【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2013年5月21日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product/application.html ・2013年6月5日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product/application.html ・2013年7月8日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product/application.html ・2013年5月21日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product_e/application.html ・2013年6月5日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product_e/application.html ・2013年7月8日掲載 http://www.admatechs.co.jp/product_e/application.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粒径が小さな粒子材料(特にマイクロメートル、ナノメートルオーダーの粒子材料)は凝集性が高く取り扱いが困難である場合が多い。封止材は粒径が小さい無機酸化物粒子を樹脂材料中に分散させたものが汎用されており、無機酸化物粒子の充填量は多い方が望ましい。
【0005】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、流動性に優れた無機材料としてのシリカ被覆無機酸化物粒子及びその製造方法、並びに樹脂組成物を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決する本発明のシリカ被覆無機酸化物粒子の製造方法は、一次粒子の体積平均粒径が200nm以下の原料シリカ粒子に対し、嵩密度が450g/L以下になるように解砕する解砕工程と、
前記解砕工程にて得られたシリカ粒子と前記シリカ粒子の一次粒子よりも体積平均粒径が大きい無機酸化物粒子とを混合して前記無機酸化物粒子の表面に前記シリカ粒子を付着させる混合工程とを有し、
前記原料シリカ粒子は、
水を含む液状媒体中でシランカップリング剤およびオルガノシラザンによって表面処理する表面処理工程と、
前記液状媒体を除去する工程と、
をもつ前処理工程にて処理されており、
該シランカップリング剤は、3つのアルコキシ基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基と、を持ち、
該シランカップリング剤と該オルガノシラザンとのモル比は、該シランカップリング剤:該オルガノシラザン=1:2〜1:10である。
【0007】
無機酸化物粒子の表面に上述の特性を持つシリカ粒子を付着させることにより、付着したシリカ粒子が無機酸化物粒子の間に介在して無機酸化物粒子の流動特性が向上している。上述の特性を持つシリカ粒子はナノメートルオーダーの粒径をもつにも拘わらず殆ど一次粒子にまで分離している粉体である。
【0008】
上記(1)について下記(2)の構成を採用することができる。
(2)前記表面処理工程は、
前記シランカップリング剤で処理する第1の処理工程と、
前記オルガノシラザンで処理する第2の処理工程と、を持ち、
該第2の処理工程は、該第1の処理工程後に行う。
【0009】
(2)に開示した条件にて原料シリカ粒子を表面処理することにより更に凝集した粒子の分離が実現できる。
(3)上記課題を解決する本発明のシリカ被覆無機酸化物粒子は、一次粒子の体積平均粒径が200nm以下、嵩密度が450g/L以下であるシリカ粒子と、
前記シリカ粒子の一次粒子よりも体積平均粒径が大きく前記シリカ粒子が表面に付着する無機酸化物粒子とを有し、
前記シリカ粒子は、式(1):−OSiX
1X
2X
3で表される官能基と、式(2):−OSiY
1Y
2Y
3で表される官能基とを表面にもつ。(上記式(1)、(2)中;X
1はフェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基であり;X
2、X
3は−OSiR
3及び−OSiY
4Y
5Y
6よりそれぞれ独立して選択され;Y
1はRであり;Y
2、Y
3はR及び−OSiY
4Y
5Y
6よりそれぞれ独立して選択される。Y
4はRであり;Y
5及びY
6は、R及び−OSiR
3からそれぞれ独立して選択され;Rは炭素数1〜3のアルキル基から独立して選択される。なお、X
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかは、隣接する官能基のX
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合しても良い。)
上記(3)について下記(4)〜(6)のうちの何れか1つの構成を採用することができる。
(4)前記シリカ粒子は前記無機酸化物粒子の表面において(300nm)
2当たり5個以上存在する。
(5)安息角が40°以下である。
(6)タップ嵩密度が0.64g/cm
3以上である。
(7)上記課題を解決する樹脂組成物は上述の(3)〜(6)のうちの何れか1つに記載のシリカ被覆無機酸化物粒子と、
前記シリカ被覆無機酸化物粒子を分散する樹脂材料とを有する。
【0010】
上述のシリカ被覆無機酸化物粒子は流動性に優れており樹脂組成物中においても充填性に優れている。
(8)上述の(1)〜(7)において、前記無機酸化物粒子はシランカップリング剤及び/又はオルガノシラザンにて表面処理されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリカ被覆無機酸化物粒子は凝集しやすいナノメートルオーダーのシリカ粒子について一次粒子にまで分離した状態に近づけているため、無機酸化物粒子の表面に付着させたときにも一次粒子に近い状態で存在することが可能になる。そのため、無機酸化物粒子の表面において、"ころ"のような作用を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明のシリカ被覆無機酸化物粒子、及びその製造方法、並びに樹脂組成物について実施形態に基づき以下詳細に説明する。
【0014】
(シリカ被覆無機酸化物粒子)
本実施形態のシリカ被覆無機酸化物粒子は無機酸化物粒子とその無機酸化物粒子の表面に付着したシリカ粒子とを有する。無機酸化物粒子の表面にシリカ粒子を付着させる方法としては特に限定されず、単純に混合したり、混合した後に振動を与えたりすることで実施できる。無機酸化物粒子表面へのシリカ粒子の付着は乾燥状態にて行うことができる。無機酸化物粒子とシリカ粒子との混合割合は特に限定しない。僅かな量であってもシリカ粒子が無機酸化物粒子の表面に存在すればシリカ粒子による流動特性改善効果が発現できるものと考えられる。例えばシリカ粒子の含有量は無機酸化物粒子の質量を基準として、上限が10%、5%、2%程度を好ましい範囲として採用でき、下限が0.001%、0.005%、0.01%程度を好ましい範囲として採用できる。
【0015】
無機酸化物粒子はシリカ粒子の一次粒子よりも体積平均粒径が大きくシリカ粒子が表面に付着する。シリカ粒子は前記無機酸化物粒子の表面において(300nm)
2当たり5個以上存在することが望ましい。シリカ粒子の個数の測定はFE−SEMにて撮影した写真を用い、無機酸化物粒子の表面からランダムに300nm×300nmの領域を10箇所選択し、そこに存在するシリカ粒子の数を数えて平均値を求めることで行う。本実施形態のシリカ粒子であるか否かはその粒子が無機酸化物粒子の表面にて一次粒子として存在するかどうかで判断する。ここで一次粒子で存在するとはSEM写真において、粒子同士が接触している状態から互いに離散している状態の間である粒子を意味する。
【0016】
無機酸化物粒子は無機酸化物単独又は無機酸化物を主成分(質量基準で50%以上)であること以外特に限定しない。無機酸化物粒子は粒径が小さいほど凝集性が高まるため本願発明のシリカ被覆無機酸化物粒子にする効果が高くなる。従って、無機酸化物粒子の体積平均粒径は望ましくは100μm以下、より望ましくは50μm以下、更に望ましくは10μm以下である。無機酸化物粒子は粒度分布においてピークを2つ以上もつことができる。
【0017】
無機酸化物粒子を構成する無機酸化物としては特に限定しない。シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、これらの複合酸化物、混合物などが挙げられる。
【0018】
無機酸化物粒子は表面処理がなされていても良い。表面処理はシランカップリング剤、オルガノシラザンなどにより行うことができる。シランカップリング剤、オルガノシラザンとしては後述するものが例示できる。表面処理の量としては特に限定しない。
【0019】
シリカ粒子は一次粒子の体積平均粒径が200nm以下、嵩密度が450g/L以下である。一次粒子の体積平均粒径としては、好ましい上限として、100nm、70nm、50nmが挙げられる。シリカ粒子としてはすべて300nm以下の粒径であることが望ましい。また、好ましい下限として、1nm、5nm、10nmが挙げられる。原料シリカ粒子を構成する二次粒子の粒径は特に限定しないが、体積平均粒径が10μm以上、100μm以上などの値を示すこともある。
【0020】
本明細書における嵩密度の測定は筒井理化学器械(株)製:電磁振動式カサ密度測定器(MVD−86型)を使用して行う。具体的には試料槽としての上部500μm篩に測定対象のサンプルを投入し、加速度4Gの条件で電磁振動により上部・下部の2つの500μm篩を通してサンプルを分散させ100mLの試料容器に落下投入した後、質量を測定し、その質量と体積とからかさ密度を算出した。自重による嵩密度の低下を防止するため測定は落下投入後1時間以内に実施する。
【0021】
嵩密度の好ましい上限としては400g/L、370g/L、350g/L、300g/L、280g/L、250g/Lが挙げられる。好ましい下限としては100g/Lが挙げられる。嵩密度をこれら上限よりも下の値にすることにより一次粒子の分離がより確実に行われる。また、嵩密度をこれら下限よりも上の値にすることにより一次粒子自身の破壊や再度の結合を防止することができる。
【0022】
シリカ粒子は表面に炭素を含む官能基が表面に導入されている。炭素を含む官能基の具体的な構成及びシリカ粒子表面への導入方法などについては後述するシリカ粒子の製造方法にて詳述するため、ここでの説明は省略する。
【0023】
(シリカ被覆無機酸化物粒子の製造方法)
本実施形態のシリカ被覆無機酸化物粒子の製造方法は、原料シリカ粒子に対して解砕工程を行い製造したシリカ粒子を無機酸化物粒子の表面に付着させる方法である。前述の本実施形態のシリカ被覆無機酸化物粒子の製造に好適に利用できる方法である。原料シリカ粒子は一次粒子同士が結合している割合が多いが、その結合を解砕工程にて分離することが出来る。
【0024】
解砕工程は特に方法は問わない。好ましくは凝集体の凝集を分離する程度の作用が加えられる方法が良く、凝集体を構成する一次粒子を破壊するような方法でない方が良い。例えば乾燥状態で行う粉砕に類する方法にて行うことができ、ジェットミル、ピンミル、ハンマーミルが例示できる。特に望ましくはジェットミルにて行う。工程の終期は原料シリカ粒子の嵩密度の値から判断する。適正な嵩密度後としては先述した範囲内から選択できる。ジェットミルは原料シリカ粒子を気流に乗せて粉砕を行う装置である。ジェットミルの種類は問わない。ジェットミルによる解砕は乾式にて行うことが望ましい。
【0025】
原料シリカ粒子は一次粒子の体積平均粒径が200nm以下である。その他、上限としては100nm、70nm、50nmが挙げられる。原料シリカ粒子の製造方法は特に限定しない。例えば水ガラス法、アルコキシド法、VMC法が例示でき、水ガラス法を採用することが望ましい。水ガラス法は水ガラスに対して、イオン交換、化学反応による置換基の導入・脱離、pHや温度などの制御などを行うことにより原料シリカ粒子を析出させる方法である。例えば、水ガラスをイオン交換樹脂でイオン交換することによって、ナノメートルオーダーのシリカ粒子が分散された水性スラリーを調製することができる。更に、金属ケイ素をアルカリ溶液などに溶解させた後に析出させることで(水ガラス法類似の方法)、原料シリカ粒子を製造することが出来る。
【0026】
原料シリカ粒子の調製には前処理工程を適用する。前処理工程は表面処理工程と液状媒体を除去する工程(固形化工程)とをもつ。表面処理工程は水を含む液状媒体(水、水の他にアルコールなどを含むもの)中でシランカップリング剤およびオルガノシラザンによって表面処理する工程である。シランカップリング剤は、3つのアルコキシ基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基とをもつ。シランカップリング剤とオルガノシラザンとのモル比は、(シランカップリング剤):(オルガノシラザン)=1:2〜1:10である。
【0027】
表面処理工程は、前述のシランカップリング剤で処理する第1の処理工程と、その後、オルガノシラザンで処理する第2の処理工程と、をもつ。
【0028】
表面処理工程は、上述の方法にて得られたシリカ粒子に対して、式(1):−OSiX
1X
2X
3で表される官能基と、式(2):−OSiY
1Y
2Y
3で表される官能基とが表面に結合した原料シリカ粒子を得る工程である。以下、式(1)で表される官能基を第1の官能基と呼び、式(2)で表される官能基を第2の官能基と呼ぶ。
【0029】
第1の官能基におけるX
1は、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基である。X
2、X
3は、それぞれ、−OSiR
3又は−OSiY
4Y
5Y
6である。Y
4はRである。Y
5、Y
6は、それぞれ、R又は−OSiR
3である。
【0030】
第2の官能基におけるY
1はRである。Y
2、Y
3は、それぞれ、−OSiR
3又は−OSiY
4Y
5Y
6である。
【0031】
第1の官能基および第2の官能基に含まれる−OSiR
3が多い程、原料シリカ粒子の表面にRを多く持つ。第1の官能基および第2の官能基に含まれるR(炭素数1〜3のアルキル基)が多い程、原料シリカ粒子は凝集し難い。
【0032】
第1の官能基に関していえば、X
2、X
3がそれぞれ−OSiR
3である場合に、Rの数が最小となる。また、X
2およびX
3がそれぞれ−OSiY
4Y
5Y
6であり、かつ、Y
5、Y
6がそれぞれ−OSiR
3である場合に、Rの数が最大となる。
【0033】
第2の官能基に関していえば、Y
2、Y
3がそれぞれ−OSiR
3である場合に、Rの数が最小となる。また、Y
2およびY
3がそれぞれ−OSiY
4Y
5Y
6であり、かつ、Y
5、Y
6がそれぞれ−OSiR
3である場合に、Rの数が最大となる。
【0034】
第1の官能基に含まれるX
1の数、第1の官能基に含まれるRの数、第2の官能基に含まれるRの数は、RとX
1との存在数比や、原料シリカ粒子の粒径や用途に応じて適宜設定すれば良い。
【0035】
なお、X
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかは、隣接する官能基のX
2、X
3、Y
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合しても良い。例えば、第1の官能基のX
2、X
3、Y
5、及びY
6の何れかが、この第1の官能基に隣接する第1の官能基のX
2、X
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合していても良い。同様に、第2の官能基のY
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかが、この第2の官能基に隣接する第2の官能基のY
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合していても良い。さらには、第1の官能基のX
2、X
3、Y
5、及びY
6の何れかが、この第1の官能基に隣接する第2の官能基のY
2、Y
3、Y
5、及びY
6の何れかと−O−にて結合していても良い。
【0036】
原料シリカ粒子において、第1の官能基と第2の官能基との存在数比が1:12〜1:60であれば、原料シリカ粒子の表面にX
1とRとがバランス良く存在する。このため、第1の官能基と第2の官能基との存在数比が1:12〜1:60である原料シリカ粒子は、樹脂に対する親和性および凝集抑制効果に特に優れる。また、X
1が原料シリカ粒子の単位表面積(nm
2)あたり0.5〜2.5個であれば、原料シリカ粒子の表面に充分な数の第1の官能基が結合し、第1の官能基および第2の官能基に由来するRもまた充分な数存在する。したがってこの場合にも、樹脂に対する親和性および原料シリカ粒子の凝集抑制効果が充分に発揮される。
【0037】
何れの場合にも、原料シリカ粒子の単位表面積(nm
2)あたりのRは、1個〜10個であるのが好ましい。この場合には、原料シリカ粒子の表面に存在するX
1の数とRの数とのバランスが良くなり、樹脂に対する親和性および原料シリカ粒子の凝集抑制効果との両方がバランス良く発揮される。
【0038】
原料シリカ粒子においては、シリカ粒子の表面に存在していた水酸基の全部が第1の官能基または第2の官能基で置換されているのが好ましい。第1の官能基と第2の官能基との和が、原料シリカ粒子の単位表面積(nm
2)あたり2.0個以上であれば、原料シリカ粒子において、シリカ粒子の表面に存在していた水酸基のほぼ全部が第1の官能基または第2の官能基で置換されているといえる。
【0039】
原料シリカ粒子は、表面にRを持つ。これは、赤外線吸収スペクトルによって確認できる。詳しくは、原料シリカ粒子の赤外線吸収スペクトルを固体拡散反射法で測定すると、2962±2cm
−1にC−H伸縮振動の極大吸収がある。
【0040】
また、上述したように原料シリカ粒子は凝集し難い。
【0041】
なお、原料シリカ粒子は、例え僅かに凝集した場合にも、超音波処理することによって再度分散可能である。詳しくは、原料シリカ粒子をメチルエチルケトンに分散させたものに、発振周波数39kHz、出力500Wの超音波を照射することで、原料シリカ粒子を実質的に一次粒子にまで分散できる。このときの超音波照射時間は10分間以下で良い。原料シリカ粒子が一次粒子にまで分散したか否かは、粒度分布を測定することで確認できる。詳しくは、この原料シリカ粒子のメチルエチルケトン分散材料をマイクロトラック装置等の粒度分布測定装置で測定し、原料シリカ粒子の粒度分布があれば、原料シリカ粒子が一次粒子にまで分散したといえる。
【0042】
原料シリカ粒子は、凝集し難いため、水やアルコール等の液状媒体に分散されていない原料シリカ粒子として提供できる。この場合、液状媒体の持ち込みがないために、樹脂材料用のフィラーとして好ましく用いられる。
【0043】
また、原料シリカ粒子は凝集し難いために、水で容易に洗浄できる。
【0044】
原料シリカ粒子は、水を含む液状媒体中で、シランカップリング剤およびオルガノシラザンによってシリカ粒子を表面処理する工程(表面処理工程)にて処理される。シランカップリング剤は、3つのアルコキシ基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基(すなわち上記のX
1)とを持つ。
【0045】
シランカップリング剤で表面処理することで、シリカ粒子の表面に存在する水酸基がシランカップリング剤に由来する官能基で置換される。シランカップリング剤に由来する官能基は式(3);−OSiX
1X
4X
5で表される。式(3)で表される官能基を第3の官能基と呼ぶ。第3の官能基におけるX
1は式(1)で表される官能基におけるX
1と同じである。X
4、X
5は、それぞれ、アルキコキシ基である。オルガノシラザンで表面処理することで、第3の官能基のX
4、X
5がオルガノシラザンに由来する−OSiY
1Y
2Y
3(式(2)で表される官能基、第2の官能基)で置換される。シリカ粒子の表面に存在する水酸基の全てが第3の官能基で置換されていない場合には、シリカ粒子の表面に残存する水酸基が第2の官能基で置換される。このため、表面処理された原料シリカ粒子の表面には、式(1):−OSiX
1X
2X
3で表される官能基(すなわち第1の官能基)と、式(2):−OSiY
1Y
2Y
3で表される官能基と(すなわち第2の官能基)が結合する。なお、シランカップリング剤とオルガノシラザンとのモル比は、シランカップリング剤:オルガノシラザン=1:2〜1:10であるため、得られた原料シリカ粒子における第1の官能基と第2の官能基との存在数比は理論上1:12〜1:60となる。
【0046】
表面処理工程においては、シリカ粒子をシランカップリング剤及びオルガノシラザンで同時に表面処理しても良い。または、先ずシリカ粒子をシランカップリング剤で表面処理し、次いでオルガノシラザンで表面処理しても良い。または、先ずシリカ粒子をオルガノシラザンで表面処理し、次いでシランカップリング剤で表面処理し、さらにその後にオルガノシラザンで表面処理しても良い。何れの場合にも、シリカ粒子の表面に存在する水酸基全てが第2の官能基で置換されないように、オルガノシラザンの量を調整すれば良い。なお、シリカ粒子の表面に存在する水酸基は、全てが第3の官能基で置換されても良いし、一部のみが第3の官能基で置換され、他の部分が第2の官能基で置換されても良い。第3の官能基に含まれるX
4、X
5は、全て第2の官能基で置換されるのが良い。
【0047】
なお、オルガノシラザンの一部を、第2のシランカップリング剤で置き換えても良い。第2のシランカップリング剤としては、3つのアルコキシ基と、1つのアルキル基とを持つものを用いることができる。この場合には、第3の官能基に含まれるX
4、X
5が、第2のシランカップリング剤に由来する第4の官能基で置換される。第4の官能基は式(4);−OSiY
1X
6X
7で表される。Y
1は第2の官能基におけるY
1と同じRであり、X
6、X
7はそれぞれアルコキシ基または水酸基である。第4の官能基に含まれるX
6、X
7は、オルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換されるか、または、別の第4の官能基で置換される。この場合には、原料シリカ粒子の表面に存在するRの量をさらに多くする事ができる。なお、オルガノシラザンの一部を、第2のシランカップリング剤に置き換える場合、第2のシランカップリング剤で表面処理した後に、再度オルガノシラザンで表面処理する必要がある。第4の官能基に含まれるX
6、X
7を、最終的にはオルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換するためである。
【0048】
オルガノシラザンの一部を第2のシランカップリング剤で置き換える場合、上述した第1の官能基に含まれるX
4、X
5は、オルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換されるか、第2のシランカップリング剤に由来する第4の官能基で置換される。X
4、X
5が第4の官能基で置換された場合、第4の官能基に含まれるX
6、X
7は、第2の官能基で置換されるか、別の第4の官能基によって置換される。第4の官能基に含まれるX
6、X
7が別の第4の官能基によって置換された場合、第4の官能基に含まれるX
6、X
7は、第2の官能基で置換される。このため第2のシランカップリング剤は、第1のカップリング剤及びオルガノシラザンのみで表面処理する場合(オルガノシラザンを第2のシランカップリング剤で置き換えなかった場合)に設定されるオルガノシラザンの量(a)molに対して、最大限5a/3mol置き換えることができる。この場合に必要になるオルガノシラザンの量は、8a/3molである。
【0049】
シランカップリング剤および第2のシランカップリング剤のアルコキシ基は特に限定しないが、比較的炭素数の小さなものが好ましく、炭素数1〜12であることが好ましい。アルコキシ基の加水分解性を考慮すると、アルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基の何れかであることがより好ましい。
【0050】
シランカップリング剤として、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0051】
オルガノシラザンとしては、シリカ粒子の表面に存在する水酸基およびシランカップリング剤に由来するアルコキシ基を、上述した第2の官能基で置換できるものであれば良いが、分子量の小さなものを用いるのが好ましい。具体的には、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン等が挙げられる。
【0052】
第2のシランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
なお、表面処理工程において、シランカップリング剤の重合や第2のシランカップリング剤の重合を抑制するため、重合禁止剤を加えても良い。重合禁止剤としては、3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、p−メトキシフェノール(メトキノン)等の一般的なものを用いることができる。
【0054】
原料シリカ粒子は、表面処理工程後に固形化工程を備えても良い。固形化工程は、表面処理後の原料シリカ粒子を鉱酸で沈殿させ、沈殿物を水で洗浄・乾燥して、原料シリカ粒子の固形物を得る工程である。上述したように、一般的なシリカ粒子は非常に凝集し易いため、一旦固形化したシリカ粒子を再度分散するのは非常に困難である。しかし、原料シリカ粒子は凝集し難いため、固形化しても凝集し難く、また、例え凝集しても再分散し易い。なお、洗浄工程においては、原料シリカ粒子の抽出水(詳しくは、シリカ粒子を121℃で24時間浸漬した水)の電気伝導度が50μS/cm以下となるまで、洗浄を繰り返すのが好ましい。
【0055】
固形化工程で用いる鉱酸としては塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などが例示でき、特に塩酸が望ましい。鉱酸はそのまま用いても良いが、鉱酸水溶液として用いるのが好ましい。鉱酸水溶液における鉱酸の濃度は0.1質量%以上が望ましく、0.5質量%以上が更に望ましい。鉱酸水溶液の量は、洗浄対象である原料シリカ粒子の質量を基準として6〜12倍程度にすることができる。
【0056】
鉱酸水溶液による洗浄は複数回数行うことも可能である。鉱酸水溶液による洗浄は原料シリカ粒子を鉱酸水溶液に浸漬後、撹拌することが望ましい。また、浸漬した状態で1時間から24時間、更には72時間程度放置することができる。放置する際には撹拌を継続することもできるし、撹拌しないこともできる。鉱酸含有液中にて洗浄する際には常温以上に加熱することもできる。
【0057】
その後、洗浄して懸濁させた原料シリカ粒子をろ取した後、水にて洗浄する。使用する水はアルカリ金属などのイオンを含まない(例えば質量基準で1ppm以下)ことが望ましい。例えば、イオン交換水、蒸留水、純水などである。水による洗浄は鉱酸水溶液による洗浄と同じく、原料シリカ粒子を分散、懸濁させた後、ろ過することもできるし、ろ取した原料シリカ粒子に対して水を継続的に通過させることによっても可能である。水による洗浄の終了時期は、上述した抽出水の電気伝導度で判断しても良いし、原料シリカ粒子を洗浄した後の排水中のアルカリ金属濃度が1ppm以下になった時点としても良いし、抽出水のアルカリ金属濃度が5ppm以下になった時点としても良い。なお、水で洗浄する際には常温以上に加熱することもできる。
【0058】
原料シリカ粒子の乾燥は、常法により行うことができる。例えば、加熱や、減圧(真空)下に放置する等である。
【0059】
(樹脂組成物)
本実施形態の樹脂組成物は上述のシリカ被覆無機酸化物粒子と樹脂材料(樹脂材料前駆体を含む)とを混合したものである。シリカ被覆無機酸化物粒子と樹脂材料等との混合比は特に限定しないが、シリカ被覆無機酸化物粒子の量が多い方が熱的安定性に優れたものになる。更にシリカ被覆無機酸化物粒子は球形度が高い方が樹脂材料等中への充填性が高くできる。
【0060】
樹脂材料等は何らかの条件下で硬化可能な組成物である。例えば、プレポリマーと硬化剤との混合物である。硬化剤は硬化直前に混合しても良い。樹脂材料等としてはその種類は特に限定しない。例えば、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、ブロックされたイソシアネート基、アミノ基、ハーフエステル基、アミック基、カルボキシ基及び炭素-炭素二重結合基を化学構造中に有することが望ましい。これらの官能基は好適な反応条件を設定することで互いに結合可能な官能基(重合性官能基)であり、適正な反応条件を選択することにより樹脂材料等を硬化させることができる。硬化させるための好適な反応条件としては単純に加熱や光照射を行ったり、熱や光照射によりラジカルやイオン(アニオン、カチオン)などの反応性種を生成したり、それらの官能基間を結合する反応開始剤(重合開始剤)を添加して加熱や光照射を行うことなどである。重合反応に際して必要な化合物を硬化剤として添加したり、その反応に対する触媒を添加することもできる。
【0061】
樹脂材料等としては重合により高分子材料を形成する単量体や、上述したような重合性官能基により修飾した高分子材料が好ましいものとして挙げられる。例えば、硬化前の、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などのプレポリマーが好適である。特に熱的安定性の高いものにする場合にはエポキシ樹脂を主体として組成物を構成することが望ましい。
【実施例】
【0062】
本発明のシリカ被覆無機酸化物粒子及びその製造方法について実施例に基づき説明を行う。なお、本実施例では粒径について言及するときには特に一次粒子の粒径であるとの記載が無い場合には二次粒子の粒径について記載する。
【0063】
〔試験例1〕
(シリカ粒子の製造)・原料シリカ粒子の製造
シリカ粒子を水系媒質としての水に分散させた水系スラリーとしてのコロイドシリカスノーテックスOS(シリカ分20%:日産化学製:一次粒子の粒径が10nm)100質量部に対して前処理工程(表面処理工程及び乾燥工程)を行った。
【0064】
(表面処理工程)
(1)準備工程
水系スラリー100質量部にイソプロパノール40質量部を加え、室温(約25℃)で混合することで、シリカ粒子が液状媒体に分散されてなる分散液を得た。
(2)第1工程
この分散液にフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM103)1.82質量部を加え40℃で72時間混合した。この工程により、シリカ粒子の表面に存在する水酸基をシランカップリング剤で表面処理した。なお、このときフェニルトリメトキシシランは必要な量の水酸基(一部)が表面処理されず残存するように計算して加えた。
(3)第2工程
次いで、この混合物にヘキサメチルジシラザン3.71質量部を加え、40℃で72時間放置した。この工程によって、シリカ粒子が表面処理され、シリカ粒子材料が得られた。表面処理の進行に伴い、疎水性になったシリカ粒子が水及びイソプロパノールの中に安定に存在できなくなり、凝集・沈殿した。なお、フェニルトリメトキシシランとメキサメチルジシラザンとのモル比は2:5であった。
【0065】
(固形化工程)
表面処理工程で得られた混合物に35%塩酸水溶液を4.8質量部加え、シリカ粒子材料を沈殿させた。沈殿物をろ紙(アドバンテック社製 5A)で濾過した。濾過残渣(固形分)を純水で洗浄した後に100℃で真空乾燥して、シリカ粒子材料の固形物(原料シリカ粒子)を得た。
【0066】
得られたシリカ粒子はD10が8.8μm、D50が124.5μm、D90が451.9μmであった。
【0067】
(解砕工程)
得られた原料シリカ粒子に対して解砕工程を行い、本試験例のシリカ粒子を得た。解砕工程はジェットミル((株)セイシン企業製、型番STJ−200)を用い、解砕圧0.3MPa、供給量10kg/hの条件で実施した。得られたシリカ粒子は嵩密度が251.7g/L、D10が0.8μm、D50が1.8μm、D90が4.0μm、一次粒子の体積平均粒径が10nmであった。
【0068】
〔試験例2〕
試験例1における解砕工程に代えてスプレードライ法にて噴霧乾燥を行ったものを本試験例の試験試料とした。具体的には固形化工程にて得られた原料シリカ粒子100質量部をIPA200質量部に分散させ、それを180℃、5L/hの流量で噴霧して乾燥した。得られたシリカ粒子は嵩密度が341.3g/Lであった。
【0069】
〔試験例3〕
試験例1における解砕工程を実施せずに固形化工程で得られたものを本試験例の試験試料とした。得られたシリカ粒子は嵩密度が0.769kg/L、D10が8.8μm、D50が124.5μm、D90が451.9μmであり、一次粒子の体積平均粒径が10nmであった。
【0070】
〔試験例4〕
市販のシリカ粒子(日本アエロジル(株)製、AEROSIL R972)を本試験例の試験試料とした。本試験例のシリカ粒子は嵩密度が41.0g/Lであった。
〔試験例5〜7〕
試験例1における解砕工程において解砕圧及び供給量を調節することにより嵩密度を調節した。嵩密度は試験例5の試験試料が271.3g/L、試験例6の試験試料が364.6g/L、試験例7の試験試料が249.8g/Lであった。解砕圧を大きくすることにより嵩密度が大きくなる傾向があった。以下の表には詳しい結果は示さないが、以下の評価試験と同様の試験を行うことにより試験例1の試験試料と同様の効果を発揮することが明らかになった。
【0071】
(評価1:試料の調製)
得られた各試験例のシリカ粒子と、表1及び2に示す無機酸化物粒子としてのシリカ粒子(「シリカ製法」行に記載)とを表1及び2に示す量(全体の質量を基準として表1の添加するシリカ粒子欄に記載の割合で添加)で混合した。表1において「シリカ製法」欄に記載のVMCシリカとはVMC法により製造したシリカを意味し、溶融シリカとは熔融法にて製造したシリカを意味する。その下の粒径及び比表面積は無機酸化物としてのシリカ粒子の体積平均粒径及び比表面積を意味し、表面処理はそこに記載の薬剤により表面処理を行ったことを意味する。HMDSとは1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンを意味し、エポキシシランは信越化学工業製、KBM−403を意味する。得られた混合物を震とう機(ヤマト科学株式会社製:SA300)を用い、250rpmで1分間震とうを行った。震とう後の混合物について安息角(マルチテスターMT−1001にて測定)、タップ嵩密度(マルチテスターMT−1001にて測定。タッピングは180回)を測定した。結果を表1に併せて示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表より明らかなように、無機酸化物単独(5−1〜5−8)と比較して試験例1のシリカ粒子を添加した混合物(シリカ被覆無機酸化物粒子に相当:1−1〜1−8)の方が安息角が小さかった。また、シリカ被覆無機酸化物粒子(1−2〜1−8)では対応する無機酸化物粒子単独(5−2〜5−8)と比べてタップ嵩密度が大きくなっており充填性に優れることが明らかになった。なお、粒径(体積平均粒径)が0.3μmである1−1についてはタップ嵩密度が対応する無機酸化物粒子単独と比べてやや低くなっており、流動性には優れるものの充填性が向上するとは言えないことが分かった。また、シリカ被覆無機酸化物粒子(1−2〜1−7)は、解砕工程を適用していない試験試料2〜4を添加した2−2〜2−5、3−2〜3−5、4−6〜4−7(対応するもの)と比べて安息角及びタップ嵩密度の双方共に優れていることが明らかになった。
【0075】
以上の結果から無機酸化物粒子は、その製法、粒径によらず、試験例1のシリカ粒子が無機酸化物粒子の流動性を向上できることが分かった。充填性については体積平均粒径0.3μm超であれば向上できることが明らかになった。
【0076】
(評価2:試料の調製)
得られた各試験例のシリカ粒子と、表3に示す無機酸化物粒子としてのシリカ粒子(「シリカ製法」行に記載)とを表3に示す量(全体の質量を基準として表3の添加するシリカ粒子欄に記載の割合で添加)で混合した。
【0077】
A−0〜A−4及びB−0〜B−4は2種類の無機酸化物(無機酸化物A及びB)を混合したもの(粒度分布に2つのピークをもつもの)、C−0〜C−4は3種類の無機酸化物(無機酸化物A〜C)を混合したもの(粒度分布に3つのピークをもつもの)である。表3において「シリカ製法」欄に記載のVMCシリカとはVMC法により製造したシリカを意味し、溶融シリカとは熔融法にて製造したシリカを意味する。その下の粒径及び比表面積は無機酸化物としてのシリカ粒子の体積平均粒径及び比表面積を意味する。
【0078】
得られた混合物を震とう機(ヤマト科学株式会社製:SA300)を用い、250rpmで1分間震とうを行った。震とう後の混合物について安息角(マルチテスターMT−1001にて測定)、タップ嵩密度(マルチテスターMT−1001にて測定。タッピングは180回)を測定した。結果を表3に併せて示す。ここで、本明細書中における「円形度」とは、SEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(円形度)={4π×(面積)÷(周囲長)
2}で算出される値として算出する。1に近づくほど真円に近い。具体的には画像処理装置(シスメックス株式会社:FPIA−3000)を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。円形度は高い方が流動性が向上し望ましいものと考える。
【0079】
【表3】
【0080】
表より明らかなように、無機酸化物単独(A−0,B−0,C−0)と比較して試験例1のシリカ粒子を添加した混合物(シリカ被覆無機酸化物粒子に相当:A−1、B−1、C−1)の方が安息角が小さく、タップかさ密度が大きかった。無機酸化物粒子の製法、粒径によらず、試験例1のシリカ粒子が無機酸化物粒子の流動性を向上できることが分かった。
【0081】
試験例2〜4のシリカ粒子の添加効果を検討すると、無添加の場合と比べて一律の効果を認めることが出来なかった。
【0082】
評価1の1−6(粒径6.9μm:タップ嵩密度1.13g/cm
3)と比べて、更に粒径1.0μmの無機酸化物粒子を添加した評価2のA−1ではタップ嵩密度が1.14g/cm
3とより多くの無機酸化物粒子を充填することができた。
【0083】
(シリカ粒子の付着量の評価)
体積平均粒径0.5μmの粒子(シリカ)100質量部に対して試験試料1を0.33質量部混合した混合物を震とう機(ヤマト科学株式会社製:SA300)を用い、250rpmで1分間震とうを行った(混合物A)。
【0084】
体積平均粒径1.5μmの粒子(シリカ)100質量部に対して試験試料1を0.25質量部混合した混合物を震とう機(ヤマト科学株式会社製:SA300)を用い、250rpmで1分間震とうを行った(混合物B)。
【0085】
得られたそれぞれの混合物のFE−SEM写真を
図1(混合物A)及び2(混合物B)に示す。図から単位面積(300nm平方)当たりに付着しているシリカ粒子(試験試料1)の量の平均値を算出した。結果、混合物Aでは5個/(300nm)
2、混合物Bでは6個/(300nm)
2であった。
【0086】
混合物A及びB共に試験試料1を添加する前よりも流動性が向上することが明らかになっており、5個/(300nm)
2以上の密度でシリカ粒子を表面に付着させることにより確実に効果を発現できることが分かった。