特許第6208871号(P6208871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 深▲せん▼市華星光電技術有限公司の特許一覧

<>
  • 特許6208871-金属マグネシウムの予備処理装置と方法 図000002
  • 特許6208871-金属マグネシウムの予備処理装置と方法 図000003
  • 特許6208871-金属マグネシウムの予備処理装置と方法 図000004
  • 特許6208871-金属マグネシウムの予備処理装置と方法 図000005
  • 特許6208871-金属マグネシウムの予備処理装置と方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208871
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】金属マグネシウムの予備処理装置と方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 26/22 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170925BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20170925BHJP
   F27D 11/02 20060101ALI20170925BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20170925BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20170925BHJP
   C22B 9/04 20060101ALI20170925BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C22B26/22
   H05B33/14 A
   H05B33/26 Z
   F27D11/02
   F27B17/00 B
   F27D7/06 C
   C22B9/04
   C23C14/24 E
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-533601(P2016-533601)
(86)(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公表番号】特表2017-508062(P2017-508062A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】CN2014070934
(87)【国際公開番号】WO2015100812
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】201310753927.8
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515203228
【氏名又は名称】深▲せん▼市華星光電技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】鄒清華
(72)【発明者】
【氏名】呉聰原
(72)【発明者】
【氏名】張▲きん▼狄
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101386919(CN,A)
【文献】 特開2005−344152(JP,A)
【文献】 特開平10−206035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 9/00 − 9/22
C22B 26/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属マグネシウムの予備処理方法であって、
前記方法は、以下の手順1から手順8を含み、
手順1では、予備処理装置を用意し、
前記予備処理装置は、チャンバーと、前記チャンバー内に取付けられた加熱装置と、前記チャンバー上に設けられた吸気口と、前記チャンバー上に設けられた排気口とからなり、
前記吸気口は、外部の希ガス注入設備と互いに連通し、
前記排気口は、外部の真空排気装置と互いに連通し、
手順2では、表面が酸化された金属マグネシウムを坩堝内に入れるとともに、前記坩堝を前記加熱装置に配置し、
手順3では、前記排気口を通して前記チャンバー内が真空になるように排気し、
手順4では、前記吸気口を通して前記チャンバー内へ希ガスを注入し、
手順5では、前記チャンバー内の酸素含量が1ppmよりも小さくなるまで、手順3と手順4を繰り返し、
手順6では、前記排気口を通して前記チャンバー内が真空になるように排気することにより、前記チャンバー内の圧力が10−4Paよりも小さいか或は等しくなるようにし、
手順7では、前記加熱装置によって、表面が酸化された金属マグネシウムを加熱することにより、酸化マグネシウムを完全に揮発させ、
手順8では、冷却を行った後、純金属マグネシウムが得られ
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属マグネシウムの予備処理方法において、
前記吸気口上には、吸気弁が設けられ、
前記吸気弁は、前記吸気口の開閉を制御するために用いられ、
前記排気口上には、排気弁が設けられ、
前記排気弁は、前記排気口の開閉を制御するために用いられ
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法
【請求項3】
請求項2に記載の金属マグネシウムの予備処理方法において、
更に、前記金属マグネシウムの予備処理装置には、制御装置が設けられ、
前記制御装置は、前記吸気弁と排気弁の開閉を制御するために用いられ
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法
【請求項4】
請求項3に記載の金属マグネシウムの予備処理方法において、
更に、前記金属マグネシウムの予備処理装置には、前記チャンバー内に位置する酸素センサーと、前記チャンバー内に位置する真空計が設けられ、
前記酸素センサーは、前記チャンバー内の酸素含量を検査測定するために用いられ、
前記真空計は、前記チャンバー内の圧力を検査測定するために用いられ
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法
【請求項5】
請求項3に記載の金属マグネシウムの予備処理方法において、
前記加熱装置は、台座と、前記台座上に設けられた加熱コイルと、前記台座上に設けられ且つ加熱コイル周辺に位置するカバー体とからなり、
前記加熱コイルは、鉄・クロム・アルミニウム合金、或はニクロム合金のいずれかの電熱線が螺旋状に巻かれてなり、
前記台座とカバー体は、いずれも金属によってなり、
前記加熱装置は、前記制御装置を通して加熱を実行するか否かが制御され
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法
【請求項6】
請求項5に記載の金属マグネシウムの予備処理方法において、
前記カバー体内には、温度センサーが取付けられ、
前記温度センサーは、前記加熱装置の温度を検知測定するために用いられ
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法
【請求項7】
請求項1に記載の金属マグネシウムの予備処理方法において、
前記チャンバー内には、更に照明装置が設けられるとともに、
前記チャンバーの一つの側壁上には、透明窓が設けられ、
前記透明窓は、前記チャンバー内における表面が酸化された金属マグネシウムの融解状況を観察するために用いられ
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法
【請求項8】
請求項1に記載の金属マグネシウムの予備処理方法において、
更に、前記チャンバー内に、取外し可能なように内側防着板が取付けられ
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法
【請求項9】
請求項3に記載の金属マグネシウムの予備処理方法において、
前記制御装置は、前記チャンバー上に取付けられるか、或はコーティング装置上に集積され
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法。
【請求項10】
金属マグネシウムの予備処理方法であって、
前記方法は、以下の手順1から手順8を含み、
手順1では、予備処理装置を用意し、
前記予備処理装置は、チャンバーと、前記チャンバー内に取付けられた加熱装置と、前記チャンバー上に設けられた吸気口と、前記チャンバー上に設けられた排気口とからなり、
前記吸気口は、外部の希ガス注入設備と互いに連通し、
前記排気口は、外部の真空排気装置と互いに連通し、
手順2では、表面が酸化された金属マグネシウムを坩堝内に入れるとともに、前記坩堝を加熱装置に配置し、
手順3では、前記排気口を通して前記チャンバー内が真空になるように排気し、
手順4では、前記吸気口を通して前記チャンバー内へ希ガスを注入し、
手順5では、前記チャンバー内の酸素含量が1ppmよりも小さくなるまで、手順3と手順4を繰り返し、
手順6では、前記排気口を通して前記チャンバー内が真空になるように排気することにより、前記チャンバー内の圧力が10−4Paよりも小さいか或は等しくなるようにし、
手順7では、前記加熱装置によって、表面が酸化された金属マグネシウムを加熱することにより、酸化マグネシウムを完全に揮発させ、
手順8では、冷却を行った後、純金属マグネシウムが得られ、
更に、
前記吸気口上には、吸気弁が設けられ、
前記吸気弁は、前記吸気口の開閉を制御するために用いられ、
前記排気口上には、排気弁が設けられ、
前記排気弁は、前記排気口の開閉を制御するために用いられ、
前記予備処理装置には、更に制御装置が設けられ、
前記制御装置は、前記吸気弁と排気弁の開閉を制御するために用いられ、
前記予備処理装置には、更に前記チャンバー内に位置する酸素センサーと、前記チャンバー内に位置する真空計が設けられ、
前記酸素センサーは、前記チャンバー内の酸素含量を検査測定するために用いられ、
前記真空計は、前記チャンバー内の圧力を検査測定するために用いられ、
前記加熱装置は、台座と、前記台座上に設けられた加熱コイルと、前記台座上に設けられ且つ加熱コイル周辺に位置するカバー体とからなり、
前記加熱コイルは、鉄・クロム・アルミニウム合金、或はニクロム合金のいずれかの電熱線が螺旋状に巻かれてなり、
前記台座とカバー体は、いずれも金属によってなり、
前記加熱装置は、前記制御装置を通して加熱を実行するか否かが制御され、
前記カバー体内には、温度センサーが取付けられ、
前記温度センサーは、前記加熱装置の温度を検知測定するために用いられ、
前記チャンバー内には、更に照明装置が設けられるとともに、
前記チャンバーの一つの側壁上には、透明窓が設けられ、
前記透明窓は、前記チャンバー内における表面が酸化された金属マグネシウムの融解状況を観察するために用いられ、
前記予備処理装置には、更に前記チャンバー内に取外し可能なように取付けられた内側防着板が設けられ、
前記制御装置は、前記チャンバー上に取付けられるか、或はコーティング装置上に集積され
ことを特徴とする金属マグネシウムの予備処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示の製造工程に関し、特に、OLED陰極として用いられる金属マグネシウムの予備処理装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード或は有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Diode Display、OLED)、また有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)と呼ばれる技術は、20世紀半ばから発展し始めた新しい表示技術である。液晶ディスプレイと比べて、有機ELは、全固体型・自発光・高輝度・高コントラスト・超薄型・低コスト・低消費電力・素早い応答・広視野角・動作温度の範囲が広い・フレキシブル表示がしやすい等の数多くの長所を備えている。有機ELの構造は一般に、基板と、陽極と、陰極と、有機機能層とからなる。また、その発光原理は、陽極と陰極の間に非常に薄い複数層の有機材料が蒸着されるとともに、正負のキャリアが有機半導体薄膜に注入された後に結合されることで発光するというものである。有機ELの有機機能層は、一般に、正孔輸送機能層(Hole Transport Layer、HTL)と、発光機能層(Emissive Layer、EML)と、電子輸送機能層(Electron Transport Layer、ETL)という三つの機能層からなる。一つ一つの機能層は、一層、或は複数層からなることが可能である。例えば、正孔輸送機能層は、正孔注入層と正孔輸送層に細分化される場合がある。また電子輸送機能層は、電子輸送層と電子注入層に細分化される。ただし機能が似通っているため、正孔輸送機能層、電子輸送機能層と総称される。
【0003】
現在、フルカラー有機ELの製造方法には、主に赤緑青(RGB)3色並列独立発光方式・白色光カラーフィルタ方式・色変換方式という三種類の方式がある。このうち、赤緑青3色並列独立発光方式は、潜在的な可能性が最も高く、実際に最も多く応用されており、またその製造方法では、赤緑青に異なるホスト材料とドーパントの発光材料が用いられる。
【0004】
有機ELを駆動方式に基づいて分類すると、パッシブ駆動とアクティブ駆動に大別される。即ち、直接アドレス指定と薄膜トランジスタ(TFT)のマトリクスアドレス指定の二種類である。前記アクティブ駆動の有機ELは、アクティブマトリクス式有機EL(Active Matrix Organic Light Emitting Device、AMOLED)である。
【0005】
小型AMOLEDディスプレイの現在の技術傾向は、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(LTPS TFT)バックパネルにトップ・エミッション(TOP Emission)が採用されたOLEDであり、その陰極にはマグネシウム/銀(Mg/Ag)合金が使用される。Mgの仕事関数は−3.68evであり、Agの仕事関数は−4.26evであるため、電子の陰極から電子輸送層への注入が比較的容易になる。また10−20nmのMg/Ag合金は非常に良好な透過率を有しているため、発光層内部の励起子遷移で生じた光がデバイス内部から発出される。
【0006】
一般に、仕事関数が高い金属ほど活性が高い。例えばリチウム(Li)の仕事関数は−2.1evであり、ナトリウム(Na)の仕事関数は−2.28evであり、カルシウム(Ca)の仕事関数は−2.9evであり、活性が高い金属であるほど酸化され易い。Naは灯油の中で保存する必要があるとともに、空気や水に触れると直ぐに反応を生じて、激しい時には燃焼爆発することもある。使用上の利便性のために仕事関数が相対的に高いMgが選ばれているものの、やはりMgは空気中で酸化されてしまい、その表面に一層の緻密な酸化マグネシウムの薄層が形成される。
【0007】
酸化マグネシウムは、コーティング装置内での加熱蒸着過程において、非常に小さい粒子の形態で放出される(マグネシウム灰と略す)。このようなマグネシウム灰の質量は非常に軽く、大量の酸化マグネシウムはコーティング装置のチャンバー中で、チャンバーを汚染する。最も重要なのは、浮遊して基板上まで達し、画素(pixel)における欠陥を形成し、これにより発光エリアに黒点が生じて、寿命と良品率に影響を与えてしまうことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明は、構造が簡単で、金属マグネシウム表面の酸化マグネシウムを効果的に除去し、且つ金属マグネシウムの外部露出面積を効果的に縮小することにより、金属マグネシウムが再度酸化する面積を効果的に縮小して、金属マグネシウムの純度を高めることが可能な、金属マグネシウムの予備処理装置を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、操作が簡単で、金属マグネシウム表面の酸化マグネシウムを効果的に除去し、且つ金属マグネシウムの外部露出面積を効果的に縮小することにより、金属マグネシウムが再度酸化する面積を効果的に縮小して、金属マグネシウムの純度を高めることが可能な、金属マグネシウムの予備処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明が提供する金属マグネシウムの予備処理装置は、チャンバーと、チャンバー内に取付けられた加熱装置と、チャンバー上に設けられた吸気口と、チャンバー上に設けられた排気口とからなる。前記吸気口は、外部の希ガス注入設備と互いに連通するとともに、チャンバー内へ希ガスを注入するために用いられる。前記排気口は、外部の真空排気装置と互いに連通するとともに、チャンバー内が真空になるように排気するために用いられる。前記加熱装置は、表面が酸化された金属マグネシウムを加熱するために用いられるとともに、真空環境下で金属マグネシウム表面における一層の酸化マグネシウムを揮発させることで、純金属マグネシウムが得られる。
【0011】
前記吸気口上には、吸気弁が設けられ、吸気弁は吸気口の開閉を制御するために用いられる。前記排気口上には、排気弁が設けられ、排気弁は排気口の開閉を制御するために用いられる。
【0012】
更に、制御装置が設けられる。制御装置は、前記吸気弁と排気弁の開閉を制御するために用いられる。
【0013】
更に、チャンバー内に位置する酸素センサー・チャンバー内に位置する真空計が設けられる。前記酸素センサーは、チャンバー内の酸素含量を検査測定するために用いられ、前記真空計は、チャンバー内の圧力を検査測定するために用いられる。
【0014】
前記加熱装置は、台座と、台座上に設けられた加熱コイルと、台座上に設けられ且つ加熱コイル周辺に位置するカバー体とからなる。前記加熱コイルは、鉄・クロム・アルミニウム合金、或はニクロム合金の電熱線が螺旋状に巻かれてなる。前記台座とカバー体は、いずれも金属によってなる。前記加熱装置は、制御装置を通して加熱を実行するか否かが制御される。
【0015】
前記カバー体内には、温度センサーが取付けられ、温度センサーは加熱装置の温度を検知測定するために用いられる。
【0016】
前記チャンバー内には、更に照明装置が設けられるとともに、前記チャンバーの一つの側壁上には、透明窓が設けられる。透明窓は、チャンバー内における表面が酸化された金属マグネシウムの融解状況を観察するために用いられる。
【0017】
更に、チャンバー内に、取外し可能なように内側防着板が取付けられる。
【0018】
前記制御装置は、チャンバー上に取付けられるか、或はコーティング装置上に集積される。
【0019】
また、本発明が提供する金属マグネシウムの予備処理装置は、チャンバーと、チャンバー内に取付けられた加熱装置と、チャンバー上に設けられた吸気口と、チャンバー上に設けられた排気口とからなる。前記吸気口は、外部の希ガス注入設備と互いに連通するとともに、チャンバー内へ希ガスを注入するために用いられる。前記排気口は、外部の真空排気装置と互いに連通するとともに、チャンバー内が真空になるように排気するために用いられる。前記加熱装置は、表面が酸化された金属マグネシウムを加熱するために用いられるとともに、真空環境下で金属マグネシウム表面における一層の酸化マグネシウムを揮発させることで、純金属マグネシウムが得られる。
【0020】
このうち、前記吸気口上には、吸気弁が設けられ、吸気弁は吸気口の開閉を制御するために用いられる。前記排気口上には、排気弁が設けられ、排気弁は排気口の開閉を制御するために用いられる。
【0021】
更に、制御装置が設けられる。制御装置は、前記吸気弁と排気弁の開閉を制御するために用いられる。
【0022】
更に、チャンバー内に位置する酸素センサー・チャンバー内に位置する真空計が設けられる。前記酸素センサーは、チャンバー内の酸素含量を検査測定するために用いられ、前記真空計は、チャンバー内の圧力を検査測定するために用いられる。
【0023】
このうち、前記加熱装置は、台座と、台座上に設けられた加熱コイルと、台座上に設けられ且つ加熱コイル周辺に位置するカバー体とからなる。前記加熱コイルは、鉄・クロム・アルミニウム合金、或はニクロム合金の電熱線が螺旋状に巻かれてなる。前記台座とカバー体は、いずれも金属によってなる。前記加熱装置は、制御装置を通して加熱を実行するか否かが制御される。
【0024】
前記カバー体内には、温度センサーが取付けられ、温度センサーは加熱装置の温度を検知測定するために用いられる。
【0025】
前記チャンバー内には、更に照明装置が設けられるとともに、前記チャンバーの一つの側壁上には、透明窓が設けられる。透明窓は、チャンバー内における表面が酸化された金属マグネシウムの融解状況を観察するために用いられる。
【0026】
更に、チャンバー内に、取外し可能なように内側防着板が取付けられる。
【0027】
前記制御装置は、チャンバー上に取付けられるか、或はコーティング装置上に集積される。
【0028】
また、本発明が提供する金属マグネシウムの予備処理方法は、以下の手順を含む。
【0029】
手順1では、予備処理装置を用意する。前記予備処理装置は、チャンバーと、チャンバー内に取付けられた加熱装置と、チャンバー上に設けられた吸気口と、チャンバー上に設けられた排気口とからなる。前記吸気口は、外部の希ガス注入設備と互いに連通する。前記排気口は、外部の真空排気装置と互いに連通する。
【0030】
手順2では、表面が酸化された金属マグネシウムを坩堝内に入れるとともに、坩堝を加熱装置内に配置する。
【0031】
手順3では、排気口を通してチャンバー内が真空になるように排気する。
【0032】
手順4では、吸気口を通してチャンバー内へ希ガスを注入する。
【0033】
手順5では、チャンバー内の酸素含量が1ppmよりも小さくなるまで、手順3と手順4を繰り返す。
【0034】
手順6では、排気口を通してチャンバー内が真空になるように排気することにより、チャンバー内の圧力が10−4Paよりも小さいか或は等しくなるようにする。
【0035】
手順7では、加熱装置によって、表面が酸化された金属マグネシウムを加熱することにより、酸化マグネシウムを完全に揮発させる。
【0036】
手順8では、冷却を行った後、純金属マグネシウムが得られる。
【0037】
前記吸気口上には、吸気弁が設けられ、吸気弁は吸気口の開閉を制御するために用いられる。前記排気口上には、排気弁が設けられ、排気弁は排気口の開閉を制御するために用いられる。
【0038】
前記予備処理装置には、更に制御装置が設けられる。制御装置は、前記吸気弁と排気弁の開閉を制御するために用いられる。
【0039】
前記予備処理装置には、更にチャンバー内に位置する酸素センサー・チャンバー内に位置する真空計が設けられる。前記酸素センサーは、チャンバー内の酸素含量を検査測定するために用いられ、前記真空計は、チャンバー内の圧力を検査測定するために用いられる。
【0040】
前記加熱装置は、台座と、台座上に設けられた加熱コイルと、台座上に設けられ且つ加熱コイル周辺に位置するカバー体とからなる。前記加熱コイルは、鉄・クロム・アルミニウム合金、或はニクロム合金の電熱線が螺旋状に巻かれてなる。前記台座とカバー体は、いずれも金属によってなる。前記加熱装置は、制御装置を通して加熱を実行するか否かが制御される。
【0041】
前記カバー体内には、温度センサーが取付けられ、温度センサーは加熱装置の温度を検知測定するために用いられる。
【0042】
前記チャンバー内には、更に照明装置が設けられるとともに、前記チャンバーの一つの側壁上には、透明窓が設けられる。透明窓は、チャンバー内における表面が酸化された金属マグネシウムの融解状況を観察するために用いられる。
【0043】
前記予備処理装置には、更にチャンバー内に、取外し可能なように内側防着板が取付けられる。
【0044】
前記制御装置は、チャンバー上に取付けられるか、或はコーティング装置上に集積される。
【発明の効果】
【0045】
本発明は以下の有益な効果を備える。本発明の金属マグネシウムの予備処理装置と方法は、前段階での予備処理を通して金属マグネシウム顆粒表面の酸化マグネシウムを除去することが可能であり、且つ坩堝中の金属マグネシウムにおける露出表面積を大幅に縮小して、酸化マグネシウムの含量を低減させることにより、コーティングチャンバー中でごく少量の酸化マグネシウムを処理するだけで済むようになり、コーティングチャンバーが大量の酸化マグネシウムで汚染されることを防止可能であるとともに、酸化マグネシウムによって引き起こされる製品不良の確率を大幅に低減させることが出来る。加えて、チャンバーに過量の酸化マグネシウムが存在しないため、機械停止やメンテナンスの頻度を低減させるとともに、内側防着板の交換回数を減らして、機械稼働率の向上とコスト削減が可能である。
【0046】
本発明の特徴と技術内容の詳細については、以下の本発明についての詳説と図を参照されたい。ただし、図はあくまで参考及び説明用であり、本発明に制限を加えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
下記の図を合わせて本発明の具体的実施形態について詳細に説明することで、本発明の技術手法及びその他の有益な効果を詳らかにする。
図1】本発明の金属マグネシウムの予備処理装置の構造を示した斜視図である。
図2】本発明の金属マグネシウムの予備処理装置の構造を示した平面図である。
図3】本発明の金属マグネシウムの予備処理装置における加熱装置の構造を示した断面図である。
図4】本発明の金属マグネシウムの予備処理方法のフロー図である。
図5】酸化マグネシウムの固−液−気の状態変化の曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の技術手法と効果について詳述するために、以下で本発明の実施例及び図を参照しつつ説明する。
【0049】
(実施例1)
図1から図3までを参照する。本発明が提供する金属マグネシウムの予備処理装置は、チャンバー20と、チャンバー20内に取付けられた加熱装置22と、チャンバー20上に設けられた吸気口24と、チャンバー20上に設けられた排気口26とからなる。吸気口24は、外部の希ガス注入設備(図示せず)と互いに連通するとともに、チャンバー20内へ希ガスを注入するために用いられる。排気口26は、外部の真空排気装置(図示せず)と互いに連通するとともに、チャンバー20内が真空になるように排気するために用いられる。加熱装置22は、表面が酸化された金属マグネシウムを加熱するために用いられるとともに、真空環境下で金属マグネシウム表面における一層の酸化マグネシウムを揮発させることで、純金属マグネシウムが得られる。前記予備処理装置は、表面が酸化された金属マグネシウムを坩堝(図示せず)中に入れて作業が行われるため、予備処理完了後、純金属マグネシウムの露出部分の表面積が坩堝の開口面積よりも小さいか或は等しくなる。更に、たとえ空気中に曝されたとしても、酸化されるのは前記露出部分の表面だけであるため、金属マグネシウムの酸化面積を大幅に縮小して、金属マグネシウムが再度酸化されて生じる酸化マグネシウムの含量を低減させ、金属マグネシウムの純度を高めることが出来る。
【0050】
具体的には、吸気口24には、吸気口24の開閉を制御するための吸気弁242が設けられ、排気口26には、排気口26の開閉を制御するための排気弁262が設けられ、且つ吸気弁242と排気弁262の開閉は、制御装置によって制御される。本実施例において、制御装置はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)であるとともに、チャンバー20上に直接取付けられるか、或はコーティング装置(図示せず)上に集積されることが可能であり、且つ本実施例において、前記制御装置は、チャンバー20上に直接取付けられるとともに、制御台40を通して具体的な操作が行われる。
【0051】
また更に、前記金属マグネシウムの予備処理装置には、チャンバー20内に位置する酸素センサー21と、チャンバー20内に位置する真空計23が設けられる。酸素センサー21は、チャンバー20内の酸素含量を検知測定するために用いられる。真空計23は、チャンバー20内の圧力を検知測定するために用いられる。これにより、チャンバー20内の酸素含量と圧力が所定の基準に達するように保証して、予備処理後の金属マグネシウムの純度を保証することが出来る。
【0052】
加熱装置22は、台座222と、台座222上に設けられた加熱コイル224と、台座222上に設けられ且つ加熱コイル224周辺に位置するカバー体226とからなる。加熱コイル224は、鉄・クロム・アルミニウム合金、或はニクロム合金の電熱線が螺旋状に巻かれてなる。台座222とカバー体226は、いずれも熱伝導性が比較的高い金属によってなる。加熱装置22は、制御装置を通して加熱を実行するか否かが制御される。加えて、カバー体226内には、加熱装置22の温度を検知測定するための温度センサー228が取付けられることにより、加熱温度が所定の範囲内になるように制御可能である。
【0053】
特筆すべき点を以下に述べる。チャンバー20内には、更に照明装置25が設けられるとともに、チャンバー20の一つの側壁上には透明窓27が設けられる。照明装置25の照射を通して、透明窓27からチャンバー20内における表面が酸化された金属マグネシウムの融解状況を確認することが出来る。
【0054】
また更に、前記金属マグネシウムの予備処理装置には、チャンバー20内に取外し可能なように取付けられた内側防着板60が設けられるとともに、前記酸化マグネシウムの揮発後に付着することで、酸化マグネシウムがチャンバーの内壁上に直接付着しないようにする。内側防着板60は取外し可能であり、酸化マグネシウムが一定量まで付着した時、内側防着板60を取外して洗浄することが出来るため、金属マグネシウムの予備処理装置の使用寿命を効果的に延長可能である。
【0055】
(実施例2)
図4、及び図1から図3までを合わせて参照する。本発明が提供する金属マグネシウムの予備処理方法は、以下の手順を含む。
【0056】
手順1では、予備処理装置を用意する。前記予備処理装置は、チャンバー20と、チャンバー20内に取付けられた加熱装置22と、チャンバー20上に設けられた吸気口24と、チャンバー20上に設けられた排気口26とからなる。吸気口24は、外部の希ガス注入設備(図示せず)と互いに連通するとともに、チャンバー20内へ希ガスを注入するために用いられる。排気口26は、外部の真空排気装置(図示せず)と互いに連通するとともに、チャンバー20内が真空になるように排気するために用いられる。加熱装置22は、表面が酸化された金属マグネシウムを加熱するために用いられるとともに、真空環境下で金属マグネシウム表面における一層の酸化マグネシウムを揮発させることで、純金属マグネシウムが得られる。前記予備処理装置は、表面が酸化された金属マグネシウムを坩堝(図示せず)中に入れて作業が行われるため、予備処理完了後、純金属マグネシウムの露出部分の表面積が坩堝の開口面積よりも小さいか或は等しくなる。更に、たとえ空気中に曝されたとしても、酸化されるのは前記露出部分の表面だけであるため、金属マグネシウムの酸化面積を大幅に縮小して、金属マグネシウムが再度酸化されて生じる酸化マグネシウムの含量を低減させ、金属マグネシウムの純度を高めることが出来る。
【0057】
具体的には、吸気口24には、吸気口24の開閉を制御するための吸気弁242が設けられ、排気口26には、排気口26の開閉を制御するための排気弁262が設けられ、且つ吸気弁242と排気弁262の開閉は、制御装置によって制御される。本実施例において、制御装置はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)であるとともに、チャンバー20上に直接取付けられるか、或はコーティング装置(図示せず)上に集積されることが可能であり、且つ本実施例において、前記制御装置は、チャンバー20上に直接取付けられるとともに、制御台40を通して具体的な操作が行われる。
【0058】
また更に、前記金属マグネシウムの予備処理装置には、チャンバー20内に位置する酸素センサー21と、チャンバー20内に位置する真空計23が設けられる。酸素センサー21は、チャンバー20内の酸素含量を検知測定するために用いられる。真空計23は、チャンバー20内の圧力を検知測定するために用いられる。これにより、チャンバー20内の酸素含量と圧力が所定の基準に達するように保証して、予備処理後の金属マグネシウムの純度を保証することが出来る。
【0059】
加熱装置22は、台座222と、台座222上に設けられた加熱コイル224と、台座222上に設けられ且つ加熱コイル224周辺に位置するカバー体226とからなる。加熱コイル224は、鉄・クロム・アルミニウム合金、或はニクロム合金の電熱線が螺旋状に巻かれてなる。台座222とカバー体226は、いずれも熱伝導性が比較的高い金属によってなる。加熱装置22は、制御装置を通して加熱を実行するか否かが制御される。加えて、カバー体226内には、加熱装置22の温度を検知測定するための温度センサー228が取付けられることにより、加熱温度が所定の範囲内になるように制御可能である。
【0060】
特筆すべき点を以下に述べる。チャンバー20内には、更に照明装置25が設けられるとともに、チャンバー20の一つの側壁上には透明窓27が設けられる。照明装置25の照射を通して、透明窓27からチャンバー20内における表面が酸化された金属マグネシウムの融解状況を確認することが出来る。
【0061】
また更に、前記金属マグネシウムの予備処理装置には、チャンバー20内に取外し可能なように取付けられた内側防着板60が設けられるとともに、前記酸化マグネシウムの揮発後に付着することで、酸化マグネシウムがチャンバーの内壁上に直接付着しないようにする。内側防着板60は取外し可能であり、酸化マグネシウムが一定量まで付着した時、内側防着板60を取外して洗浄することが出来るため、金属マグネシウムの予備処理装置の使用寿命を効果的に延長可能である。
【0062】
手順2では、表面が酸化された金属マグネシウムを坩堝内に入れるとともに、坩堝を加熱装置22に配置する。
【0063】
実際の操作では、仕入れた金属マグネシウム顆粒をコーティング装置に使用するマグネシウム坩堝中に充填することが可能である。生産とマグネシウム顆粒加工の過程において、全工程が真空と希ガスによる保護環境下で行われるわけではないため、マグネシウム顆粒が空気と接触する可能性がある。マグネシウムは活性が高い金属であるため、空気中の酸素によって酸化されて、表面に一層の酸化マグネシウムが形成され易い。
【0064】
手順3では、排気口26を通してチャンバー20内が真空になるように排気する。
【0065】
具体的には、ドライポンプ、分子ポンプ、油ポンプ、低温ポンプ、或は異なるポンプの組合せによってチャンバーに対する排気を行うことが可能である。
【0066】
手順4では、吸気口24を通してチャンバー20内へ希ガスを注入する。
【0067】
手順5では、チャンバー20内の酸素含量が1ppmよりも小さくなるまで、手順3と手順4を繰り返す。
【0068】
手順6では、排気口26を通してチャンバー20内が真空になるように排気することにより、チャンバー20内の圧力が10−4Paよりも小さいか或は等しくなるようにする。
【0069】
手順7では、加熱装置22によって、表面が酸化された金属マグネシウムを加熱することにより、酸化マグネシウムを完全に揮発させる。
【0070】
図5を参照する。このうち、OBとOC線は、それぞれ気体と液体及び固体の相互変化の臨界線を示している。気/液と気/固の状態変化時における体積変化は非常に大きく、圧力の高まりに伴って、変化温度も顕著に上昇する。またODは、液体と固体の相互変化の臨界線を示しており、温度座標とほぼ垂直である。圧力変化は液/固の変化温度に対して影響しない。以上から、酸化マグネシウムは、圧力が10−4Paで、温度が450−−600℃の環境下において、自然に揮発することが分かる。
【0071】
手順8では、冷却を行った後、純金属マグネシウムが得られる。
【0072】
また更に、予備処理済みのマグネシウムが入った坩堝をコーティング装置の加熱源の中に入れて、コーティング装置チャンバーの真空度が1E−4以下まで達した後に、温度上昇を開始して、表面及び少量の酸化マグネシウムを除去する。この後、通常通りコーティングを行うことが出来る。この時、坩堝中には既に酸化マグネシウムが無く、陰極を積層形成する際にも、酸化マグネシウムが陰極上に積層することは無いため、酸化マグネシウムが引き起こす欠陥は、ほぼ取り除かれる。
【0073】
上述を総じて言えば、本発明の金属マグネシウムの予備処理装置と方法は、前段階での予備処理を通して金属マグネシウム顆粒表面の酸化マグネシウムを除去することが可能であり、且つ坩堝中の金属マグネシウムにおける露出表面積を大幅に縮小して、酸化マグネシウムの含量を低減させることにより、コーティングチャンバー中でごく少量の酸化マグネシウムを処理するだけで済むようになり、コーティングチャンバーが大量の酸化マグネシウムで汚染されることを防止可能であるとともに、酸化マグネシウムによって引き起こされる製品不良の確率を大幅に低減させることが出来る。加えて、チャンバーに過量の酸化マグネシウムが存在しないため、機械停止やメンテナンスの頻度を低減させるとともに、内側防着板の交換回数を減らして、機械稼働率の向上とコスト削減が可能である。
【0074】
以上の記述により、本発明の分野の一般的な技術員は、本発明の技術手法と構想に基づいて各種の変更と変形を加えることが可能であり、これらの変更と変形は、いずれも本発明の権利要求の保護範囲に属する。
【符号の説明】
【0075】
20 チャンバー
21 酸素センサー
22 加熱装置
222 台座
224 加熱コイル
226 カバー体
228 温度センサー
23 真空計
24 吸気口
242 吸気弁
25 照明装置
26 排気口
262 排気弁
27 透明窓
40 制御台
60 内側防着板
図1
図2
図3
図4
図5