と接触するよう配置されて治癒された組織を迅速に再生させる。
【0056】
エマルションを機械的に形成するためのこれらの手段は、シンプルな機械的作用を用いて、脂肪吸引された物質内に含まれる血液液体、血液残留物、油及びその他の溶液(吸引中に使用される洗浄用食塩水又は麻酔液など)を乳化させることができ、これにより前記液体を固体状の細胞物質即ち脂質細胞及び幹細胞と分離させたまま維持する。
【0057】
機械的(そして化学的でない)作用だけを用いて、移植される固体相から取り除かれる液体相が分離される。
【0058】
好ましい実施形態においては、上記作用は、任意の種類、具体的には能動的又は受動的な種類、のかくはん手段によって実施される。
【0059】
能動的手段とは、かくはん動作を提供するためにモータ又は原動力により駆動される電動式かくはん手段である。
【0060】
受動的手段とは、容器のかくはんによって作用する手段であって、したがって慣性力などによって作用する手段である。
【0061】
かくはん手段は、生理学的洗浄液などの溶媒中の取り除かれる液体特に脂質液体のエマルションを形成する。具体的には、受動的かくはん手段を用いる実施形態において上記装置は非常にシンプルな構成を有し且つ有効である。
【0062】
上記装置を用いる場合、受動的かくはん手段と組み合わせた容器の機械的動作は、機械的手段の使用を必要とするほどの強さではない。本発明の装置では手動のかくはんで十分である。
【0063】
好ましくは、機械的かくはん動作は、容器の端面に垂直で且つ容器の外部又は内部の軸、例えば長軸、の周りの容器の回転である。また、振動などのその他の種類のかくはんを与えてもよい。
【0064】
このような洗浄分離容器のシンプルな手動又は機械的かくはんによるエマルションを形成し得る手段は、洗浄チャンバ内の固体成分と液体成分を分離させ、特に細胞片、細胞及び細胞凝集体で構成される固体成分を、血液、滅菌溶液及び壊れた脂肪細胞から産出された油などの液体物質のエマルション上に浮かべる。好ましい実施形態において、固体成分は洗浄チャンバ内で洗浄される。滅菌生理食塩水などの滅菌洗浄溶液が、一回又は複数回、洗浄分離容器内に入口から注入される。容器のかくはんにより、この溶液は、移植用の細胞物質から血液及び油などの廃棄液体を取り除いて洗浄する。
【0065】
吸引された脂肪は、流体物質と、不均質な寸法の細胞片、細胞及び一以上の細胞巨視的凝集体と、の混合から構成されている。
【0066】
洗浄チャンバ内の機械的乳化手段の存在によってかくはんにより形成されたエマルションは、出口から出て密封容器内に収集され、これによって外部環境の汚染が防止されるとともに移植用の細胞物質(細胞片、細胞、細胞凝集体)が得られ、完全な無菌状態下で洗浄チャンバ内に貯蔵される。
【0067】
その後、前記細胞物質は洗浄分離チャンバから排出されて、その後の移植のために注射器などの一以上の滅菌容器内に注入又は分配されるとともに貯蔵される。
【0068】
したがって、廃棄液体のエマルションが単純に形成され、当該エマルションの上に細胞片、脂質細胞、脂質微小集合体及び幹細胞が浮かび、前記細胞片又は細胞は、追加の処理なしに、特に化学処理なしに、使用可能となる。
【0069】
洗浄分離容器は、当該容器の体積の最大約1/3が脂肪吸引除去物質で満たされ、残りが洗浄液で満たされる。
【0070】
物質の処理中、容器内に空気は存在しない。
【0071】
脂肪及び/又は脂肪洗浄若しくは処理液体は、前記容器に連結された注射器や前記容器の開口と協働するピストンなどの圧縮手段を用いて、前記洗浄分離容器及び/又は寸法縮小容器内の内容物即ち処理される物質を加圧又は吸引することによって、本発明の装置内に通される。
【0072】
したがって、上記装置は、脂肪吸引除去物質を洗浄するとともに、洗浄溶液、食塩水、麻酔液、血液及び油などの流体物質のエマルションと細胞集団を分離し、所望されない不純物の最小限の量が、細胞又は細胞集合体、特に脂肪細胞、とともに処置の最後に収集される。
【0073】
本発明の装置を用いることで、機械的手段、特に洗浄によって、密度勾配を介して液体成分のエマルションが取り除かれて、エマルションが形成される。
【0074】
前記装置は、より小さな細胞及び/又は凝集体に分割された脂肪吸引除去物質の洗浄に用いてもよい。
【0075】
例えばブレンダーを用いる、脂肪吸引された物質を分割する技法は知られている。
【0076】
好ましい実施形態においては、脂肪吸引された物質、特に細胞巨視的凝集体は、移植を簡単にするために、より小さい寸法に縮小される。
【0077】
本発明によれば、洗浄分離容器又は該洗浄分離容器と流体密封連結された寸法縮小容器として知られる別の容器内には、脂肪吸引除去物質の固体成分、特に細胞巨視的凝集体、の寸法を減少させて平均的に均等なより小さな細胞凝集体であって所定値以下の寸法の細胞凝集体にするために、寸法縮小手段が設けられている。該寸法縮小手段は、脂肪吸引された物質が通過する一以上の寸法縮小網を形成するために、一以上の一連の平行な又は交差するシート又は切断線から構成される。
【0078】
好ましい実施形態においては、脂肪吸引除去物質の均質化(homologation)及び/又は寸法縮小は、第一の寸法縮小網を用いて洗浄の前に行われ、脂肪吸引された物質は、洗浄分離容器の洗浄チャンバに入る前に前記第一の寸法縮小網を通過させられ、そして、一以上の細胞物質洗浄工程の後に、洗浄分離容器内で、第二の寸法縮小網を用いて第二の寸法縮小/均質化が行われる。
【0079】
第二の寸法縮小/均質化は、移植用物質が洗浄分離容器から排出される前であって洗浄工程の最後に行われてもよい。
【0080】
好ましくは、第二の寸法縮小網は、第一の寸法縮小網よりも小さいメッシュを有する。
【0081】
多数の網又は寸法縮小手段、特に二以上の網又は寸法縮小手段を移植用物質が通過するよう構成してもよいことは明らかであり、前記寸法縮小手段は場合によっては単一の容器内又は二以上の連結可能洗浄分離容器内に設けられている。
【0082】
第一の縮小によって、脂肪小葉の線維状成分が寸断される又は止められ、脂肪吸引除去物質の集団がより小さい凝集体へと縮小されて寸法が均質化され、そして互いに分離されるとともに脂肪吸引除去物質自体から分離されるので、洗浄が容易となる。第二の縮小によって、移植に使用可能な洗浄された細胞物質が提供され、当該細胞物質の寸法は、あらゆる種類の針、たとえ非常に小さい寸法の針を用いる場合であっても、注入可能なものである。
【0083】
異なる寸法のメッシュ又は開口部を有する少なくとも二つの寸法縮小手段を有することにより、具体的には脂肪吸引除去物質側の入口に位置する網に、より大きなメッシュ又は開口部を設けるとともに、移植に使用可能な物質側の出口に位置する網に、より小さなメッシュを設け、そして前記二つの寸法縮小手段の間即ち洗浄チャンバの両端面において所定の距離を設けることにより、寸法縮小が徐々に起こるにつれて前記寸法縮小手段が細胞物質で詰まることが防止される。
【0084】
さらに、そのような脂肪吸引除去物質の段階的な寸法縮小により、ドナー領域からの組織の引き出し中に大きな針を場合によっては使用することができるので、物質収集処置の速度が上がる。したがって、脂肪吸引された物質が大きな凝集体で構成されていた場合にも、単一寸法の縮小メッシュ、網又はシートを通過することによってではなく、処理される物質の流れの方向に沿って減少した寸法のメッシュ又は開口部を有する二以上の寸法縮小手段を連続して通過することによって、徐々により小さい凝集体へと縮小されるので、装置の開口部又は寸法縮小手段に詰まりが生じることはない。
【0085】
好ましくは、細胞物質は、(複数の)洗浄工程の最後の後で非常に細い針の中を通過して移植可能となる寸法に縮小される。
【0086】
特に小さい寸法の移植カニューレの使用により、移植処置による外傷が小さくなるとともに、処置を局所麻酔下で縫合又は特殊な薬物治療を用いずに実施することが可能となり、治癒速度も速くなる。
【0087】
脂肪吸引された物質は幹細胞をさらに有し、脂肪の寸法を小さくすることによって、表面に幹細胞が付着した小さい細胞凝集体、特に脂肪細胞の微小凝集体又は個別の細胞が提供される。脂肪吸引除去物質の集団を多数の凝集体へと小さくすることにより、本発明の方法及び装置によって準備された物質を注入したときに、治療される組織と接触する可能性のある大量の幹細胞が提供される。これは、吸引された集団を多数の等しく且つより小さい凝集体へと小さくすることに加えて、寸法縮小動作によって治療される組織と接触する可能性のある表面積が増大し、その表面の幹細胞を含む露出面積が増大するためである。
【0088】
脂肪吸引により産出された脂肪組織の小葉の生物学的フィラーへの変換は、準備された脂肪を、筋肉内又は筋肉下注射だけでなく、異常、硬化効果、石灰化及び注入された脂肪の全再吸収を伴わずに皮下注射にも使用可能なものとする。前記生物学的フィラーとは、即ち脂肪細、幹細胞又は間葉細胞などの他の種類の細胞及び場合により結合物質の細胞片及び残余を含む胞細胞懸濁液又は集団又は液体又は半液状凝集体である。前記懸濁液は、本願の変換処置の最後において、小さく且つ平均的に均一寸法の、少量又は大量に注入されるよう構成された細胞及び/又は細胞集合体からなる固体相を含む。
【0089】
それにもかかわらず、脂肪物質は任意の組織又は臓器内に注入されてもよい。
【0090】
さらに、脂肪小葉を小さい細胞又は細胞集団に分離することによって、生着即ち細胞集団が注入された組織に該細胞集団が統合されることが促進される。
【0091】
さらに、脂肪小葉を細胞集合体に分割することによっても、移植される組織と接触する注入された細胞集団の表面が増大し、これにより、治療された組織の生物学的刺激が促進され、したがって注入された細胞物質の統合が促進される。
【0092】
実際に準備処置を通して抽出された生物学的物質を外部環境から隔離する、少数の滅菌部品から構成されるシンプルな装置の使用によって、生物学的物質、職員及び環境の汚染のリスクが大きく低減し、したがって細胞物質を後に使用する際の感染症又は拒絶反応のリスクが低減する。
【0093】
したがって、本発明の装置は、外来患者環境における手術室の外での生物学的物質の取り扱いを可能にする。
【0094】
前記装置のシンプルな構成並びに、脂肪吸引除去物質に対して薬物及び/又は酵素、エマルションの形成につながる洗浄液を除く、の処理を使用しないことによって、生産及び販売を促進することができるとともに、新たな薬品又は新たな装置の使用許可を得るための新たな薬品又は新たな装置に関する安全性及び効果のデータを収集するために実施される長期的且つ費用のかかる調査工程を回避、促進又は減少させることができる。
【0095】
したがって、本発明の装置及び方法は、患者の体からの脂肪の吸引と、脂肪吸引除去物質の薬物/酵素エマルションを用いない前記脂肪の処理と、処理された脂肪の貯蓄及び/又は患者内への再注入と、において例えば一回などの外来セッションを要するシンプル且つ迅速な処置を提供する。
【0096】
液状エマルションを形成する手段、特にボール、を内部に有する本発明の装置を用いることによって、手動の機械的かくはんによる液状エマルションの取得及び前記エマルション上に浮かぶ固体状細胞物質の分離は非常に短い時間を要する。
【0097】
脂肪吸引除去物質を処理して使用に適切なものとするのに要する時間は、平均的に10分から20分である。何れの場合にも、移植可能な物質を取得するのに必要な時間は他の従来の装置又は方法が要する時間よりも短い。
【0098】
脂肪吸引除去物質の貯蓄及び処理装置は、その後の移植工程で使用することもできる。
【0099】
さもなければ、好ましくは処理された物質は、分割されて、一以上の10cc注射器などの他の容器に移動されてもよい。前記容器に、残留液体及び/又は油状成分と固体成分とを分離するために沈殿及び/又は遠心分離を施してもよく、したがって固体成分は、最大容量がより小さい一以上の注射器内にその後移動されることによって、移植に使用可能となる。
【0100】
したがって、本発明の装置は、脂肪組織クラスターの迅速な寸法縮小を提供し、これにより該脂肪組織クラスターを非常に小さい針を通って注入することを可能にし、患者に目に見える傷跡を残さず(準備された組織は、大きな且つ目に見える穴が美学的に許容されない顔面移植に使用されてもよい)、そしてエマルション/細胞相を分離して、脂肪吸引除去物質内に含まれる幹細胞のための治療される組織と接触するより大きな表面を有する注入可能細胞又は細胞凝集体を得る。
【0101】
小さい凝集体へ縮小することにより、該凝集体の外面上に横たわる末梢血幹細胞が活性化する。凝集体が多ければ多いほど露出される細胞表面が大きくなるとともに治療を受けた組織と相互作用する可能性のある末梢血幹細胞が多くなる。
【0102】
以下に詳細に記載される方法、装置及びキットは、単純に機械的かくはんによって、脂質物質のみでなく、細胞集合体の寸法縮小並びに/又は洗浄及び液体相と固体相の分離を必要とするどのような種類の細胞集合体の処理にも使用することができる。
【0103】
本発明のこれらの及びその他の特徴及び利点は、本明細書に添付された図面に示すいくつかの実施形態に関する以下の記載からより明確になる。
【発明を実施するための形態】
【0105】
本発明の装置は、生物学的フィラー即ち天然且つ自己移植又は異種性起源フィラーとして使用される脂肪組織の細胞懸濁液を提供し、該脂肪組織の細胞懸濁液は、体及び顔面の体積修正の処置中並びに/又は処理された脂肪物質が独立して注入されたあるいは任意の他の人工若しくは天然フィラーとともに注入された任意の組織若しくは臓器の生物学的刺激中に、提供される。
【0106】
本発明の装置により処理される小葉脂肪物質即ち細胞特に脂肪細胞の巨視的凝集体は、局所麻酔下又は通常外来患者環境下で、例えば皮下臀部、腹部又は膝関節領域などの患者の任意のドナー領域から脂肪組織を抽出することを伴う脂肪吸引処置を用いて、取得されてもよい。
【0107】
前記脂肪組織は、本発明の装置を用いて処理された後、老化、病気、放射線治療などの治療又は過去の手術が原因で体積が欠損した又は皮下脂肪が再吸収された領域であって対応する体の一部がくぼんで骨が突出し皮膚がたるんだ領域を埋めるために、自己移植即ち組織が除去された患者の体の特定領域内への注入に使用することができる。
【0108】
本発明の装置及び方法を用いて処理された組織は、ドナー患者以外のレシピエント患者に対して使用されてもよい。
【0109】
以下、実施例に基づく脂肪吸引処置について記載する。
【0110】
脂肪吸引処置は、滅菌注射器内に、麻酔液、適切なのは希釈され場合によっては血管収縮を引き起こすアドレナリンが添加された麻酔薬、を準備することを含み、前記注射器は好ましくは針又はルアーコネクタとして知られるカニューレコネクタを有し、麻酔される体の表面積に適した筒体積を有する注射器、例えば10から60ccの筒体積を有する注射器である。
【0111】
脂肪組織が除かれる領域が印付けされ適切に滅菌された後、局所麻酔液が、好ましくはルアーコネクタを有する直径が約1mmの先がとがっていない(blunted-end)使い捨て滅菌カニューレを通って注入される。
【0112】
患者の皮膚は従来方法で滅菌され、小さな腫れを伴って麻酔される。先がとがっていない使い捨て滅菌カニューレを皮膚を貫通して皮下組織内に徐々に導入させて麻酔液を麻酔されるターゲット領域全体に導入することにより、麻酔が行われる。
【0113】
麻酔液の注入及びその後の脂肪組織の取り出しに用いられる針又はカニューレの挿入においては、取り出し用使い捨てカニューレの導入を可能とするのに十分な直径を有する先がとがった滅菌針又は滅菌皮針形刃を用いて、皮膚に孔をあける。
【0114】
必要であれば患者に鎮静剤を投与してもよい。
【0115】
脂肪吸引即ち脂肪組織の取り出しは、好ましくは直径が1.2から3mmの多数の穴を有するカニューレに連結された滅菌注射器を用いて実施される。また、直径が最大6mmのカニューレを用いてもよい。
【0116】
本発明の装置において、直径の大きなカニューレ(好ましくは3mmの多数穴カニューレ)を取り出しのために使用してもよく、これにより大量の脂肪組織を迅速に抽出することができ、これは以下に詳細に記載するように、そのように抽出された細胞の巨視的凝集体が、使用前に寸法縮小されるからである。一実施形態において、体積が10cc以上の前記注射器は使い捨て滅菌カニューレとの連結用のルアーコネクタを有し、当該カニューレは組織を吸引するためにその表面にわたって一以上の穴を有する。
【0117】
明らかに、吸引注射器及び吸引カニューレの体積は、吸引される脂肪組織の量に依存し、したがってその後の充填及び/又は修正処置に必要とされる処理された脂肪組織の体積に依存する。
【0118】
脂肪組織を取り出すためのカニューレは、好ましくは麻酔の前に皮膚内に形成された穴を介して導入される。
【0119】
10ccの注射器は、組織上に適切な圧力を加えるとともに取り扱いが容易であるので、脂肪吸引に好適に使用される。
【0120】
これらは好ましくは、周知のルアーロック注射器7であり、該ルアーロック注射器は、対応するルアーコネクタを有する吸引カニューレに、直接又はカニューレと注射器との間に特別な二方向弁を介在させて、連結されている。前記弁は、
図10に概略的に示されるもののように、チューブ又は管8によって前記装置の入口102に連結され、好ましくは三方向弁9を有し、そして脂肪吸引除去物質を一以上の工程を介して患者から本発明の装置内に直接移動させる。
【0121】
そのような移動は、生物学的物質が外部環境と一度も接触しないような閉じた系の中で起こってもよい。
【0122】
以下に記載された及び特許請求の範囲に記載された装置及び方法は、小さく且つ平均的に一定の寸法を有する細胞及び細胞凝集体からなる固体相と、血液、油、細胞残屑及び麻酔液などの不純物のない液体相と、を有する細胞懸濁液を得るために吸引された小葉脂肪を使用する。
【0123】
図1及び2に示すように、本発明の装置は、脂肪吸引された物質を洗浄するための洗浄チャンバ101を有する洗浄分離容器1から構成されている。この洗浄分離容器1は入口102及び出口103を有し、脂肪吸引された物質は入口102を通って洗浄チャンバ101内に入るとともに、前記脂肪吸引された物質の少なくとも一部が、特に最初に液体成分で次に固体成分という時間順序で、出口103を通って洗浄チャンバ101から出るよう構成されている。前記洗浄チャンバ101は、流体成分、具体的には壊れた脂肪細胞から得られた油、血液及び/又は他の滅菌液状溶液のエマルションを機械的に形成する乳化手段を含む。
【0124】
前記乳化手段は、洗浄分離容器1がかくはんされた際に液体成分の乳化を増大するための、寸法が同じ又は異なるボールなどの一以上のかくはん要素104を含む。本発明の装置において、該装置の単純な手動かくはんにより、流体エマルションからなる液体相と、細胞、細胞片及び細胞集合体からなる固体相とを分離することができる。
【0125】
少なくとも手動による力を模倣するために機械的かくはんを提供してもよいことは明らかである。
【0126】
これらのかくはん要素104の寸法は、洗浄チャンバ101の寸法と比べたときに比較的小さくてもよく、なぜならばかくはん要素は寸法が大きすぎると洗浄チャンバ101内で自由に動くことができずに洗浄チャンバ101内に含まれる細胞物質に損傷を与えてしまうかもしれないからである。また、前記かくはん部材の重さは、細胞壁に損傷を与えることなく液体状エマルションを形成するのに十分な重さであるべきである。
【0127】
これらのかくはん部材104は、実質的に球体でもよく、即ち連続した丸い外表面を有していてもよく、中空又は中身の詰まったものでもよく、そして液体成分の穏やかな混合を助けるために洗浄チャンバ101内で回転及び移動してもよい。
【0128】
かくはん部材104は、洗浄チャンバ内に含まれる生物学的物質と相互作用しない又は細胞物質を洗浄するために注入された溶液と相互作用しない滅菌材料でから形成されることが好ましく、例えば、高温においても滅菌が容易でありかくはん部材の破損又は互いとの若しくは洗浄チャンバ101の内壁との衝突による変形を防止する金属などから形成されてもよい。
【0129】
また、かくはん部材104の丸い表面は、浄化及び無菌状態の維持を妨げるようなかくはん部材104上の残屑増大領域又は細菌増殖領域の形成を防止することから、滅菌を促進し得る。好ましくは、かくはん部材104は、手動又は機械的かくはん中に細胞壁を機械的に損傷させずに液体の相互乳化を促進するために、所定の重さ及び寸法を有するボールから構成される。
【0130】
液状エマルションを得るために混合作用を促進するかくはん手段104を用いると同時に容器を穏やかにかくはんし細胞破壊につながり得る急激な動きを防止することによって液状エマルションが得られ、そのようなかくはんは液体成分間の結合の分裂を伴わない。
【0131】
任意の形状であるとともにガラスなどの材料からなるかくはん部材104を使用してもよいことは明らかである。
【0132】
洗浄分離容器1は、円筒状形状を有することが好ましいが、しかしながら脂肪吸引された脂肪を所定量含み得るとともに最適な取り扱いを確保する任意の形状及び寸法に形成されてもよい。
【0133】
好ましい実施形態において、洗浄チャンバ内の肪吸引により除去された物質は、チャンバ全体の最大容量の1/3を超えない。残りの体積は液体で満たされている。
【0134】
例えば、洗浄分離容器1は体積が10から3000ccのものでもよい。
【0135】
好ましい寸法は、300から600ccの容器であり、その中で約100から250ccの脂肪吸引除去物質が処理される。
【0136】
図示するように、洗浄分離容器1は、内側に形成された洗浄チャンバ101を有する中央筒状部111と、前記中央筒状部111の端部に設けられた例えばキャップ112、113などの二つの閉鎖端末112,113と、洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101の入口102及び出口103と、から構成され、前記入口102及び前記出口103は、各キャップ112、113に形成された連結端末1021、1031及び/又は閉鎖弁と連通する穴から構成されている。
【0137】
明らかに、前記連結端末1021、1031及び/若しくは前記一以上の入口102及び出口103は、滅菌キャップで塞がれるよう設計されてもよく並びに/又は前記洗浄分離容器1内に脂肪を注入及び圧入する工程中の逆流防止手段、一方向弁など、が装備されるよう設計されてもよい。
【0138】
例えば、前記入口102及び/又は出口103及び/又は前記連結端末1021、1032は、
図10に概略的に示される三方向弁9に連結されてもよい。
【0139】
脂肪質は、例えばルアーコネクタ1021及び/又は三方向弁9が装備された開口102を通って洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101内に注入される。
【0140】
雄型、雌型及び中性型ルアーコネクタは周知であり、前記コネクタを有する二つの装置の間を流体密封連結する。ルアーコネクタは、例えばGVSのウェブサイトwww.gvs.comで売られている。二方向弁を有する注射器の例はwww.internationalpbi.itにて示されている。
【0141】
一以上のフィルタ4を、洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101内であって流体成分及び/又は脂肪の固体成分を通過させるよう且つかくはん要素104を洗浄チャンバ101内に保持するよう構成された出口103の近くに、設けてもよい。
【0142】
本発明のさまざまな実施形態において、前記フィルタ4は選択的透過性膜で構成されてもよく、該選択的透過性膜は、油状成分、血液成分、麻酔液及び/又は食塩水などの滅菌溶液からなる液体のうちの少なくとも一部を通過させ且つ細胞片、全細胞及び細胞凝集体からなる固体細胞相を保持することによって、エマルションの液体相と固体相を分離させる。
【0143】
前記選択的透過性膜は、滑らかな即ち細胞壁を損傷し得る突起部又は異常又はとがった表面の無い、細かいメッシュの網から構成されてもよく、前記メッシュ又は貫通隙間は洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101内に含まれる細胞凝集体よりも小さい。
【0144】
選択的透過性膜を形成する網のメッシュは、1000から50μmの間の寸法を有してもよい。
【0145】
そのようなフィルタ4は、洗浄及びエマルションと固体細胞成分との分離の工程中にかくはん部材104を洗浄チャンバ101内に保持するとともに出口103がかくはん部材104によって詰まることを防ぐために用いられる。
【0146】
一つの好ましい実施形態において、以下に詳細に記載するように、前記フィルタ4は、洗浄チャンバ101から出てくる脂肪吸引除去物質の固体成分の寸法を小さくする手段を提供する細かいメッシュの切断網と置き換えられる。
【0147】
一実施形態において、脂肪吸引された脂肪の固体成分特に細胞巨視的凝集体の寸法をより小さい細胞凝集体即ち所定値以下の寸法にまで小さくするために、反対側の端部即ち入口102の位置に寸法縮小手段3を設けてもよい。前記寸法縮小手段は、洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101内に入る前に脂肪吸引された物質が通過する一以上の寸法縮小網を形成するために、金属などの滅菌材料から形成された一以上の一連の平行の又は交差するシート又は切断ワイヤから構成される。
【0148】
洗浄分離容器は、その内部に脂肪吸引された脂肪を注入するために滅菌プラスチック又はガラスから形成されてもよく、あるいは好ましくは高温に耐性があり且つ加圧滅菌機での処理が可能な半透明材料から形成されてもよい。
【0149】
図4及び5に示されるように、細胞凝集体のための前記寸法縮小網3は、洗浄分離容器1の入口103に近い洗浄チャンバ102内に内在するとともに、前記洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101内に入る脂肪の流れの方向に対して実質的に垂直となる位置に配置されている。
【0150】
本発明の好ましい実施形態において、脂肪吸引除去物質の寸法は段階的に縮小される。
【0151】
そのような段階的な縮小は、互いに所定以上の距離だけ離れた二以上の寸法縮小網のメッシュ又は開口部に脂肪吸引除去物質を一回以上通過させることによってなされる。
【0152】
洗浄分離容器1は、入口102に近接する網に加えて第二の寸法縮小切断網6を有する。前記第二の寸法縮小切断網6は、洗浄分離容器1の出口103に近い洗浄チャンバ101内に内在するとともに、前記洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101から出る脂肪の流れの方向に対して実質的に垂直となる位置に配置されており、これにより洗浄分離チャンバ101内に入る脂肪吸引除去物質が前記洗浄チャンバ101から出る前に段階的に細かくなるメッシュを有する二つの網を通過して流れるように構成されている。より粗いメッシュが入口102の近くに位置する網に設けられている。
【0153】
したがって、二つの網は互いから所定距離離れた位置に配置されている。具体的には、二つの網は、洗浄分離容器の端側に位置し、かくはん手段104を含むとともにエマルションを形成するのに十分な空間を含む洗浄分離チャンバ101とは分離して配置されている。
【0154】
脂肪吸引除去物質の流れの方向を考慮すると、第一の網3即ち入口102の近くに位置する網は、脂肪小葉の繊維状成分を止めるとともに、第一の小さな縮小を実施し、例えば比較的均一な最大寸法即ち直径が0.5から2mmの細胞凝集体を提供する。一方で、出口103の近くに位置する第二の網6は、すでに洗浄された凝集体のさらなる縮小を実施する。例えば、洗浄分離容器1から出てくる凝集体及び/又は細胞は、直径が最大10μmでもよい。
【0155】
フィルタ4の置き換えとしての第二の網6を、かくはん部材を洗浄分離チャンバ内に保持するために使用してもよい。
【0156】
そのような複数の網のメッシュを介する段階的な縮小によって、直径が非常に小さい凝集体であり必要に応じて個別の細胞からなる固体成分が注入されることとなる。本発明の装置は、脂肪吸引除去物質を小さくして任意の寸法の移植可能物質とする。
【0157】
洗浄分離チャンバ103内で実施される洗浄工程の後に細胞物質が出口103の近くに位置する第二の網6を通過するときに、縮小された寸法のメッシュ又は開口部を有する前記網によって脂肪細胞の破壊が原因で油が形成される可能性がある。
【0158】
この油は、寸法縮小手段が設けられた又は設けられていない洗浄分離チャンバ101を有する別の洗浄分離容器1に細胞物質を移動させることによって除去してもよい。
【0159】
第二の洗浄分離容器内へのそのような移動に置き換えて又は組み合わせて、洗浄分離チャンバから出る処理された物質を沈殿及び/又は遠心分離することによって全ての油/液体の残留を除去して特別な容器内に入れてもよい。
【0160】
これらの容器は、注射器ホルダ内に保持された一以上の注射器であってもよい。
【0161】
図12(a)及び(b)に示されるように、洗浄分離チャンバ101の入口及び出口の近くに周知の方法及び手段で位置決めされた網は、ハニカム状の切断メッシュを有してもよい。
【0162】
一実施形態において、入口102に近接した網の各メッシュの面積は約4mm
2であり、一方で出口103に近接した網の各メッシュの面積は約1mm
2である。
【0163】
細胞凝集体の寸法の縮小及び均質化は、洗浄分離容器1内に位置する網のシート若しくはメッシュ又は好ましくは二つの切断網によってなされる。
【0164】
各網は、2000μmから50μmの間、好ましくは1500μmから100μmの間の直径を有する等しいメッシュ又は貫通隙間を有する。
【0165】
入口102の近くに位置する網3のメッシュが出口103の近くに位置する第二の網6のメッシュよりも大きいことから、脂肪吸引除去物質の凝集体の第一の寸法均質化及び/又は縮小は第一の網3のメッシュを通過することによってなされ、第二のより大きな縮小は物質が洗浄分離容器1から排出されるときに第二の網6のメッシュを通過することによってなされる。
【0166】
一実施形態において、細胞凝集体のための寸法縮小手段の隙間(メッシュ、開口部)特に出口103の近くに位置する網6の隙間は、直径が750から50μmの間であり、細胞物質を通過させるのに十分であり、個別の細胞でさえも通過させるのに十分である。
【0167】
明らかに、脂肪吸引除去物質の寸法縮小及び/又は洗浄は、内側に寸法縮小手段即ち一又は二以上の網を有する単一の洗浄分離容器1を用いて行われなくてもよく、互いに連結するよう構成された一連の二以上の洗浄分離容器1を用いて行われてもよい。各洗浄分離容器1の(複数の)網3、6のメッシュの寸法が別の洗浄分離容器1内に位置する(複数の)網のメッシュの寸法と異なってもよく、及び/又は容器の網若しくは(複数の)網のメッシュが互いに異なる寸法を有していてもよい。
【0168】
したがって、脂肪吸引除去物質の凝集体の段階的な寸法の縮小のために、該物質は装置から排出されて第二の装置内に入れられ、前記第二の装置の洗浄分離チャンバ1及び寸法縮小手段は、その前に用いられた装置内に位置する網又は複数の網よりも小さなメッシュを有する。
【0169】
図6及び7に示すように、細胞凝集体用の一以上の寸法縮小網3は、脂肪寸法縮小容器2の寸法縮小チャンバ201内の入口202及び出口203の間であって寸法縮小容器2前記入口202の近くに内在し、これにより前記縮小チャンバ202に入ってくる脂肪を受けるよう構成されている。また前記寸法縮小容器2は出口203を有し、入口202から注入された脂肪吸引された脂肪が寸法縮小網3を通って第二の容器2の寸法縮小チャンバ201内に入り出口203を通って前記寸法縮小チャンバ201から排出されるよう構成されている。前記出口203は分離収集容器1の入口202に連結されるよう設計され、これにより寸法縮小容器(2)の寸法縮小チャンバ201と洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101が連通される。
【0170】
あるいは、そして好ましくは、注射器、例えば10ccの注射器、の中に細胞物質を収集し、該注射器を用いて、段階的に細かくなるメッシュを有する第二の完全装置内に前記細胞物質を導入することによって、複数の段階縮小を行ってもよい。
【0171】
図6及び7に示すように、寸法縮小容器2は、二つの部分であって互いに連結された半分のシェルから構成されてもよく、前記二つの部分のうちの少なくとも一つ、好ましくは出口203を有する部分に、寸法が縮小された脂肪を収集するための内部チャンバ201が設けられている。
【0172】
一実施形態において、前記収集容器2は、本明細書に記載されるような洗浄チャンバの閉鎖端末に似た二つの要素を備えるよう設計されてもよい。
【0173】
二つの端末は、内部寸法縮小チャンバ201を有する寸法縮小容器2を形成するために、固定された又は取り外し可能な様式で互いに連結されてもよい。
【0174】
洗浄分離チャンバ1のように、収集容器は好ましくは使い捨て可能な種類のものであり、又は内側の要素を滅菌するために取り外して再使用してもよい。
【0175】
明らかに、寸法縮小チャンバ201は、少なくとも寸法縮小網3を通過した寸法が縮小された細胞物質のさまざまな量を収集するために、さまざまな寸法を有してもよい。
【0176】
出口203の近くに、さらなる細胞凝集体寸法縮小網を設けてもよい。
【0177】
具体的には、脂肪吸引除去物質のための二つの寸法縮小網を寸法縮小容器2内に設けてもよく、その一方は入口202の近くに設け他方は出口203の近くに設ける。前記二つの網は異なる寸法のメッシュを有し、具体的には入口202に近接する網が出口203に近接する網よりも大きなメッシュを有する。変形例によれば、本発明の装置は、一以上の寸法縮小容器2と、流体成分と固体成分を分離するための一以上の洗浄分離容器とから構成され、前記寸法縮小容器2は、入口202、出口203及びこれらの間に位置する寸法縮小網3が設けられた寸法縮小チャンバ201を有する。前記出口203は、洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101の入口102に位置する相手方連結手段102と連結するための取り外し可能な流体密封連結手段2021、2031を有する。
【0178】
図7に示すように、寸法縮小容器2は入口202、出口203及び脂肪の固体成分を形成する細胞凝集体のための寸法縮小網3を有し、該寸法縮小網3は、入口202と出口203の中間の位置に配置され、あるいは入口203寄りにずれて配置される。脂肪の注入方向に対する下流側の区画であって所定の体積を有する区画が、寸法が縮小された物質202のための収集チャンバの役割を果たす。
【0179】
寸法縮小容器2及び/又は洗浄分離容器1の入口102、103及び出口103、203は、注射器や袋などの医療機器と連結するためのルアーコネクタなどの取り外し可能な流体密封連結手段を有し、前記開口102、202、103、203に位置する流体密封連結手段に適合する取り外し可能な流体密封連結手段が前記医療機器に設けられている。
【0180】
明らかに、寸法縮小容器2の入口202及び出口203は、滅菌キャップを用いて塞がれるよう設計されてもよく及び/又は一方向弁などの寸法縮小中の逆流を防ぐ手段を装備していてもよい。
【0181】
寸法縮小容器の寸法縮小チャンバ201及び/又は洗浄分離容器1の洗浄チャンバ101の内外に脂肪吸引された脂肪を流入出させるとともに流体成分即ち機械的かくはんにより洗浄チャンバ101から得られたエマルションを除去するために、脂肪の流体成分及び/又は固体成分を圧縮又は吸引するための手段、例えば注射器など、が設けられている。当該手段は、寸法縮小チャンバ201及び/又は洗浄分離チャンバ101の入口102、202及び出口103、203に位置する相手方手段1021、1031、2021、2031に、取り外し可能に及び流体密封されて連結されている。
【0182】
明らかに、寸法縮小網3、4のメッシュを通過する脂肪物質の流れは、前記脂肪物質と液体、特に生理食塩水を混ぜることによって促進されてもよい。
【0183】
洗浄分離容器1内の(複数の)寸法縮小網3、6及び/又は内の寸法縮小容器2内の(複数の)網3は、各々、異なる寸法の隙間又はメッシュを有するよう設計されてもよく、そのようにすることで、容器内の網が、互いに異なる寸法及び/又は別の容器内の(複数の)網のメッシュとは異なる寸法のメッシュを有し、これにより、前記洗浄分離容器1及び/又は前記寸法縮小容器2内の網を介して、多段階工程で、所定値以下の細胞凝集体を得るための細胞凝集体の寸法縮小が起こる。
【0184】
したがって、本発明の装置のこの部分の目的は、脂肪細胞組織小葉を特別な切断網又は平行な切断シート、好ましくは二つの網、を通過させることによって脂肪細胞組織小葉の寸法を小さくするとともに、縮小された且つ平均的に均一な寸法の又は所定値以下の寸法の凝集体細胞及び/又は細胞凝集体を含む細胞懸濁液を形成することにあり、前記細胞懸濁液は、特に細い針又はカニューレが使用されるその後の移植工程での使用においてこれらに詰まりが生じることを回避するよう適応される。
【0185】
(複数の)寸法縮小網の目的は、注入後に治療される組織と接触し得る末梢血幹細胞の量を増大させることでもあり、該末梢血幹細胞は脂肪吸引除去物質の集団を小さくすることによって得られる細胞凝集体の外表面に付着する。
【0186】
上述した装置を用いることによって、寸法縮小手段を通過するで細胞凝集体の寸法は実質的に一致するとともに2000μmから50μmの間、好ましくは1500μmから100μmの間となる。
【0187】
図示するように、洗浄分離容器1は、中央筒状本体部111と、前記中央筒状本体部111の端部に固定された又は固定可能な二つの閉鎖端末112、113又はキャップと、から構成される。
【0188】
図示された前記中央筒状本体部111は円筒状形状であるものの、任意の形状及び寸法であってもよい。
【0189】
洗浄容器101は片手で扱えるような寸法を有する。
【0190】
一変形例において、
図2、3、4及び5に示すように、幅広のコップ状の部分115が中央筒状部111の一端に設けられている。このコップ状の部分は前記中央筒状部の幅広の軸方向端部であり、その内径は中央筒状部111の内径よりも大きい。
【0191】
一方の閉鎖端末112は中央筒状部の端部と係合するよう構成された開口を有し、第二の閉鎖端末113は外側環状径方向当接肩部117に当接することによって中央筒状部111のカップ状座部115と係合するための軸方向円筒状延長部116を有する。
【0192】
閉鎖端末113の軸方向円筒状延長部116と中央筒状部111の一端の幅広のカップ状部分115との接触面に、そして中央筒状部の端部側の外面と該外面に接する第二の閉鎖端末112の開口の内面との間に、Oリングなどの流体密封連結用手段を設けてもよい。この流体密封連結用手段は、上述した構成要素即ち閉鎖端末112、113及び中央筒状部111とともに、外部環境から隔離された完全滅菌洗浄チャンバ101を形成する。これらの接触表面上に、これらの端末112、113を中央筒状部111上に確実に固定するために、くぼみ及び溝を設けてもよい。
【0193】
前記閉鎖端末112、113は、中央筒状部111に取り外し可能に固定されるよう設計されてもよいが、しかしながら前記洗浄分離容器1も、中央筒状部111から一方又は両方の端末を分離するために、取り外し可能に設計してもよい。したがって、使い捨て可能な洗浄分離容器1が提供され、該洗浄分離容器はその内側洗浄チャンバ101内も滅菌されるよう構成され、したがって再使用可能に構成されている。
【0194】
図13(a)、(b)及び(c)に示すように、閉鎖端末112、113及び中央筒状部は非常にシンプルな構造を有してもよい。二つの閉鎖端末は、中央筒状部111の端部に固定されて又は取り外し可能に搭載されたキャップの形であってもよい。
【0195】
これらの端末は、薄くデリケートであり得る網の変形を防止するために、洗浄チャンバに面する側に肩部を有してもよい。
【0196】
これらの閉鎖端末112、113は、中央筒状部の長手方向中心軸の位置に形成された貫通穴などの開口部を有する。この開口部は、閉鎖弁及び/又はルアーコネクタ若しくはスナップ式あるいはねじ式コネクタなどの流体密封連結手段1021、1031を有し、あるいは多様弁を有し、これにより洗浄チャンバ101と注射器又は袋などの一以上の医療機器とを場合によっては同時に連結し、あるいは洗浄チャンバ101と寸法縮小容器の寸法縮小チャンバ201とを、相手方連結手段2021、2031を有する各入口202及び/又は出口203を介して連結する。
【0197】
図示されるように、出口103の位置であって閉鎖端末113と中央筒状部の端側との間であり洗浄チャンバの内側に、中央筒状部111の長軸に対して実質的に垂直となるようフィルタ4が設けられている。このフィルタは、液状エマルションの除去のために洗浄分離容器2が地面に対して鉛直方向に向けられたときに全ての開口、特に出口133、に詰まりが生じることを防止するために、かくはん部材104を洗浄チャンバ101内に維持する。上述したように、洗浄分離容器1において、脂肪吸引により産出された小葉脂肪の寸法を縮小してより小さい且つ同等又は類似の寸法の細胞及び細胞凝集体、具体的には脂肪細胞及び幹細胞、にするための寸法縮小手段3を、入口102に設けてもよい。
【0198】
上述したように、フィルタ4に置き換えて又は追加して、脂肪吸引除去物質の寸法縮小網などの脂肪吸引された物質のための寸法縮小手段を設けてもよく、脂肪吸引除去物質は洗浄分離チャンバ101を出る前により小さな凝集体へとさらに分割される。
【0199】
したがって、閉鎖端末112と中央筒状部の端側との間の連結部において、寸法縮小網が、洗浄チャンバ内の入口102の近くに、中央筒状部111の長軸に対して実質的に垂直に設けられる。この寸法縮小網は、巨視的凝集体の寸法を予め決められた値にまで縮小し、この巨視的凝集体は入口102を介して洗浄分離チャンバ内に注入又は押し込まれる。
【0200】
さらなる寸法縮小網を、洗浄チャンバ101内の出口103の近くであって閉鎖端末113と中央筒状部の端側の間の連結部の位置に、中央筒状部111の長軸に対して実質的に垂直に設けてもよい。
【0201】
この好ましい実施形態において、入口102に近接するそれらの第一の寸法縮小網によって、脂肪吸引除去物質の連結組織の集団が寸断される及び/又は脂肪吸引除去物質の凝集体の寸法の第一の粗い縮小がなされる。一方で、出口103の近くに位置する第二の寸法縮小網を通過することによって、所定値以下の寸法の細胞凝集体が得られる。異なる寸法のメッシュを有する前記網、特に第一の網は、洗浄分離容器1内の脂肪の流れの方向に対して、第二の網よりも大きいメッシュを有する。
【0202】
上記の装置を用いて準備された脂肪組織の集団、即ち(複数の)寸法縮小網を介して寸法縮小された及び/又は洗浄とともに固体成分と液体成分が分離された脂肪組織は、主に脂肪細胞から構成されるが、脂肪吸引除去物質内に発見され得るとともに顔面及び/又は体の再構成治療のために使用され得る他の種類の完全に健康な生存細胞から構成されてもよい。
【0203】
本発明は、患者のけが又は病気を治療する又は防止する方法、具体的には体及び顔面の体積欠陥の治療、皮膚の基礎栄養の改善及び/又は生物学的刺激を行う方法、に取り組むものである。前記方法は、以下の工程を含む。
・患者のドナー領域から生物学的物質を抽出する、具体的には脂肪吸引により抽出された脂肪組織を得る、一以上の工程。
・前記物質を処理する一以上の工程。
・前記処理された物質を患者内に注入する一以上の工程。
【0204】
注入する工程の前に、生物学的物質の収集及び貯蔵の工程を有してもよいことは明らかである。
【0205】
前記処理する工程は、抽出された物質の寸法を縮小するための一以上の寸法縮小工程及び/又は洗浄するとともに液体相と固体細胞相を分離するための一以上の洗浄及び分離工程を含む。前記処理する工程は、本発明の装置及び方法を用いて実施される。
【0206】
本発明の方法において、ドナー患者は、前記注入する工程が実施されるレシピエント患者でもある。
【0207】
それにもかかわらず、ドナーとレシピエントは別の人間でもよい。
【0208】
明らかに、組織を処理する装置及び方法並びに患者を治療する方法は、脂肪組織以外の組織の使用を伴ってもよい。
【0209】
以下に、上記の装置を用いて準備された生物学的物質を移植する手順の例を説明する。
【0210】
上記した装置を用いて準備された物質は、一以上の滅菌容器、例えば注射器、内に貯蔵され、固体成分を全ての残留油又は溶液から分離するために、沈殿場合によっては遠心分離が施される。
【0211】
本発明の装置及び方法を用いて準備された細胞物質を、任意の適切な手順で任意の種類の組織内に注入してもよい。
【0212】
受容領域を策定し正しく殺菌した後、準備された細胞懸濁液を含んだ注射器の針又は微小カニューレが皮下組織又は筋肉組織内に導入され、これによって非常に少量の細胞凝集体を注入するためのトンネルの三次元網が形成される。
【0213】
この工程は、好ましくは、非常に小さい直径のルアーコネクタを有する先がとがっていない使い捨て滅菌カニューレを用いて実施される。
【0214】
処理された組織内に形成されたトンネルの小さな寸法は、皮下組織又は筋肉組織内の間質腔内の細胞及び細胞凝集体の統合を促進させ、これにより外科的損傷が減少するとともに体積増大及び再構成治療が施される組織が正常な濃度に迅速に戻ることが促進される。
【0215】
したがって、非常に小さい直径のトンネルを組織内に形成することにより、組織体積の再構成及び/又は生物学的刺激の結果が最適化される。そのような小葉を細胞凝集体へと分割することにより脂肪小葉寸法を縮小することによって、注入された集団と治療される組織との間の接触面がより大きくなり、これによって関係領域の生物学的刺激及び移植された脂肪組織の統合が促進される。
【0216】
これらの特に細い場合によっては1mm未満のカニューレは、脂肪吸引された小葉脂肪の寸法の縮小によって、使用が可能となる。この寸法の縮小は、一以上の寸法縮小容器2及び/又は寸法縮小手段を有する一以上の洗浄分離容器1内で起こり、前記洗浄分離容器1の寸法縮小手段は、少なくとの一つの一連の平行なシート及び/又は一以上のワイヤ若しくは薄いシートの網、好ましくは二以上の網、から構成される。前記二つの網のうちの少なくとも一つは非常に小さい寸法のメッシュを有し、ミクロンのオーダーの寸法を有する細胞凝集体を、個別の細胞でさえも、通過させる。
【0217】
脂肪の寸法の縮小を行わない場合は、移植処置に用いられるカニューレに詰まりが生じてしまう。
【0218】
先のとがっていない滅菌カニューレの代替手段として、
図12に示すような先のとがった又は先のとがってないらせん状又は渦巻き形状のカニューレ5を、脂肪細胞の移植に使用してもよい。
【0219】
らせん状のカニューレ5は、移植用針の少数の貫通工程を必要とする臓器への注入において特に有用であり、らせん状の針によって最大限の密度の細胞物質が単一経路に沿って沈着する。
【0220】
そのような種類のカニューレによって、高濃度組織又は特にデリケートな組織、例えば瘢痕組織、骨、軟骨、心筋又は他の臓器内、の場合であっても、組織の所定の体積を治療する単一の注入ポイントを介して脂肪組織細胞凝集体の移植が可能となる。カニューレは、らせん状構造を組織に進入させるために回転運動しながら導入される。その後カニューレは、細胞凝集体又は脂肪組織のクラスターの注入中に、同じ様式で引き抜かれる。これにより、直線状の針による個別の注入と比べて、単位体積当たりの移植された脂肪の量が大きく増大し、したがって注入された脂肪組織と受容組織との間の接触面を減少させずに処理体積の体積が大幅に増大し、したがってカニューレの小さい直径及びらせん状の経路によって脂肪組織が細胞のストリップ又は非常に薄い玉として放出されるので、注入された細胞の血管新生の可能性が高まる。
【0221】
脂肪細胞に加えて幹細胞を含む他の種類の細胞が含まれる準備された脂肪組織をらせん状の経路を介して治療される組織内に放出するよう構成されたこれらのカニューレの使用は、Coleman法に基づく充填を実施することができない場合、即ち例えば治療される組織が過度な濃度であること及び組織の損傷が望ましくないこと、例えば心筋治療などの場合、などが原因で治療される組織内にトンネルの網を形成できない場合に、特に適している。本発明はさらに、例えば自己移植術又は異種移植術などの移植用の組織に関し、該組織は、細胞、場合によっては細胞片及び/又は細胞凝集体、から構成されるとともに、上記の装置及び/又は方法を用いて得られる。
【0222】
前記組織は、均一の寸法を有するとともに平均直径が10μmから2mmの間の細胞物質から構成される。
【0223】
好ましくは0.05から1.5mmであり、具体的には約0.75〜0.5mm以下(最大10μm)である。
【0224】
必要に応じて、本発明の装置は、個別の細胞から構成される組織をさらに提供してもよい。
【0225】
好ましい実施形態において、前記組織は主に脂肪細胞及び幹細胞からなる脂肪組織である。
【0226】
前記幹細胞は、軟骨細胞、骨細胞、脂肪細胞、神経細胞などの任意の種類の細胞の作成に使用されるよう構成される。
【0227】
準備の後、この脂肪組織は不純物が全くない小さい液体画分を有し、当該液体画分は細胞凝集体と混合しており治療される組織内への細胞の導入を促進するのに十分である。
【0228】
前記液体画分は、移植用に準備された脂肪組織の約50重量%であってもよい。
【0229】
本発明はさらに、明らかに、脂肪組織以外の、一以上の上記特徴を有する組織に関する。
【0230】
本発明はさらに、外来患者及び手術環境の両方の使用に適応された、好適に滅菌された且つ使い捨てキットに関する。
【0231】
本発明の装置又はキットは、弁を有する又は有さない二方向又は三方向コネクタ、連結チューブ、注射器及びさまざまな容器(例えば洗浄用食塩水用袋及び洗浄廃棄物収集用袋)を有する。
【0232】
前記キットは、任意の種類の細胞物質、好ましくは自己又は異種移植用の脂肪1、の処理に使用されてもよく、脂肪の固体成分を洗浄するとともに前記固体成分と流体成分を分離するための一以上の容器1を備え、該洗浄分離容器1は上述したように形成される。
【0233】
このキットは、洗浄チャンバ101内に寸法縮小手段を有する一以上の洗浄分離容器から構成され、外部環境との接触による細胞物質の汚染のリスクなしに患者から抽出される物質を迅速に処理するために使用される単純で完全に滅菌された装置を提供することから、特に美容整形術の分野、例えば外来患者環境での使用に有利である。
【0234】
このキットによって、第一の組織吸引工程から最後の注入工程までの生物学的物質の処理が完全に閉じた系で行われ、これにより物質が外部環境と一度も接触することなく及び/又は物質を汚染する可能性のある手段を使用することなく、物質が処理される。
【0235】
このことは、滅菌された且つ互いに流体密封にて連結された又は連結可能な一以上のチューブ、注射器、袋、多方向弁、ルアーコネクタ、そして明らかに一以上の洗浄分離容器1(場合によっては一以上の寸法縮小容器2)の使用を介して可能となる。
【0236】
したがって、生物学的物質の取り出し、該物質の処理、貯蔵及び生物学的物質の注入を提供するシステムは、その全ての工程、患者からの取り出しからレシピエント患者内への注入まで、において外部環境から完全に隔離されている。
【0237】
一以上のシステムの構成要素は、生物学的物質の吸引及び/又は処理及び/又は注入を含む一以上の処理工程が作業者による動作を全く必要とせずに実施されるように、特別な機器に連結されることで機械化されてもよい。
【0238】
このキットは、小規模な美容整形手術処置に特に適している。好ましい一実施形態において、キットは、上記したように、一以上の寸法縮小網、好ましくは二つの寸法縮小網、を有する一以上の容器1を備える。キットの各容器1は、他の容器1のものと異なる寸法のメッシュを有する網を備えるよう設計されてもよく、これにより物質を多数の容器の網のメッシュを通過させることによって、細胞凝集体は移植を許容する所定値まで寸法が段階的に縮小される。
【0239】
そのような段階的な縮小により、網のメッシュに詰まりが生じるリスクが回避されるとともに処理工程の速度が遅くなることが防止される。
【0240】
代替的に、以下の構成要素を有するキットが提供される。
・脂肪の固体成分を洗浄するとともに前記固体成分と流体成分を分離するための一以上の容器1、該容器1は場合によっては一以上の寸法縮小網又はシート3を有する。
・上述したように形成され且つ前記容器1に連結されるよう構成された一以上の寸法縮小容器2。
【0241】
一実施例において、キットは、二以上の寸法縮小容器2を有し、該寸法縮小容器2は、該寸法縮小容器2の出口203又は入口202が洗浄分離容器1の入口102又は出口103に交互に連結されるよう構成されている。寸法が縮小された脂肪の予め決められた量が貯蔵され、各寸法縮小容器2の縮小チャンバ201内に無菌状態で保存される。
【0242】
複数の寸法縮小容器2を有するキットを提供してもよく、該キットは、寸法縮小網3のメッシュに関して及び/又は縮小チャンバ201に収容される寸法が縮小された脂肪の体積に関して異なる寸法を有する二以上の寸法縮小容器2から構成される。
【0243】
例えば、キットは、細胞物質が通過し得る寸法縮小手段3を有する二以上の寸法縮小容器2であって各々が寸法の異なるメッシュを有する網3を有する二以上の寸法縮小容器2を含むよう設計されてもよい。
【0244】
二以上の寸法縮小容器2を設けることにより、寸法縮小網のメッシュを詰まらせるリスク即ち物質の処理工程の速度を下げるリスクなしに、大量の脂肪を処理することができる。
【0245】
洗浄分離容器1及び/又は寸法縮小容器2は、使い捨てタイプのものでもよく、あるいは完全滅菌可能で後に再使用できる様式で形成されてもよい。
【0246】
本発明のキットは、さらに、代替的に又は組み合わせで、以下の構成要素を備えてもよい。
・体積が異なる一以上の使い捨て滅菌注射器。
・麻酔、除去及び移植においてカニューレを経皮的に導入するために異なる特定寸法を有する一以上の先がとがった滅菌針又は滅菌披針形刃。
・先のとがった又は先のとがっていない一以上の使い捨て滅菌カニューレであって、そのうちの一つは1mm程度の非常に小さい直径を有するカニューレ。
・逆止弁を有する又は有さない一以上の一又は多方向弁、例えば容器1及び/又は容器2の入口102、202及び/又は出口103、203に接続される三方向弁。
・キットの一構成要素から他構成要素に(例えば注射器から洗浄分離チャンバ1に又は食塩水袋から洗浄分離チャンバに)生物学的物質を通過させるよう構成された、ルアーコネクタを有する一以上の滅菌チューブ。
・上記の装置を用いて準備された脂肪物質を沈殿及び/又は遠心分離させるための注射器などの手段又は容器。沈殿後に残留液体/油状成分上に浮かぶ移植前に除去される固体成分をさらに分離するために、該脂肪物質は一以上の滅菌容器内に分配される。
・そのようにして準備された移植に使用可能な生物学的物質を保存する手段、例えば、無菌室を模倣した閉じた環境内に前記生物学的物質を冷凍保存する手段、即ち粒状物汚染、圧力及び温度などの観点から状態が制御された容器。
【0247】
図10に概略的に示すように、キットは、例えば一以上の洗浄分離容器及び寸法縮小容器1、患者から物質を吸引するための注射器8、処理された生物学的物質を収集/注入するための注射器12、洗浄液袋10(例えば生理食塩水を含む袋)及び廃棄物を収容するための袋11などの、滅菌チューブ、多方向弁及びルアーコネクタを用いて互いに接続された又は接続可能な一以上の装置を備えてもよい。
【0248】
前記小さい直径のカニューレに置き換えて又は加えて、キットは、先のとがった又は先のとがってないらせん状又は渦巻き状の一以上のカニューレ5を含んでもよく、これにより、上述したように、単一の注入ポイントを用いて、処理された組織の体積を増大させることによって、脂肪組織の細胞の集団を高濃度組織又は特にデリケートな組織内に移植することができる。
【0249】
キットは、プランジャーの跳ね返りを一時的に防止するために吸引中即ち脂肪吸引中に注射器を固定する道具をさらに含んでもよく、これにより脂肪組織吸引において損傷が小さくなる。
【0250】
キットは、注射器のピストンに往復運動を与えるための、バネによって付勢された機構をさらに備えてもよい。前記機構は、二方向弁に連結され、脂肪組織を迅速に取り出す。この脂肪組織は、外部環境に接触することなく、先端にルアーコネクタを有するチューブを介して洗浄分離チャンバ101に運ばれる。
【0251】
さらに、チャンバの入口102に三方向弁を設けることによって、取り出し注射器を取り外すことなく前記チャンバに洗浄液を注入することができる。
【0252】
キットに含まれる注射器は、プラスチックから形成されてもよく、好ましくはルアーコネクタなどを有し、さまざまな体積を有する。
【0253】
例として、以下の注射器を使用してもよい。
・局所麻酔注射用の10から60cc注射器。
・麻酔の腫れ(wheal)を作成するための針を有する5cc注射器。
・ドナー領域から脂肪組織を取り出すための直径が1.5から3mmの滅菌カニューレに連結された10cc以上の体積の注射器。
・組織移植用の1から5ccの注射器。
【0254】
したがって、本発明の装置を用いて実施され得る処理方法は、流体物質と不均一な寸法を有する細胞片及び一以上の細胞巨視的凝集体との混合物の形態である脂肪抽出物、例えば脂肪吸引によって得られたもの、を、より小さく等しい又は類似した寸法、何れの場合も所定値以下の寸法、を有する細胞凝集体、特に脂肪細胞凝集体、を含む細胞懸濁液として準備し、これによりわずかな外傷で充填処理を行う必要がある患者の顔面又は体の領域内への移植を可能にするとともに該処理に用いられた組織の生物学的刺激を行う。
【0255】
前記方法は、患者内に細胞物質を投与する前に該細胞物質が汚染されることを回避するために、閉じた系の中で実施してもよい。
【0256】
明らかに、移植される脂肪組織は、脂肪吸引によってだけでなく他の周知の技術を用いて得られてもよい。
【0257】
上述したように、得られた凝集体の平均寸法は、脂肪吸引された物質の寸法縮小に使用された寸法縮小手段のメッシュ又は開口部の寸法に依存して、500μm以下即ち約100〜10μmであってもよい。
【0258】
したがって、脂肪物質の準備は、該脂肪物質を、吸引された巨視的凝集体よりも小さい細胞片、細胞又は細胞凝集体へと分割することを伴う。
【0259】
そのような分割は、上述したように、幹細胞と移植が行われる組織との接触を促進する有利な微環境を作り出すことから、幹細胞の活動を促進させる。
【0260】
本発明において、所定値以下の寸法に分割される細胞凝集体について、脂肪吸引除去物質の段階的な縮小が好ましい。つまり、脂肪が、交差する又は平行なワイヤ又はシートからなる一以上の切断網を一回以上通過させられ、好ましくは互いに所定の距離離れて位置する二つの網を通過させられ、前記網は異なる寸法のメッシュを有する。
【0261】
寸法縮小の前及び/又は後に、脂肪を、一回又は複数回、滅菌洗浄液で洗浄してもよいことは明らかである。
【0262】
そのようにして得られた細胞凝集体に追加の処理が施される。該追加の処理は、滅菌溶液での洗浄及び細胞成分と液体相、即ち血液、脂肪の破壊によって排出される油、使用される麻酔液及び前記凝集体が混合された溶液、例えば生理食塩水、の分離を含む。
【0263】
洗浄及び分離は、ボールなどのかくはん部材104を含む洗浄チャンバを有する容器1を使用することにより行われ、前記ボールは容器1をかくはん(混ぜる)することによって、前記洗浄チャンバ内に含まれる液体成分のエマルションを形成することができる。
【0264】
一以上の洗浄分離容器内での細胞凝集体の洗浄は、出口103から排出される液体廃棄物相が完全にきれいになるまで継続してもよい。
【0265】
有利には、脂肪吸引除去物質の段階的な寸法縮小は、洗浄分離容器内に設けられた互いに所定の距離離れて位置する、即ち中央筒状部の両端に位置する、二以上の網に、前記脂肪吸引除去物質を強制的に通過させることによって行われてもよい。前記脂肪組織に圧力をかけることによって、寸法縮小手段3を通過させることにより脂肪細胞の細胞壁が破壊され得るとともに細胞凝集体を含む細胞懸濁液から除去しなければならない油が形成され得ることから、前記組織の移植を確実に成功させるために、細胞凝集体は、脂肪組織小葉又は巨視的凝集体の分離及び前記凝集体の寸法の所定値以下への縮小/均質化の第一工程の後に、初めて洗浄される。
【0266】
移植に適した寸法の固体成分を得るための第二以降の寸法縮小工程の後に、一以上の後の洗浄工程が実施される。
【0267】
また、上述した容器1内での抽出された脂肪の細胞成分と液体相の洗浄及び分離は、細胞集合体の寸法縮小工程の前において行われてもよい。
【0268】
本発明の方法は、分割工程に代えて又は加えて、固体成分とエマルション形態の流体成分とを分離する工程と同時に実施される一以上の細胞集合体を洗浄する工程含んでもよい。
【0270】
第一工程において、洗浄分離容器1から空気が排気され、そして全内部体積が液体で満たされる。
【0271】
例えば、注射器7を用いて生理食塩水を吸引することによって、該生理食塩水を重力により袋10に入れることによって、そして注射器12(注射器のキャップを取り除いた後)及び/又は容器11(開口可能排気弁を備えてもよい)から空気を排出させることによって、装置の使用の前に、廃棄される空気を除去してもよい。
【0272】
洗浄分離容器1は、出口103が開口して上方を向くように垂直に配向され、液体が容器1内に導入されて、空気が入口102を通って該容器から排気される。
【0273】
液体は、三方向弁を有するチャンバの開口にチューブを介して連結された袋10内に含まれる生理食塩水でもよい。
【0274】
その後、脂肪吸引除去物質が、洗浄分離チャンバ101内に注入される。
【0275】
脂肪吸引除去物質は、容器1の吸引用注射器から直接注入されてもよく、あるいは
図10に示すような完全に閉じた系を介して注入されてもよい。
【0276】
任意の体積を有する注射器を用いてもよい。10ccの注射器が好ましい。
【0277】
脂肪物質は、取り出しのために使用される吸引注射器、例えば弁を備えた二方向注射器、を介して、直接又は注射器と容器の開口とに連結されたチューブを介して、チャンバ101内に注入され、注射器のピストンによって加えられる圧力作用によって脂肪物質が前記チャンバ内に押し込まれる。
【0278】
この工程において、容器は好ましくは出口103が地面に向かって下に向くよう鉛直位置に保持される。
【0279】
入口102の近くに寸法縮小手段が存在することによって、第一の脂肪吸引除去物質寸法縮小/均質化がなされる。
【0280】
洗浄流体を用いて重力下で油圧式の力を脂肪物質に加えてもよく、前記洗浄流体は洗浄分離チャンバ101内に注入され、脂肪物質が洗浄チャンバ101の中に入れられる又は外に排出される。
【0281】
入口102から洗浄分離容器1内に注入された脂肪凝集体は、油、血液及び取り出し中に使用されたどのような流体物質をも含まない高純度の細胞凝集体を得るために、滅菌食塩水などの液体物質を前記内側洗浄チャンバ101内に圧力注入することにより、繰り返し洗浄されてもよい。
【0282】
前記流体物質を前記凝集体と分離する洗浄分離工程は、以下のように行われる。
・洗浄分離容器1の、脂肪物質を含む洗浄チャンバ101内に、滅菌洗浄溶液、例えば生理食塩水、を一回以上注入する。前記洗浄チャンバ101には一以上のかくはん要素104が含まれる。
この工程では、容器は、出口103が地面に向いて地面と平行となるよう、鉛直位置に保持される。
・流体成分、特に滅菌流体物質を有する油成分及び血液、のエマルションの形成を促進するために、前記洗浄分離容器1の手動又は機械的かくはん、手動かくはんで十分であるが、を行う。洗浄分離容器を水平位置、即ち地面におよそ平行(
図8b)、に配向させることで前記エマルションが形成される。
・洗浄チャンバ101内に含まれる脂肪を構成する液状エマルション上への固体成分の成層化を得るために、具体的には洗浄分離容器1の出口103と接触している洗浄チャンバ101の下部にある流体成分のエマルションの上に浮かぶ細胞片、細胞及び一以上の細胞凝集体からなる固体成分を得るために、洗浄分離容器1を出口103が下方を向くよう床に対して鉛直位置に配置する。
・洗浄分離容器1の出口103を介して洗浄チャンバ101から流体成分(即ち油/液体)のエマルションを排出する(
図8c)。所定の圧力で開口102から洗浄流体を注入することにより、エマルションが外に押し出される。
【0283】
容器は円筒状形状を有しているので、容器の水平位置とは容器の長軸が地面と平行に端側を通ることを意味し、容器の鉛直位置とは円筒の長軸が地面と垂直になるよう円筒が配向されることを意味する。
【0284】
外部環境とチャンバ101に入っている細胞物質の両方の汚染を防ぐために、エマルションは、適切な手段によって、前記開口103に流体密封で連結された別の容器11内に収集される。
【0285】
したがって、洗浄工程では、滅菌溶液、例えば注射器を用いて入口102を介して注入された生理食塩水又は袋から取り出された生理食塩水、と混ざった脂肪が入った洗浄及び分離容器1は、ボール104の存在によって、細胞壁を破壊せずにエマルション即ち洗浄流体中の微小な油滴の分散を形成するのに十分な力でかくはんされる。
【0286】
エマルションを形成するために、容器1を水平にして容器がかくはんされる。
【0287】
明らかに、この工程では、容器1の開口即ち一以上の入口102及び/又は一つの出口103は、物質の漏れを防止するために閉じられる。
【0288】
容器をかくはんする工程の最後において、容器は鉛直位置に動かされ、脂肪吸引除去物質を形成する物質の異なる密度によって、洗浄チャンバ101内に細胞及び細胞片の固体層が形成され、この固体層は液状エマルション上に浮かぶ。
【0289】
洗浄工程は、流出する液体−油−血液エマルションが血液及び油などの不純物を全く含まなくなるまで、チャンバ内に滅菌洗浄溶液を注入しその後エマルションを形成し(入口及び出口を閉じた容器をかくはんすることによって)エマルションを排出する(きれいな洗浄溶液の注入によって)ことによって、繰り返される。
【0290】
したがって、流体成分エマルションの排出を繰り返してもよい。
【0291】
そのようなエマルションの排出は重力によって生じる生理学的液体の流れによって得られ、この流れによって、廃棄液体(特に油)のかなりの量を除去するために各回即ち各洗浄サイクルにおいて十分な一定時間間隔以上の間即ち微小な油滴と液体の間にエマルションが形成されるまで、密度勾配を介して液体成分(油/液体)が除去される。
【0292】
流出液体(入口102から出口103への流れ)の後に、水/油エマルションが密度勾配を介して容器から除去され、前記洗浄の流れが十分であることは明らかである。
【0293】
図9に示すように、油/液体のエマルションが排出される。
【0294】
油はエマルションの一部である限り排出することができる。
【0295】
排出されるものは微小な油滴及び洗浄液のエマルションである。
【0296】
前記エマルションの上に細胞集団が浮かぶ。
【0297】
したがって、乳化(エマルションの形成)には、脂肪吸引除去物質中の油などの不純物を取り除くことが必要である。
【0298】
洗浄工程の最後に、きれいな洗浄溶液の上に固体成分が浮かぶ。
【0299】
したがって、洗浄及び分離工程の最後に、容器のチャンバ101内の物質を移植に使用することができる。
【0300】
脂肪組織の洗浄は、圧力下で脂肪が寸法縮小網3を通過する間に及びカニューレ又は針を用いてドナー領域から脂肪細胞を機械的に取り出す間に脂肪細胞の細胞壁が破壊されることによって生じる油を除去することから、重要な工程である。
【0301】
固体成分は、装置1内には残らず、好ましくは出口103にてさらなる寸法縮小が実施された後に入口102から付勢される油圧による押し込みによって、補われる。
【0302】
固体成分が洗浄溶液(
図8d)の上に浮かぶよう、好ましくは出口103の近くに設けられた寸法縮小網6を有する出口103が上向きとなるよう容器を鉛直に配置することによって、固体成分が洗浄分離容器から排出される。
【0303】
したがって、排出される固体成分は出口103の隣に位置する。
【0304】
固体成分は、入口102から洗浄溶液を注入することによって、第二の網6を通って外に押し出される。
【0305】
排出されるものは、最初に細胞物質を少量含む水溶液、次に細胞物質を豊富に含む溶液、そして最後に細胞物質を少量含む溶液であることが分かった。
【0306】
液体と混ざった準備された生物学的物質を収集するために、一以上の容器、例えば注射器12が、出口103に交互に連結されてもよい。
【0307】
そのような物質は、網6を介してさらなる縮小/均質化が施されている。
【0308】
容器12を、固体成分と残留液体成分を分離させるために落ち着かせる。
【0309】
上述したことに代えて又は加えて、遠心分離によって分離を行ってもよい。
【0310】
そのようにして準備された生物学的物質は、無菌室を模倣した閉じた環境内に保存又は好ましくは冷凍保存される。
【0311】
明らかに、容器12内に貯蔵された物質は、最終的に保存及び/又は再注入される前に、洗浄分離容器1及び/又は寸法縮小容器2内で再度処理されるよう設計されてもよい。
【0312】
患者からの取り出しから再注入まで物質処理系全体は閉じている。この特徴は、生体組織を預ける即ち生物学的銀行に生体組織を保存するために特に重要である。
【0313】
したがって、容器12内に運ばれた生物学的物質は常に無菌の閉じた系内にあり空気とは一度も接触しない。
【0314】
したがって、前記物質は無菌チャンバの使用を要求するさらなる変化を伴わずに直接冷凍保存してもよい。
【0315】
上述したように、脂肪吸引除去物質の段階的な縮小及び/又は洗浄のために、多数の互いに連結可能な洗浄分離容器を提供してもよい。
【0316】
本発明の装置は、液体相と混合した細胞巨視的凝集体の形である細胞抽出物を単純、迅速及び安価に処理することを可能とし、これにより、好ましい寸法、ともかく所定値よりも小さい、を有する実質的に同等の生存細胞全体の細胞集合体が提供され、前記細胞凝集体は、エマルションの形の廃棄液を含む液体成分から分離される。これらの凝集体は移植用に使用されてもよい。
【0317】
明らかに、脂肪小葉の処理から生じる物質は、細胞集合体のみでなく、生体フィルタとして用いられる個別の細胞及び細胞片をも含んでもよい。
【0318】
さらに、脂肪吸引された物質は、脂肪細胞だけでなく、幹細胞などの他の種類の脂肪をも含んでもよい。
【0319】
装置によって実施される処理方法は、脂肪吸引された物質への化学作用又は細胞を構成する凝集体への生物学的作用を有し得る酵素又は他の成分を使用せず、しかし、移植中に処理された組織と接触し得る露出された細胞表面をより大きくするために、細胞凝集体の寸法の変化の可能性を使用する。特に、注入のための固体物質が準備され、これは前記処理された物質が再注入された領域内の幹細胞の作用に最適な生体内微環境をも形成し、該幹細胞は吸引された物質内に含まれる。
【0320】
したがって、本発明の方法は、幹細胞が存在することからも、患者から抽出された物質から生物学的に活性な注入可能生物学的物質を単純且つ安価に提供し、乳化剤又は酵素などの化学薬品及び体外培養工程のどちらも使用しない。さらに、されたの非常に小さい細胞凝集体は、非常に薄いカニューレを用いて移植してもよく、これにより外科手術による外傷を小さくするとともに組織の統合化を最適化する。
【0321】
また、本発明の装置の使用により、生物学的物質を外部環境から隔離するとともに生物学的物質を非常に短時間で使用のために準備する閉じた系が提供され、これにより汚染リスクの可能性が低減される。
【0322】
本発明の主題を形成する本明細書内で開示された装置、キット及び方法は、移植される脂肪組織の準備のためのみでなく、使用のために高純度であることが要求される任意の種類の細胞凝集体の準備にも使用してもよいことは明らかである。