特許第6208946号(P6208946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6208946ポリマー/電解質の接点でスイッチングするコンダクタンスに基づくメモリデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208946
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ポリマー/電解質の接点でスイッチングするコンダクタンスに基づくメモリデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/10 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 45/00 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 49/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L27/10 449
   H01L27/105 448
   H01L45/00 Z
   H01L49/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-2334(P2013-2334)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2013-149973(P2013-149973A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2016年1月5日
(31)【優先権主張番号】13/352,597
(32)【優先日】2012年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・エル・マクレアリー
(72)【発明者】
【氏名】リアン・シー・ティー・シュー
(72)【発明者】
【氏名】イリアン・ウー
【審査官】 上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05202261(US,A)
【文献】 特表平11−504749(JP,A)
【文献】 特表2004−529491(JP,A)
【文献】 国際公開第03/052827(WO,A1)
【文献】 特開平06−022793(JP,A)
【文献】 特表2008−510318(JP,A)
【文献】 特開昭64−037538(JP,A)
【文献】 特表2005−500682(JP,A)
【文献】 特開2008−120994(JP,A)
【文献】 特開2006−032914(JP,A)
【文献】 特表2004−528593(JP,A)
【文献】 特開2004−006863(JP,A)
【文献】 特開2004−186695(JP,A)
【文献】 Tatiana BERZINA et al.,Optimization of an organic memristor as an adaptive memory element,Journal of Applied Physics,2009年 6月24日,Vol. 105,pp. 124515-1−124515-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8239,27/10,27/105,45/00,49/00,51/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に提供されており、互いに隔離されている少なくとも第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極を電気的に接続している有機半導体ポリマーと、
前記有機半導体ポリマーと接する電解質層と、
前記第1の電極、前記第2の電極、前記有機半導体ポリマーと接していない、前記電解質層上の第3の電極と
前記電解質層の上または下の、相補的な酸化還元剤を含む1つ以上の層とを備え、
前記有機半導体ポリマーが、第1の導電性を示す第1の酸化還元状態と、第2の導電性を示す第2の酸化還元状態を示し、
前記有機半導体ポリマーは、下記式のポリチオフェンである、不揮発性メモリデバイス。
【化1】
(式中、Rは、1〜35個の炭素原子を含むアルキル基であり、nは、2〜5,000の数である。)
【化2】
(式中、Rは、1〜35個の炭素原子を含むアルキル基であり、nは、2〜5,000の数である。)
【請求項2】
前記基材が可とう性である、請求項1に記載の不揮発性メモリデバイス。
【請求項3】
前記第2の導電性が、室温で0.1S/cm未満であり、前記第1の導電性が、第2の導電性よりも少なくとも10倍高い、請求項1に記載の不揮発性メモリデバイス。
【請求項4】
前記第2の導電性に対する前記第1の導電性の比率が10〜1010の範囲である、請求項1に記載の不揮発性メモリデバイス。
【請求項5】
前記電解質層が移動イオンを含む、請求項1に記載の不揮発性メモリデバイス。
【請求項6】
前記第1の電極と前記第2の電極が、互いに実質的に平行に作られる、請求項1に記載の不揮発性メモリデバイス。
【請求項7】
前記電解質層が固体電解質である、請求項1に記載の不揮発性メモリデバイス。
【請求項8】
前記有機半導体ポリマーの第1の酸化還元状態が、酸化/還元反応を経て前記有機半導体ポリマーの第2の酸化還元状態にスイッチングする、請求項1に記載の不揮発性メモリデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不揮発性メモリ、例えば、電源を落とした後であっても情報を維持する記憶媒体として使用するのに適したメモリ、例えば、メモリカードまたはコンピュータシステムの構成要素に関する。さらに具体的には、本開示は、データ処理および記憶のための高密度不揮発性メモリデバイス、特に、有機半導体材料に由来するポリマー/半導体接点を備え、可撓性基材の上で操作可能な高密度不揮発性メモリデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの需要が高まり、メモリデバイス分野での産業が急速に発達してきている。市場は、高性能低価格の製品を必要としており、この要求を満たそうとして供給サイドでは過酷な競争が起こってきている。コンピュータの性能を決める重要な因子のひとつは記憶デバイスであり、記憶デバイスの主流は、シリコンのような半導体基材の上にメモリセルが形成されているという構成の半導体メモリである。高性能の半導体メモリが必要となるのは、主に「メモリから/メモリへの高速入力/出力」、「大容量の記憶」および「記憶の安定性」である。シリコン系電子機器を含む記憶デバイスを備えるコンピュータは、市場のさまざまな要求を満たすためにさまざまな構造をしていてもよいが、高速かつ大容量が求められる場合には、費用は高くなる。
【0003】
スタンドアロン型および内蔵型の固体素子超小型電子メモリの世界全体での売上高は約650億ドル/年である。既存の超小型電子メモリは、高速で一時的であるか(例えば、DRAM)、または低速で永久的である(例えば、磁気記憶)。DRAMは、1秒あたり10回より多いリフレッシュが必要であり、電力を伴い、オーバーヘッドが必要である。不揮発性メモリは、超小型電子回路と一体化することはできず、例外は「フラッシュ」メモリであり、書き込み/消去サイクルの数に制限があり、操作するのに高い電圧(15Vより大きい)が必要である。フラッシュメモリ(一般的に、サイクル寿命は、書き込み/消去サイクル約10000サイクル)は、DRAMよりもかなり遅いが、保持力が良好である(10年より長い)。それに加え、フラッシュメモリは、クロストークと制限のあるサイクル寿命のために、密度が大きくなるにつれて信頼性の問題がある。DRAMは、その高密度、高速、耐久性のため、100ミリ秒未満の保持しか耐えられないが、保持力が長いと、電力消費を顕著に小さくすることができる。
【0004】
シリコン系電子機器の重要な欠点は、硬く、加工するのに高温が必要なことである。これらの性質は、プラスチック、布、紙のような可とう性基材の上にデバイスとして適用するのを妨げる。可とう性表面の上に印刷した電子機器は、2015年までに約250億ドル/年の値となる将来的な電子機器の成長分野であると予想される。有機系およびプラスチック系の電子デバイスの活性な機器は、本質的に可とう性であり、印刷プロセスに簡単に適応することができる。したがって、電力消費が顕著に小さく、書き込み/消去の速度が速く、フラッシュよりもサイクル寿命が長く、製造コストが低い不揮発性メモリが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書には、基材の上に提供されており、互いに隔離されている少なくとも第1の電極および第2の電極と;第1の電極と第2の電極を電気的に接続している有機半導体ポリマーと;有機半導体ポリマーと接する電解質と;第1の電極、第2の電極、有機半導体ポリマーと接していない第3の電極とを備え、有機半導体ポリマーが、第1の導電性を示す第1の酸化還元状態と、第2の導電性を示す第2の酸化還元状態を示す、不揮発性メモリデバイスが開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示の例示的なメモリデバイスを単純化した側面図をあらわす。
図2図2は、ポリ 3−ヘキシルチオフェンを含有する図1に示す構造を有するメモリデバイスの操作中に、連続する「活性化」パルスがR1とR2との間の電流に及ぼす影響を示すグラフである。
図3図3は、図1に示す構造を有し、ポリ 3−ヘキシルチオフェンを含むメモリデバイスの操作中、約40回の書き込み/消去サイクルと、R1とR2の電流を繰り返しスイッチングする(バイアス0.1Vで測定)ことを示すグラフである。
図4図4は、図1に示す構造を有し、ポリ 3−ヘキシルチオフェンを含むメモリデバイスの操作中、+3Vおよび−3Vの「消去」および「書き込み」のパルスに従うR1とR2の電流の挙動を示すグラフである。
図5図5は、実施例2で製作した2個の端子接点の電極間で測定した漏れ電流を示すグラフである。
図6図6は、1457cm−1で振動バンドが観察された、脱ドープした状態(実線)と、ポラロンが生成するために1401cm−1に振動バンドがシフトした、電気化学的にドープした状態(点線)での有機半導体ポリマーポリチオフェンについて得られたラマンスペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に開示する構成要素、プロセスおよびデバイスのもっと完全な理解は、添付の図面を参照することによって得ることができる。これらの図面は、本開発結果を示すのに簡便で容易であることに基づき、単なる模式的な図であり、したがって、デバイスまたはその構成要素の相対的な大きさおよび寸法を示すことは意図しておらず、および/または例示的な実施形態の範囲を定義または限定することも意図していない。
【0008】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その」のような単数形は、本文中で明確に他の意味を示すものでない限り、複数の形態も含む。本明細書に開示するあらゆる範囲は、具体的に示されていない限り、あらゆる終点および中間値を含む。それに加え、多くの用語について、以下に定義されるような基準が作られるだろう。
【0009】
「任意要素の」または「場合により」は、例えば、その後に記載される状況が起こってもよく、起こらなくてもよいという場合を指し、その状況が起こる場合と、その状況が起こらない場合を含む。
【0010】
「1つ以上の」および「少なくとも1つの」との用語は、例えば、その後に記載される状況のひとつが起こる場合、およびその後に記載される状況のうち、2つ以上が起こる場合を指す。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスは、「電荷蓄積」型メモリ、例えば、DRAMとは対照的に、「抵抗スイッチング」メモリデバイスである。「抵抗スイッチング」メモリデバイスは、コンダクタンスの変化を伴い、かなり安定であり、非破壊的に読み込むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスは、有機半導体ポリマーを含む活性層と、場合により、有機半導体ポリマーと接する電解質層とを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスは、活性層(有機半導体ポリマーを含む)の酸化および還元が、有機半導体ポリマーの導電性の変化をもたらすような3個の端子をもつ形状の電極を含む。さらなる実施形態では、酸化還元という反対向きの反応の存在を利用し、有機半導体ポリマーの2種類の準安定状態の間をスイッチングさせてもよい。さらに、酸化した有機半導体ポリマーを安定化させ、保持力を高めるために、1つ以上の移動イオンが存在していてもよい。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーは、「固体」状態での有機半導体ポリマーの酸化および還元を促進するために、移動イオンおよび/または電荷移動錯体を含有していてもよい導電層である。さらなる実施形態では、コンダクタンスの読み出しは、書き込みおよび消去に関与する回路とは別個の回路によって行われてもよい。
【0013】
「有機半導体ポリマー」との用語は、例えば、前記有機材料の酸化還元状態の変化を介し、電気化学的に変化させることが可能な導電性をもつ有機ポリマー材料を指す。有機半導体ポリマーの「酸化還元状態」の変化について言及する場合、有機半導体ポリマーが酸化されている場合または還元されている場合と、有機半導体ポリマーの中で変化の再分配がなされる場合を含むことを意図している。
【0014】
図1は、本開示のメモリデバイスの例示的な実施形態または構造を示す。いくつかの実施形態では、メモリデバイスは、少なくとも2つの読み取り電極(R1およびR2)の下、または場合によりこれらと接触した状態で配置されている基材と、有機半導体ポリマー層とを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマー層は、少なくとも2つの読み取り電極(R1およびR2)の上にあるか、および/またはこれらの間にあってもよい。いくつかの実施形態では、電解質層は、有機半導体ポリマー層より上および/または上部にあってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の書き込み/消去電極(W/E電極)は、電解質層の上部にあってもよく、有機半導体ポリマー層と接触していてもよく、接触していなくてもよい。いくつかの実施形態では、任意要素の界面層、例えば、電解質層の上部および/または電解質層に接触した状態で相補的な酸化還元剤を含む1つ以上の層が、電解質層の上または下に位置していてもよく、両方ともが有機半導体ポリマー層の上にあってもよい。
【0015】
電解質層が、W/E電極第3の電極を有機半導体ポリマー層から隔離していることが重要である。読み取り電極(第1の電極および第2の電極)は、有機半導体ポリマーと接触していなければならない。いかなる理論にも限定されないが、有機半導体ポリマーの酸化還元化学(酸化/還元)は、第1の電極および第2の電極の表面で起こると考えられる。理想的には、反対向きの反応である酸化還元反応が、W/E電極(第3の電極)の表面で、例えば、相補的な酸化還元剤を用いて起こる。
【0016】
図1の例示的なメモリデバイスは、酸化還元セルと似ているが、導電性が酸化還元状態に依存する構成要素と、この構成要素(R1およびR2)の中で導電性を測定するために配置されている電極とが加わっている。理論によって束縛されないが、電解質層の中の移動イオンは、局所的な電気的中性を維持するために空間電荷を補うことによって導電性のポラロン状態を安定化すると考えられる。さらに、活性な半導体ポリマー層の移動イオンは、イオン性「二重層」の形成を経て、印加された電圧からポリマーをスクリーニングすることによって、ポリマーの酸化および還元を促進するものでなければならない。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスは、有機半導体ポリマー/電解質の接点でスイッチングするコンダクタンスに基づく。いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスは、有機半導体ポリマーの導電性の違いを用い、情報の記録および消去を行えるように有機半導体ポリマーと電気的に接触する少なくとも2つの電極を備えている。このようなメモリデバイスは、不揮発性メモリデバイスであってもよく、電圧の必要性が大きく減っており、従来のフラッシュメモリより良好なサイクル寿命を与える。それに加え、本開示のメモリデバイスのセルを「スイッチングする」のに必要なエネルギーは、本開示のメモリデバイスの記憶機構は基本的に異なるため、従来の一様に有効なフラッシュデバイスで必要なエネルギーの約1/1000である。
【0018】
本開示の例示的なメモリデバイスは、有機半導体ポリマーを利用していてもよく、この有機半導体ポリマーは、少なくとも第1の導電性と第2の導電性を有しており、少なくとも第1の電極と第2の電極が、有機半導体ポリマーに電気的に接続していてもよい(場合により、第3の電極が電気的に接続していてもよい)。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーは、第1の導電性を示す第1の酸化還元状態と、第2の導電性を示す第2の酸化還元状態とを有する。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーは、酸化/還元反応を経て第1の酸化還元状態にスイッチングしてもよい。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーの第1の酸化還元状態は、酸化/還元反応を経て有機半導体ポリマーの第2の酸化還元状態にスイッチングしてもよい。
【0019】
酸化還元活性がある有機半導体ポリマーと外部刺激(例えば、電場、化学種)とが相互作用すると、第1の酸化還元状態(または第2の酸化還元状態)になり、酸化還元活性がある有機半導体ポリマーは、1種類または数種類の物理特性(例えば、吸収特性、分子量などの中でも、例えば、特に、導電性および酸化還元状態)が変化することを注記しておくべきである。同様に、酸化還元性有機半導体ポリマーは、適切な電流と相互作用すると、同時に数種類の物理特性(例えば、導電性と酸化還元状態)が変化する場合もある。従来のメモリデバイスとは対照的に、本開示のメモリデバイスは、情報の記録、検索、複製、消去のために有機半導体ポリマーの酸化還元状態の変化をもたらす有機半導体ポリマーの導電性の直接的な読み出しを利用してもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスは、導電性を変化させるために動的に「ドープ」されてもよい有機半導体ポリマーを含有する端子が3つのメモリデバイスであってもよい。いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスは、当該技術分野で既知の従来の有機薄膜トランジスタと似た構造を有していてもよいが、上述のように、完全に異なる挙動をする。従来の有機薄膜トランジスタは、有機半導体ポリマーの静電的なドーピングに基づくが、一方、本開示のメモリデバイスは、酸化還元化学を伴う。
【0021】
例えば、理論に束縛されないが、図1に示されるように、W/E電極を使用し、酸化還元反応によってポリマーの導電性を「スイッチング」してもよく、イオンの移動と、酸化還元という反対の反応を伴う。このデバイスの「状態」は、R1およびR2と名付けられた2個の別個の電極によって非破壊的に読み取られ、2種類の状態は、導電性が異なっており(例えば、第1の導電性および第2の導電性)、第2の導電性に対する第1の導電性の比率は、約10よりも大きく、例えば、第2の導電性に対する第1の導電性の比率は、約10〜約1010、または100〜約10、または1000〜約10の範囲である。
【0022】
いくつかの実施形態では、W/E電極が再びポリマーの酸化還元状態を変化させるまで、その「状態」が保持される。例えば、ポリマーは、ポリチオフェン(PT)であってもよく、導電性が約10−8S/cmの中性状態と、導電性が0.1S/cmを超える酸化された「ポラロン」状態を有する。
【0023】
本開示のメモリデバイスで使用するのに適した例示的な有機半導体ポリマーは、中性状態のときに任意の望ましい導電性を有していてもよく、例えば、中性状態のときに導電性が約10−8S/cm〜10−3S/cmの有機半導体ポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーの第1の導電性は、室温で約0.001S/cmより大きく、例えば、室温で約0.01S/cmより大きく、または約0.01〜約10S/cmである。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーの第2の導電性は、室温で約10S/cm未満、例えば、室温で約0.01S/cm未満、または約0.001S/cm未満である。
【0024】
いくつかの実施形態では、メモリデバイスは、第1の導電性と第2の導電性を少なくとも有する有機半導体ポリマーと、有機半導体ポリマーと接する電解質と、相補的な酸化還元剤とを含む不揮発性メモリデバイスであってもよい。例示的な相補的な酸化還元剤としては、限定されないが、ビオロゲンClO4、TCNQ、アゾベンゼン、Ag/AgCl、有機半導体などが挙げられる。有機半導体を相補的な酸化還元剤として用いる場合、有機半導体ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいことを注記しておくべきである。有機半導体を相補的な酸化還元剤として使用する場合、有機半導体ポリマーとは接していない。いくつかの実施形態では、相補的な酸化還元剤は、電解質層によって有機半導体ポリマーから隔離されている層の中に存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーは、少なくとも2つの読み取り電極の間に配置されていてもよく、少なくとも2つの読み取り電極と直接電気的に接していてもよく、有機半導体ポリマーは、有機半導体ポリマーと直接電気的に接する固化した電解質との相互作用を経て、自身の酸化還元状態の変化を介して導電性を電気化学的に変える能力をもつ物質である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電極(例えば、少なくとも1つのW/E電極)は、有機半導体ポリマーと少なくとも1つの電極の間に電気が流れないような様式で、有機半導体ポリマーと固化した電解質の間、または有機半導体ポリマーと固化した電解質の付近に入り込んでいてもよい。いくつかの実施形態では、これらの電極間の電子の流れは、少なくとも1つのW/E電極に印加された電圧を用いることによって制御することができる。
【0026】
「固化した電解質」との用語は、例えば、塊状態の粒子/フレークが、使用される温度で、高粘度/剛性の電解質によって実質的に固定されており、流動したり漏れたりしないほど十分に剛性である電解質を指す。固化した電解質は、固体ポリマー電解質、水系溶媒または有機溶媒を含有するゲル(例えば、ゼラチンまたはポリマーゲル)であってもよい。また、固化した電解質は、適切なマトリックス材料(例えば、紙、繊維または多孔質ポリマー)に浸されているか、または任意の他の様式で入り込んだ液体電解質溶液を包含していてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、固化した電解質は、バインダー(例えば、ゲル化特性を有するバインダー)を含んでいてもよい。適切なバインダーは、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(ビニル−ピロリドン)、多糖、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリ−(スチレンスルホン酸)およびポリ(ビニルアルコール)、およびこれらの塩およびコポリマーからなる群から選択されてもよく、場合により、架橋していてもよい。固化した電解質は、イオン性塩を含んでいてもよく、場合により、または、それに加えて、所望の場合、含水量を維持するために、吸湿性の塩(例えば、塩化マグネシウム)を含んでいてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの読み取り電極と、有機半導体ポリマーは、1層の材料として作られてもよく、連続的であってもよい。他の実施形態では、または、少なくとも2つの読み取り電極は、有機半導体ポリマーと直接電気的に接する別の導電性材料から作ることもできる。いくつかの実施形態では、必要な電気化学反応を与え、有機半導体ポリマーの導電性を変化させるために、固化した電解質を、有機半導体ポリマーおよび少なくとも1つのW/E電極の両方と直接電気的に接するように配置してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの読み取り電極と少なくとも1つのW/E電極は、有機半導体ポリマーと同様に、インクジェット印刷方法のような従来の印刷方法によって、メモリデバイスの製造を単純化するために配置されてもよい。例えば、この実施形態のメモリデバイスは、電解質(例えば、固化した電解質)の層が、少なくとも1つのW/E電極を覆い(少なくとも部分的に)、また、有機半導体ポリマーを覆うように堆積させてもよい横方向のデバイス構造を使用してもよい。この電解質(例えば、固化した電解質)の層は、連続していてもよく、途中で途切れていてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、電気化学的な酸化還元反応は、電解質と有機半導体ポリマーとの接触領域で起こってもよく、このような反応が、有機半導体ポリマーの導電性を変化させてもよい。いくつかの実施形態では、電気化学的な酸化還元反応は、有機半導体ポリマーの実質的にすべて(例えば、有機半導体ポリマーの少なくとも約10%、または少なくとも約20%)で起こってもよく、このような反応が、有機半導体ポリマーの導電性を変化させてもよい。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーは、この酸化還元反応の結果として、導電性状態から非導電性状態に変わってもよく、または、非導電性状態から1つ以上の導電性状態(例えば、第1の導電性状態および第2の導電性状態)に変わる。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーの誘発される酸化還元状態は、数日間、数ヶ月、数年および/または理想的には、無限に維持されてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーの電気化学反応は、1つ以上の外部刺激(例えば、印加される電圧)によって誘発されてもよい。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーの酸化還元状態の変化は、1つ以上の外部刺激(例えば、電圧)を調節することによって戻ってもよい。有機半導体ポリマーの少なくとも1つのW/E電極の間に電圧を印加すると、有機半導体ポリマーが分極し、それによって、有機半導体ポリマーが還元されるか、酸化されるか、またはその両方が起こってもよい酸化還元が起こる。
【0032】
いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーは、2種類以上のポリマー材料の組み合わせ、例えば、ポリマーブレンド、またはポリマー材料のいくつかの層を含んでいてもよく、同じポリマーまたは異なるポリマーからなる異なる層を利用してもよい。本発明のメモリデバイスで使用するのに適切な有機半導体ポリマーは、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリイソチアナフタレン、ポリフェニレンビニレンおよびこれらのコポリマーなどからなる群から選択されてもよい。
【0033】
例えば、適切なポリチオフェンは、以下の一般式Iのポリチオフェンを含んでいてもよく、
【化1】
式中、Aは二価の結合であり;各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルコキシまたは置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン、−CNまたは−NOから選択され;nは2〜約5,000である。ある実施形態では、Rは、水素ではない。
【0034】
「アルキル」との用語は、完全に炭素原子と水素原子とで構成され、完全に飽和であり、式C2n+1を有する基を指す。「アリール」との用語は、完全に炭素原子と水素原子とで構成される芳香族基を指す。「アルコキシ」との用語は、酸素原子に接続するアルキル基を指す。
【0035】
置換アルキル基、置換アリール基、置換アルコキシ基は、例えば、アルキル、ハロゲン、−CNまたは−NOで置換されていてもよい。例示的な置換アルキル基は、ペルハロアルキル基であり、アルキル基の1つ以上の水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、ヨウ素および臭素)と置き換わっている。「ヘテロ原子を含有する基」との用語は、元々は直鎖骨格、分枝鎖骨格または環状骨格を形成する炭素原子と水素原子で構成される基を指す。この元の基は、飽和または不飽和である。次いで、骨格中の1つ以上の炭素原子が、ヘテロ原子、一般的に、窒素、酸素または硫黄と置き換わり、ヘテロ原子を含有する基が得られる。「ヘテロアリール」との用語は、一般的に、炭素原子を置き換える少なくとも1つのヘテロ原子を含む芳香族化合物を指し、ヘテロ原子を含有する基の部分集合であると考えてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、両R基は、約6〜約18個の炭素原子を含むアルキルである。特定の望ましい例では、両R基は同じである。さらなる望ましい実施形態では、両R基は、アルキル、例えば、−C1225である。
【0037】
二価の結合Aは、式(I)の2個のチエニル部分それぞれに対し、単結合を形成する。例示的な二価の結合Aとしては、以下のもの
【化2】
【化3】
およびこれらの組み合わせが挙げられ、式中、各R’は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルコキシまたは置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン、−CNまたは−NOから選択される。二価の結合Aが、式(I)の2個のチオフェンモノマーとは常に異なるだろうことを注記しておくべきであり、言い換えると、式(I)は、たった1個のモノマーから作られるポリチオフェンまで縮小されないだろう。
【0038】
いくつかの実施形態では、有機半導体は、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)のポリチオフェン
【化4】
であり、式中、RおよびR’は、それぞれ独立して、水素、アルキルまたは置換アルキル、アリールまたは置換アリール、アルコキシまたは置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基またはハロゲンから選択され;nは、約2〜約5,000の整数である。具体的な実施形態では、ポリチオフェンは式(II)を有し、各Rはアルキルである。
【0039】
他の実施形態では、有機半導体は、式(VIII)のポリチオフェン
【化5】
であり、式中、Rは、水素、アルキルまたは置換アルキル、アリールまたは置換アリール、アルコキシまたは置換アルコキシ、ヘテロ原子を含有する基またはハロゲンから選択され;nは、約2〜約5,000の整数である。
【0040】
RまたはR’が、アルキル、アルコキシ、アリール、またはこれらの置換誘導体である場合、1〜約35個の炭素原子、または約1〜約30個の炭素原子、または約1〜約20個の炭素原子、または約6〜約18個の炭素原子を含んでいてもよく、任意の側鎖を含む。変数nは、繰り返し単位の数をあらわし、約2〜約5,000、約2〜約2,500、約2〜約1,000、約100〜約800、または約2〜約100の数であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、各Rは、独立して、約6〜約30個の炭素原子を含むアルキル側鎖であり、各Rは、独立して、1〜約5個の炭素原子を含むアルキル側鎖から選択される。他の実施形態では、各Rは、独立して、0〜約5個の炭素原子を含むアルキル側鎖から選択され、各R’は、6〜約30個の炭素原子を含むアルキル側鎖である。さらに他の実施形態では、RおよびR’は、独立して、約1〜約35個の炭素原子を含むアルキル、または約7〜約42個の炭素原子を含むアリールアルキルである。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルまたはオクタデシルが挙げられる。例示的なアリールアルキル基としては、メチルフェニル(トリル)、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、トリデシルフェニル、テトラデシルフェニル、ペンタデシルフェニル、ヘキサデシルフェニル、ヘプタデシルフェニルおよびオクタデシルフェニルが挙げられる。具体的な実施形態では、RおよびR’は、約1〜約35個の炭素原子を含むアルキル基または置換アルキル基をあらわす。
【0042】
具体的な実施形態では、R基は、互いに同一であり;R’基は、互いに同一である。他の実施形態では、R基とR’基は、互いに同一である。別の具体的な実施形態では、R置換基とR’置換基は、約6〜約18個の炭素原子を含む同一のアルキル基である。
【0043】
有機半導体ポリマーは、重量平均分子量が約1,000〜約1,000,000、または約5000〜約100,000であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスは、可とう性の支持体の上に作られていてもよい。いくつかの実施形態では、異なる構成要素が、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソグラフィー印刷のような従来の印刷技術、またはナイフコーティング、ドクターブレードコーティング、押出コーティングおよびカーテンコーティングのようなコーティング技術を用いることによって支持体の上に堆積していてもよい。いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーを、電解重合、UV重合、熱重合および化学重合のような方法によって系中での重合を経て堆積させることもできる。構成要素のパターンを形成するためのこれらの追加する技術の代替例として、取り去る技術、例えば、化学物質または気体によるエッチングを介する材料の局所的な破壊、引っかき、折り目付け、剥離または粉砕のような機械的な手段による技術、または、任意の他の既知の取り去る方法による技術を用いることも可能である。
【0045】
基材は、シリコン、ガラス板、可とう性基材(例えば、プラスチックの膜またはシート、紙または布)を含む材料で構成されていてもよい。構造的に可とう性のデバイスの場合、プラスチック基材、例えば、ポリエステル(例えば、PET、PEN)、ポリカーボネート、ポリケトン(例えば、PEEK)、ポリイミドシートなどを使用してもよい。基材の厚みは、約10マイクロメートルから10ミリメートルを超えてもよく、例示的な厚みは、特に、可とう性プラスチック基材の場合、約50マイクロメートル〜約5ミリメートルであり、ガラスまたはシリコンのような剛性基材の場合、約0.5〜約10ミリメートルである。
【0046】
さらに、本開示の基材は、絶縁表面を有する完全な基材ではなく、他のものが与えられていない限り、ガラス基材、樹脂基材、樹脂膜などのような絶縁材料から作られる基材だけではなく、半導体、金属などから作られる基材を指す。
【0047】
しかし、本開示のメモリデバイスは、電極、有機半導体ポリマーおよび電解質が、互いに支え合うような様式で整列していてもよいため、支持体を有するデバイスに限定されない。このような実施形態では、本開示のメモリデバイスは、自立するデバイスであってもよい。
【0048】
W/E電極は、導電性材料で構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、金属薄膜、導電性ポリマー膜、導電性のインクまたはペーストから作られる導電性膜または基材自体(例えば、高度にドープされたシリコン)であってもよい。W/E電極材料の例としては、限定されないが、アルミニウム、金、銀、クロム、インジウムスズオキシド、導電性ポリマー、例えば、ポリスチレンスルホネートがドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)、カーボンブラック/グラファイトまたは銀コロイドで構成される導電性インク/ペーストが挙げられる。W/E電極は、真空蒸着、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、従来のリソグラフィーおよびエッチング、化学蒸着、スピンコーティング、鋳造または印刷、または他の堆積プロセスによって調製することができる。W/E電極の厚みは、金属膜の場合、約10〜約500ナノメートルであり、導電性ポリマーの場合、約0.5〜約10マイクロメートルである。
【0049】
読み取り電極として使用するのに適した典型的な材料としては、金、銀、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマーおよび導電性インクのような材料が挙げられる。具体的な実施形態では、電極材料は、半導体に対する接触抵抗が小さい。典型的な厚みは、例えば、約10ナノメートル〜約1マイクロメートル、例えば、約100〜約400ナノメートルである。電極は、当該技術分野で既知の従来のプロセスを用いて作られてもよく、または堆積されてもよい。
【0050】
所望の場合、界面層は、電解質層と有機半導体ポリマー層との間に配置されていてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスは、デバイスを保護するために、部分的または全体的に封入されていてもよい。封入すると、機能するのに必要な任意の溶媒(例えば、電解質(例えば、固化した電解質)のための溶媒)の保持率を高めるだろう。大気中の酸素が問題となり得る具体的な実施形態では、封入は、酸素がメモリデバイスの中で電気化学反応を阻害しないようにするのに役立つだろう。封入は、液相プロセスのような任意の従来の方法によって達成することができる。例えば、液相ポリマーまたは有機モノマーを、スプレーコーティング、浸漬コーティングまたは上に列挙した任意の従来の印刷技術のような方法を用い、メモリデバイスの上に堆積させることができる。堆積した後、例えば、紫外線または赤外線を照射することによって、溶媒を蒸発させることによって、冷却するか、または堆積の前に成分を混合する二成分系(例えば、エポキシ接着剤)を使用することによって、封入剤を硬化することができる。または、封入は、メモリデバイスの上に固体膜を積層することによって達成される。
【0052】
所望の場合、環境的な条件(例えば、光、酸素、水分など)からメモリデバイスを保護するために、選択的な遮断層をメモリデバイスの上部に堆積させてもよい。このような遮断層は、当該技術分野で既知であり、単にポリマーのみから構成されていてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、有機半導体ポリマーに電荷移動型のドーパント基質をドープすることによって、さらに導電性を高めることが可能である。ドーパント基質として、ヨウ素、アルカリ金属(例えば、NaおよびK)、アルカリ土類金属(例えば、Ca)、貴金属(例えば、Au、Ag、Pd、Pt)などのような任意のドーパント基質を使用してもよい。さらに、金属酸化物または塩(例えば、Fe、Al、ZnO)といった他のドーパント基質が、有機半導体ポリマー作成プロセス中に含まれていてもよい。
【0054】
メモリデバイスのさまざまな構成要素を、図からわかるように、任意の順序で基材の上に堆積させてもよい。「基材の上に(upon the substrate)」または「基材の上に(on the substrate)」は、それぞれの構成要素が基材に直接接している必要があると解釈すべきではない。この用語は、基材に対する構成要素の相対的な位置を記述するものであると解釈すべきである。しかし、一般的に、有機半導体ポリマー層は、電解質層と接していなければならない。それに加え、読み取り電極は、両方とも有機半導体ポリマー層と接していなければならない。有機半導体ポリマー層は、当該技術分野で既知の任意の従来からある方法によって作られてもよい。いくつかの実施形態では、本開示のメモリデバイスを、任意の適切な構成要素(例えば、可とう性構成要素)の上に堆積させてもよい。
【0055】
本開示において、不揮発性メモリとしての有機半導体ポリマーメモリは、記憶媒体として有機半導体ポリマーと、有機半導体ポリマーを導電性にするために有機半導体ポリマーの近傍に配置された第1の線と、有機半導体ポリマーが第1の導電性状態、第2の導電性状態または非導電性であるかどうかを検出するために有機半導体ポリマーの近傍に配置された第2の線とで構成されていてもよい。
【0056】
さらに、メモリの入力/出力方法は、以下の様式で設定されていてもよい。有機半導体ポリマーを記録媒体として使用し、それぞれの有機半導体ポリマーについて、有機半導体ポリマーを導電性にするための少なくとも1つの線を、有機半導体ポリマーの近傍に配置し、この線を用いて有機半導体ポリマーを導電性にすることによって、メモリに書きこまれる。さらに、それぞれの有機半導体ポリマーについて、有機半導体ポリマーの導電性を検出するための少なくとも1つの線は、メモリが読まれるように有機半導体ポリマー近傍に配置されている。
【0057】
メモリの適用例に関して、本開示のメモリデバイスは、電池を使用したバックアップの必要がない補助記憶媒体としてメモリカードまたはコンピュータシステムで使用するのに適している場合がある。なぜなら、上のメモリデバイスは、電源を落とした後でさえ情報を維持しているからである。さらに、その不揮発性のために、HDD(ハードディスク)の一部として機能させることができる。上の目的のためにメモリ要素を用いることによって、以下の機能が達成されるだろう。高密度パッケージング、それによって、大容量の記憶デバイスを低コストで製造すること、メモリを維持する際の安定性、メモリの入力/出力速度の増加。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
ポリマーとしてポリ(3−ヘキシルチオフェン)の場合について、図1に示される構造をメモリデバイスとして操作することを図2および図3に示す。40秒間の「活性化」期間の後、ポリマー層のコンダクタンスを、高コンダクタンス状態と低コンダクタンス状態との間で繰り返しスイッチングした。図2は、ポリ 3−ヘキシルチオフェンをポリマー層として含む図1の構造を用いたメモリデバイスの操作を示し、R1とR2の間の電流に対し、連続的な「活性化」パルスが及ぼす影響を示す。図3は、約40回の書き込み/消去サイクルを示し、R1とR2の電流を繰り返しスイッチングする(バイアス0.1Vで測定)ことを示している。
【0059】
図4は、+3Vおよび−3Vの「消去」および「書き込み」のパルスに従うR1とR2の電流の挙動を示し(バイアス0.1Vで測定)、ON状態およびOFF状態で約1時間の安定性を示す。ON状態またはOFF状態は、パルスから少なくとも数時間の間は、簡単に識別することができ、数時間の保持時間を示している。デバイス組成物の改変によって保持力を伸ばすことができ、保持時間がかなり長くなり、ON状態とOFF状態との差を大きくすることができる。
【0060】
(実施例2)
ポリチオフェン半導体のポラロン形成を監視するために、2個の端子の接点を作成した。3個の端子のデバイスと同様に、周囲のHOで飽和した電子線酸化ケイ素を電解質層として使用した。酸化ケイ素層の多孔性を確認するために、このデバイスの電流密度を測定した。図5のように、2つの電極間で大きな漏れ電流が存在し、このことは、酸化ケイ素層の多孔性の特徴またはピンホールを示している。
【0061】
このデバイスに電圧を印加すると(例えば、+5Vから−5V)、半導体は、可逆性の電気化学的ドーピングおよび脱ドーピングを受けた。その結果、ラマンスペクトル(図6)が劇的に変化した。脱ドープした状態(実線)では、1457cm−1で振動バンドが観察され、一方、電気化学的ドーピングすると、ポラロン形成に起因して1401cm−1に振動バンドがシフトした(点線)。
【0062】
(実施例3)
実施例1と同様に、半導体ポリマーとしてポリ(クアテルチオフェン)(PQT)を使用し、PEOに分散したビオロゲンLiClOを電解質層として用い、図1に示される構造を有するメモリデバイスを作成した。PQT/ビオロゲンデバイスは、減圧下で実行可能なままであり、使用可能なオン/オフ比に達するのに活性化パルスは必要ではない。重要なことに、このデバイスは、「オン」電流および「オフ」電流の優れた安定性を示し、10〜10の顕著なオン/オフ比を示す。デバイスは、破壊を起こさず、また、ソース−ドレイン電流に顕著に流れることなく、100サイクルを受けた。ラマン顕微鏡を用い、PQT/ビオロゲンメモリデバイスをさらに試験した。ポラロンを作成し、高インダクタンス状態を補正するという以前の観察結果を確認することに加え、本願発明者らは、ここで、還元したビオロゲン種の同時出現を観察することができ、したがって、このことは、本開示のメモリデバイスの酸化還元モデルを支持する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6