(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208925
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】コンベアベルト用ゴム組成物及びそれを用いたコンベアベルト
(51)【国際特許分類】
B65G 15/32 20060101AFI20170925BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20170925BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20170925BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20170925BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20170925BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
B65G15/32
C08K3/04
C08K3/06
C08K3/22
C08L7/00
C08L9/00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-284028(P2011-284028)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133190(P2013-133190A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年9月29日
【審判番号】不服2016-7973(P2016-7973/J1)
【審判請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏規
【合議体】
【審判長】
冨岡 和人
【審判官】
槙原 進
【審判官】
金澤 俊郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−298542(JP,A)
【文献】
特開2005−132865(JP,A)
【文献】
特表2009−534486(JP,A)
【文献】
特開2010−95584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/00 - 15/28
B65G 15/60 - 15/64
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄を含有するコンベアベルトの下カバーゴム層用ゴム組成物であって、1,3−ブタジエン単量体中のシス−1,4−結合含量が94%以上のブタジエン系重合体40〜70質量%と、ジエン系重合体30〜60質量%を含んでなるゴム成分100質量部に対して、比表面積が40m2/g以上100m2/g以下である酸化亜鉛を2〜3.5質量部含有し、カーボンブラックを30〜60質量部含有し、そして前記ジエン系重合体が天然ゴム、イソプレンゴム、又はこれらの混合物であることを特徴とする、コンベアベルトの下カバーゴム層用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系重合体が天然ゴムであることを特徴とする請求項1に記載のコンベアベルトの下カバーゴム層用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックが、窒素吸着比表面積が30〜80m2/gであり、DBP吸油量が100〜130ml/100gであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベアベルトの下カバーゴム層用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分100質量部に対して、2〜3質量部の硫黄を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンベアベルトの下カバーゴム層用ゴム組成物。
【請求項5】
前記酸化亜鉛の比表面積が、40m2/g以上100m2/g未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンベアベルトの下カバーゴム層用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のゴム組成物を用いることを特徴とするコンベアベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びそれを用いたコンベアベルト、特には、優れた耐引裂き性、耐摩耗性及び低ロス性を兼ね備えたコンベアベルトを提供することを可能とする、コンベアベルト用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼、石炭、セメント等の産業分野において、物品を輸送する手段としてコンベアベルトが多く利用されている。こうしたコンベアベルトを使用した輸送装置は、被輸送物の巨大化、重量化、輸送経路の長距離化に伴い近年大型化が進み、消費電力の削減が求められている。かかる輸送装置の消費電力を削減するための方法として、コンベアベルトと、駆動ローラ、従動ローラとの接触によるエネルギーの損失を減らすべく、コンベアベルトを低ロス化する方法が従来から採用されている。しかし、コンベアベルトを低ロス化するため、例えば、ヨウ素吸着量、ブチルフタレート(DBP)吸油量が小さいカーボンブラックを用いたゴム組成物を用いると、耐引裂き性、耐摩耗性等他の物性を損なう傾向があり、これらの全ての性質において優れたコンベアベルトを得ることは困難であった。
【0003】
そこで、ジエン系ゴム、イオウ系加硫剤及び所定の窒素吸着比表面積とDBP吸油量を有するカーボンブラックを含有するコンベアベルト用組成物(特開2010−95584号公報)が提案されているが、耐摩耗性、低温環境での低ロス性の検討が十分ではなかった。また、出願人は、超ハイシスBR(1,3−ブタジエン単量体単位中のシス−1,4−結合含量が98%以上及びビニル結合含量が0.3%以下となるブタジエン系重合体)を50〜85質量%及びジエン系ゴム50〜15質量%を含有する、コンベアベルト用ゴム組成物(特開2009−298542号公報)を提案している。該コンベアベルト用組成物は、超ハイシスBRを含有させることにより、耐摩耗性、低ロス性及び耐引裂き性に優れたコンベアベルトのカバーゴムを提供することを可能とする。しかし、カバーゴムの成形を容易とするためにハイシスブタジエン系重合体の含有量を減らし、かつ、さらに優れた耐引裂き性、耐摩耗性及び低ロス性を兼ね備えたコンベアベルトが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−95584号公報
【特許文献2】特開2009−298542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた耐引裂き性、耐摩耗性及び低ロス性を兼ね備えたコンベアベルトを提供することを可能とする、コンベアベルト用ゴム組成物、及び、優れた耐引裂き性、耐摩耗性及び低ロス性を兼ね備えたコンベアベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、1,3−ブタジエン単量体中のシス−1,4−結合含量が94%以上のブタジエン系重合体(以下、ハイシスブタジエン系重合体という)、ジエン系重合体及び比表面積が40m
2/g以上の酸化亜鉛を特定量配合したゴム組成物をコンベアベルトに使用することで、コンベアベルトの耐引裂き性、耐摩耗性及び低ロス性を同時に改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明のコンベアベルトの下カバーゴム層用ゴム組成物は、硫黄を含有するコンベアベルトの下カバーゴム層用ゴム組成物であって、1,3−ブタジエン単量体中のシス−1,4−結合含量が94%以上のブタジエン系重合体40〜70質量%と、ジエン系重合体30〜60質量%を含んでなるゴム成分100質量部に対して、比表面積が40m
2/g以上
100m2/g以下である酸化亜鉛を、2〜3.5質量部含有し、カーボンブラックを30〜60質量部含有し、そして前記ジエン系重合体が天然ゴム、イソプレンゴム、又はこれらの混合物であることを特徴とする。なお、本発明において、酸化亜鉛の「比表面積」とは、BET比表面積を指す。
【0008】
本発明のコンベアベルト
の下カバーゴム層用ゴム組成物において、前記ジエン系重合体は天然ゴムであることが好ましい。前記ジエン系重合体として天然ゴムを使用することで、耐引裂き性、低ロス性、耐摩耗量をさらに向上させることができる。
【0009】
本発明のコンベアベルト
の下カバーゴム層用ゴム組成物は、窒素吸着比表面積が30〜80m
2/gであり、DBP吸油量が100〜130ml/100gであるカーボンブラックを含有することが好ましい。なお、本発明において、カーボンブラックの「窒素吸着比表面積」とはJIS K6217−2に従って測定し、「DBP吸油量」は、JIS K6217−4に従って測定した。前記、窒素吸着比表面積、DBP吸油量を有するカーボンブラックを含有することによって、コンベアベルトの物性、特に耐摩耗性を向上させることができる。
【0010】
本発明のコンベアベルト
の下カバーゴム層用ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対し、2〜3質量部の硫黄を含有することが好ましい。硫黄を前記量で含有することによって、架橋が十分となりコンベアベルトの低ロス性を向上させ、同様に伸び、耐熱性を向上させることができる。
また、本発明のコンベアベルト
の下カバーゴム層用ゴム組成物において、前記酸化亜鉛の比表面積は、40m
2/g以上100m
2/g未満の範囲内の値をとり得る。
【0011】
また、本発明のコンベアベルトは、前記コンベアベルト
の下カバーゴム層用ゴム組成物を用いることを特徴とする。
【0012】
このように上述したコンベアベルト
の下カバーゴム層用ゴム組成物を用いれば、優れた耐引裂き性、耐摩耗性及び低ロス性を兼ね備えたコンベアベルトを得ることができる。その結果、かかるコンベアベルトを使用した輸送装置は、消費電力が削減され、かつ十分な耐久性を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた耐引裂き性、耐摩耗性及び低ロス性を兼ね備えたコンベアベルトを提供することを可能とする、コンベアベルト用ゴム組成物、及び、優れた耐引裂き性、耐摩耗性及び
低ロス性を兼ね備えたコンベアベルトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、40〜70質量%のハイシスブタジエン系重合体と、30〜60質量%のジエン系重合体を含んでなるゴム成分100質量部に対して、2〜5質量部の、比表面積40m
2/g以上である酸化亜鉛を含有することを特徴とする。
【0015】
(ハイシスブタジエン系重合体)
ハイシスブタジエン系重合体は、1,3−ブタジエン単量体中のシス−1,4−結合含量が94%以上のブタジエン系重合体であり、該シス−1,4−結合含量は95%以上が好ましい。このようなブタジエン系重合体を用いることにより、十分な低ロス性と耐摩耗性が得られる。なお、1,3−ブタジエン単量体中のシス−1,4−結合含量は、FT−IRで測定される値であり、具体的には特許文献2に記載の方法で測定される。
【0016】
また、上記ハイシスブタジエン系重合体は、少なくとも1,3−ブタジエン単量体由来の単位を含み、1,3−ブタジエン単量体80〜100質量%と1,3−ブタジエン共重合可能なその他の単量体0〜20質量%からなることが好ましく、1,3−ブタジエン単量体100質量%からなることがより好ましい。かかる1,3−ブタジエンと共重合可能なその他の単量体としては、例えば2−メチル−1、3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの炭素数5〜8の共役ジエン単量体;スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体が挙げられる。
【0017】
本発明のゴム成分中、上記ハイシスブタジエン系重合体の含量は40〜70質量%であり、好ましくは50〜60質量%である。ハイシスブタジエン系重合体の含量が40質量%未満になると、耐摩耗性、低ロス性が低下し、一方、70質量%を超えると耐引裂き性の低下を招く。
【0018】
1,3−ブタジエン単量体中のシス−1,4−結合含量が94%以上のブタジエン系重合体は、例えばコバルト系触媒、又はネオジウム系触媒を用いた公知の方法で製造可能である。特にネオジウム触媒を用いて製造したハイシスブタジエン系重合体は、加工性に優れ、更に該重合体を原料として得られるコンベアベルトの低ロス性、耐引裂き性に優れるため、本発明のゴム成分中のハイシスブタジエン系重合体は、ネオジウム系触媒により製造することが好ましい。
【0019】
(ジエン系重合体)
ジエン系重合体としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、又はこれらの混合物等を挙げることができ、これらの中でも耐引裂き性、低ロス性、耐摩耗性の向上の観点から天然ゴムが好ましい。なお、本発明のジエン系重合体には、上記ハイシスブタジエン系重合体、及び1,3−ブタジエン単量体中のシス−1,4−結合含量が94%未満のブタジエン系重合体は含まれない。本発明のゴム成分中、ジエン系重合体の含量は30〜60質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。ジエン系重合体が30質量%未満になると、耐引裂き性が低下し、一方、60質量%を超えると低ロス性及び耐摩耗性の低下を招く。
【0020】
(その他のゴム成分)
また、上記ゴム成分に加えて他の合成ゴムを併用してもよい。他の合成ゴムとして、具体的には、1,3−ブタジエン単量体中のシス−1,4−結合含量が94%未満のブタジエン系重合体、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、アクリルゴム(ACM)等が挙げられる。
【0021】
(酸化亜鉛)
本発明のゴム組成物は、比表面積が40m
2/g以上である酸化亜鉛を含有し、該酸化亜鉛の比表面積は、好ましくは60m
2/g以上である。このように比表面積が大きい酸化亜鉛を用いることにより、組成物中に酸化亜鉛が分散しやすく、加硫助剤として効果的に機能し、その結果ゴムの加硫が促進され、コンベアベルトの耐引裂き性、耐摩耗性、低ロス性を向上させることができる。なお、酸化亜鉛の比表面積の上限は特に限定されないが、通常は100m
2/g以下である。本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛を、ゴム成分100質量部に対し2〜5質量部、好ましくは3〜5質量部含む。酸化亜鉛の配合量が、ゴム成分100質量部に対して2質量部未満になると、低ロス性が低下し、一方、5質量部を超えると耐引裂き性と耐摩耗性の低下を招く。
【0022】
(カーボンブラック)
本発明のゴム組成物は、窒素吸着比表面積が30〜80m
2/gで、DBP吸油量が100〜130ml/100gであるカーボンブラックを含有することが好ましい。上記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が60〜80m
2/gで、DBP吸油量が100〜120ml/100gであることがより好ましい。上記窒素吸着比表面積、DBP吸油量を有するカーボンブラックを含有することによって、コンベアベルトの耐摩耗性、低ロス性、耐引裂き性を向上させることができる。また、本発明のゴム組成物は、カーボンブラックをゴム成分100質量部に対して30〜60質量部を含むことが好ましい。カーボンブラックの含有量が上述の範囲であると、コンベアベルトの耐摩耗性、低ロス性、耐引裂き性のバランスを取ることができる。
【0023】
(硫黄)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、硫黄を2〜3質量部を含むことが好ましい。硫黄の含有量が上述の範囲であると、架橋が十分となりコンベアベルトの低ロス性を向上させ、同様に伸び、耐熱性を向上させることができる。
【0024】
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物には、必要に応じて上記成分以外の添加剤等を適宜配合してもよい。かかる添加剤等としては、例えば、上記硫黄以外の加硫剤、加硫促進剤或いは上記酸化亜鉛以外の加硫促進助剤、上記カーボンブラック以外の補強性充填剤、老化防止剤、可塑剤、ワックス類、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、分散剤、相溶化剤、均質化剤等が挙げられる。本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、これら各成分を、たとえば、バンバリーミキサー、ニーダー等により混練りすることにより製造することができる。
【0025】
本発明のコンベアベルトは、上記コンベアベルト用ゴム組成物を補強材に密着させ、加硫することにより製造することができる。例えば、上記コンベア用ゴム組成物を押出成形等することによってシート状のカバーゴム層を製造し、補強材を該カバーゴム層で上下から挟み込み、このベルト成形品を金型にセットして所定温度及び圧力で所定時間加硫する。コンベアベルトを使用する輸送装置において、多くの場合、駆動ローラ、従動ローラは下カバーゴム層と接することとなる。このような場合において、下カバーゴム層のみに本発明のゴム組成物を使用すれば、本発明のコンベアベルトを使用した輸送装置の消費電力を低減することは十分に可能であるが、上カバー層に本発明のゴム組成物を使用してもよいことは勿論である。
【0026】
上記補強材は、コンベアベルトの用途に応じ、サイズ等を考慮して通常コンベアベルトに用いられるものを適宜選択し得る。具体的には、亜鉛めっきスチールコード、ブラスめっきスチールコードまたはアラミド繊維を用いたアラミド帆布等が挙げられ、本発明によれば、いずれを用いても、優れた耐引裂き性、耐摩耗性及び低ロス性を兼ね備えたコンベアベルトを提供することが可能である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1〜
7、参考例8、比較例1〜6]
表1及び表2に示した配合で、硫黄及び加硫促進剤を除く各成分をバンバリーミキサーにて混練(A練り)し、引き続き硫黄及び加硫促進剤を添加して混練(B練り)することによりコンベアベルト用ゴム組成物を得、該ゴム組成物を金型温度160℃、15分で加硫することにより、コンベアベルトに用いるカバーゴムを得た。得られたカバーゴムの耐引裂き性、低ロス性及び耐摩耗性を以下のようにして測定した。
【0029】
・耐引裂き性
JIS K6252に従い、トラウザ形試験片を用いて引裂力(N/mm)を測定した。評価結果は、実施例1の値を100として、表1、2に指数表示で併記した。指数値が大きいほど、耐引裂き性に優れる事を表す。
【0030】
・低ロス性
上記コンベアベルト用ゴム組成物から縦40mm、横5mm、厚さ2mmのシートを作成した。かかるシートを用い、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)により、チャック間距離10mm、動的歪2%、周波数10Hzの測定条件にて、動的粘弾性測定を行い、−30℃、−5℃及び20℃における損失正接(tanδ)を測定した。動的弾性率をE’(N/mm)としたとき、tanδ/E’
0.32を求めることにより、低ロス性の指標とした。評価結果は、実施例1の値の逆数を100として、表1、2に指数表示で併記した。指数値が大きいほど、低ロス性に優れる事を示す。
【0031】
・耐摩耗性
JIS K6264−2に従い、DIN摩耗試験機を使用して室温で摩耗量を測定した。評価結果は、実施例1の値の逆数を100として、表1、2に指数表示で併記した。指数値が大きいほど、耐摩耗性に優れる事を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
※ 比較例2は成形不能であったため、評価結果無し。
【0034】
上記表に示すゴム成分等の各組成部分としては、以下に示すものを用いた。
*1 JSR製 T0700 シス−1,4−結合含量 94%
*2 天然ゴム、RSS 3号
*3 JSR製、IR2200
*4 旭カーボン製、旭 #70−NP(DBP吸油量、103 ml/100g、窒素吸着比表面積71m
2/g)
*5 花王製、ルナックRA
*6 東邦亜鉛製、銀嶺R
*7 正同化学製、AZO
*8 大内新興化学工業製、ノクラック6C
*9 鶴見化学工業製、sulfax Z
*10 大内新興化学工業製、ノクセラ−NS−F
【0035】
表1、2の結果から明らかなように、ハイシスブタジエン系重合体を40〜70質量%、NR又はIR(ジエン系重合体)を30〜60質量%含むゴム成分100質量部に対して、2〜5質量部の、比表面積40m
2/g以上である酸化亜鉛を含有する実施例1〜
7、参考例8は、比較例に比して、耐引裂き性、低ロス性(−30℃、−5℃、20℃)、耐摩耗性の概ね全ての項目においてバランス良く優位な値を示しており、本発明の効果を確認できた。
【0036】
一方、比較例1はハイシスブタジエン系重合体が少なくIRが多いため、耐摩耗性と低ロス性に劣る。比較例2は、ゴム成分中のハイシスブタジエン系重合体含有量が100質量%であったが、ハイシスブタジエン系重合体のみのゴム組成物は加工性の観点で劣り、コンベアベルトに成形することができなかった。比較例3はハイシスブタジエン系重合体が多くIRが少ないため、耐引裂き性に劣る。比較例4は酸化亜鉛の比表面積が小さいため、分散し難く、ゴム組成物の加硫が十分でない。その結果、比表面積60m
2/gの酸化亜鉛を用い、それ以外の配合は全て比較例4と同等である実施例3よりも、全ての項目において劣る。比較例5は酸化亜鉛の配合量が少ないため、低ロス性に劣る。比較例6は酸化亜鉛が多いため、耐摩耗性に劣る。