特許第6209009号(P6209009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209009
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】記録装置および記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   B41J2/01 205
   B41J2/01 209
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-155456(P2013-155456)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-24570(P2015-24570A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 豊
【審査官】 道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−195760(JP,A)
【文献】 特開2009−172927(JP,A)
【文献】 特開2012−045853(JP,A)
【文献】 特開2004−082397(JP,A)
【文献】 特開2005−074956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子が所定の配列方向に配列された記録ヘッドを用い、前記配列方向と交差する方向に前記記録ヘッドと記録媒体を相対移動させつつ、記録データに基づいて前記複数の記録素子を選択的に機能させることにより、前記記録媒体に画像を記録する記録装置であって、
前記複数の記録素子の中に機能不良の記録素子がある場合、該機能不良の記録素子に隣接する記録素子により、該機能不良の記録素子により記録されるべきデータを補完する補完手段と、
前記機能不良の記録素子の周辺の記録素子が記録する画像の記録濃度を判定する濃度判定手段と、
前記濃度判定手段によって判定される前記記録濃度に応じて、前記補完手段により前記機能不良の記録素子により記録されるべきデータを前記機能不良の記録素子の両側に隣接する記録素子により補完するか、または前記機能不良の記録素子の片側に隣接する記録素子により補完するかを選択する選択手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
複数の記録素子が所定の配列方向に配列された記録ヘッドを用い、前記配列方向と交差する方向に前記記録ヘッドと記録媒体を相対移動させつつ、記録データに基づいて前記複数の記録素子を選択的に機能させることにより、前記記録媒体に画像を記録する記録装置であって、
前記複数の記録素子の中に機能不良の記録素子がある場合、該機能不良の記録素子に隣接する記録素子により、該機能不良の記録素子により記録されるべきデータを補完する補完手段と、
前記機能不良の記録素子の周辺の記録素子が記録する画像の記録濃度を判定する濃度判定手段と、
前記濃度判定手段によって判定される前記記録濃度に応じて、前記補完手段により前記機能不良の記録素子により記録されるべきデータを前記機能不良の記録素子に隣接するどの記録素子により補完するかを選択する選択手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
前記選択手段は、前記濃度判定手段によって判定される前記記録濃度が第1の記録濃度のときに、前記機能不良の記録素子により記録されるべきデータを前記機能不良の記録素子の両側に隣接する記録素子による補完を選択し、前記濃度判定手段によって判定される前記記録濃度が前記第1の記録濃度よりも低い第2の記録濃度のときに、前記機能不良の記録素子により記録されるべきデータを前記機能不良の記録素子の片側に隣接する記録素子による補完を選択することを特徴とする請求項または請求項に記載の記録装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記濃度判定手段によって判定される前記記録濃度が前記第1の記録濃度よりも高い第3の記録濃度のときは、前記機能不良の記録素子により記録されるべきデータを前記機能不良の記録素子の両側に隣接するいずれの記録素子による補完もしないことを選択することを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録素子は、前記記録データに基づいて機能することにより前記記録媒体にインクを付与し、
前記濃度判定手段は、前記記録媒体の単位領域当たりに付与される前記インクの付与量に基づいて前記記録濃度を判定する
ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記濃度判定手段は、前記インクの種類または前記記録媒体の種類に基づいて、前記記録濃度を判定することを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録素子は、前記記録データに基づいてインクを吐出可能なノズルを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
複数の記録素子が所定の配列方向に配列された記録ヘッドを用い、前記配列方向と交差する方向に前記記録ヘッドと記録媒体を相対移動させつつ、記録データに基づいて前記複数の記録素子を選択的に機能させることにより、前記記録媒体に画像を記録する記録方法であって、
前記複数の記録素子の中に機能不良の記録素子がある場合、該機能不良の記録素子に隣接する記録素子により、該機能不良の記録素子により記録されるべきデータを補完する補完工程と、
前記機能不良の記録素子の周辺の記録素子が記録する画像の記録濃度を判定する濃度判定工程と、
前記濃度判定工程によって判定される前記記録濃度に応じて、前記補完工程において前記機能不良の記録素子により記録されるべきデータを前記機能不良の記録素子の両側に隣接する記録素子により補完するか、または前記機能不良の記録素子の片側に隣接する記録素子により補完するかを選択する選択工程と、
を含むことを特徴とする記録方法。
【請求項9】
複数の記録素子が所定の配列方向に配列された記録ヘッドを用い、前記配列方向と交差する方向に前記記録ヘッドと記録媒体を相対移動させつつ、記録データに基づいて前記複数の記録素子を選択的に機能させることにより、前記記録媒体に画像を記録する記録方法であって、
前記複数の記録素子の中に機能不良の記録素子がある場合、該機能不良の記録素子に隣接する記録素子により、該機能不良の記録素子により記録されるべきデータを補完する補完工程と、
前記機能不良の記録素子の周辺の記録素子が記録する画像の記録濃度を判定する濃度判定工程と、
前記濃度判定工程において判定される前記記録濃度に応じて、前記補完工程において前記機能不良の記録素子により記録されるべきデータを前記機能不良の記録素子に隣接するどの記録素子により補完するかを選択する選択工程と、
を含むことを特徴とする記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録素子を備える記録ヘッドを用いて、紙などの記録媒体に画像を記録する記録装置および記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクジェット記録装置は、複数の記録素子としてのノズルが配列された記録ヘッドと、記録媒体と、を相対移動させつつ、記録データに基づいて複数のノズルから選択的にインクを吐出することにより、記録媒体上に画像を記録する。記録素子としてのノズルに、不具合が発生することによってインク滴の吐出不良が発生した場合には、記録品質を劣化させるおそれがある。そのため、それぞれのノズルについてインク滴の吐出特性を測定し、インクの吐出不良(機能不良)が発生しているノズル(吐出不良ノズル)に対応する記録データがあった場合に、その不良ノズルに代えて、他の正常なノズルからインクを吐出させる方法がある。
【0003】
特許文献1には、1つのインク色について2つの記録ヘッドを用い、一方の記録ヘッドにおける吐出不良ノズルに代えて、他方の記録ヘッドにおける正常なノズルからインクを吐出させる方法が記載されている。この方法においては、一方の記録ヘッドの吐出不良ノズルに対応する記録データが他方の記録ヘッドの正常なノズルに割り当てられる。特許文献2には、吐出不良ノズルを駆動させないまま記録走査をした後、その後の記録走査において、その吐出不良ノズルによって記録すべき領域を他の正常なノズルによって記録する方法が記載されている。特許文献3には、吐出不良ノズルによって形成すべきドットが位置するラスターに対して、上下方向の少なくとも一方に隣接する他の正常のノズルによって補完ドットを形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−010030号公報
【特許文献2】特許第3174539号公報
【特許文献3】特開2005−169817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法の場合には、2つの記録ヘッドを備える必要があるため記録装置のコストやサイズの増大を招くおそれがある。また、特許文献2に記載の方法は、所定の記録領域に対して複数回の記録走査を実行することなるため、所定の記録領域を1回の記録走査によって記録する1パス記録方式やフルライン方式においては適用できない。また、特許文献3に記載の方法は、吐出不良ノズルによって形成すべきドットの周辺の画像の記録濃度によっては、正常のノズルによって形成した補完ドットのために白スジや黒スジが目立ってしまうおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、機能不良の記録素子の影響が目立たない画像を記録することができる記録装置提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、複数の記録素子が所定の配列方向に配列された記録ヘッドを用い、前記配列方向と交差する方向に前記記録ヘッドと記録媒体を相対移動させつつ、記録データに基づいて前記複数の記録素子を選択的に機能させることにより、前記記録媒体に画像を記録する記録装置であって、前記複数の記録素子の中に機能不良の記録素子がある場合、該機能不良の記録素子に隣接する記録素子により、該機能不良の記録素子により記録されるべきデータを補完する補完手段と、前記機能不良の記録素子の周辺の記録素子が記録する画像の記録濃度を判定する濃度判定手段と、前記濃度判定手段によって判定される前記記録濃度に応じて、前記補完手段により前記機能不良の記録素子により記録されるべきデータを前記機能不良の記録素子の両側に隣接する記録素子により補完するか、または前記機能不良の記録素子の片側に隣接する記録素子により補完するかを選択する選択手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機能不良の記録素子の影響が目立たない画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態としてのラインプリンタの概略斜視図である。
図2図1の記録ヘッドの概略構成図である。
図3図1の記録ヘッドの制御系の概略構成図である。
図4】(a),(b),(c)は、それぞれ、画像濃度が高い場合の異なる補完例による記録結果の説明図である。
図5】(a),(b),(c)は、それぞれ、画像濃度が中程度の場合の異なる補完例による記録結果の説明図である。
図6】(a),(b),(c)は、それぞれ、画像濃度が高い場合の異なる補完例による記録結果の説明図である。画像濃度が低い場合の画像を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態を例示する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
図1は、本発明に係るフルラインタイプの記録装置(ラインプリンタ)の概略斜視図である。本例の記録装置においては、記録媒体101上の記録領域の幅方向全域に渡って延在する長尺な記録ヘッド102を用い、記録媒体101を矢印Y方向へ搬送させながら、記録ヘッド102に備わる複数の記録素子によって画像を連続的に記録する。記録媒体101は、搬送ローラや搬送ベルトなどを用いる搬送機構によって、矢印Y方向に連続的に搬送される。その搬送機構は、記録装置に備わるCPU(制御部)の制御下にある。記録ヘッド102としては種々の記録方式のものを採用することができ、例えば、インク滴を吐出可能なインクジェット記録ヘッド、およびインクリボンのインクを熱転写するサーマルヘッドなどが使用できる。また、記録媒体101は、本例のようにロール状に巻回された連続シートのみに限定されず、1ページ分ずつカットされたカットシートなどであってもよい。
【0012】
ラインプリンタでは、記録に用いるインク色に対応する数の記録ヘッドが並列に搭載される。例えば、モノクロ画像を記録するラインプリンタには、単色のインクを用いる1種の記録ヘッドが搭載され、フルカラーの画像を記録するラインプリンタには、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを用いる4種の記録ヘッドが搭載される。本例においては、モノクロ画像を記録するために1つの記録ヘッドが搭載されている。
【0013】
図2は、記録ヘッド102の概略構成図である。記録ヘッド102には、所定の配列方向に沿って1〜nまでの多数の記録素子が配列されており、その配列方向は、矢印Yの搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する。記録素子の数は、記録ヘッドのサイズや記録解像度によって異なる。本例においては、1280個の記録素子が配列されている。ラインプリンタでは、記録媒体101を矢印Y方向に連続的に搬送しながら、記録データに従って記録ヘッド102の記録素子を選択的に駆動することにより、所望の画素を記録媒体101上に記録する。したがって、本例のラインプリンタにおいては、記録媒体上の所定の記録領域に対して、記録ヘッド102の1回の記録走査によって画像が記録されることになる。
【0014】
本例における記録ヘッド102は、インクの吐出エネルギー発生素子として電気熱変換素子(ヒータ)を用いるインクジェット記録ヘッドである。この記録ヘッドは、ノズル内のインクを電気熱変換素子の発熱によって発泡させ、その発泡エネルギーを利用して、ノズル先端の吐出口からインク滴を吐出することができる。インクジェット記録ヘッドは、ピエゾ素子などの他の吐出エネルギー発生素子を用いたものであってもよい。
【0015】
図3は、本例におけるラインプリンタの制御系の概略構成図である。記録データはプリントバッファ301に蓄えられており、補完制御部302は、記録媒体101の搬送に応じて、プリントバッファから記録データを1ライン分ずつ読み出す。インク不吐出位置を記憶する記憶部303には、インク不吐出(機能不良)の記録素子、つまりインクの吐出が不可能な記録素子が発生した場合に、その記録素子の位置(位置情報)が記憶される。インク不吐出の記録素子は、テストパターンの記録結果などから検出することができる。例えば、ラインプリンタに備わるCPUの制御下において、記録ヘッド102によってテストパターンを記録し、その記録結果をラインプリンタに備わる読み取り装置によって読み取り、その読み取り結果から、インク不吐出の記録素子を検出してもよい。また、テストパターンの記録結果を目視することによって、インク不吐出の記録素子を検出して、その検出結果をラインプリンタに入力してもよい。
【0016】
補完制御部302は、記憶部303から読み出した位置情報に基づいて、後述するように、その位置情報に対応するインク不吐出の記録素子の記録データを変更する。補完制御部302において処理された記録データは、ヘッド制御部304へ転送される。ヘッド制御部304は、記録ヘッド102に対して、所定のフォーマットで記録データを転送した後、記録素子を駆動するための駆動パルスを出力する。記録素子は、このように記録データに基づいて駆動されることにより、対応するノズル先端の吐出口からインク滴を吐出する。そのインク滴が記録媒体101上に着弾してドットを形成することにより、画像が記録される。図3における各構成要素は不図示のCPU(制御部)に接続されており、そのCPUは、それらの構成要素を含むラインプリンタ全体の制御を行うと共に、各構成要素に対して種々のパラメータを設定する。
【0017】
補完制御部302は、インクの不吐出(機能不良)が発生した記録素子に対応する記録データ、つまりインク不吐出の記録素子を駆動させるべき記録データが存在した場合に、その記録データを変更する。すなわち、インク不吐出の記録素子に代わって、その記録素子に隣接する正常の記録素子を駆動するように記録データを補完して、補完データを生成する。したがって、インク不吐出の記録素子によって形成されるべきドットに代わって、その記録素子に隣接する正常な記録素子によってドットが形成されることになる。ただし、インク不吐出の記録素子によって形成されるべきドットの周辺における画像の記録濃度(以下、「周辺の記録濃度」ともいう)Dが所定の第1のしきい値DA以上の場合(DA≦D)は、このような記録データの補完は行わない。
【0018】
ここで記録濃度は、記録媒体101の単位領域当たり付与されるインクの付与量に対応する。すなわち、記録濃度は、記録媒体101の単位領域に対する記録素子からのインク滴の吐出数と、インク滴の1回の吐出により形成されるドットの面積と、の積に対応する。このような記録濃度は、CPUの制御下において不図示の濃度検出部によって、処理画素周辺の記録データ、記録ヘッド102のインクの吐出特性や記録密度、および記録媒体の種類にしたがって決定される。記録濃度の検出対象の範囲、つまりインク不吐出の記録素子に対応する記録位置の周辺の画像範囲は、後述するような記録データの補完が白スジや黒スジを目立たなくする上において有効となる範囲であり、インク、記録媒体、記録内容などに応じて設定される。記録濃度の検出対象の範囲は、インク不吐出の記録素子と、その両側に隣接する記録素子と、に対応する記録範囲を少なくとも含めばよい。
【0019】
また、補完制御部302は、周辺の記録濃度Dが第1のしきい値DA未満、かつ所定の第2のしきい値DB以上の場合(DB≦D<DA)には、インク不吐出の記録素子に代えて、その両側に隣接する記録素子を用いるように記録データを補完する。また、周辺の記録濃度Dが第2のしきい値DB未満の場合(D<DB)には、インク不吐出の記録素子に代えて、その片側に隣接する記録素子を用いるように記録データを補完する。
【0020】
図4は、画像の記録濃度が高く、インク不吐出の記録素子Mの周辺の記録濃度Dが第1のしきい値DA以上の場合(DA≦D)の記録画像の説明図である。このように、周辺の記録濃度Dが極めて高い場合は、記録素子Mに隣接する記録素子(M−1),(M+1)によって形成されるドットが多いため、それらのドットの滲みによって、記録素子Mによって形成すべきドットが十分に補われることになる。図4(a)は、インク不吐出の記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)のいずれも用いなかった場合、つまり記録データを補完しなかった場合の記録結果である。図4(b)は、記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)を用いるように、記録データを補完した場合の記録結果である。図4(c)は、記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)の一方を用いるように、記録データを補完した場合の記録結果である。
【0021】
このように、周辺の記録濃度Dが第1のしきい値以上の場合(DA≦D)には、記録データの補完をしなかったときの記録結果(図4(a))と、それを補完したときの記録結果(図4(b)、(c))に大きな差がなかった。そのため本例においては、周辺の記録濃度Dが第1のしきい値DA以上の場合(DA≦D)に、補完制御部302が記録データを補完しない。第1のしきい値DAは、それ以上に周辺の記録濃度Dが高くなったときに、記録データの補完の有無によって画像の記録結果が大きく変化しない値として設定される。
【0022】
図5は、画像の記録濃度が中程度であって、インク不吐出の記録素子Mの周辺の記録濃度Dが第1のしきい値DA未満、かつ第2のしきい値DB以上の場合(DB≦D<DA)の記録画像の説明図である。図5(a)は、記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)のいずれも用いなかった場合、つまり記録データを補完しなかった場合の記録結果である。図5(b)は、記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)の両方を用いるように、記録データを補完した場合の記録結果である。図5(c)は、記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)の一方(本例の場合は、記録素子(M−1))を用いるように、記録データを補完した場合の記録結果である。このように画像濃度が中程度の場合には、図5(a)のように記録データの補完をしなかったとき、および図5(c)のように記録データを補完したときにおいて、ドットが形成されない部分が白スジとして目立ってしまう。
【0023】
そこで本例においては、周辺の記録濃度Dが第1のしきい値未満かつ第2のしきい値以上の場合(DB≦D<DA)に、図5(b)のように、インク不吐出の記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)の両方を用いるように記録データを補完する。周辺の記録濃度Dが第1のしきい値DA未満かつ第2のしきい値DB以上の範囲(DB≦D<DA)は、隣接の記録素子(M−1),(M+1)の両方を用いる補完によって、白スジを目立ち難くすることができる範囲として設定される。したがって、記録濃度DがDB≦D<DAの範囲の第1の記録濃度のときは、隣接の記録素子(M−1),(M+1)の両方を用いるように記録データが補完される。
【0024】
図6は、画像の記録濃度が低く、インク不吐出の記録素子Mの周辺の記録濃度Dが第2のしきい値未満(D<DB)の記録画像の説明図である。図6(a)は、記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)のいずれも用いなかった場合、つまり記録データを補完しなかった場合の記録結果である。図6(b)は、記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)の両方を用いるように、記録データを補完した場合の記録結果である。図6(c)は、記録素子Mに代えた隣接の記録素子(M−1),(M+1)の一方(本例の場合は、記録素子(M−1))を用いるように、記録データを補完した場合の記録結果である。このように画像濃度が低い場合には、図6(a)のように記録データの補完をしないと白スジが目立ってしまい、また図6(b)のように記録データを補完したときには、ドットの重なり部分が黒スジとして目立ってしまう。
【0025】
そのため本例においては、周辺の記録濃度Dが第2のしきい値DB未満(D<DB)の場合(DB≦D<DA)に、図6(c)のように、記録素子Mに代えて隣接の記録素子(M−1),(M+1)の一方を用いるように、記録データを補完する。第2のしきい値DBは、それ未満に周辺の記録濃度Dが低くなったときに、隣接の記録素子(M−1),(M+1)の一方によって補完することによって白スジや黒スジを目立ち難くすることができる値として設定される。したがって、記録濃度DがD<DBの範囲の第2の記録濃度のときは、隣接の記録素子(M−1),(M+1)の一方を用いるように記録データが補完される。
【0026】
以上のように、インク不吐出の記録素子によって記録すべきドットの周辺の記録濃度に応じて、記録データの補完方法を変更することにより、いずれの記録濃度の場合においても、インク不吐出の記録素子による画像品質への悪影響を確実に低減することができる。しきい値DA,DBは、ドットおよび画像の滲みの程度に応じて異なる値に設定する。それらの滲みの程度は、インクや記録媒体の種類によっても異なるため、記録装置の開発段階において、実験により予め最適な値に設定しておくことが望ましい。
【0027】
(他の実施形態)
上記の実施形態においては、記録媒体の所定領域に対して記録ヘッドの1回の記録走査によって画像を記録する記録装置として、ラインプリンタについて説明した。しかし本発明は、記録媒体の所定領域に対して、記録媒体と記録ヘッドとの1回の相対移動によって画像を記録する種々の記録装置に対して、広く適用可能である。例えば、記録ヘッドの主走査方向の移動と、記録媒体の副走査方向の搬送と、を繰り返して、画像を記録するシリアルスキャンタイプの記録装置において、1パス記録を実施する場合にも本発明を適用することができる。
【0028】
また本発明は、インクジェット記録装置のみに限定されず、インクリボンのインクを熱転写するサーマルヘッド等、種々の記録素子を用いる記録装置に対して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
101 記録媒体
102 記録ヘッド
302 補完制御部(補完制御手段)
303 不吐位置の記憶部(記憶手段)
304 ヘッド制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6