特許第6209052号(P6209052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209052
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】口唇化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20170925BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20170925BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20170925BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/37
   A61K8/31
   A61Q1/04
   A61Q1/06
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-221662(P2013-221662)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-81256(P2015-81256A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】篠田 知明
(72)【発明者】
【氏名】成 恵美
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−531945(JP,A)
【文献】 特表2011−506548(JP,A)
【文献】 特表2010−521490(JP,A)
【文献】 特開2011−184416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマー 3〜30質量%
(b)トリメリト酸エステル 3〜70質量%
(c)(エチレン/プロピレン)コポリマー、フィッシャートロプシュワックスから選ばれる一種または二種以上の炭化水素ワックス
を配合することを特徴とする口唇化粧料。
【請求項2】
前記成分(c)の融点が70〜110℃であることを特徴とする請求項1に記載の口唇化粧料。
【請求項3】
前記成分(c)の配合量が1〜25質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の口唇化粧料
【請求項4】
スティック形状であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の口唇化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分(a)(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマーを3〜30質量%と、成分(b)トリメリト酸エステルを3〜70質量%、成分(c)炭化水素ワックスとを配合することを特徴とする口唇化粧料に関し、更に詳細には本発明の化粧料は、密着感があり、化粧膜のツヤ感に優れ、さらに伸び広がりが軽い使用感が得られる口唇化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性化粧料は、肌への密着感や化粧持ちを期待され使用されてきた。更に、口唇はツヤがあると、顔全体が明るくなり、健康的な印象を与えることができるため、高粘度で屈折率の高い油剤であるポリブテンや水添ポリイソブテン等を用いて、密着感と化粧膜のツヤを得ていた。しかし、ポリブテンや水添ポリイソブテンは、口唇化粧料の伸び広がりを悪くしたり、化粧膜のベタツキを生じさせたりして欠点のある油剤でもあった。そこで、同様にツヤを付与できる油剤の配合検討がなされてきた。
例えば、トリメリト酸トリデシルも高粘度で屈折率の高い油剤であり、他の油剤と組み合わせて、高いツヤを得る技術が検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかし、ポリブテン、水添ポリイソブテンやトリメリト酸トリデシルは常温で液状の油剤であり、口唇に塗布した際は垂れ落ちてしまうため、これらを口唇に密着させるには、特許文献に記載のように特定のゲル化剤やワックスが必要となる。
また、前記特許文献1には、化粧品のにじみおよび色の消失の防止として、フィルム形成剤を用い、PVP/ヘキサデセンコポリマーやPVP/エイコセンコポリマー等の液体や固体のフィルム形成剤を配合しても良いことが記載されている。
このように、フィルム形成剤として配合されているビニルピロリドンとC10−C40アルケンとのコポリマーは、高い光沢ツヤを有する化粧料に配合されているが、一方でマット感(艶消)を付与するために使用されることが知られていた。(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−521490号公報
【特許文献2】特開2011−074006号公報
【特許文献3】特開2002−249414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ツヤを付与する液状油剤の垂れ落ちを防止する炭化水素ワックスは、ワックス構造を形成する際、ツヤを低下させたり、肌との密着感を低下させたりする場合があった。また、塗布時においても、構造が崩れにくく、軽い伸び広がりが得られない場合があった。
また、化粧品のにじみおよび色の消失を防止するフィルム形成剤であるビニルピロリドンとC10−C40アルケンとのコポリマーは、ツヤをなくすものであると認識されていた。
そのため、化粧膜のツヤ感に優れ、密着感があり、伸び広がりが軽い使用感の全てを満足する口唇化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った結果、成分(a)(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマーを特定量と成分(b)トリメリト酸エステルを特定量配合し、成分(c)炭化水素ワックスを配合することにより、水添ポリイソブテンのように屈折率の高い油剤とトリメリト酸エスエルとを組み合わせるよりも高いツヤ感が得られるものであることを見出した。これは、成分(a)がツヤ感を損なうことなく密着感を向上させることができるものであり、組み合わせることで、塗布時に、口唇の凹凸を埋めて化粧料の均一な膜が形成され、表面の平滑性が得られるため、よりツヤ感が向上するものと考えられる。
また、形状保持が可能な強度が得られるが、硬さやベタツキがなく、伸び広がりの軽い使用感が得られることが可能となった。そこで、伸び広がりの軽い使用感と密着感とを両立し、塗布時に口唇の凹凸を埋めて油性化粧料の均一な膜が形成され、ツヤ感に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
次の成分(a)〜(c);
(a)(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマー3〜30質量%
(b)トリメリト酸エステル3〜70質量%
(c)炭化水素ワックス
を配合することを特徴とする口唇化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、密着感があり、化粧膜のツヤ感に優れ、伸び広がりが軽い使用感が得られる口唇化粧料に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細について以下に説明する。
本発明に用いられる成分(a)(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマーはヘキサデセンとN−ビニルピロリドンで構成される共重合体であり化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず、使用することができる。
成分(a)は、化粧品の成分表示名称で、(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマーとして収録されているものを用いることができ、市販品としては、ANTARON V−216(ISP社製)等があげらる。
成分(a)の(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマーはその一種又は二種以上を用いることができ、配合量は3〜30質量%(以下、単に「%」と示す。)であり、好ましくは5%以上であり、20%以下である。この範囲であると、密着感があり、化粧膜のツヤ感に優れ、伸び広がりが軽い使用感が更に向上し、3%未満では、密着感の点で劣り、30%を超えると伸び広がりが軽い使用感に劣るため良くない。
【0009】
本発明に用いられる成分(b)のトリメリト酸エステルは、トリメリト酸と高級アルコールとのトリエステルであり化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず、使用することができる。例えば、トリメリト酸と炭素数10〜13の飽和の直鎖状或いは分岐鎖を有するアルコールを脱水縮合させて得ることができる。性状は、液状もしくは半固形状が好ましく、25℃における粘度が100〜1000mPa・sであることが好ましく、屈折率は1.45〜1.5のものが好ましい。
成分(b)のトリメリト酸と脱水縮合させるアルコールは、炭素数10〜13のものが、本願の効果を向上させる点において優れている。具体的には、トリメリト酸トリオクチル、トリメリト酸トリデシル、トリメリト酸トリウンデシル、トリメリト酸トリドデシル、トリメリト酸トリトリデシル、等が挙げられる。この中でも特に、トリメリト酸トリオクチル、トリメリト酸トリトリデシルが化粧膜のツヤ感の向上、高温での経時安定性上の点から好ましい。市販品としては、LIPONATE TDTM(粘度565mPa・s、屈折率1.48、リポケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0010】
成分(b)のトリメリト酸エステルは、必要に応じて一種又は二種以上を用いることができ、配合量は全成分中3〜70%であり、好ましくは5%以上であり、50%以下である。この範囲であると、化粧膜のツヤ感が飛躍的に向上し、3%未満では、ツヤ感の点で劣り、70%を超えると伸び広がりが軽い使用感が得られなくなり良くない。
【0011】
本発明に用いられる成分(c)の炭化水素系ワックスは、合成炭化水素ワックス及び天然より抽出し、精製されるものがあり化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず、使用することができる。
具体的には、(エチレン/プロピレン)コポリマー、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、オゾケライトワックス、パラフィンワックス、セレシンワックス等が挙げられる。中でも、化粧膜のツヤ感や密着感の点において、(エチレン/プロピレン)コポリマーやフィッシャートロプシュワックスが好ましい。例えば、化粧品の成分表示名称で、(エチレン/プロピレン)コポリマーや合成ワックスとして収録されているものを用いることができる。
市販品として、EP−700(融点90〜99℃:Baker Petrolite社製)、PERFORMALENE 500(融点83〜92℃:ニューフェーズテクノロジー社製)、PERFORMALENE 655(融点96〜102℃:ニューフェーズテクノロジー社製)、CIREBELLE 109L(融点91〜96℃:CIREBELLE社製)、CIREBELLE 108(融点79〜84℃:CIREBELLE社製)等が例示できる。
融点が70〜110℃であると、伸び広がりの軽い使用感と化粧膜のツヤ感の点において、好ましい。
尚、本願において、融点は、「医薬部外品規格一般試験法の融点測定法」に基づき測定されるものである。
【0012】
成分(c)の炭化水素系ワックスは、必要に応じて一種又は二種以上を用いることができ、配合量は、全成分中1〜25%が好ましく、1〜20%がより好ましい。この範囲で用いた場合、伸び広がりが軽い使用感が飛躍的に向上する。さらに、1〜15%の範囲で用いた場合、塗布膜のツヤ感が飛躍的に向上する。
【0013】
本発明の口唇化粧料に配合される成分(a)、(b)は、(a):(b)=3:70〜10:1の質量比で配合されると、密着感があり、化粧膜のツヤ感に優れ、さらに伸び広がりが軽い使用感の点で好ましい。
【0014】
本発明の口唇化粧料には、上記の(a)〜(c)の必須成分に加え、本発明の効果を妨げない範囲で、油性成分、油ゲル化剤、粉体およびそれらの表面処理物、界面活性剤、水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、色素、香料等、通常化粧料に配合される他の成分を配合することができる。
【0015】
油性成分としては、成分(a)〜(c)以外で、化粧料に一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、モンタンワックス、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、ゲイロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等のロウ類、ホホバ油、2−エチルヘキサン酸セチル、乳酸イソステアリル、乳酸オクチルドデシル、乳酸オレイル、乳酸ステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、ポリオキシ変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0016】
粉体成分としては、化粧料に一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等の合成樹脂粉体、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、必要に応じて、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等を用いて、公知の方法により表面処理を施したり、更に複合化したものを用いても良い。
【0017】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0018】
水性成分としては、水の他に、例えば、エチルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1、2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等の紫外線吸収剤や、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられ、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が挙げられ、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が挙げられ、防腐剤としてはパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2ペンタジオール等が挙げられる。
【0019】
本発明の口唇化粧料としては、特に限定されないが、形状として固形状、半固形状、液状のものが挙げられ、特に、伸び広がりの軽い使用感と密着感との両立や、ツヤ感の効果が顕著に発揮される点で固形状が好ましく、更にスティック形状が好ましい。また、口紅、リップグロス、リップトリートメント、リップクリーム、下地用のリップベース、口紅オーバーコートなどが挙げられる。剤型は、特に限定されないが、化粧持ちやツヤ感の点から油相を連続相とする油性または油中水型が好ましい。
【0020】
本発明の口唇用化粧料の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば成分(a)、成分(b)、成分(c)および任意の油性成分を加熱溶融したのち、任意の粉体や水系成分などを均一に混合分散し、これを容器または型に加熱溶解後に流し込み充填し、冷却して得ることができる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0022】
実施例1、比較例1〜7 口唇化粧料(油性スティック状)
下記表1に示す処方の口唇化粧料を調製し、密着感、化粧膜のツヤ感、伸び広がりが軽い使用感と、強度について下記の方法により評価した。その結果も併せて表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
注1:ANTARON V−216(ISP社製)
注2:パールリーム18(日油社製)
注3:フィッシャートロプシュワックス(融点91〜96℃)
注4:LIPONATE TDTM(リポケミカルズ社製)
【0025】
(製造方法)
A.成分(1)〜(10)を110℃まで加熱し、均一溶解する。
B.Aをスティック状容器に充填し、冷却固化して口唇化粧料を得た。
【0026】
(評価方法)
下記評価項目について下記方法により評価を行い、その結果も併せて表1に示した。
【0027】
(評価項目)
イ.密着感
ロ.化粧膜のツヤ感
ハ.伸び広がりが軽い使用感
ニ.光沢性
ホ.強度
【0028】
(評価方法1:官能評価)
イ〜ハの項目について、各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人が下記絶対評価基準にて7段階に評価し評点をつけ、各試料についてパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。イについては、密着感があるかどうか、ロについては各試料の塗布時にツヤ感があると感じるかどうか、ハについては各試料塗布時に伸び広がりが軽い使用感を感じるかどうかを評価した。
【0029】
絶対評価基準
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超え5点以下 :良好
△ :1点を超え3.5点以下 :やや不良
× :1点以下 :不良
【0030】
(評価方法2:物性評価)
ニの光沢性については、各試料を溶融し、ラッピングフィルムシート(粒度30μm:住友3M社製)上に膜厚100μmのドクターブレードで被膜を形成させ、測定サンプルとする。これをグロスメーターVG−7000(日本電色工業社製)を用い、入射角45℃の正反射光強度を測定し、下記4段階判定基準により判定した。
4段階判定基準
(判定):(グロスメーターの読み値)
◎ :55を超える
○ :45を超える55以下
△ :35を超える45以下
× :35以下
【0031】
ホの強度については、各試料を各3個、35℃に1時間放置し、以下の条件にて最大カッター荷重を測定し、3個の平均カッター荷重を算出し、下記3段階判定基準により判定した。
測定機:FUDOH RHEOMETER RT−2002D・D(レオテック社製)
速度:6cm/m
アダプタ−:ピアノ線
測定部:容器より最長に繰り出し、容器根元より12mm部を測定
3段階判定基準
(判定):(平均荷重値)
○ :60g以上
△ :30g以上〜60g未満
× :30g未満
【0032】
表1の結果より明らかな様に、実施例1は比較例に比べ、官能評価項目の全てに良好な結果が得られた。また、ニの光沢性の結果も官能評価と同様に良いものであった。
ホの強度については、使用しても折れない強度のものであった。また、比較例7以外は、各試料とも良い結果が得られた。
一方、成分(a)の代わりに、屈折率は低いが、粘度が同等のデカイソステアリン酸ポリグリセリル−10を用いた比較例1は、官能評価の化粧膜のツヤ感が得られず、物性評価でも同じ結果となり、ベタツキがあり伸び広がりが軽い使用感に劣るものであった。
成分(a)の代わりに、屈折率は同等であるが、粘度が低いトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを用いた比較例2は、官能評価では化粧膜のツヤ感が全く得られず、物性評価でも同じ結果となり、伸び広がりがとても良く軽い使用感は得られたが、密着性が悪く、ズルズルして化粧膜の消失が生じてしまうものであった。
成分(a)の代わりに、粘度は同等であるが屈折率の高い水添ポリイソブテンを用いた比較例3は、粘度が高すぎて、膜が均一にならないため、実施例1よりも劣る結果となった、かなりのベタツキが生じ、伸び広がりが軽い使用感は全く得られなかった。
成分(a)の代わりに、粘度は同等であるが親水部を有するセスキオレイン酸ソルビタンを用いた比較例4は、ツヤ感が得られず、ベタツキも生じるものであった。
また、成分(b)の代わりに、粘度は同等であるが屈折率の低いトリイソステアリン酸ポリグリセリル−2を用いた比較例5は、表面の平滑性が得られず、ツヤ感に劣るものであった。
成分(b)の代わりに、粘度は同等であるが屈折率の低いリンゴ酸ジイソステアリルを用いた比較例6は、伸び広がりが非常に重くなり、軽い使用感は全く得られなかった。
成分(b)の代わりに、粘度は低いが屈折率の高いパラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルを用いた比較例7は、密着感が得られないため、ズルズルして化粧膜の消失が生じ、ツヤ感にも劣るものであった。
【0033】
実施例2〜10及び比較例8〜17:口唇化粧料(スティック状口紅)
下記表2及び3に示す処方の口唇化粧料を調製し、密着感、化粧膜のツヤ感、伸び広がりが軽い使用感について前記の方法(評価方法1:官能評価)により評価した。その結果も併せて表2及び3に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
*1:CIREBELLE 109L(CIREBELLE社製)
*2:EP−700(Baker Petrolite社製)
*3:PERFORMALENE655(ニュ−フェーズテクノロジー社製)
*4:合成セレシンJNP−81(融点79〜89℃:日本ナチュラルプロダクツ社製)
*5:ANTARON V−216(ISP社製)
*6:パールリーム18(日油社製)
*7:LIPONATE TDTM(リポケミカルズ社製)
*8:KF−54(信越化学工業社製)
*9:PlANDOOl−S(日本精化社製)
*10:AEROSIL R−976S(日本アエロジル社製)
【0037】
(製造方法)
A.成分(1)〜(16)を110℃まで加熱し、均一溶解する。
B.Aに成分(17)〜(23)をAに加え、均一に混合する。
C.Bを90℃に加熱し、スティック状容器に充填して口紅を得た。
【0038】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例2〜10の口紅は、比較例8〜17の口紅に比べ、密着感および化粧膜のツヤ感に優れ、さらに伸び広がりが軽い使用感にも優れたものであった。
一方、成分(a)の(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマーの配合量が3%よりも少ない配合量である比較例8は密着感の点で劣り、表面の平滑性にも劣るため化粧膜のツヤ感にも劣っており、配合量が30%よりも多い比較例9は伸び広がりが軽い使用感の点で劣っていた。
また、成分(b)のトリメリト酸エステルの配合量が70%よりも多い比較例10は密着感や伸び広がりが軽い使用感の点で劣っていた。配合量が3%よりも少ない比較例11は化粧膜のツヤ感の点で劣っていた。
成分(b)の代わりに粘度が同等のトリイソステアリン酸ポリグリセリル−2やリンゴ酸ジイソステアリルを用いた比較例12、比較例13は、密着感に劣り、化粧膜のツヤ感も得られなかった。
成分(b)の代わりに、粘度が低いが、屈折率が高いメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルを用いた比較例14では密着感が得られず、化粧膜の消失が生じてしまい化粧膜のツヤ感にも劣るものでったた。
成分(a)の代わりに、屈折率は低いが、粘度が同等のデカイソステアリン酸ポリグリセリル−10を用いた比較例15は、化粧膜のツヤ感が得られず、ベタツキがあり伸び広がりが軽い使用感に劣るものであった。
成分(a)の代わりに、粘度と屈折率が低いトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルを用いた比較例16は、化粧膜のツヤ感が得られず、軽い使用感は得られたが、密着性が悪く、ズルズルして化粧膜の消失が生じてしまうものであった。
成分(a)の代わりに、水添ポリイソブテンを用いた比較例17は、密着感はあるもののベタツキがかなり生じ軽い使用感が得られず、化粧膜のツヤ感も少し低くなった。
【0039】
実施例11:リップグロス
(成分) (%)
1.合成ワックス *11 2
2.パルミチン酸デキストリン 5
3.(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマー *5 10
4.リンゴ酸ジイソステアリル 5
5.流動パラフィン 10
6.水添ポリイソブテン *12 20
7.トリメリト酸トリトリデシル *7 7
8.トリメチルペンタフェニルトリシロキサン 10
9.ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/
フィトステリル/ベヘニル) *13 5
10.2−エチルヘキサン酸セチル 残量
11.無水ケイ酸 *14 1
12.フッ素化合物3%処理ベンガラ被覆雲母 0.5
13.酸化チタン被覆ガラス末 *15 2
14.赤色202号 0.8
15.黄色4号アルミニウムレーキ 1
16.黒酸化鉄 0.2
17.p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 1
18.dl−α−トフェロール 0.1
19.香料 0.01
20.パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
(製造方法)
A.成分(1)〜(12)を110℃まで加熱し、均一溶解する。
B.Aに成分(13)〜(20)をAに加え、均一に混合する。
C.Bを容器に充填して口紅を得た。
*11:フィッシャートロプシュワックス:CIREBELLE 108(CIREBELLE社製)
*12:パールリーム24(日油社製)
*13:エルデュウPS−306(味の素社製)
*14:AEROSIL300(日本アエロジル社製)
*15:メタシャインMT1080RR(日本板ガラス社製)
本発明のリップグロスは、密着感、化粧膜のツヤ感、伸び広がりが軽い使用感のすべて点で満足のいくものであった。
【0040】
実施例12:リップグロス(油性固形皿流し込み状)
(成分) (%)
1.合成ワックス *1 7
2.水添ポリイソブテン *6 10
3.リンゴ酸ジイソステアリル 残量
4.トリメリト酸トリトリデシル *7 8
5.(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマー *5 25
6.流動パラフィン 10
7.N−ラウロイル−L−グルタミン酸
(フィトステリル/オクチルドデシル) *16 5
8.ダイマージリノール酸(フィトステリル/
イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) *9 10
9.ワセリン 5
10.ジフェニルジメチコン *8 1
11.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)
クロスポリマー *17 2
12.無水ケイ酸 *14 3
13.赤202号 1
14.黄色4号 1.2
15.酸化チタン 0.4
16.黒酸化鉄 0.2
17.シリコーン3%処理酸化チタン被覆ガラスフレーク *18 3
*16:エルデュウPS−203(味の素社製)
*17:KSP−100(信越化学工業社製)
*18:ジメチルポリシロキサン3%処理メタシャインMT1120RY
(製造方法)
A:成分(1)〜(10)ヲ110℃に加温して溶解する。
B:Aに(11)〜(17)を加え、均一に混合する。
C:Bを脱泡後、90℃にて口紅容器に充填して製品とする。
本発明のリップグロスは、密着感、化粧膜のツヤ感、伸び広がりが軽い使用感のすべて点で満足のいくものであった。
【0041】
実施例13:口紅(油性固形皿流し込み状)
(成分) (%)
1.(エチレン/プロピレンコポリマー)*2 4
2.トリメリト酸トリトリデシル *7 20
3.トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2 15
4.(ヘキサデセン/ビニルピロリドン)コポリマー *5 5
5.ダイマージリノール酸(フィトステリル/
イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) *9 10
6.ワセリン 5
7.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー *17 2
8.ジメチチルポリシロキサン(10mm2/s、25℃) 4
9.p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 0.1
10.リンゴ酸ジイソステアリル 残量
11.酸化チタン被覆ガラス末 *15 1
(製造方法)
A:成分(1)〜(6)を110℃に加温して溶解する。
B:Aに(7)〜(10)を加えて80℃で溶解し均一に混合する。
B:Bに成分11を加えて均一に混合する。
C:Cを脱泡後、90℃にて皿に流し込み室温まで冷却して製品とする。
本発明の口紅は、密着感、化粧膜のツヤ感、伸び広がりが軽い使用感のすべて点で満足のいくものであった。