(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209046
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】汚泥処理方法及び装置並びに化成肥料製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/14 20060101AFI20170925BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20170925BHJP
C02F 1/58 20060101ALI20170925BHJP
C02F 1/56 20060101ALI20170925BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20170925BHJP
C05B 9/00 20060101ALI20170925BHJP
C05F 7/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
C02F11/14 DZAB
C02F11/00 J
C02F11/14 A
C02F11/14 E
C02F1/58 R
C02F1/56 Z
B01D21/01 105
C05B9/00
C05F7/00
C05F7/00 301A
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-213180(P2013-213180)
(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公開番号】特開2015-73966(P2015-73966A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】若菜 正宏
(72)【発明者】
【氏名】八代 隆
(72)【発明者】
【氏名】與倉 寛人
(72)【発明者】
【氏名】楠本 勝子
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−028500(JP,A)
【文献】
特開2013−013851(JP,A)
【文献】
特開2004−141747(JP,A)
【文献】
特開昭59−183896(JP,A)
【文献】
特開昭57−130599(JP,A)
【文献】
特開2009−066499(JP,A)
【文献】
特開2012−071296(JP,A)
【文献】
特開2004−358345(JP,A)
【文献】
米国特許第04479879(US,A)
【文献】
特開2014−018783(JP,A)
【文献】
特開昭62−074500(JP,A)
【文献】
特開2010−000436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
B01D 21/01
C02F 1/56− 1/58
C05B 9/00
C05F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物としての汚泥に、150mPa・s以上の粘度を有する第1高分子凝集剤を加え、600rpm以上で高速撹拌して混合する第1撹拌工程と、
さらに第2高分子凝集剤を加え、10〜500rpmの範囲で緩速撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌工程と、
当該凝集フロックを含む汚泥を濃縮する汚泥濃縮工程と、
当該凝集フロックを含む汚泥及び/又は濃縮された汚泥を脱水する脱水工程と、を有し、
汚泥濃縮工程で得られる濃縮ろ液及び/又は脱水工程で得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項2】
前記汚泥濃縮工程の後、前記脱水工程の前に、さらに無機凝集剤を添加し、前記汚泥濃縮工程で得られる濃縮ろ液からMAPを回収することを特徴とする、請求項1に記載の汚泥処理方法。
【請求項3】
第1撹拌工程において又はその前に、汚泥に脱水補助剤を添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の汚泥処理方法。
【請求項4】
汚泥と150mPa・s以上の粘度を有する第1高分子凝集剤とを600rpm以上で高速撹拌して混合する第1撹拌装置と、
当該第1撹拌装置にて混合された第1高分子凝集剤を含む汚泥に第2高分子凝集剤をさらに混合して、10〜500rpmの範囲で緩速撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌装置と、
当該第2撹拌装置にて形成された凝集フロックを含む汚泥を濃縮する汚泥濃縮装置と、
当該凝集フロックを含む汚泥及び/又は濃縮された汚泥を脱水する脱水装置と、
当該濃縮装置で得られる濃縮ろ液及び/又は当該脱水装置で得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収装置と、
を具備する汚泥処理装置。
【請求項5】
前記汚泥濃縮装置と前記脱水装置との間に、さらに無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加手段を含むことを特徴とする請求項4に記載の汚泥処理装置。
【請求項6】
前記第1撹拌装置に供給される汚泥に脱水補助剤を添加する脱水補助剤添加手段をさらに具備することを特徴とする請求項4又は5に記載の汚泥処理装置。
【請求項7】
被処理物としての汚泥に、150mPa・s以上の粘度を有する第1高分子凝集剤を加え、600rpm以上で高速撹拌して混合する第1撹拌工程と、
さらに第2高分子凝集剤を加え、10〜500rpmの範囲で緩速撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌工程と、
当該凝集フロックを含む汚泥を濃縮する汚泥濃縮工程と、
当該凝集フロックを含む汚泥及び/又は濃縮された汚泥を脱水する脱水工程と、を有し、
汚泥濃縮工程で得られる濃縮ろ液及び/又は脱水工程で得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収することを特徴とする化成肥料の製造方法。
【請求項8】
汚泥と150mPa・s以上の粘度を有する第1高分子凝集剤とを600rpm以上で高速撹拌して混合する第1撹拌装置と、
当該第1撹拌装置にて混合された第1高分子凝集剤を含む汚泥に第2高分子凝集剤をさらに混合して、10〜500rpmの範囲で緩速撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌装置と、
当該第2撹拌装置にて形成された凝集フロックを含む汚泥を濃縮する汚泥濃縮装置と、
当該凝集フロックを含む汚泥及び/又は濃縮された汚泥を脱水する脱水装置と、
当該濃縮装置で得られる濃縮ろ液及び/又は当該脱水装置で得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収装置と、
を具備する化成肥料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥処理方法及び装置並びに化成肥料製造方法及び装置に関し、特に、汚泥を凝集させる凝集剤の添加量を削減しつつ脱水ケーキの含水率を低下させると共にリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収する汚泥処理方法及び装置並びに回収したMAPを化成肥料とする化成肥料製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物量を削減し、環境負荷を低減することが求められる中、廃水処理施設や浄水処理施設などから排出される汚泥を減容化するための脱水処理技術は極めて重要であり、より効率的な汚泥の脱水処理技術が望まれている。
【0003】
汚泥の脱水処理は、凝集剤を用いて汚泥を凝集させる凝集工程と、脱水機により凝集汚泥を脱水する脱水工程とから構成されるのが一般的である。汚泥の脱水処理における成功の可否は、凝集剤によって如何に効果的に凝集させることができるかに依るところが大きい。
【0004】
凝集剤を利用して汚泥を凝集させる方法のうち、高分子凝集剤を利用すると共に、汚泥を撹拌する際の回転速度が異なる2段階の撹拌工程により、汚泥を凝集させる方法が知られている。
【0005】
例えば特開昭57−130599号公報(特許文献1)には、汚泥に対し、汚泥の電荷と反対の電荷を有する第1高分子凝集剤を添加して第1の撹拌を行い、次いで第1高分子凝集剤と反対の電荷を有する第2高分子凝集剤を添加して第2の撹拌を行い、生成したフロックを脱水する方法において、第1の撹拌はフロックを生成しないか、または生成したフロック径が2mm以下となるような強い撹拌であることを特徴とする汚泥脱水法が開示されている。特許文献1に記載の方法では、汚泥の電荷の中和を行うことにより脱水性のよいフロックを形成することを意図している。
【0006】
特開昭62−277200号公報(特許文献2)には、両性の高分子凝集剤を用いて有機質汚泥を凝集するに当って、第1段処理において該汚泥と該両性の高分子凝集剤の一部とを比較的強撹拌の下で接触させ、第2段処理において前記の第1段処理汚泥と該両性の高分子凝集剤の残部とを比較的弱撹拌の下で接触させることを特徴とする、汚泥の凝集処理方法が開示されている。特許文献2に記載の方法は、カチオン性の活性部分とアニオン性の活性部分とがそれぞれ独立に作用することが必要であり、相互に遊離状態とするために酸性物質を共存させ、pHを3.5以下としている。また、第1段階での凝集が不完全とならないように、第1段階への凝集剤の添加量は全使用量の50〜90%としている。
【0007】
特開平11−57800号公報(特許文献3)には、有機性汚泥に無機凝集剤および第1のポリマーとして両性ポリマーを添加して強撹拌し、さらに第2のポリマーとして両性ポリマーを添加して緩速撹拌した後、加圧脱水することを特徴とする汚泥脱水方法が開示されている。特許文献3では、強撹拌の条件は周速として300〜500m/分としてフロック中の水分を放出して強固なフロックを形成し、緩速撹拌の条件は20〜100m/分として微細化されたフロックを集合させて小形の粒状フロックを生成することで、濾過脱水性に優れ、高い圧力をかけても目詰まりを生じないとされている。
【0008】
特開2002−192199号公報(特許文献4)には、汚泥と第1の凝集剤及びpH調整剤を添加して1次凝集を行い、1次凝集フロックを1次脱水機に導入して1次脱水を行い、1次脱水ケーキに第2の凝集剤を添加して2次凝集を行い、2次凝集フロックを時に脱水機に導入して2次脱水を行う、低含水率の充填脱水ケーキを得る汚泥脱水方法及び装置が開示されている。特許文献4では、凝集と脱水との組み合わせを1単位として処理が進められるため、脱水装置が複数必要になり、装置が大型となりメンテナンスも煩雑となる。
【0009】
汚泥の含水率を低下させる手段として、汚泥に繊維状物を混合した後に高分子凝集剤を添加して脱水する方法が提案されている。例えば、有機性汚泥に、合成繊維と凝集剤を添加した後、脱水処理する方法(特許文献5)などが提案されている。当該方法では、従来の古紙裁断物を添加する方法と比較して、少ない添加量でも含水率が低い脱水ケーキが得られる。
【0010】
汚泥に合成繊維を混合する方法では、ある程度のケーキ含水率の低減が可能である。しかし、本出願人の検討によれば、合成繊維の汚泥に対する濡れ性が不十分な場合には、槽内全体を十分に撹拌できる装置を具備していない汚泥貯留槽などへ合成繊維を投入する場合に、汚泥中での開繊が困難であり、合成繊維を汚泥中に均一に混合することができないことが判明した。また、合成繊維を汚泥中に均一に混合できたとしても、脱水機内で圧搾される時に汚泥から合成繊維が分離してしまい、脱水に寄与できないために安定した脱水処理ができないことが判明した。また、繊維状物の中には、微生物で分解され難いものもあり、コンポスト化には不向きな場合もある。
【0011】
また、本出願人が検討した結果、公知の合成繊維は、理由は明らかではないが、汚泥の性状によってはケーキ含水率を低減させる効果がほとんど得られない場合があり、合成繊維を添加するだけでは根本的な解決にはなっていないことが判明した。
合成繊維を用いて、脱水ケーキの含水率を低下させる技術は、上記のとおり検討されている。しかし、従来技術の殆どは、合成繊維の素材、太さ、及び長さを調節して含水率を低下させようとしている。しかし、本発明者らが検討した結果、単に合成繊維の素材、太さ及び長さを調節するだけでは、難脱水性汚泥を機械脱水しても脱水ケーキの含水率を十分に低下させることはできないことが判明した。
【0012】
本出願人は、特殊な形状の脱水補助剤を用いることによって、難脱水性汚泥の脱水効果を改善できることを報告している(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭57−130599号公報
【特許文献2】特開昭62−277200号公報
【特許文献3】特開平11−57800号公報
【特許文献4】特開2002−132199号公報
【特許文献5】特開2002−219500号公報
【特許文献6】特開2012−71296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、高分子凝集剤を用いて回転速度が異なる2段階の撹拌工程により汚泥を凝集させ、脱水ケーキの含水率を低減して廃棄物量をより一層削減することができ、化成肥料として有用なリン酸マグネシウムアンモニウム(以下「MAP」という。)を効率的に回収することができ、しかも、高分子凝集剤の使用量を削減することができる、汚泥処理方法及び装置を提供することにある。
また、本発明は、汚泥処理において、MAPを回収して化成肥料を製造する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、回転速度が異なる2段階の撹拌工程において、高分子凝集剤を汚泥に添加して凝集フロックを形成し、凝集フロックを含む汚泥を濃縮して得られる濃縮汚泥を脱水処理し、濃縮汚泥と分離された濃縮ろ液及び/又は脱水処理で得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウムを回収する汚泥処理方法及び化成肥料の製造方法が提供される。具体的には、本発明は下記態様を含む。
[1]被処理物としての汚泥に、第1高分子凝集剤を加え、高速撹拌して混合する第1撹拌工程と、
さらに第2高分子凝集剤を加え、緩速撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌工程と、
当該凝集フロックを含む汚泥を濃縮する汚泥濃縮工程と、
当該凝集フロックを含む汚泥及び/又は濃縮された汚泥を脱水する脱水工程と、を有し、
汚泥濃縮工程で得られる濃縮ろ液及び/又は脱水工程で得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収することを特徴とする汚泥処理方法。
[2]前記汚泥濃縮工程の後、前記脱水工程の前に、さらに無機凝集剤を添加し、前記汚泥濃縮工程で得られる濃縮ろ液からMAPを回収することを特徴とする、[1]に記載の汚泥処理方法。
[3]第1撹拌工程において又はその前に、汚泥に脱水補助剤を添加することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の汚泥処理方法。
汚泥への脱水補助剤の態様としては、(1)前記第1撹拌工程の前に、汚泥濃縮槽又は汚泥貯槽において、汚泥に脱水補助剤を添加する態様、(2)第1高分子凝集剤を調整する第1高分子凝集剤溶解槽に脱水補助剤を添加し、第1高分子凝集剤と共に、第1撹拌工程に脱水補助剤を添加する態様、(3)第1撹拌工程を行う第1撹拌装置に直接脱水補助剤を添加する態様を好ましく挙げることができる。
前記第1高分子凝集剤と前記第2高分子凝集剤とは、同一の高分子凝集剤でもよい。
[4]前記第1撹拌工程、前記第2撹拌工程及び前記脱水工程の少なくとも1工程において、さらにpH調整剤を添加することを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の汚泥処理方法。
[5]汚泥と第1高分子凝集剤とを高速撹拌して混合する第1撹拌装置と、
当該第1撹拌装置にて混合された第1高分子凝集剤を含む汚泥に第2高分子凝集剤をさらに混合して、緩速撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌装置と、
当該第2撹拌装置にて形成された凝集フロックを含む汚泥を濃縮する汚泥濃縮装置と、
当該凝集フロックを含む汚泥及び/又は濃縮された汚泥を脱水する脱水装置と、
当該濃縮装置で得られる濃縮ろ液及び/又は当該脱水装置で得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収装置と、
を具備する汚泥処理装置。
前記汚泥濃縮装置が、汚泥投入用ホッパーと、汚泥移動手段と、汚泥移動手段の上方に設けられた加圧手段と、汚泥移動手段の下方に設けられた水捕集手段とを備える汚泥圧搾装置であることが好ましい。前記汚泥圧搾装置が、さらに、前記汚泥移動手段の汚泥排出口にスリット形成機を備えるものでもよい。
[6]前記汚泥濃縮装置と前記脱水装置との間に、さらに無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加手段を含むことを特徴とする[5]に記載の汚泥処理装置。
[7]前記第1撹拌装置に供給される汚泥に脱水補助剤を添加する脱水補助剤添加手段をさらに具備することを特徴とする[5]又は[6]に記載の汚泥処理装置。
[8]前記脱水補助剤添加手段は、前記第1撹拌装置に設けられていることを特徴とする[7]に記載の汚泥処理装置。
前記脱水補助剤添加手段は、前記第1撹拌装置に添加する第1高分子凝集剤を調整する第1高分子凝集剤溶解槽に設けられていることが好ましい。
前記第1撹拌装置の上流側に、脱水補助剤を添加する脱水補助剤添加手段を設けた汚泥濃縮槽及び/又は汚泥貯槽を具備していてもよい。
[9]前記第1撹拌装置、前記第2撹拌装置及び前記脱水装置の少なくとも1の装置に、汚泥のpHを測定するpH計と、汚泥のpH値に基づいてpH調整剤を添加するpH調整剤添加手段と、を具備することを特徴とする[5]〜[8]のいずれか1項に記載の汚泥処理装置。
[10]被処理物としての汚泥に、第1高分子凝集剤を加え、高速撹拌して混合する第1撹拌工程と、
さらに第2高分子凝集剤を加え、緩速撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌工程と、
当該凝集フロックを含む汚泥を濃縮する汚泥濃縮工程と、
当該凝集フロックを含む汚泥及び/又は濃縮された汚泥を脱水する脱水工程と、を有し、
汚泥濃縮工程で得られる濃縮ろ液及び/又は脱水工程で得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収することを特徴とする化成肥料の製造方法。
前記汚泥濃縮工程の後、前記脱水工程の前に、さらに無機凝集剤を添加し、前記汚泥濃縮工程で得られる濃縮ろ液からMAPを回収してもよい。
第1撹拌工程において又はその前に、汚泥に脱水補助剤を添加することが好ましく、(1)前記第1撹拌工程の前に、汚泥濃縮槽又は汚泥貯槽において、汚泥に脱水補助剤を添加する態様、(2)第1高分子凝集剤を調整する第1高分子凝集剤溶解槽に脱水補助剤を添加し、第1高分子凝集剤と共に、第1撹拌工程に脱水補助剤を添加する態様、(3)第1撹拌工程を行う第1撹拌装置に直接脱水補助剤を添加する態様を好ましく挙げることができる。
前記第1高分子凝集剤と前記第2高分子凝集剤とは、同一の高分子凝集剤であることが好ましい。
前記第1撹拌工程、前記第2撹拌工程及び前記脱水工程の少なくとも1工程において、さらにpH調整剤を添加することが好ましい。
[11]汚泥と第1高分子凝集剤とを高速撹拌して混合する第1撹拌装置と、
当該第1撹拌装置にて混合された第1高分子凝集剤を含む汚泥に第2高分子凝集剤をさらに混合して、緩速撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌装置と、
当該第2撹拌装置にて形成された凝集フロックを含む汚泥を濃縮する汚泥濃縮装置と、
当該凝集フロックを含む汚泥及び/又は濃縮された汚泥を脱水する脱水装置と、
当該濃縮装置で得られる濃縮ろ液及び/又は当該脱水装置で得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収装置と、
を具備する化成肥料の製造装置。
前記汚泥濃縮装置が、汚泥投入用ホッパーと、汚泥移動手段と、汚泥移動手段の上方に設けられた加圧手段と、汚泥移動手段の下方に設けられた水捕集手段とを備える汚泥圧搾装置であることが好ましい。
前記汚泥圧搾装置が、さらに、前記汚泥移動手段の汚泥排出口にスリット形成機を備えることがより好ましい。
前記汚泥濃縮装置と前記脱水装置との間に、さらに無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加手段を含むことが好ましい。
前記第1撹拌装置に供給される汚泥に脱水補助剤を添加する脱水補助剤添加手段をさらに具備することが好ましく、前記第1撹拌装置に設けられている態様、前記第1撹拌装置に添加する第1高分子凝集剤を調整する第1高分子凝集剤溶解槽に設けられている態様、前記第1撹拌装置の上流側に、脱水補助剤を添加する脱水補助剤添加手段を設けた汚泥濃縮槽及び/又は汚泥貯槽を具備する態様を好ましく挙げることができる。
前記第1撹拌装置、前記第2撹拌装置及び前記脱水装置の少なくとも1の装置に、汚泥のpHを測定するpH計と、汚泥のpH値に基づいてpH調整剤を添加するpH調整剤添加手段と、を具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、汚泥の表面電荷の中和に消費される高分子凝集剤の使用量を削減しつつ、脱水ケーキの含水率を低減して汚泥脱水処理の減容化を達成することができ、さらに化成肥料として有用なMAPを効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の汚泥処理方法の一例を示す概略フローである。
【
図2】本発明の汚泥処理装置の一例を示す概略フローである。
【
図3】本発明の汚泥処理装置の別の例を示す概略フローである。
【
図4】本発明の汚泥処理装置の別の例を示す概略フローである。
【
図5】本発明の汚泥処理装置の別の例を示す概略フローである。
【
図6】本発明の汚泥処理装置の別の例を示す概略フローである。
【
図9】スリット形成装置の一例を示す概略図である。
【
図10】第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤との添加比率とSS回収率との関係を示すグラフである。
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の汚泥処理方法の概略フロー図である。
本発明の汚泥処理方法及び化成肥料の製造方法は、被処理物としての汚泥に第1高分子凝集剤を加え、高速撹拌して混合する第1撹拌工程Aと、さらに第2高分子凝集剤を加え、緩速撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌工程Bと、当該凝集フロックを含む汚泥を濃縮する汚泥濃縮工程Dと、当該凝集フロックを含む汚泥及び/又は濃縮された汚泥を脱水する脱水工程Cと、濃縮工程Dで得られる濃縮ろ液及び/又は脱水工程Cで得られる脱水ろ液からリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を回収するMAP回収工程Eを有することを特徴とする。回収されたMAPは化成肥料として利用することができる。
図1に示す処理フローにおいて、第1撹拌工程Aにて撹拌される汚泥に脱水補助剤が添加され、第1撹拌工程A及び第2撹拌工程Bにて撹拌される汚泥にpH処理剤が添加されており、以下の説明においては、脱水補助剤及びpH調整剤を添加する態様について説明するが、脱水補助剤及びpH調整剤は任意添加物である。脱水補助剤及びpH調整剤は、添加することが好ましいが添加しなくてもよい。同様に、無機凝集剤を添加する態様で説明するが、無機凝集剤は添加してもしなくてもよい。また、以下の説明では汚泥処理方法及び装置について説明するが、化成肥料の製造方法及び装置に関しても同様の説明が当てはまる。
【0020】
本発明の汚泥処理方法では、撹拌速度が異なる2段階の撹拌工程を備える。まず、第1撹拌工程Aで、汚泥と脱水補助剤と高分子凝集剤とを高速撹拌して、脱水補助剤及び高分子凝集剤を汚泥中に均一に分散させ、汚泥の細部にまで行き渡らせ、第2撹拌工程における凝集フロックの核となる緻密な凝集フロックを形成することが望ましい。高分子凝集剤は、一般的に粘性が高いために汚泥の細部まで均一に凝集剤を行き渡らせることが難しい。本発明では、第1撹拌工程において高速撹拌することによって、高分子凝集剤を汚泥の細部まで均一に分散させることができ、汚泥の表面電荷の中和と、高分子の吸着又は架橋作用による凝集とを同時に行わせることができる。次いで、第2撹拌工程で、さらに高分子凝集剤を添加して緩速撹拌し、脱水処理に適する凝集フロックを形成する。この際、脱水補助剤は凝集フロック中に取り込まれる。
【0021】
第1撹拌工程においては、600rpm以上、好ましくは1000rpm以上、より好ましくは2000rpm以上、さらに好ましくは3000rpm以上の
1分間当たりの回転数で1分以内、好ましくは20秒以下、さらに好ましくは1〜20秒、より好ましくは1〜15秒、さらに好ましくは1〜10秒の範囲で撹拌する。第2撹拌工程においては、10〜500rpmの範囲、好ましくは20〜400rpmの範囲、より好ましくは30〜300rpmの範囲の
1分間当たりの回転数で1〜20分、好ましくは2〜15分、より好ましくは3〜10分の範囲で撹拌する。
【0022】
第1撹拌工程において適用する撹拌速度が非常に高速であるため、長時間にわたり撹拌すると、高分子凝集剤の分子鎖が切断されてしまい、凝集力が低下してしまう。撹拌速度が高速になるほど、撹拌時間を短くすることで、凝集力の低下を抑制することができることを知見している。逆に、第2撹拌工程においては、緩やかな条件でゆっくりと大きな凝集フロックを形成することが望ましい。第2撹拌工程でろ過性のよい凝集汚泥を形成して、次に凝集汚泥を脱水処理するため、脱水ケーキの含水率を効果的に低減することができ、さらには高分子凝集剤の使用量を低減することもできる。
【0023】
第1撹拌工程及び第2撹拌工程において添加する第1及び第2高分子凝集剤は、同一種でも異種でもよいが、pH調整剤の選択及び運転管理の点から、同一種の高分子凝集剤を用いることが好ましい。
【0024】
第1撹拌工程A及び第2撹拌工程Bで汚泥に添加する高分子凝集剤としては、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤および両性高分子凝集剤のいずれも用いることができる。有機性汚泥を処理する場合には、カチオン性高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤を用いるのが特に好ましい。
【0025】
アニオン性高分子凝集剤としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合物、ポリメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムとアクリルアミドの共重合物などを挙げることができる。
【0026】
ノニオン性高分子凝集剤としては、例えばポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイドなどを挙げることができる。
【0027】
カチオン性高分子凝集剤としては、例えばアクリレート系高分子凝集剤(「DAA系高分子凝集剤」とも称する)、メタクリレート系高分子凝集剤(「DAM系高分子凝集剤」とも称する)、アミド基、ニトリル基、アミン塩酸塩、ホルムアミド基などを含むポリビニルアミジン(「アミジン系高分子凝集剤」とも称する)、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物などが挙げられる。DAA系高分子凝集剤には、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物の重合物、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合物などがある。DAM系高分子凝集剤には、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物の重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合物などがある。
【0028】
両性高分子凝集剤としては、例えばジメチルアミノメチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドとアクリル酸との共重合物、ジメチルアミノメチルメタクリレートの四級化物とアクリルアミドとアクリル酸との共重合物などを挙げることができる。
但し、以上は例示であり、これらに限定するものではない。
【0029】
高分子凝集剤の分子量は450万以上であるのが好ましい。より好ましい分子量は500万以上である。ここでの分子量は、粘度法により求めた平均分子量である。
高分子凝集剤の粘度は、150mPa・s以上であるのが好ましく、特に175mPa・s以上、その中でも200mPa・s以上であるのが好ましい。この際の粘度は、高分子凝集剤を純水に2g/Lで溶解し、B型粘度計を使用し、25℃、60rpmの回転速度で測定した値である。
本発明においては、第1撹拌工程において高速撹拌を行うため、高速撹拌によって分子鎖が切断されても凝集力が低下しないことが必要である。上述の分子量及び粘度範囲であれば、分子鎖が部分的に切断されても凝集力を維持することができる。
【0030】
第1高分子凝集剤の分子量が450万以上である場合、第1高分子凝集剤の注入量は、第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の合計注入量の45〜95質量%となるように調整して加えるのが好ましく、中でも50〜95質量%、その中でも特に55〜90質量%を占めるように調整して加えるのが好ましい。
【0031】
第1撹拌工程における高分子凝集剤の注入量の割合が高すぎると、第2撹拌工程において加える高分子凝集剤の注入量が少なすぎて、凝集フロックが成長しない可能性がある。この結果、濃縮処理や脱水処理において、ろ過性が悪化する。一方、第1撹拌工程における高分子凝集剤の注入量の割合が低すぎると、第1撹拌工程において、高速撹拌により汚泥に均一に分散する高分子凝集剤の割合が少なくなるため、高速撹拌の効果が低下する可能性がある。第1撹拌工程における高分子凝集剤の注入量を合計注入量の45〜95%に制御することにより、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させるとともに凝集フロックを成長させることができる。
【0032】
高分子凝集剤は、液体状態又は固体状態で添加することができるが、汚泥へ均一に分散させる観点から、液体状態であることが好ましい。高分子凝集剤を液体状態とするために用いられる溶媒は、凝集力を低下させないために他のイオン成分を含まないことが好ましく、純水が好適である。ただし、経済性の観点からは純水は高価である。本発明においては、pH調整剤を添加して好適pH範囲に調節することから、純水に限定されず、水道水、工業用水、地下水、各種排水処理の処理水を用いることができる。
【0033】
水溶液状態とした場合の高分子凝集剤の濃度は、1〜3g/Lであってもよいが、3g/L以上であるのが好ましく、より好ましくは5g/L以上、さらにより好ましくは10g/L以上である。
【0034】
高分子凝集剤による汚泥の凝集において、高分子凝集剤の溶液は1〜3g/Lに調製するのが一般的であり、通常は3g/L以上の高分子凝集剤の溶液を使用することはない。高分子凝集剤濃度が3g/L以上になると、高分子凝集剤の溶液は高粘度になるため、従来の凝集槽で使用される撹拌機の回転速度(10〜500rpm程度)では、高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることが難しい。しかし、本発明においては、3g/L以上の高濃度溶液を使用しても、第1撹拌工程における高速撹拌で高分子凝集剤を汚泥に均一に分散させることができる。この結果、高分子凝集剤の溶解水量を削減でき、脱水処理後の脱水ケーキの含水率を低減できる。また、高分子凝集剤を加えた汚泥中の高分子凝集剤の濃度を高めることができるため、高分子凝集剤の注入量も削減できる。例えば、1Lの汚泥に2g/Lの高分子凝集剤溶液を200mL注入(高分子凝集剤として0.4g注入)した場合、汚泥中の高分子凝集剤の濃度は333mg/Lである。一方、1Lの汚泥に10g/Lの高分子凝集剤を40mL注入(高分子凝集剤として0.4g注入)した場合、汚泥中の高分子凝集剤の濃度は385mg/Lである。このように、同じ0.4gの高分子凝集剤を加える場合であっても、2g/Lの高分子凝集剤溶液を使用するよりも、10g/Lの高分子凝集剤を使用する方が汚泥中の高分子凝集剤の濃度を高められ、高分子凝集剤の注入量を削減でき、脱水処理後の脱水ケーキの含水率を低減することができる。
【0035】
さらに、本発明においては、第1撹拌工程の前もしくは第1撹拌工程においてpH調整剤を添加することで、高分子凝集剤の凝集力を最大限発揮させ、維持することができる。pH調整剤の添加は、第1撹拌工程において行うよりも効果が低下するが、第2撹拌工程又は脱水工程にて行ってもよい。
【0036】
pH調整剤としては、硫酸、塩酸などの酸又は水酸化ナトリウムなどのアルカリを用いることができる。汚泥のpHを測定して、高分子凝集剤の凝集作用が発揮されるpH範囲となるように、酸又はアルカリを選択してよい。
【0037】
pH調整剤は、汚泥及び高分子凝集剤の種類によって適宜選択することができる。たとえば、アニオン性高分子凝集剤を用いる場合にはpHを3〜12、好ましくは3〜8に調整し、ノニオン性高分子凝集剤を用いる場合にはpHを3〜12、好ましくは3〜8に調整し、カチオン性高分子凝集剤を用いる場合にはpHを3〜11、好ましくは3〜8に調整し、両性高分子凝集剤を用いる場合にはpHを4〜8に調整するために、汚泥のpHを測定して、適切なpH調整剤を添加する。pH調整剤としては、硫酸、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いることができる。pH調整剤の添加は、汚泥のpHを測定しながら行う。たとえばpHを4〜8に調整するとき、汚泥のpHが8以上の場合は、硫酸又は塩酸を汚泥に添加し、pHが7まで下がった時点でpH調整剤の添加を止める。汚泥のpHが4以下の場合には、水酸化ナトリウムを添加して、pHが5まで上がった時点でpH調整剤の添加を止める。
【0038】
pH調整剤の添加量は、汚泥の種類、アルカリ度及び高分子凝集剤の種類によって異なる。例えば、し尿処理施設から発生する余剰汚泥に対しては、pH調整剤として水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。また、し尿や浄化槽汚泥に対しては、pH調整剤として硫酸を使用することが好ましい。pH調整剤は、汚泥の蒸発残留物(TS)に対して、5.0質量%(純分換算)以下の割合で添加するのが望ましい。
【0039】
第2撹拌工程にて形成された凝集フロックを含む汚泥は、次いで脱水工程Cにて脱水処理され、脱水ケーキと脱水ろ液とに分離されるか、もしくは濃縮工程Dで凝集フロックを濃縮して濃縮汚泥と濃縮ろ液とに分離された後、濃縮汚泥を脱水工程Cにて脱水処理する。脱水工程は、通常の脱水装置を用いて行うことができる。
【0040】
濃縮工程Dからの濃縮ろ液及び/又は脱水工程Cからの脱水ろ液は、MAP回収工程Eに送られ、MAPが回収される。MAP回収工程Eは、通常のMAP回収と同様に、マグネシウム源を添加した後、晶析法によりMAPを析出させて沈殿物を回収する。回収されたMAPは化成肥料として再利用することができる。MAPを回収した後の脱リン液は、濃縮ろ液及び/又は脱水ろ液と共に再びMAP回収装置に戻され、再度MAP回収に用いることができる。あるいは、脱水工程の後段に生物処理工程を設け、脱リン液を生物処理工程で利用することもできる。
【0041】
凝集フロックを含む汚泥は、脱水処理の前に濃縮されてもよい(濃縮工程D)。濃縮工程Dを含む場合には、濃縮ろ液をMAP回収工程Eに送り、MAPを回収する。さらに、脱水工程Cで得られる脱水ろ液も、MAP回収工程Eに送り、MAPを回収する。凝集フロックを含む汚泥の濃縮は、加圧しながら行うことが好ましい。付与する圧力は、0.5〜50kPa、好ましくは1〜40kPa、より好ましくは3〜30kPaである。
【0042】
汚泥濃縮工程Dの後、脱水工程Cの前に、濃縮汚泥に無機凝集剤を添加してもよい。無機凝集剤を添加する場合の濃縮は、凝集フロックを含む汚泥中のTSが50g/L〜150g/L、好ましくは80g/L〜140g/Lの範囲となるまで行うことが好ましい。汚泥のTSが50g/L未満の場合、無機凝集剤が濃縮ろ液に流出してしまい、ろ液中の溶解性リンと反応して不溶解性となるため、脱水工程Cにおいてリンが脱水ケーキ側へ移動し、脱水ろ液中の溶解性リンは微量となり、MAPを回収することができなくなるおそれがある。一方、汚泥のTSが150g/Lより高い場合、汚泥は固体に近くなり、汚泥内部に無機凝集剤を分散させることができず、無機凝集剤の効果が十分発揮できなくなる。
【0043】
濃縮工程の後、脱水工程の前に、濃縮汚泥に無機凝集剤を添加してもよい。無機凝集剤としては、例えば塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄などを挙げることができる。無機凝集剤は、粘度を低下させて汚泥中に分散させやすくすると共に、希釈することによりボリュームを増やして均一分散させやすくする観点から、希釈水で希釈して添加することが好ましい。無機凝集剤の希釈倍率は2〜5倍、好ましくは3〜4倍である。希釈液には、純水、水道水、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水、海水などが使用できるが、経済性の観点からは、工業用水、地下水、各種廃水処理の処理水が好ましい。
【0044】
無機凝集剤は、汚泥の蒸発残留物(TS)に対して1.0質量%(Fe換算)以上添加すれば、脱水効果を高めることができる一方、10質量%(Fe換算)を超えて添加しても無機凝集剤の無駄である。よって、かかる観点から、無機凝集剤の添加量は、汚泥に対して1.0〜10質量%(Fe換算)で添加するのが好ましく、中でも1.5質量%(Fe換算)以上或いは8.0質量%(Fe換算)以下、その中でも2質量%(Fe換算)以上或いは6.0質量%(Fe換算)以下の割合で添加するのがより一層好ましい。
【0045】
濃縮後脱水処理前に、無機凝集剤を添加する場合、汚泥が濃縮されていて流動性が低く、無機凝集剤を均一に浸透及び分散させることが難しい。一方、濃縮された汚泥を撹拌したり混練したりすると、高分子凝集剤による凝集フロックが壊れてしまい、脱水ケーキの含水率を低減することができなくなる。そこで、濃縮された汚泥にスリットを形成して、無機凝集剤を浸透及び分散させることが好ましい。スリットを形成して無機凝集剤を浸透させることによって、無機凝集剤の効果を高めると共に使用量を削減することができる。
【0046】
本発明の汚泥処理方法において、第1撹拌工程において高速撹拌される汚泥は脱水補助剤を含んでいることが好ましい。汚泥への脱水補助剤の添加は、第1撹拌工程Aにおいてなされてもよく、第1撹拌工程Aの前になされてもよい。
【0047】
第1撹拌工程Aにおいて脱水補助剤を添加する場合は、第1撹拌装置内の汚泥に直接、脱水補助剤を添加するか、又は第1撹拌工程に添加する第1高分子凝集剤を調整する際に第1高分子凝集剤に脱水補助剤を添加して、脱水補助剤を含有する第1高分子凝集剤を汚泥に添加することができる。第1高分子凝集剤と共に添加する態様としては、具体的には、第1高分子凝集剤の溶解作業中あるいは溶解後に、第1高分子凝集剤溶解槽に脱水補助剤を所定量投入して混合すればよい。第1高分子凝集剤溶解槽中に第1高分子凝集剤と共に均一に分散された脱水補助剤は、第1撹拌工程で汚泥中に拡散され、第2撹拌工程で汚泥が凝集フロックを形成する際に、凝集フロック内に取り込まれる。
【0048】
第1撹拌工程Aの前に、脱水補助剤を添加する場合は、第1撹拌工程Aの前の汚泥貯槽1、汚泥濃縮槽1A又は汚泥濃縮槽1Aから汚泥貯槽1に汚泥を供給する配管、汚泥貯槽1から第1撹拌装置2に汚泥を供給する配管のいずれかにおいて脱水補助剤を添加することができる(
図2)。脱水補助剤を汚泥濃縮槽や汚泥貯槽の汚泥に添加する場合には、後述する添加量の範囲となるように一括投入することができる。また、配管中の汚泥に添加する場合には、常時又は間欠的に汚泥の流入、引抜きがあるために、汚泥の流入量、引抜き量に応じて脱水補助剤を適宜追加してもよい。
【0049】
脱水補助剤としては、おがくず、籾殻、古紙、綿花、亜麻、羊毛、再生セルロース繊維、脱水しさなど、繊維状物を好ましく挙げることができる。再生セルロース繊維としては、セルロースをベースポリマーとするビスコースレーヨン繊維、キュプラレーヨン繊維等の再生人造繊維、セルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維などの半合成再生繊維などを挙げることができる。繊維に凸部や、頂点が筋状に延在する凹部を形成し、或いは含水率を調整し易い点から、ビスコースレーヨン繊維が特に好ましい。再生セルロース繊維は、生分解性を有しており、土壌中で分解して消失するので、脱水ケーキを肥料などに再利用する場合に好適である。また、繊維長手方向に延在する筋すなわち水分移送路を有している脱水補助剤は、特に好適である。脱水補助剤として繊維状物を用いる場合、繊維状物は1〜50mm、好ましくは3〜20mmの長さ、1μm〜100μm、好ましくは5μm〜50μm程度の径を有することが好適である。脱水補助剤は、繊維状(すなわち固形物)のまま汚泥に添加しても良いし、水を添加してスラリー状にした後に汚泥に添加しても良い。いずれの場合も、形状にあった供給装置を用いて定量添加が可能である。
【0050】
本発明の方法において、汚泥に対する脱水補助剤の添加量は、各汚泥の濃度に依存して変動する。一般的には、汚泥中の蒸発残留物(「TS」という。なお、TSは、汚泥を105〜110℃で蒸発乾固したときに残留する物質の濃度である。)を100として、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%を添加することが好ましい。20重量%を超えると、汚泥中に脱水補助を均一に混合させることが難しくなり、また経済的にも不利である。
【0051】
本方法において被処理物とし得る汚泥は、有機性汚泥、無機性汚泥のいずれでもよい。有機性汚泥とは、汚泥の主たる成分が有機成分を含むものであるが、無機成分を含むことを排除するものではない。同様に、無機性汚泥とは、汚泥の主たる成分が無機成分を含むものであるが、有機成分を含むことを排除するものではない。
【0052】
有機性汚泥としては、例えば下水処理、し尿処理、各種産業廃水処理において発生する有機性汚泥などを挙げることができる。より具体的には、最初沈殿池汚泥、余剰汚泥、嫌気性消化汚泥、好気性消化汚泥、屎尿、浄化槽汚泥、消化脱離液などを挙げることができる。
【0053】
無機性汚泥としては、例えば浄水処理、建設工事廃水処理、各種産業廃水処理において発生する無機性汚泥などを挙げることができる。ここで、浄水処理で発生する汚泥とは、浄水処理施設における沈殿池、排泥池、濃縮槽などから排出される汚泥などである。
【0054】
本発明の汚泥処理方法では、有機性汚泥及び無機性汚泥のいずれも被処理物とすることができるが、脱水効率を向上させるという本発明の効果をよりよく発現できるという観点から、有機性汚泥が好適であり、中でも難脱水性の嫌気性消化汚泥の処理への適用が好適である。
【0055】
次に、
図2〜
図9を参照しながら、本発明の汚泥処理装置を説明する。
図2に示す汚泥処理装置は、処理すべき汚泥を貯留する汚泥貯槽1と、高速撹拌を行う第1撹拌装置2と、緩速撹拌を行う第2撹拌装置3と、脱水処理を行う脱水装置4と、第1撹拌装置2に第1高分子凝集剤を添加する第1高分子凝集剤添加手段5と、第2撹拌装置3に第2高分子凝集剤を添加する第2高分子凝集剤添加手段6と、第1撹拌装置に供給される汚泥に脱水補助剤aを添加する脱水補助剤添加手段と、汚泥のpHを測定するpH計と、第1撹拌装置にpH調整剤を添加するpH調整剤添加手段7と、第22撹拌装置3からの凝集フロックを含む汚泥を濃縮する濃縮装置8と、濃縮装置8からの濃縮ろ液及び/又は脱水装置4からの脱水ろ液からMAPを回収するMAP回収装置10を含む。脱水補助剤添加手段としては、第1撹拌装置2、汚泥濃縮槽1A、汚泥貯槽1又は第1高分子凝集剤溶解槽5Aのいずれかに脱水補助剤を添加することができる構成であればよく、たとえば脱水補助剤供給源から添加先まで空気輸送管又はベルトコンベア、スクリューコンベア、フライトコンベア等一般的な搬送手段を用いて供給することができる。汚泥貯槽1からの汚泥には、第1高分子凝集剤とpH調整剤が添加されて、第1撹拌装置2にて高速撹拌される。次いで、第2撹拌装置3にて、第2高分子凝集剤が添加されて、緩速撹拌され、凝集フロックが形成される。凝集フロックを含む汚泥は、脱水装置4にて、脱水され、脱水ろ液と脱水ケーキとに分離される。濃縮装置8からの濃縮ろ液及び/又は脱水装置4からの脱水ろ液は、MAP回収装置10に送られ、MAPと脱リン液とに分離され、MAPは化成肥料として再利用され、脱リン液は脱水ろ液と共に再びMAP回収装置10に戻されてもよい。
【0056】
図2に示す汚泥処理装置において、第1撹拌装置2に供給される汚泥に脱水補助剤aを添加する脱水補助剤添加手段が設けられている。脱水補助剤aは、汚泥貯槽1、第1撹拌装置2、第1高分子凝集剤添加手段5の第1の高分子業剤貯槽5A、汚泥貯槽1の上流側の汚泥、汚泥貯槽1から第1撹拌装置2に汚泥を供給する配管の何れの地点で添加してもよい。
【0057】
図2に示す汚泥処理装置において、pH調整剤添加手段7は、点線で示すように、第2撹拌装置3及び/又は脱水装置4にpH調整剤を添加するように構成されていてもよい。この場合、pH計は、pH調整剤添加手段7がpH調整剤を添加する装置内の汚泥を計測する位置に設けることができる。また、pH調整剤添加手段7は必ずしも必要ではない。
【0058】
図3に示す汚泥処理装置は、第1撹拌装置2及び第2撹拌装置3に添加する高分子凝集剤が同一の貯槽(溶解槽)5Aから供給され、第1撹拌装置2及び第2撹拌装置3にそれぞれ供給ラインが設けられている態様である。また、第2撹拌装置3にて形成された凝集フロックを含む汚泥を濃縮する濃縮装置8及び濃縮装置8で得られる濃縮ろ液からMAPを回収するMAP回収装置10を含む。脱水補助剤添加手段は、汚泥濃縮槽1A、汚泥貯槽1、第1撹拌装置2又は高分子凝集剤溶解槽5Aの少なくとも1に連結され、第1撹拌装置2にて高速撹拌されるまでに汚泥に脱水補助剤を添加できればよい。第1撹拌装置2にて、脱水補助剤を含む汚泥は、第1高分子凝集剤と必要に応じてpH調整剤が添加されて、高速撹拌される。次いで、第2撹拌装置3にて、第2高分子凝集剤及び必要に応じてpH調整剤が添加されて、緩速撹拌され、凝集フロックが形成される。凝集フロックを含む汚泥は、濃縮装置8にて濃縮された後、脱水装置4にて、脱水され、脱水ろ液と脱水ケーキとに分離される。濃縮装置8からの濃縮ろ液は、MAP回収装置10に送られ、MAPと脱リン液とに分離され、MAPは化成肥料として再利用され、脱リン液は脱水ろ液と共に再びMAP回収装置10に戻されてもよい。
【0059】
図4に示す汚泥処理装置は、高分子凝集剤が同一の貯槽(溶解槽)5Aから供給され、第1撹拌装置2に供給するラインと第2撹拌装置3に供給するラインとをバルブ制御により選択する態様である点を除いて
図3に示す態様と同じである。
【0060】
図5に示す脱水処理装置は、第1撹拌装置2がインラインミキサーである点を除いて、
図2に示す態様と同じである。
図6に示す脱水処理装置は、第1撹拌装置2がインラインミキサーであり、濃縮装置8にて濃縮された汚泥に無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加手段9が設けられている点を除いて、
図3に示す態様と同じである。なお、脱水装置4にて脱水される汚泥に無機凝集剤が添加されている場合は、脱水装置4からの脱水ろ液はMAP回収装置10には送らない。
【0061】
図2〜
図6に示す装置の各構成部品の組み合わせは図示した態様に限定されるものではなく、適宜置換してよい。
【0062】
第1撹拌装置は、高速撹拌が可能となる撹拌装置であればよく、撹拌翼、シャフト、モーターから構成される撹拌装置、ローター、ステーター、モーターから構成される撹拌装置、供給配管に設けられるインラインミキサーなどを用いることができる。インラインミキサーはラインミキサーとも称される。インラインミキサーのメリットはミキサーが密封されているため、上流にある汚泥用ポンプ、高分子凝集剤用ポンプの2台があれば、下流に液を送ることができる。一方、容器に撹拌機が設置された場合、容器上部が開放されているので、上流にある汚泥用ポンプ、高分子凝集剤用ポンプの他に、もう1台ポンプ或いはポンプ相当のものがないと下流に液を送れない。そのため通常は、ポンプを設置せず、高低差で下流に液を送るのが一般的である。
第2撹拌装置は、緩速撹拌が可能となる撹拌装置であればよく、第1撹拌装置と同様に種々の撹拌装置を用いることができる。
【0063】
脱水装置は、通常の脱水処理に用いられる脱水装置でよく、例えばスクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、真空脱水機、フィルタプレス脱水機、多重円板脱水機などを用いることができる。脱水装置が濃縮機構を具備していてもよい。
【0064】
濃縮装置は、通常の脱水処理に用いられる遠心濃縮機、スクリュー濃縮機、楕円板型濃縮機、ふるい、加圧型濃縮装置、ベルト型ろ過濃縮機などを用いることができる。濃縮装置の例を
図7及び
図8に示す。
【0065】
図7に示す濃縮装置は、汚泥投入用ホッパー21と、汚泥移動手段22と、汚泥移動手段22の下方に設けられた水捕捉手段23とを備え、汚泥移動手段22は、ベルト24とベルト駆動装置25とで構成されている。ベルト24の上面全体(搬送面)がベルト駆動装置25により水平移動し、汚泥を水平方向汚泥排出口側に移動させることができると共に、凝集フロックを含む汚泥はベルト24上を移動する間にろ過され、濃縮ろ液は下方の水捕捉手段23に落下するように構成されている。水捕捉手段23は、汚泥移動手段22に沿ってその下方に設けられており、汚泥移動手段22から落下してくる水を捕捉して、廃水口から排水できるように構成されている。
【0066】
図8に示す濃縮装置は、汚泥投入用ホッパー21と、汚泥移動手段22と、汚泥移動手段22の上方に設けられた加圧手段28と、汚泥移動手段22の下方に設けられた水捕捉手段23とを備え、加圧手段28は、汚泥移動手段22の汚泥排出口26の手前に、ベルト24との間に隙間を設けるように、加圧板28Aを斜めに設置し、汚泥が汚泥移動手段22によって水平方向汚泥排出口側に移動されてくると、加圧板28Aとベルト24との間の隙間を通過する際に上から加圧されるように構成されている。この際、加圧板28Aは、一つ或いは二つ以上設けてもよいし、また、加圧板28Aは、設置角度が固定されるように設けることもできるし、設置角度を随時変更できるように設けることもできる、さらには、上下揺動可能に軸支することもできる。加圧板28Aの角度並びにベルト24との隙間の大きさを変更することにより、凝集フロックを含む汚泥に掛かる圧力を調整することができ、濃縮倍率を調整することができる。また、加圧板28Aの代わりに、例えばローラーを設置することもできる。
【0067】
濃縮した汚泥にスリットを形成するスリット形成装置の一例を
図9に示す。汚泥濃縮機20の汚泥排出口26に、櫛状の裁断刃31を水平方向に適宜間隔を置いて、刃が鉛直方向となるように設置するようにしてスリット形成機30を構成することができる。このような櫛状の裁断刃により、汚泥濃縮機20から押し出されてくる濃縮汚泥に鉛直方向のスリットを形成することができる。ただし、スリット形成機30は上記構成のものに限定されるものではない。例えば、上面視格子状に組まれた裁断刃、或いは、上面視した場合に濃縮汚泥の長さ方向又は幅方向に適宜間隔をおいて組まれた裁断刃を、濃縮汚泥に対して上方から昇降できる装置を使用することも可能である。
【実施例】
【0068】
[実施例1]
【0069】
硫酸、硫酸ソーダ、硫酸亜鉛を含有する紡糸浴に、8.1wt%のセルロースを含むビスコース溶液(紡糸原液)を、円形断面を有する紡糸口金を通して連続して押し出して、セルロース繊維に紡糸した。次に、セルロース繊維を、硫酸を含む延伸−再生浴に導入して、延伸・再生して、再生セルロース糸条を得た。再生セルロース糸条をローラーで挟んで水切りし、含水率58%に調整した後、長さ5mmに切断して、脱水補助剤を製造した。
図2に示すフローに従って、屎尿処理場から採取した汚泥の脱水処理を行った。試料とした汚泥の性状を表2に示す。TSの測定は下水試験方法(JIS K 0101)に準拠した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示す汚泥1及び2各250mlに対して、脱水補助剤とpH調整剤(硫酸)を加え、2g/Lに調整した第1高分子凝集剤(「エバグロースLEC−512」商品名(水ing株式会社製)水溶液、カチオン性高分子凝集剤、分子量900万)を添加して、高速撹拌装置にて撹拌速度11000rpmにて撹拌した(第1撹拌工程)。次いで、緩速撹拌装置にて、2g/Lに調整した第2高分子凝集剤(「エバグロースLEC−512」商品名(水ing株式会社製)、カチオン性高分子凝集剤、分子量900万)水溶液を添加して、撹拌速度150rpmにて撹拌した(第2撹拌工程)。第2撹拌工程にて得られた凝集フロックを含む汚泥をベルトプレス脱水機にて脱水して得た脱水ケーキの含水率を測定した。pH調整剤、第1及び第2高分子凝集剤の添加量及び脱水ケーキの含水率を表2に示す。
また、脱水ろ液をMAP回収装置に送り、回収したMAPの成分を化成肥料の基準値と比較した結果を表3に示す。
【0072】
【表2】
【表3】
【0073】
表3より、高速撹拌と脱水補助剤の添加とにより、高分子凝集剤の添加量及び脱水ケーキの含水率を低減できることがわかる。表4より、回収したMAPは化成肥料として利用可能であることがわかる。
【0074】
[参考実施例1]
第1高分子凝集剤の溶液を汚泥に加えて第1撹拌を実施した後、第2高分子凝集剤の溶液を加えて第2撹拌を実施し、得られた凝集汚泥をベルトプレス脱水機により脱水して脱水ケーキを得た。
【0075】
実験には汚泥Tを使用した。汚泥Tは嫌気性消化汚泥である。汚泥TのTSは20.9g/Lである。
高分子凝集剤としては、分子量の異なる高分子凝集剤(q、r、s、t)を使用した。
高分子凝集剤q、r、tはカチオン性高分子凝集剤であり、高分子凝集剤sは両性高分子凝集剤である。
高分子凝集剤q、r、s、tの分子量(粘度mPa・s)は、それぞれ500万(147mPa・s)、600万(225mPa・s)、700万(238mPa・s)、800万(280mPa・s)である。
ここで記載した分子量は粘度法より求めた平均分子量である。また、粘度は、高分子凝集剤を水に2g/Lで溶解し、B型粘度計を使用し、25℃、60rpmの回転数で測定した値である。
実験では、第1及び第2高分子凝集剤ともに同じ種類のものを使用し、第1及び第2高分子凝集剤の溶液は同じ濃度に調製した。
【0076】
実験手順は以下の通りである。
250mLの汚泥に第1高分子凝集剤の溶液(濃度2g/L)を所定量加え、撹拌速度5000rpmの高速撹拌機により汚泥と高分子凝集剤の溶液を10秒混合撹拌し、混合汚泥を調製した。次に、混合汚泥に第2高分子凝集剤の溶液(濃度2g/L)を所定量加え、撹拌速度200rpmの撹拌機により混合汚泥と高分子凝集剤を5分間混合撹拌し、混合汚泥を凝集させ、凝集フロックを形成させた。最後に、ベルトプレス脱水機により、凝集フロックを脱水し、脱水ケーキを得、SS回収率を測定した。
【0077】
実験では、第1及び第2高分子凝集剤の溶液の合計注入量を40mLとし、第1高分子凝集剤の溶液を2.5〜37.5mLの範囲で変更して加えた。
実験結果を
図10に示す。
【0078】
図10は、高速撹拌時に加える高分子凝集剤の注入量と、高分子凝集剤q、r、s、tを使用した時の平均SS回収率の比との関係を示したグラフである。この図において、平均SS回収率の比は、第1高分子凝集剤の注入量が59%時の平均SS回収率を100とした時の比率を示すものである。
この結果から、高速撹拌時に加える高分子凝集剤の注入量を合計注入量の好ましくは45〜95%、より好ましくは50〜95%、さらにより好ましくは55〜90%に調整することにより、SS回収率を増加させることができることが分かった。
【符号の説明】
【0079】
a:脱水補助剤
1A:汚泥濃縮槽
1:汚泥貯槽
2:第1撹拌装置
3:第2撹拌装置
4:脱水装置
5:第1高分子凝集剤添加手段
6:第2高分子凝集剤添加手段
7:pH調整剤添加手段
8:濃縮装置
9:無機凝集剤添加手段
10:MAP回収装置
20:汚泥濃縮機
21:汚泥投入用ホッパー
22:汚泥移動手段
23:水捕捉手段
24:ベルト
25:ベルト駆動装置
26:汚泥排出口
27:ベルト洗浄管
28:加圧装置
28A:加圧板
30:スリット形成機
31:裁断刃