(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208972
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】電極内蔵セラミックス焼結体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20170925BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-90169(P2013-90169)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-216367(P2014-216367A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 弘徳
(72)【発明者】
【氏名】畠山 博志
(72)【発明者】
【氏名】菅家 篤
(72)【発明者】
【氏名】梅木 俊哉
【審査官】
梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0016465(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3154930(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面に沿って延在する電極が内蔵されているセラミックス焼結体であって、
前記電極が、モリブデンまたはタングステンからなる金属板、金属箔、金属メッシュまたは金属線により構成され、
前記平面の法線方向について、前記電極のサイズまたは厚さの1.0倍以下の高さを有する爪部が前記電極に設けられていることを特徴とする電極内蔵セラミックス焼結体。
【請求項2】
請求項1記載の電極内蔵セラミックス焼結体において、
前記セラミックス焼結体がウエハを載置するための前記平面と平行な載置面を有し、前記爪部が前記載置面に対して反対方向に前記電極から延在または突出するように設けられていることを特徴とする電極内蔵セラミックス焼結体。
【請求項3】
請求項2記載の電極内蔵セラミックス焼結体において、
前記電極が少なくとも前記セラミックス焼結体において前記載置面の側にプラズマを発生させるための電極または前記載置面に載置された前記ウエハを前記セラミックス焼結体に対して静電吸着させるための電極であることを特徴とする電極内蔵セラミックス焼結体。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の電極内蔵セラミックス焼結体において、
前記爪部が前記電極の縁部に設けられていることを特徴とする電極内蔵セラミックス焼結体。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の電極内蔵セラミックス焼結体において、
前記電極の中心を基準として複数の前記爪部が異なる方位にまたは等方的に配置されていることを特徴とする電極内蔵セラミックス焼結体。
【請求項6】
平面に沿って延在する電極が内蔵されているセラミックス焼結体の製造方法であって、
前記電極を間に挟むように複数のセラミックス成形体を前記平面の法線方向に重ねる、または、前記電極を一のセラミックス成形体に埋設する工程と、
前記複数のセラミックス成形体または前記一のセラミックス成形体を前記平面の法線方向について加圧しながら焼成する工程と、を含み、
前記電極が、モリブデンまたはタングステンからなる金属板、金属箔、金属メッシュまたは金属線により構成され、
前記電極がその厚さの1.0倍以下の高さを有する爪部を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、
金属板、金属箔、金属メッシュまたは金属線を加工して形状を調節し、かつ、当該加工時に生じたバリの高さを調節することにより前記爪部を形成することによって前記電極を作製する工程をさらに含んでいることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7記載の方法において、
前記セラミックス焼結体がウエハを載置するための前記平面と平行な載置面を有し、前記爪部が前記載置面に対して反対方向に前記電極から延在または突出するように前記複数のセラミックス成形体の間に挟まれるように配置されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置に使用される静電チャック電極、ヒータ電極もしくはプラズマ電極、またはこれらの組み合わせ等、一または複数の電極が内蔵されているセラミックス焼結体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極内蔵セラミックス焼結体の製法として、成形体の上に電極と、他の成形体または粉末を順に重ねたうえで、当該成形体または当該成形体および粉末を当該重ね方向に加圧焼成する手法が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2766443号公報
【特許文献2】特開2003−100422号公報
【特許文献3】特開2003−077995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、成形体に圧力が印加されたときに電極が所定位置からずれる可能性が無視できない程度に高い。このため、セラミックス焼結体の電極に由来する性能(加熱性能または静電吸着性能など)が所望の形態からずれるほか、当該焼結体に対して電極と干渉しないようなリフトピン穴等を加工することが困難になる事態が招かれる。
【0005】
そこで、本発明は、電極の配置精度の向上が図られている電極内蔵セラミックス焼結体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電極内蔵セラミックス焼結体は、平面に沿って延在する電極が内蔵されているセラミックス焼結体であって、
前記電極が、モリブデンまたはタングステンからなる金属板、金属箔、金属メッシュまたは金属線により構成され、前記平面の法線方向について、前記電極のサイズまたは厚さの1.0倍以下の高さを有する爪部が前記電極に設けられていることを特徴とする。
【0007】
前記セラミックス焼結体がウエハを載置するための前記平面と平行な載置面を有し、前記爪部が前記載置面に対して反対方向に前記電極から延在または突出するように設けられていることが好ましい。前記電極が少なくとも前記セラミックス焼結体において前記載置面の側にプラズマを発生させるための電極または前記載置面に載置された前記ウエハを前記セラミックス焼結体に対し平面に沿って延在する電極が内蔵されているセラミックス焼結体であって、前記平面の法線方向について、前記電極のサイズまたは厚さの1.0倍以下の高さを有する爪部が前記電極に設けられていることが好ましい。
【0008】
前記セラミックス焼結体がウエハを載置するための前記平面と平行な載置面を有し、前記爪部が前記載置面に対して反対方向に前記電極から延在または突出するように設けられていることが好ましい。前記電極が少なくとも前記セラミックス焼結体において前記載置面の側にプラズマを発生させるための電極または前記載置面に載置された前記ウエハを前記セラミックス焼結体に対して静電吸着させるための電極であることが好ましい。前記爪部が前記電極の縁部に設けられていることが好ましい。前記電極の中心を基準として複数の前記爪部が異なる方位にまたは等方的に配置されていることが好ましい。
【0009】
本発明の方法は、平面に沿って延在する電極が内蔵されているセラミックス焼結体の製造方法であって、前記電極を間に挟むように複数のセラミックス成形体を前記平面の法線方向に重ねる、または、前記電極を一のセラミックス成形体に埋設する工程と、前記複数のセラミックス成形体または前記一のセラミックス成形体を前記平面の法線方向について加圧しながら焼成する工程と、を含み、
前記電極が、モリブデンまたはタングステンからなる金属板、金属箔、金属メッシュまたは金属線により構成され、前記電極がその厚さの1.0倍以下の高さを有する爪部を有することを特徴とする。
【0010】
金属板、金属箔、金属メッシュまたは金属線を加工して形状を調節し、かつ、当該加工時に生じたバリの高さを調節することにより前記爪部を形成することによって前記電極を作製する工程をさらに含んでいることが好ましい。前記セラミックス焼結体がウエハを載置するための前記平面と平行な載置面を有し、前記爪部が前記載置面に対して反対方向に前記電極から延在または突出するように前記複数のセラミックス成形体の間に挟まれるように配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電極内蔵セラミックス焼結体およびその製造方法によれば、平面に沿って延在する電極に設けられている爪部の高さが当該電極の厚さの1.0倍以下に調節されている。このため、爪部の存在に由来して加圧焼成時に成形体または電極に割れまたは変形を生じさせることが防止されうる。その上で、電極を挟むように重ねられている複数の成形体もしくは電極が埋設されている一の成形体、またはその焼成結果としてのセラミックス焼結体に当該爪部を食い込ませることができる。これにより、電極の位置ずれが確実に防止され、その配置精度の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態としての電極内蔵セラミックス焼結体の構成説明図。
【
図2】
図1のセラミックス焼結体に内蔵されている電極の構成説明図。
【
図3】
図1のセラミックス焼結体の製造方法に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(電極内蔵セラミックス焼結体の構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての電極内蔵セラミックス焼結体10(電極内蔵セラミックス部品)は略円盤状のヒータ付静電チャックである。セラミックス焼結体10の一対の端面のうち一方が、ウエハが載置される載置面100を構成する。セラミックス焼結体10には、載置面100に対して平行な2つの平面のそれぞれに沿って延在する「第1電極」としての静電チャック電極21および「第2電極」としてのヒータ電極22が内蔵されている。
【0014】
ヒータ電極22は静電チャック電極21よりも載置面100から遠くに配置されている。載置面100に対する静電チャック電極21およびヒータ電極22の遠近関係は逆であってもよい。静電チャック電極21およびヒータ電極22は、ともに金属板、金属箔、金属メッシュまたは金属線により構成されている。金属箔にはパンチングが施されていてもよい。静電チャック電極21およびヒータ電極22は、セラミックス成形体の焼成温度を経験するため、高融点金属が用いられる。例えば、セラミックスとして窒化アルミニウム、アルミナまたは窒化珪素が用いられる場合、モリブデンまたはタングステンが電極21および22として用いられる。
【0015】
セラミックス焼結体10に内蔵される電極の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。一または複数の電極は、セラミックス焼結体10の使用目的に応じてその形状等が適宜変更されうる。
【0016】
静電チャック電極21は、
図2(a)に示されているように、略円形状に形成されている。静電チャック電極21は、その厚さの1.0倍以下の高さを有する4個の爪部212を備えている。4個の爪部212は、静電チャック電極21の中心X1を基準として略等方的に配置されている。爪部212の個数および配置形態は、これに限定されず、さまざまな形態に変更されてもよい。
【0017】
ヒータ電極22は、
図2(b)に示されているように、一端部から間隔をおいて外側に拡がりながら略同心円状に延びる一対の線が他端部で連結されたような形状に形成されている。ヒータ電極22は、その厚さ方向または当該平面の法線方向についてそのサイズの1.0倍以下の高さを有する10個の爪部222を備えている。10個の爪部222は、ヒータ電極22の中心X2を基準として複数の方位に配置されている。爪部222の個数および配置形態は、これに限定されず、さまざまな形態に変更されてもよい。
【0018】
図1に示されているように、爪部212および爪部222はともに静電チャック電極21およびヒータ電極22のそれぞれから下方(載置面100に対して反対方向)に延出または突出するように設けられている。これにより、静電チャック電極21により、載置面100に載置されたウエハをセラミックス焼結体10に対して静電吸着させる力が、当該爪部212または222に由来して局所的に不均一が解消または軽減される。これは、電極21および22のうち一方に代えて、または、電極21および22に加えて、プラズマ発生用の電極がセラミックス焼結体10に内蔵される場合も同様である。
【0019】
そのほか、爪部212および爪部222はともに静電チャック電極21およびヒータ電極22のそれぞれから上方に突出するように設けられていてもよい。爪部212および爪部222の突出方向が異なっていてもよい。載置面100の法線方向または上下方向について、爪部212および爪部222が重ならないように配置されていてもよい。
【0020】
電極の縁部は、内部に当該電極が含まれている閉曲線に沿って延在している「外縁部」のほか、内部に当該電極が含まれない閉曲線に沿って延在している「内縁部」も包含する概念である。金属板または金属箔等にパンチングが施されている場合、当該パンチ孔の縁部は内縁部に該当する。
【0021】
(電極内蔵セラミックス焼結体の製造方法)
(第1実施形態)
爪部212を有する第1電極(静電チャック電電極)21および爪部222を有する第2電極(ヒータ電極)22が作製される。具体的には、金属板等が、打ち抜き、または、刃物もしくはレーザーによる切断によって所定形状または設計形状に加工される(
図2(a)および
図2(b)参照)。この加工時に所定形状の金属板等の縁部に沿ってバリが生じる。
【0022】
第1電極21および第2電極22が延在する平面に対するバリの高さは不均一であるため、当該高さを調整するようにバリに加工が施されることで爪部212および222が形成される。バリの加工法としては、研磨法またはウエットエッチング法などが採用される。ウエットエッチング法によるバリの加工に際して、所定箇所に曲げまたは打撃により当該張りが起立することで爪部212および222が形成されうる。
【0023】
爪部212および222の高さは、電極21および22を構成するタングステンまたはモリブデンの変形性と、当該爪部212および222のそれぞれが食い込む対象である成形体31および32のそれぞれの柔らかさとの関係で決定される。成形体31、32の密度が低いほど、爪部212、222が当該成形体31、32に対して食い込みやすい(
図4(a)参照)。
【0024】
成形体31、32の密度が理論密度(約65%)に近いほど硬いが、これに爪部212、222が刺さったときに電極21、22にシワもしくは割れ(
図4(b)参照)が生じない、または成形体31、32に割れが生じないという観点から、爪部212および222の高さが決定されている。電極21および22が延在する平面に平行な方向に、当該電極21および22の変位を防止するという目標が達成されれば足りるので、爪部212および222は低いことが好ましい。
【0025】
電極21、22の形状および性能が損なわれないことを前提として、電極21、22がその外縁部から外れた箇所でキリまたはポンチ等の工具により打ち抜かれ、その際に生じたバリが加工されることにより当該電極21、22の内縁部に爪部が形成されてもよい。
【0026】
電極21、22の縁部から外れた位置に爪部のうち少なくとも一部が設けられてもよい。たとえば、電極21、22の縁部から外れた箇所が局所的に突出するように加工され、当該突出部が爪部として形成されてもよい。このような爪部は、電極21、22を構成する金属板等の圧延時などにおいて形成されうる。ただし、コスト低減の観点からは、電極21、22の縁部、特に外縁部に爪部が形成されることが好ましい。
【0027】
図3(a)左側に示されているように、略円盤状の成形体31(略円筒状の焼成さや(図示略)の内部に配置されている。)の上に爪部212が上方に向くように静電チャック電極21が載置される。
図3(a)中央に示されているように、静電チャック電極21の上に略円盤状の成形体32が載置され、その上に爪部222が上方に向くようにヒータ電極22が載置される。
図3(a)右側に示されているように、ヒータ電極22の上に略円盤状の成形体33が載置される。
【0028】
静電チャック電極21およびヒータ電極22を間に挟むように重ねられている3つの成形体31〜33が、当該重なり方向に加圧されながら焼成されることにより、
図1に示されている構成のセラミックス焼結体10が得られる。成形体31〜33は、一軸プレス、CIP、鋳込みまたは射出成形等、一般的なセラミックスの成形方法によって得られる。
【0029】
(第2実施形態)
図3(b)左側に示されているように、略円盤状の成形体31(略円筒状の焼成さや(図示略)の内部に配置されている。)の上に爪部212が上方に向くように静電チャック電極21が載置される。さらに、静電チャック電極21を上から覆うように焼成さやにセラミックス粉末32’が投入され、当該セラミックス粉末32’が下方に加圧される。
【0030】
これにより、
図3(b)中央に示されているように、成形体31よりも厚く、かつ、静電チャック電極21が埋設されている略円盤状の新たな成形体63が形成される。成形体32の上に爪部222が上方に向くようにヒータ電極22が載置される。さらに、ヒータ電極22を上から覆うように焼成さやにセラミックス粉末33’が投入され、当該セラミックス粉末33’が下方に加圧される。
【0031】
これにより、
図3(b)右側に示されているように、成形体63よりも厚く、かつ、静電チャック電極21およびヒータ電極22が埋設されている略円盤状の新たな成形体96が形成される。当該成形体96が、下方に加圧されながら焼成されることにより、
図1に示されている構成のセラミックス焼結体10が得られる。
【0032】
(実施例)
窒化アルミニウム粉末に対して酸化イットリウム粉末が5[wt%]だけ添加され、さらに分散剤、バインダおよびイソプロピルアルコールが加えられたうえで、ボールミルを用いて混合された。当該混合物から、スプレードライ法により窒化アルミニウム顆粒が得られた。原料粉末としての当該顆粒がCIPにより成形されたうえで生加工されることでφ320[mm]×10[mm]の略円盤状の成形体が作製された。
【0033】
静電チャック電極21は、線径0.1[mm]のモリブデンメッシュがレーザーを用いて所定形状に加工された。この際、所定形状のモリブデンメッシュの縁部に生じたバリが、ウエットエッチング加工されることにより爪部212が形成された。ヒータ電極22は、厚さ0.1[mm]のモリブデン箔がレーザーを用いて所定形状に加工された。この際、所定形状のモリブデンメッシュの縁部に生じたバリが、研磨加工により爪部222が形成された。爪部212および222のそれぞれの高さは、光学顕微鏡を用いて測定されうる。
【0034】
前記のように作製された成形体および電極を用いて、第1実施形態の方法にしたがって実施例1および2の電極内蔵セラミックス焼結体が製造された(
図3(a)参照)。前記のように準備された顆粒および成形体を用いて、第2実施形態の方法にしたがって実施例3および4の電極内蔵セラミックスが製造された(
図3(b)参照)。
【0035】
各実施例の焼結体10の上下面が平面研削された上で、X線検査装置を用いて静電チャック電極21とヒータ電極22との相対的な位置ずれ量が測定された。爪部212および222の割れの有無が調べられた。爪部212および222の近傍におけるセラミックス焼結体10の割れの有無が超音波探傷機を用いて調べられた。
【0036】
表1には、各実施例の焼結体の特徴の測定結果がまとめて示されている。
【0038】
表1から次のことがわかる。実施例1〜4のセラミックス焼結体において、載置面100の法線方向について静電チャック電極21のサイズ(厚さ)の1.0倍以下の0.2〜0.9倍の範囲に含まれるように爪部212の高さが調節されている。同方向について静電チャック電極22のサイズ(厚さ)の1.0倍以下の0.2〜1.0倍の範囲に含まれるように爪部222の高さが調節されている。電極21および22の相対的ずれ量が0.04〜0.06[mm]の範囲である。電極21および22に割れが生じておらず、焼結体10にも割れが生じていない。
【0039】
(比較例)
実施例1と同様に作製された成形体および電極を用いて、第1実施形態の方法にしたがって比較例1〜4の電極内蔵セラミックス焼結体が製造された(
図3(a)参照)。実施例1と同様に準備された顆粒および成形体を用いて、第2実施形態の方法にしたがって比較例5の電極内蔵セラミックスが製造された(
図3(b)参照)。
【0040】
表2には、各比較例の焼結体の特徴の測定結果がまとめて示されている。
【0042】
表2から次のことがわかる。比較例1のセラミックス焼結体において、載置面100の法線方向について、爪部212の高さが静電チャック電極21のサイズの1.0倍を超える1.4倍である。このため、成形体31〜33が重ね合わせられた状態で加圧される際、爪部212が成形体32に過度に食い込んで割れを生じさせ、その結果として第1電極21(正確にはその爪部212)の近傍において焼結体10に割れが生じている。
【0043】
比較例2のセラミックス焼結体において、載置面100の法線方向について、爪部222の高さがヒータ電極22のサイズの1.0倍を超える1.2倍である。このため、爪部222が成形体33に食い込む際に当該爪部222に負荷がかかり、ヒータ電極22に割れが生じている(
図4(b)参照)。同様に、比較例5のセラミックス焼結体において、載置面100の法線方向について、爪部212の高さが静電チャック電極21のサイズの1.0倍を超える1.5倍である。このため、爪部212が成形体32に食い込む際に当該爪部212に負荷がかかり、静電チャック電極21に割れが生じている(
図4(b)参照)。
【0044】
比較例3のセラミックス焼結体において、電極21および22のそれぞれに爪部が存在していない。このため、成形体31〜33が重ね合わせられた状態で加圧される際、電極21および22が載置面100に対して平行な方向に変位し、相対的ずれ量が0.04〜0.06[mm]の上限を大きく超えた1.15[mm]になっている。
【0045】
比較例4のセラミックス焼結体において、電極21に爪部が存在していない。このため、成形体31〜33が重ね合わせられた状態で加圧される際、電極21が載置面100に対して平行な方向に変位し、相対的ずれ量が0.04〜0.06[mm]の上限を大きく超えた0.78[mm]になっている。
【符号の説明】
【0046】
10‥セラミックス焼結体、21‥静電チャック電極(第1電極)、22‥ヒータ電極(第2電極)、212‥爪部、222‥爪部。