特許第6208965号(P6208965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NBCメッシュテックの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208965
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】酸素欠損無機酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/14 20060101AFI20170925BHJP
   C01G 41/02 20060101ALI20170925BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20170925BHJP
   C01F 17/00 20060101ALI20170925BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20170925BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20170925BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C01B13/14 A
   C01G41/02
   C01G23/047
   C01F17/00 G
   B01D53/14 311
   B01J20/06 A
   B01J20/30
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-67113(P2013-67113)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-189451(P2014-189451A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】391018341
【氏名又は名称】株式会社NBCメッシュテック
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】本島 信一
(72)【発明者】
【氏名】中山 鶴雄
(72)【発明者】
【氏名】池上 誠
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 真
【審査官】 大城 公孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−030547(JP,A)
【文献】 特開平11−269622(JP,A)
【文献】 特開平01−164780(JP,A)
【文献】 特開2008−184357(JP,A)
【文献】 小沢国夫,酸化物高温超伝導体の物性と照射効果,日本原子力学会誌,1990年 2月,Vol.32, No.2,p.129-136,DOI:10.3327/jaesj.32.129
【文献】 ASHBAUGH III, C. E.,Gemstone Irradiation and Radioactivity,Gems & Gemology,1988年12月 1日,Vol.24, No.4,p.196-213,ISSN:0016-626X,URL,https://www.gia.edu/gems-gemology/winter-1988-irradiation-radioactivity-ashbaugh
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00
C23C 14/58
C01B 13/14
C01G 23/04
C01G 41/00−41/02
B01J 21/00−38/74
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプロピルアルコールに分散した無機酸化物に、α線と、β線と、γ線と、電子線と、のうちいずれかの放射線を照射
前記無機酸化物から酸素を強制的に引き抜くことを含み、
前記無機酸化物が、セリウム、チタン、タングステンのいずれかの酸化物の粒子であることを特徴とする酸素欠損無機酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記無機酸化物の平均粒子径が、5nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸素欠損無機酸化物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素欠損状態の無機酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素欠損状態の無機酸化物、特に金属酸化物は、食品分野、工業製品分野、医療・医薬品分野等の各分野において利用されている。酸素欠損状態の酸化物を、酸素吸収材として用いれば酸素吸収能をより高めることができ、紫外線吸収材として用いれば紫外光の吸収能をより高めたり、キャパシタの電極に利用することでエネルギー密度を高めたり、導電性が高まる効果があり、酸素欠損状態の酸化物は様々な用途に利用できる。
【0003】
この酸素欠損状態の酸化物を製造する方法として、雰囲気制御(不活性ガスを流入)をしながら400〜800℃の温度で焼成する方法が提案されている(特許文献1)。あるいは、還元雰囲気下で、1000℃以上で直接還元焼成する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−41245号公報
【特許文献2】特許第4322311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の酸素欠損酸化物の製造方法では、雰囲気を制御しながら、高温での焼成が必要となり、製造に時間がかかる。また、高温での焼成が必要のため、無機酸化物を含む部材に処理をする場合、融点の高い材料に限られてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、常温で酸素欠損状態の無機酸化物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち第1の発明は、無機酸化物にα線やβ線やγ線や電子線を照射する放射線照射法により、無機酸化物から酸素を強制的に引き抜く、酸素欠損無機酸化物の製造方法。
【0008】
また、第2の発明は、前記放射線照射が還元剤の存在下で行われることを特徴とする第1の発明に記載の酸素欠損無機酸化物の製造方法。
【0009】
さらに第3の発明は、前記無機酸化物が、セリウム、チタン、タングステンの酸化物、あるいはこれらを含む他の金属との複合酸化物であることを特徴とする第1または第2の発明のいずれか一つに記載の酸素欠損無機酸化物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子線を照射することにより、常温で酸素欠損の無機酸化物を製造することが可能となる。また、常温での処理が可能のため、無機酸化物粒子が凝集しないので、小さな粒径にするための再粉砕を必要としない。さらに、様々な形態の無機酸化物を含む部材に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態である酸素欠損無機酸化物の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態は、無機酸化物に電子線などの放射線を常温で照射し、酸素欠損を生じさせて酸素欠損状態の無機酸化物を製造する方法である。
【0013】
本実施形態において酸素欠損を生じさせる無機酸化物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、非金属酸化物、金属酸化物、金属複合酸化物、それらの混合物とすることができる。また、無機酸化物の結晶性は、非晶性あるいは結晶性のどちらでも良い。
【0014】
非金属酸化物としては、酸化珪素が挙げられる。また、金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化バリウム、過酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、過酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化コバルト、酸化ニオブ、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化プラセオジム、などが挙げられる。また、金属複合酸化物としては、セシウム酸化タングステン、酸化チタンバリウム、酸化コバルトアルミニウム、酸化ジルコニウム鉛、酸化ニオブ鉛、TiO−WO、Al−SiO、WO−ZrO、WO−SnOCeO−ZrO、B−SiO、P−SiO、TiO−SiO、ZrO−SiO、Al−TiO、Al−ZrO、Al−CaO、Al−B、Al−P、Al−CeO、Al−Fe、TiO−ZrO、TiO−ZrO−SiO、TiO−ZrO−Al、TiO−Al−SiO、TiO−CeO−SiOが挙げられる。
【0015】
なお、無機酸化物の粒子径については、本実施形態の方法によって作成すれば特に限定されないが、平均の粒子径が1nmから1000nmであることが好ましく、さらに平均の粒子径が5nmから100nmであれば、表面積が増大し、酸素欠損状態を作りやすいので、より好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径とは、体積平均粒子径をいう。
【0016】
本発明の実施形態において、酸素欠損状態の無機酸化物を製造する方法としては、無機酸化物へ、α線や、β線や、γ線や、電子線を照射する方法(放射線照射法)や、紫外線を照射する方法(紫外線(UV)法)、または、コロナ放電を照射する方法(コロナ放電法)や、グロー放電により発生するプラズマを照射する方法(プラズマ法)、あるいは、これらを組み合わせた方法などを挙げることができる。本実施形態では、特に、α線や、β線や、γ線や、電子線を照射する放射線照射法が適しており、より好ましくは電子線を照射する方法が好ましい。放射線照射法の特徴としては、あらゆる形態の基材に含まれた酸化物に活用でき、基材内部にある酸化物まで酸素欠損状態を作ることができ、大量生産できる等が挙げられる。
【0017】
本実施形態の放射線照射法において、電離放射線の照射線量は、酸素欠損を導入させるのに十分な量で、経済的な照射線量であれば特に制限はないが、50kGy〜1000kGyの範囲にあることが好ましく、100kGy〜500kGyの範囲にあることがより好ましい。
【0018】
本発明の実施形態において、酸素欠損状態の無機酸化物を製造する方法としては、無機酸化物単体に放射線を照射してもよいが、繊維構造体、フィルムやシート状、パネル状、成形体などの基材に含まれた無機酸化物に放射線を照射してもよい。これにより、基材に含まれた無機酸化物が再度酸素欠損状態にすることが可能である。
【0019】
本実施形態の基材としては、合成樹脂や天然樹脂の他、無機材料が用いられる。樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、EVA樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメタクリロ酸樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ベクトラン(登録商標)、ケブラー(登録商標)、PTFE(poly tetra fluoro ethylene)などの熱可塑性樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、修飾でんぷん樹脂、ポリカプロラクト樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネートテレフタレート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂などの生分解性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ケイ素樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーおよびレーヨン、キュプラ、テンセル、ポリノジック、アセテート、トリアセテート、綿、麻、羊毛、絹、竹、漆などが挙げられる。
【0020】
基材に用いられる無機材料としては、具体的には金属材料や、セラミックスや、ガラスなどが好ましく、さらには金属、金属酸化物、ガラスがより好ましい。
【0021】
本発明の実施形態において、放射線を照射する際は、例えば水素ガスやアセチレンガスや一酸化炭素ガス等の還元性ガス雰囲気下で行われるのが好ましく、さらに還元性ガスの濃度が、高濃度である強還元雰囲気中で行われることが好ましい。還元性ガス濃度は好ましくは爆発下限以上〜100体積%、更に好ましくは20体積%〜100体積%である。強還元雰囲気は一般に常圧であるが、これに代えて加圧条件を用いてもよい。還元処理中、反応系内は還元性ガス雰囲気が終始維持され、反応系内が含酸素ガス雰囲気に曝されないことが好ましい。
【0022】
また、無機酸化物は溶媒に含ませた状態で、放射線を照射してもよい。繊維構造体やフィルムなどに無機酸化物を固定する場合、無機酸化物を水やアルコール等の液体に分散して、繊維構造体やフィルムなどに塗布などで固定する場合が多い。プラズマ法や紫外線法などでは、溶媒内部にある粒子を酸素欠損状態にするには難しいが、放射線照射法では、ナノ粒子化した無機酸化物を溶媒に含ませた状態でも、酸素欠損状態にすることが可能である。さらに、溶媒はイソプロピルアルコール(IPA)や、尿素水溶液などの還元性溶媒であると、酸素欠損の程度が高くなるため好ましい。
【0023】
以上、説明したように無機酸化物に放射線を照射することで、常温での酸素欠損酸化物を製造することが可能となり、基材や溶媒に含まれる無機酸化物に対しても、酸素欠損状態を作り出すことが可能な、酸素欠損無機酸化物の製造方法を提供することができる。高温での焼成の場合、酸化物の粒子が凝集して粒子径が大きくなるが、放射線照射の場合、常温での製造が可能なため、粒子径の小さな状態で酸素欠損状態にできる。フィルムやメッシュなどの基材に塗布する場合、粒子径が小さいと酸化物が基材表面に広がり、均一に塗布できる。また、反応サイトが酸化物表面にある場合、粒子径が小さいほど反応サイトが増えるので、酸化物の機能が高まる。しかし、凝集して粒子径が大きくなると、塗布ムラが生じやすくなったり、塗布ムラによって機能が発現しにくくなったり、凝集による濁りが生じて透明性が必要なものには使えないこともある。
【0024】
以上のようにして得られた本実施形態に係る酸素欠損酸化物は、CeOに適用すると酸素吸着能が高い酸素吸収材になり、CsWOに適用すると近赤外線遮蔽能力の高い近赤外線遮蔽剤になり、TiOに適用すると導電性の高い導電材になり、様々な分野に利用できる。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
本発明方法による実施例1〜6の酸素欠損無機酸化物の製造にあたっては、エレクトロカーテン型電子線照射装置CB250/15/180L(岩崎電気株式会社製)を用い、電子線(EB)照射によって実施した。
【0027】
(実施例1)
市販の比表面積143m2/gの酸化セリウム微粒子(信越化学工業株式会社製、CeO2(BB))50gをポリ袋に入れ、均一な厚みとなる様に粉体の厚みを調整した後、加速電圧200kV、照射量500kGyの条件で電子線を照射し、粉末状の酸素欠損酸化セリウムを得た。得られた粉末状の酸素欠損酸化セリウムを20重量部と、還元剤かつ溶媒であるイソプロピルアルコール(IPA)80重量部とを混合し、分散処理を行い、平均粒子径45nmの分散液とした。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損酸化セリウムが30質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0028】
(実施例2)
実施例1で用いた市販の比表面積143m2/gの酸化セリウム微粒子(信越化学工業株式会社製、CeO2(BB))を、IPAに対して10質量%となるように加え、pHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより粉砕分散した。得られた酸化セリウム分散液は平均粒子径46nmであった。得られた酸化セリウム分散液50gをポリ袋にいれ、加速電圧200kV、照射量100kGyの条件で電子線を照射し、酸素欠損酸化セリウム分散液を得た。得られた分散液は紫がかった灰色のスラリーであった。この分散体をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損セリウムが30質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0029】
(実施例3)
市販の三酸化タングステン微粒子(日本無機化学工業株式会社製)を50gポリ袋に入れ、均一な厚みとなる様に粉体の厚みを調整した後、加速電圧200kV、照射量500kGyの条件で電子線を照射し、粉末状の酸素欠損タングステンを得た。得られた粉末状の酸素欠損三酸化タングステン20重量部と、IPA80重量部とを混合し、分散処理を行い、平均粒子径29nmの分散液とした。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損三酸化タングステンが10質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0030】
(実施例4)
実施例3で用いた市販の三酸化タングステン微粒子(日本無機化学工業株式会社製)を、IPAに対して10質量%となるように加え、pHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより粉砕分散した。得られた三酸化タングステン分散液は平均粒子径30nmであった。得られた三酸化タングステン分散液50gをポリ袋にいれ、加速電圧200kV、照射量100kGyの条件で電子線を照射し、酸素欠損三酸化タングステン分散液を得た。得られた分散液は紺色の分散液であった。得られた分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損三酸化タングステンが10質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0031】
(実施例5)
市販の二酸化チタン微粒子MT−100HD(テイカ株式会社製)50gをポリ袋に入れ、均一な厚みとなる様に粉体の厚みを調整した後、加速電圧200kV、照射量500kGyの条件で電子線を照射し、粉末状の酸素欠損二酸化チタンを得た。得られた粉末状の酸素欠損二酸化チタン20重量部と、IPA80重量部とを混合し、ビーズミルを用いて分散処理を行い、平均粒子径20nmの分散液とした。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損二酸化チタンが50質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0032】
(実施例6)
実施例5で用いた市販の二酸化チタン微粒子MT−100HD(テイカ株式会社製)を、IPAに対して10質量%となるように加え、pHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより粉砕分散した。得られた二酸化チタン分散液を50gポリ袋にいれ、加速電圧200kV、照射量300kGyの条件で電子線を照射し、酸素欠損二酸化チタン分散液を得た。得られた酸素欠損二酸化チタン分散液の平均粒子径は18nmであった。得られた分散液は灰色がかった青色を呈していた。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損二酸化チタンが50質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、実施例2と同様に電子線で硬化させた。
【0033】
(比較例1)
実施例1で用いた市販の比表面積143m2/gの酸化セリウム微粒子(信越化学工業株式会社製、CeO2(BB))を、1000℃で2時間還元処理(水素100%ガスで400SCCMフロー)を実施した。得られた粉末状酸素欠損酸化セリウム微粒子20重量部と、IPA80重量部とを混合し、分散処理を行った。得られた分散液は平均粒子径452nmであった。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損酸化セリウムが30質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0034】
(比較例2)
実施例3で用いた市販の三酸化タングステン微粒子(日本無機化学工業株式会社製)を還元雰囲気(アルゴン/水素=95/5体積比)中において550℃で1時間加熱した。その後、一旦室温に戻した後、800℃アルゴン雰囲気下で1時間加熱する事で酸素欠損三酸化タングステン微粒子を得た。得られた粉末状酸素欠損三酸化タングステン微粒子20重量部と、IPA80重量部とを混合し、分散処理を行った。得られた分散液は平均粒子径303nmであった。この分散液をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損三酸化タングステンが10質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0035】
(比較例3)
実施例5で用いた市販の二酸化チタン微粒子MT−100HD(テイカ株式会社製)をIPA中に10wt%になるようにビーズミルで分散し、平均粒子径60nmの分散液を得た。その後、Nd:YAGパルスレーザーを10Hz、170〜180mJ/pulseの条件で1時間照射した。得られた分散体をハードコート用電子線硬化樹脂(固形分100%)中に酸素欠損二酸化チタンが50質量%となる様に混合し、PET樹脂フィルム上にバーコーターを用いて塗布製膜した。100℃で1分間乾燥した後、電子線で硬化させた。
【0036】
(酸素吸収性の評価)
実施例1、2と比較例1で作成した酸素欠損無機酸化物(酸化セリウム)を塗布したPET樹脂フィルムを用いた。各フィルムの飽和酸素吸収量の測定は、内寸がタテ125mm、ヨコ65mmとなるようにサンプル四方をヒートシールし、内容量35mL中の酸素濃度変化から算出した。
【0037】
実施例1、2と比較例1の酸素吸収性の評価結果を表1に示す。高温で加熱して酸素欠損を生じさせた比較例1は凝集により粒子径が大きくなることが確認された。凝集して粒子径が大きくなると、酸素吸収量が減少する。また、酸素欠損無機酸化物が還元剤であるIPAに含まれた状態(酸素欠損無機酸化物がIPA中に分散した状態)でEB照射した実施例2の方が、EB照射後に酸素欠損無機酸化物をIPAに含ませた(EB照射後に酸素欠損無機酸化物をIPAに分散した)実施例1よりも飽和酸素吸収量が多く、酸素欠損の程度が高いことが確認され、酸素吸収能のより高い酸素吸収材を提供できることが分かる。
【0038】
【表1】
【0039】
(透過特性の評価)
実施例3、4と比較例2で作成した酸素欠損無機酸化物(三酸化タングステン)を塗布したPET樹脂フィルムの透過特性の評価は、紫外可視近赤外分光光度計(V−670、日本分光株式会社製)を用いて、波長200〜2000nmの透過率を測定した。可視光の透過率は波長550nm、近赤外線の透過率は波長1000nmの透過率の値とした。
【0040】
実施例3、4と比較例2の透過特性の評価結果を表2に示す。高温で加熱して酸素欠損を生じさせた比較例2は凝集により粒子径が大きくなることが確認された。また、酸素欠損無機酸化物が還元剤であるIPAに含まれた状態でEB照射した実施例4の方が、EB照射後にIPAに酸素欠損無機酸化物を含ませた実施例3よりも近赤外光の透過率が低く、酸素欠損の程度が高いことが確認され、より近赤外線遮蔽効果の高い近赤外線遮蔽材を提供できることが分かる。
【0041】
【表2】
【0042】
(表面抵抗値の評価)
実施例5、6と比較例3の酸素欠損無機酸化物を混合し塗布製膜したフィルムの表面抵抗値の測定は、低抵抗率計(ロレスタ−GP、三菱化学アナリテック社製)と、高抵抗率計(ハイレスタ−UP、三菱化学アナリテック社製)を用いて抵抗率を測定した。
【0043】
実施例5、6と比較例3の透過特性の評価結果を表3に示す。YAGパルスレーザーを照射した比較例2では、EB照射した実施例5、6と比較して表面抵抗値が大きく、酸素欠損の程度が低いことが確認された。
【0044】
【表3】
【0045】
YAGパルスレーザーで酸素欠損を生じさせた比較例3は凝集により粒子径が大きくなることが確認された。また、酸素欠損無機酸化物が還元剤のIPAに含まれた状態でEB照射した実施例6の方が、EB照射後にIPAに酸素欠損無機酸化物を含ませた実施例5よりも抵抗値が低く、酸素欠損の程度が高いことが確認され、導電性のより高い導電材を提供できることが分かる。
【0046】
以上のように、本発明においては酸化物を常温で放射線照射により還元状態とすることができる為に、効率よく酸素欠損無機酸化物を得る事ができる。そのため、高温での長時間の還元処理を必要としない為、粉末材料の凝集が起こりづらく、透明性に優れたフィルム状への製膜といった二次加工性に優れる。また、酸化物を溶媒に含ませた状態でも、放射線照射により、効率よく酸素欠損無機酸化物を得ることができる。