(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6208986
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】防錆フィルム
(51)【国際特許分類】
C23F 11/00 20060101AFI20170925BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20170925BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20170925BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20170925BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20170925BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20170925BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
C23F11/00 G
C08L31/04 S
B65D65/40 D
B65D85/00 P
B32B27/12
B32B27/18 E
B32B27/28 101
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-124466(P2013-124466)
(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公開番号】特開2015-987(P2015-987A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年4月26日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)頒布日:平成25年3月5日 刊行物名:製品チラシ「プライクリーン▲R▼PZ−500防錆タイプ」 公開者名:菱興プラスチック株式会社 公開された発明の内容:菱興プラスチック株式会社が、平成25年3月5日に製品チラシを頒布して、小見川明伸及び芝田淳が発明した防錆フィルムについて公開した。 (2)販売日:平成25年3月12日 販売した場所:スワロン株式会社(東京都千代田区神田須田町1−32 東京リアルビル4F) 公開者:菱興プラスチック株式会社 公開された発明の内容:菱興プラスチック株式会社が、スワロン株式会社に、小見川明伸及び芝田淳が発明した防錆フィルムを卸した。
(73)【特許権者】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】小見川 明伸
(72)【発明者】
【氏名】芝田 淳
【審査官】
宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−118529(JP,U)
【文献】
特開昭60−049078(JP,A)
【文献】
特開2002−225953(JP,A)
【文献】
特開2012−001799(JP,A)
【文献】
特開2010−111439(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0119788(US,A1)
【文献】
特開2005−139317(JP,A)
【文献】
特開平06−247473(JP,A)
【文献】
特開2003−081327(JP,A)
【文献】
特開2010−254350(JP,A)
【文献】
特開2013−173860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/00−11/18
C23F 14/00−17/00
B65D 65/00−65/46
B65D 85/00−85/28
B65D 85/575
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂層(A)及び樹脂層(B)を有し、
前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)の間に、網目構造を有する繊維状物(C)を有し、
前記樹脂層(A)は、防錆剤を含有し、前記樹脂層(A)は、少なくともエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、該エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量は、10重量%以下であることを特徴とする防錆フィルム。
【請求項2】
前記樹脂層(A)及び前記樹脂層(B)は、少なくともエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の防錆フィルム。
【請求項3】
前記繊維状物(C)は、網目の一辺の長さが30mm以下である網目構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の防錆フィルム。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂層(A)及び樹脂層(B)を有し、
前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)の間に、網目構造を有する繊維状物(C)を有し、
前記樹脂層(A)は、防錆剤を含有する防錆フィルムから構成され、
前記防錆フィルムの樹脂層(A)が内側となるように配置された金属部品包装用袋であって、前記樹脂層(A)は、少なくともエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、該エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量は、10重量%以下である、該金属部品包装用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属からなる機械部品や精密機械部品を包装し、保管、輸送する際に使用する防錆フィルムおよび防錆フィルムからなる金属部品用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属からなる機械部品や精密機械部品を保管、輸送する場合、錆の発生を抑制するため防錆剤を機械部品に直接吹きかける等の処理を行った後、フィルム等で包装しトレーやコンテナ等の梱包資材で保管、輸送する方法がとられていた。
通常の防錆剤を機械部品に直接吹きかける処理をする場合、機械部品に散布したり塗布する作業に手間がかかり、また、保管や輸送したあと機械部品を使用する際は、この防錆剤を除去する必要があり、除去するのに手間がかかるという問題があった。
そこで、例えば、特許文献1では、気化性防錆剤を含有するフィルム層を有する防錆フィルムと基材シートをサーマルラミネーションさせた防錆シートを使用することにより、機械部品等に直接防錆剤を散布することなく防錆効果を有する方法が提案されている。
しかしながら、機械部品には、エッジが立ったものや重量が重いものも多く、保管や輸送中の振動等によりシートが裂けてしまうことがあり、密閉性がなくなってしまうため機械部品に錆が発生してしまうという問題があるのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−230568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、金属からなる機械部品や精密機械部品の包装、保管及び輸送に好適に使用することができる防錆フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記問題に鑑み鋭意検討したところ、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂層(A)及び樹脂層(B)の間に、網目構造を有する繊維状物(C)を設けることで、金属からなる機械部品や精密機械部品を包装し、保管、輸送する際においてもフィルムが裂けることを抑制することができ、密閉性を向上させることができることを着想し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
[1]ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂層(A)及び樹脂層(B)を有し、
前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)の間に、網目構造を有する繊維状物(C)を有し、
前記樹脂層(A)は、防錆剤を含有することを特徴とする防錆フィルム。
[2]前記樹脂層(A)は、少なくともエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有することを特徴とする[1]に記載の防錆フィルム。
[3]前記樹脂層(A)及び前記樹脂層(B)は、少なくともエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有することを特徴とする[1]に記載の防錆フィルム。
[4]前記繊維状物(C)は、網目の一辺の長さが30mm以下である網目構造を有することを特徴とする[1]ないし[3]のいずれか1項に記載の防錆フィルム。
[5]ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂層(A)及び樹脂層(B)を有し、
前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)の間に、網目構造を有する繊維状物(C)を有し、
前記樹脂層(A)は、防錆剤を含有する防錆フィルムから構成され、
前記防錆フィルムの樹脂層(A)が内側となるように配置された金属部品包装用袋。
を、提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、金属からなる機械部品や精密機械部品等を保管、輸送する場合においても、フィルムの破損を抑制することができる。本発明の防錆フィルムは、特に、金属包装用防錆袋として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の防錆フィルムについて詳細に説明する。
【0009】
本発明の防錆フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂層(A)及び樹脂層(B)を有し、樹脂層(A)と樹脂層(B)の間に、網目構造を有する繊維状物(C)を有し、前記樹脂層(A)は、防錆剤を含有する構成を有する。
【0010】
樹脂層(A)及び樹脂層(B)
本発明における樹脂層(A)及び樹脂層(B)は、ポリオレフィン系樹脂を含む。ポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系単量体の単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体、α−オレフィンと共役ジエンまたは非共役ジエン等の多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸又は酢酸ビニル等との共重合体などがあげられ、例えば高密度、低密度または直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
樹脂層(A)及び樹脂層(B)は、これらポリオレフィン系樹脂を単独で、または2種以上のポリオレフィン系樹脂組を含んでいてもよい。
【0011】
上記ポリオレフィン系樹脂のうち、少なくとも樹脂層(A)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましい。少なくとも樹脂層(A)にエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用することにより、融着加工がよりしやすくなり、特に高周波ウェルダー加工方法を使用することも可能となる。
また、樹脂層(A)及び樹脂層(B)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましい。
このエチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量は、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましい。
酢酸ビニルの含有量を上記の範囲とすることにより、適度な強度と弾性を有するフィルムが得られ、更にはベタ付き感の少ないフィルムとすることができる。
【0012】
樹脂層(A)、樹脂層(B)は、必要に応じて他の樹脂や各種添加剤を含有することができる。このような樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。また、添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤及び着色剤等が挙げられる。
【0013】
また、樹脂層(A)と樹脂層(B)の厚みは、特に限定されないが、0.02mm〜0.5mmが好ましく、0.03mm〜0.4mmがより好ましく、0.05mm〜0.3mmが更に好ましい。
厚みを0.02mm以上とすることで、二次加工成形時の強度や成形時の穴あき等の発生を抑制することができる。また、0.5mm以下とすることで、二次加工する時の熱加工時間が短縮でき、加工工数の増加を抑制することができる。
【0014】
樹脂層(A)及び樹脂層(B)は、一般的に知られているTダイ押出し成形法等の押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の成形方法により、それぞれを樹脂層(A)及び樹脂層(B)からなるフィルムを調製することにより得ることができる。特に本発明においては押出し成形法を用いるのが適している。また、別の方法としては、後述するように、繊維状物(C)の表面に、樹脂層(A)及び樹脂層(B)を直接形成させることもできる。
尚、押出し成形の際には、樹脂層(A)及び樹脂層(B)を調製するのに用いる樹脂組成物のメルトフローレートは、1〜20g/10分、好ましくは、5〜15g/10分である。当該樹脂組成物のメルトフローレートが1g/10分以上であれば溶融粘度が高くなり過ぎることがなく押出加工性が良好であり、20g/10分以下であれば溶融粘度が低くなり過ぎることがなく流動性が良好で加工性に優れる。
【0015】
繊維状物(C)
本発明における繊維状物(C)は、網目構造を有している。
ここで網目構造は、所謂メッシュ状構造を含み、例えば、格子状、ハニカム状、丸孔や三角孔等の貫通孔が網目状に多数穿設された構造を包含する。
また、繊維状物(C)の材質は、必要とされる強度によって適宜選定することができ、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ガラス繊維、綿、ケプラー等から選択される。入手の容易さや、コスト面を考慮すると、ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
また、網目構造の網目の一辺の長さは30mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましく、20mm以下が更に好ましい。
また、実用上の点から網目の一辺の長さは1mm以上であることが好ましい。
網目の一辺の長さが、30mm以下であれば防錆フィルムの破損を抑制することができる。また、1mm以上であれば防錆フィルムの柔軟性が落ちることを抑制することができ、更にはサーマルラミネーション加工がより容易となる。
また、繊維状物の太さは100D〜3000Dが好ましく、150D〜2500Dがより好ましく、200D〜2000Dが更に好ましい。
繊維状物の太さを上記の範囲とすることで、所要の強度を有し、かつ柔軟性を損なわない性能を得ることができる。
この繊維状物(C)を樹脂層(A)と樹脂層(B)の間に配置させる方法は、特に限定されないが、生産の安定性や生産のし易さの点から、加圧ロールにより加圧させながらサーマルラミネーションする方法がより好ましい。そうすることで繊維状物(C)、樹脂層(A)、樹脂層(B)がより一体化したフィルムが得られる。
【0016】
防錆剤
本発明における防錆剤は、脂肪族酸または芳香族酸の各級アンモニウム塩の1種または複数種から選択されるものがある。具体的には、安息香酸アンモニウム(アンモニウム−ベンゾエート)、シクロヘキシルアンモニウム−ベンゾエート、シクロヘキシルアンモニウム−カーバメート、シクロヘキシルアンモニウム−ナイトライト、シクロヘキシルアンモニウム−カプリレート、シクロヘキシルアンモニウム−ラウレート、ジシクロヘキシルアンモニウム−ベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウム−カーバメート、イソプロピルアンモニウム−ナイトライト、イソプロピルアンモニウム−カプリレート、イソプロピルアンモニウム−ラウレート、イソプロピルアンモニウム−ベンゾエート、イソプロピルアンモニウム−カーバメート、ジイソプロピルアンモニウム−ナイトライト(DIPAN)、ジイソプロピルアンモニウム−カプリレート、ジイソプロピルアンモニウム−ラウレート、ジイソプロピルアンモニウム−ベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウム−カーバメート、ベンジルアンモニウム−ナイトライト、ベンジルアンモニウム−カプリレート、ベンジルアンモニウム−ラウレート、ベンジルアンモニウム−ベンゾエート、ベンジルアンモニウム−カーバメート、ジベンジルアンモニウム−ナイトライト、ジベンジルアンモニウム−カプリレート、ジベンジルアンモニウム−ラウレート、ジベンジルアンモニウム−ベンゾエート、ジベンジルアンモニウム−カーバメートが挙げられる。
樹脂層(A)における防錆剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量%に対して、0.2〜10重量%が好ましく、0.3〜8重量%がより好ましく、0.5〜6重量%以下が更に好ましい。
防錆剤の含有量を0.2重量%以上とすることで、ある程度の長期間での防錆剤効果を維持することができる。また、10重量%以下とすることで、樹脂層(A)に含まれるポリオレフィン系樹脂の物性を著しく低下させることなく防錆性能を付与することができる。
上記防錆剤を樹脂層(A)に含有させるには、該層に使用するポリオレフィン系樹脂のペレットに適当な混錬手段を用いて混合し、バンバリーミキサー、リボンブレンダー、ミキシングロールニーダー、2軸混錬機などの造粒装置を用いて予めマスターバッチ化し、所定の配合量でブレンドすることにより、フィルムを成形することができる。
本発明の防錆フィルムを使用して、金属部品を包装する場合、樹脂層(A)が包装する金属部品と接触するような方法で包装することで、防錆効果を得ることができる。
【0017】
防錆フィルム
本発明の防錆フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂層(A)及び樹脂層(B)を有し、樹脂層(A)と樹脂層(B)の間に、網目構造を有する繊維状物(C)を有するものであるが、樹脂層(A)と繊維状物(C)の間、及び/又は、樹脂層(B)と繊維状物(C)の間に、他の層を設けることもできる。このような層としては、樹脂層(A)及び又は樹脂層(B)と繊維状物(C)を接着する接着層(例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリウレタン、ポリアミド等)、などが挙げられる。
【0018】
本発明の防錆フィルムの製造方法としては、(1)樹脂層(A)、樹脂層(B)からなるフィルムを予め調製し、その後、樹脂層(A)、繊維状物(C)、樹脂層(B)を積層する方法、(2)繊維状物(C)の表面に樹脂層(A)、樹脂層(B)を直接形成させる方法が挙げられる。
(1)の方法の場合は、樹脂層(A)、樹脂層(B)からなるフィルムは、Tダイ押出し成形法等の押出し成形法、インフレーション成形法及びカレンダー成形法等の成形方法により調製することができるが、本発明においては押出し成形法が好適に用いられる。
また、繊維状物(C)を、樹脂層(A)からなるフィルムと樹脂層(B)からなるフィルムの間に配置させる方法は、特に限定されないが、生産の安定性や生産のし易さの点から、加圧ロールにより加圧させながらサーマルラミネーションする方法がより好ましい。そうすることで繊維状物(C)、樹脂層(A)、樹脂層(B)がより一体化したフィルムを得ることがきる。
(2)の方法の場合は、樹脂層(A)、樹脂層(B)を繊維状物(C)の表面に押出して加圧ロールによりラミネートする押し出しラミネート法を用いることができる。
【0019】
本発明のもう一つの態様は、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂層(A)及び樹脂層(B)を有し、樹脂層(A)と樹脂層(B)の間に網目構造を有する繊維状物(C)を有し、樹脂層(A)は防錆剤を含有している防錆フィルムから構成され、当該樹脂層(A)が内面側となるように配置された金属部品包装用袋である。
【0020】
この金属部品包装用袋は、周縁部の一部に開口部が設けられており、この開口部から包装しようとする金属部品を挿入したのち、この開口部を閉塞する。金属部品包装用袋の形状は、四角形、三角形、多角形、円形状、楕円形状など任意の形状とすることができ、非限定的例として、形状が四角形で、その一つの辺に開口部を設けた金属部品包装用袋が挙げられる。
【0021】
金属部品包装用袋は、例えば、本発明の防錆フィルムを所望のサイズに裁断し、(1)裁断した2枚の防錆フィルムを樹脂層(A)が内面側となるように重ね合わせ、あるいは、(2)裁断した1枚の防錆フィルムを樹脂層(A)が内面側となるように折り曲げて重ね合わせ、重ね合わせたシートにおいて開口部を設ける部分以外の周縁部を融着させ、開口部を閉塞することにより製造することができる。
融着方法としては、高周波ミシン、高周波ウェルダー、ヒートシールなどを用いることができる。
また、閉塞方法は、特に限定されないが、ビニシール(細い溝で勘合するシール方式)等を使用すると、高い密閉性と中の金属部品を取り出す時の作業性を両立させることができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
樹脂層(A)のポリオレフィン系樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル7%含有)を使用した。このエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して防錆剤(大洋液化ガス(株)製:ゼラスト)を5重量部添加してドライブレンドし、当該ブレンド品をインフレーション成形装置を用いて溶融成形し、厚さ0.1mmのフィルムを作製した。
樹脂層(B)のポリオレフィン系樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル7%含有)を使用し、当該共重合体をインフレーション成形装置を用いて溶融成形し、厚さ0.12mmのフィルムを作製した。
得られた樹脂層(A)からなるフィルムと樹脂層(B)からなるフィルムの間にポリエステル系樹脂の繊維状物(C)(網目間隔:20mm、太さ500D)を挟み、ロールの温度を100℃に設定し、サーマルラミネーションして本発明の防錆フィルムを作製した。
【0024】
[比較例1]
樹脂層(A)と樹脂層(B)の間に繊維状物(C)を挟まないこと以外は実施例1と同条件で防錆フィルムを作製した。
【0025】
[比較例2]
樹脂層(A)に防錆剤を含有させない以外は実施例1と同条件で防錆フィルムを作製した。
【0026】
[引き裂き強度]
JIS−L1096のシングルタング法に従い、試験用サンプルをダンベル型3号で作製し、引張速度200mm/分の条件で各サンプルの縦方向(MD)、横方向(TD)をそれぞれ測定し、評価は以下の基準で実施した。
○:引き裂き強度30以上
×:引き裂き強度30以下
【0027】
[防錆評価]
実施例1、比較例1においては防錆剤を含有する内層を内側にして包装袋を作製し、包装袋の中に錆び発生の評価を行うための金属部品を入れ、次に水道水を3cc加え、包装袋を密封し一週間放置した後、金属部品からの錆の発生有無を確認した。
評価は以下の基準で実施した。
○:錆びの発生無し
×:錆びの発生有り
【0028】
[評価結果]
得られたサンプルを使用し、引き裂き強度、防錆評価を実施した結果を表1に示す。
表1の結果より、実施例1はMD方向、TD方向いずれにおいても高い引き裂き強度を得ることができ、かつ防錆効果があることがわかった。
【0029】
【表1】