【実施例】
【0043】
実施例1−(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルカルボンアジドの調製
70mlのTHFにおける26グラムのトリホスゲン及び18グラムの炭酸ナトリウムの混合物を0℃に冷却し、この温度で30分間撹拌した。その後、70mlのTHFにおける20グラムの4−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オンを30分の期間にわたってゆっくり加えた。反応混合物を夜間の間、室温で撹拌した。形成された塩をろ過によって除き、溶媒を減圧下で除いて、工業的に純粋な2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルカルボノクロリダートである27グラムの無色のオイルを得た。
【化7】
【0044】
2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルカルボノクロリダート(2g、11.08mmol)を7mlのアセトンに溶解し、−10℃に冷却した。8mlの水における0.791gのアジ化ナトリウムの溶液をこの冷却された溶液に15分かけて滴下して加えた。混合物を0℃〜−10℃の間の温度で2時間撹拌した。白色固体が形成された。氷水(50g)を混合物に加え、白色固体をろ過し、水により洗浄し、空気中で乾燥し、これにより、1グラムの環状カルボナートアジドを得た。
【化8】
【0045】
実施例2−(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(4−アジドスルホニル)フェニル)カルバマートの調製
40.0gの4−アセトアミドベンゼンスルホニルアジド(Sigma Aldrichから得られる)を160mlの濃塩酸に溶解した。この溶液を撹拌し、80℃に最大で30分間加熱した。この透明な溶液を室温に冷却した。70℃で、沈殿物が形成した。冷却された混合物を、すべての成分を溶解するために氷水(200g)に加え、得られた溶液を1000グラムの20%炭酸ナトリウム水溶液に加えた。生成物を150mlのジクロロメタンにより2回抽出し、一緒にした抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、真空濃縮し、最後に空気中で乾燥して、すべての揮発物を除いた。これにより、30グラムの固体の4−アミドベンゼンスルホニルアジドが得られた。
【化9】
【0046】
2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルカルボノクロリダート(0.50g)を5mlのアセトンに溶解し、5mlのアセトン及び0.438gのピリジンにおける0.549gの4−アミドベンゼンスルホニルアジドの溶液に5℃の温度で滴下して加えた。添加時間が約10分であった。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応完了後、混合物を50mlの冷水に加え、これにより、白色沈殿物が生じた。混合物を2時間撹拌し、沈殿物を水により洗浄し、空気中で乾燥し、これにより、0.95gの(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(4−アジドスルホニル)フェニル)カルバマートをわずかにピンク色の固体として得た。
【化10】
【0047】
実施例3−ポリマーの改質
47グラムのエマルション型スチレンブタジエンゴム(Buna SE1500、eSBR)及び0.93グラムの実施例1の(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルカルボンアジドを二本ロールミルでブレンドし、均質に混合した。47.93グラムのこのブレンド物を130℃〜160℃で内部Banbury型ミキサーにおいて処理して、SBRへのアジドのグラフト化が生じるようにした。このグラフト化工程の期間中に、混合物の温度が15分で160℃にまで上昇した。
【0048】
実施例4−ポリマーの改質
47グラムの溶液型スチレンブタジエンゴム(Buna VSL 4720−0−HN、スチレン含有量:19.5%;ビニル含有量:47.5%)及び0.94グラムの実施例1の(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルカルボンアジドを二本ロールミルでブレンドし、均質に混合した。47.94グラムのこのブレンド物を130℃で内部Banbury型ミキサーにおいて処理して、SBRへのアジドのグラフト化が生じるようにした。このグラフト化工程の期間中に、混合物の温度が15分で160℃にまで上昇した。
【0049】
実施例5−ポリマーの改質
47グラムの溶液型スチレンブタジエンゴム(Buna VSL 4526−0HM、スチレン含有量:26%;ビニル含有量:44.5%)及び0.94グラムの実施例1の(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルカルボンアジドを二本ロールミルでブレンドし、均質に混合した。47.94グラムのこのブレンド物を130℃で内部Banbury型ミキサーにおいて処理して、SBRへのアジドのグラフト化が生じるようにした。このグラフト化工程の期間中に、混合物の温度が15分で160℃にまで上昇した。
【0050】
実施例6−ポリマーの改質
47グラムの溶液型スチレンブタジエンゴム(Buna VSL VP PBR4045;スチレン含有量:25.7%;ビニル含有量:22.2%)及び0.94グラムの実施例1の(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルカルボンアジドを二本ロールミルでブレンドし、均質に混合した。47.94グラムのこのブレンド物を130℃で内部Banbury型ミキサーにおいて処理して、SBRへのアジドのグラフト化が生じるようにした。このグラフト化工程の期間中に、混合物の温度が15分で160℃にまで上昇した。
【0051】
実施例7−改質されたeSBRポリマーの架橋
実施例3の改質eSBRゴムを、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンを使用して架橋した。このトリアミンは、2つの第一級アミン基と、1つの第二級アミン基とを有する。これら2つの第一級アミンが改質eSBRの環状カルボナート基と反応し、架橋を形成する。
【0052】
上記アミン及び上記改質ゴムを混合し、150℃の温度に加熱して、架橋させた。架橋形成が、MonsantoレオメーターMDR2000Eを使用して認められた。表1には、異なるレベルのアミンによる3回の実験が示される。架橋時間が、90%の加硫のために要求される時間(t90)として示される;架橋密度が、レオメーターによって測定されたときのトルクにおける増大(ΔS)として示される。
【0053】
【表1】
【0054】
およそ0.2Nmに達するΔSレベルの飽和は、ほんの0.5モル当量の上記アミンが、架橋形成を完了させるために要求されることを示している。このことは、1モルの上記アミンが2モルの環状カルボナート基と反応することを示している。アジドによる改質がない場合、表1の最初の項目において認められ得るように、アミンに対する反応性が何ら認められない。
【0055】
実施例8−改質されたsSBRポリマーの架橋
実施例4、実施例5及び実施例6の改質sSBRゴムの47グラムを、実施例7において最適であると見出されるように0.5モル等量(1.15phr)のビス(ヘキサメチレン)トリアミンを使用して170℃で架橋させた。架橋形成が、MonsantoレオメーターMDR2000Eを使用して認められた。結果が表2に示される。
【0056】
【表2】
【0057】
すべてのsSBRタイプが、(ΔSとして示される)増大したトルクレベルを示す。すべてのsSBRタイプが、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルカルボンアジドによる改質の後、アミンによって架橋が形成されることを示す。参照用の未改質ゴムは、ここではBuna VSL 4720について示されるが、ΔSにおける無視できるほどの増大のみを示すだけである。
【0058】
実施例9−フィラーゴム相互作用の改善
sSBRであるBuna VSL 4720−0HMを、1phrのVulkanox(登録商標)SKFをさらに存在させることにより、実施例4に記載されるように改質した。その量が表3に示される。
【0059】
【表3】
【0060】
改質ゴム及び比較用ゴムから、サンプルを採取し、表4に述べられるような量で上記成分と内部Banbury型ミキサーにおいて混合した。シリカ(Ultrasil(商標)7000GR)を2回に分けて、温度が130℃にまで上昇することを許しながら、80℃で、最大で8分間にわたってゴムに加えた。比較実験2では、Si69(Evonicから得られる)を加えた。
【0061】
【表4】
【0062】
シリカ及び他の添加物をSBRに加えた後、硫黄及び硫黄系促進剤に基づく硬化剤パッケージを二本ロールミルにおいて上記シリカ充填ゴムの一部に加えた。加硫パックが表5に示される。
【0063】
【表5】
【0064】
表6は全体的な配合表を示す。
【0065】
【表6】
【0066】
得られた調合物を、The science and technology of rubber, 3
rdedition(J.E.Mark, 2005, page 388)に記載されるように、いわゆるペイン効果試験を使用して比較した。この試験では、フィラー充填系のペイン効果が、動的粘弾性測定を使用して測定される。この実験によれば、フィラー充填SBRゴムのサンプルが100℃及び0.7Hzにおける周期的剪断ひずみに供される。ひずみが0.3%から100%にまで変化させられる。測定が、ゴム分析装置、すなわち、Gottfertから得られる「Visco Elastograph」で行われる。この試験では、サンプルの弾性係数と、サンプルに対する受けたひずみとの間における関係が測定され、それにより、ゴムとフィラーとの間の相互作用が、フィラー粒子間の相互作用を測定することによって評価される。フィラー−フィラー相互作用がフィラー−ゴム相互作用についての良好な目安である:大きいフィラー−フィラー相互作用は低いフィラー−ゴム相互作用を示しており、逆に、低いフィラー−フィラー相互作用は大きいフィラー−ゴム相互作用を示している。
【0067】
表7には、未加硫配合物に対するペイン試験の結果が示され、比較実験1は、低いひずみ値における大きい弾性係数(G’)、及び、大きいひずみにおける低いG’値に対する速い破壊を示すことを示している。この破壊はフィラー網状構造の破壊を示しており、強いフィラー−フィラー相互作用及び不良なフィラー−ゴム相互作用を示す。本発明発明による実験は、低いひずみ値における低いG’、及び、比較実験1のG’値よりも大きいG’値に対する大きい誘導ひずみにおける緩やかな分解を示す。この実験は、本発明による環状カルボナートアジドを用いた改質はより低いフィラー−フィラー相互作用及びより大きいフィラー−ゴム相互作用をもたらすことの証拠である。このことが、大きいひずみおける弾性率値がより大きいこと(これは、結合したゴムの存在を示している)から特に推測される。結合したゴムは、フィラー粒子に不可逆的に結合するゴムの一部である。
【0068】
【表7】
【0069】
加硫配合物のフィラー−ゴム相互作用がタイヤの最終的特性のために極めて重要であるので、この相互作用はまた、150℃における配合物の加硫の後でも評価されている(表8を参照のこと)。未加硫配合物の場合と同じ結論を引き出すことができる:フィラー−ゴム相互作用が、本発明によるアジド改質sSBRの場合、はるかに強くなっている。
【0070】
【表8】
【0071】
このようなより良好なフィラー−ゴム相互作用はフィラーのより良好な分散及びより少ないフィラー−フィラー相互作用をもたらす。このことを、加硫データが表6からの配合物について比較される表9において認めることができる。これらの加硫データは、シリカ充填SBR配合物の完全な架橋のために十分である条件(150℃、1時間)のもとでゴム分析装置を使用して、すなわち、Gottfertから得られる「Visco Elastograph」を使用して記録されている。
【0072】
【表9】
【0073】
フィラーのより良好な分散を、M
L値(すなわち、加硫温度で測定される最小トルクで、フィラー充填配合物の粘度の良好な指標)によって示されるように配合物の柔らかさによって認めることができる。同じシリカ含有量(40phr)において、本発明によるプロセスによって調製される組成物は比較用組成物よりも低い粘度を有する。比較用組成物のより大きい粘度は、いわゆる凝集(すなわち、分散されたシリカ粒子の集塊化)のためである。この集塊化は、高い温度では特に、堅い構造の増加をもたらし、これにより、配合物の増大した粘度を増大させる。このことはまた、増大したM
H(Visco Elastographで測定される最大トルク)及びΔS(=M
H−M
L)によって示されるように結局は架橋密度における明らかに増大となり、また、加硫エラストマーの硬化を引き起こす。加硫後のゴムのこの硬化がIRHD硬度(国際ゴム硬さ、ISO48)によって測定され、IRHD硬度により、増大した硬度が表9の比較実験1について明瞭に示される。凝集はさらに、シリカ配合物の加工をより困難にし、シリカ充填配合物の貯蔵寿命を低下させ、かつ、最終生成物の望まれない予測不能な機械的特性を引き起こす。
【0074】
本発明に従って調製される配合物は、ゴムにおけるシリカの改善された分散に起因して、また、低下したフィラー−フィラー相互作用を生じさせる、ゴムとシリカとの間の増大した相互作用に起因して、凝集が全くないか、又はほんのわずかである。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
下記の式に従う構造を有する環状カルボナートアジド。
【化1】
式中、
R
1〜R
5は独立して、水素、C
6〜20アリール基、C
7〜36アラルキル基及びC
1〜30アルキル基からなる群から選択され、但し、前記アリール基、アラルキル基及びアルキル基は場合によりヘテロ原子により置換される場合があり;
Xは、少なくとも1個の炭素原子を有する炭化水素基であり;
Tは−N(R
6)−又は−O−の構造を有し;
R
6は、水素及びC
1〜20アルキル基(これは場合によりヘテロ原子により置換される)からなる群から選択され;
kは、0、1又は2であり;
mは0又は1であり;
nは0又は1であり;
pは1又は2であり;
Zは、少なくとも1個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であって、場合によりヘテロ原子により置換され;かつ
Yは下記のいずれかである。
【化2】
項2.
Tが構造−N(R
6)−を有する、項1に記載の環状カルボナートアジド。
項3.
Tが構造−O−を有する、項1に記載の環状カルボナートアジド。
項4.
k=0である、項1から3のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド。
項5.
XがCH
2である、項1から4のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド。
項6.
Zがアリール基である、項1から5のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド。
項7.
p=1であり、n=m=0であり、かつ、Yが、
【化3】
である、項1から6のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド。
項8.
p=1であり、n=m=1であり、R
3がHであり、Zがアリール基であり、かつ、Yが、
【化4】
である、項1から6のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド。
項9.
p=2であり、n=m=0であり、R
3がHであり、XがCH
2であり、かつ、Yが、
【化5】
である、項1から6のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド。
項10.
k=1である、項1から3又は5から9のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド。
項11.
R
1、R
2、R
4及びR
5が水素である、項1から10のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド。
項12.
R
3が水素又はヒドロキシアルキル基である、項1から11のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド。
項13.
ポリマーを改質するための、項1から12のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジドの使用。
項14.
前記ポリマーがエマルション型スチレンブタジエンゴム(e−SBR)又は溶液型スチレンブタジエンゴム(s−SBR)である、項13に記載の使用。
項15.
ポリマーを改質するための方法であって、項1から12のいずれか一項に記載の環状カルボナートアジド及び前記ポリマーをブレンドし、当該ブレンド物を100℃〜220℃の範囲の温度で加熱することによって、前記アジドが前記ポリマーにグラフト化される、方法。
項16.
前記ポリマーがエマルション型スチレンブタジエンゴム(e−SBR)又は溶液型スチレンブタジエンゴム(s−SBR)である、項15に記載の方法。
項17.
項15又は16に記載の方法によって得ることができるポリマー。
項18.
項17に記載のポリマーとシリカとを含むポリマー組成物。
項19.
タイヤを製造するための、項17に記載のポリマー又は請求項18に記載のポリマー組成物の使用。