(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン回転数情報、エンジンの負荷率情報及び冷却水温度情報を受信する遠隔サーバにおいて、所定間隔のエンジン負荷率の移動平均値を演算して、エンジン負荷率の移動平均値と冷却水温度との相関関係を演算し、ある所定期間での相関関係が当該所定期間より前までの相関関係に対して、所定の相違状態である場合にオーバーヒートの発生を予測する、
遠隔サーバ。
エンジン回転数情報、エンジンの負荷率情報及び冷却水温度情報を受信する遠隔サーバにおいて、エンジン回転数情報及びエンジンの負荷率情報からエンジン出力を算出し、所定間隔のエンジン出力の移動平均値を演算して、エンジン出力の移動平均値と冷却水温度との相関関係を演算し、ある所定期間での相関関係が当該所定期間より前までの相関関係に対して所定の相違状態である場合にオーバーヒートの発生を予測する、
遠隔サーバ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、エンジンのオーバーヒートを予測できる遠隔サーバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、エンジン回転数情報、エンジンの負荷率情報及び冷却水温度情報を受信する遠隔サーバにおいて、所定間隔のエンジン負荷率の移動平均値を演算して、エンジン負荷率の移動平均値と冷却水温度との相関関係を演算し、ある所定期間での相関関係が当該所定期間
より前までの相関関係に対して所定の相違状態である場合にオーバーヒートの発生を予測するものである。
【0008】
請求項2においては、エンジン回転数情報、エンジンの負荷率情報及び冷却水温度情報を受信する遠隔サーバにおいて、エンジン回転数情報及びエンジンの負荷率情報からエンジン出力を算出し、所定間隔のエンジン出力の移動平均値を演算して、エンジン出力の移動平均値と冷却水温度との相関関係を演算し、ある所定期間での相関関係が当該所定期間
より前までの相関関係に対して所定の相違状態である場合にオーバーヒートの発生を予測するものである。
【0009】
請求項3においては、請求項1又は2に記載の遠隔サーバであって、外気温度情報又は大気圧情報を受信し、冷却水温度情報を外気温度情報或いは大気圧情報から演算される標高に基づいて補正するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の遠隔サーバによれば、各気筒の温度検知に拠らずに、エンジンのオーバーヒートの発生を予測できる。また、個別のエンジンコントローラにオーバーヒートの発生を予測する演算負荷が掛からず、予測ロジックの更新も容易である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を用いて、遠隔サーバシステム100について説明する。なお、
図1では、遠隔サーバシステム100を模式的に表している。
【0013】
遠隔サーバシステム100は、本発明の遠隔サーバの実施形態に係るシステムである。遠隔サーバシステム100とは、遠方のユーザーに対して何らかのサービスを提供するシステムである。本実施形態の遠隔サーバシステム100は、建設機械としての旋回作業車3を使用するユーザーに対し、世界各国の海外通信会社130と国内の国内通信会社120とを介して、遠隔情報センター110よりサービスを提供するシステムである。
【0014】
図2を用いて、遠隔サーバシステム100についてさらに説明する。なお、
図2では、遠隔サーバシステム100を模式的に表している。
【0015】
本実施形態の遠隔サーバシステム100は、旋回作業車3を使用するユーザーに対し、旋回作業車3を駆動するエンジン(図示なし)のオーバーヒートを予測し、オーバーヒートの発生を警告するシステムである。
【0016】
遠隔サーバシステム100は、例えば、遠隔情報センター110(
図1参照)に設けられた遠隔サーバ5と、旋回作業車3に設けられた端末サーバ6とが通信可能に構築されている。遠隔サーバ5は、多数の旋回作業車3・・・・3に設けられた端末サーバ6・・・・6と通信可能に構築されている。
【0017】
本実施形態では、端末サーバ6は、少なくとも、旋回作業車3の運転日情報として運転した年月日及び稼働時間、エンジンの回転数情報としてエンジン回転数Ne、エンジンの負荷率情報としてエンジン負荷率L及びエンジンの冷却水温度情報として冷却水温度Twを遠隔サーバ5に送信するものとする。
【0018】
本実施形態の旋回作業車3では、エンジンとしてコモンレールエンジンを搭載しているものとする。エンジン回転数Neは、エンジン回転数センサーによって検出されるエンジン回転数Neが遠隔サーバ5に送信される。冷却水温度Twは、エンジン冷却水温度センサーによって検出される冷却水温度Twが遠隔サーバ5に送信される。
【0019】
エンジン負荷率Lは、ECU(Engine Control Unit)が指令する噴射量についての、そのエンジン回転数Neにおける最大噴射量に対する割合が遠隔サーバ5に送信される。例えば、機械ガバナ式エンジンでは、ラック位置センサーによって検出されるラック位置がエンジン負荷率Lとなる。また、電子ガバナ式エンジンでは、アクセル開度センサーによって検出されるアクセル回動量がエンジン負荷率Lとなる。
【0020】
図3を用いて、エンジン負荷率Lと冷却水温度Twとの相関について説明する。なお、
図3では、横軸にエンジン負荷率Lを表し、縦軸に冷却水温度Twを表し、エンジン負荷率Lと冷却水温度Twとの相関をグラフによって表している。なお、エンジン負荷率Lは、10分毎の移動平均値を表している。
【0021】
例えば、グラフ中にてAのプロット群が、旋回作業車3の前回の稼働までにおける、エンジン負荷率Lと冷却水温度Twとの相関をプロットしたものとする。また、グラフ中にてBのプロット群が、同じ旋回作業車3の今回の稼働における、エンジン負荷率Lと冷却水温度Twとの相関をプロットしたものとする。
【0022】
グラフ中にてAのプロット群では、エンジン負荷率Lと冷却水温度Twとの相関が同様の傾向を示している。ここで、近似曲線A1は、前回の稼働までにおけるエンジン負荷率Lと冷却水温度Twとの相関をプロットしたものから算出したものである。
【0023】
ところが、グラフ中にてBのプロット群では、エンジン負荷率Lと冷却水温度Twとの相関がAの領域と比較して冷却水温度Twが高い傾向を示している。ここで、近似曲線B1は、今回の稼働におけるエンジン負荷率Lと冷却水温度Twとの相関をプロットしたものから算出したものである。
【0024】
ここで、エンジンの冷却水温度Twは、エンジン負荷率Lにほぼ比例することが分かっている。また、エンジンのオーバーヒートとは、エンジンが過熱され、動作不良を起こした状態である。エンジンが過熱される原因としては、冷却能力不足である場合が多い。冷却能力不足は、冷却水温度Twの上昇によって検知できる場合が多い。
【0025】
すなわち、エンジンのオーバーヒートは、エンジン負荷率Lに対する冷却水温度Twに相違が生じたことを検知すれば未然に発生を防止できる。例えば、グラフ中にてBのプロット群では、エンジンのオーバーヒートが発生する前兆を示している。
【0026】
図4を用いて、オーバーヒート予測制御S100について説明する。なお、
図4では、オーバーヒート予測制御S100の流れをフローチャートにて表している。
【0027】
オーバーヒート予測制御S100は、遠隔サーバ5がエンジンのオーバーヒートを予測する制御である。
【0028】
ステップS110において、遠隔サーバ5は、旋回作業車3の今回の稼働における、エンジン負荷率L及び冷却水温度Twを情報として取得する。なお、エンジン負荷率Lは、10分毎の移動平均値を情報として取得する。
【0029】
ステップS120において、遠隔サーバ5は、取得したエンジン負荷率L(移動平均値)と冷却水温度Twとからエンジン負荷率Lと冷却水温度Twとの相関を示す近似曲線B1を算出する。
【0030】
ステップS130において、遠隔サーバ5は、今回の稼働において算出した近似曲線B1と、前回までの稼働において算出した近似曲線A1とを算出し、近似曲線B1が所定領域R1の範囲内かどうかを判定する。なお、前回までの稼働において算出する近似曲線A1は、エンジンが正常に稼働しているものに限る。
【0031】
なお、所定領域R1の範囲とは、算出した近似曲線A1の近傍の範囲であって、誤差も含んだ領域として算出されるものとする。
【0032】
遠隔サーバ5は、近似曲線B1が所定領域R1の範囲内であれば、ステップS140に移行する。一方、近似曲線B1が所定領域R1の範囲内でなければ、オーバーヒート予測制御S100を終了する。
【0033】
ステップS140において、遠隔サーバ5は、旋回作業車3のエンジンがオーバーヒートする可能性があるとして、ユーザーに警告し、オーバーヒート予測制御S100を終了する。ユーザーに警告する手段としては、端末サーバ6を介して旋回作業車3の操作パネルにオーバーヒート予測表示する、或いは、直接ユーザーに連絡する等が考えられる。
【0034】
遠隔サーバ5及びオーバーヒート予測制御S100の効果について説明する。遠隔サーバ5及びオーバーヒート予測制御S100によれば、エンジンのオーバーヒートの発生を予測できる。また、旋回作業車3のECUにオーバーヒートの発生を予測する演算負荷が掛からず、予測ロジックの更新も容易である。
【0035】
図5を用いて、エンジン出力Pと冷却水温度Twとの相関について説明する。なお、
図5では、横軸にエンジン出力Pを表し、縦軸に冷却水温度Twを表し、エンジン出力Pと冷却水温度Twとの相関をグラフによって表している。なお、エンジン出力Pは、10分毎の移動平均値を表している。
【0036】
例えば、グラフ中にてCのプロット群が、旋回作業車3の前回の稼働までにおける、エンジン出力Pと冷却水温度Twとの相関をプロットしたものとする。また、グラフ中にてDの領域が、同じ旋回作業車3の今回の稼働における、エンジン出力Pと冷却水温度Twとの相関をプロットしたものとする。
【0037】
グラフ中にてCのプロット群では、エンジン出力Pと冷却水温度Twとの相関が同様の傾向を示している。ここで、近似曲線C1は、前回の稼働までにおけるエンジン出力Pと冷却水温度Twとの相関をプロットしたものから算出したものである。
【0038】
ところが、グラフ中にてDのプロット群では、エンジン出力Pと冷却水温度Twとの相関がCの領域と比較して冷却水温度Twが高い傾向を示している。ここで、近似曲線D1は、今回の稼働におけるエンジン出力Pと冷却水温度Twとの相関をプロットしたものから算出したものである。
【0039】
ここで、エンジンの冷却水温度Twは、上述したエンジン負荷率Lに比較して、エンジン出力Pに精度良く比例することが分かっている。また、グラフ中にてDのプロット群では、エンジンのオーバーヒートが発生する前兆を示している。
【0040】
図6を用いて、別のオーバーヒート予測制御S200について説明する。なお、
図6では、別のオーバーヒート予測制御S200の流れをフローチャートにて表している。
【0041】
ステップS210において、遠隔サーバ5は、旋回作業車3の前回までの稼働における、エンジン出力P及び冷却水温度Twを情報として取得する。なお、エンジン出力Pは、10分毎の移動平均値を情報として取得する。
【0042】
ステップS220において、遠隔サーバ5は、取得したエンジン出力P(移動平均値)と冷却水温度Twとからエンジン出力Pと冷却水温度Twとの相関を示す近似曲線D1を算出する。
【0043】
ステップS230において、遠隔サーバ5は、今回の稼働において算出した近似曲線D1と、前回までの稼働において算出した近似曲線C1との差を算出し、近似曲線D1が所定領域R2の範囲内かどうかを判定する。なお、前回までの稼働において算出する近似曲線C1は、エンジンが正常に稼働しているものに限る。
【0044】
なお、所定領域R2の範囲とは、算出した近似曲線C1の近傍の範囲であって、誤差も含んだ領域として算出されるものとする。
【0045】
遠隔サーバ5は、近似曲線D1が所定領域R2の範囲内であれば、ステップS240に移行する。一方、近似曲線D1が所定領域R2の範囲内でなければ、オーバーヒート予測制御S200を終了する。
【0046】
ステップS240において、遠隔サーバ5は、旋回作業車3のエンジンがオーバーヒートする可能性があるとして、ユーザーに警告し、オーバーヒート予測制御S100を終了する。
【0047】
遠隔サーバ5及び別のオーバーヒート予測制御S200の効果について説明する。遠隔サーバ5及び別のオーバーヒート予測制御S200によれば、エンジンのオーバーヒートの発生を精度良く予測できる。また、旋回作業車3のECUにオーバーヒートの発生を予測する演算負荷が掛からず、予測ロジックの更新も容易である。
【0048】
なお、本実施形態では、冷却水温度センサーで検出される冷却水温度Twを直接用いる構成としたが、これに限定されない。例えば、外気温センサーによって検出される外気温度、或いは、大気圧センサーによって検出される大気圧より演算される標高を用いて冷却水温度Twを補正する構成としても良い。
【0049】
また、本実施形態では、旋回作業車3を使用するユーザーに対しオーバーヒートを予測する構成としたが、これに限定されない。例えば、トラクタ又はコンバイン等を使用するユーザーに対しオーバーヒートを予測する構成としても良い。