特許第6209023号(P6209023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209023
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】捕集装置及び捕集方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   G01N1/22 L
   G01N1/22 C
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-176611(P2013-176611)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-45560(P2015-45560A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】507219686
【氏名又は名称】静岡県公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】000181767
【氏名又は名称】柴田科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】雨谷 敬史
(72)【発明者】
【氏名】三宅 祐一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義浩
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−149859(JP,U)
【文献】 特開平09−210875(JP,A)
【文献】 実開平07−003720(JP,U)
【文献】 特表平04−501229(JP,A)
【文献】 特表平06−504840(JP,A)
【文献】 実開昭48−092988(JP,U)
【文献】 特開2001−264224(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0148355(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0222500(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/34
G01N 30/00−30/96
B01L 1/00−99/00
B01D 53/02
B01D 53/26−53/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブサンプラと、
除湿材と、
前記パッシブサンプラの周囲に前記除湿材を充填した状態で前記パッシブサンプラを収容可能に構成され、かつ、外気中の被捕集物質が通過可能なパッシブサンプラ収容容器とを備える
ことを特徴とする捕集装置。
【請求項2】
請求項1に記載の捕集装置を用いて行なう大気中の被捕集物質の捕集方法であって、
前記除湿材により前記パッシブサンプラの周囲の湿度を低下させた状態において、前記被捕集物質をパッシブサンプラに捕集させる
ことを特徴とする捕集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中に浮遊するホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)などの被捕集物質をパッシブサンプラに捕集させる捕集装置と、この捕集装置により被捕集物質を捕集する捕集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大気中に浮遊するホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)などの被捕集物質の捕集には、大気中に曝され、自然拡散により捕集を行なうパッシブサンプラが用いられている(特許文献1)。このパッシブサンプラは、パッシブサンプラ内に設けられた吸着剤や捕集剤によって、被捕集物質濃度を捕集内面において常にゼロとし、それよりも濃度の高い捕集大気中と接する捕集外面となる導入口と一定の濃度勾配を保つことにより、物質濃度の移動拡散現象を利用して、被捕集物質を捕集するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−114176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このパッシブサンプラは、大気中に曝されるようにホルダーに保持され、測定環境下に置かれるものであるため、測定環境の変化によりその性能が著しく低下するおそれがあるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、測定環境の影響を軽減させることのできる捕集装置及びこれを用いる捕集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、パッシブサンプラの捕集量が高湿度環境下において著しく減少することを見出し、本発明を発明するに至った。すなわち、上記の目的を達成するため、本発明に係る捕集装置は、パッシブサンプラと、除湿材と、前記パッシブサンプラの周囲に前記除湿材を充填した状態で前記パッシブサンプラを収容可能に構成され、かつ、外気中の被捕集物質が通過可能なパッシブサンプラ収容容器とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る捕集方法は、前記捕集装置を用いて行なう大気中の被捕集物質の捕集方法であって、前記除湿材により前記パッシブサンプラの周囲の湿度を低下させた状態において、前記被捕集物質をパッシブサンプラに捕集させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定環境の影響を軽減させることのできる捕集装置及びこれを用いる捕集方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る捕集装置の概略構成を示す断面図である。
図2】パッシブサンプラの捕集量と湿度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態に係る捕集装置について、図面に基づいて説明する。本実施形態に係る捕集装置1は、図1に示すように、パッシブサンプラ10と、除湿材20と、パッシブサンプラ10及び除湿材20を収容するパッシブサンプラ収容容器30とを備えている。
【0011】
パッシブサンプラ10は、円筒状のサンプラー本体12と、このサンプラー本体12の内部に収容され、被捕集物質を吸着可能な吸着剤14と、サンプラー本体12の内部に収容された吸着剤14の両端外側に設けられたフィルター部材16と、サンプラー本体12の両端に設けられた栓部材18とを備えている。
【0012】
サンプラー本体12は、例えばホルムアルデヒド等の大気中の被捕集物質が浸透可能な開孔率を有する多孔性PTFEで構成されている。また、サンプラー本体12の外周面の両端には、全周に亘ってアルミリング20が貼り付けられている。吸着剤14は、被捕集物質が吸着可能な材料から形成されており、例えばDNPHを含浸させたシルカゲルや活性炭等から形成されている。フィルター部材16は、被捕集物質及びその溶剤が浸透可能で、かつ、吸着剤14が浸透不能な多孔状に形成されており、被捕集物質の溶剤に対して不溶な材料から形成されている。栓部材18は、円筒状に形成されたポリエチレン等からなり、フィルター部材16がサンプラー本体12から離脱するのを防止するようにサンプラー本体12の両端に設けられている。
【0013】
除湿材20は、例えば過塩素酸マグネシウム及び塩化ナトリウム等の除湿性を有する材料からなり、粒状に形成されている。なお、本実施形態に係る捕集装置1において、除湿材20は、粒状の除湿材に限定されるものではなく、周知の除湿材を用いることができる。
【0014】
パッシブサンプラ収容容器30は、有底円筒状に形成された収容容器本体32と、収容容器本体32の上端開口を閉塞可能な円板状の蓋部材34とから構成されており、これら収容容器本体32及び蓋部材34の内面によって、パッシブサンプラ10及び除湿材20を収容可能な収容空間が規定されるように構成されている。
【0015】
収容容器本体32は、被捕集物質が通過可能な通気性を有し、かつ、除湿材20の通過を規制可能な多孔部材から形成されており、本実施形態においては金網あるいはポリテトラフルオロエチレン製網を有底円筒状に加工することにより形成されている。収容容器本体32の底面の中心部には、パッシブサンプラ10の一方側の栓部材18が嵌入可能な嵌入孔33が形成されている。収容容器本体32の上端縁部32aは、他の部分よりも外径が小さくなるように肉薄に形成されており、蓋部材34の後述するフランジ38とインロー構造によって着脱可能に構成されている。
【0016】
蓋部材34は、収容容器本体32と同様に、被捕集物質が通過可能な通気性を有し、かつ、除湿材20の通過を規制可能な多孔部材から形成されており、本実施形態においては金網あるいはポリテトラフルオロエチレン製網を円板状に加工することにより形成されている。蓋部材34の中心部には、パッシブサンプラ10の他方側の栓部材18が嵌入可能な嵌入孔36が形成されている。蓋部材34の外周縁部には、周方向全域に亘って下方に突出するフランジ38が形成されており、このフランジ38は、収容容器本体32の上端縁部32aの外径と概ね同径の内径を有している。
【0017】
次に、本実施形態に係る捕集装置1を用いて大気中の被捕集物質を捕集する方法について説明する。本実施形態に係る捕集装置1を用いて大気中の被捕集物質を捕集するためには、まず、気密袋から取り出したパッシブサンプラ10の一端部(一方側の栓部材18)を収容容器本体32の嵌入孔33に嵌入させ、パッシブサンプラ10を収容容器本体32内において垂直に立設させる。次に、パッシブサンプラ10と収容容器本体32の内壁との間の空間に除湿材20を充填させると共に、パッシブサンプラ10の他端部(他方側の栓部材18)が蓋部材34の嵌入孔36に嵌入するように、蓋部材34を収容容器本体32に装着させる。そして、このようにして組み立てられた捕集装置1を所望の測定環境下に置く。これにより、除湿材20によりパッシブサンプラ10の周囲の湿度を低下させた状態において、移動拡散現象によりパッシブサンプラ10に被捕集物質が捕集される。次に、所定の捕集時間経過後、蓋部材34を収容容器本体32から取り外し、パッシブサンプラ10を気密袋に回収する。その後、パッシブサンプラ10を測定室まで搬送すると共に、測定室において、周知の種々の方法によりパッシブサンプラ10に捕集された被捕集物質の捕集量を測定する。
【0018】
以上のような被捕集物質の捕集を湿度の異なる複数日(湿度50%程度の夏の晴天日〜湿度75%程度の小雨の日)に屋外において行った結果を図2に示す。図2は、1,3−ブタジエンのパッシブサンプラによる捕集量とそのときの湿度との関係を示すグラフであり、本実施形態に係る捕集装置1を用いて被捕集物質の捕集を行った場合における被捕集物質の捕集量の計測結果と、従来の捕集方法、すなわち、除湿材を用いることなく被捕集物質の捕集を行った場合における被捕集物質の捕集量の計測結果とを示すものである。
【0019】
図2から、除湿材を用いない従来の捕集方法では、湿度50%以上の測定環境下において被捕集物質をほとんど捕集できていないことがわかる。一方、図2から、除湿材20を用いた本実施形態に係る捕集方法によれば、湿度65%以上の測定環境下においては従来の捕集方法と概ね同程度の捕集量であるものの、湿度が50〜60%程度の範囲の測定環境下においては従来の捕集方法よりも被捕集物質の捕集量が数倍多く、特に湿度が50〜55%程度の範囲の測定環境下においては従来の捕集方法による被捕集物質の捕集量のおよそ7倍もの捕集量であることがわかる。ここで、本実施形態に係る捕集方法の計測結果において、湿度65%以上の測定環境下で従来の捕集方法と概ね同程度の捕集量であったことは、パッシブサンプラ10の周囲に配置した除湿材20が吸収する水分量よりも大気中に存在する水分量が上回ったために、パッシブサンプラ10中に水分が入ってしまったことが原因であると考えられる。以上から、被捕集物質の捕集量が湿度に密接に関係しており、従来の捕集方法ではパッシブサンプラの捕集量が湿度50%以上の高湿度環境下において著しく減少するものの、本実施形態に係る捕集方法では測定環境下における湿度の影響が緩和されていることが明らかとなった。
【0020】
以上の通り、本実施形態に係る捕集装置1は、パッシブサンプラ10と、除湿材20と、パッシブサンプラ10及び除湿材20を収容するパッシブサンプラ収容容器30とを備えることにより、除湿材20によってパッシブサンプラ10の周囲の湿度を低下させた状態において被捕集物質の捕集を行うことができるため、測定環境下における湿度の影響を軽減させることができる。
【0021】
本発明に係る捕集装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。例えば、本実施形態に係る捕集装置1において、パッシブサンプラ10は、チューブ型のパッシブサンプラを用いて説明したが、これに限定されず、種々のパッシブサンプラを用いることができ、また、本実施形態に係る捕集装置1は、使用するパッシブサンプラの種類及び形状に応じて種々の改変を行なうことができる。
【0022】
また、本実施形態に係る捕集装置1において、パッシブサンプラ収容容器30は、収容容器本体32及び蓋部材34から構成されるとしたが、これに限定されず、パッシブサンプラ10の周囲に除湿材20を充填した状態でパッシブサンプラ10を収容可能に構成されていれば良い。さらに、本実施形態に係る捕集装置1において、パッシブサンプラ収容容器30は、金網あるいはポリテトラフルオロエチレン製網を加工することにより形成されるとしたが、これに限定されず、外気中の被捕集物質が通過可能なものであれば良い。
【符号の説明】
【0023】
1 捕集装置、10 パッシブサンプラ、20 除湿材、30 パッシブサンプラ収容容器
図1
図2