(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208874
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】油排出を備える歯車付構造のガスタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
F02C 7/32 20060101AFI20170925BHJP
F02C 7/36 20060101ALI20170925BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20170925BHJP
F01D 25/18 20060101ALI20170925BHJP
F02K 3/06 20060101ALI20170925BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20170925BHJP
【FI】
F02C7/32
F02C7/36
F02C7/00 F
F01D25/18 A
F02K3/06
F16H57/04 D
F16H57/04 J
【請求項の数】30
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-538984(P2016-538984)
(86)(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公表番号】特表2016-535198(P2016-535198A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】US2014052251
(87)【国際公開番号】WO2015031185
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】61/872,392
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/255,169
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】マッキューン,マイケル,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ナド,ザカリー,アール.
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4785976(JP,B1)
【文献】
特表平09−507284(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0171018(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0090096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/32
F01D 25/18
F02C 7/00
F02C 7/36
F02K 3/06
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の周りを回転可能な太陽歯車であって歯車部分の間に溝を備える太陽歯車、太陽歯車に噛み合い係合された複数の中間歯車、および複数の中間歯車を取り囲むリング歯車を備える歯車付構造と、
複数の中間歯車のそれぞれに隣接した油排出スクープであって、太陽歯車の溝へ延在する外側排出路壁を備える油排出スクープを備えるバッフルと、
を備えることを特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項2】
複数の中間歯車のそれぞれとバッフルが、回転キャリアに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
油排出スクープが、隣接した中間歯車の近くにある内側排出路壁と、隣接した中間歯車の遠くにある外側排出路壁と、これらの間にある径方向外側排出路壁と、を備える排出路を含むことを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
径方向外側排出路壁が、傾斜面を画定することを特徴とする請求項3に記載のガスタービンエンジン。
【請求項5】
径方向外側路に隣接したバッフル端壁を通る出口をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のガスタービンエンジン。
【請求項6】
径方向外側排出路壁が、径方向内側方向の最も高い点であるピークを画定することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンエンジン。
【請求項7】
径方向外側路に隣接した第1のバッフル端壁を通る第1の出口と、径方向外側路に隣接した第2のバッフル端壁を通る第2の出口と、をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載のガスタービンエンジン。
【請求項8】
内側排出路壁と外側排出路壁との間に流れスプリッタをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のガスタービンエンジン。
【請求項9】
内側排出路壁および外側排出路壁が、湾曲面を画定することを特徴とする請求項8に記載のガスタービンエンジン。
【請求項10】
内側排出路壁および外側排出路壁が、隣接した中間歯車の外周に概略沿った湾曲外側壁に概略沿うことを特徴とする請求項9に記載のガスタービンエンジン。
【請求項11】
内側排出路壁が、外側排出路壁とは異なる長さであることを特徴とする請求項10に記載のガスタービンエンジン。
【請求項12】
バッフルが、複数のオイルジェットを画定することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項13】
複数のオイルジェットが、複数の中間歯車のうちの1つと太陽歯車との間の歯車の噛み合いに向かって方向付けられていることを特徴とする請求項12に記載のガスタービンエンジン。
【請求項14】
歯車付構造が、遊星歯車システムを含むことを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項15】
歯車付構造を通してファンを駆動するように連結されたファン駆動タービンと、ファン駆動タービンの前方にある少なくとも1つのその他のタービンと、を含むタービン部を含むことを特徴とする請求項14に記載のガスタービンエンジン。
【請求項16】
歯車付構造が、約98%超の効率を含むことを特徴とする請求項15に記載のガスタービンエンジン。
【請求項17】
ガスタービンエンジンが、約10(10)超のバイパス比を有する高バイパスエンジンであることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項18】
ファンが、約1.45未満のファン圧力比を含むことを特徴とする請求項15に記載のガスタービンエンジン。
【請求項19】
ガスタービンエンジン用の歯車付構造であって、
軸に沿って画定された太陽歯車であって歯車部分の間に溝を備える太陽歯車と、
軸の周りに回転可能に固定されたリング歯車と、
太陽歯車およびリング歯車に噛み合い係合された複数の遊星歯車と、
軸の周りを回転し、複数の遊星歯車を回転支持するキャリアと、
キャリアに取り付けられた複数のバッフルであって、それぞれのバッフルが、複数の遊星歯車のうちの1つと太陽歯車との間の歯車の噛み合いに向かって方向付けられた複数の油ノズルと、太陽歯車の回転方向において歯車の噛み合いに対して複数の油ノズルの上流にある油排出スクープであって、太陽歯車の溝へ延在する外側排出路壁を備える油排出スクープとを含む、複数のバッフルと、
を備えることを特徴とする、ガスタービンエンジン用の歯車付構造。
【請求項20】
油排出スクープが、油排出スクープに隣接した遊星歯車の近くにある内側排出路壁と、油排出スクープに隣接した遊星歯車の遠くにある外側排出路壁と、これらの間にある径方向外側排出路壁と、を備える排出路を含むことを特徴とする請求項19に記載の歯車付構造。
【請求項21】
径方向外側排出路壁が、出口に向かう傾斜面を画定することを特徴とする請求項20に記載の歯車付構造。
【請求項22】
径方向外側排出路壁が、径方向内側方向の最も高い点であるピークを画定することを特徴とする請求項20に記載の歯車付構造。
【請求項23】
内側排出路壁と外側排出路壁との間に流れスプリッタをさらに備えることを特徴とする請求項20に記載の歯車付構造。
【請求項24】
内側排出路壁が、外側排出路壁とは異なる長さであることを特徴とする請求項20に記載の歯車付構造。
【請求項25】
歯車付構造が、タービン部とファン部との間の速度を約2.3超減少させることを特徴とする請求項19に記載の歯車付構造。
【請求項26】
タービンエンジン用の歯車付構造の設計方法であって、
エンジン中心軸の周りを回転する太陽歯車であって歯車部分の間に溝を備える太陽歯車を画定し、
エンジン中心軸の周りに回転可能に固定されたリング歯車を画定し、
太陽歯車とリング歯車に噛み合い係合された複数の遊星歯車を画定し、
中心軸の周りを回転し、複数の遊星歯車を回転支持するキャリアを構成し、
複数の遊星歯車のうちの1つと太陽歯車との間の歯車の噛み合い係合に向かって方向付けられた複数の油ノズルと、太陽歯車の回転方向において歯車の噛み合いに対して複数の油ノズルの上流にある油排出スクープであって、太陽歯車の溝へ延在する外側排出路壁を備える油排出スクープと、を備える少なくとも1つのバッフルを含むキャリアを画定する、
ことを含むことを特徴とする、タービンエンジン用の歯車付構造の設計方法。
【請求項27】
油排出スクープを構成することが、油排出スクープに隣接した遊星歯車の近くにある内側排出路壁と、油排出スクープに隣接した遊星歯車の遠くにある外側排出路壁と、これらの間にある径方向外側排出路壁と、を備える排出路を画定することを含むことを特徴とする請求項26に記載の歯車付構造の設計方法。
【請求項28】
出口に向かう傾斜面を画定するように径方向外側排出路壁を構成することを含むことを特徴とする請求項27に記載の歯車付構造の設計方法。
【請求項29】
径方向内側方向の最も高い点であるピークを画定するように径方向外側排出路壁を構成することを含むことを特徴とする請求項27に記載の歯車付構造の設計方法。
【請求項30】
タービン部とファン部との間の速度を約2.3超減少させる歯車付構造を構成することを含むことを特徴とする請求項26に記載の歯車付構造の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンエンジンに関し、より詳細には、ガスタービンエンジン用の歯車付構造に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年4月17日に出願された米国特許出願番号14/255,169および2013年8月30日に出願された米国特許仮出願番号61/872,392に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
遊星歯車箱またはスター歯車箱を備えるエピサイクリック歯車システムは、小型設計かつ効率的な高い歯車低減能力があることから、ガスタービンエンジンにて使用され得る。遊星歯車箱およびスター歯車箱は、一般に3つの歯車列要素、つまり、中央の太陽歯車と、内歯車の歯を備える外側のリング歯車と、太陽歯車とリング歯車の双方との間で噛み合わせて係合された遊星キャリアによって支持された複数の遊星歯車とを含む。歯車列要素は、共通の長手方向の中心軸を有し、その周りを少なくとも2回転する。
【0004】
速度減少の伝達が必要とされる、いくつかのガスタービンエンジンの構造においては、中央の太陽歯車は一般に、エンジンコアから回転入力を受け、外側のリング歯車は静止し、遊星歯車キャリアは太陽歯車と同一方向に回転し、トルク出力の回転速度を減少させる。対照的に、スター歯車列においては、遊星キャリアは、静止したままであり、出力シャフトはリング歯車によって太陽歯車とは反対の方向に駆動される。
【0005】
エピサイクリック歯車システムは、作動中は潤滑を必要とし、典型的には、油噴射バーおよびキャリア内のオイルバッフルを含む。効果的ではあるが、このようなキャリアの配置は、通常は複数の構成要素と、キャリアの側壁が遊星歯車と、分離した油噴射バーと、オイルバッフルとの周りに組み立てられている比較的複雑なアセンブリと、を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的実施例によるガスタービンエンジンでは、その他の可能性のあるもののうち、複数の中間歯車を備える歯車付構造と、複数の中間歯車のそれぞれに隣接した油排出スクープを備えるバッフルと、を含む。
【0007】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、複数の中間歯車のそれぞれとバッフルが、回転キャリアに取り付けられている。
【0008】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、油排出スクープが、内側排出路壁と、外側排出路壁と、これらの間にある径方向外側排出路壁と、を備える排出路を含む。
【0009】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、径方向外側排出路壁が、ランプ面を画定する。
【0010】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、径方向外側路に隣接したバッフル端壁を通る出口をさらに含む。
【0011】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、径方向外側排出路壁が、ピークを画定する。
【0012】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、径方向外側路に隣接した第1のバッフル端壁を通る第1の出口と、径方向外側路に隣接した第2のバッフル端壁を通る第2の出口と、をさらに含む。
【0013】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、内側排出路壁と外側排出路壁との間に流れスプリッタをさらに含む。
【0014】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、内側排出路壁および外側排出路壁が、湾曲面を画定する。
【0015】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、内側排出路壁および外側排出路壁が、隣接した中間歯車の直径に概略沿った湾曲外側壁に概略沿う。
【0016】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、内側排出路壁が、外側排出路壁とは異なる長さである。
【0017】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、オイルバッフルが、複数のオイルジェットを画定する。
【0018】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、複数のオイルジェットが、複数の中間歯車のうちの1つと太陽歯車との間の歯車の噛み合いに向かって方向付けられている。
【0019】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、歯車付構造が、遊星歯車システムを含む。
【0020】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、歯車付構造を通してファンを駆動するように連結されたファン駆動タービンと、ファン駆動タービンの前方にある少なくとも1つのその他のタービンと、を含むタービン部を含む。
【0021】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、歯車付構造が、約98%超の効率を含む。
【0022】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、ガスタービンエンジンが、約10(10)超のバイパス比を有する高バイパスエンジンである。
【0023】
前述のガスタービンエンジンのいずれかのさらなる実施例において、ファンが、約1.45未満のファン圧力比を含む。
【0024】
本開示の例示的実施例によるガスタービンエンジン用の歯車付構造では、その他の可能性のあるもののうち、軸に沿って画定された太陽歯車を含む。リング歯車が、軸の周りに回転可能に固定されている。複数の遊星歯車が、太陽歯車およびリング歯車に噛み合い係合されている。軸の周りを回転し、複数の遊星歯車を回転支持するキャリア。複数のバッフルが、キャリアに取り付けられている。それぞれのバッフルが、複数の遊星歯車のうちの1つと太陽歯車との間の歯車の噛み合いに向かって方向付けられた複数の油ノズルと、歯車の噛み合いに対して複数の油ノズルの上流にある油排出スクープとを含む。
【0025】
前述の歯車付構造のいずれかのさらなる実施例において、油排出スクープが、内側排出路壁と、外側排出路壁と、これらの間にある径方向外側排出路壁と、を備える排出路を含む。
【0026】
前述の歯車付構造のいずれかのさらなる実施例において、径方向外側排出路壁が、出口に向かうランプ面を画定する。
【0027】
前述の歯車付構造のいずれかのさらなる実施例において、径方向外側排出路壁が、ピークを画定する。
【0028】
前述の歯車付構造のいずれかのさらなる実施例において、内側排出路壁と外側排出路壁との間に流れスプリッタをさらに含む。
【0029】
前述の歯車付構造のいずれかのさらなる実施例において、内側排出路壁が、外側排出路壁とは異なる長さである。
【0030】
前述の歯車付構造のいずれかのさらなる実施例において、歯車付構造が、タービン部とファン部との間の速度を約2.3超減少させる。
【0031】
本開示の例示的実施例によるタービンエンジン用の歯車付構造の設計方法であって、その他の可能性のあるもののうち、エンジン中心軸の周りを回転する太陽歯車を画定し、エンジン中心軸の周りに回転可能に固定されたリング歯車を画定し、太陽歯車およびリング歯車に噛み合い係合された複数の遊星歯車を画定し、中心軸の周りを回転し、複数の遊星歯車を回転支持するキャリアを構成し、複数の遊星歯車のうちの1つと太陽歯車との間の歯車の噛み合い係合に向かって方向付けられた複数の油ノズルと、歯車の噛み合いに対して複数の油ノズルの上流にある油排出スクープと、を備える少なくとも1つのバッフルを含むキャリアを画定することを含む、方法。
【0032】
前述の方法のいずれかのさらなる実施例において、内側排出路壁と、外側排出路壁と、これらの間にある径方向外側排出路壁と、を備える排出路を画定することを含む、油排出スクープを構成することを含む。
【0033】
前述の方法のいずれかのさらなる実施例において、出口に向かうランプ面を画定するように径方向外側排出路壁を構成することを含む。
【0034】
前述の方法のいずれかのさらなる実施例において、ピークを画定するように径方向外側排出路壁を構成することを含む。
【0035】
前述の方法のいずれかのさらなる実施例において、タービン部とファン部との間の速度を約2.3超減少させる歯車付構造を構成することを含む。
【0036】
前述の特性および要素は、明示的に別段の定めがある場合を除いて、非排他的に様々な組み合わせで結合され得る。これらの特性および要素は、以下の記載および添付図面の見地から、その作動と同様に、より明白になるだろう。しかしながら、以下の記載および図面は、例示的な性質であり限定されないことを目的としていることを理解すべきである。
【0037】
様々な特性が、開示された限定されていない実施例の以下の詳細な記載から当業者には明白になるだろう。詳細な説明を伴う図面は、以下のように簡潔に記載されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】歯車付構造のガスタービンエンジンの概略断面図である。
【
図3】1つの開示された限定されない実施例による、歯車付構造中のバッフルを通る概略断面図である。
【
図6】
図3のバッフルを通る歯車付構造の一部の概略断面図である。
【
図7】別の開示された限定されない実施例による、バッフルの概略軸方向図である。
【
図8】別の開示された限定されない実施例による、バッフルの概略軸方向図である。
【
図9】別の開示された限定されない実施例による、バッフルの透視図である。
【
図10】歯車付構造中の
図9のバッフルを通る概略断面図である。
【
図11】別の開示された限定されない実施例による、バッフルの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、ガスタービンエンジン20を概略的に示す。ガスタービンエンジン20は、一般にファン部22と、圧縮機部24と、燃焼器部26と、タービン部28とを組み込んでいる2スプールターボファンとして本明細書に開示されている。低バイパスターボファンのような代替的なエンジン構造は、その他のシステムまたは特性のうち、オーグメンタ部(図示せず)を含み得る。開示され限定しない実施例における高バイパスターボファンとして概略的に示されているが、この教示は他の種類のタービンエンジンに適用してよく、3スプール(ファンを加えた)エンジンを含むがこれらに限定されないため、本明細書で記載された概念はターボファンでの使用に限定されないと理解すべきであり、ここで、3スプールエンジンは、中間スプールが、ターボジェット、ターボシャフト、オープンロータおよび産業用ガスタービンのような、その他のエンジン構造と同様に、高圧タービンと低圧タービンとの間の中圧タービン(IPT)を有する低圧圧縮機と高圧圧縮機との間の中圧圧縮機(IPC)を含む。
【0040】
ファン部22は、空気をバイパス流路に沿って圧縮機部24へと運ぶ。圧縮機部24は、圧縮するために空気をコア流路に沿って運び、燃焼器部26へ伝達し、次にタービン部28を通して空気を膨張させ方向付ける。エンジン20は、一般に、いくつかの軸受区画38を介してエンジンケースアセンブリ36に対して、エンジン中心長手方向軸A周りに回転するように取り付けられた低スプール30と、高スプール32とを含む。
【0041】
低スプール30は、一般に、ファン42と、低圧(または第1の)圧縮機44と、低圧(または第1の)タービン46とを相互に連結する内側シャフト40を含む。内側シャフト40は、歯車付構造48を通してファン42を駆動し、低スプール30よりも低速度でファン42を駆動する。高スプール32は、高圧(または第2の)圧縮機52と、高圧(または第2の)タービン54とを相互に連結する外側シャフト50を含む。燃焼器56は高圧圧縮機52と高圧タービン54との間に配置されている。本明細書で使用する場合、「低」圧圧縮機またはタービンは、対応する「高」圧圧縮機またはタービンよりも低い圧力になる。内側シャフト40および外側シャフト50は、同心であり、それらの長手方向軸と同一線上にあるエンジン中心長手方向軸A周りに回転する。
【0042】
コア空気流は、低圧圧縮機44、次にHPC52によって圧縮され、燃焼器56中で燃料と混合、燃焼され、次にHPT54および低圧タービン46で膨張する。高圧タービン54および低圧タービン46は、膨張に応じて高スプール32および低スプール30それぞれを駆動する。
【0043】
一実施例では、ガスタービンエンジン20は、バイパス比が約6(6:1)より大きな、高バイパス歯車付構造のエンジンである。歯車付構造48は、遊星歯車システム(
図2)のような、エピサイクリック歯車システム58を含み得る。例示的なエピサイクリック歯車列は、約2.3より大きな歯車減速比を有し、別の実施例では、約2.5より大きく、約98%よりも大きな歯車システム効率を有する。歯車付ターボファンは、LPC44およびLPT46の作動効率を増大させ、より少数の段で圧力を増大させ得る高速で低スプール30を作動させることを可能にする。
【0044】
LPT46に関連する圧力比は、ガスタービンエンジン20の排出ノズルの前におけるLPT46の出口の圧力に関連したLPT46の入口前で測定された圧力である。1つの非限定的実施例では、ガスタービンエンジン20のバイパス比は、約10(10:1)より大きく、ファンの直径はLPC44の直径よりも著しく大きく、LPT46は約5(5:1)より大きな圧力比を有する。しかしながら、上述のパラメータは、歯車付構造エンジンの一実施例の例示でしかなく、本開示はダイレクトドライブターボファンを含む、その他のガスタービンエンジンに適用可能であると理解すべきである。
【0045】
1つの非限定的実施例では、相当量の推力が高バイパス比のためバイパス流によって提供される。ガスタービンエンジン20のファン部22は、特定の飛行条件用に、典型的には、約0.8マッハかつ約35,000フィートでの航行用に設計されている。この飛行条件は、最良燃料消費でのガスタービンエンジン20の状態で、バケット巡航の推力当たり燃料消費率(Thrust Specific Fuel Consumption)(TSFC)としても知られている。TSFCは、単位推力当たりの燃料消費の産業用標準パラメータである。
【0046】
ファン圧力比は、ファン出口ガイドベーンシステムのないファン部22のブレード前後の圧力比である。例示的なガスタービンエンジン20の1つの限定されない実施例による低ファン圧力比は、1.45未満である。低補正ファン先端速度は、実際のファン先端速度を(“T”/518.7)
0.5の産業用標準温度補正によって割ったものである。例示的なガスタービンエンジン20の1つの限定されない実施例による低補正ファン先端速度は、約1150fps(351m/s)未満である。
【0047】
図2を参照すると、エピサイクリック歯車システム58は、一般に、低スプール30によって駆動される可撓性入力シャフト62によって駆動される太陽歯車60と、回転可能に固定されたリング歯車64と、太陽歯車60およびリング歯車64に噛み合い係合した一組の遊星歯車68とを含む。可撓性入力シャフト62は、トルクを伝達するとともに、振動およびその他の過渡現象の分離を促進する。各遊星歯車68は、それぞれ回転キャリア74によって支持されたキャリアポスト70の周りに回転可能に取り付けられている。キャリア74は、歯車付構造58をファン42と結合するトルクフレーム66に結合されている。エピサイクリック歯車58は、ほんの概略的に示され、実際のシステムと比較して比較的簡略化されていると理解されよう。遊星エピサイクリック歯車システム58の回転キャリア74は、排出流の制御および方向付けを促進する。
【0048】
キャリア74は、例えば、各キャリアポスト70(
図3)への第1の油回路82と、複数のオイルジェット86(
図4)を備える第2の油回路84とを通して油を伝達する油マニホールド80を含む。すなわち、第1の油回路82は、各キャリアポスト70、および軸受、球面継手等(具体的には示されていない)のような、関連する遊星歯車の回転支持構造に油を伝達する。第2の油回路84は、例えば、複数のオイルジェット86から直接、太陽歯車60と各遊星歯車68との間のそれぞれの歯車の噛み合い90の上に、油を噴射して伝達する。油マニホールド80は、概略的に示され、実際の潤滑システムと比較して簡略化された潤滑システムの構成要素でしかなく、実際の潤滑システムは、油溜めと、排出ポンプと、主ポンプと、チップ検出器、熱交換器、脱気装置のような様々な潤滑剤再調整用構成要素と、などのような、複数の他の構成要素を含み得るが、本明細書に詳細に記述される必要がないと理解されよう。
【0049】
図3を参照すると、キャリア74は、複数のバッフル92により相互に連結された、離間した側壁を含んでよく、このバッフルは略くさび型の部材(
図4)である。キャリア74は、各2つの遊星歯車68の間に複数のバッフル92のそれぞれを搭載している。すなわち、通常、各遊星歯車68に1つのバッフル92がある。複数のバッフル92は、ボルトのような締結具94によってキャリア74に取り付けられている。
【0050】
図5を参照すると、1つの開示された限定されない実施例によると、各バッフル92は、軸方向の油路100から延びる複数のオイルジェット86と、油排出スクープ102(
図4にも示されている)とを含む。一般に、複数のオイルジェット86は、油が歯車の噛み合い90に隣接して噴射され、遊星歯車68の周りを回転し、次に油排出スクープ102によってそこから排出されるように、油排出スクープ102の上流にある。すなわち、バッフル92は、キャリア74内の分離した構成要素が最小になるように、統合された潤滑剤の進入と排出を促進する。さらに、バッフル92は、キャリア74の材料とは異なる、より軽量の材料から構成可能である。
【0051】
油排出スクープ102は、径方向外側排出路壁106と、それに隣接する出口108とを備える排出路104を含む。バッフル92は、一般に、隣接する遊星歯車68(
図4)の直径に沿う湾曲した外側バッフル壁110A、110Bと、それを横切る端壁112A、112B(
図5)とを備える、略くさび型の形状である。バッフルの端壁112A、112Bは、エンジン中心長手方向軸Aに対して互いに軸方向に移動される。
【0052】
排出路104は、内側排出路壁104Aと、隣接する遊星歯車68のP軸に対して内側排出路壁104Aの下流の外側排出路壁104Bとを含む(
図4)。この開示された限定されない実施例においては、内側排出路壁104Aおよび外側排出路壁104Bは、一般に、外側バッフル壁110Aの湾曲に沿う。外側排出路壁104Bは、円周方向に配置され、油を隣接する遊星歯車68から排出路104へと方向付ける。すなわち、油排出スクープ102は、一般に遊星歯車68の回転方向に対して配置される。
【0053】
外側排出路壁104Bは、太陽歯車60と遊星歯車68との間の歯車の噛み合い90から、油の進入を促進する、やまば歯車の中央に沿うように、少なくとも部分的に太陽歯車60(
図3)中の溝60Gへ延在する頂部延長部を含み得る。頂部と共にまたはそれ無しで作動するその他の歯車の配置もまた、そこから利益を得ると理解されよう。
【0054】
一旦、排出路104に入ると、キャリア74の回転からの遠心力が油を径方向外側に運ぶ。バッフル排出路104は、例えば、チャーニング損失を減少させるために、油を回転する遊星歯車68から離れるように方向付ける。この開示された限定されない実施例における外側排出路壁106は、出口108(
図6)に向かって延びるランプを備えるランプ形状である。
【0055】
図6を参照すると、一旦バッフル92を通って伝達されると、油は、例えば、補助油システム116(概略的に、図示されている)に、例えば、リング歯車64の径方向外側の排出溝118を通って半径方向に吐出される。様々な油システムが、代替的に、または付加的に提供され得ることを理解すべきである。
【0056】
バッフル排出路104は、例えば、補助油システム116に供給するのに十分な量の油を方向付け、残りが油溜めシステムに方向付けられるように、幾何学的に画定され得る。多くの歯車列の構成要素は、様々な時間間隔に対する潤滑剤不足に耐え得る。しかしながら、ある構成要素は、潤滑剤の不足に対する耐性が低く、そのため補助油システム116が、少なくとも一時的に、航空機操縦および/または航空機の針路から生じ得る低G状態を含む全ての状態における油の流れを確実にする。様々な油システムが、代替的に、または付加的に提供され得ることを理解すべきである。
【0057】
排出流の制御を通して、すなわち、過剰に流れないように、補助油システム116、チャーニング損失を減少させる。例えば、弓状壁110Aaは、油の速度を増すように、排出路104中の空気をより多く運ぶために長さを減少させてよく(
図7)、または弓状壁110Abは、油の速度を下げるように、排出路104中の空気をより少なく運ぶために長さを延長してよい(
図8)。様々なその他の形状および幾何学構成もまた、利用され得ることを理解すべきである。
【0058】
図9を参照すると、別の開示された限定されない実施例によると、各バッフル92Aは、ピーク120を備える外側排出路壁106Aを含む。ピーク120は、油の流れを、前方出口108Aと後方出口108B(
図10)に分ける。ピーク120の位置は、前方および後方の油の分配を制御する。例えば、外側排出路壁106Aの中央に配置されたピークは、例えば補助油システム116と油溜めシステム122との間の分配を50%−50%にする。その他の分配が、代替的に提供され得ることを理解すべきである。
【0059】
図11を参照すると、別の開示された限定されない実施例によると、各バッフル92Bは、排出スクープ102B内に流れスプリッタ130を含む。流れスプリッタ130は、前後の油配分の促進に加えて、壁104Aと104Bとの間の構造の支持の役割もする。
【0060】
バッフル92の排出流路は、風損およびチャーニング損失を減少させることを通してシステム効率を促進する。加えて、補助油システム116への油の流れの量を制御することで、過剰なチャーニング損失を最小限に抑える。
【0061】
「前方」、「後方」、「上部」、「下部」、「上方」、「下方」等のような、相対位置を表す用語は、車両の標準的な作動姿勢に関するものであり、それ以外の場合を限定するものと考えるべきではないと理解すべきである。
【0062】
同一参照符号は、いくつかの図面を通して、対応するまたは類似の要素を示すと理解すべきである。特定の構成要素の配置が、図示された実施例に開示されているが、その他の配置はここから利益を得るであろうと理解すべきでもある。
【0063】
特定の工程順序が示され、記載され、特許請求されているが、特に指示がない限り、工程は任意の順序で、分割され、組み合わされて行われてよく、本開示から依然として利益を得ると理解すべきである。
【0064】
前述の記載は、限定によって定義されるよりもむしろ、例示的なものである。様々な限定されない実施例が本明細書にて開示され、しかしながら、当業者は、様々な修正および変更は、上述の教示を考慮すれば、添付された特許請求の範囲内にあると認識するであろう。したがって、添付された特許請求の範囲内に、この開示は具体的に記載されたもの以外について実行され得ると理解すべきである。このような理由から、添付の特許請求の範囲は、本来の範囲および内容を決定するために検討されるべきである。