【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
本発明方法による実施例1〜6の酸素欠損無機酸化物の製造にあたっては、エレクトロカーテン型電子線照射装置CB250/15/180L(岩崎電気株式会社製)を用い、電子線(EB)照射によって実施した。
【0027】
(実施例1)
市販の比表面積143m
2/gの酸化セリウム微粒子(信越化学工業株式会社製、CeO
2(BB))50gをポリ袋に入れ、均一な厚みとなる様に粉体の厚みを調整した後、加速電圧200kV、照射量500kGyの条件で電子線を照射し、粉末状の酸素欠損酸化セリウムを得た。得られた粉末状の酸素欠損酸化セリウムを20重量部と、還元剤かつ溶媒であるイソプロピルアルコール(IPA)80重量部とを混合し、分散処理を行い、平均粒子径45nmの分散液とした。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損酸化セリウムが30質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0028】
(実施例2)
実施例1で用いた市販の比表面積143m
2/gの酸化セリウム微粒子(信越化学工業株式会社製、CeO
2(BB))を、IPAに対して10質量%となるように加え、pHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより粉砕分散した。得られた酸化セリウム分散液は平均粒子径46nmであった。得られた酸化セリウム分散液50gをポリ袋にいれ、加速電圧200kV、照射量100kGyの条件で電子線を照射し、酸素欠損酸化セリウム分散液を得た。得られた分散液は紫がかった灰色のスラリーであった。この分散体をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損セリウムが30質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0029】
(実施例3)
市販の三酸化タングステン微粒子(日本無機化学工業株式会社製)を50gポリ袋に入れ、均一な厚みとなる様に粉体の厚みを調整した後、加速電圧200kV、照射量500kGyの条件で電子線を照射し、粉末状の酸素欠損タングステンを得た。得られた粉末状の酸素欠損三酸化タングステン20重量部と、IPA80重量部とを混合し、分散処理を行い、平均粒子径29nmの分散液とした。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損三酸化タングステンが10質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0030】
(実施例4)
実施例3で用いた市販の三酸化タングステン微粒子(日本無機化学工業株式会社製)を、IPAに対して10質量%となるように加え、pHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより粉砕分散した。得られた三酸化タングステン分散液は平均粒子径30nmであった。得られた三酸化タングステン分散液50gをポリ袋にいれ、加速電圧200kV、照射量100kGyの条件で電子線を照射し、酸素欠損三酸化タングステン分散液を得た。得られた分散液は紺色の分散液であった。得られた分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損三酸化タングステンが10質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0031】
(実施例5)
市販の二酸化チタン微粒子MT−100HD(テイカ株式会社製)50gをポリ袋に入れ、均一な厚みとなる様に粉体の厚みを調整した後、加速電圧200kV、照射量500kGyの条件で電子線を照射し、粉末状の酸素欠損二酸化チタンを得た。得られた粉末状の酸素欠損二酸化チタン20重量部と、IPA80重量部とを混合し、ビーズミルを用いて分散処理を行い、平均粒子径20nmの分散液とした。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損二酸化チタンが50質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0032】
(実施例6)
実施例5で用いた市販の二酸化チタン微粒子MT−100HD(テイカ株式会社製)を、IPAに対して10質量%となるように加え、pHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより粉砕分散した。得られた二酸化チタン分散液を50gポリ袋にいれ、加速電圧200kV、照射量300kGyの条件で電子線を照射し、酸素欠損二酸化チタン分散液を得た。得られた酸素欠損二酸化チタン分散液の平均粒子径は18nmであった。得られた分散液は灰色がかった青色を呈していた。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損二酸化チタンが50質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、実施例2と同様に電子線で硬化させた。
【0033】
(比較例1)
実施例1で用いた市販の比表面積143m
2/gの酸化セリウム微粒子(信越化学工業株式会社製、CeO
2(BB))を、1000℃で2時間還元処理(水素100%ガスで400SCCMフロー)を実施した。得られた粉末状酸素欠損酸化セリウム微粒子20重量部と、IPA80重量部とを混合し、分散処理を行った。得られた分散液は平均粒子径452nmであった。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損酸化セリウムが30質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0034】
(比較例2)
実施例3で用いた市販の三酸化タングステン微粒子(日本無機化学工業株式会社製)を還元雰囲気(アルゴン/水素=95/5体積比)中において550℃で1時間加熱した。その後、一旦室温に戻した後、800℃アルゴン雰囲気下で1時間加熱する事で酸素欠損三酸化タングステン微粒子を得た。得られた粉末状酸素欠損三酸化タングステン微粒子20重量部と、IPA80重量部とを混合し、分散処理を行った。得られた分散液は平均粒子径303nmであった。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損三酸化タングステンが10質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0035】
(比較例3)
実施例5で用いた市販の二酸化チタン微粒子MT−100HD(テイカ株式会社製)をIPA中に10wt%になるようにビーズミルで分散し、平均粒子径60nmの分散液を得た。その後、Nd:YAGパルスレーザーを10Hz、170〜180mJ/pulseの条件で1時間照射した。得られた分散体をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損二酸化チタンが50質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0036】
(酸素吸収性の評価)
実施例1、2と比較例1で作成した酸素欠損無機酸化物(酸化セリウム)を塗布したPET樹脂フィルムを用いた。各フィルムの飽和酸素吸収量の測定は、内寸がタテ125mm、ヨコ65mmとなるようにサンプル四方をヒートシールし、内容量35mL中の酸素濃度変化から算出した。
【0037】
実施例1、2と比較例1の酸素吸収性の評価結果を表1に示す。高温で加熱して酸素欠損を生じさせた比較例1は凝集により粒子径が大きくなることが確認された。凝集して粒子径が大きくなると、酸素吸収量が減少する。また、酸素欠損無機酸化物が還元剤であるIPAに含まれた状態(酸素欠損無機酸化物がIPA中に分散した状態)でEB照射した実施例2の方が、EB照射後に酸素欠損無機酸化物をIPAに含ませた(EB照射後に酸素欠損無機酸化物をIPAに分散した)実施例1よりも飽和酸素吸収量が多く、酸素欠損の程度が高いことが確認され、酸素吸収能のより高い酸素吸収材を提供できることが分かる。
【0038】
【表1】
【0039】
(透過特性の評価)
実施例3、4と比較例2で作成した酸素欠損無機酸化物(三酸化タングステン)を塗布したPET樹脂フィルムの透過特性の評価は、紫外可視近赤外分光光度計(V−670、日本分光株式会社製)を用いて、波長200〜2000nmの透過率を測定した。可視光の透過率は波長550nm、近赤外線の透過率は波長1000nmの透過率の値とした。
【0040】
実施例3、4と比較例2の透過特性の評価結果を表2に示す。高温で加熱して酸素欠損を生じさせた比較例2は凝集により粒子径が大きくなることが確認された。また、酸素欠損無機酸化物が還元剤であるIPAに含まれた状態でEB照射した実施例4の方が、EB照射後にIPAに酸素欠損無機酸化物を含ませた実施例3よりも近赤外光の透過率が低く、酸素欠損の程度が高いことが確認され、より近赤外線遮蔽効果の高い近赤外線遮蔽材を提供できることが分かる。
【0041】
【表2】
【0042】
(表面抵抗値の評価)
実施例5、6と比較例3の酸素欠損無機酸化物を混合し塗布製膜したフィルムの表面抵抗値の測定は、低抵抗率計(ロレスタ−GP、三菱化学アナリテック社製)と、高抵抗率計(ハイレスタ−UP、三菱化学アナリテック社製)を用いて抵抗率を測定した。
【0043】
実施例5、6と比較例3の透過特性の評価結果を表3に示す。YAGパルスレーザーを照射した比較例2では、EB照射した実施例5、6と比較して表面抵抗値が大きく、酸素欠損の程度が低いことが確認された。
【0044】
【表3】
【0045】
YAGパルスレーザーで酸素欠損を生じさせた比較例3は凝集により粒子径が大きくなることが確認された。また、酸素欠損無機酸化物が還元剤のIPAに含まれた状態でEB照射した実施例6の方が、EB照射後にIPAに酸素欠損無機酸化物を含ませた実施例5よりも抵抗値が低く、酸素欠損の程度が高いことが確認され、導電性のより高い導電材を提供できることが分かる。
【0046】
以上のように、本発明においては酸化物を常温で放射線照射により還元状態とすることができる為に、効率よく酸素欠損無機酸化物を得る事ができる。そのため、高温での長時間の還元処理を必要としない為、粉末材料の凝集が起こりづらく、透明性に優れたフィルム状への製膜といった二次加工性に優れる。また、酸化物を溶媒に含ませた状態でも、放射線照射により、効率よく酸素欠損無機酸化物を得ることができる。