(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の光ファイバと、入射端面に各光ファイバの端面が接合されたテーパファイバであって、出射端面におけるコア径が上記入射端面におけるコア径よりも小さいテーパファイバとを備え、
上記テーパファイバは、屈折率がncoreであるコアの内部に形成された、屈折率がncoreよりも大きい高屈折率領域を有しており、
各光ファイバの上記端面と上記テーパファイバの上記入射端面とは、該光ファイバの上記端面の少なくとも一部が上記テーパファイバの上記高屈折率領域の入射端面と重なるように接合されており、
上記高屈折率領域の屈折率分布は、当該高屈折率領域の内部において屈折率が極大値を取り、上記コアとの境界に近づくに従って屈折率がncoreに漸近する屈折率分布であり、
上記高屈折率領域の屈折率の最大値をnpeakとし、(npeak−ncore)/npeakにより定義される比屈折率差Δが、0%<Δ<0.076%である、
ことを特徴とする光カプラ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の光カプラを用いたとしても、テーパファイバに入射した光のNAが縮径部を伝播する過程で大きくなることに変わりはない。したがって、NAの小さい光ファイバを出力用光ファイバとして用いる場合には、テーパファイバから出射される光のNAが出力用光ファイバのNAを超えてしまうことがある。
【0008】
また、入力用光ファイバの本数を増やすためには、テーパファイバの入射端面における直径を大きくする必要がある。この際、テーパファイバの縮径部の長さを変えずに、テーパファイバの入射端面における直径を大きくすると、縮径部における単位長さあたりの縮径量が大きくなる。そうすると、テーパファイバから出射される光のNAも大きくなるので、テーパファイバから出射される光のNAが出力用光ファイバのNAを超えてしまう。テーパファイバの入射端面の直径を変えずに、テーパファイバの縮径部の長さを短くする場合にも、同様の問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、テーパファイバから出射される光のNAが従来よりも小さい(より正確に言えば、テーパファイバから出射される光のうち、NAが出
力用光ファイバのNAを超える光の割合が従来よりも小さい)光カプラを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題を解決するために、本発明の光カプラは、複数の光ファイバと、入射端面に各光ファイバの端面が接合されたテーパファイバであって、出射端面におけるコア径が上記入射端面におけるコア径よりも小さいテーパファイバとを備え、上記テーパファイバは、屈折率がn
coreであるコアの内部に形成された、屈折率がn
coreよりも大きい高屈折率領域を有しており、各光ファイバの上記端面と上記テーパファイバの上記入射端面とは、該光ファイバの上記端面の少なくとも一部が上記テーパファイバの上記高屈折率領域の断面と重なるように接合されており、上記高屈折率領域の屈折率分布は、当該高屈折率領域の内部において屈折率が極大値を取り、上記コアとの境界に近づくに従って屈折率がn
coreに漸近する屈折率分布である、ことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の光カプラにおいて、上記高屈折率領域は、上記入射端面から遠ざかるに従い内径及び外径が次第に小さくなる円筒状領域である、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の光カプラにおいて、上記円筒状領域の屈折率分布は、上記テーパファイバの中心軸に対して軸対称であり、上記中心軸に直交する断面における上記円筒状領域の屈折率分布n(r)(rは上記テーパファイバの中心軸からの距離)は、該断面における上記円筒状領域の内径及び外径をR−a及びR+aとし、(n(R)−n
core)/n(R)により定義される比屈折率差をΔとし、αを1以上の有限の実数として、n(r)=n(R)×[1−2×Δ×{(r−R)/a}
α]
1/2により与えられる、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明の光カプラにおいて、上記高屈折率領域は、上記入射端面から遠ざかるに従い直径が次第に小さくなる円柱状領域の集合であり、上記円柱状領域の屈折率分布は、該円柱状領域の中心軸に対して軸対称であり、上記中心軸に直交する断面における上記円柱状領域の屈折率分布n(r’)(r’は上記円柱状領域の中心軸からの距離)は、該断面における上記円柱状領域の直径をaとし、(n(0)−n
core)/n(0)により定義される比屈折率差をΔとし、αを1以上の有限の実数として、n(r’)=n(0)×{1−2×Δ×(r’/a)
α}
1/2により与えられる、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明のレーザ装置は、上記のいずれかの光カプラを備えたものである。
【0015】
また、本発明のテーパファイバは、一方の端面におけるコア径が他方の端面におけるコア径よりも小さいテーパファイバにおいて、屈折率がn
coreであるコアの内部に形成された、屈折率がn
coreよりも大きい高屈折率領域を有しており、上記高屈折率領域の屈折率分布は、当該高屈折率領域の内部において屈折率が極大値を取り、上記コアとの境界に近づくに従って屈折率がn
coreに漸近する屈折率分布である、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、テーパファイバから出射される光のNAが従来のよりも小さい光カプラを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔光カプラの構成〕
本発明の一実施形態に係る光カプラ1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、光カプラ1の構成を示す分解斜視図である。
【0019】
光カプラ1は、複数の光源から出力された光を合波するための装置であり、
図1に示すように、複数の入力用光ファイバ11と、複数のGI(Graded Index)ファイバ12と、テーパファイバ13と、出力用光ファイバ14とを備えている。
【0020】
入力用光ファイバ11は、各光源から出力された光を伝播させるための構成であり、円柱状のコア111と、コア111よりも屈折率の低い、コア111の側面を取り囲む円筒状のクラッド112とを有する光ファイバである。入力用光ファイバ11は、更に、クラッド112の外側面を取り囲む被覆(不図示)を有していてもよい。入力用光ファイバ11のコア径、クラッド径、及び長さは任意である。入力用光ファイバ11の出射端面11bには、GIファイバ12の入射端面12aが接合(例えば、融着接続)されており、出射端面11bを介して入力用光ファイバ11から出射した光は、入射端面12aを介してGIファイバ12に入射する。
【0021】
GIファイバ12は、入力用光ファイバ11から出射した光のNAを低下させるための構成であり、中心軸から遠ざかるに従って次第に低下する軸対称な屈折率分布を有する光ファイバである。このような屈折率分布を有する光ファイバは、GRIN(Graded Index)レンズと呼ばれることもある。GIファイバ12の直径は、入力用光ファイバ11のコア径以上であればよい。本実施形態においては、GIファイバ12の直径を入力用光ファイバ11のクラッド径と一致させている。GIファイバ12の長さは、入力用光ファイバ11から出射する光に対する0.5ピッチ長のn倍以外(但し、nは自然数)の長さとする。これにより、GIファイバ12から出射する光のNAをGIファイバ12に入射する光のNAよりも小さくすることができる。特に、GIファイバ12の長さを入力用光ファイバ11から出射する光に対する0.25ピッチ長の奇数倍の長さとした場合には、GIファイバ12から出射する光をコリメート光にすることができる。GIファイバ12の出射端面12bには、テーパファイバ13の入射端面13aが接合(例えば、融着接続)されており、出射端面12bを介してGIファイバ12から出射した光は、入射端面13aを介してテーパファイバ13に入射する。
【0022】
テーパファイバ13は、複数のGIファイバ12の各々から出射した光を合波するための構成であり、出射端面13bにおけるコア径が入射端面13aにおけるコア径よりも小さい光ファイバである。本実施形態においては、テーパファイバ13として、エアクラッド型の光ファイバを用いている。すなわち、テーパファイバ13全体をコアとして機能させ、テーパファイバ13を取り囲む空気をクラッドとして機能させている。また、本実施形態においては、テーパファイバ13の形状を、円柱と円錐台とを組み合わせた丸軸鉛筆形状としている。以下では、円柱部分のことを非縮径部13Aと記載し、円錐台部分のことを縮径部13Bと記載する。入射端面13aにおけるテーパファイバ13(のコア)の直径は、全てのGIファイバ12の横断面(中心軸に直交する断面)を内包する最小円の直径以上であればよい。出射端面13bにおけるテーパファイバ13の直径は、後述する出力用光ファイバ14のコア径以下であればよい。テーパファイバ13の長さは任意である。テーパファイバ13の出射端面13bには、出力用光ファイバ14の入射端面14aが接合(例えば、融着接続)されており、出射端面13bを介してテーパファイバ13から出射した光は、入射端面14aを介して出力用光ファイバ14に入射する。
【0023】
テーパファイバ13のコアの内部(本実施形態のように、エアクラッド方式を採用する場合には、テーパファイバ13の内部)には、入射端面13aから出射端面13bに至る、屈折率がコアの屈折率n
coreよりも大きい高屈折率領域131が形成されている。高屈折率領域131の外側面は、コアとクラッドとの境界(本実施形態のように、エアクラッド方式を採用する場合には、テーパファイバ13の外側面)よりも内側にあり、高屈折率領域131は、コアに取り囲まれている。また、高屈折率領域131とコアとの(比)屈折率差は、コアとクラッド(本実施形態においては空気)との(比)屈折率差よりも小さい。また、上述したGIファイバ12の出射端面12bとテーパファイバ13の入射端面13aとは、GIファイバ12の出射端面12bの少なくとも一部がテーパファイバ13の高屈折率領域131の断面と重なるように接合されている。このため、GIファイバ12から出射した光の少なくとも一部は、テーパファイバ13の高屈折率領域131に入射する。高屈折率領域131は、入射した光をNAが小さくなる方向に屈折させる。このため、高屈折率領域131が存在しない場合と比べて、テーパファイバ13から出射する光のうち、NAが出力用光ファイバ14のNAを超える光の割合が減少する。なお、テーパファイバ13の光学的構造については、参照する図面を代えて後述する。
【0024】
出力用光ファイバ14は、テーパファイバ13から出射された光を伝播させるための構成であり、円柱状のコア141と、コア141よりも屈折率の高い、コア111の側面を取り囲む円筒状のクラッド142と、クラッド142の外側面を取り囲む被覆143とを有する光ファイバである。出力用光ファイバ14のコア径は、出射端面13bにおけるテーパファイバ13の直径以上であればよい。本実施形態においては、出力用光ファイバ14のコア径を、出射端面13bにおけるテーパファイバ13の直径に一致させている。出力用光ファイバ14のクラッド径及び長さは、任意である。
【0025】
なお、本実施形態においては、1本の入力用光ファイバ11と、その周りを取り囲む6本の入力用光ファイバ11とを用いる構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、入力用光ファイバ11の本数及び配置は任意である。同様に、GIファイバ12の本数及び配置も任意である。
【0026】
また、本実施形態においては、GIファイバ12の作用及びテーパファイバ13の作用により、出力用光ファイバ14に入射する光のNAを小さくする構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、テーパファイバ13の作用のみにより出力用光ファイバ14に入射する光のNAを十分に小さくすることができるのであれば、GIファイバ12は省略しても構わない。
【0027】
また、本実施形態においては、入力用光ファイバ11及び出力用光ファイバ14として、1層のクラッドを有する光ファイバを例示しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、入力用光ファイバ11及び出力用光ファイバ14は、2層以上のクラッドをする光ファイバであってもよい。また、入力用光ファイバ11及び出力用光ファイバ14は、SI(Step Index)型の光ファイバであることを要さず、GI(Graded Index)型の光ファイバであってもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、高屈折率領域131が入射端面13aから出射端面13bまでテーパファイバ13を貫通する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、高屈率折領域131は、縮径部13B(の全部又は一部)のみに形成されていてもよいし、非縮径部13A(の全部又は一部)のみに形成されていてもよいし、非縮径部13Aと縮径部13Bとの境界を跨ぐように非縮径部13Aの一部と縮径部13Bの一部とに形成されていてもよい。
【0029】
〔テーパファイバの光学的構造〕
次に、テーパファイバ13の光学的構造について、
図2を参照して説明する。
図2の上段は、テーパファイバ13(の非縮径部13A)の横断面(中心軸に直交する断面)を示す断面図であり、
図2の下段は、テーパファイバ13の屈折率分布(中心軸に直交する直線L上の屈折率分布)を示すグラフである。
【0030】
本実施形態においては、入射端面13aから遠ざかるに従い内径及び外径が次第に小さくなる(ただし、非縮径部13Aにおいては、内径及び外径が一定)円筒状領域を高屈折率領域131としている。このため、各横断面における高屈折率領域131は、
図2の上段に示すように円環状領域となる。
【0031】
テーパファイバ13の屈折率分布は、テーパファイバ13の中心軸に対して軸対称であるため、テーパファイバ13の中心軸からの距離rの関数n(r)として表すことができる。テーパファイバ13の屈折率分布n(r)は、以下の式で与えられる。なお、
図2の下段に示したグラフは、α=2の場合のグラフである。
【0032】
n(r)=n(R)×[1−2×Δ×{(r−R)/a}
α]
1/2
ここで、R−a及びR+aは、注目している横断面における高屈折率領域131の内径及び外径であり、Δは、(n
peak−n
core)/n
peakにより定義される比屈折率差である。n(r)は、r=Rにおいて最大値npearを取るので、比屈折率差Δは、Δ=(n(R)−n
core)/n(R)と表すこともできる。
【0033】
図2の上段の断面図においては、GIファイバ12の出射端面12bの外縁を点線で示している。同図に示すように、本実施形態においては、GIファイバ12の出射端面12bの中心が高屈折率領域131と重なるように、GIファイバ12の出射端面12bをテーパファイバ13の入射端面13aに接合する構成が採用されている。更に具体的に言えば、GIファイバ12の出射端面の中心が高屈折率領域131において屈折率が最大となる部分(半径Rの円)と重なるように、GIファイバ12の出射端面12bをテーパファイバ13の入射端面13aに接合する構成が採用されている。このため、GIファイバ12から出射した光の大部分は、テーパファイバ13の高屈折率領域131に入射する。したがって、高屈折率領域131が存在しない場合と比べて、テーパファイバ13から出射する光のうち、NAが出力用光ファイバ14のNAを超える光の割合が更に減少する。
【0034】
上述した屈折率分布は、比屈折率差Δ、GIピーク位置R、GI幅2a、及び指数αにより規定される。以下、これらのパラメータの好ましい数値範囲について説明する。
【0035】
図3は、テーパファイバ13から出射される光のNAの比屈折率差依存性を示すグラフである。なお、NAの算出にあたっては、GIピーク位置R=125μm、GI幅2a=135μm、指数α=2とした。また、GIファイバ12は、出射端面12bの中心がテーパファイバ13の中心軸から125μmとなる位置に接合した。
【0036】
図3から以下の事実が確かめられる。(1)高屈折率領域131が存在しないとき、すなわち、比屈折率差Δが0%であるとき、NAは0.049である。(2)比屈折率差Δが0%<Δ<0.076%であるとき、NAは0.049よりも小さい。
【0037】
これらの事実から、以下の結論が得られる。すなわち、比屈折率差Δが0%<Δ<0.076%を満たせば、高屈折率領域131が存在しない場合と比べて、テーパファイバ13から出射される光NAを小さくすることができる。
【0038】
図4は、テーパファイバ13から出射される光のNAのGIピーク位置依存性を示すグラフである。なお、NAの算出にあたっては、比屈折率差Δ=0.015%、GI幅2a=135μm、指数α=2とした。また、GIファイバ12は、出射端面12bの中心がテーパファイバ13の中心軸から125μmとなる位置に接合した。
【0039】
図4から以下の事実が確かめられる。(1)GIピーク位置RがGIファイバ12の中心に一致しているとき、すなわち、GIピーク位置Rが125μmであるとき、NAは最小となる。(2)GIピーク位置Rが小さくなるに従って、NAは次第に大きくなる。ただし、GIファイバ12の出射端面の少なくとも一部が高屈折率領域131に重なっている限り、NAが0.049を超えることはない。
【0040】
これらの事実から、以下の結論が得られる。すなわち、GIファイバ12の出射端面の少なくとも一部が高屈折率領域131に重なっている限り、GIピーク位置Rがどのような値であっても、高屈折率領域131が存在しない場合と比べて、テーパファイバ13から出射される光NAを小さくすることができる。
【0041】
図5は、テーパファイバ13から出射される光のNAのGI幅依存性を示すグラフである。なお、NAの算出にあたっては、比屈折率差Δ=0.015%、GIピーク位置R=125μm、指数α=2とした。また、GIファイバ12は、出射端面12bの中心がテーパファイバ13の中心軸から125μmとなる位置に接合した。
【0042】
図5から以下の事実が確かめられる。すなわち、GIピーク位置RがGIファイバ12の中心に一致している場合、GI幅2aを変化させても、NAは殆ど変化しない。この事実から、以下の結論が得られる。すなわち、GIピーク位置RがGIファイバ12の中心に一致している場合、GI幅2aがどのような値であっても、高屈折率領域131が存在しない場合と比べて、テーパファイバ13から出射される光NAを小さくすることができる。
【0043】
図6は、テーパファイバ13から出射される光のNAの指数α依存性を示すグラフである。なお、NAの算出にあたっては、比屈折率差Δ=0.015%、GIピーク位置R=125μm、GI幅2a=135μmとした。また、GIファイバ12は、出射端面12bの中心がテーパファイバ13の中心軸から125μmとなる位置に接合した。
【0044】
図6から以下の事実が確かめられる。すなわち、少なくともα=1、2、3、4、5、10のとき、NAが0.049を超えることはない。この事実から、以下の結論が予測される。すなわち、αがどのような値(1以上の任意の実数)であっても、高屈折率領域131が存在しない場合と比べて、テーパファイバ13から出射される光NAを小さくすることができる。
【0045】
なお、α=1の場合、テーパファイバ13の屈折率分布n(r)は、
図7の(a)に示すようになり、α=∞の場合、テーパファイバ13の屈折率分布n(r)は、
図7の(b)に示すようになる。いずれの場合であっても、高屈折率領域131が存在しない場合と比べて、テーパファイバ13から出射される光NAを小さくすることができる。
【0046】
〔変形例1〕
次に、テーパファイバ13の第1の変形例について、
図8を参照して説明する。
図8の上段は、本変形例に係るテーパファイバ13(の非縮径部13A)の横断面(中心軸に直交する断面)を示す断面図であり、
図8の下段は、本変形例に係るテーパファイバ13の屈折率分布(中心軸に直交する直線L上の屈折率分布)を示すグラフである。
【0047】
本変形例においては、入射端面13aから遠ざかるに従い内径及び外径が次第に小さくなる(ただし、非縮径部13Aにおいては、内径及び外径が一定)円柱状領域の集合を高屈折率領域131としている。このため、各横断面における高屈折率領域131は、
図8の上段に示すように、同心円上に配置された円状領域の集合になる。
【0048】
各高屈折率領域131の屈折率分布は、その高屈折率領域131の中心軸に対して軸対称であるため、その高屈折率領域131の中心軸からの距離r’の関数n(r’)として表すことができる。各高屈折率領域131の屈折率分布n(r’)は、以下の式で与えられる。なお、
図8の下段に示したグラフは、α=2の場合のグラフである。
【0049】
n(r’)=n(0)×{1−2×Δ×(r’/a)
α}
1/2
ここで、aは、注目している横断面における高屈折率領域131の直径であり、Δは、(n
peak−n
core)/n
peakにより定義される比屈折率差である。n(r’)は、r’=0において最大値n
pearを取るので、比屈折率差Δは、Δ=(n(0)−n
core)/n(0)と表すこともできる。
【0050】
図8の上段の断面図において、GIファイバ12(中心に配置されたものを除く)の出射端面12bの外縁は、各高屈折率領域131の断面の外縁に一致する。すなわち、同図に示すように、本実施形態においては、GIファイバ12の出射端面12bの中心が高屈折率領域131と重なるように、GIファイバ12の出射端面12bをテーパファイバ13の入射端面13aに接合する構成が採用されている。更に具体的に言えば、GIファイバ12の出射端面の中心が高屈折率領域131において屈折率が最大となる部分(半径Rの円)と重なるように、GIファイバ12の出射端面12bをテーパファイバ13の入射端面13aに接合する構成が採用されている。このため、GIファイバ12から出射した光の大部分は、テーパファイバ13の高屈折率領域131に入射する。したがって、高屈折率領域131が存在しない場合と比べて、テーパファイバ13から出射する光のうち、NAが出力用光ファイバ14のNAを超える光の割合が更に減少する。
【0051】
〔変形例2〕
次に、テーパファイバ13の第2の変形例について、
図9を参照して説明する。
図9の上段は、本変形例に係るテーパファイバ13(の非縮径部13A)の横断面(中心軸に直交する断面)を示す断面図であり、
図9の下段は、本変形例に係るテーパファイバ13の屈折率分布(中心軸に直交する直線L上の屈折率分布)を示すグラフである。
【0052】
本変形例においては、入射端面13aから遠ざかるに従い内径及び外径が次第に小さくなる(ただし、非縮径部13Aにおいては、内径及び外径が一定)2重の円筒状領域を高屈折率領域131としている。このため、各横断面における高屈折率領域131は、
図9の上段に示すように、2重の円環状領域になる。
【0053】
テーパファイバ13の屈折率分布は、テーパファイバ13の中心軸に対して軸対称であるため、テーパファイバ13の中心軸からの距離rの関数n(r)として表すことができる。テーパファイバ13の屈折率分布n(r)は、以下の式で与えられる。なお、
図9の下段に示したグラフは、α=2の場合のグラフである。
【0054】
n(r)=n(R1)×[1−2×Δ×{(r−R1)/a}
α]
1/2
+n(R2)×[1−2×Δ×{(r−R2)/a}
α]
1/2
ここで、R1−a及びR1+aは、注目している横断面における内周側の高屈折率領域131aの内径及び外径であり、R2−a及びR2+aは、注目している横断面における外周側の高屈折率領域131bの内径及び外径である。Δは、(n
peak−n
core)/n
peakにより定義される比屈折率差である。n(r)は、r=R1とr=R2において最大値npearを取るので、比屈折率差Δは、Δ=(n(R1)−n
core)/n(R1)=(n(R2)−n
core)/n(R2)と表すこともできる。
【0055】
図9の上段の断面図においては、GIファイバ12の出射端面12bの外縁を点線で示している。同図に示すように、本実施形態においては、GIファイバ12の出射端面12bの中心が高屈折率領域131と重なるように、GIファイバ12の出射端面12bをテーパファイバ13の入射端面13aに接合する構成が採用されている。更に具体的に言えば、GIファイバ12の出射端面の中心が高屈折率領域131において屈折率が最大となる部分(半径Rの円)と重なるように、GIファイバ12の出射端面12bをテーパファイバ13の入射端面13aに接合する構成が採用されている。このため、GIファイバ12から出射した光の大部分は、テーパファイバ13の高屈折率領域131に入射する。したがって、高屈折率領域131が存在しない場合と比べて、テーパファイバ13から出射する光のうち、NAが出力用光ファイバ14のNAを超える光の割合が更に減少する。
【0056】
なお、
図9においては、1本のGIファイバ12の周りを6本のGIファイバ12で取り囲み、更に、その周りを12本のGIファイバ12で取り囲む構成を例示したが、本変形例はこれに限定されない。すなわち、1本のGIファイバ12の周りを取り囲むGIファイバ12の本数、及び、さらにその周りを取り囲むGIファイバ12の本数は任意である。
【0057】
〔レーザ装置〕
最後に、本実施形態に係る光カプラ1を備えたレーザ装置100について、
図10を参照して説明する。
図10は、レーザ装置100の構成を示すブロック図である。
【0058】
レーザ装置100は、
図10に示すように、複数の光源101と、光カプラ1と、エンドキャップ102とを備えている。
【0059】
光源101は、レーザ光を出力するための構成であり、例えば、LD(Laser Diode)である。LDと増幅用ファイバとを備えたファイバレーザを光源として用いても構わない。各光源101には、光カプラ1を構成する入力用光ファイバ11が接続されており、各光源101から出力されたレーザ光は、光カプラ1を構成する入力用光ファイバ11に入力される。
【0060】
光カプラ1は、各光源101から出力されたレーザ光を合波するための構成である。光カプラ1の構成は、
図1を参照して説明した通りであるので、ここではその説明を繰り返さない。光カプラ1を構成する出力用光ファイバ14には、エンドキャップ102が接続されており、光カプラ1を構成する出力用光ファイバ14から出力された光は、エンドキャップ102を介してワーク(照射対象物)に照射される。
【0061】
エンドキャップ102は、ワークにて反射されたレーザ光が出力用光ファイバ14に再入射することを防止するための構成である。
【0062】
レーザ装置100において、出力用光ファイバ14に入射するレーザ光は、数W〜数十Wのハイパワーなレーザ光である。しかしながら、光カプラ1では、出力用光ファイバ14に入射するレーザ光のNAが従来よりも小さく、その結果、出力用光ファイバ14から漏出するレーザ光のパワーが従来よりも小さくなるので、出力用光ファイバ14の劣化や焼損といった問題が生じ難い。
【0063】
(その他好ましい形態)
本実施の形態に係る光カプラは、複数の光ファイバと、入射端面に各光ファイバの端面が接合されたテーパファイバであって、出射端面におけるコア径が上記入射端面におけるコア径よりも小さいテーパファイバとを備え、上記テーパファイバは、屈折率がn
coreであるコアの内部に形成された、屈折率がn
coreよりも大きい高屈折率領域を有しており、各光ファイバの上記端面と上記テーパファイバの上記入射端面とは、該光ファイバの上記端面の少なくとも一部が上記テーパファイバの上記高屈折率領域の断面と重なるように接合されていてもよい。
【0064】
上記の構成によれば、各光ファイバから出射した光の少なくとも一部は、テーパファイバの高屈折率領域に入射する。高屈折率領域に入射した光は、高屈折率領域に留まる傾向にあるため、高屈折率領域は、テーパファイバの縮径部を伝播する光の広がりを抑えることができる。つまり、高屈折率領域は、入射した光のNAが増大するのを抑制する方向に作用する。したがって、テーパファイバから出射する光の少なくとも一部は、高屈折率領域が存在しない場合と比べて、NAが小さくなる。これにより、テーパファイバから出射される光のうち、NAが出
力用光ファイバのNAを超える光の割合が従来よりも小さくなる。
【0065】
本実施の形態に係る光カプラにおいて、各光ファイバの上記端面と上記テーパファイバの上記入射端面とは、該光ファイバの上記端面の中心が上記高屈折率領域の断面と重なるように接合されていてもよい。
【0066】
上記の構成によれば、各光ファイバから出射した光の大部分は、テーパファイバの高屈折率領域に入射する。上述したとおり、高屈折率領域は、入射した光のNAが増大するのを抑制する方向に作用する。したがって、テーパファイバから出射する光の大部分は、高屈折率領域が存在しない場合と比べて、NAが小さくなる。これにより、テーパファイバから出射される光のうち、NAが出
力用光ファイバのNAを超える光の割合が更に小さくなる。
【0067】
本実施の形態に係る光カプラにおいては、上記高屈折率領域の屈折率の最大値をn
peakとし、(n
peak−n
core)/n
peakにより定義される比屈折率差をΔとし、上記比屈折率差Δに応じて決まる、上記テーパファイバを伝播する光のNAをNA(Δ)として、上記比屈折率差ΔがNA(Δ)<NA(0)を満たすように定められていてもよい。
【0068】
上記の構成によれば、テーパファイバから出射する光のNAを、確実に、高屈折率領域が存在しない場合よりも小さくすることができる。
【0069】
本実施の形態に係る光カプラにおいては、上記比屈折率差Δが0.076%よりも小さくてもよい。
【0070】
上記の構成によれば、テーパファイバから出射する光のNAを、確実に、高屈折率領域が存在しない場合よりも小さくすることができる。
【0071】
本実施の形態に係る光カプラにおいて、上記高屈折率領域は、上記入射端面から遠ざかるに従い内径及び外径が次第に小さくなる円筒状領域であってもよい。
【0072】
上記の構成によれば、上記複数の光ファイバが環状に配置されている場合に、これらの光ファイバの端面と重なる高屈折率領域を形成が容易な単一の領域として実現することができる。
【0073】
本実施の形態に係る光カプラにおいて、上記円筒状領域の屈折率分布は、上記テーパファイバの中心軸に対して軸対称であり、上記中心軸に直交する断面における上記円筒状領域の屈折率分布n(r)(rは上記テーパファイバの中心軸からの距離)は、該断面における上記円筒状領域の内径及び外径をR−a及びR+aとし、(n(R)−n
core)/n(R)により定義される比屈折率差をΔとし、αを1以上の任意の実数として、n(r)=n(R)×[1−2×Δ×{(r−R)/a}
α]
1/2により与えられてもよい。
【0074】
上記の構成によれば、テーパファイバから出射する光のNAを、確実に、高屈折率領域が存在しない場合よりも小さくすることができる。
【0075】
本実施の形態に係る光カプラにおいて、上記高屈折率領域は、上記入射端面から遠ざかるに従い直径が次第に小さくなる円柱状領域の集合であってもよい。
【0076】
上記の構成によれば、上記複数の光ファイバが環状に配置されている場合に、これらの光ファイバの各々の端面と重なる高屈折率領域を最小限の体積で実現することができる。
【0077】
本実施の形態に係る光カプラにおいて、上記円柱状領域の屈折率分布は、該円柱状領域の中心軸に対して軸対称であり、上記中心軸に直交する断面における上記円柱状領域の屈折率分布n(r’)(r’は上記円柱状領域の中心軸からの距離)は、該断面における上記円柱状領域の直径をaとし、(n(0)−n
core)/n(0)により定義される比屈折率差をΔとし、αを1以上の任意の実数として、n(r’)=n(0)×{1−2×Δ×(r’/a)
α}
1/2により与えられてもよい。
【0078】
上記の構成によれば、テーパファイバから出射する光のNAを、確実に、高屈折率領域が存在しない場合よりも小さくすることができる。
【0079】
なお、上述した光カプラを備えたレーザ装置も本実施の形態の範疇に含まれる。また、上述した光カプラが備えているテーパファイバも本実施の形態の範疇に含まれる。
【0080】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。