(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記径小部は、他方の端面寄りに他方の端面に近づく程外径が減少する外面テーパを具備し、前記内面テーパの内径が減少する割合は、前記外面テーパの外径が減少する割合よりも大きく、一方の地山埋設鋼管の前記内面テーパと、他方の地山埋設鋼管の前記外面テーパと他方の端面との角部が押し合うことを特徴とする請求項2記載の地山埋設鋼管。
前記拡径部の内径および外径はそれぞれ、前記内面テーパと前記雄ネジとの間である本体部の内径および外径よりも大きく、前記拡径部の肉厚は前記本体部の肉厚よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の地山埋設鋼管。
【背景技術】
【0002】
従来、地山や地盤(以下まとめて「地山」と称す)に埋設される鋼管として、たとえば、地山に地山補強材を注入するための鋼管や、地山から水を排出するための鋼管等が知られている。
たとえば、脆弱な地山にトンネルを施工する際、切羽前方を安定にした状態で掘削を開始する「AGF工法」等の工法において使用される。かかる工法は、切羽の前方斜め上方に略アーチ状に並ぶように複数の鋼管(以下「連結鋼管」と称す)を打設するものであって、連結鋼管は互いに直列に連結された複数の鋼管(以下、該鋼管それぞれを「地山埋設鋼管」と称す)によって形成されている。
すなわち、一本目(先頭)の地山埋設鋼管は、その前端に掘削装置が設置され、掘削に伴って形成される掘削穴に、掘削に追従して引き込まれる。そして、所定の距離だけ引き込まれた時点で、一本目の地山埋設鋼管の後端に二本目(中間)の地山埋設鋼管の前端が連結され、掘削に追従して両者は掘削穴に引き込まれる。以降同様に、三本目(中間)の地山埋設鋼管と四本目(中間または後尾)の地山埋設鋼管とが連結され、連結鋼管として掘削穴に引き込まれる。
【0003】
そして、連結鋼管は、掘削(引き込まれ)が終了したところで、後端から地山補強剤(安定剤ないし固定剤に同じ)を内部に供給して、地山補強剤を地山埋設鋼管の側面に設けられた貫通孔から地山に注入することで「補強剤注入用」にする。あるいは、補強剤注入用に代えて、地山補強剤等を供給することなく内部に貫通孔から地下水を取り込むことで「水抜き用」にする。
なお、連結鋼管の長さ、連結される地山埋設鋼管の長さや本数は限定されるものではなく、また、連結鋼管の姿勢は水平、水平に対して傾斜あるいは鉛直の場合がある。さらに、貫通孔を設けないで、内部を容器にしたり、内部を流路(掘削装置を撤去する)にしたりする場合がある。
【0004】
地山埋設鋼管は、地山の圧力に耐える圧壊強度と、引き込まれる際に互いが離隔しない、すなわち、連結部が破断しない破断強度と、施工時のハンドリングや引き込を容易にするための軽量化とが要求されている。
そして、地山埋設鋼管同士の連結を、一方の管端に形成した雄ネジと他方の管端に形成した雌ネジとの螺合によった場合、雄ネジと雌ネジとは地山埋設鋼管の肉厚の略中央において螺合するため、雄ネジ部における肉厚(ネジ谷底から内面までの距離)および雌ネジ部における肉厚(ネジ谷底から外面までの距離)が小さくなる。
したがって、破断強度が低下するため、また、肉厚を厚くして破断強度を保証しようとすると、重くなったりするため、これらを解消するための発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明(地山埋設鋼管に相当する)は、一方の管端部の外面に雄ネジを形成し、他方の管端部を拡径して、拡径した部分の内面に、前記雄ネジに螺合する雌ネジを形成したものである。
このため、雄ネジ部における肉厚および雌ネジ部における肉厚を所定の厚さにして、破断強度を向上させることや、破断強度の向上により、地山埋設鋼管の肉厚を薄くすること(軽量化)ができるとしている。なお、特許文献1に説明された実施の形態では、地山埋設鋼管は、外径が76.3mmで肉厚が4.2mmという比較的小径の鋼管であって、拡径された部分の外径は81.7mmで肉厚が3.9mmである。
【0007】
しかしながら、掘削装置に打撃や回転を付与しながら掘削を進める場合、地山に多数回の打撃や回転を繰り返し付与したり、掘削装置の昇降を繰り返したりするため、そのときの振動が雄ネジと雌ネジとの螺合部に繰り返し伝達される。そうすると、特許文献1に開示された地山埋設鋼管では、拡径部は拡径されていない部分に比較して、外径が大きくなると共に肉厚は小さく(薄く)なって断面剛性が低下するため、雄ネジと雌ネジとの螺合が弛むおそれがあるという問題がある。
特に、より外径の大きな鋼管(例えば、89.1mmや114.3mm等)に適用した場合や、より肉厚の薄い鋼管(例えば、3.9mm等)に適用した場合には、拡径部の外径はさらに大きくなると共に肉厚はさらに薄くなるため、かかる問題が顕著になる。
【0008】
本発明は、かかる問題を解消するものであって、圧壊強度および破断強度を保証すると共に、雄ネジと雌ネジとの螺合が弛むおそれを抑えることができる地山埋設鋼管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る地山埋設鋼管は、互いに直列に連結されて地山に埋設される地山埋設鋼管であって、一方の端面から所定の範囲に形成された拡径部と、前記拡径部の内面に形成された雌ネジと、前記拡径部の内面に繋がって形成され、一方の端面から遠ざかる程内径が減少する内面テーパと、他方の端面から所定の範囲に形成された雄ネジとを有し、
一方の地山埋設鋼管の前記雄ネジと他方の地山埋設鋼管の前記雌ネジとが螺合して、一方の地山埋設鋼管の前記雄ネジと他方の地山埋設鋼管の前記内面テーパとが押し合うことを特徴とする。
(2)また、互いに直列に連結されて地山に埋設される地山埋設鋼管であって、一方の端面から所定の範囲に形成された拡径部と、前記拡径部の内面に形成された雌ネジと、前記拡径部の内面に繋がって形成され、一方の端面から遠ざかる程内径が減少する内面テーパと、他方の端面から所定の範囲の外面に形成された径小部と、前記径小部に繋がって形成された雄ネジとを有し、
一方の地山埋設鋼管の前記雄ネジと他方の地山埋設鋼管の前記雌ネジとが螺合して、一方の地山埋設鋼管の前記径小部と他方の地山埋設鋼管の前記内面テーパとが押し合うことを特徴とする。
(3)また、前記径小部は、他方の端面寄りに他方の端面に近づく程外径が減少する外面テーパを具備し、前記内面テーパの内径が減少する割合は、前記外面テーパの外径が減少する割合よりも大きく、一方の地山埋設鋼管の前記内面テーパと、他方の地山埋設鋼管の前記外面テーパと他方の端面との角部とが押し合うことを特徴とする。
(4)また、前記拡径部の内径および外径はそれぞれ、前記内面テーパと前記雄ネジとの間である本体部の内径および外径よりも大きく、前記拡径部の肉厚は前記本体部の肉厚よりも小さいことを特徴とする。
(5)また、他方の端面から所定の範囲に管軸に略平行なスリットが形成されていることを特徴とする。
(6)さらに、前記拡径部と前記雄ネジとの間に貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る地山埋設鋼管は前記構成であるから、以下の作用効果を奏する。
(a)雌ネジが形成された部分の肉厚(ネジ谷底と拡径部の外面までの距離)および雄ネジが形成された部分の肉厚(ネジ谷底と内面までの距離)が、拡径部を形成しないで雌ネジおよび雄ネジを形成した場合に比較して増大するため、互いに螺合した雌ネジと雄ネジとを管軸方向に引き離そうとしたときの破断強度が向上する。
(b)また、破断強度が向上することから、破断強度および圧壊強度をそれぞれ所定の値に担保することができる値にまで、肉厚を薄くすることが可能になるため、軽量化が促進される。
(c)さらに、雄ネジと内面テーパとは押し合うため、あるいは径小部と内面テーパとは押し合うため、雄ネジのネジ面(斜面)と雌ネジのネジ面(斜面)との接触面圧が増大すると共に、雄ネジと内面テーパとの間にも摩擦力が、あるいは径小部と内面テーパとの間にも摩擦力が作用することによって、雄ネジと雌ネジとの螺合が弛み難くなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態1、2」という)を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図は模式的に描かれたものであって、本発明は図示された形態(部位の形状や個数等)に限定されるものではない。また、図面が煩雑にならないようにするため、一部の部材または一部の符号の記載を省略する場合がある。
【0013】
[実施の形態1]
図1〜
図3は本発明の実施の形態1に係る地山埋設鋼管を、AGF工法における「補強剤注入用の鋼管」を例にして説明するものであって、
図1は使用状況を示す側面視の断面図、
図2は側面図、
図3は使用状況における一部を示す側面図である。なお、
図2および
図3は、一点鎖線にて示す中心線よりも上方を断面にしている。
【0014】
(連結管)
図1において公知のAGF工法に使用される連結鋼管9は補強剤注入用の鋼管であって、地山7に形成された掘削穴8に設置される。たとえば、全長が12.5m程度であるため、3m強の地山埋設鋼管1、2、3、4を直列に4本連結して形成されている。なお、連結鋼管9の全長や連結される地山埋設鋼管1、2等の長さおよび本数は限定されるものではない。
このとき、一本目(先頭)の地山埋設鋼管1の前端は掘削装置5に設置され、掘削に追従して形成される掘削穴8に引き込まれる。そして、地山埋設鋼管1の後端に二本目(中間)の地山埋設鋼管2の前端が連結され、掘削に追従して形成される掘削穴8に引き込まれる。以降同様に、地山埋設鋼管2の後端に三本目(中間)の地山埋設鋼管3の前端が連結され、地山埋設鋼管3の後端に四本目(後尾)の地山埋設鋼管4の前端が連結され、それぞれ掘削穴8に引き込まれる。
そして、掘削装置5の一部が回収された後、地山埋設鋼管4の後端に地山補強剤を注入するための注入装置6が設置される。
【0015】
なお、掘削装置5は、互いに着脱可能なインナービット(パイロットビット)とアウタービット(リングビット)とを具備する公知の二重管式掘削装置であって、掘削完了後、インナービット(図示しない)が回収されるため、
図1に示す掘削装置5は地山7に残留したアウタービットである。
また、注入装置6は、地山埋設鋼管4の管端部を閉塞する閉塞手段、地山補強剤を輸送する輸送ホース、および地山補強剤に圧力を付与する圧送手段等を具備する(何れも図示しない)。ただし、本発明は、掘削装置5の構造および注入装置6の構造を限定するものではない。
なお、地山埋設鋼管3および地山埋設鋼管4は同じものであるから、以下の説明において、それぞれを「地山埋設鋼管10」と総称する。また、地山埋設鋼管1および地山埋設鋼管4は地山埋設鋼管10の一部を変更したものである(これについては別途説明する)。
【0016】
(地山埋設鋼管)
図2において、地山埋設鋼管10は、一方の端面(以下「前端面」と称す)12から距離aの範囲に形成された拡径部20と、拡径部20の内面に形成された雌ネジ21と、拡径部20の内面に繋がって形成され、前端面12から遠ざかる程内径が減少する内面テーパ22と、内面テーパ22に繋がった内面を具備する本体部11とを有している。
すなわち、拡径部20および内面テーパ22は内径および外径を拡大する塑性変形によって形成されたもの(所謂「エキスパンド」)であって、アプセットされないため、減肉している。
また、雌ネジ21と内面テーパ22との間に、ネジ逃げ部または不完全ネジ部(以下まとめて「内面溝」と称す)23が形成されている。
拡径部20の内径(正確には、雌ネジ21の歯先円の直径)および外径はそれぞれ本体部11の内径および外径よりも大きくなり、拡径部20の肉厚(正確には、雌ネジ21の歯先と拡径部20の外面との距離)は本体部11の肉厚よりも小さく(薄く)なっている。
なお、本体部11の内面と内面テーパ22とは滑らかに繋がって、内面テーパ22と内面溝23とも滑らかに繋がっているが、理解を容易にするために
図2および
図3において、これらの境界に実線を描いている。
【0017】
また、他方の端面(以下「後端面」と称す)13から距離bの範囲の外面にネジ逃げ部または不完全ネジ部(以下まとめて「径小部」と称す)33が形成され、径小部33には後端面13に近づく程外径が減少する外面テーパ32が形成されている。そして、径小部33に繋がって雄ネジ31が形成され、雄ネジ31に繋がってネジ逃げ部または不完全ネジ部(以下まとめて「外面溝」と称す)34が形成されている。なお、径小部33(
図2においては外面テーパ32)と後端面13とが交差する角部(正確には、断面略円弧状に面取りされている範囲)を「後端角部35」と称す。
さらに、本体部11には、間隔を空けて複数の貫通孔14が形成されている。貫通孔14は地盤補強剤(図示しない)を地山7(
図1参照)に注入するための吐出口として機能する。
【0018】
内面テーパ22および外面テーパ32は何れも円錐台状であって、内面テーパ22のテーパ角度(以下「内面テーパ角度」と称す)cは、外面テーパ32のテーパ角度(以下「外面テーパ角度」と称す)dよりも大きくなっている(c>d)。
なお、径小部33に形成された外面テーパ32は、円錐台状に代えて、互いに外径が相違する円筒を複数並べた階段状に形成しても、あるいは、外面テーパ32を形成しないで、径小部33と後端面13とを断面略円弧の面取りによって繋いでもよい。
なお、内面溝23および外面溝34の形態は限定するものではなく、雌ネジ21および雄ネジ31をそれぞれ形成可能にするものであれば、何れの形態であってもよく、あるいは、形成可能であれば、設けなくてもよい。
【0019】
(連結)
図3において、一方の地山埋設鋼管10(地山埋設鋼管2(
図1参照))の後端に他方の地山埋設鋼管10(地山埋設鋼管3(
図1参照))の前端が連結されている。すなわち、前者の雄ネジ31に後者の雌ネジ21が螺合し、前者の後端角部35と後者の内面テーパ22とが押し合っている。
このため、地山埋設鋼管2では、雄ネジ31は管軸方向の圧縮力を受け、外面テーパ32の範囲は半径方向の圧縮力(縮径力)とを受ける。一方、地山埋設鋼管3では、雌ネジ21は管軸方向の引張力を受け、内面テーパ22の範囲は半径方向の引張力(拡径力)を受けることになる。
そして、本発明は押し付ける力の大きさ(螺合する際の締め込みトルクの大きさ)を限定するものではない。したがって、押し付ける力が大きい場合、後端角部35および内面テーパ22の一方または両方は塑性変形して、当接範囲が拡大したり、内面テーパ22に食い込んだりすることになる。また、地山埋設鋼管2の後端面13に近い範囲の内径は極僅か縮小するものの、掘削作業に影響することはない。
【0020】
そして、拡径部20の長さである距離aは、前記連結を可能にする範囲で適宜選定され、径小部33の長さである距離bは、前記押し合いを可能にする範囲で適宜選定されるものである。
なお、互いに螺合した雄ネジ31と雌ネジ21とは、通常それぞれのネジ山とネジ谷との間に極僅かの隙間が形成され、雄ネジ31のネジ面(後端面13側の斜面)と雌ネジ21のネジ面(前端面12とは反対側の斜面)との間にも極僅かの隙間が形成されるものであるが、
図3においてかかる隙間を描いていない。また、雄ネジ31および雌ネジ21を台形ネジとして描いているが、本発明はネジ形状をこれに限定するものではなく、何れのネジであってもよい。
【0021】
また、内面テーパ角度cは外面テーパ角度dよりも大きな値になっているが、本発明はこれに限定するものでなく、両者が同じ値であってもよい。このとき、内面テーパ22と外面テーパ32とは広い範囲で当接することになる。
なお、
図3においては、一方の地山埋設鋼管10(地山埋設鋼管2)の雄ネジ31の一部と外面溝34の一部とが、他方の地山埋設鋼管10(地山埋設鋼管3)の前端面12から露出しているが、本発明はこれに限定するものではない。
すなわち、雌ネジ21および雄ネジ31それぞれの長さ(螺旋の回数)は同じでも相違してもよく、それぞれ適宜選定されるものである。このため、雄ネジ31の全部が拡径部20に収納されて外面溝34の一部が露出する場合も、雄ネジ31の一部と外面溝34の全部とが露出する場合もある。さらに、前端面12に沿った所定の範囲に内径を大きくした前端内径拡大部を設け、かかる前端内径拡大部に本体部11の一部を収納して、外面溝34が露出しないようにしてもよい(図示しない)。
【0022】
再び
図1において、一本目(先頭)の地山埋設鋼管1は、地山埋設鋼管10の拡径部20を撤去して、前端面12の近くに掘削装置5の一部を設置するための構造(図示しない)を設けたものに同じである。
また、四本目(後尾)の地山埋設鋼管4は、地山埋設鋼管10の後端面13の近くに注入装置6の一部を設置するための構造(図示しない)を設けたものに同じであって、雄ネジ31等をそのまま残す場合と、雄ネジ31等を撤去する場合とがある。
なお、以上は、地山埋設鋼管10を補強剤注入用の鋼管にした場合を例にして説明しているが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、地山埋設鋼管10の後端に注入装置6を設置しないで管内に補強剤は供給しないまま「水抜き用の鋼管」にしてもよい。このとき、貫通孔14は水(地下水)の浸入口として機能し、その形状は円形に限定されるものではなく、長孔やスリットであってもよく、埋設された姿勢は、水平、水平に対して傾斜あるいは鉛直の場合がある。
【0023】
(作用効果)
地山埋設鋼管10同士は前記のように連結されるから、以下の作用効果を奏する。
(a)雌ネジ21部の肉厚(ネジ谷底と拡径部20の外面までの距離)および雄ネジ31部の肉厚(ネジ谷底と内面までの距離)が、拡径部20を形成しないで雌ネジ21および雄ネジ31を形成した場合に比較して増大するため、互いに螺合した雌ネジ21と雄ネジ31とを管軸方向に引き離そうしたときの破断強度が向上する。
(b)また、破断強度が向上することから、破断強度および圧壊強度それぞれを所定の値に担保することができる値にまで、本体部11の肉厚を薄くすることが可能になるため、軽量化が促進される。
(c)さらに、径小部33(後端角部35)と内面テーパ22とは押し合うため、雄ネジ31のネジ面(後端面13とは反対側の斜面)と雌ネジ21のネジ面(前端面12側の斜面)との接触面圧が増大すると共に、径小部33と内面テーパ22との間にも摩擦力が作用することによって、雄ネジ31と雌ネジ21との螺合が弛み難くなる。
(d)さらに、雌ネジ21と雄ネジ31とを螺合する際、径小部33と内面テーパ22とが押し合うことによって締め込みトルクが上昇するため、雌ネジ21と雄ネジ31とが設計通りに螺合したことを確認することができ、螺合不良(締め込み不足)がなくなる。
(e)なお、前記摩擦力とは、径小部33と内面テーパ22との押し合いによって両者の接触面に塑性変形(カジリ等)が生じた場合には、かかる塑性変形に打ち勝って弛もうとする力を含んでいる。
【0024】
[実施の形態2]
図4は本発明の実施の形態2に係る地山埋設鋼管を説明する一部を示す側面図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
図4は、一点鎖線にて示す中心線よりも上方を断面にしている。
図4において、地山埋設鋼管40は、地山埋設鋼管10において径小部33に管軸方向のスリット36を設けたものに同じであって、これを除く部分は地山埋設鋼管10に同じである。スリット36は後端面13に到達している。
なお、
図4において、スリット36が幅の広い溝状に誇張して描かれているが、その幅は狭いものである。また、円周方向に3カ所等角配置されているが、本発明はその形状や大きさ、数量を限定するものではなく、たとえば、雄ネジ31の一部に到達してもよい。
【0025】
このため、地山埋設鋼管40(正確には地山埋設鋼管2)の後端と地山埋設鋼管40(正確には地山埋設鋼管3)の前端とを連結した際、雄ネジ31と雌ネジ21とが螺合し、後端角部35は内面テーパ22に当接して、外面テーパ32の範囲は管軸方向の圧縮力を受けると共に、半径方向の圧縮力(縮径力)を受ける。
このとき、スリット36は円周方向に圧縮され、幅が狭められ(円周方向の隙間の間隔が縮小する)、スリット36の後端面13に近い範囲がより狭くなり、口元(後端面13の位置)が当接して略三角形状に変形し、外面テーパ32と内面テーパ22とは広い範囲で当接して押し合うことになる。
したがって、地山埋設鋼管40は地山埋設鋼管10と同様に、雌ネジ21と雄ネジ31との破断強度が向上し、軽量化が促進されると共に、雄ネジ31と雌ネジ21との螺合が弛み難くなるという作用効果を奏する。なお、地山埋設鋼管40の後端面13に近い範囲の内径は極僅かに縮小するものの、掘削作業に影響することはない。
【0026】
[実施の形態3]
図5は本発明の実施の形態3に係る地山埋設鋼管を説明する一部を示す側面図である。なお、実施の形態2と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
図5は、一点鎖線にて示す中心線よりも上方を断面にしている。
図5において、地山埋設鋼管50は、地山埋設鋼管40(
図4参照)において外面テーパ32を撤去して、雄ネジ31に到達するスリット36を対向した2カ所に配置したものである。なお、スリット36が幅の広い溝状に誇張して描かれているが、その幅は狭いものである。
【0027】
このため、一方の地山埋設鋼管50(地山埋設鋼管2(
図1参照))の後端と、他方の地山埋設鋼管50(地山埋設鋼管3(
図1参照))の前端とを連結した際、前者の雄ネジ31と後者の雌ネジ21とが螺合し、後者の後端角部35は前者の内面テーパ22に当接して、径小部33の範囲は管軸方向の圧縮力を受けると共に、半径方向の圧縮力(縮径力)を受ける。
したがって、地山埋設鋼管50は地山埋設鋼管40と同様に、雌ネジ21と雄ネジ31との破断強度が向上し、軽量化が促進されると共に、雄ネジ31と雌ネジ21との螺合が弛み難くなるという作用効果を奏する。また、外面テーパ32を具備しないため、加工が容易になると共に、施工前に雄ネジ31を保護するプロテクタ(図示しない)を短くすることができるため、製造コストが安価になる。
【0028】
[実施の形態4]
図6は本発明の実施の形態4に係る地山埋設鋼管を説明する使用状況における一部を示す側面図であって、一点鎖線にて示す中心線よりも上方を断面にしている。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付して一部説明を省略する(
図3参照)。
図6において、地山埋設鋼管60は、地山埋設鋼管10(
図2参照)において径小部33(外面テーパ32を含む)を撤去して、後端面13に到達する雄ネジ31を形成したものである。そして、連結鋼管90は、一方の地山埋設鋼管60(
図6において「2(60)」で示す)の雄ネジ31が他方の地山埋設鋼管60(
図6において「3(60)」で示す)の雌ネジ21に螺合している。
【0029】
このとき、後端面13に近い雄ネジ31は内面溝23に浸入し、後端面13と雄ネジ31とが交差する角部(以下「雄ネジ端角部37」と称す)が内面テーパ22に押し付けられている。
なお、雄ネジ31は螺旋状であるため、雄ネジ端角部37は、ネジ山との角部、ネジ面(斜面)との角部あるいはネジ底との角部に形成されるものの、外径がより大きいネジ山との角部が内面テーパ22に押し付けられることになる。
また、雄ネジ端角部37は面取りされている場合と、面取りされていない場合とがあり、後端面13に近いネジ山において、外径が後端面13に近くなる程小さくなるテーパ状であってもよい。
【0030】
(作用効果)
地山埋設鋼管60同士は前記のように連結されるから、地山埋設鋼管10(実施の形態1)と同樣の作用効果を奏する。すなわち、破断強度が向上して軽量化が促進され、雄ネジ31と雌ネジ21との螺合が弛み難くなる。
特に、雄ネジ31は、ネジ山との角部において内面テーパ22に押し付けられ、ネジ底との角部は内面テーパ22に押し付けられないため、所謂「片当たり状態」になる。そうすると、局所的な塑性変形(カジリ)が発生したり、円周方向で不均一な力がネジ面に作用したりして、さらに螺合が弛み難くなる。但し、雄ネジ31(雌ネジ21も同じ)の条数によっては片当たり状態が生じない場合がある。
また、締め込みトルクの上昇によって、設計通りに螺合したことを確認することができ、螺合不良(締め込み不足)がなくなる。さらに、径小部33(ネジ逃げ部等)を具備しないことによって、加工が容易になると共に、施工前に雄ネジ31を保護するプロテクタ(図示しない)を短くすることができるため、製造コストが安価になる。
なお、地山埋設鋼管50(実施の形態3)に準じて、スリット36を設けてもよい。
【0031】
以上、本発明を実施の形態1〜4をもとに説明した。この実施の形態1〜4は例示であって、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
すなわち、貫通孔14を管外から管内に流体を流入させるための開口部として使用する水抜き用の鋼管や、貫通孔14を有しないで管内空間を所定の目的に使用する鋼管は、何れも地山埋設鋼管10である。
【解決手段】地山埋設鋼管10は、互いに直列に連結されて地山に埋設されるものであって、前端面12から所定の範囲に形成された拡径部20と、拡径部20の内面に形成された雌ネジ21と、拡径部20の内面と本体部11の内面との間に形成され、前端面12から遠ざかる程内径が減少する内面テーパ22と、後端面13から所定の範囲の外面に形成された径小部33と、径小部33に形成された外面テーパ32と、径小部33に繋がって形成された雄ネジ31とを有し、一方の地山埋設鋼管10(地山埋設鋼管2)の雄ネジ31と他方の地山埋設鋼管10(地山埋設鋼管3)の雌ネジ21とが螺合して、前者の外面テーパ32と後者の内面テーパ22とが押し合う。