特許第6209048号(P6209048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209048壁貫通スリーブ装置、スペーサ、壁貫通スリーブの設置方法及び壁貫通スリーブ設置構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209048
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】壁貫通スリーブ装置、スペーサ、壁貫通スリーブの設置方法及び壁貫通スリーブ設置構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20170925BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   F16L5/00 Q
   A62C3/16 B
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-216262(P2013-216262)
(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-78741(P2015-78741A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 真
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−297886(JP,A)
【文献】 実開昭51−013046(JP,U)
【文献】 実公昭51−038218(JP,Y1)
【文献】 実開昭60−075786(JP,U)
【文献】 特開昭59−170589(JP,A)
【文献】 実開昭54−025523(JP,U)
【文献】 実開昭58−181083(JP,U)
【文献】 特開2014−141996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
A62C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁材を貫通する壁貫通孔に配置される筒状部、及び、該筒状部から延在するフランジ部を備えた壁貫通スリーブと、
壁面又は防水シートと前記フランジ部との間に配置され、前記フランジ部に当接する第1当接面、及び、前記壁面又は前記防水シートに当接する第2当接面を有し、前記壁貫通スリーブを水平軸に対して傾斜させるべく前記第1当接面及び前記第2当接面が互いに対して所定角度で傾斜したスペーサと、を備え、
前記スペーサの前記第1当接面が傾斜方向において前記フランジ部よりも短く形成されており、前記スペーサが前記フランジ部と前記壁面又は前記防水シートとの間の隙間を部分的に閉塞すると共に、前記隙間が最小となる位置で前記フランジ部及び前記壁面又は前記防水シートの間に前記スペーサが介在しないことを特徴とする壁貫通スリーブ装置。
【請求項2】
前記隙間が最大となる位置で前記フランジ部の上端が前記スペーサの前記第1当接面の上縁に当接し、且つ、前記フランジ部の下端が前記壁面又は前記防水シートに当接可能であることを特徴とする請求項1に記載の壁貫通スリーブ装置。
【請求項3】
前記スペーサの外周の一部には、前記フランジ部の外周面に当接可能な外枠部が形成されており、前記第1当接面から延びる前記外枠部の高さが前記フランジ部の厚みと等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の壁貫通スリーブ装置。
【請求項4】
前記筒状部は円筒形状を有し、且つ、前記スペーサには、前記筒状部の外径に対応する径を有する略円弧状の切り欠き部が設けられており、前記切り欠き部の開放端の幅が前記外径よりも狭いことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の壁貫通スリーブ装置。
【請求項5】
壁材を貫通する壁貫通孔に配置される筒状部、及び、前記筒状部から延在するフランジ部を備えた壁貫通スリーブを水平軸に対して傾斜配置すべく、前記フランジ部と壁面又は防水シートとの間に配置されるスペーサであって、
前記フランジ部に当接する第1当接面と
該第1当接面に対して所定角度で傾斜した、前記壁面又は前記防水シートに当接する第2当接面と、を備え、
前記第1当接面が傾斜方向において前記フランジ部よりも短く形成されており、前記フランジ部と前記壁面又は前記防水シートとの間の隙間を部分的に閉塞すると共に、前記隙間が最小となる位置で前記フランジ部及び前記壁面又は前記防水シートの間に介在しないように構成されたことを特徴とするスペーサ。
【請求項6】
前記隙間が最大となる位置で前記フランジ部の上端と前記第1当接面の上縁とを当接させて、前記フランジ部の下端を前記壁面又は防水シートに当接可能であることを特徴とする請求項5に記載のスペーサ。
【請求項7】
外周の一部に前記フランジ部の外周面に当接可能な外枠部を備え、前記第1当接面から延びる前記外枠部の高さが前記フランジ部の厚みと等しいことを特徴とする請求項5又は6に記載のスペーサ。
【請求項8】
円筒形状を有する前記筒状部の外径に対応する径で形成された略円弧状の切り欠き部をさらに備え、前記切り欠き部の開放端の幅が前記外径よりも狭いことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項9】
壁材を貫通する壁貫通孔に配置される筒状部、及び、前記筒状部から延在するフランジ部を備えた壁貫通スリーブを傾斜姿勢で設置する方法であって、
第1当接面及び該第1当接面に対して所定角度で傾斜した第2当接面を備えるスペーサを選択する工程と、
壁面又は防水シートと前記フランジ部との間に前記スペーサを配置する工程と、
前記第1当接面を前記フランジ部に当接させると共に前記第2当接面を前記壁面又は前記防水シートに当接させることにより、前記壁貫通スリーブを水平軸に対して所望の角度で傾斜させて配置する工程と、を含み、
前記スペーサの前記第1当接面を傾斜方向において前記フランジ部よりも短く形成して、前記フランジ部と前記壁面又は前記防水シートとの間の隙間を前記スペーサで部分的に閉塞すると共に、前記隙間が最小となる位置で前記フランジ部及び前記壁面又は前記防水シートの間に前記スペーサを介在させないことを特徴とする壁貫通スリーブの設置方法。
【請求項10】
前記隙間が最大となる位置で前記フランジ部の上端を前記スペーサの前記第1当接面の上縁に当接させ、且つ、前記フランジ部の下端を前記壁面又は前記防水シートに当接させた状態で、前記フランジ部の外周と前記壁面又は前記防水シートとの間を少なくとも部分的に閉塞する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の壁貫通スリーブの設置方法。
【請求項11】
壁材と、
該壁材を貫通する貫通孔と、
前記壁貫通孔に配置された筒状部、及び、該筒状部から延在するフランジ部を備える壁貫通スリーブと、
前記壁材の壁面又は防水シートと前記フランジ部との間に配置され、前記フランジ部に当接した第1当接面、及び、前記壁面又は前記防水シートに当接した第2当接面を有し、前記壁貫通スリーブが水平軸に対して傾斜するように前記第1当接面及び前記第2当接面が互いに対して所定角度で傾斜したスペーサと、を備え、
前記スペーサの前記第1当接面が傾斜方向において前記フランジ部よりも短く形成されており、前記スペーサが前記フランジ部と前記壁面又は前記防水シートとの間の隙間を部分的に閉塞していると共に、前記隙間が最小となる位置で前記フランジ部及び前記壁面又は前記防水シートの間に前記スペーサが介在していないことを特徴とする壁貫通スリーブの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁貫通スリーブ装置、スペーサ、壁貫通スリーブの設置方法及びその設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、換気用途又は配線・配管用途等で壁材の貫通孔に設置される種々の壁貫通スリーブが利用されている。これらの用途では、雨水等が屋外から屋内に流入することを防止すべく、壁貫通スリーブが壁材の屋内側から屋外側へと低くなる傾斜姿勢で壁材の貫通孔に設置される。一般的に、壁貫通スリーブは、壁貫通孔を貫通する筒状部、及び、壁に固定するためのフランジ部からなる。そして、内壁の外面、又は、内壁及び外壁の間に垂直に立設された防水シートの前面にフランジ部を当接させて防水テープ等で固定することにより、壁貫通スリーブの設置構造を構築する。
【0003】
例えば、特許文献1は、壁(1)の孔(2)に傾斜姿勢で配置される配管用の孔カバーを開示している。該配管用の孔カバーは、管本体(3)と、該管本体(3)の一端に一体的に形成されたフランジ部(4)と、管本体(3)の外周面に嵌合させる2個の環状の座金(6、10)と、を備える。これら2個の座金(6、10)の壁面に接する面が他方の面に対して傾斜していることにより、管本体(3)を屋外に向かって斜め下がりに取り付けることができる。すなわち、特許文献1の設置構造では、フランジ部(4)と壁(1)の間に配置される座金(6、10)が横断面においてテーパー形状を有していることにより、管本体(3)を水平軸に対して傾斜させて設置可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭51−38218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の配管用の孔カバー(以下、壁貫通スリーブ装置)は、フランジ部と壁面との間に、傾斜断面を有する環状の座金(以下、スペーサ)を配置することにより、管本体を水平軸に対して傾斜配置することができる。しかしながら、このスペーサは、傾斜方向においてフランジ部の上端及び下端に当接するように延びて、フランジ部表面の全てがスペーサ面に当接するようにフランジ部よりも大きく構成されている。そして、当該スペーサは、その実用上の強度を維持する上で、最薄の箇所(傾斜方向の下縁)においても一定以上の厚みを有していなければならない。換言すると、最薄の箇所であってもその物理的厚みが0になることはない。すなわち、特許文献1の壁貫通スリーブ装置では、必然的に、少なくともスペーサの下縁の物理的厚みの分だけ壁面の外方の設置空間にフランジ部を張り出して配置しなければならない。そのため、例えば、壁面(防水シート前面)と外壁との間の空間が狭いなどの設置空間が制限される場合において、その張り出し幅によって設置作業が困難となり、あるいは、壁貫通スリーブの傾斜配置自体が不可能となる虞があった。したがって、当該設置空間を有効に利用すべく、壁貫通スリーブのフランジ部の外方への張り出しを抑えることができる壁貫通スリーブ装置が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、壁貫通スリーブを水平軸に対して所望の角度で傾斜させて壁材に設置可能であり、尚且つ、フランジ部を壁面又は防水シートに対して近接配置可能である壁貫通スリーブ装置、スペーサ、壁貫通スリーブの設置方法及びその設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の壁貫通スリーブ装置は、
壁材を貫通する壁貫通孔に配置される筒状部、及び、該筒状部から延在するフランジ部を備えた壁貫通スリーブと、
壁面又は防水シートとフランジ部との間に配置され、フランジ部に当接する第1当接面、及び、壁面又は防水シートに当接する第2当接面を有し、壁貫通スリーブを水平軸に対して傾斜させるべく第1当接面及び第2当接面が互いに対して所定角度で傾斜したスペーサと、を備え、
スペーサの第1当接面が傾斜方向においてフランジ部よりも短く形成されており、スペーサがフランジ部と壁面又は防水シートとの間の隙間を部分的に閉塞すると共に、当該隙間が最小となる位置でフランジ部及び壁面又は防水シートの間にスペーサが介在しないことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の壁貫通スリーブ装置は、請求項1に記載の壁貫通スリーブ装置において、隙間が最大となる位置でフランジ部の上端がスペーサの第1当接面の上縁に当接し、且つ、フランジ部の下端が壁面又は防水シートに当接可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の壁貫通スリーブ装置は、請求項1又は2に記載の壁貫通スリーブ装置において、スペーサの外周の一部には、フランジ部の外周面に当接可能な外枠部が形成されており、第1当接面から延びる外枠部の高さがフランジ部の厚みと等しいことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の壁貫通スリーブ装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の壁貫通スリーブ装置において、筒状部は円筒形状を有し、且つ、スペーサには、筒状部の外径に対応する径を有する略円弧状の切り欠き部が設けられており、切り欠き部の開放端の幅が外径よりも狭いことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載のスペーサは、壁材を貫通する壁貫通孔に配置される筒状部、及び、筒状部から延在するフランジ部を備えた壁貫通スリーブを水平軸に対して傾斜配置すべく、フランジ部と壁面又は防水シートとの間に配置されるスペーサであって、
フランジ部に当接する第1当接面と
該第1当接面に対して所定角度で傾斜した、壁面又は防水シートに当接する第2当接面と、を備え、
第1当接面が傾斜方向においてフランジ部よりも短く形成されており、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の隙間を部分的に閉塞すると共に、隙間が最小となる位置でフランジ部及び壁面又は防水シートの間に介在しないように構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載のスペーサは、請求項5に記載のスペーサにおいて、隙間が最大となる位置でフランジ部の上端と第1当接面の上縁とを当接させて、フランジ部の下端を壁面又は防水シートに当接可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載のスペーサは、請求項5又は6に記載のスペーサにおいて、外周の一部にフランジ部の外周面に当接可能な外枠部を備え、第1当接面から延びる外枠部の高さがフランジ部の厚みと等しいことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載のスペーサは、請求項5から7のいずれか一項に記載のスペーサにおいて、円筒形状を有する筒状部の外径に対応する径で形成された略円弧状の切り欠き部をさらに備え、切り欠き部の開放端の幅が外径よりも狭いことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の壁貫通スリーブの設置方法は、壁材を貫通する壁貫通孔に配置される筒状部、及び、筒状部延在するフランジ部を備えた壁貫通スリーブを傾斜姿勢で設置する方法であって、
第1当接面及び該第1当接面に対して所定角度で傾斜した第2当接面を備えるスペーサを選択する工程と、
壁面又は防水シートとフランジ部との間にスペーサを配置する工程と、
第1当接面をフランジ部に当接させると共に第2当接面を壁面又は防水シートに当接させることにより、壁貫通スリーブを水平軸に対して所望の角度で傾斜させて配置する工程と、を含み、
スペーサの第1当接面を傾斜方向においてフランジ部よりも短く形成して、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の隙間をスペーサで部分的に閉塞すると共に、隙間が最小となる位置でフランジ部及び壁面又は防水シートの間にスペーサを介在させないことを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の壁貫通スリーブの設置方法は、請求項9に記載の設置方法において、隙間が最大となる位置でフランジ部の上端をスペーサの第1当接面の上縁に当接させ、且つ、フランジ部の下端を壁面又は防水シートに当接させた状態で、フランジ部の外周と壁面又は防水シートとの間を少なくとも部分的に閉塞する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の壁貫通スリーブの設置構造は、
壁材と、
該壁材を貫通する壁貫通孔と、
該壁貫通孔に配置された筒状部、及び、該筒状部から延在するフランジ部を備える壁貫通スリーブと、
壁材の壁面又は防水シートと、フランジ部との間に配置され、フランジ部に当接した第1当接面、及び、壁面又は防水シートに当接した第2当接面を有し、壁貫通スリーブが水平軸に対して傾斜するように第1当接面及び第2当接面が互いに対して所定角度で傾斜したスペーサと、を備え、
スペーサの第1当接面が傾斜方向においてフランジ部よりも短く形成されており、スペーサがフランジ部と壁面又は防水シートとの間の隙間を部分的に閉塞していると共に、隙間が最小となる位置でフランジ部及び壁面又は防水シートの間にスペーサが介在していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態の壁貫通スリーブ装置によれば、第1当接面及び第2当接面が互いに対して所定角度で傾斜した該スペーサを介してフランジ部を壁面又は防水シートに沿って配置することにより、壁面又は防水シートに対してフランジ部の一端(離隔端)を離隔させると共にフランジ部の他端(近接端)を近接させて、壁貫通スリーブを水平軸に対して傾斜させて配置することができる。そして、本発明の壁貫通スリーブ装置では、スペーサの第1当接面が傾斜方向においてフランジ部よりも短く形成されており、スペーサがフランジ部と壁面又は防水シートとの間の隙間を部分的に閉塞すると共に、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の距離が最小となる位置(フランジ部の近接端)でフランジ部及び壁面又は防水シートの間にスペーサが介在しない。すなわち、本発明の壁貫通スリーブ装置は、フランジ部の近接端でスペーサが介在しない空間を敢えて形成することにより、フランジ部及び壁面又は防水シート間の距離がスペーサの物理的厚みによって制限される可能性を排除し、フランジ部を壁面又は防水シートに対して、より一層近接配置可能としたものである。したがって、本発明の壁貫通スリーブ装置によれば、フランジ部の設置空間への張り出しを抑えて設置空間を有効利用することが可能である。
【0019】
本発明のさらなる実施形態の壁貫通スリーブ装置によれば、上記効果に加えて、フランジ部の上端がスペーサの第1当接面の上縁に当接することにより、フランジ部と壁面又は防水シートの最大の隙間をスペーサで閉塞することができる。さらに、フランジ部の下端が壁面又は防水シートに当接することにより、フランジ部の近接端での最小の隙間が実質的に0となる。これにより、フランジ部を水平軸に対して所望の角度で傾斜させた状態で、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の距離を最小化することができる。したがって、本発明によれば、フランジ部の設置空間への張り出しを最小限に抑えることが可能である。
【0020】
本発明のさらなる実施形態の壁貫通スリーブ装置によれば、上記効果に加えて、スペーサの外周の一部に形成された外枠部をフランジの外周面に当接させることにより、位置合わせした状態で、スペーサを壁貫通スリーブに簡単に組み合わせることができる。さらに、外枠部の高さがフランジ部の厚みと等しく構成されてなることにより、壁面又は防水シートとの反対側の一面において、フランジ部表面と外枠部頂面との間で段差を生じることなく、実質的に完全な平坦面を形成することができる。そのため、例えば、防水テープを貼り付けてフランジ部の外周を壁面又は防水シートに固定する際、接着面に気泡を形成することを抑えて、防水テープをしっかりと貼り付けることができる。
【0021】
本発明のさらなる実施形態の壁貫通スリーブ装置によれば、上記効果に加えて、切り欠き部の開放端の幅が筒状部の外径よりも狭い。そのため、切り欠き部に管状部を挿通するようにスペーサを壁貫通スリーブに配置したときに、該開放端を介してスペーサが壁貫通スリーブから不意に落下する虞を軽減することができる。
【0022】
本発明の一実施形態のスペーサによれば、第1当接面及び第2当接面が互いに対して所定角度で傾斜した当該スペーサを介してフランジ部を壁面又は防水シートに沿って配置することにより、壁面又は防水シートに対してフランジ部の一端(離隔端)を離隔させると共にフランジ部の他端(近接端)を近接させて、壁貫通スリーブを水平軸に対して傾斜配置することができる。そして、当該スペーサの第1当接面が傾斜方向においてフランジ部よりも短く形成されており、且つ、当該スペーサは、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の隙間を部分的に閉塞すると共に、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の距離が最小となる位置(フランジ部の近接端)でフランジ部及び壁面又は防水シートの間に介在しないように構成されている。すなわち、本発明のスペーサは、フランジ部の近接端で当該スペーサが介在しない空間を敢えて形成することにより、フランジ部及び壁面又は防水シート間の距離がスペーサの物理的厚みによって制限される可能性を排除し、フランジ部を壁面又は防水シートに対して、より一層近接配置可能としたものである。したがって、本発明のスペーサを利用することにより、フランジ部の設置空間への張り出しを抑えて設置空間を有効利用することが可能である。
【0023】
本発明の一実施形態の壁貫通スリーブの設置方法によれば、第1当接面及び第2当接面が互いに対して所望の角度で傾斜したスペーサを選択することにより、該スペーサを介してフランジ部を壁面又は防水シートに沿って配置したとき、壁面又は防水シートに対してフランジ部の一端(離隔端)を離隔させると共にフランジ部の他端(近接端)を近接させて、壁貫通スリーブを水平軸に対して所望の角度で傾斜させて配置することができる。そして、本発明の設置方法では、スペーサの第1当接面を傾斜方向においてフランジ部よりも短く形成して、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の隙間を部分的にスペーサで閉塞すると共に、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の距離が最小となる位置(フランジ部の近接端)でフランジ部及び壁面又は防水シートの間にスペーサを介在させない。すなわち、本発明の設置方法は、フランジ部の近接端でスペーサを介在させない空間を敢えて形成することにより、フランジ部及び壁面又は防水シート間の距離がスペーサの物理的厚みによって制限される可能性を排除し、フランジ部を壁面又は防水シートに対して、より一層近接配置可能としたものである。したがって、本発明によれば、フランジ部の設置空間への張り出しを抑えて設置空間を有効利用した形態で壁貫通スリーブを壁材に設置することが可能である。
【0024】
本発明のさらなる実施形態の壁貫通スリーブの設置方法によれば、上記効果に加えて、フランジ部の上端がスペーサの第1当接面の上縁に当接することにより、フランジ部と壁面又は防水シートの最大の隙間をスペーサで閉塞することができる。さらに、フランジ部の下端を壁面又は防水シートに当接させることにより、フランジ部の近接端での最小の隙間を実質的に0とすることができる。これにより、フランジ部を水平軸に対して所望の角度で傾斜させた状態で、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の距離を最小化することができる。そして、防水テープやコーキング材等でフランジ部の外周と壁面又は防水シートの間の微小な隙間を少なくとも部分的に閉塞することにより、貫通孔に水が流入することを防止することができる。
【0025】
本発明の一実施形態は、壁貫通スリーブの設置構造によれば、第1当接面及び第2当接面が互いに対して所定角度で傾斜した該スペーサを介してフランジ部を壁面又は防水シートに沿って配置したことにより、壁面又は防水シートに対してフランジ部の一端(離隔端)を離隔させると共にフランジ部の他端(近接端)を近接させて、壁貫通スリーブを水平軸に対して傾斜させた。そして、本発明の設置構造では、スペーサの第1当接面が傾斜方向においてフランジ部よりも短く形成されており、且つ、スペーサがフランジ部と壁面又は防水シートとの間の隙間を部分的に閉塞していると共に、フランジ部と壁面又は防水シートとの間の距離が最小となる位置(フランジ部の近接端)でフランジ部及び壁面又は防水シートの間にスペーサが介在していない。すなわち、本発明の設置構造は、フランジ部の近接端でスペーサが介在していない空間を敢えて形成したことにより、フランジ部及び壁面又は防水シート間の距離がスペーサの物理的厚みによって制限されていない。これにより、フランジ部を壁面又は防水シートに対して、より一層近接配置させたものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態の壁貫通スリーブ装置の斜視図。
図2図1の壁貫通スリーブ装置の(a)正面図及び(b)背面図。
図3図1の壁貫通スリーブ装置の(a)側面図及び(b)図2(a)のA−A断面図。
図4図1の壁貫通スリーブ装置の壁貫通スリーブの斜視図。
図5図4の壁貫通スリーブの(a)正面図、(b)背面図及び(c)側面図。
図6図1の壁貫通スリーブ装置のスペーサの斜視図。
図7図6のスペーサの(a)正面図、(b)背面図、(c)底面図及び(d)側面図。
図8図7(a)のB−B断面図。
図9】本発明の一実施形態の壁貫通スリーブ設置構造の概略斜視図。
図10図9の壁貫通スリーブ設置構造の概略断面図。
図11図10の壁貫通スリーブ設置構造において、フランジ部、スペーサ及び防水シートの位置関係を示す模式図。
図12】別形態の壁貫通スリーブ設置構造のフランジ部、スペーサ及び防水シートの位置関係を示す模式図。
図13図9の壁貫通スリーブ設置構造を構築する工程を示した模式図。
図14】本発明の別実施形態(実施例2)の壁貫通スリーブ設置構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
【0028】
(実施例1)
ここで説明する本発明の一実施形態は、内壁Wの内側の屋内と外壁Wexの外側の屋外とを連通させて防水状態で換気するための壁貫通スリーブ装置100である。しかしながら、本発明の壁貫通スリーブ装置は、本実施形態の換気用途に限定されることなく、壁貫通スリーブを壁貫通孔に設置する、いずれの用途に用いてもよい。
【0029】
図1は、一実施形態の壁貫通スリーブ装置100の斜視図である。図1に示すとおり、壁貫通スリーブ装置100は、屋内外を換気すべく壁貫通孔に配置される壁貫通スリーブ110と、該壁貫通スリーブ110を水平軸Qに対して傾斜させるためのスペーサ120と、を備えてなる。
【0030】
図2(a)及び(b)は、壁貫通スリーブ装置100の正面図及び背面図であり、図3(a)及び(b)は、壁貫通スリーブ装置100の側面図及び縦断面図である。図2(a)及び(b)に示すとおり、本実施形態の壁貫通スリーブ装置100では、壁貫通スリーブ110のフランジ部112前面及びスペーサ120の外枠部123端面が正面側に露出し、且つ、フランジ部112裏面の下側部分及びスペーサ120裏面(第2当接面122)が背面側に露出している。そして、壁貫通スリーブ110の溝付き連結部113の先端が正面で開口し、且つ、筒状部111の先端が背面で開口している。すなわち、スペーサ120が壁貫通スリーブ110の筒状部111の外周上に跨って配置されており、壁貫通スリーブ110の背面からフランジ部112の上方の過半領域をスペーサ120が覆っている。
【0031】
図3(a)及び(b)に示すとおり、壁貫通スリーブ装置100の前後を貫通するように、壁貫通スリーブ110の筒状部111及び溝付き連結部113で定められた換気用の貫通路が延びている。そして、壁貫通スリーブ110のフランジ部112裏面にスペーサ120前面(第1当接面112)が面で当接するように、壁貫通スリーブ110にスペーサ120が組み合わされている。このとき、フランジ部112裏面の上端及び両側端とスペーサ120の第1当接面112の上縁及び両側端とが合致し、尚且つ、該フランジ部112上端面及び両側端面がスペーサ120の外枠部123によって外側から覆われている。そして、図3(a)に示すとおり、壁貫通スリーブ装置100の前面において、フランジ部112前面と外枠部123端面とが協働して平坦面を形成している。
【0032】
この壁貫通スリーブ装置100では、その正面をなすフランジ部112前面が壁貫通スリーブ110のスリーブ軸Pと直交しており、他方、壁貫通スリーブ装置100の背面をなすスペーサ120裏面(第2当接面122)がスリーブ軸Pの直交軸から所定角度ずれている。すなわち、後述するように、壁貫通スリーブ装置100の第2当接面122をスリーブ軸Pに直交するフランジ部112に対して傾斜させたことにより、第2当接面122を(垂直面を有する)壁面又は防水シートに面接触させたときに、スリーブ軸Pを水平軸Qから傾斜させて配置することができる。
【0033】
さらに、この壁貫通スリーブ装置100の裏面では、フランジ部112の下端近傍までスペーサ120が延在していない。すなわち、後述するが、壁貫通スリーブ装置100を設置したとき、壁面又は防水シートとフランジ部112との間の隙間の一部(すなわち、フランジ部112の上方過半領域)をスペーサ120が閉塞可能であり、且つ、隙間が最小となるフランジ部112の下端近傍でスペーサ120が存在していない。
【0034】
次に、一実施形態の壁貫通スリーブ装置100の各構成要素を図4図8を参照して、より詳細に説明する。
【0035】
図4は、壁貫通スリーブ装置100の壁貫通スリーブ110の斜視図であり、図5(a)、(b)及び(c)は、壁貫通スリーブ110の正面図、背面図及び側面図である。図4に示すとおり、壁貫通スリーブ110は、壁材を貫通可能な長さで一方側に延びる略円筒形状の筒状部111と、該筒状部111の直交方向に延在するフランジ部112と、該フランジ部112から他方側に延びる、外周に複数の溝を有する溝付き連結部113と、を備える。
【0036】
図5(a)及び(b)に示すとおり、筒状部111及び溝付き連結部113は連通しており、その先端でそれぞれ開口している。該筒状部111及び溝付き連結部113は正面視(又は横断面視)で略円形状を有しており、筒状部111の外径の方が溝付き連結部113の外径よりも大きい。後述するように、筒状部111の先端は、内壁の屋内側から配管キャップ140を嵌め込み可能に構成されており、且つ、外壁の屋外側から配管キャップ140を嵌め込み可能に構成されている(図9参照)。そして、筒状部111及び溝付き連結部113の中心を通って、これらの長手方向に沿って延びる軸をスリーブ軸Pと定めた(図5(c)参照)。
【0037】
当該壁貫通スリーブ110のフランジ部112は、略正方形の平坦な薄板形状で形成されてなり、その4隅が面取り加工されている。そして、フランジ部112の傾斜方向の長さである縦幅をL2と定めた。該フランジ部112は、筒状部111及び溝付き連結部113と一体的に形成されている。そして、該フランジ部112の平面がスリーブ軸Pと直交すると共にスリーブ軸Pがフランジ部112の中心を貫通している。さらに、該フランジ部112には、スペーサ120と共に壁又は横木等の造営材に木ネジ等で固定するための第1の固定部114が4隅に形成されている。この固定部114は木ネジで打ち抜き可能であるように肉薄に形成されている。
【0038】
なお、本実施形態の壁貫通スリーブ110は、硬質の合成樹脂を一体成形することによって作製された。しかしながら、本発明は、一実施形態の製法及び材質に限定されるものではない。例えば、合成樹脂で成形する代わりに、金属板を溶接して作製することも可能である。あるいは、壁貫通スリーブのフランジ部及び筒状部を一体成形せずに、別体として組み立ててもよい。また、本実施形態の壁貫通スリーブ110では、筒状部111が断面視円形状に形成され、且つ、フランジ部112が正方形状に形成されているが、本発明はこれに限定されず、使用状況に応じて、これら形状を任意に設計することが可能である。例えば、筒状部の断面形状を多角形に形成し、又は、フランジ部の形状を円形状に形成してもよい。
【0039】
図6は、壁貫通スリーブ装置100のスペーサ120の斜視図であり、図7(a)〜(d)は、正面図、背面図、底面図及び側面図である。本実施形態のスペーサ120は、直線上に延びる上縁、該上縁から略直角に延びる両側縁、該上縁に平行に延びる下縁、及び、該下縁が上方に切り欠かれて形成された円弧状の内縁によって縁取られている。そして、フランジ部112と同様に、スペーサ120の上辺の2隅が面取りされている。つまり、スペーサ120は、正面視又は背面視において、上述のフランジ部112を下側寄りの箇所で横幅方向に切断した形状に類似している。
【0040】
図6及び図7に示すとおり、当該スペーサ120は、当該壁貫通スリーブ装置100の正面側に配置される第1当接面121と、該第1当接面121の裏側にある第2当接面122と、を備える。第1当接面121は、平坦面であり、フランジ部114の裏面(筒状部111が突出する側の面)に面接触可能に構成されている。図2及び図3で示したとおり、第1当接面121は、フランジ部112とほぼ等しい横幅を有するが、縦方向(すなわち傾斜方向)では、第1当接面121がフランジ部112よりも短く形成されてなる。また、当該第1当接面121の上縁及び両側縁(すなわち、下縁を除いた外周)に隣接して外枠部123が形成されている。他方、第2当接面122は、第1当接面121の裏面で縦横に延びるリブ125の(同一平面上に並ぶ)端面からなり、防水シートS(又は壁材の壁面)に面接触可能に構成されている。このリブ125は、該第2当接面122の内方で縦横に延びると共に内外周縁を縁取っており、スペーサ120の上縁から下縁にかけて、その突出幅が低くなっている。つまり、スペーサ120の厚みがその上縁で最も厚くなり、且つ、その下縁で最も薄くなるように、リブ125の突出幅が直線的に変化している(図7(d)参照)。さらに、このリブ125と連接するように、第2当接面122の上縁の2隅において、壁貫通スリーブ110の第1の固定部114に対応する第2の固定部126が設けられている。なお、該スペーサ120においてリブ125端面で第2当接面122を形成したことにより、スペーサ120全体の体積を減少させることができる。これにより、材料コストの削減やスペーサの軽量化といった付加的な効果を奏する。しかしながら、本発明の第2当接面はこの形態に限定されない。例えば、第2当接面は、リブ125を縦横に形成する代わりに第1当接面121と同様の平坦な表面であってもよい。
【0041】
図7(a)及び(b)に示すとおり、該スペーサ120には、その下縁に開放端124aを有する切り欠き部124が形成されている。この切り欠き部124は、正面視において筒状部111の外径に対応する円弧として形成されてなる。また、切り欠き部124の円弧の中心軸は、スペーサ120を壁貫通スリーブ110に組み合わせたときに、筒状部111と同心となるように構成されている。そして、切り欠き部124の円弧の中心角は180度よりも大きい。すなわち、スペーサ120の下縁において、円弧の直径(筒状部111の外径)よりも狭まった幅の開放端124aが形成されている。この切り欠き部124に挿通された筒状部111は、この開放端124aを通過することができない。
【0042】
図7(c)及び(d)に示すとおり、スペーサ120は、側面視において、その厚みが上端から下端に向かって一定の割合で薄くなるように形成された略台形形状を有している。すなわち、第1当接面121が第2当接面122に対して相対的に傾斜している。さらに、図7(d)に示すように、外枠部123は、この第1当接面121の上縁及び側縁で一定の高さで立設している。この外枠部123の第1当接面121からの高さ(第1当接面121から外枠部123端面までの距離)は、フランジ部112の厚みとほぼ等しくなるように設計されている。
【0043】
図8は、スペーサ120の中心軸を通る縦断面図である。図8を参照して、スペーサ120の形状寸法をより詳細に説明する。図8に示すとおり、スペーサ120の第1当接面121は、傾斜方向に沿った上縁から下縁までの長さL1を有する。なお、長さL1は、外枠部123の厚みは含まない概念である。この長さL1は、フランジ部112の縦幅L2よりも小さくなるように設定されている。また、該スペーサ120では、第1当接面121及び第2当接面122が傾斜角αで相対的に傾斜している。この傾斜角αは、壁貫通スリーブ110のスリーブ軸Pと水平軸Qとの傾斜角に対応しており、スリーブ軸Pの所望の傾斜角を得るべく、任意に設定することができる。他方、該スペーサ120の外周面と第2当接面122とは略直角に形成されている。そして、スペーサ120の上縁は最大厚みt1を有し、下縁は最小厚みt2を有する。なお、長さL1及び厚みt2は、長さL1が縦幅L2よりも小さくなるように任意に選択可能であるが、少なくともスペーサ120が脆弱でない実用的な強度を有する、又は、成形容易な範囲で形成されるように設定されることが好ましい。すなわち、この最小厚みt2が薄くなるほど、スペーサ自体が脆くなり、尚且つ、スペーサの成形が困難となるため、実用性を踏まえると厚みt2が0.5mm以上であることが好ましい。
【0044】
さらに、図8の示すように、第1当接面121を下方に延長した仮想線と、第2当接面122を下方に延長した仮想線とが交わり、仮想の略直角三角形を形成する。換言すると、スペーサ120は、仮想直角三角形の先端部分を切除した台形形状を有する。この仮想の直角三角形の斜辺の長さ(第1当接面121の上縁から仮想線の交点までの距離)をL1’と定義する。このとき、厚みt1、傾斜角α及び仮想斜辺長L1’の関係は、
L1’=t1/sin(α) [式1]
で表される。すなわち、選択した所望の傾斜角αに対して、厚みt1を変化させることにより、仮想斜辺長L1’を決定することができる。後述するとおり、この仮想斜辺長L1’及びフランジ部112の縦幅L2の関係により、フランジ部112と防水シートS(又は壁面)との間の最小距離dが定まる。
【0045】
なお、本実施形態のスペーサ120は、硬質の合成樹脂を一体成形することによって作製された。しかしながら、本発明は、一実施形態の製法及び材質に限定されるものではない。例えば、合成樹脂で成形する代わりに、金属や木材等の素材で作製することも可能である。また、スペーサの形状は一実施形態のスペーサ120に限定されるものではない。すなわち、スペーサは、少なくとも第1当接面及び第2当接面が傾斜角αで互いに傾斜し、且つ、第1当接面の長さL1がフランジ部の縦幅(傾斜方向の長さ)L2よりも短ければよく、例えば、対応するフランジ部の形状等に合わせて任意に設計可能である。さらに、スペーサの形状として、切り欠き部が真円であり、又は、切り欠き部の中心角が180度以下であってもよく、あるいは、外枠部を省略してもよい。
【0046】
図9は、一実施形態の壁貫通スリーブ装置100を用いた壁貫通スリーブ設置構造10の斜視図である。なお、図9では、説明を明瞭にするために、外壁Wex及び配管キャップ140を内壁(壁材)W及び壁貫通スリーブ装置100から離して記載している。また、図10は、図9の壁貫通スリーブ設置構造10の壁貫通孔中心で垂直方向に沿って切断した縦断面図である。図10では、説明のために配管キャップ140を省略した。
【0047】
図9及び図10に示すとおり、屋内側の間柱側面に内壁Wが立設され、屋外側の間柱側面に防水シートSが張設されている。これら内壁Wの壁面及び防水シートSの平面は略垂直に延在している。そして、2本の間柱の間には、2本の横木Tが架設されている。さらに、防水シートSの前面に胴縁材(図示せず)が形成され、該胴縁材の前面に外壁Wexが立設される。さらに、防水シートS、内壁W及び外壁Wexに略同形状の貫通孔H1、H2、H3がそれぞれ穿設され、各貫通孔H1、H2、H3は同心状に配置されており、互いに連通している。すなわち、内壁W、防水シートS及び外壁Wexの各貫通孔H1〜3の中心が水平軸Qに沿って並んでいる。そして、壁貫通スリーブ装置100で防水シートS、内壁W及び外壁Wexを貫通する換気用の貫通路を形成すべく、壁貫通スリーブ110が全貫通孔H1〜3を通って配置されている。
【0048】
図10を参照してより詳細に説明すると、フランジ部112及びスペーサ120が外壁Wexと防水シートSとの間の設置空間に位置し、且つ、溝付き連結部113が外壁Wexの貫通孔H3内に配置されている。他方、壁貫通スリーブ110の筒状部111が後方に延びており、防水シートSの貫通孔H1を貫通すると共に内壁Wの貫通孔H2内まで延びている。このとき、2本の横木Tが貫通スリーブ110を上下から挟み込むように位置している。そして、スペーサ120の第1当接面121がフランジ部112の裏面に当接していると共に、第2当接面122が防水シートSの前面に当接している。すなわち、スペーサ120の厚み分だけフランジ部112が外壁Wex側に移動したことで、スペーサ120の傾斜角α分だけフランジ部112が傾いている。その結果、筒状部111及び溝付き連結部113の中心を通るスリーブ軸Pが水平軸Qに対して、傾斜角αで外壁Wex側に斜め下がりに傾斜している。このとき、フランジ部112上端と防水シートSとの間の隙間が最大であり、フランジ部112下端と防水シートSとの隙間が最小となっている。つまり、フランジ部112上端が離隔端であり、フランジ部112下端が近接端である。
【0049】
また、当該壁貫通スリーブ設置構造10では、フランジ部112の上端とスペーサ120の上縁とが合致しており、スペーサ120が介在する上方の過半部分において、フランジ部112と防水シートSとの間の隙間がスペーサ120で閉塞されている。そして、スペーサ120の第1当接面121の長さL1がフランジ部112の縦幅L2よりも短いため、フランジ部112の近接端付近では、フランジ部112と防水シートSとの間にスペーサ120が介在していない。図10の壁貫通スリーブ設置構造10では、フランジ部112下端が防水シートSに当接している。
【0050】
さらに、この壁貫通スリーブ設置構造10において、フランジ部112とスペーサ120とが防水シートSを介して木ネジ132で横木T(造営材の一部)に固定されている。また、フランジ部120の上端及び側端と防水シートSとの間を止水状態で封止するように防水テープ130がその前面から貼着されている。このとき、図10に示すように、スペーサ120の外枠部123の端面とフランジ部112前面とが面一になっている。そのため、防水テープ130の接着面に気泡が生じることを抑え、フランジ部112及びスペーサ120を防水シートSに止水状態でしっかりと接着することができる。
【0051】
図11は、図10の壁貫通スリーブ設置構造10のフランジ部112、スペーサ120及び防水シートSの三者の位置関係を示した模式図である。すなわち、図11では説明に不要な構成を省略した。図11を参照して、該壁貫通スリーブ設置構造10におけるフランジ部112及びスペーサ120の各形状寸法L1、L1’、L2、αの関係を説明する。なお、この図11の形態では、フランジ部112下端が防水シートSの前面に接触している。すなわち、隙間が最小となるフランジ部112の近接端におけるフランジ部112と防水シートSとの間の距離が0である。図11に示すとおり、フランジ部112裏面がスペーサ120の仮想三角形の斜辺上に配置されており、スペーサ120の仮想斜辺長L1’とフランジ部112の縦幅L2(>L1)とが等しい。つまり、図10及び11の形態のように、フランジ部112の防水シートSからの張り出しを最小化(最小距離d〜0)するには、L2=L1’(=t1/sin(α))の関係を満たすように、スペーサ120の厚みt1及び傾斜角αを設定することが好ましい。
【0052】
図12は、図11の形態から縦幅L2及び傾斜角αを変化させずに厚みt1だけを増加させた壁貫通スリーブ設置構造10’の模式図である。この形態では、スペーサ120の仮想斜辺長L1’がL2よりも大きく、フランジ部112の下端が防水シートS前面から距離dで離隔している。つまり、フランジ部112の近接端と防水シートSとの間の距離dが0よりも大きい。そして、仮想斜辺長L1’、縦幅L2、傾斜角α及び距離dの関係は、
d=(L1’−L2)sin(α) [式2]
で表される。そして、式1及び式2を組み合わせると、
d=(t1/sin(α)−L2)sin(α) [式3]
となる。したがって、フランジ部112の縦幅L2に応じて、スペーサ120の厚みt1及び傾斜角αを選択することにより、フランジ部112の張り出し幅(距離d)を任意に調整することができる。換言すると、フランジ部112の近接端では、スペーサ120が介在していないので、スペーサ120の物理的厚みに距離dが制限されることなく、高い自由度で距離dを設定できる。
【0053】
他方、図示しないが、図11の形態からスペーサ120の傾斜角αを変化させずに厚みt1を減少させた場合、フランジ部112が接する仮想斜辺長L1’がその縦幅L2よりも小さくなる。そのため、フランジ部112の下端が防水シートSにぶつかり、あるいは、フランジ部112とスペーサ120との間に空隙が生じ、スペーサ120の第1当接面121及び第2当接面122の両方をフランジ部112裏面及び防水シートSに同時に面接触させることが困難となる。しかしながら、防水シートSが柔軟な材質であれば、フランジ部122の下端を防水シートSの軟質な平面に食い込ませることにより、フランジ部112、スペーサ120及び防水シートSを密着させて配置させることができる。つまり、防水シートSの素材に応じて、スペーサ120の形状を距離d<0となるように設計して密着の度合いを高めることも可能である。
【0054】
なお、本実施形態の壁貫通スリーブ装置100では、L1=158mm、L2=230mm、t1=8mm、t2=2.5mm、α=2°である。式1に基づいてスペーサ120の仮想三角形の斜辺長L1’を計算すると、L1’=229.2mmとなる。すなわち、この実施形態では、斜辺長L1’がフランジ部112の縦幅L2とほぼ等しくなるようにスペーサ120が設計されているため、距離dが実質的に0となる。しかしながら、本発明は、上記形状寸法に限定されることなく、その形状寸法を任意に設定可能である。また、本実施形態の壁貫通スリーブ設置構造10では、屋内側から屋外側にかけて筒状部111が下がるように配置されているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、状況に応じて、スペーサ120を上下反転させて配置することにより、屋外側から屋内側にかけて筒状部111が下がるように設置してもよい。
【0055】
次に、図13を参照して、壁貫通スリーブ設置構造10を構築すべく壁貫通スリーブ110を設置する方法を説明する。最初に、スリーブ軸Pの所望の傾斜角に応じて、所定の傾斜角αを有するスペーサ120を選択する。次いで、防水シートSとフランジ部112との間にスペーサ120を配置すべく、壁貫通スリーブ110のフランジ部112の裏面側にスペーサ120を組み合わせる。このとき、スペーサ120の第1当接面121の上縁をフランジ部112の上端に当接させた状態で、第1当接面121をフランジ部112の裏面に面接触させる。この工程では、スペーサ120の外枠部123内側面をフランジ部112の上端及び側端の端面に係合させて配置することで、簡単に両者を位置決め及び固定することができる。さらに、スペーサ120の切り欠き部123の開放端が狭まっているので、スペーサ120が壁貫通スリーブ110の筒状部111上に跨った状態から開放端124aを介して脱落することが防止される。なお、フランジ部112とスペーサ120とを一時的に連結するために両面テープや接着剤等を使用してもよい。
【0056】
続いて、壁貫通スリーブ110の筒状部111を防水シートSの貫通孔H1及び内壁Wの貫通孔H2内に挿入すると共にスペーサ120の第2当接面122を防水シートSの垂直面に当接させることにより、壁貫通スリーブ110のスリーブ軸Pを水平軸Qに対して所望の角度αで傾斜させて配置する。このとき、スリーブ軸Pが左右に傾かないように、防水シートSに予め記された罫書きに沿って壁貫通スリーブ装置100を防水シートSに宛がってもよい。そして、フランジ部112の第1の固定部114及びスペーサ120の第2の固定部126に木ネジ132を貫通させることにより、壁貫通スリーブ装置100を防水シートS(横木T)に固定することができる。次いで、フランジ部112の外周(及び外枠部123端面)の少なくとも一部と防水シートSとの間を防水テープ130で閉塞することにより、壁貫通スリーブ設置構造10を構築する。
【0057】
さらに追加の工程として、防水シートS前面に外壁Wexが立設され、当該外壁Wexの貫通孔H3を介して配管キャップ140が溝付き連結部113に嵌め込まれると共に、内壁Wの貫通孔H2を介して配管キャップ140が筒状部111の先端に嵌め込まれる(図9参照)。その結果、屋内外を連通する防水換気装置が設置される。なお、ここで説明した方法は、一例にすぎず、当業者であれば、各工程の順序を入れ替え、又は、不要な工程を省略することも可能である。
【0058】
以下、本発明に係る一実施形態の壁貫通スリーブ装置100(スペーサ120、壁貫通スリーブ設置方法及び壁貫通スリーブ設置構造10)における作用効果について説明する。
【0059】
一実施形態の壁貫通スリーブ装置100(スペーサ120、壁貫通スリーブ設置方法及び壁貫通スリーブ設置構造10)によれば、スペーサ120の第1当接面121及び第2当接面122が互いに対して所定角度αで傾斜している。そのため、該スペーサ120を介してフランジ部112を防水シートS(又は内壁W壁面)に宛がって固定することにより、防水シートSに対してフランジ部112の上端を離隔させると共にフランジ部112の下端を近接させて、壁貫通スリーブ110のスリーブ軸Pを水平軸Qに対して傾斜させて配置することができる。また、本実施形態の壁貫通スリーブ装置100では、傾斜方向において、スペーサ120の第1当接面121の上縁から下縁までの長さL1がフランジ部112の縦幅L2よりも短く形成されている。そして、フランジ部112の上端を第1当接面121の上縁に合致させて配置した場合、スペーサ120がフランジ部112と防水シートSとの間の隙間の上方の過半部分を閉塞すると共に、フランジ部112と防水シートSとの間の距離dが最小となる位置でフランジ部112及び防水シートSの間にスペーサ120が介在しない。すなわち、本実施形態の壁貫通スリーブ装置100は、フランジ部112の近接端でスペーサ120が介在しない空間を敢えて形成することにより、フランジ部112及び防水シートS間の最小距離dがスペーサ120の物理的厚みによって制限される可能性を排除し、フランジ部112を防水シートSに対して、より一層近接配置可能としたものである。その上、距離dは、フランジ部112の形状(縦幅L2)に応じて、スペーサ120の形状(傾斜角α、厚みt1)を選択することにより自由に設計可能である。したがって、本実施形態の壁貫通スリーブ装置100によれば、フランジ部112の設置空間への張り出しを抑えて設置空間を有効利用することが可能である。
【0060】
さらに、一実施形態の壁貫通スリーブ装置100は、筒状部111とフランジ部112とが直交した壁貫通スリーブ110と、所定の傾斜角αで形成されたスペーサ120とを組み合わせてなる。このような形状の壁貫通スリーブ110は一般的に入手可能である。そして、この壁貫通スリーブ110を種々の形状のスペーサ120と組み合わせて使用することにより、本実施形態の壁貫通スリーブ装置100は高い汎用性を発揮する。例えば、スリーブ軸Pの所望の傾斜角が多岐に亘る場合であっても、複数のスペーサ形状の中から所望の形状のスペーサ120を選択して、1つの壁貫通スリーブ110に組み合わせることにより、簡単に対応することができる。その上、1つの(例えば、既製品の)壁貫通スリーブ110に対して、1又は複数のスペーサ120を後付けで組み合わせることにより、必要とされる壁貫通スリーブ装置100を構成することができ、壁貫通スリーブを設置する際のコストを大幅に改善することができる。
【0061】
(実施例2)
一実施形態の壁貫通スリーブ設置構造10では、防水シートS前面に壁貫通スリーブ装置100が設置されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図14の設置構造20のように、貫通孔H4が穿設された1枚の壁材(内壁又は外壁)W’の壁面に壁貫通スリーブ装置100を直接的に設置することもできる。図14に示すとおり、スペーサ120の第1当接面121が壁貫通スリーブ110のフランジ部112裏面に当接し、且つ、第2当接面122が壁材W’の壁面に直接的に当接している。その結果、壁貫通スリーブ設置構造20では、壁貫通スリーブ110のスリーブ軸Pが水平軸Qに対して傾斜角αだけ傾斜した姿勢で筒状部111が貫通孔H4を貫通している。なお、壁材W’が外壁である場合、防水テープ130では経時とともにその接着力が低下するので、防水テープ130に代えてコーキング材を使用してもよい。
【0062】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0063】
10 壁貫通スリーブの設置構造
100 壁貫通スリーブ装置
110 壁貫通スリーブ
111 筒状部
112 フランジ部
113 溝付き連結部
114 第1の固定部
120 スペーサ
121 第1当接面
122 第2当接面
123 外枠部
124 切り欠き部
124a 開放端
125 リブ
126 第2の固定部
130 防水テープ
α 傾斜角
d フランジ部と防水シート(又は壁面)との最小距離
L1 第1当接面の傾斜方向の長さ
L2 フランジ部の縦幅(傾斜方向の長さ)
t1 スペーサの最大厚み
t2 スペーサの最小厚み
P スリーブ軸
Q 水平軸
W 内壁(壁材)
S 防水シート
H1〜3 貫通孔(壁貫通孔)
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