(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のような薬剤を別途購入する場合には、飲料水の製造において、飲料水製造のランニングコストが増加する、という問題がある。また、上述した特許文献2及び3では、以下のような問題がある。
【0008】
特許文献2の提案では、前処理前の海水に次亜塩素酸を注入するため、海水中に含有する有機物と次亜塩素酸とが反応して、有害なトリハロメタン類が生成しやすい、という問題がある。また、前処理において、次塩素酸を導入するので、淡水化処理の際の逆浸透膜装置の膜劣化が、促進される、という問題がある。
【0009】
特許文献3の提案では、逆浸透膜装置の低動力化を実現するためには、電気透析での脱塩率が大きいほど効果が生じるが、その分、電気透析装置で多大な電力消費が必要となり、かつ大量の塩酸、水酸化ナトリウムが生成してしまう、という問題がある。この余剰の塩酸、水酸化ナトリウムは、互いに混合して中和処理して塩水にして廃棄することになる、という問題がある。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、淡水(純水)に塩素を含有する際、簡易な方法で飲料水を製造することができる飲料水製造装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する第1の発明は、淡水を供給する淡水ラインから分岐される分岐ラインと、前記分岐ラインに塩化ナトリウムを供給する塩化ナトリウム供給部と、前記塩化ナトリウムが供給された淡水を電気分解して、この電気分解で発生した塩素を含む塩素含有水とする電気分解部と、前記塩素含有水を、淡水ラインの淡水に合流する合流ラインと、を備え
ると共に、さらに、前記淡水が淡水化部により原水中の塩分が除去された淡水であり、前記淡水化部により原水中の塩分が濃縮された塩分濃縮水を電気透析し、濃縮かん水と希釈かん水とを得る電気透析部と、前記希釈かん水中の残存イオンを有価物として回収し、塩分除去水とする反応晶析部と、前記濃縮かん水を蒸発晶析する蒸発晶析部と、前記蒸発晶析部からの濃縮された塩化ナトリウムスラリーを固液分離する固液分離部と、前記固液分離された塩化ナトリウムを、前記塩化ナトリウム供給部に供給する塩化ナトリウム供給ラインと、前記回収した有価物を、前記有価物供給部に供給する有価物供給ラインとを備えることを特徴とする飲料水製造装置にある。
【0012】
本発明によれば、塩化ナトリウムを用いた電気分解により所定濃度の遊離塩素含有水とすることができ、安定して飲料水を製造できる。
【0013】
また、本発明によれば、淡水化処理した淡水に所定量の塩素を含有する際、塩分濃縮水から得られた塩化ナトリウムを供給することができ、従来のように別途外部から塩素ガスを用いることなく、淡水化設備内で塩素原料を賄うことができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、前記電気分解部の後流側で、有価物を供給する有価物供給部を備え、前記塩素含有水に有価物を供給した後、前記淡水と合流することを特徴とする飲料水製造装置にある。
【0015】
本発明によれば、塩素含有水に有価物を供給することで、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等を含む有価物含有飲料水を製造できる。
【0016】
第3の発明は、第1の発明において、前記塩素含有水を合流した淡水中の残留塩素濃度を計測する塩素計を備えることを特徴とする飲料水製造装置にある。
【0017】
本発明によれば、塩素含有水を淡水に合流した後、飲料水として最適な残留塩素濃度とすることができる。
【0018】
第
4の発明は、第1の発明において、前記固液分離された前記塩化ナトリウムを用い、水酸化ナトリウム水溶液及び塩酸を得る電気化学処理部と、前記水酸化ナトリウム水溶液を前記反応晶析部に供給する水酸化ナトリウム水溶液供給ラインを備えることを特徴とする飲料水製造装置にある。
【0019】
本発明によれば、反応晶析部でアルカリ条件での薬剤として、水酸化ナトリウム水溶液をオンサイトで供給することができ、アルカリ条件の晶析反応によりマグネシウム塩を回収することができる。
【0020】
第
5の発明は、第
1の発明において、前記塩酸を前記反応晶析部に供給する塩酸供給ラインとを備えることを特徴とする飲料水製造装置にある。
【0021】
本発明によれば、反応晶析部で酸性条件での薬剤として、塩酸をオンサイトで供給することができ、酸性条件の晶析反応によりカルシウム塩を回収することができる。
【0022】
第
6の発明は、第
1の発明において、前記電気透析部が、イオン選択性を有する膜を備えることを特徴とする飲料水製造装置にある。
【0023】
本発明によれば、電気透析部において、任意のイオンを選択できる選択性膜を用いることで、1価イオンと、2価イオンとの選択が可能となる。
【0024】
第
7の発明は、淡水を供給する淡水ラインから分岐された淡水に、塩化ナトリウムを供給する塩化ナトリウム供給工程と、前記塩化ナトリウムが供給された淡水を電気分解して、この電気分解で発生した塩素を含む塩素含有水とする電気分解工程と
、を有し、前記塩素含有水を、淡水ラインの淡水に合流して飲料水を製造する
と共に、さらに、前記淡水が淡水化部により原水中の塩分が除去された淡水であり、前記淡水化部により原水中の塩分が濃縮された塩分濃縮水を電気透析し、濃縮かん水と希釈かん水とを得る電気透析工程と、前記希釈かん水中の残存イオンを有価物として回収し、塩分除去水とする反応晶析工程と、前記濃縮かん水を蒸発晶析する蒸発晶析工程と、前記蒸発晶析部からの濃縮された塩化ナトリウムスラリーを固液分離する固液分離工程と、前記固液分離された塩化ナトリウムを、前記塩化ナトリウム供給部に供給する塩化ナトリウム供給工程と、前記回収した有価物を、前記有価物供給部に供給する有価物ナトリウム供給工程と、を有することを特徴とする飲料水製造方法にある。
【0025】
本発明によれば、塩化ナトリウムを用いて電気分解により所定濃度の遊離塩素含有水とすることができ、安定して飲料水を製造できる。また、電気分解部には主として淡水と塩化ナトリウムのみ供給されるため、該電気分解部の電極表面へのスケール付着を防止でき、メンテナンス頻度を大幅に低減できる。
【0026】
また、本発明によれば、淡水化処理した淡水に所定量の塩素を含有する際、塩分濃縮水から得られた塩化ナトリウムを供給することができ、従来のように別途外部から塩素ガスを用いることなく、淡水化設備内で塩素原料を賄うことができる。
【0027】
第
8の発明は、第
7の発明において、前記電気分解部の後流側で、有価物を供給する有価物供給工程を備え、前記塩素含有水に有価物を供給した後、前記淡水と合流することを特徴とする飲料水製造方法にある。
【0028】
本発明によれば、塩素含有水に有価物を供給することで、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等を含む有価物含有飲料水を製造できる。
【0029】
第
9の発明は、第
7の発明において、前記塩素含有水を合流した淡水中の残留塩素濃度を計測することを特徴とする飲料水製造方法にある。
【0030】
本発明によれば、塩素含有水を淡水に合流した後、飲料水として最適な残留塩素濃度とすることができる。
【0031】
第
10の発明は、第
7の発明において、前記固液分離された前記塩化ナトリウムを用い、水酸化ナトリウム水溶液及び塩酸を得る電気化学処理工程と、前記水酸化ナトリウム水溶液を前記反応晶析工程に供給する水酸化ナトリウム水溶液供給工程とを有することを特徴とする飲料水製造方法にある。
【0032】
本発明によれば、反応晶析部でアルカリ条件での薬剤として、水酸化ナトリウム水溶液をオンサイトで供給することができ、アルカリ条件の晶析反応によりマグネシウム塩を回収することができる。
【0033】
第
11の発明は、第
7の発明において、前記塩酸を前記反応晶析工程に供給する塩酸供給工程とを有することを特徴とする飲料水製造方法にある。
【0034】
本発明によれば、反応晶析部で酸性条件での薬剤として、塩酸をオンサイトで供給することができ、酸性条件で炭酸成分を除去することで、炭酸カルシウムの析出を抑制し、水酸化マグネシウムを高純度で回収することができる。
【0035】
第
12の発明は、第
7の発明において、前記電気透析工程が、イオン選択性を有する膜を備えることを特徴とする飲料水製造方法にある。
【0036】
本発明によれば、電気透析部において、任意のイオンを選択できる選択性膜用いることで、1価イオンと、2価イオンとの選択が可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、塩化ナトリウムを淡水に供給し、電気分解により塩素を含む塩素含有水を簡易に製造でき、この塩素含有水を淡水と混合することで、所望の濃度の塩素を含む飲料水を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。また、各実施の形態に係る飲料水製造装置の構成は、適宜組み合わせて実施可能である。
【0040】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る飲料水製造装置の概略図である。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る他の飲料水製造装置の概略図である。
図1に示すように、飲料水製造装置10Aは、淡水(純水)50を供給する淡水ラインL
11から分岐される分岐ラインL
21と、分岐ラインL
21に塩化ナトリウム(NaCl)を供給する塩化ナトリウム供給部51と、塩化ナトリウムが供給された淡水を電気分解して、この電気分解で発生した塩素を含む塩素含有水とする電気分解部52と、塩素含有水を、淡水ラインL
11の淡水50に合流する合流ラインL
22と、を備える。
【0041】
電気分解部52は、透過水の一部を分岐した分岐水に、塩化ナトリウム(NaCl)を供給し、この塩化ナトリウム混合液を電気分解により、遊離塩素(次亜塩素酸)濃度が1000ppm程度を含む塩素含有水を製造するものである。
【0042】
有価物供給部53は、塩素含有水に有価物54としてミネラル分(カルシウム塩(Ca塩)、マグネシウム塩(Mg塩)等の有価物を所定量供給する。
この供給量は、目的とする飲料水中に含まれる所望濃度となるように調整して添加される。
【0043】
このミネラル分を添加する場合には、電気分解の後流側としている。
【0044】
飲料水に適用する淡水としては、海水を淡水化した淡水、工業用水を水処理して純水としたもの等、特に限定されるものではない。
【0045】
合流ラインL
22の後流側には、塩素を計測する塩素計56が設けられており、飲料水55中の残留塩素を所定値となるように監視している。
【0046】
従来では、飲料水として所定の塩素含有水とする場合、塩素ガスを用いているが、本発明では、塩化ナトリウムを用いるため、安定して遊離塩素含有飲料水を製造することができる。
【0047】
図2の飲料水製造装置10Bは、淡水化装置12を用いて淡水W
11を得ている。
淡水化装置12は、供給海水Wを蒸留し、供給海水W中の塩分が除去された淡水W
11を得ると共に、供給海水W中の塩分が濃縮された塩分濃縮水W
12を得る。また、淡水化装置12は、ラインL
12を介して淡水W
11を飲料水として排出すると共に、ラインL
13を介して塩分濃縮水W
12を排水W
20として排出する。淡水化装置12としては、特に限定されるものではないが、蒸発法以外に、逆浸透膜装置を用いた膜分離法等を適用することができる。
【0048】
ここで、逆浸透膜装置としては、例えば、複数の逆浸透膜エレメント(逆浸透膜モジュール)を容器内に備えて構成され、各逆浸透膜エレメントで処理して得られた淡水W
11と塩分濃縮水W
12とをそれぞれ容器から導出(排出)させるための濃縮水管(濃縮水排出経路)と透過水管(淡水排出経路)を接続して配設されている。
【0049】
逆浸透膜装置の逆浸透膜としては、一般的な逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜(以下「RO膜」ともいう)や、NF(Nanofiltration)膜(以下「NF膜」ともいう)などを用いることができる。
【0050】
よって、供給海水Wを逆浸透膜装置で淡水化処理した淡水W
11を用いる場合、脱塩されているので、電気分解部52において、前処理をせずに、電気分解でのスケール生成を抑制できる。また、逆浸透膜装置で淡水化した淡水を用いる場合には、有機物がほとんど含まれておらず、トリハロメタン類等の副生成がほとんどないものとなる。
【0051】
本発明によれば、塩化ナトリウムを用いて電気分解により所定濃度の遊離塩素含有水とすることができ、安定して飲料水を製造できる。また、電気分解部には主として淡水と塩化ナトリウムのみ供給されるため、該電気分解部の電極表面へのスケール付着を防止でき、メンテナンス頻度を大幅に低減できる。
【0052】
表1は、
図2の飲料水製造ラインにおいて、各ラインのポイントで、ナトリウム(Na)分、塩素(Cl)分、次亜塩素酸(HClO)分、総溶解固形物(TDS)について、計測した一例を示す。ポイント1及び5は、淡水ラインL
11の淡水W
11であり、ポイント2は分岐ラインL
21に分岐した淡水W
11であり、ポイント3は塩化ナトリウムの供給ラインであり、ポイント4は塩素が含有された合流前の合流ラインL
22の塩素含有水であり、ポイント6は塩素が含有された合流後の淡水ラインL
11の塩素含有水と淡水W
11との混合水である。
【表1】
【0053】
ポイント4に示すように、遊離塩素濃度が1000ppmであり、ポイント6に示すように、混合水は0.49ppmである。なお、所望の塩素濃度をする場合、電気分解部52への淡水W11の分岐比の調整、塩化ナトリウムの供給量の調整及び電気分解部52での電流条件の調整により適宜設定する。
【0054】
本実施形態によれば、逆浸透膜装置での淡水化処理された淡水W
11から、安全な塩化ナトリウム(NaCl塩)を用い、電気分解部52での電極表面のスケール析出を抑制しつつ、遊離塩素を含む飲料水を安定して製造することができる。
【0055】
ここで、塩化ナトリウム(NaCl)供給部52に供給する塩化ナトリウムは、淡水化処理の際の塩分濃縮水W
12から晶析処理された塩化ナトリウム(固体)を用いることができる。これにより外部から薬剤を購入することなく、飲料水を製造することができる。
【0056】
また、有価物供給部53から供給するミネラル分の有価物も塩分濃縮水W
12から回収される有価物(Ca塩、Mg塩等)を用いることができる。これにより外部から有価物の添加のための薬剤を購入することなく、飲料水を製造することができる。
【0057】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る飲料水製造装置について説明する。以下においては、上記第1の実施の形態に係る飲料水製造装置との相違点を中心に説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る飲料水製造装置と同一の構成要素については、同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
【0058】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る飲料水製造装置の概略図である。
図3に示すように、本実施の形態に係る飲料水製造装置10Cは、
図2に示す飲料水製造装置10Bにおいて、淡水化部である逆浸透膜12aを有する逆浸透膜装置12Aにより供給海水Wの塩分が濃縮された塩分濃縮水W
12を電気透析し、濃縮かん水W
13と希釈かん水W
14とを得る電気透析部13と、希釈かん水W
14中の残存イオンを有価物54として回収し、塩分除去水とする反応晶析部23と、濃縮かん水W
13を蒸発晶析する蒸発晶析部21と、蒸発晶析部21からの濃縮された塩化ナトリウムスラリーS
1を固液分離する固液分離部22と、固液分離された塩化ナトリウム(NaCl)34を、塩化ナトリウム供給部51に供給する塩化ナトリウム供給ラインL
50と、反応晶析部23で回収した有価物(Ca塩、Mg塩)54を、有価物供給部53に供給する有価物供給ラインL
51とを備える。
【0059】
電気透析部13は、電気透析膜(ED:Elecrodialysis膜)13aを有する。電気透析部13は、電気透析膜13aにより塩分濃縮水W
12を電気透析して塩分濃縮水W
12中の塩分が濃縮された濃縮かん水W
13と塩分濃縮水W
12中の塩分が除去された希釈かん水W
14とを得る。
電気透析手法としては、例えば、陽イオンのみを透過する陽イオン交換膜と陰イオンのみを透過する陰イオン交換膜を交互に配列し、これら陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両端から電圧を印加して直流電流を通電できるように構成されている。また、電気透析部13においては、塩分濃縮水W
12を処理して得られる濃縮かん水W
13と希釈かん水W
14は、それぞれ、排出ラインL
14、L
15により排出されている。
【0060】
ここで、逆浸透膜装置12からの塩分濃縮水W
12を供給する供給ラインL
13は、電気透析部13側に一部が分岐され、分岐されない塩分濃縮水W
12は、供給ラインL
13を介して外部に排水17として排出される。
【0061】
蒸発晶析部21は、電気透析部13から供給される濃縮かん水W
13を蒸発晶析させて塩(塩化ナトリウム(NaCl))34を得ると共に、蒸発水W
15を得る。また、蒸発晶析部21からの蒸発水W
15は、供給ラインL
35及び供給ラインL
12を介して淡水W
11と合流し、飲料水55となる。また、蒸発晶析部21は、ラインW
19を介して蒸発水W
15を冷却晶析部24に供給する。
【0062】
ここで、蒸発晶析部21は、例えば多重効用蒸発缶、薄膜蒸発乾燥器又はドラムドライヤー等を例示することができ、この蒸発処理によって得られた析出物の塩化ナトリウムスラリーS
1を排出する排出ラインL
17が、固液分離部22に接続されている。
【0063】
固液分離部22は、蒸発晶析部21からの濃縮された塩化ナトリウムスラリーS
1を固液分離するものであり、有価物としての塩化ナトリウム(固体)34を得る。
また、塩化ナトリウムを分離した脱塩化ナトリウムスラリーS
2は排出ラインL
18を介して排出される。
また、分離された塩化ナトリウムは、塩化ナトリウム供給部51に塩化ナトリウム供給ラインL
50を介して供給する。
【0064】
反応晶析部23は、反応晶析法により多価のイオンを有価物54として晶析させる。
例えばカルシウム塩(Ca塩)を晶析させる場合には、アルカリ条件、酸性条件により有価物(硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等)54として回収する。
【0065】
ここで、アルカリ条件での晶析反応は、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)等を薬剤として用いる。酸性条件での晶析反応は、例えば硫酸(H
2SO
4)、塩酸(HCl)等を薬剤として用いる。
ここで、硫酸、塩酸を用いて、水酸化マグネシウム回収前に供給するのは、希釈かん水W
14のpHを下げ、下記反応式(1)、(2)により、同水中の炭酸成分を揮発・除去することで、炭酸カルシウムの析出を抑制するようにしている。これにより酸化マグネシウムを高純度で回収することができる。
Ca(HCO
3)
2+2HCl→CaCl
2+2H
2O+2CO
2↑・・・(1)
Ca(HCO
3)
2+H
2SO
4→CaSO
4+2H
2O+2CO
2↑・・・(2)
【0066】
反応晶析部23で、まずCa塩を反応晶析により有価物54として回収した後、アルカリ条件でMg塩を有価物54として回収する。
【0067】
有価物54を回収した脱塩水は、排水17として処理される。また、一部は循環水として、逆浸透膜装置12の入り口側に戻すようにして、再利用するようにしもよい。この際、循環水中のホウ素を、イオン交換法や吸着法によって捕集・除去するようにしてもよい。また、ホウ素を吸着及び/又はイオン交換によって捕集する以外としては、例えば電気透析法により除去するようにしてもよい。
【0068】
本実施形態によれば、逆浸透膜装置12Aからの塩分濃縮水W
12から、塩化ナトリウム34を回収し、これを塩化ナトリウム供給部51に供給することで、オンサイトで塩素含有水を製造することができる。また、希釈かん水W
14中に残存する多価のイオンを反応晶析部23で有価物(Ca塩、Mg塩)54として回収することで、オンサイトで有価物54を供給できミネラル分が含む塩素含有水を製造することができる。
【0069】
次に、本実施の形態に係る飲料水製造装置10Cの全体動作について説明する。
逆浸透膜装置12に供給された供給海水Wは、淡水化処理により供給海水W中の塩分が除去された淡水W
11と供給海水W中の塩分が濃縮された塩分濃縮水W
12とになる。淡水W
11は、供給ラインL
12を介して排出され、一部が分岐されて塩化ナトリウム供給部51で塩化ナトリウムを供給し、電気分解部52で電気分解することで、遊離塩素を含有する塩素含有水を得る。また、有価物54であるミネラル分も添加され、所望のミネラル分を含む飲料水55を得る。この際、塩素計56で残留塩素を計測している。
逆浸透膜装置12からの塩分濃縮水W
12は、供給ラインL
13を介して一部が電気透析部13に供給されると共に、一部が排水W
20として排出される。
【0070】
電気透析部13に供給された塩分濃縮水W
12は、電気透析膜13aによって塩分濃縮水W
12中の塩分が更に濃縮された濃縮かん水W
13と塩分濃縮水W
12中の塩分が除去された希釈かん水W
14となる。ここで、濃縮かん水W
13は、塩分濃縮水W
12に含まれる1価の塩(Na(ナトリウム)塩、K(カリウム)塩等)が多く含まれる。希釈かん水W
14は、塩分濃縮水W
12に含まれる多価の塩(Mg(マグネシウム)塩、Ca(カルシウム)塩等)が多く含まれる。
蒸発晶析部21及び固液分離部22で分離された塩化ナトリウム34は、塩化ナトリウム供給部51に塩化ナトリウム供給ラインL
50を介してオンサイトで供給し、電気分解部52で塩素含有水を製造する。
【0071】
電気透析部13からの希釈かん水W
14は、反応晶析部23に送られ、反応晶析法により多価のイオンを晶析させる。
この反応晶析により、多価のイオンである例えばカルシウム塩(Ca塩)と、マグネシウム塩が有価物54として回収される。この回収された有価物(Ca塩、Mg塩)54は、有価物供給ラインL
51を介して、有価物供給部53にオンサイトで供給される。
【0072】
したがって、本実施形態の飲料水製造装置10C及び方法によれば、淡水W
11に塩素を含ませる際、淡水化した後の塩分濃縮水W
12を用いて、塩化ナトリウム34を製造し、これを用いて、分岐した淡水W
11に供給した後電気分解部52で電気分解により塩素含有水を製造すると共に、塩分濃縮水W
12からの有価物であるCa塩、Mg塩等の有価物54をオンサイトで塩素含有水に供給することができ、所望の組成の飲料水を安定して安価に製造することができる。
【0073】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る飲料水製造装置について説明する。以下においては、上記第1の実施の形態に係る飲料水製造装置との相違点を中心に説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る飲料水製造装置と同一の構成要素については、同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
【0074】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る飲料水製造装置の概略図である。
図4に示すように、本実施の形態に係る飲料水製造装置10Dは、第2の実施形態の飲料水製造装置10Cにおいて、さらに供給海水W中に含まれる濁質を除去して前処理水W
10とする前処理装置11と、固液分離された塩化ナトリウムを溶解する溶解部29と、溶解された塩化ナトリウム水溶液を用い、塩酸32及び水酸化ナトリウム水溶液33を得る電気化学処理部30と、得られた塩酸32を、反応晶析部23に供給する塩酸供給ラインL
25と、得られた水酸化ナトリウム水溶液33を反応晶析部23に供給する水酸化ナトリウム水溶液供給ラインL
22とを備える。
また、電気透析部13から蒸発晶析部21に濃縮かん水W
13を供給する供給ラインL
15から、濃縮かん水W
13を排出する排出ラインL
31が設けられると共に、電気透析部13から反応晶析部23に希釈かん水W
14を供給する供給ラインL
14から、希釈かん水W
14を排出する排出ラインL
32が設けられている。
【0075】
溶解部29は、分離された塩化ナトリウムの一部を用いて、淡水W
11により溶解し、塩化ナトリウム水溶液を得る。この溶解には淡水化処理により得られた淡水W
11と、蒸発水W
15とが供給ラインL
33によりいずれか一方又は両方から供給されている。溶解された塩化ナトリウム水溶液は、供給ラインL
23を介して電気化学処理部30へ供給される。
【0076】
電気化学処理部30は、供給された塩化ナトリウム水溶液を用いて、例えば電気分解又は電気透析等の電気化学処理により、塩酸32及び水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液33を得る。
【0077】
反応晶析部23で有価物54を製造する際、塩化ナトリウムを電気分解処理により得られた塩酸32と水酸化ナトリウム水溶液33とを用いて、晶析反応の薬剤として用いることで、外部から薬剤を購入することが不要となる。
【0078】
なお、図示しないが、は、淡水W
11を排出する供給ラインL
12に、塩酸32を供給する塩酸供給ラインと、水酸化ナトリウム水溶液33を供給する水酸化ナトリウム水溶液供給ラインとを接続して、飲料水のpHの調整を行うようにしてもよい。
【0079】
さらに、淡水化装置のプラント停止の際における逆浸透膜装置12の洗浄用として、塩酸32及び水酸化ナトリウム水溶液33を供給するために、塩酸32を供給する塩酸供給ライン及び水酸化ナトリウム水溶液33を供給する水酸化ナトリウム水溶液供給ラインとを所定の洗浄ラインに接続されるようにしても良い。
【0080】
また、濃縮かん水W
13を排出する排出ラインL
31と、希釈かん水W
32を排出する排出ラインL
32とを設けるので、塩化ナトリウム塩および有価物(Ca塩、Mg塩)54の生産量を調整することができる。
これにより、逆浸透膜装置12や電気透析部13での消費動力を変えることなく、塩化ナトリウム34及び有価物54の生産量の調整を行うことができるようになり、晶析での蒸気消費量や薬剤コストを最適化できる。
また、濃縮かん水W
13と希釈かん水W
14との割合としては、特に限定されるものではないが、1.5〜2.0:8.5〜8.0程度とするのが好ましい。
【0081】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係る飲料水製造装置について説明する。以下においては、上記第1乃至3の実施の形態に係る飲料水製造装置との相違点を中心に説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る飲料水製造装置と同一の構成要素については、同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
【0082】
図5乃至7は、第4の実施の形態に係る飲料水製造装置の概略図である。
図5乃至7に示すように、本実施の形態に係る飲料水製造装置10E、F、Gは、反応晶析部を第1の反応晶析部23Aと第2の反応晶析部23Bとを具備し、第1の反応晶析部23Aでは、得られた塩酸32を塩酸供給ラインL
25から供給し、Ca塩の晶析を行うようにしている。また、第2の反応晶析部23Bでは、得られた水酸化ナトリウム水溶液33を水酸化ナトリウム水溶液供給ラインL
26から供給し、Mg塩の晶析を行うようにしている。
【0083】
先ず、
図8〜11を用いて電気透析膜のイオン透過性の性質の相違によるイオン透過の様子を模式的に説明する。
【0084】
図8は、1価イオン選択性陽イオン交換膜(CS)と1価イオン選択性陰イオン交換膜(AS)とを交互に配したものである。
この場合、1価のNaイオンとKイオンとが透過してNaイオンとKイオンとClイオンとを含む濃縮かん水1となり、希釈かん水1には、2価のCaイオンと、Mgイオン及びSO
4イオンがとどまる。
【0085】
図9は、陽イオン交換膜(C)と1価イオン選択性陰イオン交換膜(AS)とを交互に配したものである。
この場合、1価のNaイオン及びKイオン、2価のCaイオン及びMgイオンが透過して、CaイオンとMgイオンNaイオンとKイオンとClイオンとを含む濃縮かん水1となり、希釈かん水1には、2価のSO
4イオンがとどまる。
【0086】
図10は、1価イオン選択性陰イオン交換膜(AS)の間に、1価イオン選択性陽イオン交換膜(CS)と、陰イオン交換膜(A)と、陽イオン交換膜(C)とを配したものである。
この場合、希釈かん水1では、1価のNaイオンとKイオンとが透過され、2価のCaイオンと、Mgイオン及びSO
4イオンがとどまる。濃縮かん水1は、1価のNaイオンとKイオンとが流入され、NaイオンとKイオンとClイオンと硫酸イオンとを含む。希釈かん水2からは、1価のNaイオンとKイオンとが排出される。濃縮かん水2には、1価のNaイオンとKイオンと2価のCaイオンとMgイオンとClイオンとが流入される。
【0087】
図11は、1価イオン選択性陰イオン交換膜(AS)の間に、1価イオン選択性陽イオン交換膜(CS)と、1価イオン選択性陰イオン交換膜(AS)と、陽イオン交換膜(C)とを配したものである。
この場合、希釈かん水1では、1価のNaイオンとKイオンとが透過され、2価のCaイオンと、Mgイオン及びSO
4イオンがとどまる。濃縮かん水1は、1価のNaイオンとKイオンとが流入され、NaイオンとKイオンとClイオンとを含む。希釈かん水2では、1価のNaイオンとKイオンとが排出され、硫酸イオンがとどまる。濃縮かん水2は、1価のNaイオンとKイオンと2価のCaイオンとMgイオンとが流入され、CaイオンとMgイオンNaイオンとKイオンとClイオンとを含む。
【0088】
これらのイオン透過性によるイオン透過の相違を表2に示す。
【0090】
図8に示すイオン透過性の電気透析部13とする場合には、
図5に示す構成とすることが好ましい。
図5は、希釈かん水W
14の供給ラインL
14に第1の反応晶析部23Aと第2の反応晶析部23Bとを配置している。
図8では、希釈かん水W
14を第1の反応晶析部23Aで晶析させて先ず、Ca塩を得る。ついで、第2の反応晶析部23Bで晶析させてMg塩を得る。
【0091】
図9に示すイオン透過性の電気透析部13とする場合には、
図6に示す構成とすることが好ましい。
図6は、濃縮かん水W
13の供給ラインL
15に第1の反応晶析部23Aと第2の反応晶析部23Bとを配置している。
図9では、希釈かん水W
14を第1の反応晶析部23Aで晶析させて先ず、Ca塩を得る。ついで、第2の反応晶析部23Bで晶析させてMg塩を得る。
この場合には、濃縮かん水W
13中から硫酸イオンが除去されるのが好ましい。
【0092】
図10及び
図11示すイオン透過性の電気透析部13とする場合には、
図7に示す構成とすることが好ましい。
図7は、濃縮かん水W
13の供給ラインL
15を2本として、濃縮かん水W
13Aの供給ラインL
15Aと、濃縮かん水W
13Bの供給ラインL
15Bとしており、濃縮かん水W
13Aの供給ラインL
15Aは蒸発晶析部21に接続され、蒸発晶析する。
これに対し濃縮かん水W
13Bの供給ラインL
15Bは、第1の反応晶析部23Aに接続され、その後第2の反応晶析部23Bに接続される配置している。
図7に示す構成では、濃縮かん水W
13を第1の反応晶析部23Aで晶析させて先ず、Ca塩を得る。ついで、第2の反応晶析部23Bで晶析させてMg塩を得る。
【0093】
図11に示すイオン透過性を有する膜を用いる電気透析とすることで、希釈かん水と濃縮かん水とに目的とするイオンが分離されるので、有価物54の回収として用いるのが特に、好ましい。