【実施例】
【0040】
次いで、図面を参照しつつ実施例を具体的に説明する。
この実施例のトマト収穫機の大きさは、幅が約2.1m、機体全長約5.2m、機体高さ約2.6mである。そして、全体構造の外観は
図1のとおりであり、先端に掻き上げ装置1があり当該掻き上げ装置の前部の下にバリカン式のカッターCがあり、その上に掻き上げ助勢装置2があり、さらに、掻き上げ装置1の後ろに引き上げコンベア3がある。
【0041】
掻き上げ助勢装置2の前半部分は掻き上げ装置1に重なり、後半部分は引き上げコンベア3の先端部分に重なっている。これによって、掻き上げ装置から引き上げコンベア3への枝Pの引き渡しがスムーズになされる。
掻き上げ装置1、掻き上げ助勢装置2、カッターC、引き上げコンベア3が可動フレーム(図示略)に支持されており、これらが一体となって可動フレームによって上下に動かされる。可動フレームは油圧シリンダ(図示略)によって昇降操作され、圃場間の移動時や作業中の方向転換時等に引き上げられる。
【0042】
また、掻き上げ装置1、カッターC、掻き上げ助勢装置2はサブフレーム(図示略)に支持されており、当該サブフレームは上記可動フレームに上下方向に可動に支持されている。
そして、上記サブフレームは油圧シリンダー(図示略)で高さ位置調節自在に支持されており、これによって掻き上げ装置1の先端の地面からの高さが容易に微調整される。
【0043】
〔部分構造について〕
掻き上げ装置1の横幅は950mmであり、掻き上げ助勢装置2の横幅は925mmである。そして、掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2との間の間隔、すなわち、枝Pの取り込み口の高さは約160mmである。
なお、このトマト収穫機の作業時の前進速度は0.05m/秒であり、掻き上げ助勢装置2の引き上げ速度は上記前進速度よりも少し速い。これによって枝Pは掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2とで挟まれて引き込まれていく。
他方、引き上げコンベア3は横幅が950mm、全長が2.8m、傾斜角度が55度であり、引き上げ速度は0.1m/秒である。
【0044】
トマト分離装置4はその横幅が800mm、全長が1600mmであり、その先端が引き上げコンベア3の後端よりも450mm下方に配置されている。
トマト分離装置4で分離されたトマトは分離棚41から良否仕分け装置5に落下し、枝Pは分離棚41から後方に放出される。
【0045】
良否仕分け装置5は前下がりに傾斜していてその搬送方向は後方である。そして、当該良否仕分け装置5の先端より下方に横送りコンベア6があり、良否仕分け装置5で仕分けられた硬い良好トマトがこの横送りコンベア6に送られる。
そして、選別コンベア7の後端にこれと一体に連続した引き上げコンベア8がある。
【0046】
〔収穫作業〕
収穫作業は従来のものと基本的に違いはないから、繰り返しになるが念のため再び説明する。
トマトの枝Pは、バリカン式のカッターCで根切りされ、掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2とによって掻き上げられ、引き上げコンベア3で引き上げられてトマト分離装置4の先端部分に落とされる。そして、トマト分離装置4の先端部分に落とされた枝Pの塊は、分離棚41の上下動で繰り返し高く跳ね上げられる。そして、跳ね上げられる度に枝Pは少しずつ後方に送られ、トマト分離装置4の後端まで達して後方に放出される。
10回程度繰り返し跳ね上げられるとほぼ完全に枝Pから分離され、分離されたトマトは分離棚41から落下し、枝Pが後方に放出される。
【0047】
トマト分離装置4の分離棚41から落下し良否仕分け装置5に落ちた硬い良好トマトは当該良否仕分け装置5のコンベア面を前方に転がり落ち、他方、軟らかい不良トマトはそのコンベアで後方に搬送されて後方に放出される。
良否仕分け装置5のコンベア面を転がり落ちた硬い良好トマトは横送りコンベア6で受け止められ、硬い良好トマトのうちの小玉のもの(例えば、直径33mm以下)は横送りコンベア6で篩い落とされる。
【0048】
硬い良好トマトのうちの中玉、大玉のものが側部の選別コンベア7まで運ばれ、ここで最終選別がなされる。
選別コンベア7での品質検査を経たものが引き上げコンベア8でシューター9まで引き上げられ、そして、シューター9を経てコンテナに収納される。
【0049】
次いで、実施例の要部についてその構造を詳細に説明する。
〔掻き上げ装置1の構造〕
掻き上げ装置1の構造は従来技術のそれと同じである。この例の掻き上げ装置1の横幅は950mm、長さは700mmであり、各ロッド11のロッド径はφ16mm、ロッドピッチは40mmであり、また、クランクの回転速度は300回/分、上下方向ストロークは16mm、前後方向ストロークは16mmである。
【0050】
掻き上げ装置1は、10本のロッド11(a〜j)による掻き上げユニット1Aと、9本のロッド11(k〜s)による掻き上げユニット1Bとを組み合わせて構成されている(
図3)。
そして、掻き上げユニット1A,1Bはそれぞれのクランク12によって駆動され、上記クランク12がロッド11(a〜j,k〜s)を上下及び前後方向にクランク運動させる。このクランク運動を
図4の(1)〜(4)を参照しながら説明する。
【0051】
(1):掻き上げユニット1Aが最上位置にあり、同ユニット1Bが最下位置にある。このとき、ユニット1Aとユニット1Bの前後方向位置が一致している。
(2):クランク12が時計回りに90度回転して同ユニット1Aが下降しながら後退し、同ユニット1Bが上昇しながら前進する。このとき、ユニット1Aがユニット1Bに対して最も後方にある。
(3):さらに90度回転して同ユニット1Aがさらに下降しながら前進し、同ユニット1Bがさらに上昇しながら後退する。
(4):さらに90度回転して同ユニット1Aが上昇しながら前進し、ユニット1Bが下降しながら後退する。
(1):さらに90度回転して同ユニット1Aがさらに上昇しながら後退し、ユニット1Bがさらに下降しながら前進する。これによってクランク12は1回転したことになるので、ユニット1A,1Bは(1)の位置に戻ったことになる。
【0052】
このような二つの掻き上げユニット1A,1Bがトマト収穫機の自走に伴ってゆっくりと前進しながら、互いに反対方向に上下及び前後に往復運動をする。これによって、枝Pを掬い上げて掻き上げていく。
【0053】
〔掻き上げ助勢装置2の構造〕
掻き上げ助勢装置2は、左右のチェン21,21を多数の横ロッド22で連結して構成されたチェンコンベアである。そして、上記横ロッド22の両端は左右のチェンの連結ピン(チェンリンクの連結ピン)を兼ねていて、ロッド径はφ8mm、ロッドピッチ(ロッド間の間隔)は40mmである。
そして、互いに隣接する2つの横ロッド22,22に跨って高さ40mmの爪23が外向きに設けられている。この爪23は横ロッド22の左右両側部と隣接する他のロッドの中央部とにあって、コンベア搬送面全体に均等に配置されている。この爪23に引っかけられて枝Pが掻き上げられる。
【0054】
この掻き上げ助勢装置2はその横幅が950mm、長さが1,000mmであり、掻き上げ助勢作用だけでなく引き上げコンベア3にスムーズに引き渡すための中継コンベアの作用をも果たしている。
上記横ロッド22は細い高弾性の金属棒(高弾性鋼材)であり、多数の横ロッド22によって上から押さえながら枝P掻き上げる。掻き上げユニット1A,1Bの一群のロッド(a〜j,k〜s)の上下動によって枝Pが押し上げられ、横ロッド22が突き上げられるので、この突き上げ力によって横ロッド22が上方に弾性変形する。
【0055】
したがって、枝Pは過大に強く押さえられて掻き上げ装置1と掻き上げ助勢装置2の間に詰まることなしに、また逆に滑って停滞することなしにスムーズに掻き上げられる。
【0056】
〔引き上げコンベア3の構造〕
引き上げコンベア3は左右のチェンを多数の横ロッドで連結して構成されたチェンコンベアであり、その横ロッドに滑り止め用の高さ50mmの爪が設けられている。この引き上げコンベア3のチェンコンベアの構造(左右のチェンと横ロッドの関係、及び爪の配置等)は掻き上げ助勢装置2のチェンコンベアの構造と同様である(必要なら
図2、
図3を参照)。
引き上げコンベア3の幅は掻き上げ装置1の幅より少し広く、長さは2.8mで、傾斜角度は55度である。横ロッドの線径はφ8mmでピッチは40mmである。
【0057】
〔トマト分離装置4の構造〕
このトマト分離装置4の分離棚41は所定ピッチで配置された多数の縦ロッド(前後方向ロッド)41aで構成されており、この多数の縦ロッド41aは両端を前後の支持部材41bに固着されて一体化されている。そして前後の支持部材41bは前後のクランク42、42に支持されている。
分離棚41の縦ロッド41aのロッド径はφ17mm、ロッドピッチは85mmであり、分離棚41の横幅は800mm、長さは1600mmである。
上記分離棚41は少し後上がりに傾斜しており(傾斜角度θ、
図9を参照)、前後のクランク42,42は中央の駆動スプロケット44によって伝動チェン45を介して同方向に同速度で駆動される。
【0058】
図7は前後のクランク42,42による分離棚41のクランク運動を回転角度90度毎に分解して示したものである。
(1)は上下方向下端で前後方向中央であり、
(2)は上下方向中央、前後方向前方である。
(3)は上端で前後方向中央であり、
(4)は上下方向中央、前後方向後端であり、
(5)は(1)と同じ下端位置である。
【0059】
分離棚41が前後のクランク42,42によって駆動されて上下及び前後方向に運動すると、その上下動によって分離棚41上の枝Pが大きく(この例では概略20cm以上)跳ね上げられて、分離棚41上に落下する。この跳ね上げと落下による衝撃でトマトが分離される。そして、クランク運動の前後動で枝Pが後方に少し送られる。所要回数(この例では約10回)跳ね上げられたところでトマトの分離はほぼ完了する。
【0060】
この実施例ではトマト分離装置4のクランク42,42は5回/秒の速度で回転する。このクランクによる上下動及び前後動の全ストロークは80mmである。
分離棚41の傾斜角度θ(
図9)は調節可能であり、傾斜角度θが調節されることによって一回の跳ね上がりで枝Pが後方へ移動する距離が調節され、その結果、分離棚41の後方に放出されるまでに跳ね上げられる回数が加減される。
【0061】
分離棚41が水平であれば、その後方への運動によって後方に飛ばされる分だけ枝Pは移動し、数回の跳ね上げ動作で枝Pが分離棚41の後方に放出されてしまう。しかし、分離棚41は前下がりに傾斜しているのでその分だけその後方への移動距離が短くなり、その結果、跳ね上げられる回数が多くなる。この実施例では分離棚41の傾斜角度θが2〜3度(例えば3度)であり、この場合、枝Pが約20cmの高さまで10回跳ね上げられてから後方に放出される。
【0062】
繁茂状況や成熟度合いによってトマトの分離の難易が異なるから、実際の分離状況を確認しながら、枝Pが分離棚41から後方に放出されるまでの跳ね上げ回数を加減する必要があるが、分離棚41の上記傾斜角度を調節することによって容易にこれを加減することができる。
【0063】
また、トマトを栽培している圃場が傾斜していてこのために作業機が前方又は後方に傾斜するとその分だけ分離棚41の上記傾斜角度θ(水平に対する傾斜角度)が変化するので、この変化分を補正するために当該傾斜角度を調節しなければならない。なぜなら、作業機が前方又は後方に傾斜して、分離棚41の傾斜角度θが変化して、トマトの分離能力が低下するからである。
以上のために、このトマト分離装置4は分離棚41の上記傾斜角度θを調節することが可能であり、そのための調節機構を備えている。
【0064】
分離棚41の上記傾斜角度θを調節する調節機構は、分離棚41を上下及び前後に往復駆動(クランク運動等)するのに支障がないものでなければならない。このために、この発明はクランク42,42を支持している支持フレーム46の先端を枢支軸47で支持し、油圧シリンダー48で後端を支持し、油圧シリンダー48を伸縮させることによって上記支持フレームの傾斜角度θが調整される構成を採用している(
図9)。
【0065】
〔良否仕分け装置5の構造〕
良否仕分け装置5は左右のチェン51と多数の横ロッド52とで構成されたチェンコンベアである(
図8)。そして多数の横ロッド52が密に配置されてコンベア搬送面を形成している。
【0066】
そしてまた、前記トマト分離装置4から落ちた異物(葉やごみ等)も良否仕分け装置5によって後方に搬送されるのでこれらも硬い良好トマトから仕分けられる。
良否仕分け装置5の傾斜角度α(
図8)とその搬送速度が仕分け精度に関係する。したがって、これらを調節することで仕分け精度が適宜調整される。
なお、この実施例の良否仕分け装置5の水平に対する傾斜角度α(
図8)の標準角度が略25度であり、搬送速度が0.3〜0.5m/秒である。
【0067】
圃場の傾斜のためにトマトの収穫作業中に上記傾斜角度が大きく変ると、良否仕分け精度が顕著に変わるのでこれを補正する必要がある。これに備えて、良否仕分け装置5の傾斜コンベアの後方の取付ボルトを着脱自在にし、ボルト孔を上下に多数設けることによって上記傾斜角度αを多段階(例えば、角度2度毎)に変更できるようにその支持構造を工夫し、また、搬送速度を無段階に調節できるようにしている(図示略)。
【0068】
良否仕分け装置5のチェンコンベアの幅wは600mm、全長Lは1050mmである。そして、横ロッド52は高弾性鋼材によるものであり、その線径dはφ5mm、ロッドピッチpは20mmである。
横ロッド52によるコンベア搬送面の転がり抵抗は、横ロッド52の線径d、ロッドピッチpに関係し、良否仕分け性能に関係する。
他方、ロッド長さは600mmであって長く(良否仕分け装置5の幅wとほぼ等しい)、細長いから曲げ方向(上下方向)の弾力が高くて、曲げ方向への衝撃に対する緩衝作用を奏する。
【0069】
良否仕分け装置5の搬送面(又はコンベア面)が硬いと、トマト分離装置4の分離棚41からこの搬送面までの落差(当該良否仕分け装置の全長と傾斜角度による)は大きいので、この落差で落下したトマトが衝突の衝撃で傷つけられる可能性がある。因みに、この実施例の良否仕分け装置の先端部における上記落差Hは概略500mmである。
【0070】
なお、良否仕分け装置5のチェンコンベアの左右両側の伝動手段についてはいわゆるチェンである必要は必ずしもなく、これを歯付きベルトに換えてこれと多数の横ロッドによってベルトコンベアを構成してもよい。
【0071】
〔横送りコンベア6の構造〕
この横送りコンベア6は左右のチェンと多数の横ロッドで構成されたチェンコンベアである。横送りコンベア6の幅は500mm、長さは900mm、その横ロッドの線径はφ9mm、ロッドピッチは42mmである。そして、ロッド間の隙間は33mmであるので、直径33mm以下の小玉トマトがこの横送りコンベア6で篩い落とされる。
【0072】
〔選別コンベア7の構造〕
選別コンベア7は目視検査のための搬送コンベアであって特別の構造のものではなく、横送りコンベア6と同様のチェンコンベアである。
【0073】
〔引き上げコンベア8の構造〕
引き上げコンベア8は左右のチェンと多数の横ロッドによる搬送コンベアであって特別のものではない。
この例の引き上げコンベア8は選別コンベア7と一連のものであり、選別コンベア7を延長しているものである。