特許第6208964号(P6208964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208964
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/12 20060101AFI20170925BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20170925BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20170925BHJP
   F26B 7/00 20060101ALI20170925BHJP
   F26B 13/24 20060101ALI20170925BHJP
   F26B 13/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B05C9/12
   B05D3/00 C
   B05D3/00 Z
   B05D3/06 C
   F26B7/00
   F26B13/24
   F26B13/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-66351(P2013-66351)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-188450(P2014-188450A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和家
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 剛
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−094630(JP,A)
【文献】 特開2006−236565(JP,A)
【文献】 特開2014−114995(JP,A)
【文献】 特開2013−234818(JP,A)
【文献】 特開2001−170547(JP,A)
【文献】 特開2005−081256(JP,A)
【文献】 特開2012−223702(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0133972(US,A1)
【文献】 特開2007−271137(JP,A)
【文献】 特開2008−302298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00〜B05B17/08
B05C1/00〜B05C21/00
B05D1/00〜B05D7/26
B32B1/00〜B32B43/00
C08J5/00〜C08J5/24
F26B1/00〜F26B25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に搬送されている長尺状のフィルムの一方の面に樹脂材料と溶剤を含有する塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程によって塗膜が形成されたフィルムを、該塗膜から揮発する溶剤の量と速度を調整した塗膜制御装置に通す自然乾燥工程と、
前記塗膜に含まれる溶剤を揮発させる本乾燥工程と、
前記塗膜にエネルギーを付与して硬化させる硬化工程と、
を順次行う積層フィルムの製造方法であって、
前記自然乾燥工程が、
前記塗膜制御装置として、
前記塗膜および前記フィルムの幅方向両端の厚み部分を覆う2以上のカバー部材を備え、
前記2以上のカバー部材は、孔を設けていない1以上の無孔カバー部材と、孔を設けた1以上の有孔カバー部材が、前記フィルムの搬送方向に連結されたものであり、
前記塗膜から揮発する溶剤を該有孔カバー部材の孔から外部に排気する排気手段を備え、
前記カバー部材の設置箇所を組み替えることができる装置を用い、
前記塗布工程によって塗膜が形成されたフィルムを、前記カバー部材で覆われた上流側空間内に外部の気体が流入することを規制することで、該塗膜から揮発した溶剤の濃度を該上流側空間内で高める揮発抑制ゾーンに一番最初に通し、次いで、該カバー部材で覆われた下流側空間内の空気が該下流側空間の外に排出され該下流側空間の換気が行われる乾燥ゾーンに通す工程であることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも樹脂材料と溶剤とを含有する塗布液を、長手方向に連続したフィルムの一方の面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜が乾燥するまでの工程の間に、塗膜から揮発する溶剤について、その揮発する溶剤の量と速度を塗布直後から管理するための塗膜制御装置を用いた積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の各種デイスプレイには、ディスプレイの表面に、特定の機能を付与するためのコート層をフィルムの一方の面に形成した積層フィルムが、貼り付けられているものがある。このコート層をフィルムに形成する装置として、長手方向に搬送されている長尺状のフィルムの一方の面に樹脂材料と有機溶剤を含有する塗布液を塗布し、その塗布液を乾燥および硬化させてコート層を形成する積層フィルム製造装置が知られている。なお、コート層によってフィルムに付与される機能としては、例えば、高屈折微粒子を含有した高屈折率層に低屈折率層を積層し、低屈折率層の表面で反射する表面反射光と、高屈折率層と低屈折率層の界面で反射する界面反射光の位相を逆転させ打ち消し合うことで反射光を軽減する反射防止機能、コート層表面に凹凸を形成することで外光(蛍光灯の光や太陽光等)の映り込みを抑える防眩機能、或いは、フィルムよりも高い硬度のコート層をフィルムに積層することで得られる傷付防止機能などがある。
【0003】
積層フィルム製造装置には、フィルムの一方の面に塗布液を塗布する塗布装置が設けられているものがある。この塗布装置として、例えば、メイヤーバー等のバー塗工装置、グラビア式塗工装置、ダイコーティング装置、或いはスクリーン印刷装置などが用いられている。これらの塗布装置によりフィルムに塗布された直後の塗布液は塗布液中の有機溶剤濃度が高いため沸騰しやすい。このため、塗布された直後の塗布液に熱を加えて乾燥させると、コート層にいわゆる突沸が生じてしまうことがある。突沸が生じると、コート層のうち、その突沸が生じた部分が白化してしまうという問題がある。
【0004】
この突沸を抑制するために、塗膜が一方の面に形成されたフィルムに所定の処理を施す予備乾燥装置が設けられている積層フィルム製造装置もある。この予備乾燥装置として、フィルム幅方向の一方側から他方側に向けて流れる乾燥風を発生させた乾燥ゾーンを、フィルムに塗布液を塗布する塗布位置の直後に設けることで、熱を加える前の塗布液の有機溶剤濃度をある程度低下させる予備乾燥を行う予備乾燥装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された予備乾燥装置は大がかりな装置であることから、一旦設置箇所を決めると、その後に移動させることは通常行われない。そして、設置箇所を決めた後、予備乾燥装置の最適な製造条件が決定されることになる。このような手順を踏むことは、他の予備乾燥装置においても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4147370号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された予備乾燥装置では、一旦設置箇所を決めると、それを前提として製造条件を決定するため、更なる改善を目指す際に支障をきたすことがある。
【0007】
また、フィルムに塗布された塗布液には、時間の経過とともにフィルム幅方向および搬送方向において塗布液が均一の厚みになろうとするレベリングが生じる。特許文献1に記載された予備乾燥装置では、フィルムに塗布液を塗布する塗布位置の直後にフィルムの幅方向に流れる乾燥風を発生させる乾燥ゾーンを設けているので、塗料の組成や使用する溶剤の種類によってはその乾燥風の影響で、塗膜が波立ってしまうことがある。塗膜が波立った状態でその塗膜に含まれる有機溶剤濃度を低下させる予備乾燥を行うと、塗膜の厚みが不均一な状態で塗膜の粘度が高くなり、レベリングし難くなってしまう。このため、特許文献1に記載された予備乾燥装置では、レベリングが十分行われないで、塗膜の厚みが不均一になってしまう虞がある。また、塗膜は、硬化する際に硬化収縮を生じることがある。この硬化収縮は、塗膜の厚い部分では、塗膜が薄い部分より大きくなる。このため、厚みが不均一の塗膜を硬化させると、硬化収縮量の部分的な違いにより積層フィルムにシワが生じてしまうことがある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、シワのないコート層を有するフィルムを得ることができる塗膜制御装置を用いた積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決する本発明の積層フィルムの製造方法は、
長手方向に搬送されている長尺状のフィルムの一方の面に樹脂材料と溶剤を含有する塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程によって塗膜が形成されたフィルムを、該塗膜から揮発する溶剤の量と速度を調整した塗膜制御装置に通す自然乾燥工程と、
前記塗膜に含まれる溶剤を揮発させる本乾燥工程と、
前記塗膜にエネルギーを付与して硬化させる硬化工程と、
を順次行う積層フィルムの製造方法であって、
前記自然乾燥工程が、
前記塗膜制御装置として、
前記塗膜および前記フィルムの幅方向両端の厚み部分を覆う2以上のカバー部材を備え、
前記2以上のカバー部材は、孔を設けていない1以上の無孔カバー部材と、孔を設けた1以上の有孔カバー部材が、前記フィルムの搬送方向に連結されたものであり、
前記塗膜から揮発する溶剤を該有孔カバー部材の孔から外部に排気する排気手段を備え、
前記カバー部材の設置箇所を組み替えることができる装置を用い、
前記塗布工程によって塗膜が形成されたフィルムを、前記カバー部材で覆われた上流側空間内に外部の気体が流入することを規制することで、該塗膜から揮発した溶剤の濃度を該上流側空間内で高める揮発抑制ゾーンに一番最初に通し、次いで、該カバー部材で覆われた下流側空間内の空気が該下流側空間の外に排出され該下流側空間の換気が行われる乾燥ゾーンに通す工程であることを特徴とする。
【0011】
なお、上記有孔カバー部材は、上記乾燥装置の近くに配置されるものほど、孔の総面積が大きくなるものであってもよい。
【0012】
また、上記塗膜制御装置において、前記フィルムの搬送方向における前記有孔カバー部材と前記無孔カバー部材の長さが略同じである態様であってもよい。
【0013】
この態様によれば、カバー部材の設置箇所を組み替えることが容易になるばかりか、カバー部材の作製も容易になり、コストダウンを実現することができる。
【0014】
また、上記塗膜制御装置において、前記2以上のカバー部材が目張部材を介して連結されたものであってもよい。
【0015】
上記目張部材によって、カバー部材どうしの隙間から、カバー部材外部の気体がカバー部材内部に流入することが規制される。なお、目張部材は除去することが可能なものであり、上記カバー部材の設置箇所の組み替えを妨げることはなく、組み替え後の2以上のカバー部材は、目張部材を介して再度連結される。
【0016】
また、上記塗膜制御装置において、前記排気手段は、前記一方の面と交わる方向に貫通した複数の貫通孔を有する整流部材を備えたものであってもよい。
【0017】
上記整流部材を設けることで、乱流の発生を抑制しつつフィルムとカバー部材との間の気体を吸引することができ、塗布液を波立たせることなく、フィルムの一方の面に塗布された塗布液をより均等に塗膜制御することができる。
【0018】
なお、前記排気手段は、前記フィルムと前記カバー部材との間の気体を該フィルムの一方の面に対して略垂直方向に吸引するものであってもよい。
【0019】
さらに、上記塗膜制御装置において、前記整流部材は、網状のものであることが好ましい。
【0020】
網状の整流部材を設けることで、簡単な構成で高い整流効果が得られる。
【0021】
層フィルムの製造方法は、長手方向に搬送されている長尺状のフィルムの一方の面に樹脂材料と溶剤を含有する塗布液を塗布する塗布工程と、
上記塗膜から揮発する溶剤の量と速度を調整した、上記塗膜制御装置を通過させる自然乾燥工程と、
上記塗膜に含まれる溶剤を揮発させる本乾燥工程と、
上記塗膜にエネルギーを付与して硬化させる硬化工程と、
を順次行うことを特徴とする。
【0022】
上記積層フィルムの製造方法によれば、シワのないコート層を有するフィルムを得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の積層フィルムの製造方法によれば、シワのないコート層を有するフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態である塗膜制御装置が配置された積層フィルム製造装置を示す模式図である。
図2】(a)は図1のA−A断面であり、(b)は図1のB−B断面である。
図3】排気手段を示す分解斜視図である。
図4図1に示す積層フィルム製造装置による積層フィルム製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である塗膜制御装置は、コート層を樹脂フィルムに積層する積層フィルム製造装置に用いられる塗膜制御装置である。なお、本発明の塗膜制御装置は特許文献1に記載されるような予備乾燥の機能を一部有するものであるが、予備乾燥に主があるのではなく、塗膜の厚さを均一にすることに主があるものである。
【0026】
また、以下の説明では、フィルムに塗る前については塗布液と称し、塗った後については塗膜と称する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態である塗膜制御装置が配置された積層フィルム製造装置を示す模式図である。
【0028】
図1に示す積層フィルム製造装置1は、長尺の樹脂フィルムFをその樹脂フィルムFの長手方向に搬送経路に沿って略一定速度で搬送しながら樹脂フィルムF上にコート層を形成することで積層フィルムを製造する装置である。なお、本実施形態では、樹脂フィルムFとして、フィルム厚5〜200μm程度のトリアセチルセルロース製のフィルムを用いている。以下、搬送経路上流側を単に上流側と称し、搬送経路下流側を単に下流側と称することがある。また、長尺の樹脂フィルムFの一部を、単に樹脂フィルムFと称することがある。
【0029】
積層フィルム製造装置1は、上流側から順に、送出ロール2と、塗布装置3と、塗膜制御装置4と、乾燥装置6と、光照射装置7と、巻取ロール8とを備えている。長尺の樹脂フィルムFは、上流側端に設けられた送出ロール2に巻回され、積層フィルム製造装置1にセットされる。一方、下流側端まで搬送されてきた樹脂フィルムFは、巻取ロール8で巻き取られる。この積層フィルム製造装置1において、長尺の樹脂フィルムFは所定の速度範囲内で、略一定の速度で搬送される。したがって、略一定の速度で積層フィルムを製造することができる。本実施形態では、樹脂フィルムFの搬送速度は、1〜100m/minに設定されている。塗布液の組成にもよるが、搬送速度が増すにつれて塗膜の厚さは不均一になりやすい傾向がある。搬送速度の下限値はコスト低減の観点から30m/min以上が好ましく、40m/min以上がより好ましく、50m/min以上が特に好ましい。搬送速度の上限値は特に限定されない。
【0030】
塗布装置3は、樹脂フィルムFに塗布液Wを塗布するグラビアロール31と、塗布前の塗布液Wが一定量入った液供給パン32と、2つのガイドロール33とを供えたグラビア式塗工装置である。塗布装置3によって樹脂フィルムFに塗布される塗布液Wは、有機溶剤を含有する粘度20mPa・sの液状のエネルギー硬化型樹脂である。エネルギー硬化型樹脂は熱や放射線等のエネルギーにより硬化するものである。なお、塗布液Wの粘度は、0.5mPa・s以上200.0mPa・s以下が好ましく、より好ましくは5.0mPa・s以上150mPa・s以下であり、さらに好ましくは10.0mPa・s以上100mPa・s以下である。この粘度によって、樹脂フィルムFに塗布される塗布液Wの量を調整することができる。以下、樹脂フィルムFの、塗布液Wが塗布された一方の面を、樹脂フィルムFの塗布面と称し、樹脂フィルムFの、塗布液Wが塗布された面とは反対側の面を樹脂フィルムFの裏面と称することがある。グラビアロール31は、そのロール表面に螺旋状の凹部が形成された円柱状のものである。このグラビアロール31は、樹脂フィルムFの搬送方向とは反対方向に一定角速度で回転している。液供給パン32は、グラビアロール31の下方に設けられている。グラビアロール31の下端部分は、液供給パン32内の塗布液Wに浸されている。ガイドロール33は、グラビアロール31の近傍であってグラビアロール31の上流側および下流側それぞれに1つづつ設けられている。樹脂フィルムFは、ガイドロール33によってグラビアロール31に押し付けられている。グラビアロール31は、表面の凹部によって液供給パン32から塗布液Wを掻き揚げ、搬送されている樹脂フィルムFの塗布面に塗布液Wを連続して一定量づつ塗布する。なお、塗布装置3として、メイヤーバー式等、樹脂フィルムF上に連続して塗布液Wを塗布できる他の塗布装置を用いることもできる。
【0031】
乾燥装置6は、塗布装置3によって樹脂フィルムF上に塗布された塗布液Wに直接熱風を吹きかけ、その塗布液Wを加熱するものである。塗布液Wが塗布されて塗膜が形成された樹脂フィルムFが乾燥装置6内を通過することで、樹脂フィルムFの、乾燥装置6内を通過した部分に塗布された塗膜に含まれていた有機溶剤の殆どが揮発する。なお、この乾燥装置6は、塗膜に含まれる有機溶剤を揮発させることができるものであればよく、例えば、間接的に加熱する加熱装置を用いてもよい。塗膜に含有されていた有機溶剤が揮発することで、エネルギー硬化型樹脂が樹脂フィルムFの塗布面に残り、樹脂フィルムFの塗布面にエネルギー硬化型樹脂塗膜が形成される。
【0032】
光エネルギー硬化型樹脂として、熱硬化型樹脂を使用する場合には加熱を施すことにより熱硬化型樹脂を硬化させることができ、光硬化型樹脂を使用する場合には紫外線や電子線等の電離放射線を照射することによって光硬化型樹脂を硬化させることができる。光硬化型樹脂は電離放射線によって硬化するため、簡便である。紫外線を照射する光照射装置7は、搬送されてくる樹脂フィルムFの上に形成されたエネルギー硬化型樹脂塗膜に光を照射し、そのエネルギー硬化型樹脂塗膜を硬化させるものである。硬化したエネルギー硬化型樹脂塗膜がコート層(エネルギー硬化樹脂層)になり、そのコート層が積層された樹脂フィルムFが積層フィルムになる。なお、光照射装置7の代わりに、加熱装置を設けることで熱硬化型樹脂を硬化させることができる。
【0033】
光照射装置7は、一面が開口した箱状のチャンバー71と、紫外線ランプ72と、照射用ロール73と、樹脂フィルムFを案内するガイドロール74とを備えている。チャンバー71は、搬送されてくる樹脂フィルムFの塗布面側に配置されている。チャンバー71の開口部は、四つの縁により画定された矩形状をしている。チャンバー71は、開口部が搬送経路に近接するように配置されている。このため、樹脂フィルムFは、チャンバー71の開口部の近傍を通過することになる。
【0034】
紫外線ランプ72は、樹脂フィルムFの上に形成されたエネルギー硬化型樹脂塗膜に光を照射するものである。この紫外線ランプ72は、チャンバー71内に配置されている。また、紫外線ランプ72は、樹脂フィルムFの幅方向(図1における紙面直交方向、以下、単に「幅方向」と称することがある)に延在した一本のランプである。紫外線ランプ72の延在方向の長さは樹脂フィルムFの幅とほぼ等しい。なお、塗布液Wおよび塗膜に含まれるエネルギー硬化型樹脂として、紫外線以外の光で硬化する樹脂を用いる場合、対応する光を照射するランプを使用すればよい。照射用ロール73は、搬送経路を挟んで紫外線ランプ72に対向し、樹脂フィルムFの裏面側に配置されている。なお、チャンバー71内に、窒素ガス等の不活性ガスを吐出する不活性ガス吐出手段を設けてもよい。
【0035】
塗膜制御装置4は、塗布装置3の近傍から乾燥装置6の近傍まで搬送経路に沿って延在している。この塗膜制御装置4は、6つのバックアップロール41と、塗布液Wが塗布された樹脂フィルムFの一方の面を覆うカバー部材42と、樹脂フィルムFとカバー部材42の間の気体をカバー部材42の外部に排気する4つの排気手段43とを備えている。
【0036】
6つのバックアップロール41それぞれは、樹脂フィルムFの裏面側に搬送経路に沿って配置され、樹脂フィルムFを案内するものである。また、この6つのバックアップロール41のうち、最も上流側と最も下流側に配置されたバックアップロール41には、樹脂フィルムFが約90度巻き掛けられている。最も上流側に配置されたバックアップロール41によって、樹脂フィルムFの搬送方向は、略水平方向から略垂直方向に変化している。また、最も下流側に配置されたバックアップロール41によって、樹脂フィルムFの搬送方向は、略垂直方向から略水平方向に変化している。
【0037】
カバー部材42は、塗布装置3が塗布液Wを塗布する塗布位置の近傍から乾燥装置6の近傍まで搬送経路に沿って延在している。なお、本実施形態における塗布位置とは、グラビアロール31と樹脂フィルムFとの接触位置である。隣合うカバー部材の間は目張部材422によって塞がれている。カバー部材42には、孔を設けた1以上の有孔カバー部材420と、孔を設けていない1以上の無孔カバー部材421と、の2種類がある。図1では、乾燥装置6に近い搬送方向下流側の3つのカバー部材42が有孔カバー部材420であり、乾燥装置6から遠い(塗布装置3に近い)搬送方向上流側の2つのカバー部材42が無孔カバー部材421である。なお、有孔カバー部材420は、乾燥装置6の近くに配置されるものほど、単位面積当たりの孔の総面積が大きくなるものであってもよい。また、一つのカバー部材42の中でも、搬送方向下流側の方が搬送方向上流側よりも、単位面積当たりの孔の総面積が大きくなるようにしてもよい。さらに、有孔カバー部材420と無孔カバー部材421の配置位置は適宜変更してもよく、例えば、塗布装置3に最も近い搬送方向最上流側のカバー部材42を無孔カバー部材421とし、以降、搬送方向に有孔カバー部材420、無孔カバー部材421の順で有孔カバー部材420と無孔カバー部材421を交互に配置してもよい。また、塗布液の組成(例えば、粘度が低い塗布液を使用する場合や、沸点の低い溶剤を使用する場合)によっては、有孔カバー部材420を上流側や塗布位置直後に設けてもよい。
【0038】
乾燥装置6の乾燥温度と、無孔カバー部材421または有孔カバー部材420いずれかのカバー部材42を有する樹脂フィルムFの特定ラインでの乾燥温度との温度差は、100℃以内であることが好ましい。これによって、乾燥装置6内で突沸が起こり難くなる結果、積層フィルムに白化の問題が起こり難くなる。乾燥装置6の乾燥温度は搬送される樹脂フィルムの種類(耐熱温度)にもよるが、30℃〜200℃の範囲内であることが好ましく、50℃〜150℃であることがさらに好ましい。無孔カバー部材421または有孔カバー部材420いずれかのカバー部材42を有する樹脂フィルムFの特定ラインでの乾燥温度は、10℃〜100℃の範囲内であることが好ましく、20℃〜50℃であることがさらに好ましい。
【0039】
これらのカバー部材42によって、カバー部材42外部の気体が、樹脂フィルムFとカバー部材42との間(以下、カバー部材42内部と称することがある)に流入することが規制されている。当該作用は、有孔カバー部材420を使用した場合であっても得ることができる。有孔カバー部材420は排気手段43と連結されているからである。最上流側および最下流側のカバー部材42は、塗膜制御装置4に設けられた図示しないフレームに着脱可能に取り付けられている。また、隣合うカバー部材は目張部材によって塞がれているが、この目張部材は除去することが可能であり、隣合うカバー部材も着脱可能に取り付けられている。このように各カバー部材42を着脱可能な構造にすることで、カバー部材の配列を容易に組み替えることができ、例えば、塗布液の種類の変更、搬送経路の変更などに柔軟に対応できる。すなわち、有孔カバー部材420と無孔カバー部材421の位置関係を容易に変更することができる。また、目張部材422によって、カバー部材42どうしの隙間から、カバー部材42外部の気体がカバー部材42内部に流入することが規制されている。なお、カバー部材42間の隙間が狭ければ、目張部材422を省略することができる場合もある。例えば、それぞれのカバー部材の両端部を櫛歯状にし、隣合うカバー部材の櫛歯が互い違いになるように連結すると、隣合うカバー部材間の隙間を狭くすることができるため、目張部材を省略することができる。すなわち、隣合うカバー部材間は気体の流入が規制されるよう連結されていればよいのであって、これを達成する手段としては、上記のように目張部材を用いる方法や、カバー部材の両端部を櫛歯状にした上で、隣合うカバー部材の櫛歯が互い違いになるようにする方法等がある。
【0040】
また、図1に示す塗膜制御装置4では、各カバー部材におけるフィルム搬送方向の長さは異なるが、各カバー部材の長さを略同じにしてもよい。こうすることで、カバー部材の配列をより容易に組み替えることができ、塗布液の種類の変更、搬送経路の変更などにより柔軟に対応できる。なお、略同じとは、完全同一も含む概念である。各カバー部材の長さを略整数倍にしてもよい。こうすることで、カバー部材の配列を組み替えることができ、塗布液の種類の変更、搬送経路の変更などによりいっそう柔軟に対応できる。
【0041】
カバー部材の形状は特に限定されない。形状としては例えば、平板状、曲面状、凹凸形状等が挙げられる。カバー部材の形状を変更することにより、溶剤の揮発量を調整することも可能である。揮発溶剤をより留めるための無効カバー部材としては、表面積を増した形状とすればよく、例えば、複数の金属メッシュを多層に重ねることで無孔にした多層構造板や、表面を波状やディンプル状にした凹凸形状等で対応することができる。
【0042】
図2(a)は、図1のA−A断面であり、有孔カバー部材420の断面図になる。図2(b)は、図1のB−B断面であり、無孔カバー部材421の断面図になる。なお、図2では、樹脂フィルムFが太い実線で示されている。
【0043】
カバー部材42は、樹脂フィルムFの塗布面に対向して配置された平板状のベース板42aと、そのベース板42aから樹脂フィルムF側に突出した2つの側板42bとから構成されている。このベース板42a及び側板42bは、ベース板42a及び側板42bの外部から樹脂フィルムFが視認可能なように、透明なアクリル板で構成されている。ベース板42aは、樹脂フィルムFの幅よりも広い幅に形成されている。また、ベース板42aは、樹脂フィルムFの塗布面に対して約10mm離間した位置に、搬送経路に沿って配置されている。ベース板42aと樹脂フィルムFの塗布面との間隔は、樹脂フィルムFに塗布された塗布液Wがベース板42aと接触することが確実に防止される範囲で狭い程好ましく、例えば5mm以上15mm以下にすることが望ましい。
【0044】
図2(a)に示すように、有孔カバー部材420のベース板42aには、複数の孔42cが設けられている。一方、図2(b)に示すように、無孔カバー部材421のベース板42aには、孔が設けられていない。
【0045】
なお、ベース板42aと樹脂フィルムFの塗布面との間隔を狭くすることや、無孔カバー部材の形状を変更することで、塗膜制御装置4内における塗布液Wからの有機溶剤の揮発量を制限することができる。この揮発量の制限については後に詳述する。
【0046】
側板42bは、ベース板42aの幅方向両端部近傍にそれぞれ形成されている。この側板42bは、樹脂フィルムFの幅方向両端の厚み部分を覆い、かつバックアップロール41を覆うように、樹脂フィルムFの裏面側までベース板42aから突出している。バックアップロール41の幅方向端と側板42bとの、の幅方向の間隔は、10mm程度である。この間隔は、樹脂フィルムFの幅方向端及びバックアップロール41の幅方向端に側板42bが接触しない範囲で狭い程好ましく、例えば3mm以上15mm以下にすることが望ましい。
【0047】
図1に示すように、排気手段43は、有孔カバー部材420の下流側部分に取り付けられている。この排気手段43は、樹脂フィルムFとカバー部材42との間の気体(以下、カバー内雰囲気と称することがある)を、樹脂フィルムFの塗布面に対して略垂直方向に吸引し、カバー部材42の外部に排気するものである。略垂直方向に吸引することで、カバー内雰囲気を均等に吸引してカバー部材42の外部に排気することができる。排気手段43がカバー内雰囲気を吸引する方向は、樹脂フィルムFの塗布面に交わる方向であればよい。樹脂フィルムFの塗布面に交わる方向に吸引することで、カバー内雰囲気を略均等に吸引することができる。ただし、より均等に吸引するためには、樹脂フィルムFの塗布面に対して垂直方向に吸引することが好ましい。均等に吸引することで、樹脂フィルムFに塗布された塗布液W中の有機溶剤濃度を一様に低下させ、塗膜を均等に塗膜制御することができる。
【0048】
図3は、排気手段を示す分解斜視図である。なお、図3では2つの排気手段43のうちの一方が示されているが、排気手段43のうちの他方も同一の構成である。また、図3には、排気ファン436による排気方向が矢印で示されている。
【0049】
図3に示すように、排気手段43は、吸引部430と、4本の排気チューブ434と、バッファ容器435と、2つの排気ファン436とを備えている。吸引部430は、パンチング板431と、網状のメッシュ部材432と、排気カバー433とを備えている。この吸引部430は、後述する均一化位置よりも下流側に配置されている。有孔カバー部材420は、ベース板420aに板厚方向に貫通した長方形の矩形孔420cが設けられている。パンチング板431とメッシュ部材432それぞれは、その矩形孔420cを画定する縁部とほぼ同一の長方形状に形成されており、その矩形孔420cに嵌め込まれている。排気カバー433は、矩形孔420cよりもやや大きめの開口を一面に有した箱状のものである。また、排気カバー433は、その開口を画定する縁部分がベース板420aに接着されることでベース板420aに固定され、パンチング板431とメッシュ部材432が嵌め込まれた矩形孔420c全体を囲っている。なお、図3においてはパンチング板431を記載しているが、ベース板420aに複数の孔を当該ベース板の板厚方向に設けることにより、ベース板420aにパンチング板の機能を持たせてもよい。ベース板420aに複数の孔を設ける場合、ベース板420a上にパンチング板431を積層しなくてもよい。
【0050】
4本の排気チューブ434それぞれは、排気カバー433とバッファ容器435を繋げている。なお、排気チューブ434は何本であっても構わない。バッファ容器435には、排気ファン436が取り付けられている。この排気ファン436は、バッファ容器435内の気体をバッファ容器435の外部に排気するものである。排気ファン436が動作することで、バッファ容器435、排気チューブ434を介して、排気カバー433内の気圧が減圧され、カバー内雰囲気が排気カバー433内に吸引されてカバー部材42の外部に排気される。排気ファン436が動作することで排気ファン436周囲には乱流が生じることがある。本実施形態では、バッファ容器435、排気チューブ434を介して排気カバー433内の気圧を減圧しているので、その乱流がカバー内雰囲気の気体の流れに影響を及ぼしてしまうことを防止できる。また、搬送経路からバッファ容器435を離間して配置することができるので、排気ファン436によって排気されたカバー内雰囲気が、カバー部材42内部に流入してしまうことが抑制される。また、排気チューブ434毎に排気量を変更することも可能である。例えば、図3に示す排気チューブ434において、図左から排気チューブ434a、434b、434c、434dとすると、排気チューブ434aおよび434dの排気量を0〜5m/分、排気チューブ434bおよび434cの排気量を10〜20m/分とすることができる。これによって、樹脂フィルムFの幅方向において、部分的に乾燥状態をコントロールすることができるとともに、より詳細な条件を調整することで硬化工程後に生じるカールの問題を改善することも可能である。
【0051】
パンチング板431は、複数の貫通孔431aが板厚方向に開けられたアクリル製の板である。パンチング板431を設けることで、カバー内雰囲気を吸引する際の整流効果が高まり、矩形孔420c全体でカバー内雰囲気をほぼ均等に吸引することができる。メッシュ部材432は、300メッシュのステンレス製のものである。メッシュ部材432を設けることで、カバー内雰囲気を吸引する際の整流効果がより高まり、矩形孔420c全体でカバー内雰囲気をより均等に吸引することができる。メッシュ部材432のメッシュ数は、100メッシュ以上1000メッシュ以下とすることが好ましく、200メッシュ以上1000メッシュ以下とすることがより好ましく、300メッシュ以上1000メッシュ以下とすることが更に好ましい。このメッシュ数は、多い程整流効果が高まり、矩形孔420c全体でカバー内雰囲気をより均等に吸引することができる。ただし、メッシュ数が1000を超えると、メッシュ間の隙間が狭くなり過ぎて吸引効率が低下するため、1000メッシュ以下とすることが好ましい。なお、メッシュ数は、1インチ(25.4mm)あたりの目の数である。本実施形態のパンチング板431およびメッシュ部材432は、本発明における整流部材の一例に相当する。これらパンチング板431およびメッシュ部材432のうち、どちらか一方を省略してもよい。なお、どちらか一方を省略する場合、孔の数が少なく比較的整流効果が低いパンチング板431を省略することが好ましい。
【0052】
樹脂フィルムFに塗布された塗布液Wは、樹脂フィルムF上に塗膜を形成し、その塗布液Wの表面張力によって、時間の経過とともに樹脂フィルムFの幅方向および流れ方向において塗膜が均一の厚みになろうとするレベリングが生じる。また、塗布後の塗膜に含まれる塗布液Wは、その成分中の有機溶剤が徐徐に揮発していく。塗布された塗布液W中の有機溶剤が揮発して有機溶剤濃度が低下すると、塗膜の粘度が高まり塗膜の流動性が低下し、レベリングし難くなる。一方、塗膜中の有機溶剤成分濃度が高ければレベリングは促進され、樹脂フィルムFの幅方向において均一の厚みになりやすい。
【0053】
本実施形態では、樹脂フィルムFの塗布面および樹脂フィルムFの幅方向両端の厚み部分を、塗布液Wが塗布されて塗膜を形成する塗布位置の近傍から、塗膜が樹脂フィルムFの幅方向および流れ方向において均一の厚みになる均一化位置よりも下流側までカバー部材42が覆っている。塗膜の厚さ均一化位置は、塗布液Wに含まれる成分や樹脂フィルムFの搬送速度などの諸条件によって異なるが、使用される塗布液Wおよび望ましい搬送速度に基づいて実験を行うことで求めることができる。上述したように、吸引部430は、その均一化位置よりも下流側に配置されている。塗膜制御装置4のうち、この吸引部430が配置された位置よりも上流側が図1に示す揮発抑制ゾーンZ1になり、塗膜制御装置4のうち、吸引部430が配置された位置から下流側が図1に示す乾燥ゾーンZ2になる。
【0054】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0055】
図4は、図1に示す積層フィルム製造装置による積層フィルム製造工程を示すフローチャートである。図4のフローチャートには、積層フィルム製造装置1の運転中における樹脂フィルムFの幅方向の特定ライン上に着目した工程が示されている。
【0056】
積層フィルム製造装置1を起動すると、所定の初期動作後に、樹脂フィルムFの特定ラインが、送出ロール2から送り出されて送出工程が行われる(ステップS1)。樹脂フィルムFの特定ラインがグラビアロール31に巻き掛けられる位置まで搬送されると、塗布装置3によって樹脂フィルムFの特定ラインに塗布液Wが塗布されて塗布工程が実施される(ステップS2)。
【0057】
塗布液Wが塗布された樹脂フィルムFの特定ラインは、塗布された直後に塗膜制御装置4の揮発抑制ゾーンZ1内に搬送される。揮発抑制ゾーンZ1では、カバー部材42により、カバー部材42外部の気体がカバー部材42内部に流入することが規制され、塗膜から揮発した有機溶剤がカバー部材42内部に留まる。その結果、カバー内雰囲気の有機溶剤濃度が高まり、塗膜から有機溶剤が揮発し難くなる。また、カバー内雰囲気の有機溶剤濃度が飽和した後は、塗膜中の有機溶剤は揮発しなくなる。すなわち、カバー部材42と樹脂フィルムFの塗布面との間隔によって定まるカバー内雰囲気の容積を適宜設定することで、塗膜制御装置4における塗膜からの有機溶剤の揮発量を制限することができる。
【0058】
本実施形態では、塗膜が樹脂フィルムFの幅方向において均一の厚みになる位置まで、樹脂フィルムFの塗布面および樹脂フィルムFの幅方向両端の厚み部分をカバー部材42によって覆うことで、塗膜中の有機溶剤成分濃度が低下することを抑制している。こうすることで、塗膜の粘度が高まることを防止し、レベリングを促進している。樹脂フィルムFの特定ラインが揮発抑制ゾーンZ1を通過することで、樹脂フィルムFの特定ラインにおいて塗膜が均一の厚みにする均一化工程が実施される(ステップS3)。
【0059】
均一化工程が実施された樹脂フィルムFの特定ラインは、引き続いて乾燥ゾーンZ2内に搬送される。乾燥ゾーンZ2の上流側部分では、有機溶剤が飽和した或いは有機溶剤濃度の高いカバー内雰囲気が吸引部430から排出されることで、カバー部材42外部から有機溶剤濃度の低い或いは有機溶剤を含まない気体が流入し換気が行われる。これにより、塗膜の乾燥が促され、乾燥ゾーンZ2を通過する樹脂フィルムFの特定ラインにおいて自然乾燥工程が実施される(ステップS4)。この自然乾燥工程が、本発明における乾燥工程の一例に相当する。この自然乾燥工程では、カバー内雰囲気を樹脂フィルムFの一方の面に交わる方向に吸引しているので、カバー内雰囲気を略均等に吸引して塗膜を均等に塗膜制御することができる。また、一旦換気が行われると、有機溶剤を殆ど含まない気体がカバー内雰囲気になる。このため、乾燥ゾーンZ2の下流側部分、すなわち吸引部430が配置されていない部分でも、有機溶剤濃度が飽和するまで塗膜中の有機溶剤が揮発し、塗布液Wの乾燥が促される。
【0060】
その後、樹脂フィルムFの特定ラインは、乾燥装置6に搬送され、本乾燥工程が行われる(ステップS5)。この本乾燥工程では、樹脂フィルムFの特定ラインに塗布されている塗布液Wが乾燥装置6によって加熱される。加熱されることで、樹脂フィルムFの特定ライン上の塗膜中の有機溶剤は完全に揮発し、樹脂フィルムFの特定ライン上にエネルギー硬化型樹脂塗膜が形成される。
【0061】
次いで、樹脂フィルムFの特定ラインは、光照射装置7まで搬送され、光照射工程が行われる(ステップS6)。この光照射工程は、樹脂フィルムF状に形成された光硬化型樹脂塗膜に紫外線ランプ72から紫外線を照射することで、その光硬化型樹脂塗膜を硬化させる工程である。なお、光硬化型樹脂ではなく、熱硬化型樹脂を使用する場合には、光照射装置の代わりに加熱装置を設ければよい。
【0062】
最後に、エネルギー硬化型樹脂塗膜が硬化することで形成されたコート層が積層された樹脂フィルムFの特定ラインが巻取ロール8まで搬送され、巻取ロール8に巻き取られる巻取工程が行われる(ステップS7)。
【0063】
続いて、本実施形態で好ましく使用される材料について説明する。
【0064】
樹脂フィルムFとしては、透光性と可撓性を有し連続生産に適した、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂フィルムを好適に使用することができる。なお、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶表示装置(LCD)に用いる積層フィルムを製造する場合は、PETフィルム、TACフィルムおよび含ノルボルネン樹脂フィルムから選ばれる1種を使用することがより好ましい。
【0065】
これら樹脂フィルムの透明性は高いものほど良好であるが、光学用途では、全光線透過率(JIS K7105)としては80%以上、より好ましくは90%以上が良い。
【0066】
樹脂フィルムの表面に、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理などのトリートメント処理、界面活性剤、シランカップリング剤などのプライマーコーティング、Si蒸着などの薄膜ドライコーティングなどを施すことで、樹脂フィルムとコート層との密着性を向上させ、該コート層の物理的強度、耐薬品性を向上させることができる。また、樹脂フィルムのコート層側に他の層を設けた樹脂フィルムを使用してもよい。その場合も、上記同様の方法で、各層界面の密着性を向上させ、当該ハードコート層の物理的強度、耐薬品性を向上させることができる。
【0067】
塗布液Wに含有される樹脂成分としては、特に限定されないが、紫外線照射による硬化処理にて、簡易な加工操作にて効率よく硬化することができる電離放射線硬化型樹脂が好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性官能基や、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーを単独で、または適宜混合した組成物が用いられる。モノマーの例としては、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を挙げることができる。オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、多官能ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキットアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート等のアクリレート化合物、不飽和ポリエステル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を挙げることができる。ポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができる。これらは単独、もしくは複数混合して使用することができる。
【0068】
塗布液Wに増粘剤を添加していても構わないが、樹脂フィルムF上に薄く塗布することが難しくなることと、レベリングに時間が増大することから、増粘剤を含有していない塗布液が好ましい。また、塗布液Wに高沸点溶媒を添加しても構わないが、乾燥時間が増大することから、高沸点溶媒も含有していない塗布液が好ましい。
【0069】
電離放射線硬化型樹脂は、紫外線照射による硬化を行う場合は、光重合開始剤の添加が必要である。なお、用いられる放射線としては、紫外線、可視光線、赤外線のいずれであってもよい。また、これらの放射線は、偏光であっても無偏光であってもよい。
【0070】
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独または適宜組み合わせて使用することができる。
【0071】
また、エネルギー硬化型樹脂にレベリング剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させることができる。レベリング剤は、塗膜表面の張力均一化を図り塗膜形成前に欠陥を直す働きがある。
【0072】
上記樹脂組成物は透光性の微粒子を含有してもよい。当該樹脂組成物に溶剤を加えたエネルギー硬化型樹脂を、樹脂フィルム上に塗布した後、当該エネルギー硬化型樹脂を硬化させてハードコート層を形成させることができる。樹脂組成物に透光性の微粒子を添加することにより、防眩性を有するハードコート層(防眩層)の表面凹凸の形状や数を調整しやすくなる。防眩層を形成させる場合、微粒子が存在する部分が盛り上がることになるが、微粒子が存在しない部分においては厚みが均一になるため、本発明を適用することが可能である。
【0073】
透光性の微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等よりなる有機系の透光性の樹脂微粒子、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等の無機系の透光性の微粒子を使用することができる。透光性の微粒子の屈折率は、1.40〜1.75が好ましく、屈折率が1.40未満または1.75より大きい場合は、樹脂フィルムあるいは樹脂マトリックスとの屈折率差が大きくなり過ぎ、全光線透過率が低下する。また、透光性の微粒子と樹脂との屈折率の差は、0.2以下が好ましい。透光性の微粒子の平均粒径は、0.3〜10μmの範囲のものが好ましく、1〜7μmがより好ましく、2〜6μmがさらに好ましい。
【0074】
粒径が0.3μmより小さい場合は防眩性が低下するため、また10μmより大きい場合は、ギラツキを発生すると共に、表面凹凸の程度が大きくなり過ぎて表面が白っぽくなってしまうため好ましくない。また、上記樹脂中に含まれる透光性の微粒子の割合は特に限定されないが、樹脂組成物100質量部に対し、0.1〜20質量部とするのが防眩機能、ギラツキ等の特性を満足する上で好ましく、ハードコート層表面の微細な凹凸形状とヘイズ値をコントロールし易い。ここで、「屈折率」は、JIS K−7142に従った測定値を指す。また、「平均粒径」は、電子顕微鏡で実測した100個の粒子の直径の平均値を指す。
【0075】
エネルギー硬化型樹脂の屈折率(n)は、おおよそ1.40〜1.60の範囲にある。屈折率を下げたい場合または屈折率を上げたい場合には、粒径が100nm以下の超微粒子を添加することで、所望の屈折率を得ることができる。高屈折率の超微粒子としては例えば、TiO(屈折率:n=2.3〜2.7)、CeO(n=1.95)、ZnO(n=1.9)、Sb(n=1.71)、SnO(n=1.95)、ITO(n=1.95)、Y(n=1.87)、La(n=1.95)、ZrO(n=2.05)、Al(n=1.63)、HfO(n=2.00)、Ta等の金属酸化物微粒子を使用することができる。低屈折率の超微粒子としては、超微粒子の内部が空状となっている中空型の超微粒子を使用することが好ましい。
【0076】
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、水等を使用することができる。これらは一種のみで有機溶剤としてもよいし、複数を混合して有機溶剤としてもよい。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の塗膜制御装置4によれば、塗膜が樹脂フィルムFの幅方向において均一の厚みになるまでは、カバー部材42によって、樹脂フィルムFに塗布された塗膜に風が当たることが防止される。また、塗膜中の有機溶剤の揮発が抑制されるのでレベリングが促進され、その塗膜が樹脂フィルムFの幅方向および流れ方向において均一の厚みになりやすい。さらに、塗布された塗布液Wが樹脂フィルムFの幅方向および流れ方向において均一の厚みになった後、その塗布液W近傍の気体を塗布面に交わる方向に吸引するので、塗布液を波立たせることなく、その塗膜を均等に塗膜制御することができ、シワのない、かつ均一な厚みのコート層を有する積層フィルムを製造することができる。加えて、本実施形態の塗膜制御装置は、バックアップロール41と、カバー部材42と、排気手段43とから構成される簡単なものであるため安価に装置を構築できる。
【0078】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことができる。例えば、上述の実施形態では、2つの排気手段43を備えた塗膜制御装置4を例にあげて説明したが、排気手段は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、上述の実施形態では、カバー部材42は、1以上の有孔カバー部材と、1以上の無孔カバー部材421と、複数の目張部材422とから構成されていたが、目張部材を省略して、1以上の有孔カバー部材と1以上の無孔カバー部材を連結することで一体化した1つのカバー部材として、樹脂フィルムFのうち塗膜制御装置内にある部分全てを覆ってもよい。
【0079】
なお、以上説明した変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の変形例に適用してもよい。
以下、これまで説明したことを含めて付記する。
(付記)他の塗膜制御装置は、樹脂材料と溶剤を含有する塗布液を、長手方向に搬送されている長尺状のフィルムの一方の面に塗布して塗膜を形成させた後から、少なくとも該塗膜から揮発する溶剤が乾燥装置内に充満するまでの間に、該塗膜および該フィルムの幅方向両端の厚み部分を覆う2以上のカバー部材を備えた塗膜制御装置であって、
前記2以上のカバー部材は、前記フィルムの搬送方向に連結されたものであり、孔を設けた1以上の有孔カバー部材と、孔を設けていない1以上の無孔カバー部材と、を備え、
上記塗膜から揮発する溶剤を該有孔カバー部材の孔から外部に排気する排気手段を備え、
上記カバー部材の設置箇所を組み替えることができることを特徴とする。
このフィルム処理装置によれば、上記カバー部材の設置箇所を組み替えることができるため、上記有孔カバー部材と、上記無孔カバー部材の配置や比率を適宜調整することができ、シワのないコート層を有するフィルムを得ることができる。
【符号の説明】
【0080】
4 塗膜制御装置
42 カバー部材
43 排気手段
430 吸引部
431 パンチング板
432 メッシュ部材
Z1 揮発抑制ゾーン
Z2 乾燥ゾーン
F 樹脂フィルム
W 塗布液
図1
図2
図3
図4