(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の玄関装置取付構造においては、玄関装置の配線作業や取付作業に非常に手間を要していた。具体的には、特許文献1に記載の玄関装置取付構造においては、壁面に対して、配線を挿通させるための孔や、玄関装置の取り付けスペースを形成する必要があるため、壁面に対して比較的大掛かりな工事を行う必要があった。また、特許文献2に記載の玄関装置取付構造においては、床面に対して、配線を挿通させるための孔や、玄関装置の基礎を埋設や打設したりする必要があるため、床面に対して比較的大掛かりな工事を行う必要があった。特に、これら従来の構造を、既存の建物に対して適用する場合には、仕上げ材等を用いて既に完成させた壁面や床面に対して上述した大掛かりな工事を行う必要があるため、仕上げを再度やり直さなければならなくなる等、玄関装置の配線作業や取付作業に一層の手間を要していた。
【0006】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためのものであって、玄関部に玄関装置を取り付ける際の施工作業を簡易化することが可能になる、玄関装置取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の玄関装置取付構造は、ユーザからの操作を受け付ける玄関装置を、住宅の玄関部に取り付けるための玄関装置取付構造であって、周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対して前記玄関装置の配線を配設するための配設空間を介して設置されたパネルを備え、
前記パネルは、前記対象壁面と平行に設置され、前記玄関装置を前記パネルに対して取り付けた。
【0009】
また、請求項
2に記載の玄関装置取付構造は、
ユーザからの操作を受け付ける玄関装置を、住宅の玄関部に取り付けるための玄関装置取付構造であって、周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対して前記玄関装置の配線を配設するための配設空間を介して設置されたパネルと、前記対象壁面に対して直交するように並設した一対の取付ベースであって、高さ方向に沿って連続する一対の取付ベースを備え、前記一対の取付ベースにおける前記対象壁面とは反対側の端部に、前記パネルを取り付け、これら対象壁面、パネル、及び一対の取付ベースによって囲繞された空間部を、前記配設空間とし
、前記玄関装置を前記パネルに対して取り付けた。
【0010】
また、請求項
3に記載の玄関装置取付構造は、請求項
2に記載の玄関装置取付構造において、前記取付ベースを前記パネルの外縁部よりも内側に位置させることによって、前記パネルの前方又は側方の少なくとも一方から、前記取付ベースの少なくとも一部を遮蔽した。
【0011】
また、請求項
4に記載の玄関装置取付構造は、
ユーザからの操作を受け付ける玄関装置を、住宅の玄関部に取り付けるための玄関装置取付構造であって、周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対して前記玄関装置の配線を配設するための配設空間を介して設置されたパネルと、前記パネルを開閉させることにより前記配設空間を開放又は閉鎖するための開閉手段を備え
、前記玄関装置を前記パネルに対して取り付けた。
【0012】
また、請求項
5に記載の玄関装置取付構造は、請求項1から
4のいずれか一項に記載の玄関装置取付構造において、前記玄関装置の配線を、前記配設空間を介して、前記配設空間の上方における前記玄関部の天井に設けられた天井配線孔に挿通した。
【0013】
また、請求項
6に記載の玄関装置取付構造は、
ユーザからの操作を受け付ける玄関装置を、住宅の玄関部に取り付けるための玄関装置取付構造であって、周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対して前記玄関装置の配線を配設するための配設空間を介して設置されたパネルと、前記パネルと前記玄関部の天井との相互間に形成された隙間である天井側隙間、又は前記パネルと前記玄関部の床との相互間に形成された隙間である床側隙間の少なくとも一方を備え
、前記玄関装置を前記パネルに対して取り付けた。
【0014】
また、請求項
7に記載の玄関装置取付構造は、請求項
6に記載の玄関装置取付構造において、前記床側隙間の高さを、前記天井側隙間の高さよりも大きくなるように形成した。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の玄関装置取付構造によれば、対象壁面に対して配設空間を介して設置されたパネルに対して玄関装置を取り付けるため、玄関装置の配線を配設空間を介して任意の位置まで巡らせることができるため、配線用の孔を壁面や床面以外の位置に空けて玄関装置の配線作業を行うことが可能になり、壁面や床面に対して、配線を挿通させるための孔や玄関装置の取り付けスペースを形成したり、玄関装置の基礎を埋設や打設したりする必要がなくなるため、施工作業を従来よりも簡素化することが可能になる。
また、玄関部の壁面に対して凹部を形成し、その凹部に玄関装置を埋め込むことによって玄関装置を壁面に対して直接固定することも考えられるが、このような手段によれば、玄関装置を埋め込むための凹部を壁面に設けるという大掛かりな工事が必要となってしまう。しかしながら、請求項1に記載の玄関装置取付構造によれば、周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対してパネルを設置するので、玄関装置を埋め込むための凹部を壁面に設けるという大掛かりな工事が不要になり、玄関装置を取り付けるための施工性を向上させることが可能になるため、玄関装置を容易かつ安価に取り付けることが可能になる。
さらに、対象壁面とパネルとの間に配設空間を形成できるので、この配設空間に配設した配線をパネルによって少なくとも前方側から容易に遮蔽することが可能になり、玄関装置及びその周辺部分の意匠性を向上させることが可能になる。
【0016】
また、玄関部の角部において、所定の壁面から当該所定の壁面と直交する壁面に架けてパネルを平面視上の斜め方向に沿って設置して、パネルと当該2つの壁面により囲繞された空間部を配設空間として利用することも考えられるが、このような手段によれば、玄関装置の設置位置が玄関部の角部に限定されてしまう。しかしながら、請求項
1に記載の玄関装置取付構造によれば、パネルを対象壁面に対して平行に配置することにより、玄関装置の設置位置が玄関部の角部等といった特定の位置に限定されなくなるため、玄関装置の設置位置の自由度を向上させることが可能になる。
【0017】
また、請求項
2に記載の玄関装置取付構造によれば、
周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対してパネルを設置するので、玄関装置を埋め込むための凹部を壁面に設けるという大掛かりな工事が不要になり、玄関装置を取り付けるための施工性を向上させることが可能になるため、玄関装置を容易かつ安価に取り付けることが可能になる。
さらに、対象壁面とパネルとの間に配設空間を形成できるので、この配設空間に配設した配線をパネルによって少なくとも前方側から容易に遮蔽することが可能になり、玄関装置及びその周辺部分の意匠性を向上させることが可能になる。
さらにまた、対象壁面、パネル、及び高さ方向に沿って連続する一対の取付ベースによって囲繞された空間部を配設空間としたので、四方から覆われた配設空間を極めて簡易に形成することができ、この配設空間に配設した配線をパネル及び一対の取付ベースによって前方側及び側方側から容易に遮蔽することが可能になり、玄関装置及びその周辺部分の意匠性を一層向上させることが可能になる。
【0018】
また、請求項
3に記載の玄関装置取付構造によれば、取付ベースをパネルの外縁部よりも内側に位置させることによって、パネルの前方又は側方の少なくとも一方から取付ベースの少なくとも一部を遮蔽するので、取付ベースに設けられたネジや蝶番等といった意匠性の低い部分をユーザの視線から遮ることができ、玄関装置及びその周辺部分の意匠性を一層向上させることが可能になる。
【0019】
また、請求項
4に記載の玄関装置取付構造によれば、
周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対してパネルを設置するので、玄関装置を埋め込むための凹部を壁面に設けるという大掛かりな工事が不要になり、玄関装置を取り付けるための施工性を向上させることが可能になるため、玄関装置を容易かつ安価に取り付けることが可能になる。
さらに、対象壁面とパネルとの間に配設空間を形成できるので、この配設空間に配設した配線をパネルによって少なくとも前方側から容易に遮蔽することが可能になり、玄関装置及びその周辺部分の意匠性を向上させることが可能になる。
さらにまた、パネルを開閉するための開閉手段を備えるので、玄関装置の配線作業を行う際には、パネルを開くことにより配線作業を容易に行うことが可能になり、配線作業が終了した際には、パネルを閉じることにより配設空間に配設した配線を容易に外部から遮蔽することが可能になり、配線作業の作業性と玄関装置及びその周辺部分の意匠性とを両立させることが可能になる。
【0020】
また、請求項
5に記載の玄関装置取付構造によれば、配線を配設空間を介して天井配線孔に挿通するので、床や壁面に配線孔を形成して配線を挿通させる場合に比べて容易に配線作業を行うことが可能になり、玄関装置を取り付けるための施工性を一層向上させることが可能になるため、玄関装置を一層容易かつ一層安価に取り付けることが可能になる。
【0021】
また、請求項
6に記載の玄関装置取付構造によれば、
周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対してパネルを設置するので、玄関装置を埋め込むための凹部を壁面に設けるという大掛かりな工事が不要になり、玄関装置を取り付けるための施工性を向上させることが可能になるため、玄関装置を容易かつ安価に取り付けることが可能になる。
さらに、対象壁面とパネルとの間に配設空間を形成できるので、この配設空間に配設した配線をパネルによって少なくとも前方側から容易に遮蔽することが可能になり、玄関装置及びその周辺部分の意匠性を向上させることが可能になる。
さらにまた、天井側隙間と床側隙間との少なくとも一方を備えるので、パネルを天井面や床面に対して隙間なく当接させる場合に比べて、対象壁面に対してパネルを取り付けるための施工性を一層向上させることが可能になるため、玄関装置を一層容易かつ一層安価に取り付けることが可能になる。また、天井側隙間と床側隙間との少なくとも一方を備えるので、パネルを開閉手段により開閉可能とした場合においても、パネルが天井や床と接触することを防止でき、パネルを円滑に開閉させることが可能になる。
【0022】
また、請求項
7に記載の玄関装置取付構造によれば、床側隙間の高さを、天井側隙間の高さよりも大きくなるように形成するので、配設空間に配設した配線が天井側隙間を介して前方側に露出する可能性を低減することが可能になると共に、ユーザが玄関装置を操作するために当該玄関装置の前方に立った状態において、ユーザの足がパネルの下部に当たる可能性を低減することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る玄関装置取付構造の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕本実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕本実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
〔I〕本実施の形態の基本的概念
まず、本実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態に係る玄関装置取付構造は、玄関装置を住宅の玄関部の壁面に取り付けるための玄関装置取付構造である。ここで、「玄関装置」とは、玄関部に設置される装置であって、ユーザが各種操作を行うための操作手段である。この玄関装置としては、任意の機能を備えた装置が該当し得るが、例えば、本実施の形態において、玄関装置とは、ユーザが呼び出し対象である部屋の部屋番号を入力するためのキースイッチ、ユーザを撮影するためのカメラ、玄関部の扉を開閉するために鍵を挿通するための鍵穴、及び玄関部に居るユーザが呼び出し対象である部屋の居住者と通話をするためのマイクやスピーカを備えた、公知の集合玄関機(ロビーインターホン、ドアホン)であるものとして説明する。また、「住宅」とは、居室の数等に限定されず任意の住宅であって構わないが、本実施の形態においては、複数の居室により構成された集合住宅であるものとして説明する。また、「玄関部」とは、ユーザが住宅に出入りするための空間部であり、住宅の表口の玄関部のみでなく、住宅の裏口の玄関部も含む。また、「ユーザ」とは、玄関装置を操作する者であり、住宅の居住者の他、住宅を任意の目的で訪れた者を含む。なお、玄関部及び集合玄関機の詳細については後述する。
【0026】
〔II〕本実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る本実施の形態の具体的内容について説明する。
【0027】
(構成)
最初に、本実施の形態に係る玄関装置取付構造1の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る玄関装置取付構造1を示す概略図であって、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図である(ただし、(b)〜(d)においては後述する設置壁面を破断して示す)。また、
図2は、
図1におけるA−A矢視断面図である。また、
図3は、
図1におけるB−B矢視断面図である。以下では、必要に応じて、
図1におけるX−X’方向を「幅方向」と称し、特にX方向を「右方向」、X’方向を「左方向」と称する。また、Y−Y’方向を「奥行き方向」と称し、特にY方向を「前方向」、Y’方向を「奥方向」と称する。また、Z−Z’方向を「高さ方向」と称し、特にZ方向を「上方向」、Z’方向を「下方向」と称する。
【0028】
これらの
図1〜
図3に示すように、本実施の形態に係る玄関装置取付構造1は、住宅の玄関部2に、集合玄関機3を取り付けるための構造であり、パネル10、取付下地20、21、蝶番30、エッジキャップ40、固定プレート50、及び連結プレート60を備えて構成されている。以下では、玄関部2と集合玄関機3の構成について順次説明した後に、玄関装置取付構造1を構成する各構成要素について詳細に説明する。なお、玄関部2、集合玄関機3、及び玄関装置取付構造1を構成する各構成要素に関しては、特記する場合を除き、公知の構成を採用することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0029】
(構成−玄関部)
玄関部2は、玄関装置取付構造1が配置される空間部である。この玄関部2の形状、広さ、用途等は任意であるが、本実施の形態においては、屋外空間と集合住宅のエントランスとを接続する風除室であって、四方の壁面、天井、及び床により囲繞された略直方体形状の公知の風除室として形成されているものとして説明する。
【0030】
この玄関部2を構成する四方の壁面のうち、一つの壁面には、屋外空間と玄関部2とを往来するための手動扉(図示省略)が設けられており、この壁面と対向する位置に形成された他の一つの壁面には、玄関部2と集合住宅のエントランスとを往来するための自動扉(図示省略)が設けられている。なお、その他の二つの壁面(図示省略)には、扉は設けられていないものとする。ここで、これら四方の壁面のうち、いずれの壁面に対して集合玄関機3を取り付けることも可能であるが、本実施の形態においては、手動扉や自動扉が設けられていない壁面のうち一つの壁面に対して集合玄関機3を取り付けるものとして説明する。なお、以下では、このように集合玄関機3が取り付けられる一つの壁面を「設置壁面」2aと称して説明する。この設置壁面2aは、
図3に示すように、所定間隔を隔てて配置された壁柱2bを中心として構成された壁体の表面に、複数の化粧ボード2cを並設して構成されている。これら複数の化粧ボード2cの相互間には、目地2dが設けられている。なお、
図1、2に示すように、設置壁面2aの下端位置には、水平方向に沿って幅木2eが配置されている。
【0031】
このように構成された設置壁面2aのうち、特定の一部分を「対象壁面」2fと称する。この一部分とは、設置壁面2aのうち、当該設置壁面2aに対して平行に設置されたパネル10と対向する部分であって、当該パネル10と同一面積の部分である。この対象壁面2fは、設置壁面2aにおける対象壁面2f以外の部分に対して面一となっている。すなわち、本実施の形態において、対象壁面2fは、上記特許文献2に記載されたような凹部としてではなく、設置壁面2aにおける対象壁面2f以外の部分に対して面一状に連続する平滑面として構成されている。
【0032】
ここで、「面一」とは、集合玄関機3の全幅に対応するような広幅状の凹部が存在しないことを意味しており、例えば、上述のように設置壁面2aの表面を複数の化粧ボード2cを並設することにより構成した場合に、これら複数の化粧ボード2cの相互間に形成される目地2dのように、狭幅の凹部が存在することまでを除外するものではない。
【0033】
また、玄関部2を構成する天井は、天井スラブ(図示省略)の下方に公知の手段にて天井ボード2gを吊り下げることによって構成されている。この天井ボード2gにおける、後述する配設空間4の上方に対応する位置には、天井配線孔2hが形成されている。この天井配線孔2hは、集合玄関機3の後述する配線3cを挿通するための孔であり、天井ボード2gを高さ方向に沿って貫通する貫通孔として形成されている。なお、天井配線孔2hの形状や径については任意であり、少なくとも集合玄関機3の配線3cを挿通することが可能な程度の大きさ及び形状であれば良い。
【0034】
(構成−集合玄関機)
このように構成された玄関部2に取り付けられる集合玄関機3は、操作部3a及び本体部3bを備えて構成されている。このうち操作部3aは、ユーザが各種操作を行うための操作手段であり、ユーザが呼び出し対象である部屋の部屋番号を入力するためのキースイッチ、ユーザを撮影するためのカメラ、玄関部2の扉を開閉するために鍵を挿通するための鍵穴、及び玄関部2に居るユーザが呼び出し対象である部屋の居住者と通話をするためのマイクやスピーカが設けられている。この操作部3aは、正面形状を略長方形状とする板状体に対して、上記キースイッチ等を設けて構成されている。
【0035】
一方、本体部3bは、集合玄関機3を稼動させるための各種電子機器等を収容するものであり、操作部3aの前面よりも幅及び高さの小さい長方体状に形成されており、操作部3aの背面に接合されている。この本体部3bの背面には、集合玄関機3に対して電源を供給するためのケーブルや、集合玄関機3に対して各種信号を送信するためのケーブルが接続されており、これらのケーブルが本体部3bの背面から奥方向に引き出されている。なお、以下では、これらのケーブルを「配線」3cと総称する。
【0036】
(構成−玄関装置取付構造)
次に、玄関装置取付構造1を構成する各構成要素について説明する。この玄関装置取付構造1は、上述したように、パネル10、取付下地20、21、蝶番30、エッジキャップ40、固定プレート50、及び連結プレート60を備えて構成されている。
【0037】
(構成−玄関装置取付構造−パネル)
最初に、パネル10について説明する。このパネル10は、対象壁面2fに対して平行に、すなわち、幅方向に沿って配置された玄関装置固定手段であって、正面形状を略長方形とする板状体として形成されている。ここで、このパネル10、対象壁面2f、及び取付下地20、21によって囲繞された空間を、以下では必要に応じて「配設空間4」と称して説明する。この配設空間4には上述した集合玄関機3の配線3cが配設される。また、以下では、当該パネル10における対象壁面2fと対向する側の面を「パネル10の背面」と称し、当該パネル10における対象壁面2fと対向していない側の面を「パネル10の前面」と称する。
【0038】
ここで、パネル10の具体的な形状や素材については、集合玄関機3を当該パネル10に取り付け可能である限り任意であり、例えば、一枚の金属板により形成することもできる。しかしながら、ユーザが集合玄関機3を操作した際(例えば、ユーザがキースイッチを押圧した際や、鍵穴に鍵を挿入した際)には、パネル10に対して奥行方向への圧力が加わることになるため、このような圧力によって変形しない程度の剛性をパネル10に持たせるためには、パネル10を構成する金属板の肉厚を比較的厚くする必要が生じる。しかしながら、このような肉厚の金属板によってパネル10を形成した場合には、パネル10が重くなることや加工が困難になることから、施工性の観点から問題が生じる可能性がある。特に、パネル10を1枚の金属板で形成した場合、パネル10に視覚的な重厚感を持たせるためには、パネル10を相当な厚さにする必要が生じ、施工性が一層低下する可能性がある。このため、本実施の形態においては、
図1や
図2に示すように、パネル10をハニカムコア構造により構成することとしている。
【0039】
具体的には、
図2,3に示すように、パネル10は、3枚の分割パネル11、フラットバー12、及びパネル連結プレート13を備えて構成されている。3枚の分割パネル11は、高さ方向に沿って並設されたパネル体である。各分割パネル11は、上下左右に配置されて全体として正面方形環状に枠組みされた外枠部材11aを、その前面及び後面に配置した一対の化粧鋼板11bで外側から覆い、これら一対の化粧鋼板11bの相互間にハニカムコア11cを収容して構成されている。外枠部材11aは、分割パネル11の構造体であり、例えば、比較的剛性の高いスチールにて形成されている。化粧鋼板11bは、パネル10の意匠性の向上を図るための化粧材であり、その具体的な素材や意匠は任意であるが、例えば、上方と下方に配置された分割パネル11には、玄関部2の壁面や自動扉の表面材と同じ素材(例えば、木目調の鋼板)で形成された化粧鋼板11bが使用されることで、意匠上の統一化が図られており、中央に配置された分割パネル11には、他の分割パネル11とは異なる化粧鋼板11bが使用されることで、意匠上のアクセントが加えられている。ハニカムコア11cは、紙材又はアルミ材等から形成された断面六角形状(ハニカム形状)のコアを多数隣接配置して形成されている。このように形成された分割パネル11の厚みは任意であるが、例えば20〜40mm程度とすることができる。このように、パネル10を分割パネル11を用いて構成した場合には、一枚の金属板により形成する場合に比べて、パネル10の肉厚を厚くしても軽量化することが可能になり、パネル10の施工性を向上させることが可能になると共に、パネル10に視覚的な重厚感を持たせることが可能になる。
【0040】
このようにパネル10に用いる分割パネル11の代わりとして1枚の大型のパネル等を用いることもできるが、本実施の形態においては、3枚の分割パネル11を高さ方向に沿って並設している。これら3枚の分割パネル11は、相互に略同一の形状にて形成されているが、中央に配置される分割パネル11にのみ、集合玄関機3を固定するための開口部11dが設けられている。この開口部11dは、集合玄関機3の本体部3bと略同一の幅及び高さにて形成された孔部であって、分割パネル11を奥行き方向に沿って貫通する孔部であり、この開口部11dを介して、集合玄関機3の本体部3bが分割パネル11に挿通されてパネル10に固定されている。このパネル10に対する集合玄関機3の具体的な固定構造は任意であるが、例えば、集合玄関機3の本体部3bの側面から分割パネル11の背面に至る位置に平面略L字型の金具(図示省略)を配置し、この金具をそれぞれ本体部3bと分割パネル11にネジ留めすることで、パネル10に対して集合玄関機3を固定することができる。なお、このように構成されたパネル10の全体形状の詳細については、後述する。
【0041】
フラットバー12は、
図2に示すように、3枚の分割パネル11の相互間において、水平面に沿って配置された板状体であり、これら3枚の分割パネル11の相互間隔を所定間隔に固定するためのスペーサとして機能している。各フラットバー12は、上方に配置された分割パネル11の下面と、中央に配置された分割パネル11の下面とに、ネジ12aにてネジ留め固定されている。
【0042】
パネル連結プレート13は、3枚の分割パネル11を相互に連結するための連結手段であり、パネル10の全体の高さに略対応する高さを有するものであって、水平断面を略L字状とするアルミ製の部材である。このパネル連結プレート13を、高さ方向に沿って並設された3枚の分割パネル11に対して左右の各々の側方に配置し、各分割パネル11に対してネジ13aにてネジ留め固定することで、これら3枚の分割パネル11が相互に連結されている。なお、このパネル連結プレート13の下端部は、さらにエッジキャップ40によって覆われているが、エッジキャップ40については後述する。
【0043】
(構成−取付下地)
次に、取付下地20、21について説明する。これら取付下地20、21は、対象壁面2fに対して直交するように並設した一対の取付ベースであって、高さ方向に沿って連続する一対の取付ベースである。このような取付下地20、21によって、対象壁面2fに対して配設空間4を介してパネル10を設置することが可能になる。なお、この取付下地20、21は、パネル10を対象壁面2fに対して取り付けることが可能な限りにおいて任意の形状にて構成することが可能である。但し、本実施の形態においては、
図3に示すように、パネル10と略同一の高さを有し、コの字形状の水平断面を有する取付下地20と、同じくパネル10と略同一の高さを有し、蝶番30を接続することが可能な形状にて形成された取付下地21とによって構成されている。
【0044】
この取付下地20は、概略的に、一枚の金属平板をコの字形状に折り曲げて形成することが可能であり、このように折り曲げられることにより形成された各部を、部材20a、部材20b、部材20cと称して説明する。
【0045】
まず、部材20aは、取付下地20を対象壁面2fに対して固定するための固定手段であって、その全面において対象壁面2fと当接するように配置される。この部材20aは、高さ方向に沿った複数箇所において、配設空間4から、部材20aと連結プレート60とを順次貫通して対象壁面2fにネジ22を打ち込む事により、取付下地20を対象壁面2fに対して固定されている。
【0046】
また、部材20bは、対象壁面2fから所定距離だけ前方方向に離れた位置にパネル10を設置するために、パネル10を対象壁面2fから所定距離だけ離隔するための離隔手段であって、対象壁面2f及びパネル10に対して直交するように配置されている。この部材20bは、高さ方向に沿った複数箇所において、配設空間4から、後述する固定プレート50を貫通するネジ23によって、固定プレート50に対して固定されている。
【0047】
また、部材20cは、パネル10と取付下地20との当接面積を増大させることによりパネル10をより安定的に取付下地20に固定するための当接手段であって、その全面においてパネル10と当接するように配置される。ここで、この部材20cは、パネル10と略同一の高さを有する部材であるが、固定プレート50と重ならないように固定プレート50の部分のみを切り欠いた形状にて形成されている。
【0048】
次に取付下地21について説明する。
図4は、
図3の要部拡大平面図である。また、
図5は、
図3の要部拡大斜視図である。これら
図4、及び
図5に示すように、取付下地21は、概略的に、部材21a、部材21b、部材21c、部材21d、部材21e、部材21f、及び部材21gを備えて構成されている。
【0049】
部材21aは、部材20aと左右対称に構成することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。部材21bは、パネル10を対象壁面2fから所定距離だけ離隔するための離隔手段であって、対象壁面2f及びパネル10に対して直交するように配置されている。より具体的には、部材21bは、対象壁面2fから、パネル10の背面に設けられた蝶番30に至る位置に配置されており、この部材21bと部材20bとによって、パネル10が対象壁面2fに対して平行に保たれている。部材21cは、部材21bの先端部から180度折り曲げられて形成された部分であって、部材21bと平行に隣接配置されている。また、部材21dは、部材21cと接続されパネル10に対して平行に形成された部分である。部材21eは、部材21dと接続されパネル10に対して直交に形成された部分であり、その先端部において後述する蝶番面30bと接している。
【0050】
また、部材21fは、部材21c、部材21d、及び部材21eによって構成される略コ字状の部材によって略囲われた空間の上方部分を覆う部材である。具体的には、平面形状を略長方形とする板状体として形成されており、部材21c、部材21d、及び部材21の上端に対して溶接等により接合されている。また、部材21gは、部材21c、部材21d、及び部材21eによって構成される略コ字状の部材によって略囲われた空間の下方部分を覆う部材である。具体的には、平面形状を略長方形とする板状体として形成されており、部材21c、部材21d、及び部材21の下端に対して溶接等により接合されている。
【0051】
ここで、これらの部材21c、部材21d、部材21e、部材21f、及び部材21gが略囲繞する空間(以下、仮固定空間27と称する)には、蝶番土台21hが配置される。この蝶番土台21hは、取付下地21に対して蝶番30を固定するための蝶番固定手段であり、水平断面形状が略コ字状の金属部材であって、取付下地21と略同一の高さを有している。そして、この蝶番土台21hは、
図5に示すように、蝶番土台21hにおける蝶番30が設けられていない位置において、ネジ26によって部材21dに対してネジ留めされて接合されている。
【0052】
(構成−蝶番)
蝶番30は、パネル10を開閉させることにより配設空間4を開放又は閉鎖するための開閉手段である。ここで、この蝶番30は、相互に開閉可能な一対の蝶番面30a、30bを備えた公知の蝶番として構成されており、一方の蝶番面30aは、蝶番土台21hに対してネジ24によりネジ留め固定されており、他方の蝶番面30bは、パネル10の背面に対して例えばネジ留め等の任意の方法にて固定されている。そして、このように蝶番30により蝶番土台21hとパネル10とを回動可能に接続することにより、蝶番30を軸としてパネル10を開閉自在とすることが可能である。
【0053】
(構成−エッジキャップ)
エッジキャップ40は、パネル連結プレート13の下端部をカバーすることにより、ユーザがパネル10の前方に立って集合玄関機3の操作を行う際等に、ユーザの足がパネル連結プレート13の下端部に当接して怪我をしてしまうことを防止するためのカバー手段である。このエッジキャップ40は、
図4に示すように、パネル10の両側端部に配置されたそれぞれのパネル連結プレート13の下端部に対して取り付けられている。具体的には、水平断面を略C字状とする高さ10mm程度の樹脂製の側面部40a、及び側面部40aの底部に配置される底面部40bであって、側面部40aが略囲う空間を側面部40aの下方から覆う板状体にて形成された底面部40bとを溶接接合等することにより形成されている。そして、パネル連結プレート13の下端部にこのエッジキャップ40を上方向に押し込んで嵌合させた状態において、パネル連結プレート13の下端部における側面とエッジキャップ40の側面部40aとをネジ留めすることにより、エッジキャップ40をパネル連結プレート13の下端部に対して固定することが可能となる。なお、その他の手段にてエッジキャップ40をパネル連結プレート13の下端部に対して固定しても良く、例えば接着剤を用いて固定しても良い。
【0054】
(構成−固定プレート)
固定プレート50は、パネル10の背面と取付下地20とを接続するための接続手段である。この固定プレート50は、具体的には一枚の金属板を直角に折り曲げて形成された断面略L字形状の部材であって、一方の面がパネル10の背面と平行となるように、かつ他方の面がパネル10の背面と直交するように配置される部材である。この固定プレート50の形状や個数は任意であるが、本実施の形態において、固定プレート50は、
図2に示すように、高さ20mm程度の部材として形成され、上方の分割パネル11及び下方の分割パネル11の各々の上下略中央位置に対応する位置に配置される。ここで、パネル10の背面と平行となるように配置された部分は、ネジ25によってパネル10の背面と接続され、パネル10と直交するように配置された部分は、上述したようにネジ23によって取付下地20の部材20bと接続される。
【0055】
(構成−連結プレート)
連結プレート60は、取付下地20の部材20bと取付下地21の部材21bとを一定幅間隔かつ平行に保つための間隔保持手段である。この連結プレート60は、具体的には、所定の高さ(例えば、25mm)及び取付下地20の部材20bと取付下地21の部材21bとの相互間の幅と略同一の幅を有する長板形状にて形成されている。この連結プレート60は、幅方向における両端部において、配設空間4から、連結プレート60と部材20aとを順次貫通して対象壁面2fに至るネジ22、及び連結プレート60と部材21aとを順次貫通して対象壁面2fに至るネジ22によって、対象壁面2fに対して固定されている。このように連結プレート60が部材20bと部材21bとの相互間において高さ方向に沿って複数箇所に配置されていることにより、部材20bと部材21bを一定幅間隔かつ平行に保つことが可能になる。なお、連結プレート60の設置個数は任意であるが、本実施の形態においては、対象壁面2fの上端部近傍及び下端部近傍の計2箇所に設置されている。
【0056】
(構成−パネルの全体形状)
次に、パネル10の全体形状の詳細について説明する。3つの分割パネル11を繋げて形成されたパネル10の正面形状は、少なくとも集合玄関機3を取り付け可能となる形状であればよく、集合玄関機3の正面形状と同等以上の幅及び高さの形状であればよい。しかしながら、パネル10を集合玄関機3の正面形状と同等程度の幅及び高さで形成した場合には、集合玄関機3の本体部3bから引き出された配線3cを対象壁面2fに挿通させない限り、配線3cがパネル10の上下や左右に飛び出ることにより、配線3cが前方側や側方側からユーザに見えてしまい、意匠性の観点から好ましくない。一方、パネル10を大きく形成し過ぎた場合には、パネル10の施工性が低下したり、パネル10がユーザと干渉する可能性が高まったりする等、他の観点から好ましくない問題が生じ得る。
【0057】
そこで、本実施の形態においては、
図2に示すように、パネル10の上端と天井との間に所定距離(例えば15mm)の天井側隙間5を形成すると共に、パネル10の下端と床との間に所定距離(例えば150mm)の床側隙間6を形成し、これら天井側隙間5の高さと床側隙間6の高さとが相互に適切な関係となるように、パネル10の正面形状を決定している。
【0058】
このように、天井側隙間5及び床側隙間6を形成することにより、玄関装置取付構造1の施工性の向上を図ることが可能になる。具体的には、玄関部2においてパネル10の取付作業を行う際には、3枚の分割パネル11を高さ方向に沿って工場において予め接合し、この接合した状態のパネル10を玄関部2へと運搬して設置壁面2aに対して取り付ける作業を行う。このように、大型のパネル10を取り付けるためには、高さ方向にパネル10の可動域が存在する方が作業を行い易い。そこで、パネル10の上下に天井側隙間5及び床側隙間6を設けることにより、蝶番30を軸としてパネル10を開閉させた際にパネル10と天井及び床が容易に当接することを回避でき、円滑にパネル10の開閉を行うことが可能になる。
【0059】
さらに、ユーザがパネル10の前方から配設空間4を視認できてしまうことを避けるために、天井側隙間5は上述した15mmのように比較的小さな隙間とすることが望ましい。一方、ユーザがパネル10の前に立って集合玄関機3の操作をする際等において、ユーザの足がパネル10の下部に当たることにより、ユーザの安全性が低下したり、パネル10を傷つけてしまうことを避けるために、床側隙間6は上述した150mmのように比較的大きな隙間とすることが望ましい。さらに、床側隙間6は、対象壁面2fの幅木2eの高さと同一の高さとすることにより、意匠的統一感を奏することが好ましい。
【0060】
(パネル10と取付下地20、21との関係)
次に、パネル10と取付下地20、21との関係の詳細について説明する。
図3に示すように、上述したように設置壁面2aを構成する複数の化粧ボード2cの相互間には、目地2dが設けられている。従って、意匠的統一感を奏するためには、パネル10の左右の端部の位置を、目地2dの位置に一致させることが好ましい。そこで、本実施の形態においては、パネル10の左側の端部の位置を、目地2dの位置に一致させることとしている。しかしながら、目地2dには部材20aをネジ留めするためのネジ22を打ち付けることが出来ないため、この設置壁面2aの目地2dとは異なる位置に部材20aが設置することが望ましい。そこで、本実施の形態では、取付下地20をパネル10の側面よりも内側(すなわち右側)に位置させることにより、設置壁面2aの目地2dの位置とは異なる位置に部材20aを位置させることを可能とし、取付下地20を容易に設置壁面2aに対してネジ22を打ち付けることを可能としている。なお、この場合においても、ネジ22を壁柱2bに対してネジ留めすることが可能となるように、取付下地20の位置を決定している。このように取付下地20をパネル10の側面よりも内側に位置させた場合には、部材20bに打ち込まれたネジ23のネジ頭を、パネル10の前方又は側方の少なくとも一方から遮蔽することができ、意匠性の向上を図ることが可能になる。
【0061】
一方、パネル10の右側の端部の位置に関しては、この端部の位置の近傍に目地2dが存在しないため、任意の位置とすることができる。しかしながら、左右の対称性の観点からすれば、パネル10と取付下地20との関係を、パネル10と取付下地21との関係にも反映させることが好ましい。従って、本実施の形態においては、取付下地20と同様に、取付下地21をパネル10の側面よりも内側(すなわち左側)に位置させることにより、左右で均一の取れた外観とし、意匠性の向上を図っている。また、このように取付下地21をパネル10の側面よりも内側に位置させることにより、取付下地21とパネル10との相互間に配置された蝶番30を、パネル10の前方又は側方の少なくとも一方から遮蔽することができ、意匠性の向上を図ることが可能になる。
【0062】
(施工作業)
次に、このように構成された玄関装置取付構造1の施工作業について説明する。まず、設置壁面2aにおいて、天井側隙間5と床側隙間6とを確保できるように、玄関装置取付構造1を設ける対象壁面2fの位置を決定する。ここで、玄関装置取付構造1を設ける対象壁面2fの位置は任意であるが、意匠性の低い部分である蝶番30を、パネル10の前方又は側方の少なくとも一方から遮蔽することが可能な位置であることが、意匠上の観点から好ましい。例えば本実施の形態に係る玄関装置取付構造1のように、パネル10が右開きとなるように構成する場合、対象壁面2fの位置を、対象壁面2fの右方の近傍位置に当該対象壁面2fと直交する壁面が存在するような位置とすることで(つまり、対象壁面2fの右端部に入隅部が形成されている場合において、この入隅部に近接する位置とすることで)、当該直交する壁面によって蝶番30をパネル10の右方から遮蔽することができる。
【0063】
そして、当該決定した対象壁面2fに、取付下地20、21を連結プレート60と共にネジ22にてネジ留めする。また、このネジ留めの前後のいずれかにおいて、蝶番土台21hを取付下地21に取り付ける作業を行う。具体的には、まずは、蝶番面30aと蝶番土台21hとをネジ24によってネジ留めし、さらに蝶番面30bとパネル10の背面とを任意の方法(例えばネジ留め)によって接合する。このように蝶番30を介して蝶番土台21hとパネル10とを接合した状態において、蝶番土台21hを仮固定空間27に押し込んで嵌め込むことにより、蝶番土台21hの仮固定を行う。このように蝶番土台21hを仮固定した状態において、パネル10を開き、蝶番土台21hの手前から、蝶番土台21h、及び部材21dを順次貫通するネジ26を取り付けることにより、蝶番土台21hを部材21dに本固定する。このように、蝶番土台21hを仮固定空間27に仮固定した状態において、ネジ26の取付作業を行うことができるため、蝶番土台21hを取り付ける際の施工性の向上を図ることが可能となる。
【0064】
次に、パネル10に対してエッジキャップ40を取り付けて、エッジキャップ40の外側からエッジキャップ40とパネル10とを順次貫通するネジを取り付けることによりパネル10に対してエッジキャップ40を取り付ける。なお、このようにエッジキャップ40を取り付ける作業については任意のタイミングで行ってよく、例えばパネル10を組み立てる段階で行っても良い。
【0065】
そして、ユーザは、パネル10を開いた状態(
図1(b)に想像線で示す状態)において、パネル10に対して集合玄関機3を取り付ける作業を行う。具体的には、配線3cが配設空間4側に引き出された状態において、パネル10の開口部11dに対して、集合玄関機3の本体部3bをその背面側から押し当て、分割パネル11の前面と操作部3aの背面とが当接するまで、集合玄関機3を当該開口部11dに押し込み、このような状態において集合玄関機3をパネル10に固定する。
【0066】
そして、この際に、集合玄関機3の配線作業を行う。具体的には、パネル10を開いて配設空間4を開放した状態において、集合玄関機3の本体部3bの背面に設置された配線3cを、配設空間4を介して天井配線孔2hに挿通して、電源等と接続する。そして、この状態において集合玄関機3の動作確認等を行い、動作に支障が無いようであれば配線作業が無事完了したものと想定し、パネル10を閉じた状態(
図1(b)に実線で示す状態)とする。具体的には、パネル10を開いた状態において、上下の分割パネル11の背面に対して固定プレート50をネジで接合し、固定プレート50の接合が完了したらパネル10を閉じ、続いて取付下地20と固定プレート50とを取付下地20の左側方からネジ23によってネジ留めすることにより接続する。
【0067】
このようにして、本実施の形態に係る玄関装置取付構造1を施工することができ、そして配線3cの修理等を行う際には、取付下地20と固定プレート50とを接続するネジ23を外すことによって、パネル10を容易に開いて配設空間4を開放することができ、配線3cの修理等を容易に行うことが可能になる。
【0068】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、対象壁面2fに対して配設空間4を介して設置されたパネル10に対して集合玄関機3を取り付けるため、集合玄関機3の配線3cを配設空間4を介して任意の位置まで巡らせることができるため、配線用3cの孔を壁面や床面以外の位置に空けて集合玄関機3の配線作業を行うことが可能になり、壁面や床面に対して、配線3cを挿通させるための孔や玄関装置の取り付けスペースを形成したり、玄関装置の基礎を埋設や打設したりする必要がなくなるため、施工作業を従来よりも簡素化することが可能になる。
また、玄関部2の壁面に対して凹部を形成し、その凹部に集合玄関機3を埋め込むことによって集合玄関機3を壁面に対して直接固定することも考えられるが、このような手段によれば、集合玄関機3を埋め込むための凹部を壁面に設けるという大掛かりな工事が必要となってしまう。しかし、本実施の形態によれば、周囲の壁面と面一に配置された対象壁面2fに対してパネル10を設置するので、集合玄関機3を埋め込むための凹部を壁面に設けるという大掛かりな工事が不要になり、集合玄関機3を取り付けるための施工性を向上させることが可能になるため、集合玄関機3を容易かつ安価に取り付けることが可能になる。
さらに、対象壁面2fとパネル10との間に配設空間4を形成できるので、この配設空間4に配設した配線3cをパネル10によって少なくとも前方側から容易に遮蔽することが可能になり、集合玄関機3及びその周辺部分の意匠性を向上させることが可能になる。
【0069】
また、玄関部2の角部において、所定の壁面から当該所定の壁面と直交する壁面に架けてパネル10を平面視上の斜め方向に沿って設置して、パネル10と当該2つの壁面により囲繞された空間部を配設空間4として利用することも考えられるが、このような手段によれば、集合玄関機3の設置位置が玄関部2の角部に限定されてしまう。しかし、本実施の形態によれば、パネル10を対象壁面2fに対して平行に配置するので、集合玄関機3の設置位置を玄関部2の角部等といった特定の位置に限定されなくなるため、集合玄関機3の設置位置の自由度を向上させることが可能になる。
【0070】
また、対象壁面2f、パネル10、及び高さ方向に沿って連続する一対の取付下地20、21によって囲繞された空間部を配設空間4としたので、四方から覆われた配設空間4を極めて簡易に形成することができ、この配設空間4に配設した配線3cをパネル10及び一対の取付下地20、21によって前方側及び側方側から容易に遮蔽することが可能になり、集合玄関機3及びその周辺部分の意匠性を一層向上させることが可能になる。
【0071】
また、取付下地20、21をパネル10の外縁部よりも内側に位置させることによって、パネル10の前方又は側方の少なくとも一方から取付下地20、21の少なくとも一部を遮蔽するので、取付下地20、21に設けられたネジ23の頭部や蝶番30等といった意匠性の低い部分をユーザの視線から遮ることができ、集合玄関機3及びその周辺部分の意匠性を一層向上させることが可能になる。
【0072】
また、パネル10を開閉するための蝶番30を備えるので、集合玄関機3の配線作業を行う際には、パネル10を開くことにより配線作業を容易に行うことが可能になり、配線作業が終了した際には、パネル10を閉じることにより配設空間4に配設した配線3cを容易に外部から遮蔽することが可能になり、配線作業の作業性と集合玄関機3及びその周辺部分の意匠性とを両立させることが可能になる。
【0073】
また、配線3cを配設空間4を介して天井配線孔2hに挿通するので、床や壁面に配線孔を形成して配線を挿通させる場合に比べて容易に配線作業を行うことが可能になり、集合玄関機3を取り付けるための施工性を一層向上させることが可能になるため、集合玄関機3を一層容易かつ一層安価に取り付けることが可能になる。
【0074】
また、天井側隙間5と床側隙間6との少なくとも一方を備えるので、パネル10を天井面や床面に対して隙間なく当接させる場合に比べて、対象壁面2fに対してパネル10を取り付けるための施工性を一層向上させることが可能になるため、集合玄関機3を一層容易かつ一層安価に取り付けることが可能になる。また、天井側隙間5と床側隙間6との少なくとも一方を備えるので、パネル10を蝶番30により開閉可能とした場合においても、パネル10が天井や床と接触することを防止でき、パネル10を円滑に開閉させることが可能になる。
【0075】
また、床側隙間6の高さを、天井側隙間5の高さよりも大きくなるように形成するので、配設空間4に配設した配線が天井側隙間5を介して前方側に露出する可能性を低減することが可能になると共に、ユーザが集合玄関機3を操作するために当該集合玄関機3の前方に立った状態において、ユーザの足がパネル10の下部に当たる可能性を低減することが可能になる。
【0076】
〔本実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0077】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、玄関装置の設置位置の自由度が従来と同程度である場合であっても、玄関装置の対象壁面に対する取り付けを従来とは異なる手段によって達成できている場合には、本願の課題が解決されている。
【0078】
(寸法や材料について)
発明の詳細な説明や図面で説明した玄関装置取付構造1の各部の寸法、形状、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、比率等とすることができる。
【0079】
(固定構造について)
また、上記各部の固定構造は、公知の技術の範囲内において、ネジ留め、接着、溶着、あるいは溶接の相互間で変更可能である。
【0080】
(パネルについて)
本実施の形態においては、パネル10は対象壁面2fに対して平行に設置されているものとして説明したが、これに限られず、例えばパネル10を対象壁面2fに対して斜めに設置しても良い。
【0081】
(取付下地について)
本実施の形態においては、一対の取付下地20、21は、パネル10の両側方に配置されているものとして説明したが、その他の位置に配置されるものであってもよく、例えば、パネル10の上下に配置されているものであっても良い。また、本実施の形態においては、取付下地21に対して蝶番土台21hが接合されており、この蝶番土台21hに対して蝶番30が接合されているものとして説明したが、この蝶番土台21hを設けずに、取付下地21に対して直接蝶番30を接合しても良い。
【0082】
(開閉手段について)
上記実施の形態では、開閉手段は蝶番30であるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、パネル10と取付下地20及び取付下地21とに磁石を設置し、磁石の磁力によってパネル10を取付下地20及び取付下地21に対して剥離又は接着することによってパネル10の開閉を行っても良い。あるいは、蝶番30を設けずに、パネル10の背面に対して取付下地21をネジにてネジ留めし、このネジを取り外し又は取り付けすることによってパネル10の開閉を行っても良い。
【0083】
また、上記実施の形態では、蝶番30及び取付下地21をパネル10の右側に配置し、固定プレート50及び取付下地20をパネル10の左側に配置することにより、パネル10が右開きとなるように構成したが、このような構成に限定されない。例えば、蝶番30及び取付下地21をパネル10の左側に配置し、固定プレート50及び取付下地20をパネル10の右側に配置することにより、パネル10が左開きとなるように構成してもよい。特に、玄関部2における対象壁面2fの周辺の壁面の状況等に応じてこれらの構成を適宜変更してもよい。例えば、玄関部2において、対象壁面2fの左方の近傍位置に当該対象壁面2fと直交する壁面が存在する場合には、パネル10が左開きとなるように形成することによって、当該直交する壁面によって蝶番30をパネル10の左方から遮蔽することができる。
【0084】
(配設空間について)
配設空間4の下部には配設空間4を覆う部材は設けられていないが、この部分に配設空間4の下方を覆う部材を設けても良い。このような部材を設けることにより、ユーザは配設空間4の下方からも配設空間4を視認することが出来なくなるため、集合玄関機3の配線3cがユーザに視認されてしまう可能性を一層低減する事が可能になる。
【0085】
(付記)
付記1に記載の玄関装置取付構造は、ユーザからの操作を受け付ける玄関装置を、住宅の玄関部に取り付けるための玄関装置取付構造であって、周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対して前記玄関装置の配線を配設するための配設空間を介して設置されたパネルを備え、前記玄関装置を前記パネルに対して取り付けた。
【0086】
また、付記2に記載の玄関装置取付構造は、付記1に記載の玄関装置取付構造において、前記パネルは、前記対象壁面と平行に設置される。
【0087】
また、付記3に記載の玄関装置取付構造は、付記1又は2に記載の玄関装置取付構造において、前記対象壁面に対して直交するように並設した一対の取付ベースであって、高さ方向に沿って連続する一対の取付ベースを備え、前記一対の取付ベースにおける前記対象壁面とは反対側の端部に、前記パネルを取り付け、これら対象壁面、パネル、及び一対の取付ベースによって囲繞された空間部を、前記配設空間とした。
【0088】
また、付記4に記載の玄関装置取付構造は、付記3に記載の玄関装置取付構造において、前記取付ベースを前記パネルの外縁部よりも内側に位置させることによって、前記パネルの前方又は側方の少なくとも一方から、前記取付ベースの少なくとも一部を遮蔽した。
【0089】
また、付記5に記載の玄関装置取付構造は、付記1から4のいずれか一項に記載の玄関装置取付構造において、前記パネルを開閉させることにより前記配設空間を開放又は閉鎖するための開閉手段を備える。
【0090】
また、付記6に記載の玄関装置取付構造は、付記1から5のいずれか一項に記載の玄関装置取付構造において、前記玄関装置の配線を、前記配設空間を介して、前記配設空間の上方における前記玄関部の天井に設けられた天井配線孔に挿通した。
【0091】
また、付記7に記載の玄関装置取付構造は、付記1から6のいずれか一項に記載の玄関装置取付構造において、前記パネルと前記玄関部の天井との相互間に形成された隙間である天井側隙間、又は前記パネルと前記玄関部の床との相互間に形成された隙間である床側隙間の少なくとも一方を備える。
【0092】
また、付記8に記載の玄関装置取付構造は、付記7に記載の玄関装置取付構造において、前記床側隙間の高さを、前記天井側隙間の高さよりも大きくなるように形成した。
【0093】
(付記の効果)
付記1に記載の玄関装置取付構造によれば、対象壁面に対して配設空間を介して設置されたパネルに対して玄関装置を取り付けるため、玄関装置の配線を配設空間を介して任意の位置まで巡らせることができるため、配線用の孔を壁面や床面以外の位置に空けて玄関装置の配線作業を行うことが可能になり、壁面や床面に対して、配線を挿通させるための孔や玄関装置の取り付けスペースを形成したり、玄関装置の基礎を埋設や打設したりする必要がなくなるため、施工作業を従来よりも簡素化することが可能になる。
また、玄関部の壁面に対して凹部を形成し、その凹部に玄関装置を埋め込むことによって玄関装置を壁面に対して直接固定することも考えられるが、このような手段によれば、玄関装置を埋め込むための凹部を壁面に設けるという大掛かりな工事が必要となってしまう。しかしながら、付記1に記載の玄関装置取付構造によれば、周囲の壁面と面一に配置された対象壁面に対してパネルを設置するので、玄関装置を埋め込むための凹部を壁面に設けるという大掛かりな工事が不要になり、玄関装置を取り付けるための施工性を向上させることが可能になるため、玄関装置を容易かつ安価に取り付けることが可能になる。
さらに、対象壁面とパネルとの間に配設空間を形成できるので、この配設空間に配設した配線をパネルによって少なくとも前方側から容易に遮蔽することが可能になり、玄関装置及びその周辺部分の意匠性を向上させることが可能になる。
【0094】
また、玄関部の角部において、所定の壁面から当該所定の壁面と直交する壁面に架けてパネルを平面視上の斜め方向に沿って設置して、パネルと当該2つの壁面により囲繞された空間部を配設空間として利用することも考えられるが、このような手段によれば、玄関装置の設置位置が玄関部の角部に限定されてしまう。しかしながら、付記2に記載の玄関装置取付構造によれば、パネルを対象壁面に対して平行に配置することにより、玄関装置の設置位置が玄関部の角部等といった特定の位置に限定されなくなるため、玄関装置の設置位置の自由度を向上させることが可能になる。
【0095】
また、付記3に記載の玄関装置取付構造によれば、対象壁面、パネル、及び高さ方向に沿って連続する一対の取付ベースによって囲繞された空間部を配設空間としたので、四方から覆われた配設空間を極めて簡易に形成することができ、この配設空間に配設した配線をパネル及び一対の取付ベースによって前方側及び側方側から容易に遮蔽することが可能になり、玄関装置及びその周辺部分の意匠性を一層向上させることが可能になる。
【0096】
また、付記4に記載の玄関装置取付構造によれば、取付ベースをパネルの外縁部よりも内側に位置させることによって、パネルの前方又は側方の少なくとも一方から取付ベースの少なくとも一部を遮蔽するので、取付ベースに設けられたネジや蝶番等といった意匠性の低い部分をユーザの視線から遮ることができ、玄関装置及びその周辺部分の意匠性を一層向上させることが可能になる。
【0097】
また、付記5に記載の玄関装置取付構造によれば、パネルを開閉するための開閉手段を備えるので、玄関装置の配線作業を行う際には、パネルを開くことにより配線作業を容易に行うことが可能になり、配線作業が終了した際には、パネルを閉じることにより配設空間に配設した配線を容易に外部から遮蔽することが可能になり、配線作業の作業性と玄関装置及びその周辺部分の意匠性とを両立させることが可能になる。
【0098】
また、付記6に記載の玄関装置取付構造によれば、配線を配設空間を介して天井配線孔に挿通するので、床や壁面に配線孔を形成して配線を挿通させる場合に比べて容易に配線作業を行うことが可能になり、玄関装置を取り付けるための施工性を一層向上させることが可能になるため、玄関装置を一層容易かつ一層安価に取り付けることが可能になる。
【0099】
また、付記7に記載の玄関装置取付構造によれば、天井側隙間と床側隙間との少なくとも一方を備えるので、パネルを天井面や床面に対して隙間なく当接させる場合に比べて、対象壁面に対してパネルを取り付けるための施工性を一層向上させることが可能になるため、玄関装置を一層容易かつ一層安価に取り付けることが可能になる。また、天井側隙間と床側隙間との少なくとも一方を備えるので、パネルを開閉手段により開閉可能とした場合においても、パネルが天井や床と接触することを防止でき、パネルを円滑に開閉させることが可能になる。
【0100】
また、付記8に記載の玄関装置取付構造によれば、床側隙間の高さを、天井側隙間の高さよりも大きくなるように形成するので、配設空間に配設した配線が天井側隙間を介して前方側に露出する可能性を低減することが可能になると共に、ユーザが玄関装置を操作するために当該玄関装置の前方に立った状態において、ユーザの足がパネルの下部に当たる可能性を低減することが可能になる。