特許第6208982号(P6208982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208982
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】多軸骨アンカー固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/68 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   A61B17/68
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-112787(P2013-112787)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-248397(P2013-248397A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年7月8日
(31)【優先権主張番号】12170595.8
(32)【優先日】2012年6月1日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/654,593
(32)【優先日】2012年6月1日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトホルト・ダネッカー
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリート・マティス
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08088152(US,B2)
【文献】 特表2008−523890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/58
A61B 17/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸骨アンカー固定装置であって、
骨にアンカー固定されるシャンク(2)および頭部(3)を有する骨アンカー固定要素(1)と、
前記シャンクに結合され、前記頭部を回動可能に受けるように構成される受け部(5)とを備え、前記受け部は、ロッド(6)を受けるためのチャネル(56)および中心軸(C)を有し、前記多軸骨アンカー固定装置は、さらに、
前記受け部内に配置され、前記受け部において前記頭部を固着するために前記頭部に圧力を掛けるように構成される加圧部材(7)と、
前記チャネルに挿入可能な固着部材(8、8′)とを備え、前記固着部材は、上端部(81)および前記加圧部材に面する底端部(82)を含み、前記多軸骨アンカー固定装置はさらに、
前記底端部に設けられる、変形可能な第1の部分(85、85′)と、第2の部分(84、84′)とを備え、
前記変形可能な第1の部分(85、85′)は、変形していない構成において、前記第2の部分(84)よりも軸方向に外側へ突き出ており、前記変形可能な第1の部分(85、85′)は、前記加圧部材(7)に向かって開いている傾斜角をなすように傾けられており、
前記固着部材が前記中心軸(C)の方向に前記チャネルの中を進むと、前記変形可能な第1の部分(85、85′)は、最初に前記加圧部材(7)に接触し、前記固着部材(8、8′)の前記上端部(81)の方向に向かって曲がることにより変形して、前記頭部を締める前記加圧部材にかかる負荷をもたらし、
前記第2の部分(84)は、その後、前記ロッドに接触し、前記ロッドを締め、
前記第2の部分(84、84′)は、剛性部分である、多軸骨アンカー固定装置。
【請求項2】
前記変形可能な第1の部分(85、85′)は、弾性変形可能である、請求項1に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項3】
前記第2の部分(84、84′)は、前記変形可能な第1の部分よりも前記中心軸(C)の近くに設けられる、請求項1または2に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項4】
前記変形可能な第1の部分(85)および前記第2の部分(84)は、前記固着部材(
8)の一体型区画である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項5】
前記変形可能な第1の部分(85′)および前記第2の部分(84′)は、共に接続される別々の部品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項6】
前記変形可能な第1の部分(85、85′)は、輪状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項7】
前記加圧部材(7)は、前記ロッドを受けるためのチャネル(73)を備え、前記ロッドが前記チャネルに着座すると、前記チャネルの側壁は、前記ロッドの表面の上方を越えて延びる、請求項1〜のいずれか1項に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項8】
前記加圧部材(7)は、上端部と、底端部と、前記上端部にある前記ロッドを受けるためのU字型凹部(73)と、2つの開いた脚部とを有する実質的に円筒形の部品である、請求項1〜のいずれか1項に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項9】
前記変形可能な部分に接触する、前記加圧部材の端部表面(71a)は、前記変形可能な部分が変形する長さの少なくとも一部にわたって、前記変形可能な第1の部分(85、85′)のための当接部を形成するような大きさを有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項10】
前記受け部(5)は、上端部(51)と、底端部(52)と、前記上端部から前記底端部に延びるボア(53)とを備え、前記ロッドのための前記チャネルは、実質的にU字型の断面を有する、前記上端部と隣接する凹部(56)によって形成される、請求項1〜のいずれか1項に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項11】
前記凹部(56)によって2つの開いた脚部(57,58)が形成され、前記脚部に設けられた雌ねじ(59)は、前記固着部材(8)の雄ねじ(93)と協働する、請求項10に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【請求項12】
前記固着部材(8、8′)は、止めねじである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の多軸骨アンカー固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、背骨または外傷手術に用いられる多軸骨アンカー固定装置に関する。多軸骨アンカー固定装置は、骨にアンカー固定されるシャンクおよび頭部を有する骨アンカー固定要素を備える。頭部は、受け部において回動可能に保持され、加圧要素を介して頭部に圧力を加えることによって角度をなして固定することができる。骨アンカー固定要素は、受け部により、受け部のチャネルに配置される安定化ロッドに結合され得る。多軸骨アンカー固定装置は、さらに、固着部材を含む。固着部材は、チャネルに挿入可能であり、変形可能な第1の部分と、加圧部材に面する側にある第2の部分とを有する。固着部材がチャネルの中へ進むと、最初に、変形可能な第1の部分が加圧部材に接触して変形し、頭部を締める加圧部材に負荷がかかる。その後、第2の部分は、ロッドに接触し、ロッドを締める。そのような固着部材により、頭部およびロッドは、固着部材と係合する単一の駆動部を有する用具を使用して、逐次的態様で固定され得る。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,972,364号は、第1の固着要素および第2の固着要素を含む骨アンカー固定装置のロッド受け部にロッドをしっかりと固定する固着アセンブリについて説明している。第1の固着要素および第2の固着要素により、骨アンカー固定要素の頭部およびロッドは、2つの駆動部を有する用具を使用することで独立に固着され得る。
【0003】
米国特許第8,088,152号B2は、頭部とそれに回動可能に取り付けられたねじ切りされた軸とを有する少なくとも1つの骨ねじを備える整形外科用のリテーニングシステムについて説明している。締め付け要素は、頭部に取り付けられ、頭部はその上側からねじ切りされた軸に対して押圧され、その結果、頭部に対してねじ切りされた軸をしっかり固定する。リテーニングバーは、頭部の受け部に配置される。さらに、締め付け装置は頭部の上側に設けられ、それにより、ねじ切りされた軸とリテーニングバーが頭部に対する定位置でしっかり固定されるように、締め付け要素およびリテーニングバーは、頭部の中に押し込まれる。締め付け装置は、締め付け装置の作動中に、締め付け位置に変位される弾性変形可能な加圧要素を備える。そのような構成により、締め付け装置が作動すると、加圧要素は、最初に締め付け要素に当接し、その結果、リテーニングバーが自由に変位可能である間に、頭部上の定位置に回動可能なねじ切りされた軸をしっかり固定する。締め付け装置がさらに作動した場合のみ、加圧要素は弾性変形し、その結果、リテーニングバーに当接し、リテーニングバーを定位置にしっかり固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,972,364号
【特許文献2】米国特許第8,088,152号B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、操作を簡易化し、頭部およびロッドを信頼性をもって固定する改良された多軸骨アンカー固定装置を提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1に記載の多軸骨アンカー固定装置により解決される。さらに他の発展例は、従属項により与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
多軸骨アンカー固定装置は、単一の駆動部を有する単一の用具だけを使用して逐次的態様で、受け部内にある骨アンカー固定要素の頭部およびロッドを固着することを可能にする。この逐次固着機構により、最初に頭部を固着し、または少なくとも予め頭部を締めつけ、その後ロッドを締めつけ、最後にロッドおよび頭部を固着することが可能になる。さらに、頭部およびロッドの完全な固着を実行することができ、その後、ロッドの固定を緩めることにより、ロッドの調整を行うことが可能になる。
【0008】
これらのステップを実行するに必要なのは、単一の駆動部および一体の負荷部材を有する単一の工具だけであるあるので、多軸骨アンカー固定装置の使用が容易になる。
【0009】
固着部材の変形可能部分が弾性変形される場合、固着部材を取り外し、固着部材を再び使用することにより、多軸アンカー固定装置の修正を実行することができる。
【0010】
変形可能部分は、変形可能部分の材料および形状に鑑みて、適切な変形可能部分を選択することで締め付け力を変更できるように、固着部材に固定される別々の部品として設定されてもよい。
【0011】
多軸骨アンカー固定装置は少数の部品のみを備える。固着部材は、別個の頭部およびロッドの固定を可能にする既存の多軸骨アンカー固定装置で用いることができる。
【0012】
本発明のさらに他の特徴および利点は、添付の図面による実施の形態の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の分解斜視図である。
図2】組み立てられた状態の、図1の多軸骨アンカー固定装置の斜視図である。
図3】第1の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の加圧部材の底からの斜視図である。
図4図3の加圧部材の上面図である。
図5図4の線A−Aに沿った加圧部材の断面図である。
図6】第1の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の固着部材の底からの斜視図である。
図7図6に示される固着部材の上面図である。
図8図7の線B−Bに沿った固着部材の断面図である。
図9】ロッド軸に対して垂直な平面で取った断面における、第1の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の使用のステップの断面図である。
図10】ロッド軸に対して垂直な平面で取った断面における、第1の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の使用のステップの断面図である。
図11】ロッド軸に対して垂直な平面で取った断面における、第1の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の使用のステップの断面図である。
図12】ロッド軸に対して垂直な平面で取った断面における、第1の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の使用のステップの断面図である。
図13図12の細部の拡大部分を示す図である。
図14】第2の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の固着部材の分解斜視図である。
図15】組み立てられた状態の、図14の固着部材の斜視図である。
図16】ロッド軸に対して垂直な平面で取った断面における、第2の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の使用のステップの断面図を示す図である。
図17】ロッド軸に対して垂直な平面で取った断面における、第2の実施の形態に従う多軸骨アンカー固定装置の使用のステップの断面図を示す図である。
図18図17の細部の拡大部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および図2ならびに図9〜12を参照して、受け部5は、上端部51および底端部52を有し、上端部および底端部を貫くように延びている長手方向軸Cを有する実質的に円筒形の構造である。ボアは、長手方向軸Cと同軸上に、底端部52からの予め定められた距離まで、上端部51から延びるように設けられる。ボアは、上端部に隣接し、第1の直径を有する第1の区画53aを有する。第1の区画53aは、第1の直径よりも小さい第2の直径を有する第2の区画53bの傾いた肩部でつながる。底端部52に、ボア53の直径よりも小さい直径を有する開口部54が設けられる。同軸のボアは、たとえば、頭部3の座部を提供する球状に形成された区画55を有する開口部54に向かって狭くなる。しかしながら、区画55は、玉継ぎ手と同じように、受け部5に回動可能に保持される頭部3の機能を確実にする任意の他の形状(たとえば、円錐形状のような形状)であってもよい。
【0015】
受け部5は、さらに、上端部51から始まり、底端部52の方向へ延びているU字型凹部56を備える。U字型凹部によって、2つの自由な脚部57、58は、上端部51に向かって開くように形成され、ロッド6を受けるためのチャネルを規定している。上端部51に隣接して、雌ねじ59を有する部分が脚部57、58の内面に設けられる。図示された実施の形態では、雌ねじ59は、実質的に水平な上下ねじフランクを有する角ねじである。任意のその他のねじ形状が雌ねじ59に使用されてもよいが、しかしながら、脚部の広がりを低減する、又は無くす、ねじ形状がより好ましい。
【0016】
加圧部材7は、実質的に円筒形の構造である。加圧部材7の外径は、受け部5のボアの第2の区画53bの加圧部材の導入と、区画53b内での軸方向への移動とを可能にするようにサイズ決めされる。加圧部材7は、上端部71と、対向する底端部72と、受け部5の長手方向軸Cと同じように、取り付けられた状態で2つの端を貫くように延びている長手方向軸Cとを有する。加圧要素は、その上端部71が受け部の上端部51へ向けられ、底端部72が受け部の底端部52へ向けられるように、受け部5に配置される。加圧要素は、その上端部71において、ロッド6を受けるように構成される実質的にU字型の凹部73を備える。ロッド6が凹部73の底に位置付けられると、加圧部材7の上端部71は、ロッド6の表面上方の高さに位置する。
【0017】
加圧部材は、上端部71において、2つの対向する円断片として形作られた鍔部77を備える。鍔部によって、2つの拡張面部分71aがU字型凹部73の側壁の上端部に形成される。鍔部77の領域における加圧要素の外径は、拡張面部分71aがボアの第1の部分53aに及ぶように広げられる。拡張面部分71aは、以下で説明される固着部材用の当接部を提供する。
【0018】
加圧部材7は、その下側に、頭部3の球状の外面部分と協働する環状凹部74を備える。さらに、骨アンカー固定要素1および加圧部材7が受け部5に取り付けられた時に頭部3の凹部4へのアクセスを可能にする同軸の貫通孔75が加圧部材に設けられる。
【0019】
図1および図6〜8を参照して、固着部材8について説明する。第1の実施の形態における固着部材8は単一の部品である。固着部材は、上端部81と、固着要素が受け部5の脚部57、58の間に挿入されたときに加圧部材に面する底端部82とを有する止めねじとして形成される。さらに詳細には、固着部材8は、脚部の雌ねじと協働する雄ねじを有するねじ部83を、上端部81に隣接して有し、ねじ部83から離れて傾けられる円錐状に外側に延びる部分85に囲まれる円筒型突起部84をねじ部83の底側に有する。固着部材8が底端部82から脚部間に挿入され得るように、円錐部85の外径はねじ部83の外径よりも小さい。
【0020】
円筒部84は、剛性部分となるよう構成される。すなわち、以下で説明されるようにロッドに対して押圧された場合に、通常の動作条件下では変形しない。円錐部85は、コニカルワッシャー(conical washer)と同様の形状を有する。円錐部85は、以下で説明される加圧部材7に対して押し付けられた場合に、ねじ部83の方へ変形する変形可能部分となるよう構成される。特に、円錐部85は、負荷が取り除かれた時にその元の形をとる弾性部を形成するように、弾性変形可能である。さらに、円錐部85は、元の構成では、円筒部84から軸方向に突き出ている。円錐部85は、円錐部85に対して上端部81の方向に負荷がかけられた場合に、ねじ部83に対して曲げられるような大きさおよび弾力性を有する。曲げられた状態では、円筒部84は、円錐部85を超えて軸方向に突き出る。
【0021】
さらに、固着部材8は、係合部87を有する同軸の貫通孔86を備える。係合部87は、六角形の凹部を示す実施の形態である。しかしながら、係合部87は、トルクス(登録商標)形状(torx-shape)もしくは長手方向の溝のような任意のその他の形状、または工具と係合することができる任意の構造であってもよい。係合部は、貫通孔の上に設けられる必要はない。係合部は、上端部から固着部材へと延びる深さを有する凹部として設けられてもよい。
【0022】
骨アンカー固定装置の部品は、生体適合材料または生体適合プラスチック材料で作られ、たとえば、生体適合材料は、チタン、ステンレス鋼、ニチノールなどのニッケルチタン合金のような生体適合金属または金属合金であり、生体適合プラスチック材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などである。部品は、全て同じまたは異なる材料で作られてもよい。
【0023】
使用時に、受け部5およびアンカー固定要素1ならびに加圧部材7は、通常、頭部3が受け部5の座部55で回動可能に保持されるように、および加圧部材7が頭部の上に置かれるように事前に組み立てられる。少なくとも、2つの多軸骨アンカー固定装置がロッド6を介して接続されるものとする。骨アンカー固定要素を骨に挿入した後に、受け部が整列され、ロッド6が挿入される。
【0024】
図9図13を参照して、固着手順について説明する。最初に、図9で示されるように、固着部材8は、固着部材の底端部82がロッドに面した状態で受け部に挿入される。次に、固着部材は、さらに、円錐部の最も外側の縁部が、当接部として働く加圧部材7の上端部表面71aに接するまでねじこまれる。この位置では、図10に示されるように、円錐部85および円筒部84はロッド6に接触しない。それゆえに、受け部のU字型凹部と整列される加圧部材のU字型凹部において、ロッド6は変位可能である。円錐部85が加圧部材7に接触すると、加圧部材7を介して頭部3に圧力がかかる。これにより、受け部に対して調整可能な角度位置で頭部3を締め、そして摩擦によりこの位置で頭部3を保持する。締め付け力は、固着部材がどの程度までねじこまれるかにより、より大きくまたはより小さくなるように正確に調整され得る。
【0025】
ロッドに向かって固着部材を進めることは、円錐部85の変形をもたらす。円錐部85は、ねじ部83に向かって曲げられ、加圧部材7の上端部表面71aが当接部として働く。
【0026】
ロッドに向かって固着部材をまたさらに進めると、図12に示されるように、円筒部84がロッド6の表面に接触するまで円錐部85の変形が増す。これにより、頭部およびロッドが固着される。
【0027】
頭部の固着を緩めることなしに、ロッドの位置を正すことができる。これを達成するために、固着部材は、ロッドが変位可能になるまで、ねじを戻して緩められる。これは、円錐部85の弾性的な性質により可能になる。固着部材8を完全に取り外し、完成した多軸骨アンカー固定装置を修正することさえ可能であり得る。
【0028】
図14図18を参照して、多軸アンカー固定装置の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、固着部材の設計において、第1の実施の形態と異なる。第2の実施の形態に従う固着部材8´は、分離部材である円錐部85´を備える。円錐部85´は、コニカルワッシャーに似た形状を有し、すなわち、同軸の穴85a´を有し、その内径は、円錐部85´が円筒部84´の周囲に置かれ得るように寸法決めされる。図14に示されるように、円錐部85´は、円筒部84´の側から固着部材8´上へ取り付けられる。円錐部85´は、円筒部84´に圧入され、もしくは圧巻されまたは任意のその他の方法により溶接され、または固定され得る。図15に示されるように組み立てられた状態では、円錐部85´がねじ部83に固定され、これにより固着部材8´は単一の部品を形成する。
【0029】
円錐部85´は、ねじ部83の材料と比べて異なる材料で作られ得る。材料、円錐角、厚さ、または任意のその他の性質が異なる様々な円錐部85を設けてもよく、適切な部分を選択することにより締め付け力の調整を行うことが可能になる。
【0030】
図16および図18に示されるように、使用時において、円錐部は、円筒部から突き出る。これにより、円錐部は、加圧部材7の上端部表面71aにまず接触し、頭部を締め始める。固着部材8´をさらに挿入すると、円錐部85´が変形し、頭部への締め付け力は、頭部が固着されるまで増加する。円筒部84´が突き出るように円錐部85´が変形すると、円筒部84´は、ロッドに接触し、ロッドを締める。最後の締結により、アセンブリ全体が固着される。
【0031】
前述の実施の形態の様々な変更が考えられる。特に、変形可能部分は、円錐の輪状部である必要はない。変形可能部は、加圧部材の上端部表面71aに接触する位置に設置されれば十分である。しかしながら、脚部の間にねじ込むことにより前進する固着部材にとっては輪状部が特にふさわしい。
【0032】
多軸骨アンカー固定装置には、受け部で回動可能に受けられる骨アンカー固定要素を備える、公知のあらゆる多軸骨アンカー固定装置が利用されてもよい。特に、骨アンカー固定要素が受け部の底端部から受け部に導かれる骨アンカー固定装置が利用されてもよい。受け部の設計は異なってもよい。骨アンカー固定要素として、挿管(cannulation)を有するまたは有しない、ねじ、くぎのような公知のあらゆる骨アンカー固定が利用され得る。
【0033】
固着部材と受け部との間の接続は、必ずしもねじ切りにより成される必要はない。たとえば、差し込みピン(a bayonet connection)のような、他の接続が可能であり得る。
【符号の説明】
【0034】
1 アンカー固定要素、3 頭部、4,73 凹部、5 受け部、6 ロッド、7 加圧部材、8 固着部材、51,71,81 上端部、52,72,82 底端部、53 ボア、54 開口部、55 座部、56,73 U字型凹部、57 脚部、59 雌ねじ、74 環状凹部、75,86 貫通孔、77 鍔部、83 ねじ部、84 円筒型突起部、84 円筒部、85 部分、85 円錐部、87 係合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18