特許第6208904号(P6208904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6208904
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】非外科的歯周再生療法
(51)【国際特許分類】
   A61C 3/02 20060101AFI20170925BHJP
   A61B 18/20 20060101ALI20170925BHJP
   A61C 19/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61C3/02 R
   A61B18/20
   A61C19/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-15696(P2017-15696)
(22)【出願日】2017年1月31日
【審査請求日】2017年2月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517033687
【氏名又は名称】綿引 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】綿引 淳一
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−062438(JP,A)
【文献】 特表2002−538191(JP,A)
【文献】 特開2011−168516(JP,A)
【文献】 歯科医学大事典編集委員会,歯周ポケットそう爬術,歯科医学大事典,日本,医歯薬出版株式会社,2001年12月20日,第1版, 第6刷,p. 1168-1169
【文献】 Nibali L, et al.,Clinical and radiographic outcomes following non-surgical therapy of periodontal infrabony defects: a retrospective study,J Clin Periodontol,2011年,Vol. 38,p. 50-57
【文献】 Anastasios Plessas,Nonsurgical Periodontal Treatment: Review of the Evidence,Oral Health Dent Manag,2014年 3月,Vol. 13, No. 1,p. 71-80
【文献】 M. Kataoka, et al.,The influence of zinc iontophoresis on in vitro adherence of fibroblasts to periodontal ly-diseased cementum,Journal of Periodontal Research,1987年,Vol. 22,p. 296-299
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 3/02
A61B 18/20
A61C 19/06
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯周ポケットが4mm以上の歯周病に罹患している歯の根面にエルビニウムヤグレーザを照射する歯石除去用レーザ光照射装置と、
アミノ酸粒子を含み、前記レーザ光照射装置によりエルビニウムヤグレーザが照射された歯の根面に吹き付けられるバイオフィルム除去剤と、
前記バイオフィルム除去剤が吹き付けられた歯の根面にフッ素イオンを導入するフッ素イオン導入装置とからなる、歯周病治療および歯周組織再生用キット。
【請求項2】
歯周ポケットが4mm以上の歯周病に罹患している歯の根面にエルビニウムヤグレーザを照射する歯石除去用レーザ光照射装置と、
アミノ酸粒子を含み、前記レーザ光照射装置によりエルビニウムヤグレーザが照射された歯の根面に吹き付けられるバイオフィルム除去剤と、
前記バイオフィルム除去剤が吹き付けられた歯の根面にフッ素イオンを導入するフッ素イオン導入装置と、
前記フッ素イオン導入装置によりフッ素イオンが導入された後に前内縁上皮除去を行うためのレーザ光を照射する治癒促進用レーザ光照射装置とからなる、歯周病治療および歯周組織再生用キット。
【請求項3】
前記アミノ酸粒子がグリシンを含む請求項1または2に記載の歯周病治療および歯周組織再生用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯周病の治療において使用できるキットに関し、特に歯周病を治療するとともに歯周組織を再生することができるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病とは、プラーク細菌の感染によって引き起こされる歯周組織(歯を支える周囲組織の総称で、歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨の4つの組織を指す。)における炎症性疾患である。
歯周病に罹患すると、歯周組織が失われ歯が動くようになり、段階を経て、歯を失うことになってしまう。
【0003】
従来、歯周病の治療においては、歯科衛生士によるスケーリングやSRP(一般的に、歯石取りと呼ばれる処置)が行われている。また、重度の患者に対しては、上記の治療の後に、歯科医師による外科手術を行う場合もある。
一般的な外科手術は、フラップ手術と呼ばれ歯ぐきをメスを使って切開し、歯ぐきの中に隠れた歯石(歯周病原菌の塊り)の除去等を行う。
しかし、以上のような従来の歯周病治療では、歯周炎症を無くす事は可能だが、すでに失われた歯周組織が再生するわけではない。逆に炎症した歯周組織を取り除く事で炎症がなくなった反面、歯周組織をさらに失ってしまうことになり、長期的な予後には不安が残る場合がある。
【0004】
そのため、歯周組織再生療法が近年、注目を集めている(例えば非特許文献1)。歯周組織再生療法では、歯周病によって失われた歯周組織をある程度再生することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J Periodontol 2015;86(Suppl.):S77-S104.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現在までの歯周組織再生療法の場合も外科手術を行う必要があった。当該外科手術は侵襲性が大きい手術であり、さらに高い技術が求められ結果の成否には術者の技術に依存する部分が大きい。さらに、手術がうまく行かない場合には症状をさらに悪化させてしまうことも少なくない。
さらに、当該外科手術において用いられる骨補填材等の再生材料として、日本の薬事法で未承認の薬を使用しなければならない。
また、再生手術後は付着歯肉の喪失により歯が長くなったように見えることから、2次的に歯肉移植手術を追加で必要になることが多い。そのため、高血圧等の基礎疾患がある高齢の患者や、手術に強い恐怖心のある患者には積極的には勧め難い治療方法であった。
【0007】
本発明は、歯周病の治療において、メスを使った切開などの外科手術を行うことなく歯周組織を再生できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 歯周病に罹患している歯の根面にエルビニウムヤグレーザを照射する歯石除去用レーザ光照射装置と、
アミノ酸粒子を含み、前記レーザ光照射装置によりエルビニウムヤグレーザが照射された歯の根面に吹き付けられるバイオフィルム除去剤と、
前記バイオフィルム除去剤が吹き付けられた歯の根面にフッ素イオンを導入するフッ素イオン導入装置とを含む、歯周病治療および歯周組織再生用キット。
[2] 前記フッ素イオン導入装置によりフッ素イオンが導入された後に前内縁上皮除去を行うためのレーザ光を照射する治癒促進用レーザ光照射装置をさらに備える[1]に記載の歯周病治療および歯周組織再生用キット。
[3] 前記アミノ酸粒子がグリシンを含む[1]または[2]に記載の歯周病治療および歯周組織再生用キット。
[4] 歯周病に罹患している患者において歯周病を治療するとともに歯周組織を再生する方法であって、
歯周病に罹患している歯の根面にエルビニウムヤグレーザを照射し、
アミノ酸粒子を含むバイオフィルム除去剤をエルビニウムヤグレーザが照射された歯の根面に吹き付け、
前記バイオフィルム除去剤が吹き付けられた歯の根面にフッ素イオンを導入することを含む方法。
[5] フッ素イオンが導入された後にレーザ光照射による前内縁上皮除去を行うことをさらに含む[4]に記載の方法。
[6] 前記アミノ酸粒子がグリシンを含む[4]または[5]に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、歯周病の治療において外科手術を行うことなく歯周組織を再生できる新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る処理フローの一例を示す図である。
図2】実施例1に係る対象の、処理前と処理後を示す図である。
図3】実施例2に係る対象の、処理前と処理後を示す図である。
図4】実施例3に係る対象の、処理前と処理後を示す図である。
図5】実施例4に係る対象の、処理前と処理後を示す図である。
図6】比較例1に係る対象の、処理前と処理後を示す図である。
図7】比較例2に係る対象の、処理前と処理後を示す図である。
図8】実施例3に係る処理前と処理後を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態は、歯周病に罹患している患者において歯周病を治療するとともに歯周組織を再生する方法に関し、当該方法は、対象である歯の根面にエルビニウムヤグレーザ(ErYAGレーザ)を照射し、アミノ酸粒子を含むバイオフィルム除去剤をErYAGレーザが照射された歯の根面に吹き付け、バイオフィルム除去剤が吹き付けられた歯の根面にフッ素イオンを導入することを含む。
当該方法は、例えば、ErYAGレーザを照射するレーザ光照射装置と、アミノ酸粒子を含むバイオフィルム除去剤と、フッ素イオン導入装置とを含む歯周病治療および歯周組織再生用キットを用いて行うことができる。
なお、本明細書において、歯周組織の再生とは、歯周病によって失われた歯周組織(歯根膜、セメント質、歯槽骨、歯肉)を元の状態に戻す事をいう。
【0012】
本実施形態に係る方法は、歯周病と診断された歯の根面に対して行われる。
歯周病に罹患して症状が進行すると、歯牙の周囲にポケット(溝)が形成される。本明細書において、歯の根面とは、歯周組織の喪失によって歯周ポケット内で露出してしまった歯の根の部分をいう。
なお、本実施形態において、治療対象となる歯周病の進行の程度は特に限定されないが、例えば歯周ポケットが4mm以上の中程度以上の歯周病に罹患した部位に対して行うようにすることができる。また、対象も限定されず、ヒトのほか、イヌやネコなどのヒト以外の動物であってもよい。
【0013】
本実施形態に係る処理フローの一例を図1に示す。
まず、レーザ光照射等の本実施形態に係る処理を行うに先立ち、歯周精密検査とイニシャルトリートメント(初期治療)を行う(Step101)。
例えば、歯周病治療の通法に従い6点法による精密な歯周ポケット検査を行い、さらにレントゲン及びCT撮影を行う。また、患者にはブラッシング、フロス、歯間ブラシなどのホームケアに指導を徹底して行う。噛み合わせに問題があるケースでは、咬合調整や夜間のナイトガード治療、ワイヤー等による歯の固定を行う。
【0014】
初期治療を行った後、本実施形態に係る処理を実行する。まず、対象である歯の根面にエルビニウムヤグレーザ(ErYAGレーザ)を照射する(Step102)。これにより、根面に付着した歯肉縁下歯石(歯周ポケット内部の歯石)の除去を行う。
ErYAGレーザは基質としてエルビウム/イットリウム・アルミニウム・ガーネットを利用するレーザ光であり、波長2.94μm、パルス波として出力される。また、歯科用では注水下で用い硬組織、軟組織の両方に安全に使用できるレーザである。ErYAGレーザを照射するレーザ光照射装置は特に限定されず、例えば公知のものを用いることができる。
【0015】
次に、レーザ光照射装置によりレーザ光が照射された歯の根面にバイオフィルム除去剤を吹き付ける。これにより根面に付着したバイオフィルムを除去する(Step103)。
当該バイオフィルム除去剤は、アミノ酸粒子を含む構成とすることができ、市販品などを利用することができる。当該アミノ粒子を構成するアミノ酸の種類や粒子の大きさなどについては特に限定されず当業者が適宜設定できるが、歯周組織再生作用をより高める観点からグリシンを含むことが好ましい。グリシン粒子を含むバイオフィルム除去剤としては、ペリオメイト(ナカニシ製)、グリシンパウダー(EMS社製 エアーフローパウダーソフト、エアーフローパウダーペリオ)などを例示することができる。
また、バイオフィルム除去剤の処理方法についても特に限定されず通常行われている方法により行うことができ、例えば圧縮空気と水によってバイオフィルム除去剤を根面に吹き付けるなどすればよい。バイオフィルム除去剤の使用量についても特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
【0016】
続いて、バイオフィルム除去剤が吹き付けられた歯の根面にフッ素イオンを導入する(Step104)。当該処理により、バイオフィルム除去剤によって感染源が取り除かれた清潔な根面をフッ素のイオン導入によってピコレベルでセメント質の再石灰化(傷んだセメント質の修復)を促す。
フッ素イオン導入は、例えばフッ化物から生じさせたフッ素イオンを人体を一時的に正極性に帯電させて行うことができ、公知の装置を用いて処理を行うことができる。
【0017】
続いて、上記フッ素イオン導入を行った後に、歯周ポケット内に血液の貯留している状態で約45°レーザーチップを歯周ポケットに配してポケット内を上下左右に動かし、感染した内縁上皮を除去する(Step105)。使用するレーザは特に限定されず、当業者が適宜設定できる。当該Step105において用いることができるレーザ光としては、例えば上述のErYAGレーザのほか、NdYAGレーザなどを挙げることができる。よって、Step101に係る歯石除去のために用いられるレーザ光照射装置と当該Step105に係る内縁上皮除去のために用いられるレーザ光照射装置は共通のレーザ光照射装置を用いて行うようにしてもよい。またレーザ光照射条件なども特に限定されない。
当該処理による内縁上皮の除去により、歯周ポケット底の骨にもレーザ光が照射され、歯根膜に存在する成体幹細胞が刺激される。また、歯周ポケット内は十分な血餅で満たされ止血させる。その結果、歯周病の治癒を促進することができる。
【0018】
以上、本実施形態によれば、歯周病の治療において、メスを使った切開などの外科手術を行うことなく歯周組織を再生できる新規な技術を提供することができる。
当該処理を行った後、個人差もあるが、例えば以下のような経過を辿ることができる。まず、術後約2週間程度で歯根面に歯肉結合組織が付着し歯肉上皮のダウングロースを防ぎ歯周ポケットの減少が起こる。そして、術後約6ヶ月以降に歯根面に付着した歯肉の結合組織及び既存の歯根膜由来の成体幹細胞によって歯周組織(特に歯槽骨、セメント質、歯根膜)の再生が認められる。
なお、以上のとおり説明したが、本発明はこれに限定されず、他の態様とすることもできる。例えば、本実施形態の治療方法としてレーザ光照射による内縁上皮除去を含む方法を説明したがこれに限定されず、例えば当該処理を行わないようにしてもよい。一方で、内縁上皮除去を行うことにより、上述のとおり、治癒を早めることができる。
また、他の態様として、レーザ光照射による内縁上皮除去を行った後に、ポケット内にエムドゲインゲル、FGF2などの成長因子を塗布するようにしてもよい。当該処理により、治癒をさらに早めることが可能である。
【実施例】
【0019】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0020】
[実施例の各処理について]
75歳から61歳の男性患者4名に対して治療に先立ち、6点法による精密な歯周ポケット検査を行った。また、レントゲン及びCT撮影、さらに歯周病の原因菌の細菌検査などの精密歯周病検査を行った。診断の結果、いずれも慢性歯周炎と診断された。
また、患者にはブラッシング、フロス、歯間ブラシなどのホームケアを徹底して行った。噛み合わせに問題があり歯の動揺が認められた部位では、咬合調整や夜間のナイトガード治療、ワイヤー等による歯の固定を通法の歯周病の初期治療に従って行った。
【0021】
上記の初期治療が完了した後、ErYAGレーザ(アーウィン アドベール モリタ製、照射条件:20PPS、50mJ)として、注水下で歯周ポケット内の歯根面に向かって上下左右にレーザ照射チップ(品番モリタP400T)を動かしてレーザ光照射を行い、歯石の除去を行った。なお、当該レーザ光照射処理は原則無麻酔で行うことが可能であるが患者の状態を見ながら適時局所麻酔下で行った。
【0022】
次に、バイオフィルム除去剤としてのアミノ酸パウダーを、ErYAGレーザを照射した歯の根面に吹き付け、バイオフィルムの除去を行った。アミノ酸パウダーとして、グリシンを含むペリオメイト(ナカニシ製)及び同じくグリシンを含むグリシンパウダー(EMS社製、 研磨性が異なるエアーフローパウダーソフト及びエアーフローパウダーペリオを50:50の割合で混合)を用いた。
【0023】
次いで、フッ素イオン導入装置(パイオキュアー、ナルコム社製)を用い、フッ素イオン導入によって根面セメント質の再石灰化(傷んだセメント質の修復)を促し、歯根膜の再生しやすい環境を整備した。
【0024】
次いで、ErYAG レーザ( アーウィン アドベール モリタ製、照射条件:20PPS、50mJ)で照射チップ(品番モリタP400T)を用い、原則無麻酔下で歯根に対し約45°から30°の角度でレーザーチップを配しポケット内を上下左右に動かし感染した内縁上皮を除去した。さらに、歯周ポケット底の残存歯根膜や骨にもErYAGレーザを照射し、歯根膜や骨に存在する成体幹細胞を刺激した。
【0025】
術後当日は、抗生剤(アズスロマイシンを3日間)及び鎮痛剤(ロキソニンを疼痛時のみ内服指示)を投与し術後の感染予防と術後の疼痛に配慮した。術後の評価は、術後6ヶ月でCT及びデンンタルX線撮影を行い、術後1年経過後に6点法による歯周ポケット検査を行った(6点法歯周ポケット値の正常値:一般的に正常値は3mm以下)。
【0026】
[実施例1]
実施例1に係る処理の結果を図2に示す。
実施例1の症例は、下顎左側4番5番の隣接部に6.0mの歯周ポケットがあり、同部位のCT画像から垂直的骨欠損が存在しており従来では歯周外科治療が適応なケースである。
実施例1では、上述の方法、条件で治療を行い6ヶ月後に再評価を行なった。CT所見からは垂直的骨欠損部位が再生しており歯周ポケットも3.0mmとなり歯周ポケットが正常範囲になった。当該診断結果から、歯周病による骨の欠損が再生により改善したと考えられる。
【0027】
[実施例2]
実施例2に係る処理の結果を図3に示す。
実施例2の症例は、下顎右側7番の遠心部に9.0mの歯周ポケットがあり、同部位のCT画像から大きな垂直的骨欠損が存在しており従来では歯周外科治療が不可欠なケースである。
実施例2では、上述の方法、条件で治療を行い6ヶ月後に再評価を行なった。CT所見からは垂直的骨欠損部位が再生により改善しており歯周ポケットも3.0mmとなり歯周ポケットが正常範囲になった。当該診断結果から、歯周病による骨の欠損が再生により顕著に改善したと考えられる。
【0028】
[実施例3]
実施例3に係る処理の結果を図4に示す。
実施例3の症例は、下顎右側6番の舌側に6.0mの歯周ポケットがあり、同部位のCT画像から垂直的骨欠損が存在しており従来では歯周外科治療が不可欠なケースである。
実施例3では、上述の方法、条件で治療を行い6ヶ月後に再評価を行なった。CT所見からは垂直的骨欠損部位が再生しており歯周ポケットも3.0mmとなり歯周ポケットが正常範囲になった。当該診断結果から、歯周病による骨の欠損が再生により改善したと考えられる。
また、実施例3に係る処理前と処理後12ヶ月の口腔内写真を図8に示す。図8から理解できるとおり、口腔全体において肉眼的にも歯周病による炎症の顕著な改善が認められた。
【0029】
[実施例4]
実施例4に係る処理の結果を図5に示す。
実施例4の症例は、上顎右側5番の遠心部に6.0mの歯周ポケットがあり、同部位のCT画像から水平・垂直的骨欠損が存在しており歯周外科治療でも完全な再生が困難であると予測されるケースである。
実施例4では、上述の方法、条件で治療を行い6ヶ月後に再評価を行なった。CT所見からは水平垂直的骨欠損部位が再生しており歯周ポケットも3.0mmとなり歯周ポケットが正常範囲になった。当該診断結果から、歯周病による骨の欠損が再生により改善したと考えられる。
【0030】
[比較例1]
比較例1の結果を図6に示す。
比較例1の症例は、下顎左側4番5番に6.0mから9mmの歯周ポケットがあり、同部位のレントゲン画像から垂直的骨欠損が存在しており歯周外科治療が適応なケースである。
比較例1では、ErYAGレーザの照射のみを用いた治療を行い6ヶ月後に再評価を行なった。その結果、歯周ポケットには大きな改善が認められず、レントゲン所見からも垂直的骨欠損の明らかな改善は認められなかった。
【0031】
[比較例2]
比較例2の結果を図7に示す。
上記の症例は、下顎左側7番遠心部に69mmの歯周ポケットがあり、同部位のCT画像から垂直的骨欠損が存在しており歯周外科治療が適応なケースである。
比較例2では、上述のアミノ酸パウダーのみを用いた治療を行い6ヶ月後に再評価を行なった。その結果、歯周ポケットには大きな改善が認められずレントゲン所見からも垂直的骨欠損の明らかな改善は認められなかった。



【要約】
【課題】歯周病の治療において、メスを使った切開などの外科手術を行うことなく歯周組織を再生できる新規な技術を提供する。
【解決手段】歯周病に罹患している患者において歯周病を治療するとともに歯周組織を再生する方法であって、歯の根面にエルビニウムヤグレーザを照射し、アミノ酸粒子を含むバイオフィルム除去剤を前記エルビニウムヤグレーザが照射された歯の根面に吹き付け、バイオフィルム除去剤が吹き付けられた歯の根面にフッ素イオンを導入する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8