(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒形状または円板形状に形成された金属製の被処理物を先端側に保持し、且つ、軸心回りに回転自在とされた回転軸を備えた表面処理装置を用いて、前記回転軸の先端側に保持された前記被処理物に電力を付与しつつ前記被処理物の外周側の一部に電気化学的な表面処理を行うに際しては、
前記回転軸の中途側又は基端側に、当該回転軸の先端側を基端側に対して上下方向に揺動させる揺動機構を設けると共に、前記回転軸の下方に前記被処理物に表面処理を行う表面処理液を収容した表面処理槽を設けておき、
前記回転軸の先端側が基端側よりも下方に位置するチルトダウン姿勢に前記回転軸を揺動させつつ、前記回転軸を回転させることにより、
前記被処理物の外周側の一部のみに前記表面処理液を用いた電気化学的な表面処理を行う
ことを特徴とする表面処理方法。
前記表面処理装置に、前記被処理物を表面処理する電力を発生する電源と、前記回転軸の先端側と前記揺動機構の間に前記回転軸に電力を供給する給電部と、当該給電部と前記被処理物との間に設けられて、前記回転軸の軸心と交差する方向に広がる液止板と、を設けておき、
前記チルトアップ姿勢の際に前記被処理物から垂れ落ちた表面処理液が前記給電部に入り込むことを前記液止板で防止しつつ前記被処理物の表面処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、高級セダンやスポーツカーには、車重の軽量化や外観のドレスアップを目的にアルミなどを用いた車両用ホイールが装着されることがある。このような車両用ホイールは、一般にアルミなどの金属の表面にシルバー、ゴールド、ブラック、ホワイトといったモノトーンの塗装等が行われていることが多い。
ところが、昨今はシャーシ側の塗装にカラフルなものを用いる場合が増えており、従来から多用されてきたシルバー、ゴールド、黒、白といったモノトーン色に加えて、ホイールの一部に赤、青、緑、黄色といった鮮やかな色彩を配したいというニーズも高まっている。
【0003】
さらに、ホイールのメーカによっては、自社のロゴやブランド名などの標章を鮮やかな色彩で目立たせて、商品の高級感を高めたり、自社ブランドのイメージアップを図ったりすることを望む場合もある。
このようにホイールの大部分をモノトーンの色彩として、一部だけを別の色彩とする多色の塗装を行う場合、テープなどをマスキングとして用いてまず標章以外の部分にモノトーンの塗装を行い、次にマスキングされた標章の部分に鮮やかな色彩の塗装を行う方法が考えられる。
【0004】
ただ、マスキングを用いた塗装方法は、一般に標章のような小さくて入り組んだ対象物には不向きである。マスキングを行ってもテープなどの隙間から標章の部分まで塗装液などが浸み込み、結果として文字や図形などの輪郭がぼけてしまう場合も少なくないからである。
そこで、マスキングを用いることなく多色の塗装を行う方法として、特許文献1に示すような塗装方法がすでに開発されている。
【0005】
すなわち、特許文献1の車両用ホイールに用いられる塗装方法は、ディスク部全体(ホイール全体)に形成したベースコート塗膜の上に第1の色の塗膜を形成した後に、スポーク側面の一部又は/及びディスク面の一部を削ってディスク部の母材金属を露出させて金属露出部を形成し、この金属露出部に対して第1の塗膜とは異なる色の第2の電着塗料を電着塗装して第2の色の塗膜を形成したものとなっている。このように研磨や研削で形成された金属露出部に電着塗装で第2の色の塗膜を形成すれば、マスキングを行わないので塗装液の浸み込みを気にする必要はない。そのため、特許文献1の技術を用いれば、鮮やかな色彩の文字や図形をくっきりとした輪郭をもって車両用ホイールの表面に塗装することができ、デザイン性や意匠性に優れた車両用ホイールを得ることも可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、実際に車両用ホイールに対して電着塗装を行う場合には、一般に
図6に示すような装置が用いられる。
すなわち、
図6に示す電着塗装の装置は、車両用ホイールをその回転軸が上下方向に向くようにして横倒し状態として、車両用ホイールが完全に液中に没するまで電着塗装の処理液(表面処理液)中に浸漬する。そして、液中に浸漬させた状態で車両用ホイールを回転させ、さらに処理液が入れられた処理槽と回転軸との間に電流を流せば、車両用ホイールに対して電着塗装を行うことが可能となる。
【0008】
ところが、車両用ホイールを完全に処理液中に浸漬させる
図6の装置の場合、車両用ホイールを十分に浸漬できるように、槽内に予め大量の処理液を用意しておくことがどうしても必要となる。つまり、従来の装置を用いた電着塗装方法では、電着塗装する面積が小さくても、処理液を最初から大量に用意することが必要となる。
また、塗装が終了した車両用ホイールを槽から引き上げる際には、車両用ホイールと一緒に大量の処理液が持ち出されるため、塗装面積が小さいにもかかわらず大量の処理液が1回の処理で失われることとなり、無駄に使用される処理液の量も多くなるという問題もある。
【0009】
このように処理液を大量に準備しなくてはならなくなったり処理液が無駄に使用されたりするという問題は、けっして車両用ホイールに限った問題という訳ではない。円板状や円筒状に形成された他の被処理物、例えばホイールカバーのような被処理物であっても、その一部に電着塗装を行う場合であれば、同様な問題が発生することは十分に考えられる。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、円筒形状または円板形状に形成された金属製の被処理物の一部だけに電気化学的な表面処理を行う際に、準備しなくてはならない表面処理液の量や使用毎に持ち出される表面処理液の量を可能な限り少なくして、表面処理液の使用量を低減しつつ処理を行うことができる表面処理方法及び表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の表面処理方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の表面処理方法は、円筒形状または円板形状に形成された金属製の被処理物を先端側に保持し、且つ、軸心回りに回転自在とされた回転軸を備えた表面処理装置を用いて、前記回転軸の先端側に保持された前記被処理物に電力を付与しつつ前記被処理物の外周側の一部に電気化学的な表面処理を行うに際しては、前記回転軸の中途側又は基端側に、当該回転軸の先端側を基端側に対して上下方向に揺動させる揺動機構を設けると共に、前記回転軸の下方に前記被処理物に表面処理を行う表面処理液を収容した表面処理槽を設けておき、前記回転軸の先端側が基端側よりも下方に位置するチルトダウン姿勢に前記回転軸を揺動させつつ、前記回転軸を回転させることにより、前記被処理物の外周側の一部
のみに前記表面処理液を用いた電気化学的な表面処理を行うことを特徴とする。
【0012】
なお、好ましくは、前記揺動機構は、前記回転軸の先端側が基端側よりも上方に位置するチルトアップ姿勢に、前記回転軸を揺動可能とされており、前記チルトダウン姿勢からチルトアップ姿勢に前記回転軸の姿勢を変更するに際しては、前記被処理物が前記表面処理液の液面から離れたところで、前記姿勢の変更を一旦停止し、前記揺動機構によって回転軸を
前記揺動よりも短いピッチで上下に振動させつつ、回転駆動機構によって回転軸を回転させることにより、前記被処理物の表面に残った表面処理液をはじき飛ばして排除するとよい。
【0013】
なお、好ましくは、前記表面処理装置に、前記被処理物を表面処理する電力を発生する電源と、前記回転軸の先端側と前記揺動機構の間に前記回転軸に電力を供給する給電部と、当該給電部と前記被処理物との間に設けられて、前記回転軸の軸心と交差する方向に広がる液止板と、を設けておき、前記チルトアップ姿勢の際に前記被処理物から垂れ落ちた表面処理液が前記給電部に入り込むことを前記液止板で防止しつつ前記被処理物の表面処理を行うとよい。
【0014】
なお、好ましくは、前記表面処理が電着塗装であり、前記被処理物が車両用ホイールであるとよい。
なお、好ましくは、前記車両用ホイールの外周側表面には、当該表面から突出した凸部を備える標章が形成されており、前記凸部の突端に対して前記電着塗装を行うとよい。
なお、好ましくは、前記車両ホイールにおける前記標章が設けられた側の裏面に対して前記回転軸の先端側に設けられた取付部から給電を行うとよい。
【0015】
なお、好ましくは、前記表面処理方法は、前記車両ホイールの全面に塗料を塗る下塗工程と、前記凸部の突端を研磨して突端以外の塗膜を残したまま突端の金属面を露出させる研磨工程と、を備えており、前記電着塗装を前記研磨工程で露出した金属面に実施するとよい。
一方、本発明の表面処理装置は、導電性を備えた材料を用いて長尺に形成された回転軸と、前記回転軸の中途側に設けられて、前記回転軸の軸心回りに当該回転軸を回転させる回転駆動機構と、前記回転軸の中途側或いは基端側に設けられて、水平方向を向く軸周りに前記回転軸の先端側を上下方向に揺動させる揺動機構と、前記回転軸の中途側或いは基端側に表面処理のための電力を供給する電源と、前記回転軸の先端に設けられて円筒形状または円板形状に形成された金属製の被処理物を保持すると共に前記回転軸を介して送られてきた電力を前記被処理物に与える取付部と、前記回転軸の先端側の下方に配備され且つ表面処理液が溜められた表面処理槽と、を有した表面処理装置であって、前記揺動機構は、前記回転軸の先端側が基端側よりも下方に位置するチルトダウン姿勢に前記回転軸を揺動可能とされており、前記回転駆動機構は、前記チルトダウン姿勢とされた回転軸を回転可能とされていて、前記被処理物の外周側の一部を前記表面処理液中に浸漬させると共に、前記被処理物の残りの部分を前記表面処理液の外側に保持したまま、当該外周側の一部に対して電気を用いた表面処理を行う構成とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表面処理方法及び表面処理装置によれば、円筒形状または円板形状に形成された金属製の被処理物の一部だけに電気化学的な表面処理を行う際に、準備しなくてはならない表面処理液の量や使用毎に持ち出される表面処理液の量を可能な限り少なくして、表面処理液の使用量を低減しつつ処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の表面処理方法及び表面処理装置1の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
本実施形態の表面処理方法及び表面処理装置1は、円筒形状または円板形状に形成された金属製の被処理物Wの一部に対して表面処理液2を用いた電気化学的な表面処理、例えば電着塗装や電気メッキなどの表面処理を行うものであり、表面処理の際に使用される表面処理液2の使用量を低減可能なものとなっている。
【0019】
具体的には、
図1に示すように、本実施形態の表面処理装置1は、基礎面や床面Fに載置される装置本体4と、この装置本体4に対して水平方向を向く軸回りに揺動自在に取り付けられた回転体5と、を備えている。この回転体5には、さらに長尺に形成された回転軸6と、回転軸6の軸心回りに当該回転軸6を回転させる回転駆動機構7と、回転軸6の先端に設けられて金属製の被処理物Wを保持する取付部8と、が設けられている。上述した回転体5と装置本体4との間には、装置本体4に対して回転体5を揺動させる揺動機構10が設けられており、揺動機構10を用いることで回転体5を揺動させることにより回転軸6は傾斜角度を変更できるようになっている。
【0020】
また、表面処理装置1には、表面処理のための電力を供給する電源11と、電源11の電力を回転軸6に供給する給電部12と、給電部12から給電されると共に回転軸6を介して送られてきた電力を被処理物Wに与える取付部8とが、設けられている。
さらに、表面処理装置1は、被処理物Wに表面処理を行う表面処理液2、本実施形態の場合であれば電着塗装の表面処理液2が溜められた表面処理槽9を備えている。この表面処理槽9は、回転軸6の先端側の下方に位置しており、回転軸6を揺動させることで回転軸6の先端側に取り付けられた被処理物Wを表面処理液2中に浸漬可能となっている。
【0021】
なお、本発明の表面処理方法には、電着塗装以外の処理、例えば電気メッキなどの処理も含まれる。しかし、以降の本実施形態では、表面処理として電着塗装を例に挙げて、本発明の表面処理方法及び表面処理装置1を説明する。
次に、本実施形態の表面処理装置1、言い換えれば本実施形態の電着塗装装置を構成する各部材について詳しく説明する。
【0022】
なお、以降の説明において、
図1の紙面貫通方向を、表面処理装置1の説明をする際の左右方向といい、また
図1の紙面上下方向を、上下方向という。さらに、
図1の紙面左右方向を、前後方向という。また、上述した方向については、適宜図面に矢印を用いて図示している。
まず、本実施形態の表面処理装置1で処理される被処理物Wについて説明を行う。
【0023】
被処理物Wは、円筒形状または円板形状に形成された部材であり、電気化学的な表面処理が可能となるようにアルミニウム合金等の金属を用いて形成されている。なお、以降に示す本実施形態の被処理物Wは車両用ホイールVであるが、本発明の表面処理が対象とする被処理物Wには、たとえばホイールカバーやブレーキディスクロータなどのような円筒形状または円板形状の金属部材を用いてもよい。
【0024】
本実施形態で表面処理を行う車両用ホイールVは、タイヤを車両に取り付けるために用いられる部材であり、円筒形状に形成された外周側にタイヤを嵌め込んで装着可能となっている。車両用ホイールVは、例えば車重の軽量化や外観のドレスアップを目的に高級セダンやスポーツカー等に装着される。
また、車両用ホイールVは、車両ハブと嵌合するディスク部Dと、ディスク部Dの外周側に設けられてタイヤを装着するリム部Rと、を有している。ディスク部Dの中央側には車両ハブと嵌合するハブ穴Hが形成されており、ハブ穴Hの外周側にはハブ穴Hから径外側に向かって伸びるスポーク部Sが形成されている。
【0025】
次に、上述した表面処理装置1に設けられる装置本体4、回転体5、揺動機構10、電源11、及び表面処理槽9について詳細に説明する。
図1、
図2、及び
図4に示すように、装置本体4は、上述した回転体5を揺動自在に支持する部材であり、揺動機構10の一部(揺動モータ18)が内部に収容可能な筺状に形成されている。装置本体4は、前後方向に幅のある上部材4U及び下部材4Dを、これら上部材4U及び下部材4Dよりも細首の接続部4Cで上下に接続した構造とされている。下部材4Dの下面は、平坦な面状に形成されていて、床面F等に面状態しつつ装置本体4を支持可能とされている。また、装置本体4の上部材4Uの内部には、ウォームギヤ19と、このウォームギヤ19と噛み合うウォームホイール20と、が収容されている。この装置本体4の上部材4Uには、ウォームギヤ19を回転させる駆動力を発生させる揺動モータ18が、前方に向かって張り出すように取り付けられている。装置本体4の上部材4Uと下部材4Dとの間には、上述した細首の接続部4Cが設けられており、この接続部4Cの側方(後方)には板状の補強用リブ21が形成されている。
【0026】
装置本体4の上部材4Uには、装置本体4を左右方向に貫通する揺動軸22が設けられており、この揺動軸22を介して上述した回転体5を左右方向を向く揺動軸22周りに揺動自在に支持している。
回転体5は、側方視が略長方形状とされた筺部材であり、上述した装置本体4の左側に隣接して配備されると共に、装置本体4に対して揺動軸22の軸心周りに揺動自在に支持されている。また、回転体5は、回転軸6の軸心回りに当該回転軸6が回転自在となるように回転軸6を支持している。
【0027】
図1の姿勢を例にとれば、回転体5の後側側面と前側側面との双方を連通状態で貫通するように、上述した回転軸6が回転体5に取り付けられている。具体的には、回転体5の後側側面に設けられた後側軸受23と前側側面に設けられた前側軸受24との2つの軸受で、回転体5は回転軸6を回転自在に支持している。
また、回転体5の左右両側面の中央側には、装置本体4側(左側)に向かって突出するように、上述した揺動軸22が取り付けられている。なお、この揺動軸22の軸心と回転軸6の軸心とは略直角に交差するように配備されている。
【0028】
さらに、回転体5の上側には、回転軸6を軸心回りに回転させる回転駆動機構7の回転駆動モータ25が、上方に向かって突出するように配備されている。この回転駆動モータ25の駆動軸25aの先端は回転体5の内部に伸びており、さらに駆動軸25aの先端には、回転駆動モータ25で発生した回転駆動力を回転軸6に伝達する傘歯車30、31が配備されている。
【0029】
図1〜
図3に示すように、回転軸6は、長尺に形成された丸棒状の部材であり、長手方向の中途側が上述した2つの軸受23、24により回転体5に回転可能に支持されている。回転軸6における長手方向の先端側には、車両用ホイールVを取り付ける取付部8が設けられており、車両用ホイールVを装着可能となっている。また、回転軸6における長手方向の基端側には、取付部8を作動させるためのアクチュエータ27が配備されている。
【0030】
具体的には、回転軸6は、内部が中空とされた外筒部材28と、外筒部材28の内部に長手方向にスライド自在に挿入されたシャフト部材29と、を有している。このシャフト部材29の先端は取付部8に連結されており、またシャフト部材29の基端はアクチュエータ27に連結されている。つまり、回転軸6では、アクチュエータ27を伸縮させるとシャフト部材29が回転軸6の長手方向にスライドし、シャフト部材29に連結された取付部8が拡径したり縮径したりして、取付部8による車両用ホイールVの固定が可能となっている。
【0031】
上述した回転軸6の長手方向中途側における回転体5の内部には、上述した回転駆動機構7を構成する傘歯車30、31が設けられている。
さらに、上述した回転軸6を構成する外筒部材28及びシャフト部材29のうち、いずれか一方、あるいは両部材とも、導電性を備えた金属などの材料を用いて形成されている。このように、外筒部材28またはシャフト部材29に導電性を備えた材料を用いれば、回転軸6を介して電力を車両用ホイールVに供給することが可能となり、表面処理のための電力を車両用ホイールVに供給することが可能となる。
【0032】
回転駆動機構7は、回転体5に取り付けられると共に回転体5の内部に駆動軸25aを伸ばす回転駆動モータ25と、回転駆動モータ25の駆動軸25aに取り付けられて回転駆動モータ25により回転駆動される第1傘歯車30、第1傘歯車30に噛み合うと共に回転軸6の中途側に設けられた第2傘歯車31と、を有している。具体的には、回転駆動モータ25の駆動軸25aの先端には上述した第1傘歯車30が取り付けられており、回転軸6の中途側には第1傘歯車30と直交状態で噛合する第2傘歯車31が取り付けられていて、回転駆動モータ25で発生した回転駆動力を回転軸6に伝達することで回転軸6が回転駆動可能とされている。この回転軸6の回転速度は、例えば0.1rpm〜10rpmとされるのが良い。
【0033】
取付部8は、回転軸6の先端側に車両用ホイールVを装着するために用いられる部材である。取付部8は、上述した車両用ホイールVのハブ穴Hに挿入されると共に、ハブ穴Hの内部において径外側に向かって拡径することで車両用ホイールVを外れないように固定可能とされている。
具体的には、取付部8は、径外側に向かって拡径可能なロック部材32と、このロック部材32を拡径させたり縮径させたりするテーパ部材33と、を有している。
【0034】
ロック部材32は、円筒状に形成された部材であり、その外径は、ハブ穴Hの内径とほぼ同じか、やや小さな外径となっていて、車両用ホイールVのハブ穴Hに内挿可能となっている。また、ロック部材32の外周面は、このロック部材32を拡径させた際にハブ穴Hの内周面に面状態で接触可能なように、ハブ穴Hの内周面とほぼ同じ曲率を有するように形成されている。
【0035】
ロック部材32の先端側には回転軸6の軸心と平行な方向に沿ってスリット状の切り込み40が形成されている。この切り込み40は、ロック部材32の周方向に複数形成されており、ロック部材32の径方向に沿った変形、言い換えればロック部材32が拡径したり縮径したりすることを可能としている。
ロック部材32の内周側には、回転軸6の基端側から先端側に向かうにつれて径が大きくなるようなテーパー面32aが形成されている。そして、このテーパー面32aのさらに内周側には、テーパー面32aと外周側で面状態で接触するテーパ部材33が設けられている。
【0036】
テーパ部材33は、基端側から先端側に向かうにつれて外径が徐々に大きくなる外周面33aを備えた略円筒状の部材であり、この外周面33aを上述したロック部材32の内周面(テーパー面32a)に面状態で接触可能とされている。テーパ部材33の基端側には上述したシャフト部材29が連結されており、シャフト部材29を回転軸6の軸心方向にスライドさせることで、テーパ部材33の外周面がロック部材32の内周面に面接触しつつ軸心方向に移動するため、ロック部材32が径外側に向かって拡径したり縮径したりする。
【0037】
なお、回転軸6の基端側のアクチュエータ27には、基端側に向かってシャフト部材29を縮退させる方向に付勢する付勢部材36が設けられており、アクチュエータ27に供給している空気や油などの圧力媒体の圧力を低下させると、付勢部材36の付勢力が優勢となってアクチュエータ27を縮退させることが可能となっている。
さらに、取付部8を構成するテーパ部材33及びロック部材32は、回転軸6と同様に導電性を備えた金属などの材料を用いて形成されており、回転軸6から電動されてきた電力を外周側に面接触する車両用ホイールVに伝達する役割も担っている。
【0038】
揺動機構10は、上述した回転体5と装置本体4との間に設けられて、装置本体4に対して回転体5を左右方向を向く軸回りに揺動させるものである。具体的には、揺動機構10は、装置本体4の前側側面に張り出すように取り付けられた揺動モータ18と、この揺動モータ18から後方に向かって伸びる揺動モータ18の駆動軸18aの先端側に取り付けられたウォームギヤ19と、ウォームギヤ19に噛み合うと共に回転体5と一体回動するように取り付けられたウォームホイール20と、を備えている。つまり、揺動モータ18を駆動させると駆動軸のウォームギヤ19が回転し、ウォームギヤ19と噛み合うウォームホイール20が回転するため、回転体5を装置本体4に対してに揺動可能となっている。
【0039】
つまり、上述した揺動機構10を用いて揺動モータ18を一方向に回転させると、回転体5が装置本体4に対して左右方向を向く揺動軸22周りに一方側に向かって揺動し、先端側が基端側よりも下方に位置するように回転軸6が前下がり状態に傾斜した姿勢となる。この回転軸6の先端側が基端側よりも下方に位置する回転軸6の姿勢をチルトダウン姿勢という。このチルドダウン姿勢では、回転軸6の先端側に設けられた取付部8の高さが下がり、取付部8に取り付けられた車両用ホイールVの位置も低くなるため、車両用ホイールVの外周側の一部を表面処理槽9に溜められた表面処理液2に浸漬可能となる。このチルドダウン姿勢としては、例えば回転軸6を水平方向に対して20°〜70°に傾斜するものとなっている。
【0040】
一方、上述した揺動機構10を用いて揺動モータ18を他方向に回転させると、回転体5が装置本体4に対して左右方向を向く揺動軸22周りに他方側に向かって揺動し、先端側が基端側よりも上方に位置するように回転軸6が前上がり状態に傾斜した姿勢となる。この回転軸6の先端側が基端側よりも上方に位置する回転軸6の姿勢をチルトアップ姿勢という。
【0041】
このように上述した揺動機構10は、回転軸6の姿勢を、チルトアップ姿勢とチルトダウン姿勢との間で切り替える構成ということもできる。
電源11は、被処理物Wを表面処理するための電力を発生するものである。この電源11からは、直流の電力が発生しており、配線42を介して一方の電極(陽極)が給電部12に接続されると共に、他方の電極(陰極)が表面処理槽9に接続されている。
【0042】
給電部12は、上述した直流の電力を回転軸6に供給するものであり、回転軸6(外筒部材28)を外周側から挟持する2枚一組の金属製の挟持体43と、これらの挟持体43同士を接離自在に案内するガイド部44と、挟持体43同士を常に近接する方向に向かって付勢する付勢手段45(バネ)と、を備えている。この給電部12に設けられる挟持体43には上述した配線42の一端が接続されており、給電部12は2枚の挟持体43の間に挟み込まれた回転軸6に配線42を通じて電力を供給可能となっている。
【0043】
表面処理槽9は、上方に向かって開口すると共に有底の容器であり、内部に表面処理液2を溜めることが可能となっている。この表面処理槽9は、回転軸6の先端側の下方に配備され、チルトダウン姿勢とされた回転軸6の先端に取り付けられた車両用ホイールVの外周側の一部を、内部に溜められた表面処理液2に浸漬可能とされている。また、表面処理槽9には、上述した配線42の他端が接続されている。
【0044】
ところで、一般にシルバー、ゴールド、ブラック、ホワイトといったモノトーンの塗装が多い車両用ホイールVを表面処理の被処理物Wとする場合、車両用ホイールVの一部に自社のロゴやブランド名などの標章Lを鮮やかな色彩で目立たせて、商品の高級感を高めたり、自社ブランドのイメージアップを図ったりすることを望む場合もある。
具体的には、上述した標章Lは、
図1に拡大図として示すようなものであり、車両用ホイールVの表面に、表面から突出した凸部38を形成しておき、凸部38の突端面に鮮やかな色彩などを電着塗装したものとなっている。また、標章Lは、これらの凸部38を組み合わせるなどして、車両用ホイールVを見た人がロゴやブランド名などの文字形状や図形形状を認識できるものとなっている。このような標章Lは、一般に車両用ホイールVの外周側、言い換えればリム部Rの外周側の表面に形成されることが多く、標章L以外の場所とは異なる色で電着塗装を行うものとなっている。
【0045】
つまり、上述した標章Lに電着塗装を行う場合には、まず標章Lを含む車両用ホイールVの全面に対してモノトーンなどの電着塗装を行うい、次にモノトーンなどの電着塗装が行われた標章Lに対して、塗料を塗工する下塗工程を行う。この下塗工程により塗装が行われた車両用ホイールVに対しては、標章Lを構成する凸部38の突端を研磨または研削して、突端以外の塗膜を残したまま突端の金属面41を露出させる研磨工程を行う。このようにして凸部38の突端が金属面41として露出した車両用ホイールVに対しては、従来の表面処理装置101を用いて鮮やかな色彩の塗膜を電着塗装で局部的に形成することができる。
【0046】
このとき、従来の表面処理装置101は、
図6に示すように、車両用ホイールVをその回転軸106が上下方向に向くようにして横倒し状態のまま表面処理液102中に完全に浸漬させ、液中に浸漬させた状態の車両用ホイールVを回転させつつ表面の一部(標章Lの突端)に電着塗装を行うものとなっている。
ところが、
図6のような装置構成で電着塗装を行うと、車両用ホイールVを完全に塗料中に浸漬させることが必要となるため、どうしても槽内には大量の塗料(表面処理液)を用意しておくことが必要となる。
【0047】
また、塗装が終了した車両用ホイールVを槽から引き上げる際には、車両用ホイールVと一緒に大量の塗料が持ち出されるため、塗装面積が小さいにもかかわらず大量の塗料が1回の処理で失われることとなり、無駄に使用される塗料の量も多くなるという問題もある。
そこで、本発明の表面処理方法では、回転軸6の先端側が基端側よりも下方に位置するチルトダウン姿勢に回転軸6を揺動させつつ、回転軸6を回転させることにより、被処理物Wの外周側の一部を表面処理液2中に浸漬させると共に、被処理物Wの残りの部分を表面処理液2の外側に保持したまま、当該外周側の一部に対して電気化学的な(電気を用いた)表面処理を行うものとなっている。つまり、本発明の表面処理方法は、回転軸6をチルトダウン姿勢に揺動させることにより、標章Lが形成される車両用ホイールVの外周側を、車両用ホイールVの他の部分よりもを可能な限り低くして、標章Lの突端に対して電着塗装を行うものとなっている。
【0048】
具体的には、本実施形態の表面処理方法は、
図5に示すような手順で行うのが好ましい。
すなわち、標章Lを含む車両用ホイールVの表面全面に塗料などを塗装し、次に標章Lの突端のみを研磨または研削して、金属面41を露出させる。このように標章Lの突端に金属面41が露出した車両用ホイールVに対して、「準備作業」としてまず異物の除去を行う。この異物の除去は圧縮空気を用いて車両用ホイールVの全体をエアーブローし、異物を吹き飛ばして除去するものである。
【0049】
次に、異物が除去された車両用ホイールVを、チルトアップ姿勢とされた回転軸6の取付部8に装着する。具体的には、車両用ホイールVのハブ穴Hの内部に取付部8を挿入し、取付部8を挿入した状態で回転軸6の基端側に設けられたアクチュエータ27を縮退させる。そうすると、アクチュエータ27に連結したシャフト部材29が回転軸6の基端側(アクチュエータ27側)に向かってスライドし、シャフト部材29の先端側に連結された取付部8のテーパ部材33も基端側に向かってスライドする。このとき、回転軸6の基端側に向かうテーパ部材33のスライドに合わせて、ロック部材32が径外側に向かって変形し、拡径したロック部材32によって車両用ホイールVが抜けないように固定されるため、車両用ホイールVを取付部8にセットすることが可能となる。
【0050】
このようにして車両用ホイールVが取付部8にセットされたら、給電部12を回転軸6に取り付け、電源11の陽極を配線42及び給電部12を介して回転軸6に電気的に接続する。また、電源11の陰極から伸びる配線42もクリップなどを用いて表面処理槽9に電気的に接続させる。このようにすれば、車両用ホイールVに通電が可能となるように準備する。
【0051】
配線42の接続後に、テスターなどを用いて導通が確保されているかどうかをチェックし、導通のチェック後に揺動機構10を用いてチルトアップ姿勢の回転軸6をチルトダウン姿勢に変更する。
具体的には、揺動モータ18を回転させてウォームギヤ19を回転駆動させる。そうすると、ウォームギヤ19に噛み合ったウォームホイール20がウォームギヤ19の回転に合わせて回転しようとする。しかし、ウォームホイール20は回転体5と一体回動可能とされているため、ウォームギヤ19を回転駆動させると回転体5自体が揺動軸22周りに揺動する。その結果、回転体5の揺動に合わせて回転体5に支持された回転軸6も揺動し、回転軸6の姿勢がチルトアップ姿勢からチルトダウン姿勢に変化する。
【0052】
チルトダウン姿勢では、車両用ホイールVの外周側に形成された標章Lのみが表面処理液2に浸漬し、標章L以外の部分が表面処理液2の液面よりも上側に位置するようになる。このチルトダウン姿勢で、「塗料なじみ」の作業として車両用ホイールVを一回転だけ回転させ、車両用ホイールVに残った気泡などを除去しつつ電着塗装の処理液に車両用ホイールVをなじませる。
【0053】
このようにして「塗料なじみ」の作業が終了したら、電源11から電力を車両用ホイールVに供給し、電着塗装を開始する。すなわち、車両ホイールの外周側のみを電着塗装の処理液(表面処理液3)に浸漬させ、電源11から車両用ホイールVに電力を供給しつつ車両用ホイールVを回転させ、標章Lの突端の金属面41に電着塗装を行う。このような処理条件で電着塗装を行えば、処理対象物である車両用ホイールVが回転しているため、処理液の攪拌を行わなくても均等に塗膜を形成することが可能となる。
【0054】
このようにして所定の時間に亘って電着塗装が行われた車両用ホイールVについては、揺動機構10を用いて回転軸6を揺動させ、回転軸6の姿勢をチルトダウン姿勢からチルトアップ姿勢に変更する。
この回転軸6の姿勢変更の際に、車両用ホイールV(被処理物W)が表面処理液3の液面から離れたところで、回転軸6の揺動動作を一旦停止する。そして、揺動機構10を用いて停止位置を中心に回転軸6を上下に振動させる。この回転軸6の振動は、揺動モータ18の回転方向を短いピッチで正逆で切り替えることで行われる。また、揺動機構10を用いて回転軸6を振動させつつ、回転駆動機構7によって回転軸6の回転も合わせて行う。具体的には、回転軸6の振動は、回転軸6を0.1回/分〜10回/分で振動させると良い。このようにすれば、車両用ホイールVの表面に残った表面処理液2をはじき飛ばして表面処理槽9に戻すことができ、表面処理槽9から持ち出される表面処理液2の量をさらに低減することができる。
【0055】
この表面処理液2のはじき飛ばしが終了したら、揺動機構10を用いて回転軸6を再びチルトアップ姿勢に揺動させ、次いで処理後の車両用ホイールVを回転軸6から取り外す。最後に、「洗浄」の工程で取り外された車両用ホイールVにシャワーをして洗浄を行い、洗浄後に表面に残った水滴などを拭き取った後、「焼き付け」の工程で塗膜の焼き付けなどを行う。以上の手順で車両用ホイールVに対する電着塗装が完了する。
【0056】
上述した表面処理方法であれば、車両用ホイールVの形状や標章Lが形成される位置によって効果が多少変化するものの、表面処理槽9に用意しなくてはならない表面処理液2の量は少なくすることができる。
すなわち、表面処理槽9に溜められる表面処理液2の量は、回転軸6がチルトダウン姿勢とされた際に、標章Lが十分に浸る程度の深さであって、且つ車両用ホイールVの下端が表面処理槽9の槽底に衝突しない程度の深さとされていればよい。そのため、車両用ホイールVを完全に浸漬可能な量の処理液は必要でなくなるため、処理液の量を大幅に低減することが可能となる。
【0057】
また、車両ホイールは外周側の一部しか表面処理液2に浸っていないため、表面処理後に車両ホイールを取り出しても表面処理液2の持ち出しはあまりない。そのため、上述した表面処理方法では、表面処理液2の使用量を可能な限り低くすることが可能となる。
さらに、揺動機構10によって回転軸6を上下に振動させつつ、回転駆動機構7によって回転軸6を回転させることにより、車両用ホイールVの表面に残った表面処理液2をはじき飛ばして排除すれば、槽外に持ち出される処理液の量も大幅に低減することが可能となる。
【0058】
そのため、本発明の表面処理方法では、最初から準備しなくてはならない表面処理液2の量や槽外に持ち出される処理液の量をさらに抑制して、表面処理液2の使用量を極めて低くすることが可能となる。
なお、好適には、上述した給電部12と被処理物Wとの間に、回転軸6の軸心と交差する方向に広がる液止板39を設けておき、チルトアップ姿勢の際に被処理物Wから垂れ落ちた表面処理液2が給電部12に入り込むことを液止板39で防止するとよい。
【0059】
具体的には、液止板39は、回転軸6の軸心に対して直交する方向に延びる円板状の部材であり、車両用ホイールVの外径とほぼ等しいか、車両用ホイールVの外径よりも小径な外径とされている。このような液止板39を設ければ、
図2に示すようなチルトアップ姿勢に回転軸6が傾斜した際に、車両用ホイールVの表面に残った表面処理液2が滴下しても、滴下した表面処理液2は液止板39に阻まれて揺動機構10や回転駆動機構7に達することがなく、滴下した表面処理液2により装置が腐食等することがない。
【0060】
最後に、本発明の表面処理装置1は、導電性を備えた材料を用いて長尺に形成された回転軸6と、回転軸6の中途側に設けられて、回転軸6の軸心回りに当該回転軸6を回転させる回転駆動機構7と、回転軸6の中途側或いは基端側に設けられて、水平方向を向く軸周りに回転軸6の先端側を上下方向に揺動させる揺動機構10と、回転軸6の中途側或いは基端側に表面処理のための電力を供給する電源11と、回転軸6の先端に設けられて円筒形状または円板形状に形成された金属製の被処理物Wを保持すると共に回転軸6を介して送られてきた電力を被処理物Wに与える取付部8と、回転軸6の先端側の下方に配備され且つ表面処理液2が溜められた表面処理槽9と、を有した表面処理装置1である。そして、揺動機構10は、回転軸6の先端側が基端側よりも下方に位置するチルトダウン姿勢に前記回転軸6を揺動可能とされており、回転駆動機構7は、チルトダウン姿勢とされた回転軸6を回転可能とされている。また、被処理物Wの外周側の一部を表面処理液2中に浸漬させると共に、被処理物Wの残りの部分を表面処理液2の外側に保持したまま、当該外周側の一部に対して電気を用いた表面処理を行う構成とされていることを特徴とするものとなっている。
【0061】
このような表面処理装置1であれば、円筒形状または円板形状に形成された金属製の被処理物Wの一部だけに電気化学的な表面処理を行う際に、準備しなくてはならない表面処理液2の量や使用毎に持ち出される表面処理液2の量を可能な限り少なくして、表面処理液2の使用量を低減しつつ処理を行うことができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0062】
例えば、上述した実施形態では揺動モータ18の回転方向を切り換えることで車両用ホイールV(被処理物W)に振動を加える構成を例示した。しかし、回転軸6を振動させる手段は、揺動モータ18でなくても良い。回転軸6や回転軸6の近傍にエアシリンダーや電動モータを用いた振動手段を別途設けておき、この振動手段を用いて回転軸6を振動を発生させても良い。
【0063】
また、上述した実施形態では、電着塗装後の車両用ホイールVを表面処理装置1から装置外に搬出する際に、回転軸6をチルトダウン姿勢からチルトアップ姿勢に一旦切り換えた後、車両用ホイールVを搬出していた。しかし、電着塗装後の車両用ホイールVを搬出する際には、回転軸6をチルトダウン姿勢に保持したまま、垂直方向を向く軸回りに回転軸6を回動させて車両用ホイールVを水平移動させつつ搬出を行っても良い。このような搬出機構の場合には、車両用ホイールVの回動経路上に洗浄槽などを設けておくことで、搬出途中に車両用ホイールVの洗浄などの処理を行うことも可能となる。
【0064】
さらに、上述した垂直方向を向く軸回りに回転軸6を回動させる実施形態では、表面処理槽9を上下移動可能としたり揺動可能としたりすることもできる。例えば、電着塗装後の車両用ホイールVを表面処理装置1から搬出する際に、表面処理槽6を下降させるか、表面処理槽6を少し下方に傾けるようにする。このようにすれば、表面処理槽9の位置が下方に下がり、回動時に表面処理槽9の槽壁が移動する車両用ホイールVの邪魔にならなくなり、車両用ホイールVのスムーズな回動や搬出が可能となる。
【解決手段】本発明の表面処理方法は、円筒形状または円板形状に形成された金属製の被処理物Wを先端側に保持し、且つ、軸心回りに回転自在とされた回転軸6を備えた表面処理装置1を用いて、回転軸6の先端側に保持された被処理物Wに電力を付与しつつ被処理物Wの外周側の一部に電気化学的な表面処理を行うに際しては、回転軸6の中途側又は基端側に、当該回転軸の先端側を基端側に対して上下方向に揺動させる揺動機構10を設けると共に、回転軸6の下方に被処理物Wに表面処理を行う表面処理液2を収容した表面処理槽9を設けておき、回転軸6の先端側が基端側よりも下方に位置するチルトダウン姿勢に回転軸6を揺動させつつ、回転軸6を回転させることにより、被処理物Wの外周側の一部に対して表面処理液2を用いた電気化学的な表面処理を行う。