特許第6208983号(P6208983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208983
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】深礎工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 5/10 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   E21D5/10
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-117524(P2013-117524)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-234658(P2014-234658A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 智明
(72)【発明者】
【氏名】我妻 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】下川 卓思
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3156774(JP,U)
【文献】 特開平02−200927(JP,A)
【文献】 実開平06−067540(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 5/00−5/12
E02D 17/08
E04G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に所定径の立坑を掘り、その立坑の壁面に沿って複数のライナープレートを環状に組み、前記ライナープレートと地山との間にできる空隙に裏込めを充填することにより支持壁体を構成し、その支持壁体で地山を土留めしつつ更に地山を掘り進めて行く深礎工法において、
前記支持壁体を構成するライナープレートの下端に、新たなライナープレートを継ぎ足す際に、
新たに設置したライナープレートと前記地山との間にできる空隙の開口を閉塞し、
棒状のライナープレート補強器具の一端を、前記新たに継ぎ足したライナープレートに係合させるとともに、前記ライナープレート補強器具の他端を、前記支持壁体、前記新たに継ぎ足したライナープレートと略対向する部位係合させることにより、前記新たに継ぎ足したライナープレートの剛性を補い、
その後、前記空隙に前記裏込めを充填するようにしたことを特徴とする深礎工法。
【請求項2】
前記ライナープレートとして、互いを連結するためのボルト通し孔が形成されたものを用いると共に、前記ライナープレート補強器具として、少なくとも一端に凸部又は凹部を有しているものを用い、
前記凸部を前記ボルト通し孔に嵌合させる、または、前記ボルト通し孔に通されたボルトを前記凹部に嵌合させることにより、前記ライナープレート補強器具の一端を前記ライナープレートに係合させることを特徴とする請求項1に記載の深礎工法。
【請求項3】
前記ライナープレート補強器具として、第1の管と、前記第1の管の中に挿入される第2の管と、を備え、前記第2の管を、前記第1の管に対し移動させることにより、長さを調節することが可能に構成したものを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の深礎工法。
【請求項4】
地山に所定径の立坑を掘り、その立坑の壁面に沿って複数のライナープレートを環状に組み、前記ライナープレートと地山との間にできる空隙に裏込めを充填することにより支持壁体を構成し、その支持壁体で地山を土留めしつつ更に地山を掘り進めて行く深礎工法において、
前記支持壁体を構成するライナープレートの下端に、新たなライナープレートを継ぎ足す際に、
新たに設置したライナープレートと前記地山との間にできる空隙の開口を閉塞し、
ライナープレート補強器具の下部を、前記新たに継ぎ足したライナープレートに固定するとともに、前記ライナープレート補強器具の上部を、前記支持壁体の、前記新たに継ぎ足したライナープレートの上方に位置する部位にそれぞれ固定することにより、前記新たに継ぎ足したライナープレートの剛性を補い、
その後、前記空隙に前記裏込めを充填するようにしたことを特徴とする深礎工法。
【請求項5】
前記ライナープレート補強器具として、棒状の部材と、複数の筒状の部材と、で構成されたものを用い、
前記筒状の部材を、前記新たに継ぎ足したライナープレートと、前記支持壁体の、前記新たに継ぎ足したライナープレートの上方に位置する部位とに、上下方向に開口するようそれぞれ取り付け、
前記筒状の部材に前記棒状の部材を通すことにより、前記ライナープレート補強器具を前記新たに継ぎ足したライナープレートと前記支持壁体とにそれぞれ固定することを特徴とする請求項に記載の深礎工法。
【請求項6】
前記新たに継ぎ足したライナープレートの端部に、板状の裏込め漏出防止器具を取り付けることにより、前記新たに継ぎ足したライナープレートと前記地山との間にできる空隙の開口を閉塞することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の深礎工法。
【請求項7】
前記裏込め漏出防止器具として、前記新たに継ぎ足したライナープレートの鉛直方向の長さと略同じ長さの辺を持つ矩形板状をなし、前記ライナープレートの側端部に固定するためのボルト通し孔が形成されているものを用い、
前記辺が前記地山の壁面に沿うように前記裏込め漏出防止器具を取り付けることにより、前記空隙の開口のうち、前記新たに継ぎ足したライナープレートの側端部と前記地山との間にできる部分を閉塞することを特徴とする請求項に記載の深礎工法。
【請求項8】
前記裏込め漏出防止器具を取り付ける際に、前記裏込め漏出防止器具と前記地山との間に収縮性を有する部材を挟みこむことを特徴とする請求項7に記載の深礎工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナープレートを用いた深礎工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の杭基礎等を施工するための立坑を構築する方法の一つに、ライナープレートを用いた深礎工法がある。
深礎工法の一般的な流れは、地山を人の手や小型の機械で掘削する、地山の壁面に沿ってライナープレートを環状に組む、ライナープレートと地山との間にできる空隙に裏込めを注入して土留めする、という一連の作業を、構築したい立坑の深さに応じて繰り返すというものである(特許文献1参照)。
深礎工法は、敷地が狭くても使えるため、駅構内(例えばホーム上)等の鉄道営業線に近接した箇所での施工にも用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−106443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライナープレートは、湾曲した薄い矩形の鋼板に、互いを繋ぎ合わせるためのフランジを形成しただけの簡素な造りの部材であるため、環状に組んだ状態で裏込めを行わないと、裏込めの注入圧に負けて変形したり、注入した裏込めがライナープレートの側端部から漏出したりしてしまう。このため、裏込めは、ライナープレートを少なくとも1段分、環状に組んでから行わなければならない。
一方、施工箇所が鉄道営業線に近接している場合には、万が一作業中に地山が崩れて列車の運行に影響してしまうのを防ぐため、列車が運行されない夜間に施工を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、構築しようとする立坑の断面径が大きい場合、掘削から裏込めまでの一連の作業を一晩だけで終えることは、たとえ一段分であっても極めて困難であった。このため、従来、鉄道営業線に近接した箇所に深礎工法で立坑を施工する場合には、1晩目に地山の掘削を行い、それを土嚢で埋め戻して作業を一旦中断し、2晩目に土嚢を取り除き、ライナープレートの取り付け、裏込めを行うようにしていた。
つまり、従来の深礎工法は、鉄道営業線に近接した箇所で用いる場合に、土嚢による立坑の埋め戻しおよび土嚢の撤去という工程が必要になるため、他の箇所で施工する場合に比べて工期が長くなるだけでなく、工事費も増加してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、ライナープレートを用いた深礎工法において、鉄道営業線に近接した箇所で施工する際の、工期の延長および工事費の増加を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、
地山に所定径の立坑を掘り、その立坑の壁面に沿って複数のライナープレートを環状に組み、前記ライナープレートと地山との間にできる空隙に裏込めを充填することにより支持壁体を構成し、その支持壁体で地山を土留めしつつ更に地山を掘り進めて行く深礎工法において、
前記支持壁体を構成するライナープレートの下端に、新たなライナープレートを継ぎ足す際に、
新たに設置したライナープレートと前記地山との間にできる空隙の開口を閉塞し、
棒状のライナープレート補強器具の一端を、前記新たに継ぎ足したライナープレートに係合させるとともに、前記ライナープレート補強器具の他端を、前記支持壁体、前記新たに継ぎ足したライナープレートと略対向する部位係合させることにより、前記新たに継ぎ足したライナープレートの剛性を補い、
その後、前記空隙に前記裏込めを充填するようにしている。
【0008】
このようにすれば、地山にしっかりと固定された支持壁体と新たに継ぎ足したライナープレートとに跨って取り付けられるライナープレート補強器具が、環状に組まれる前の剛性の低いライナープレートを、環状に組まれたときと同程度に変形しにくくするとともに、地山から離れる方向に移動しないように押さえつける。このため、ライナープレートが環状に繋がっていない状態であっても裏込めによる土留めを行うことができ、ライナープレートを環状に組み、裏込めを行うだけの作業時間を一度に確保できない場合であっても、作業を中断する際の土嚢による埋め戻し、および作業を再開する際の土嚢の撤去の工程が不要となる。
【0009】
また、ライナープレート補強器具が、新たに継ぎ足したライナープレートと、支持壁体とに架け渡される突っ張り棒として機能するので、新たに継ぎ足したライナープレートの剛性をより強力に補うことができる。また、ライナープレート補強器具を取り付けるための更なる部材を必要としないので、取り付け作業を容易に行うことができる。
【0010】
また、望ましくは、上記発明において、前記ライナープレートとして、互いを連結するためのボルト通し孔が形成されたものを用いると共に、前記ライナープレート補強器具として、少なくとも一端に凸部又は凹部を有しているものを用い、前記凸部を前記ボルト通し孔に嵌合させる、または、前記ボルト通し孔に通されたボルトを前記凹部に嵌合させることにより、前記ライナープレート補強器具の一端を前記ライナープレートに係合させるようにすると良い。
このようにすれば、ライナープレート補強器具の少なくとも一端が支持壁体またはライナープレートに強固に係合するので、ライナープレートに裏込めの注入圧が作用した際などに、ライナープレート補強器具がずれ落ちてしまうのを防ぐことができる。また、元々あるボルト通し孔を利用して係合させるため、ライナープレートの設計変更が不要である。
【0011】
また、望ましくは、上記発明において、前記ライナープレート補強器具として、第1の管と、前記第1の管の中に挿入される第2の管と、を備え、前記第2の管を、前記第1の管に対し移動させることにより、長さを調節することが可能に構成したものを用いるようにすると良い。
このようにすれば、1本のライナープレート補強器具を、様々な径の立坑の構築に使用することができる。また、使用しないときには縮めておくことで広い作業空間を確保することができる。
【0012】
また、発明
地山に所定径の立坑を掘り、その立坑の壁面に沿って複数のライナープレートを環状に組み、前記ライナープレートと地山との間にできる空隙に裏込めを充填することにより支持壁体を構成し、その支持壁体で地山を土留めしつつ更に地山を掘り進めて行く深礎工法において、
前記支持壁体を構成するライナープレートの下端に、新たなライナープレートを継ぎ足す際に、
新たに設置したライナープレートと前記地山との間にできる空隙の開口を閉塞し、
イナープレート補強器具の下部を、前記新たに継ぎ足したライナープレートに固定するとともに、前記ライナープレート補強器具の上部を、前記支持壁体の、前記新たに継ぎ足したライナープレートの上方に位置する部位にそれぞれ固定することにより、前記新たに継ぎ足したライナープレートの剛性を補い、
その後、前記空隙に前記裏込めを充填するようにしたことを特徴とする
このようにすれば、ライナープレート補強器具が立坑の壁面に沿って取り付けられることになるので、広い作業空間を確保することができ、個々の作業を容易に行うことができる。
【0013】
また、望ましくは、上記発明において、前記ライナープレート補強器具として、棒状の部材と、複数の筒状の部材と、で構成されたものを用い、前記筒状の部材を、前記新たに継ぎ足したライナープレートと、前記支持壁体の、前記新たに継ぎ足したライナープレートの上方に位置する部位とに、上下方向に開口するようそれぞれ取り付け、前記筒状の部材に前記棒状の部材を通すことにより、前記ライナープレート補強器具を前記新たに継ぎ足したライナープレートと前記支持壁体とにそれぞれ固定するようにすると良い。
このようにすれば、ライナープレートを継ぎ足す際に筒状の部材を取り付け、棒状の部材を下方に移動させるだけで、ライナープレート補強器具を新たに継ぎ足したライナープレートへ固定することができ、ライナープレート補強器具の取り付け作業が容易になる。また、既に取り付けられている筒状の部材の位置により、筒状の部材の取り付け位置は自ずと決まるので、作業者による取り付け状態のばらつきも生じない。
【0014】
また、望ましくは、上記発明において、前記新たに継ぎ足したライナープレートの端部に、板状の裏込め漏出防止器具を取り付けることにより、前記新たに継ぎ足したライナープレートと前記地山との間にできる空隙の開口を閉塞するようにすると良い。
このようにすれば、ライナープレートの側端部と地山との間にできる開口を閉塞するために土砂を高く盛ったり、土嚢を積んだりする必要が無く、裏込めを注入する際の作業が容易になる。また、裏込めが固化した後は取り外して、これから取り付ける下の段のプレート1の裏込めに再利用することができる。
【0015】
また、望ましくは、上記発明において、前記裏込め漏出防止器具として、前記新たに継ぎ足したライナープレートの鉛直方向の長さと略同じ長さの辺を持つ矩形板状をなし、前記ライナープレートの側端部に固定するためのボルト通し孔が形成されているものを用い、前記辺が前記地山の壁面に沿うように前記裏込め漏出防止器具を取り付けることにより、前記空隙の開口のうち、前記新たに継ぎ足したライナープレートの側端部と前記地山との間にできる部分を閉塞するようにすると良い。
このようにすれば、継ぎ足したライナープレートの鉛直方向の長さと略同じ長さに形成される、新たに継ぎ足したライナープレートの側端部と前記地山との間にできる空隙の開口を、裏込め漏出防止器具で確実に閉塞し、継ぎ足したライナープレートの下端部と地山との間にできる空隙の開口は従来どおり土砂で閉塞すればいいので、開口の閉塞作業を容易に行うことができる。
【0016】
また、望ましくは、上記発明において、前記裏込め漏出防止器具を取り付ける際に、前記裏込め漏出防止器具と前記地山との間に収縮性を有する部材を挟みこむようにすると良い。
このようにすれば、地山に礫などが含まれることにより、地山の壁面の凹凸が大きすぎる、或いは裏込め漏出防止器具を地山に差し込むことができない場合であっても、挟み込まれる部材が礫によってできる凹凸に応じて収縮するので、確実に開口を閉塞することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ライナープレートを用いた深礎工法において、鉄道営業線に近接した箇所で施工する際の、工期の延長および工事費の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態で用いるライナープレートの斜視図である。
図2】同実施形態で用いる裏込め漏出防止器具の斜視図である。
図3】同実施形態で用いるライナープレート補強器具の側面図である。
図4】同実施形態の深礎工法のフローチャートである。
図5】(a)は図2の裏込め漏出防止器具のみを用いてライナープレートと地山との間の空隙を閉塞した状態を示した図であり、(b)は図2の裏込め漏出防止器具と収縮性を有する部材を用いてライナープレートと地山との間の空隙を閉塞した状態を示した図である。
図6図3のライナープレート補強器具を用いてライナープレートを補強した状態を立坑の側方から示した図である。
図7図3のライナープレート補強器具を用いてライナープレートを補強した状態を立坑の上方から示した図である。
図8】本発明の第2実施形態で用いるライナープレート補強器具の斜視図である。
図9】(a)は図8のライナープレート補強器具を用いてライナープレートを補強した状態を示した図であり、(b)〜(d)は図8のライナープレート補強器具を移設する方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。
【0020】
〔使用器具〕
まず、本実施形態の深礎工法で用いる各種器具について説明する。本実施形態では、立坑内に筒状に組まれるライナープレート(以下、プレート1)、裏込め漏出防止器具(以下、漏出防止器具2)、ストラット3等を用いる。
【0021】
プレート1は、従来用いられているもので、図1に示すように、本体11、本体11の両長辺に設けられた横フランジ12、本体11の両短辺に設けられた縦フランジ13からなる。
【0022】
本体11は、矩形の鋼板を長辺が整数分の1(例えば4分の1)の円弧となるように湾曲させたものであり、短辺に沿った切断面は波形をしている。また、本体11の中央付近には、裏込めの注入口11aが形成されている。
横フランジ12は、本体11の長辺に沿って、長辺を円弧とする円の中心側に向かうように形成されている。また、横フランジ12には、複数のボルト通し孔12aが所定間隔で形成されている。
縦フランジ13は、帯状の鋼板の長辺を、本体11の短辺に、突出方向が横フランジ12と同じになるよう溶接したものである。また、縦フランジ13には、複数のボルト通し孔13aが所定間隔で形成されている。
【0023】
本実施形態で用いるプレート1は、縦フランジ13同士をボルトとナットで連結していくことにより、4枚で直径2mのプレート筒状体Rnを組むことができるようになっている。そして、このプレート筒状体Rnの横フランジ12とプレート1の横フランジ12とをボルトとナットで連結していくことにより、プレート筒状体Rnを円筒状に延ばしていくことができる。
【0024】
漏出防止器具2は、図2に示すように、長方形の鋼板からなり、長辺の長さは、プレート1の縦フランジ13の長さとほぼ同じになっている。また、漏出防止器具2には、その長辺に対して垂直に伸びる長孔2aが、長辺に沿って、縦フランジ13のボルト通し孔13aと同じ間隔で複数形成されている。
【0025】
ストラット3は、本実施形態におけるライナープレート補強器具であり、図3に示すように、本体31、本体31の一端に設けられた第1当接部32、本体31の他端に設けられた第2当接部33からなる。
【0026】
本体31は、内側管311、ねじ管312、外側管313からなる。内側管313は、ねじ管312にスライド可能に挿入されている。また、ねじ管312および内側管313には、孔312a,313aがそれぞれ設けられており、孔312aと孔313aを一致させたところで孔312aと孔313aを貫くように棒状のストッパー34を挿通することにより、内側管313をねじ管312に固定できるようになっている。また、外側管311の内周面とねじ管312の外周面には、互いに螺合可能なねじがそれぞれ切られており、ねじ管312は、外側管311に螺合することで、外側管311に回動可能に挿入されている。また、ねじ管312には、ねじ管312の回転を容易にするとともに、ねじ管312の回転を規制することが可能な折り畳み式のハンドル312bが設けられている。本体31は、このような構成により、プレート筒状体Rnの直径を超える所望の長さに伸ばし、その状態で固定することが可能となっている。
【0027】
第1当接部32および第2当接部33は、半球状に形成され、本体31の中心を通り本体31の伸縮方向に延びる直線を軸として、本体31に対し回転可能となっている。第1当接部32には、プレート1のボルト通し孔12aに嵌合させるための凸部32aが形成され、第2当接部33には、プレート1のボルト通し孔12aに嵌合させるための凸部33a、およびプレート1を固定するボルトが嵌合するための凹部33bがそれぞれ形成されている。
【0028】
〔施工方法〕
次に、上記器具を用いた本実施形態の深礎工法による、場所打ちコンクリート杭(深礎杭)の施工の流れについて説明する。図4は、施工の流れを示すフローチャートである。
【0029】
(1段目支持壁体構成工程S1)
まず、掘削予定箇所の周囲の地面にH形鋼等の鋼材で枠(図示省略)を組む。そして、組んだ枠の内側を、人の手または小型の機械を用いて、プレート筒状体の直径(2m)より一回り大きな円形に、プレート1の短辺の長さを超える深さ(50cm超)まで掘削する。そして、地上において4枚のプレート1を円環状に連結し、一段目のプレート筒状体R1を組み立てる。そして、組み立てた1段目のプレート筒状体R1を、掘削した穴の中に載置し、位置を微調整するとともに、1段目のプレート筒状体R1上端の横フランジ12の水平をとる。1段目のプレート筒状体R1の位置が決定したら、地面に組んだ枠に1段目のプレート筒状体R1を金具等(図示省略)で固定する。そして、1段目のプレート筒状体R1の下端を土砂で埋め戻し、1段目のプレート筒状体R1と地山Nとの間にできる空隙Sに地上からモルタルMを流し込む。このモルタルMが固まると、1段目のプレート筒状体R1が地山Nに完全に固定される。すなわち、プレート筒状体R1とモルタルMとにより支持壁体W1(図6参照)が構成される。
【0030】
(2段目プレート半周継ぎ足し工程S2)
1段目のプレート筒状体R1を地山Nに設置した後は、立坑底部の地山Nを、プレート筒状体R1より一回り大きい直径の半円状(2m超)に、プレート1の短辺の長さを超える深さ(50cm超)まで掘削し、1段目のプレート筒状体R1の下側の横フランジ(下端)を半周分露出させる。そして、露出させた横フランジ12と2段目のプレート1の横フランジを接合し、ボルトとナットで連結する。2段目のプレート1を1枚連結したら、2段目のプレート1をもう1枚、既に連結した2段目のプレート1に隣接するように、既に連結したプレート1と同様にして連結する。こうして、1段目の支持壁体W1を構成するプレート1の下端に、2枚のプレート1が半周分だけ継ぎ足される。
【0031】
(漏出防止工程S3)
1段目のプレート筒状体R1の下端に2段目のプレート1を継ぎ足した後は、1段目のプレート筒状体R1に継ぎ足したプレート1と地山Nとの間にできる空隙Sの開口を閉塞する。具体的には、施工者から見て右側に取り付けた2段目のプレート1の右端と、施工者から見て左側に取り付けた2段目のプレート1の左端に、漏出防止器具2をそれぞれ配置する。そして、漏出防止器具2の長孔2aと2段目のプレート1の縦フランジ13のボルト通し孔13aとにボルトを通し、ナットを軽く締めることにより、漏出防止器具2を2段目のプレート1に仮止めする。
【0032】
漏出防止器具2を仮止めした後は、漏出防止器具2を地山Nの方向にスライドさせていく。ここで、もし、地山Nが砂や粘性土である場合には、図5(a)に示すように、漏出防止器具2の前端部が地山Nにめり込むまでスライドさせる。そして、地山Nと漏出防止器具2との間に隙間が無いことを確認したら、ボルトとナットを強く締めて漏出防止器具2を2段目のプレート1に固定する。その後、2段目のプレート1の下端を土砂で埋め戻す。すると、2段目のプレート1と地山Nとの間の空隙Sの開口は、上方の1段目の支持壁体W1を構成しているモルタルMと、左右両側方の漏出防止器具2と、下方の土砂とによって閉塞される。
【0033】
一方、地山Nに礫等が含まれ、漏出防止器具2の前端部を地山Nにめり込ませることができない場合には、地山Nと漏出防止器具2との間に収縮性を有する部材を挟み込むようにする。例えば、図5(b)に示すように、エアバッグAを挟み込み、エアバッグAに空気を送り込んで膨らませることにより空隙Sの開口を閉塞する。エアバッグAを用いても空隙Sの開口を閉塞しきれない場合は、エアバッグAと地山Nとの間に更にスポンジ等を挟みこんで閉塞するようにする。
【0034】
(プレート補強工程S4)
2段目のプレート1と地山Nとの間にできる空隙の開口を閉塞した後は、1段目のプレート筒状体R1に取り付けた2段目のプレート1の補強を行う。本実施形態では、ストラット3を、1段目のプレート筒状体R1と、1段目のプレート筒状体R1に取り付けた2段目のプレート1とに跨るように取り付けることにより補強する。具体的には、まず、ストラット3の内側管313を、ねじ管312に対し、ストラット3が所定長さになるまでスライドさせ、ねじ管312の孔312aと内側管313の孔313aとにストッパー34を差し込んで、内側管313をねじ管312に固定する。そして、図6に示すように、第1当接部32にある凸部32aを、2枚取り付けた2段目のプレート1のうち、一方のプレート1の下側の横フランジ12に形成されたボルト通し孔12aに嵌合させる。そして、第2当接部33の凸部33aを、1段目のプレート筒状体R1の下側の横フランジ12に形成されたボルト通し孔12aのうち、立坑の中心を挟んで第1当接部32と略反対側にあるボルト通し孔12aに嵌合させる。
【0035】
ストラット3の両凸部を嵌合させた後は、ねじ管312を、外側管311に対して回転させ、ストラット3の長さを徐々に伸ばしていく。このとき、内側管313もねじ管312とともに回転するが、内側管313の先端に設けられた当接部33は、内側管313に対し回転可能なので、ボルト通し孔との嵌合状態が保たれる。ストラット3がある程度伸びてくると、ストラット3が2段目のプレート1を地山N側へ押圧する力が作用するようになる。こうして、2段目のプレート1のうち一方のプレート1の剛性が補われる。
【0036】
2段目のプレート1のうち一方の補強を行った後は、他方のプレート1の補強を行う。具体的には、既に設置したストラット3とは別のストラット3を、2枚取り付けた2段目プレート1のうち他方のプレート1と1段目のプレート筒状体R1の間に設置する。設置の仕方は1本目と同様である。すると、立坑の中を上から見たときに、両ストラット3が、図6に示すように、互いに交差し、十字をなすように配置される。このとき、両ストラット3の第1当接部32の当接位置を、2段目のプレート1同士の連結部Cから第1当接部32までの距離aと、第1当接部32から漏出防止器具2までの距離bとの比が2:1程度になるように、2段目のプレート1の中心部よりも漏出防止器具2の方向にそれぞれずらすと、2段目のプレート1の剛性をより効果的に補うことができる。
【0037】
(裏込め工程S5)
2段目のプレート1の補強を行った後は、2段目のプレート1の注入口11aから、2段目のプレート1と地山Nとの間にできる空隙Sにモルタル(裏込め)を注入する。このとき、2段目のプレート1には、モルタルの注入圧によって強い力が加わるが、ストラット3によって剛性が高められているので、2段目のプレート1の変形が防止される。また、前述したように、2段目のプレート1と地山Nとの間の空隙Sの開口は閉塞されているので、注入されたモルタルMは漏れ出すこと無く空隙Sに充填されていく。空隙Sに充填されたモルタルMが固まったら、ストラット3と漏出防止器具2を取り外す。ストラット3を取り外した後は、立坑内を広く使うことができるので、これ以降の作業が容易になる。
【0038】
裏込め工程S5で充填されたモルタルMが固まると、2段目の支持壁体W2が半周分だけ構成され、その周囲の地山Nが土留めされる。また、これから2段目のプレート1を取り付けようとする箇所は、この時点では、地山Nが掘削されずにそのまま残っているので、施工現場をこの状態で長時間放置しても地山Nが崩れることは無い。このため、ここで、列車の運行が再開され、作業を中断しなければならなくなっても、土嚢による埋め戻しを行う必要がない。よって、翌晩、土嚢の撤去作業を経ずに次の工程に速やかに移ることができる。
【0039】
(2段目プレート全周継ぎ足し工程S6)
漏出防止器具2とストラット3を取り外した後は、立坑底部の地山Nのうち、2段目プレート半周継ぎ足し工程S2において掘削せずに残しておいた部分を掘削し、埋もれていた残り半周の1段目のプレート筒状体R1の下側の横フランジ12を露出させる。そして、露出させた横フランジ12に、残り2枚の2段目のプレート1の横フランジ12をそれぞれ接合し、ボルトとナットで結合すると、1段目のプレート筒状体R1の下端に2段目のプレート筒状体R2が組まれた状態となる。
【0040】
(裏込め工程S7)
2段目のプレート筒状体R2を組んだ後は、後から取り付けた2段目のプレート1の下端を土砂で埋め戻し、2段目のプレート筒状体R2と地山Nとの間にできる空隙SにモルタルMを注入する。環状に連結された2段目のプレート筒状体R1は、モルタルMの注入圧に負けない程度の剛性を有するものとなっており、下端が埋め戻された2段目の支持壁体W1と地山Nとの間に形成される空隙Sの開口は既に閉塞されているので、この工程においては、漏出防止器具2とストラット3は不要である。注入したモルタルMが固まると、2段目の支持壁体W2が構成され、この周囲の地山Nが土留めされる。
【0041】
3段目以降の支持壁体W3〜Wnは、上述してきた2段目の支持壁体W2を構成するための各工程(S2〜S7)と同様の工程を繰り返すことで構成することができる。
n(n=3,4・・)段目のプレート1を半周分継ぎ足した状態でモルタルM注入を行う際は、n−1段目のプレート1に裏込めを行った際に、n−1段目のプレート1に取り付けた漏出防止器具2、およびn−1段目のプレート1に係合させたストラット3を再度用いる。
【0042】
(鉄筋組み工程S8,コンクリート打設工程S9)
n段目の支持壁体Wnが構成されたら、漏出防止器具2や、ストラット3、その他掘削に使用した器具を地上に運び出し、従来と同様の方法で立坑内に鉄筋(図示省略)を組む。そして、立坑内にコンクリートを充填する。以上の各工程を経て深礎杭(図示省略)が構築される。
【0043】
このように、本実施形態では、支持壁体Wnを構成するプレート1の下端に、新たなプレート1を継ぎ足す際に、新たに設置したプレート1と地山Nとの間にできる空隙Sの開口を閉塞し、支持壁体Wnと、新たに継ぎ足したプレート1とに跨るようにストラット3(ライナープレート補強器具)を取り付けることにより、新たに継ぎ足したプレート1の剛性を補い、その後、空隙SにモルタルM(裏込め)を充填するようにしたので、地山にしっかりと固定された支持壁体Wnと新たに継ぎ足したプレート1とに跨って取り付けられるストラット3が、環状に組まれる前の剛性の低いプレート1を、環状に組まれたときと同程度に変形しにくくするとともに、地山Nから離れる方向に移動しないように押さえつける。このため、プレート1が環状に繋がっていない状態であってもモルタルMによる土留めを行うことができ、プレート1を環状に組み、裏込めを行うだけの作業時間を一度に確保できない場合であっても、作業を中断する際の土嚢による埋め戻し、および作業を再開する際の土嚢の撤去の工程が不要となる。
従って、プレート1を用いた深礎工法において、鉄道営業線に近接した箇所で施工する際の、工期の延長および工事費の増加を抑えることができる。
【0044】
また、ライナープレート補強器具としてストラット3(棒状のもの)を用い、ストラット3の第1当接部32(一端)を、新たに継ぎ足したプレート1に係合させるとともに、ストラット3の第2当接部33(他端)を、支持壁体Wnの、新たに継ぎ足したプレート1と略対向する部位に係合させることにより、新たに継ぎ足したプレート1の剛性を補うようにしたので、ストラット3が、新たに継ぎ足したプレート1と、支持壁体Wnとに架け渡される突っ張り棒として機能するので、新たに継ぎ足したプレート1の剛性をより強力に補うことができる。また、ストラット3を取り付けるための更なる部材を必要としないので、取り付け作業を容易に行うことができる。
【0045】
また、プレート1として、互いを連結するためのボルト通し孔12a,13aが形成されたものを用いると共に、ストラット3として、少なくとも一端に凸部32a,33a又は凹部33bを有しているものを用い、凸部32a,33aをボルト通し孔12a,13aに嵌合させる、または、ボルト通し孔12a,13aに通されたボルトを凹部33bに嵌合させることにより、ストラット3の一端をプレート1に係合させるようにしたので、ストラット3の少なくとも一端が支持壁体Wnまたはプレート1に強固に係合するので、プレート1にモルタルMの注入圧が作用した際などに、ストラット3がずれ落ちてしまうのを防ぐことができる。また、元々あるボルト通し孔12a,13aを利用して係合させるため、プレート1の設計変更が不要である。
【0046】
また、ストラット3として、外側管311(第1の管)と、外側管311の中に挿入されるねじ管312(第2の管)、または、ねじ管312(第1の管)と、ねじ管312の中に挿入される内側管313(第2の管)と、を備え、ねじ管312を、外側管311に対し回転(移動)させる、または内側管313を、ねじ管312に対しスライド(移動)させることにより、長さを調節することが可能に構成したものを用いるようにしたので、1本のストラット3を、様々な径の立坑の構築に使用することができる。また、使用しないときには縮めておくことで広い作業空間を確保することができる。
【0047】
また、新たに継ぎ足したプレート1の縦フランジ13(端部)に、板状の裏込め漏出防止器具2を取り付けることにより、新たに継ぎ足したプレート1と地山Nとの間にできる空隙Sの開口を閉塞するようにしたので、プレート1の側端部と地山Nとの間にできる開口を閉塞するために土砂を高く盛ったり、土嚢を積んだりする必要が無く、モルタルMを注入する際の作業が容易になる。また、モルタルMが固化した後は取り外して、これから取り付ける下の段のプレート1の裏込めに再利用することができる。
【0048】
また、裏込め漏出防止器具2として、新たに継ぎ足したプレート1の鉛直方向の長さと略同じ長さの長辺を持つ矩形板状をなし、プレート1の側端部に固定するための長孔2aが形成されているものを用い、長辺が地山Nの壁面に沿うように裏込め漏出防止器具2を取り付けることにより、空隙Sの開口のうち、新たに継ぎ足したプレート1の側端部と地山Nとの間にできる部分を閉塞するようにしたので、継ぎ足したプレート1の鉛直方向の長さと略同じ長さとなる、新たに継ぎ足したプレート1の側端部と地山Nとの間にできる空隙Sの開口を裏込め漏出防止器具2で確実に閉塞し、継ぎ足したプレート1の下端部と地山との間にできる空隙Sの開口は従来どおり土砂で閉塞すればいいので、開口の閉塞作業を容易に行うことができる。
【0049】
また、裏込め漏出防止器具2を取り付ける際に、裏込め漏出防止器具2と地山Nとの間に収縮性を有する部材を挟みこむようにしたので、地山Nに礫などが含まれることにより、地山Nの壁面の凹凸が大きすぎる、或いは裏込め漏出防止器具2を地山に差し込むことができない場合であっても、挟み込まれる部材が礫によってできる凹凸に応じて収縮するので、確実に開口を閉塞することができる。
【0050】
なお、鉄道営業線が立坑の片側にしかない場合は、鉄道営業線が存在しない側の施工は昼間でも行うことができるので、例えば、夜間に鉄道営業線が存在する側の半周だけプレート1を組み、裏込めを終えておくことで、鉄道営業線が存在しない側の残り半周の設置を昼間に行うようにすることができる。そうすれば、2晩目が来る前に支持壁体の設置を1段分終え、2晩目の始まりから次の段の支持壁体設置に取り掛かることも可能となる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
ここでは、第1実施形態と相違する点のみ説明することとし、共通する点については説明を省略する。
【0052】
〔使用器具〕
まず、本実施形態の深礎工法で用いる器具について説明する。
本実施形態は、ライナープレート補強器具をストラット3から補強梁4に変更した点が第1実施形態と異なる。
補強梁4は、図8に示すように、H形鋼41(棒状の部材)、H形鋼41が通される複数の取付器具42(筒状の部材)等からなる。
【0053】
H形鋼41は、プレート1の高さ(短辺)の3,4倍程度(1.5〜2m程度)の長さで、人力で持ち上げることができる程度の太さとなっている。H形鋼41のウェブの所定箇所には、棒状のストッパー44を通すための孔41aが設けられている。
取付器具42は、角筒状の保持部421と、保持部421の外側壁面に形成された取付部422からなる。取付部422は、保持部421の開口を上下に向けたときに水平となるように形成されている。また、取付部422には、ボルト通し孔422aが形成されている。
【0054】
ストッパー44が通されると、H形鋼41の取付器具42に対する動きが規制され、H形鋼41のフランジと取付器具42の内壁との間に楔43を打つことにより、H形鋼41が取付器具42に固定されるようになっている。
【0055】
〔施工方法〕
次に、上記器具を用いた本実施形態の深礎工法による、深礎杭の施工の流れについて説明する。
第2実施形態は、ライナープレート補強器具を変更したことに伴い、2段目プレート半周継ぎ足し工程S2の一部と、プレート補強工程S4が第1実施形態と異なる。
【0056】
(2段目プレート半周継ぎ足し工程S2)
本実施形態では、1段目支持壁体構成工程S1の後、すなわち、立坑底部の地山Nをプレート1の高さ以上掘削し、露出させた1段目のプレート筒状体R1の下側の横フランジ12に2段目のプレート1を取り付ける際、取付器具42の取り付けを同時に行う。具体的には、1段目のプレート筒状体R1のフランジの下方に2段目のプレート1を配置する際、取付器具42を、その取付部422が1段目のプレート筒状体R1の下側の横フランジ12の上に重なるように配置する。そして、重なった取付部422、1段目のプレート筒状体R1の横フランジ12、2段目のプレート1の横フランジ12にボルトを通し、ナットで締めることにより、2段目のプレート1と取付器具42とを同時に1段目のプレート筒状体R1に取り付ける。同様にして各プレート1に2つずつ、合計4箇所に取り付けを行う。取り付けを行ったら漏出防止工程S3に進む。
【0057】
(プレート補強工程S4)
漏出防止工程S3の後、すなわち、2段目のプレート1に漏出防止器具2を取り付けた後は、取付器具42を、2段目のプレート1の下側の横フランジ12の上であって、1つ目の取付器具42の真下にも取り付ける。そして、H形鋼41を、取り付けた2つの取付器具42の保持部421に通す。そして、H形鋼の孔41aにストッパー44を通し、ストッパー44を保持部421の上端に当接させることで、H形鋼41の下方向への移動を規制する。そして、保持部421の内壁とH形鋼の、施工者側のフランジとの間に楔43を打ち、H形鋼41を1段目の支持壁体W1と2段目のプレート1とにそれぞれ固定する。この後、2段目プレート半周継ぎ足し工程S2で取り付けた残り3つの取付器具42の真下にも取付器具42を更に取り付け、H形鋼41を固定する。こうして、2段目のプレート1が4箇所で補強される。補強を終えたら、裏込め工程S5以降の工程を、第1実施形態と同様に進めていく。
【0058】
なお、本実施形態では、一度取り付けた補強梁4は、n段目の支持壁体Wnが構成されるまで取り外すことはないため、3段目以降のプレート1の補強は、2段目のプレート1の場合と異なる。例えば、図9(a)に示すように、4段目(n−1段目)の支持壁体W4が構成された状態では、まず、一番下の取付器具42を固定しているボルトとナットをはずし、図9(b)に示すように、5段目のプレート1を取り付けてから再度ボルトとナットを通し、締める。そして、図9(c)に示すように、5段目のプレート1の下側の横フランジ12の、補強梁4の真下の部位に取付器具42を取り付ける。そして、人の手等でH形鋼41を支持した状態で楔43およびストッパー44を引き抜く。そして、H形鋼41を下方にスライドさせ、5段目のプレート1に取り付けた取付器具42に通す。そして、再びストッパー44を差し込み、楔43を打つ。こうして、5段目(n段目)のプレート1が補強される。
【0059】
このように、本実施形態では、補強梁4(ライナープレート補強器具)の下部を、新たに継ぎ足したプレート1に固定するとともに、補強梁4の上部を、支持壁体Wnの、新たに継ぎ足したプレート1の上方に位置する部位にそれぞれ固定することにより、新たに継ぎ足したプレート1の剛性を補うようにしたので、第1実施形態と同様に、工期の延長および工事費の増加を抑えることができるのは勿論のこと、補強梁4が立坑の壁面に沿って取り付けられることになり、ストラット3を用いる第1実施形態よりも広い作業空間を確保することができ、個々の作業を容易に行うことができる。
【0060】
また、補強梁4として、H形鋼41(棒状の部材)と、複数の取付器具42(筒状の部材)と、で構成された補強梁4を用い、取付器具42を、新たに継ぎ足したプレート1と、支持壁体Wnの、新たに継ぎ足したプレート1の上方に位置する部位とに、上下方向に開口するようそれぞれ取り付け、取付器具42にH形鋼41を通すことにより、補強梁4を新たに継ぎ足したプレート1と支持壁体Wnとにそれぞれ固定するようにしたので、プレート1を継ぎ足す際に取付器具42を取り付け、H形鋼41を下方に移動させるだけで、補強梁4を新たに継ぎ足したプレート1へ固定することができ、補強梁4の取り付け作業が容易になる。また、既に取り付けられている取付器具42の位置により、新たな取付器具42の取り付け位置は自ずと決まるので、作業者による取り付け状態のばらつきも生じない。
【0061】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
ここでは、第1,第2実施形態と相違する点のみ説明することとし、共通する点については説明を省略する。
【0062】
〔使用器具〕
まず、第3実施形態の深礎工法で用いる器具について説明する。
第3実施形態は、裏込めを行う際にプレート1を補強する手段として、第1実施形態のストラット3と第2実施形態の補強梁4を併用するようにした点が第1,第2実施形態と異なる。
【0063】
〔施工方法〕
次に、上記器具を用いた本実施形態の深礎工法による、深礎杭の施工の流れについて説明する。
第3実施形態は、2種類のライナープレート補強器具を併用するようにしたことに伴い、2段目プレート半周継ぎ足し工程S2の一部と、プレート補強工程S4が第1,第2実施形態と異なる。
【0064】
(2段目プレート半周継ぎ足し工程S2)
第2実施形態では、各プレート1に2箇所ずつ、合計4箇所に補強梁4を設置したが、本実施形態では、一例として、各プレート1の漏出防止器具2が取り付けられている側の端部に1箇所ずつ、合計2箇所に設置する。取り付け方は第2実施形態と同様である。
【0065】
(プレート補強工程S4)
第2実施形態では、第1当接部32を注入口11aよりも漏出防止器具2側に寄せるようにストラット3を設置したが、本実施形態では、各プレート1の端部が既に補強梁4で補強されているので、第1当接部32を、第1実施形態よりもプレート1の連結部C側に近づけるようにストラット3を設置する。取り付け本数や取り付け方は第2実施形態と同様である。
【0066】
このように、本実施形態では、ストラット3と補強梁4とを併用したので、第1,第2実施形態と同様に、工期の延長および工事費の増加を抑えることができるのは勿論のこと、大型(例えば6枚で直径3m)の支持壁体Wnを組む際に、より効果的な補強を行うことができる。また、施工箇所の地質、施工しようとする深礎杭の大きさに応じて、より適した補強を行うことができる。更に、モルタルを注入しないときも補強梁4で補強するので、常にプレート1が補強された状態となり、安全性が高い。
【0067】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態では、鉄道営業線の近傍で施工する場合を想定して説明してきたが、道路の近傍等、一度に施工できる時間が短時間に限定されている工事全般に用いることができる。
【0068】
また、使用器具において、上記実施形態では、円形のプレート筒状体Rnを組むことのできるプレート1を用いたが、矩形、小判形等のプレート筒状体を組むことができるものを用いても良い。
また、上記実施形態では、漏出防止器具2と地山Nとの間にエアバッグやスポンジを挟み込むこととしたが、地山Nの凹凸に応じて収縮させることが可能なものであれば何でも良い。
【0069】
また、施工方法において、上記実施形態では、1段目のプレート筒状体R1の組み立てを掘削の後に行うようにしたが、掘削前に組み立てておいても、掘削と並行して組み立てるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、第2当接部33の凸部33aを、プレート筒状体R1の下側の横フランジ12のボルト通し孔12aに嵌合させるようにしたが、凹部33bを、プレート筒状体R1の上側の横フランジ12から突出するボルトと嵌合させるようにしてもよい。また、第1,第2当接部32,33を、凸部32a,33aや凹部33bが側方を向くように回転させ、プレート1の本体11の中央部などのボルト通し孔が形成されていない部位に当接させるようにしても良い。
また、上記実施形態では、プレート筒状体を半周分組み立てる(プレート1を2枚継ぎ足す)毎に裏込めを行ったが、4分の1周分を組み立てる(プレート1を1枚継ぎ足す)毎に裏込めを行うようにしても良い。
また、上記実施形態では、プレート補強工程S4を漏出防止工程S3の後にしたが、漏出防止工程S3の前としても良い。
また、第2実施形態では、2段目プレート半周継ぎ足し工程S2において上側の取付器具42を取り付け、プレート補強工程S4において下側の取付器具42を取り付けるようにしたが、2段目プレート半周継ぎ足し工程S2において上下とも取り付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 ライナープレート
2 裏込め漏出防止器具
3 ストラット(ライナープレート補強器具)
311 外側管(第1の管)
312 ねじ管(第1の管、第2の管)
313 内側管(第2の管)
4 補強梁(ライナープレート補強器具)
41 H形鋼(棒状の部材)
42 取付器具(筒状の部材)
A エアバッグ(空気で膨らませることが可能な袋)
N 地山
M モルタル(裏込め)
R1〜Rn プレート筒状体
S 空隙
W1〜Wn 支持壁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9