(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送される帯状基材の表面に電極ユニットを対向させて配置し、電極ユニットにプラズマを生成するガスを供給しつつ通電を行うことにより帯状基材の表面と電極ユニットとの間に供給される原料ガスがプラズマ処理されることにより、帯状基材表面上に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、
前記電極ユニットは、プラズマ雰囲気を形成する電極部と、特定の粒子を取り除くイオントラップ部とを有しており、
前記イオントラップ部は、前記電極部と帯状基材との間を走行するように繰り出されるトラップベルトと、このトラップベルトが前記電極部と帯状基材との双方に対向するように走行中のトラップベルトを支持する上側ロール及び下側ロールとを備えており、前記上側ロール及び下側ロールの配置位置が同一の鉛直方向面上に無く、且つ鉛直方向において差があり、前記トラップベルトの走行方向は、鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されていることを特徴とする薄膜形成装置。
前記電極ユニットは、帯状基材の搬送方向に沿って複数配列して設けられており、前記複数の電極ユニットの前記上側ロール及び下側ロールの配置位置が鉛直方向において差があるもののみ、前記トラップベルトの走行方向を鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
前記上側ロールは、前記トラップベルトを送り出すベルト供給部を兼ねており、前記下側ロールは、前記トラップベルトを巻き取るベルト巻取部を兼ねていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記薄膜形成装置では、形成される薄膜の膜質が悪くなる虞があるという問題があった。すなわち、チャンバ107a内に形成されたプラズマ雰囲気内には、原料ガスと反応するラジカル以外にもイオン、電子等の不純物粒子が発生する。この不純物粒子は、製膜表面に衝突すると薄膜が破壊されるため、結果的に帯状基材103上に形成される薄膜の膜質が悪くなるという問題があった。
【0005】
そこで、不純物粒子を取り除くイオントラップを電極部107cと帯状基材103との間に配置することが考えられる。このイオントラップは、メッシュ状に形成されており、イオントラップに通電することでラジカルはメッシュ状の編み目を通過し、不純物粒子はメッシュ状の編み目で捕獲されるため、薄膜の膜質精度を向上させることができる。
【0006】
しかし、帯状基材103を連続的に搬送させる製法、いわゆるロール トゥ ロールによる薄膜形成装置では、イオントラップにも製膜粒子が付着して編み目を塞いでしまうと、ラジカルがイオントラップを通過しにくくなるため、製膜レートが変化し、帯状基材103上に形成される薄膜の厚みを帯状基材103の長手方向に亘って一定に形成することが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、ロール トゥ ロールによる薄膜形成装置であっても、薄膜の膜質の低下を抑えることができ、帯状基材の長手方向に亘って安定して薄膜を形成することができる薄膜形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の薄膜形成装置は、搬送される帯状基材の表面に電極ユニットを対向させて配置し、電極ユニットにプラズマを生成するガスを供給しつつ通電を行うことにより帯状基材の表面と電極ユニットとの間に供給される原料ガスがプラズマ処理されることにより、帯状基材表面上に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、前記電極ユニットは、プラズマ雰囲気を形成する電極部と、特定の粒子を取り除くイオントラップ部とを有しており、前記イオントラップ部は、前記電極部と帯状基材との間を走行するように繰り出されるトラップベルトと、このトラップベルトが前記電極部と帯状基材との双方に対向するように走行中のトラップベルトを支持する上側ロール及び下側ロールとを備えており
、前記上側ロール及び下側ロールの配置位置が
同一の鉛直方向面上に無く、且つ鉛直方向において差があ
り、前記トラップベルトの走行方向は、鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されていることを特徴としている。
【0009】
上記薄膜形成装置によれば、特定の粒子を取り除く(ラジカルを通過させ、イオン、電子等の不純物粒子を捕獲する)トラップベルトが、電極部と帯状基材との間を走行するように繰り出されるように設けられているため、電極部と帯状基材との間には、新しいトラップベルトが順次供給される。すなわち、仮に製膜粒子がトラップベルトに付着しトラップベルトの編み目を塞いだ場合でも、編み目を塞がれたトラップベルトは巻き取られ、新しいトラップベルトが次々に繰り出されるため、電極部と帯状基材との間には、常に新しいトラップベルトが供給され、不純物粒子が有効に捕獲される。
【0010】
そして、トラップベルトを支持する上側ロールと下側ロールの配置位置が鉛直方向において差がある場合には、トラップベルトの走行方向が鉛直方向上側から鉛直方向下側になるように設定されているため、トラップベルトに付着した不純物粒子や製膜粒子等のパーティクルがトラップベルト側に付着するのを抑えることができる。すなわち、トラップベルトは常に走行しているため、トラップベルトに付着したパーティクルは、トラップベルトと共に走行し、トラップベルトを支持するロールに接触すると、トラップベルトに付着したパーティクルが剥離する。ここで、パーティクルが鉛直方向上側に位置するロールに接触して剥離した場合、パーティクルが重力の影響で落下するが、仮に電極部と帯状基材との間に位置するトラップベルト上に落下した場合、チャンバ内に供給されるプラズマを生成するガス(トラップベルトを通過するラジカル)で舞い上げられ、帯状基材上の薄膜に付着する虞がある。したがって、トラップベルトの走行方向を鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されていることにより、トラップベルトに付着したパーティクルは鉛直方向下側に位置するロールに接触する。そして、鉛直方向下側に位置するロールに接触したパーティクルは、剥離したとしてもそのまま下側に落下し、トラップベルト上に落下するのを抑えることができる。このように、イオントラップ部のトラップベルトが編み目を塞がれてしまうという問題を解消でき、仮にトラップベルトに不純物粒子及び製膜粒子等のパーティクルが付着しても帯状基材上に落下することを抑えることができるため、ロール トゥ ロールによる薄膜形成装置であっても、薄膜の膜質の低下を抑え、帯状基材の長手方向に亘って安定して薄膜を形成することができる。
【0011】
また、前記電極ユニットは、帯状基材の搬送方向に沿って複数配列して設けられており、前記複数の電極ユニットの前記上側ロール及び下側ロールの配置位置が鉛直方向において差があるもののみ、前記トラップベルトの走行方向を鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されている構成にしてもよい。
【0012】
この構成によれば、電極ユニットが複数配列されている場合に、上側ロール及び下側ロールの高さ位置に差がある電極ユニットのトラップベルトの走行方向のみ規制すれば、トラップベルトに付着したパーティクルが帯状基材上に落下するのを抑えることができる。
【0013】
また、具体的な前記上側ロールの実施の様態としては、前記上側ロールは、前記トラップベルトを送り出すベルト供給部を兼ねており、前記下側ロールは、前記トラップベルトを巻き取るベルト巻取部を兼ねている構成にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の薄膜形成装置によれば、ロール トゥ ロールによる薄膜形成装置であっても、薄膜の膜質の低下を抑えることができ、帯状基材の長手方向に亘って安定して薄膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における薄膜形成装置の図であり、
図2は、電極ユニットを概略的に示す図である。
【0018】
薄膜形成装置1は、基材上に表面処理を行って薄膜を形成するためのものであり、例えば、プラスチックフィルム上に酸化防止、水分浸入防止を目的とした薄膜を形成し、食品用の保護フィルム、フレキシブル太陽電池の封止膜として使用される。具体的には、フレキシブル太陽電池の封止膜の場合には、プラスチックフィルム等の帯状基板上に各電極層及び光電変換層等で構成される太陽電池セルが形成された後、薄膜形成装置1により太陽電池セル上に薄膜を複数層形成して封止膜を形成する。これにより、太陽電池セルに水分の浸入が効果的に防止され、酸化特性に優れたフレキシブル太陽電池を形成することができる。
【0019】
この薄膜形成装置1は、送出し側から巻取り側に帯状基材2を搬送させつつ、帯状基材2の表面に薄膜を形成する、いわゆるロール トゥ ロール方式により薄膜を形成するものである。具体的には、
図1、
図2に示すように、帯状基材2を供給する基材送出部3と、供給された帯状基材2を巻き取る基材巻取部4と、基材送出部3と基材巻取部4との走行経路間に配置されるメインロール5と、これらを収容するメインチャンバ6と、薄膜を形成する電極ユニット7とを有しており、基材送出部3から送出された帯状基材2をメインロール5の外周面51に沿わせて搬送させつつ、各電極ユニット7を通過させることにより、帯状基材2上に薄膜が形成され、薄膜が形成された帯状基材2が基材巻取部4で巻き取られるようになっている。
【0020】
基材送出部3は、帯状基材2を下流側に供給するためのものである。基材送出部3は、帯状基材2を巻き付ける送出ロール部31を有しており、この送出ロール部31を駆動制御することにより帯状基材2を送り出すことができるようになっている。すなわち、図示しない制御装置により送出ロール部31の回転が制御されることにより、帯状基材2の送出量を増加及び減少させることができる。具体的には、帯状基材2が下流側から引張力を受けた状態で送出ロール部31を回転させることにより帯状基材2が下流側に送り出され、適宜、送出ロール部31にブレーキをかけることにより帯状基材2が撓むことなく一定速度で送り出されるようになっている。
【0021】
ここで、帯状基材2は、一方向に延びる薄板状の長尺体であり、厚み0.01mm〜0.2mm 幅5mm〜1000mmの平板形状を有する長尺体が適用される。また、材質として、特に限定しないが、ステンレス、銅等の金属材料の他、プラスチックフィルム等が好適に用いられる。
【0022】
基材巻取部4は、供給された帯状基材2を巻き取るものである。基材巻取部4は、送出ロール部31と同様に、巻取ロール部41を有しており、この巻取ロール部41を駆動制御することにより帯状基材2を巻き取ることができるようになっている。すなわち、図示しない制御装置により巻取ロール部41の回転が制御されることにより、帯状基材2の巻取量を増加及び減少させることができる。具体的には、巻取ロール部41の回転が調節されることにより、送り出された帯状基材2が撓むのを抑えつつ、逆に帯状基材2が必要以上の張力がかからないようにして巻き取ることができるようになっている。
【0023】
メインロール5は、製膜の際に帯状基材2の姿勢を保ちつつ、上流側の基材送出部3から供給された帯状基材2を下流側の基材巻取部4に搬送するためのものである。メインロール5は、基材送出部3と基材巻取部4との走行経路間に配置されており、送出ロール部31及び巻取ロール部41よりも大径の略円筒形状に形成されている。メインロール5の外周面51は、曲率が一定の曲面で形成されており、図示しない制御装置により送出ロール部31及び巻取ロール部41の回転に応じて駆動制御されるようになっている。また、メインロール5は、送出ロール部31及び巻取ロール部41に比べて、その外周面51が下側に張り出す位置に設けられており、この張り出した外周面51に帯状基材2が架け渡されている。これにより、基材送出部3から送り出された帯状基材2は、メインロール5の外周面51に当接することにより所定の張力が負荷された状態で搬送される。すなわち、メインロール5の外周面51に帯状基材2が接した状態でメインロール5が基材送出部3及び基材巻取部4の回転に応じて回転することにより、帯状基材2は、帯状基材2全体が張った状態で、その表面が製膜チャンバ7それぞれに対向する姿勢で基材送出部3から基材巻取部4へ搬送されるようになっている。そして、帯状基材2が各電極ユニット7を通過することにより、帯状基材2上に薄膜が順次形成されるようになっている。
【0024】
メインチャンバ6は、基材送出部3、基材巻取部4、及び、メインロール5を収容しチャンバ6内を所定の圧力に保持するためのものである。本実施形態では、メインチャンバ6は、
図1に示すように、基材送出部3と基材巻取部4を収容する部分と、メインロール5を収容する部分とを有するように形成されたケーシングである。そして、メインチャンバ6には、図示しない真空ポンプが接続されており、この真空ポンプを作動させることにより、メインチャンバ6内の圧力を制御できるようになっている。本実施形態では、各電極ユニット7のチャンバよりも低圧になるように設定されている。なお、本実施形態では、基材送出部3及び、基材巻取部4がメインチャンバ6内に収容されているが、これらをメインチャンバ6の外に設ける構成であってもよい。本実施形態のように、これらをメインチャンバ6内に設けることで、基材送出部3及び基材巻取部4とメインロール5との間で、帯状基材2や製膜後の帯状基材2を大気に曝すことから保護することができる。
【0025】
電極ユニット7は、プラズマ環境を形成し、帯状基材2上に薄膜を形成するためのものである。本実施形態では、複数の電極ユニット7が設けられており、
図1の例では、8つの電極ユニット7が設けられている。これらの電極ユニット7は、メインロール5の外周面51に沿って配列して設けられており、それぞれの電極ユニット7は等間隔で配置されている。
【0026】
電極ユニット7は、それぞれ共通の構造を有しており、間仕切りチャンバ71と、この間仕切りチャンバ71内に配置される電極部72とを有している。すなわち、間仕切りチャンバ71内でプラズマ雰囲気が形成されると、帯状基材2と電極ユニット7との間に供給された原料ガスがプラズマ処理されることにより製膜粒子が形成され、この製膜粒子が帯状基材2上に堆積することにより薄膜が形成される。
【0027】
間仕切りチャンバ71は、電極部72が所定の圧力に保持するためのものである。この間仕切りチャンバ71は、開口部71aを有するケーシング部材であり、開口部71aがメインロール5の外周面51に対向する姿勢で配置されている。この間仕切りチャンバ71は、開口部71aと反対側に排気部71bを有している。この排気部71bは、真空ポンプと接続されており、真空ポンプを作動させると間仕切りチャンバ71内が排気され、間仕切りチャンバ71内を所定の真空度に保つことができるようになっている。
【0028】
電極部72は、プラズマ雰囲気を形成するものであり、本実施形態では、誘導結合型プラズマの電極が用いられている。電極部72は、メインロール5の外周面51に開口する電極カバー73に覆われた状態で間仕切りチャンバ71のほぼ中央部分に配置されている。そして、誘導結合型プラズマの電極に高周波電源を印加することにより、電極カバー73内の電極部72付近にプラズマ雰囲気が形成される。また、間仕切りチャンバ71には、プラズマを生成するガスを供給するプラズマガス供給部74が設けられており、その供給口74aが電極カバー73内に配置されている。すなわち、誘導結合型プラズマの電極に高周波電源を印加した状態でプラズマガス供給部74からプラズマを生成するガスが供給されると、プラズマを生成するガスはプラズマ化し、原料ガスと反応するラジカルが形成される。また、電極ユニット7とメインロール5の外周面51との間には、原料ガス供給部8が設けられており、この原料ガス供給部8から原料ガスが供給される。したがって、プラズマ雰囲気により形成されたラジカルが間仕切りチャンバ71の開口部71aから放出されると、ラジカルと原料ガスとが反応することにより製膜粒子が形成され、この製膜粒子が帯状基材2に堆積することにより、帯状基材2上に薄膜が形成される。そして、帯状基材2がメインロール5の回転と共に搬送されることにより、所定の薄膜が帯状基材2の長手方向に沿ってほぼ均一に形成される。
【0029】
なお、本実施形態では、一の電極ユニット7に供給される原料ガスとして、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)ガス、プラズマを生成するガスとしてアルゴンガス、水素ガスを供給することにより、帯状基材2上にはSi化合物膜(第1薄膜)が形成され、そのすぐ下流側の電極ユニット7に供給される原料ガスとして、HMDS、プラズマを生成するガスとして酸素ガスが供給されることにより、第1薄膜上にSiO2膜(第2薄膜)が形成される。本実施形態では、第1薄膜を形成する電極ユニット7と第2薄膜を形成する電極ユニット7とを交互に配置していることにより、帯状基材2上には第1薄膜と第2薄膜とが交互に積層される封止膜が形成される。
【0030】
また、電極ユニット7は、特定の粒子を取り除くイオントラップ部9を有している。このイオントラップ部9は、トラップベルト91が電極部72と帯状基材2との間に位置するように設けられており、このトラップベルト91により特定の粒子を捕獲することができる。
【0031】
具体的には、
図2に示すように、電極カバー73と間仕切りチャンバ71との間には、メッシュ状のトラップベルト91を供給するベルト供給部92と、トラップベルト91を巻取るベルト巻取部93とが設けられており、トラップベルト91が電極カバー73の開口部分73aと間仕切りチャンバ71の開口部71aとの間を走行するように設けられている。すなわち、電極カバー73と間仕切りチャンバ71との間には、複数のロール94が設けられており、トラップベルト91は、これらのロール94に支持されることにより掛け渡されている。本実施形態では、ロール94が4つ設けられており、上側ロール94aと下側ロール94bとによって、トラップベルト91が電極カバー73の開口部分73aと間仕切りチャンバ71の開口部71aとの間に位置するように支持されている。すなわち、上側ロール94aと下側ロール94bとによって、トラップベルト91が電極カバー73の開口部分73aを完全に覆うように支持されている。これにより、電極カバー73の開口部分73aと間仕切りチャンバ71の開口部71aとの間には、次々と新しいトラップベルト91が供給され、特定の粒子を効果的に捕獲することができる。
【0032】
ここで、上側ロール94a及び下側ロール94bとは、トラップベルト91を電極カバー73の開口部分73aと間仕切りチャンバ71の開口部71aとの間に位置するように支持するためのロール94であり、相対的に鉛直方向において上側に位置するロール94を上側ロール94a、相対的に鉛直方向において下側に位置するロール94を下側ロール94bとしている。
【0033】
このトラップベルト91は、金属製であり所定の編み目を有するメッシュ状に形成されている。そして、トラップベルト91がアースされていることにより、ラジカルをメインロール5側に通過させ、他の不要な粒子(不純物粒子S(
図3,
図4参照))を取り除くことができるようになっている。すなわち、プラズマガスがプラズマ雰囲気に曝されると、ラジカルが生成されると同時に電子、イオン等(陽イオン等)の製膜に不要な粒子も生成される。ここで、アースされたトラップベルト91は、プラズマ電位に対して相対的にマイナスになるため、陽イオンはトラップベルト91に付着し、電子はトラップベルト91により電気的な力を受け、跳ね返される。すなわち、トラップベルト91からは主として電気的に中性なラジカルがメインロール5側に排出され、原料ガスと反応して製膜粒子となり帯状基材2上に堆積する。
【0034】
また、トラップベルト91の走行方向は、鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されている。すなわち、
図2に示すように、電極ユニット7が鉛直方向に対して角度を有するように設置されている場合には、上側ロール94a及び下側ロール94bの配置位置が鉛直方向において差が生じている。このような場合には、トラップベルト91の走行方向を鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されていることにより、不純物粒子Sが帯状基材2上に落下することを防止することができる。
【0035】
ここで、トラップベルト91の走行方向を鉛直方向下側から鉛直方向上側に設定されている場合について説明すると、
図3は、トラップベルト91の走行方向を鉛直方向下側から鉛直方向上側に設定されている場合の不純物粒子の移動の状態を示す図である。上述したように、陽イオン等の不純物粒子Sがトラップベルト91に付着したり、仮にトラップベルト91を通過した不純物粒子Sがトラップベルト91に付着した場合、トラップベルト91の走行に伴って移動する。すなわち、不純物粒子Sは、上側ロール94a側に移動する(
図3(a))。そして、トラップベルト91の走行により不純物粒子Sががそのまま移動すると、
図3(b)に示すように、不純物粒子Sが上側ロール94aと衝突する。不純物粒子Sが上側ロール94aと衝突すると、その衝突により不純物粒子Sが剥離し落下する。落下した不純物粒子Sは、電極部72側からトラップベルト91を通過するラジカルの流れによりメインロール5側に舞い上げられて浮遊するため(
図3(c))、場合によっては、帯状基材2上に形成された薄膜にパーティクルとして取り込まれ、薄膜の膜質を低下させる要因になる。
【0036】
そこで、本発明のように、トラップベルト91の走行方向を鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されていると、トラップベルト91に付着した不純物粒子Sは、トラップベルト91の走行に伴って下側ロール94b側に移動し、下側ロール94bと衝突する(
図4(a))。この衝突により不純物粒子Sはトラップベルト91から剥離するが、不純物粒子Sは、そのまま間仕切りチャンバ71内に落下するため、電極部72側からトラップベルト91を通過するラジカルの流れにより帯状基材2上に形成された薄膜に取り込まれることはない。したがって、上側ロール94a及び下側ロール94bの配置位置が鉛直方向において差がある場合に、トラップベルト91の走行方向を鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定することにより、薄膜にパーティクルが取り込まれることによる薄膜の膜質を抑えることができる。
【0037】
また、間仕切りチャンバ71内には、電極カバー73が設けられているため、間仕切りチャンバ71内に落下する不純物粒子Sが電極に付着することによりプラズマ雰囲気の形成に影響を与えることを抑えることができる。
【0038】
なお、上側ロール94a及び下側ロール94bの配置位置が鉛直方向において差がない場合には、トラップベルト91の走行方向はどちらであってもよい。
【0039】
このように、特定の粒子を取り除く(ラジカルを通過させ、イオン、電子等の不純物粒子Sを捕獲する)トラップベルト91が、電極部72と帯状基材2との間を走行するように繰り出されるように設けられているため、電極部72と帯状基材2との間には、新しいトラップベルト91が順次供給される。すなわち、仮に製膜粒子がトラップベルト91に付着しトラップベルト91の編み目を塞いだ場合でも、編み目を塞がれたトラップベルト91は巻き取られ、新しいトラップベルト91が次々に繰り出されるため、電極部72と帯状基材2との間には、常に新しいトラップベルト91が供給され、不純物粒子Sが有効に捕獲される。
【0040】
そして、トラップベルト91を支持する上側ロール94aと下側ロール94bの配置位置が鉛直方向において差がある場合には、トラップベルト91の走行方向が鉛直方向上側から鉛直方向下側になるように設定されているため、トラップベルト91に付着した不純物粒子Sや製膜粒子等のパーティクルがトラップベルト91側に付着するのを抑えることができる。すなわち、トラップベルト91は常に走行しているため、トラップベルト91に付着したパーティクルは、トラップベルト91と共に走行し、トラップベルト91を支持するロール94に接触すると、トラップベルト91に付着したパーティクルが剥離する。ここで、パーティクルが鉛直方向上側に位置するロール94に接触して剥離した場合、パーティクルが重力の影響で落下するが、仮に電極部72と帯状基材2との間に位置するトラップベルト91上に落下した場合、チャンバ内に供給されるプラズマガス(トラップベルト91を通過するラジカル)で舞い上げられ、帯状基材2上の薄膜に付着する。したがって、トラップベルト91の走行方向を鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されていることにより、トラップベルト91に付着したパーティクルは鉛直方向下側に位置する下側ロール94bに接触する。そして、下側ロール94bに接触したパーティクルは、剥離したとしてもそのまま下側に落下し、トラップベルト91上に落下するのを抑えることができる。このように、イオントラップ部9のトラップベルト91が編み目を塞がれてしまうという問題を解消でき、仮にトラップベルト91に不純物粒子S及び製膜粒子等のパーティクルが付着しても帯状基材2上に落下することを抑えることができるため、ロール トゥ ロールによる薄膜形成装置1であっても、薄膜の膜質の低下を抑え、帯状基材2の長手方向に亘って安定して薄膜を形成することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、ベルト供給部92及びベルト巻取部93とは別に、ロールが複数配置されており、上側ロール及び下側ロールで走行中のトラップベルト91が電極部72と帯状基材2との双方に対向するように支持される例について説明したが、
図5に示すように、上側ロールがベルト供給部92を兼ねており、下側ロールがベルト巻取部93を兼ねている構成であってもよい。この構成により、上記実施形態の構成に比べてトラップベルト91を支持するロールを削減でき、間仕切りチャンバ71を帯状基材2の搬送方向と直交する方向にコンパクトに形成することができる。
【0042】
また、上記実施形態では、複数の電極ユニット7を備える例について説明したが、電極ユニット7は、1つのみ設けるものであってもよい。すなわち、電極ユニット7の数に限らず、搬送される帯状基材2の表面に対向させて配置されていればよく、電極ユニット7における上側ロール94a及び下側ロール94bの配置位置が鉛直方向において差がある場合に、トラップベルト91の走行方向は、鉛直方向上側から鉛直方向下側に設定されていればよい。
【0043】
また、上記実施形態では、電極ユニット7がメインロール5の外周面51の周方向に沿って配列された例について説明したが、帯状基材2が直線状に搬送されるものであってもよく、この場合であっても、電極ユニット7は、帯状基材2に対向するように帯状基材2に沿って配列されていればよい。