特許第6209056号(P6209056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院の特許一覧

特許6209056狭分子量分布ポリプロピレンおよびその調製方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209056
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】狭分子量分布ポリプロピレンおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 110/06 20060101AFI20170925BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08F110/06
   C08F4/654
【請求項の数】40
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-225693(P2013-225693)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-145072(P2014-145072A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年6月17日
(31)【優先権主張番号】201210425066.6
(32)【優先日】2012年10月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王良詩
(72)【発明者】
【氏名】于魯強
(72)【発明者】
【氏名】張師軍
(72)【発明者】
【氏名】喬金▲りょう▼
(72)【発明者】
【氏名】郭梅芳
(72)【発明者】
【氏名】楊芝超
(72)【発明者】
【氏名】殷建軍
(72)【発明者】
【氏名】黄紅紅
(72)【発明者】
【氏名】侯莉萍
(72)【発明者】
【氏名】盛建▲ほう▼
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−501549(JP,A)
【文献】 特開2003−327614(JP,A)
【文献】 特開平07−002925(JP,A)
【文献】 特表2009−529087(JP,A)
【文献】 特開昭60−053510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 110/00−110/14
C08F 4/00−4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布指数Mw/Mnが2.5〜5.5であり、分子量分布幅PIHTにおける高分子量テールの多分散性指数が1.9より大きく、
PIHTは、下記の式(1)にしたがって算出され、
PIHT=105*(Mz/Mp)/Mw (1)
Mpはピーク分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、MzはZ平均分子量であることを特徴とする、ポリプロピレン。
【請求項2】
85%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項3】
プロピレンの2,1−挿入および1,3−挿入に起因する位置不規則性がないことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリプロピレン。
【請求項4】
結晶化温度Tcが113℃より高いことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のポリプロピレン。
【請求項5】
キシレン可溶分が4.4重量%未満であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のポリプロピレン。
【請求項6】
メルトフローレートMFRが0.01〜1000g/10分であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載のポリプロピレン。
【請求項7】
反応器における重合によって直接的に調製されることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載のポリプロピレン。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載のポリプロピレンを調製する方法であって、以下のステップ:
(1)チーグラーナッタ触媒の存在下においてプロピレンを前重合するステップ、
(2)ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91〜150℃の重合温度においてプロピレンを重合するステップ
を含み、
上記チーグラーナッタ触媒は、以下の成分:
(1)チタン含有固体触媒成分;
(2)アルキルアルミニウム化合物;
の反応生成物を含み、
上記成分(1)としての上記チタン含有固体触媒成分は、アルコキシマグネシウム化合物とチタン化合物と内部電子供与体化合物とを接触させた反応生成物であり、
上記チタン化合物は、式(I)で表される少なくとも1つの化合物から選ばれ、
【化4】
(式(I)において、
RはC1−C14脂肪族ヒドロカルボニルおよび芳香族ヒドロカルボニルから選ばれ;
Xはハロゲンであり;
nは0〜4から選ばれる整数であり;
nが2と同じか2より小さい場合、R基は同じでも異なっていてもよい);
上記内部電子供与体化合物は、式(IV)で表される少なくとも1つのジエーテル化合物から選ばれる
【化5】
(式(IV)において、
1およびR2は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状、分枝状、および環式のC1−C20脂肪族基から選ばれ;
3、R4、R5、R6、R7、およびR8は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して水素、ハロゲン原子、ならびに直鎖状または分枝状のC1−C20アルキル、C3−C20シクロアルキル、C6−C20アリール、C7−C20アルキルアリール、およびC7−C20アリールアルキルから選ばれ、任意でR3〜R8は互いに結合して環を形成することができる)
ことを特徴とする、調製方法。
【請求項9】
以下のステップ:
(1)気相または液相中、−10℃〜50℃、かつ0.1〜10.0MPaにおいて、上記チーグラーナッタ触媒の存在下でプロピレンを前重合し、プロピレンの前重合体を得るステップであって、前重合率は2〜3000g重合体/g触媒に制御されているステップ;
(2)上記ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91〜150℃、かつ1.0〜6.0MPaにおいて、0.5〜4.0時間の重合時間でプロピレンを単独重合し、上記プロピレンの重合体を得るステップ
を含むことを特徴とする、請求項に記載の調製方法。
【請求項10】
上記ステップ(1)およびステップ(2)は、同一の反応器において非連続的に行われる、または、異なる反応器において連続的に行われることを特徴とする、請求項に記載の調製方法。
【請求項11】
上記ステップ(1)において、プロピレンの前重合温度は0〜30℃に制御され;前重合圧力は1.0〜6.0MPaであることを特徴とする、請求項8〜10の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項12】
上記ステップ(1)は、0〜30℃の温度におけるプロピレンの液相バルク前重合であり;上記ステップ(2)は、91〜110℃の温度におけるプロピレンの気相単独重合であることを特徴とする、請求項8〜11の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項13】
上記ステップ(2)におけるプロピレンの気相重合は、横型ミキサーシャフトを備え、10〜150rpmの撹拌速度であり、かつTタイプ、矩形、傾きのあるパドル、ドアタイプ、V字形、およびそれらの任意の組み合わせから選ばれる混合羽根を備える、熱を除去するために急冷液を用いる横型反応器において行われることを特徴とする、請求項8〜12の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項14】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、式Mg(OR12-m(OR2m(当該式において、R1およびR2は同じでも異なっていてもよく、それぞれ直鎖状および分枝状のC1−C8アルキル基の1つから選ばれ、0≦m≦2である)で表される少なくとも1つの化合物から選ばれることを特徴とする、請求項に記載の調製方法。
【請求項15】
上記式において、R1はエチルであり、R2は(2−エチル)ヘキシルであり、0.001≦m≦0.5であることを特徴とする、請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、球体状の外観であり、平均粒径D50が10〜150μmであり、粒径分布指数SPAN<1.1であり、SPANは下記式(III):
【数1】
(式(III)において、
D90は90%の累積重量分率に相当する粒径を表し;
D10は10%の累積重量分率に相当する粒径を表し;
D50は50%の累積重量分率に相当する粒径を表す)
によって算出されることを特徴とする、請求項8〜15の何れか1項に記載の調製方法。
【請求項17】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、以下の方法:不活性ガス雰囲気の保護下において、出発原料としてのアルコールおよびマグネシウム金属と混合ハロゲン化剤とを反応させ、球体状のジアルコキシマグネシウム微粒子を調製すること、によって調製され;上記アルコールとマグネシウムとの重量比は、4〜50:1であり;上記アルコールは直鎖状または分枝状のモノアルコールまたは多価アルコールであり;上記ハロゲン化剤はハロゲン元素およびハロゲン化物の少なくとも1つから選ばれ、ハロゲン原子とマグネシウムとモル比が0.0002〜0.2:1において用いられることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項18】
上記チーグラーナッタ触媒は、以下の成分:
(1)上記チタン含有固体触媒成分;
(2)上記アルキルアルミニウム化合物;
(3)外部電子供与体化合物;
の反応生成物を含むことを特徴とする、請求項に記載の調製方法。
【請求項19】
上記外部電子供与体化合物は、式(VII)で表される有機ケイ素化合物である
【化6】
(式(VII)において、
1''およびR2''は同じでも異なっていてもよく、それぞれハロゲン、水素原子、1〜20の炭素原子を有するアルキル、3〜20の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜20の炭素原子を有するアリール、および1〜20の炭素原子を有するハロゲン化アルキルのうちの1つであり;
3''は、1〜20の炭素原子を有するアルキル、3〜20の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜20の炭素原子を有するアリール、および1〜20の炭素原子を有するハロゲン化アルキルのうちの1つであり;
m''およびn''はそれぞれ0〜3の整数であり、m''+n''<4である)
ことを特徴とする、請求項18に記載の調製方法。
【請求項20】
スピニング、薄膜注入、もしくはキャスティングのプロセス、または透明材料の調製における、請求項1〜の何れか1項に記載のポリプロピレンまたは請求項8〜19の何れか1項に記載の調製方法によって調製されるポリプロピレンの使用。
【請求項21】
分子量分布指数Mw/Mnが3.0〜4.9であることを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項22】
分子量分布幅PIHTにおける高分子量テールの多分散性指数が2.1より大きいことを特徴とする、請求項1に記載のポリプロピレン。
【請求項23】
90%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有することを特徴とする、請求項2に記載のポリプロピレン。
【請求項24】
93%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有することを特徴とする、請求項2に記載のポリプロピレン。
【請求項25】
結晶化温度Tcが115℃より高いことを特徴とする、請求項4に記載のポリプロピレン。
【請求項26】
キシレン可溶分が2.3重量%未満であることを特徴とする、請求項5に記載のポリプロピレン。
【請求項27】
キシレン可溶分が1.6重量%未満であることを特徴とする、請求項5に記載のポリプロピレン。
【請求項28】
メルトフローレートMFRが1〜1000g/10分であることを特徴とする、請求項6に記載のポリプロピレン。
【請求項29】
メルトフローレートMFRが1〜399g/10分であることを特徴とする、請求項6に記載のポリプロピレン。
【請求項30】
以下のステップ:
(1)上記チーグラーナッタ触媒の存在下においてプロピレンを前重合するステップ、
(2)ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91〜110℃の重合温度においてプロピレンを重合するステップ
を含む、請求項に記載の調製方法。
【請求項31】
ステップ(1)において、前重合率は3〜2000g重合体/g触媒に制御されていることを特徴とする、請求項に記載の調製方法。
【請求項32】
ステップ(2)において、ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91〜110℃、かつ1.0〜6.0MPaにおいて、0.5〜4.0時間の重合時間でプロピレンを単独重合し、上記プロピレンの重合体を得ることを特徴とする、請求項に記載の調製方法。
【請求項33】
上記ステップ(1)において、プロピレンの前重合温度は10〜25℃に制御されることを特徴とする、請求項11に記載の調製方法。
【請求項34】
上記ステップ(1)において、前重合圧力は1.5〜5.5MPaであることを特徴とする、請求項11に記載の調製方法。
【請求項35】
上記式(IV)において、
1およびR2は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1−C6アルキルから選ばれ;R5およびR6は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1−C10アルキルおよびC3−C10シクロアルキルから選ばれることを特徴とする、請求項に記載の調製方法。
【請求項36】
0.001≦m≦0.25であることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項37】
0.001≦m≦0.1であることを特徴とする、請求項15に記載の調製方法。
【請求項38】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、平均粒径D50が15〜100μmであることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項39】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、平均粒径D50が18〜80μmであることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【請求項40】
上記アルコキシマグネシウム化合物は、粒径分布指数SPAN<1.05であることを特徴とする、請求項16に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、狭分子量分布ポリプロピレンおよびその調製方法に関し、特に、チーグラーナッタ触媒を用いた、反応器内における重合によって、直接的に調製された狭分子量分布ポリプロピレンに関する。
【0002】
〔背景技術〕
ポリプロピレンの分子量分布幅は、重要な構造パラメータであり、ポリプロピレンの処理挙動、物性、および機械的特性に直接的に影響する。狭分子量分布ポリプロピレンは、流動している間、ニュートンのプラトー帯が広くなり、せん断速度の変動に伴う粘度の変化は少なくなり、安定的に押し出し量を制御することが容易になり、低粘度および高流動性が求められる成形工程に特に好適である。例えば、スピニング等の適用の局面において、ポリプロピレンの分子量分布をできるだけ狭く制御する必要があり、それによってノズル圧の安定性を向上させ、フィラメントの繊度を均一にすることができる。また、高流動性射出成形の局面においては、狭分子量分布によって加工物の反りを低減しやすく、また加工物の衝撃挙動を改善しやすくなる。清澄剤を加えない場合には、狭分子量分布によって、試料の透明度を向上させることもでき、濁度を低減させる。工業上、狭分子量分布ポリプロピレンを調製する方法は、通常、過酸化物(いわゆる「レオロジー制御されたポリプロピレン(controlled rheology polypropylene)」)の添加による分解であるが、過酸化物を使用すると、製品のコストが上がると同時に残留過酸化物が最終加工物中ですぐに悪臭を放つため、適用できる分野が限られていた。
【0003】
〔発明の開示〕
発明者らは、研究の結果、チーグラーナッタ触媒を用いて、狭分子量分布のプロピレン重合体が反応器内における重合によって直接的に調製できることを見出した。
【0004】
したがって、本発明の第一の目的は、狭分子量分布ポリプロピレンを提供することである。本発明に係る狭分子量分布ポリプロピレンの調製は過酸化物を用いないため、コストを低減することができ、また、製品は異臭がせず、分解プロセスによって得た狭分子量分布ポリプロピレンと比べて結晶化温度が高い。これによって、生成物の結晶化速度はより高くなり、成形加工サイクルは短くなり、成形効率が上がりやすくなる。また、本発明によって提供されるような狭分子量分布ポリプロピレンは、比較的高い調節可能なアイソタクチシティ、比較的高い融点および結晶化温度、より良いコストパフォーマンス、および、より広い応用性を有する。
【0005】
本発明の狭分子量分布ポリプロピレンは、分子量分布指数(多分散性指数)(Mw/Mn)が2.5〜5.5、好ましくは3.0〜4.9であり、分子量分布幅における高分子量テールの多分散性指数PIHTが1.9より大きく、好ましくは2.1より大きい。高分子量テールの多分散性指数PIHTは、本発明の狭分子量分布ポリプロピレンの重要な特徴の1つであり、この特徴によって、過酸化物分解によって得られる狭分子量分布ポリプロピレンとは区別される。PIHTが高ければ高いほど、ポリプロピレンに存在する高分子量テールが著しく高くなることを示しており、また、高分子量テールが高いと、結晶化の間において核が優先的に形成される。したがって、ポリプロピレンは、結晶化温度が高く、結晶化の速度が速くなる。それによって、成形加工サイクルが短くなり、成形効率が上がる。
【0006】
本発明の狭分子量分布ポリプロピレンは、85%より多い、好ましくは90%多い、さらに好ましくは93%より多い含有量において、アイソタクチックペンタド[mmmm]配列を有する。
【0007】
本発明の狭分子量分布ポリプロピレンは、プロピレンの2,1−挿入および1,3−挿入に起因する位置不規則性がない。一般的に、同一のアイソタクチシティを有するポリプロピレンにおいて位置不規則性が存在する場合、試料の融点が下がり、ひいては、使用温度などの性能にも影響する。
【0008】
本発明の狭分子量分布ポリプロピレンは、結晶化温度Tcが、113℃より高く、好ましくは115℃より高い。
【0009】
本発明の狭分子量分布ポリプロピレンは、キシレン可溶分が、4.4重量%未満、好ましくは2.3重量%未満、さらに好ましくは1.6重量%未満である。一般的に、キシレン可溶分が少ないほど、原料のアイソタクチシティは高くなり、剛性および耐熱性も向上する。さらに、食品、薬剤、または溶媒に接触するいくつかの原料は、キシレン可溶分が少なく、移動、溶解、または抽出された物質の含有量が低く、より安全で、より信頼性が高く適用することができる。
【0010】
狭分子量分布に基づいた本発明のポリプロピレンは、メルトフローレート(MFR)が、0.01〜1000g/10分、好ましくは1〜1000g/10分、さらに好ましくは1〜399g/10分、特に好ましくは10〜100g/10分である。一般的に、重合に連鎖移動剤を導入することによって、重合体の分子量分布を狭くすると考えられている。プロピレンの重合において、重合体の分子量およびメルトフローレートを調節するために、通常、連鎖移動剤として水素ガスが導入される。水素ガスの濃度が高ければ高いほど、得られる生成物の分子量は低くなり、メルトフローレートは高くなる。いくつかの研究では、ポリプロピレン用の高機能触媒のいくつかについて、得られる生成物の分子量分布幅が、加えられた水素ガスの濃度に反比例すると報告されている。これは、同一の狭分子量分布の場合は、高いメルトフローレートの試料よりも低いメルトフローレートの試料の方が、制御が難しいことを意味する。本発明は、メルトフローレートの点でも、ポリプロピレンの狭分子量分布の点でも要求を満たすことができるため、原料の処理および適用性の要求に適合している。
【0011】
本発明の狭分子量分布ポリプロピレンは、反応器における重合によって直接的に調製され、分子量分布が狭く、高分子量テールPIHTの多分散性指数が高い。
【0012】
本発明の第二の目的は、本発明の狭分子量分布ポリプロピレンを調製する方法を提供することであって、その方法は、
(1)チーグラーナッタ触媒の存在下においてプロピレンを前重合するステップ、
(2)ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下でプロピレンを重合するステップを含むものである。
【0013】
具体的には、この方法は、以下のステップ:
(1)気相または液相中、−10℃〜50℃、かつ0.1〜10.0MPaにおいて、チーグラーナッタ触媒の存在下でプロピレンを前重合し、プロピレンの前重合体を得るステップであって、前重合率は2〜3000g重合体/g触媒に制御され、好ましくは3〜2000g重合体/g触媒に制御されているステップ;
(2)上記ステップ(1)において得られたプロピレンの前重合体の存在下で、気相中、91〜150℃、好ましくは91〜110℃、かつ1.0〜6.0MPaにおいて、0.5〜4.0時間の重合時間でプロピレンを単独重合し、上記プロピレンの重合体を得るステップ、を含んでいる。
【0014】
本発明の上記ステップ(1)およびステップ(2)は、同一の反応器において非連続的に行われてもよく、また異なる反応器において連続的に行われてもよい。
【0015】
本発明の方法では、ステップ(1)において、前重合温度は−10℃〜50℃、好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは10〜25℃に制御される。前重合圧力は0.1〜10.0MPa、好ましくは1.0〜6.0MPa、さらに好ましくは1.5〜5.5MPaである。前重合は液相において行われることが好ましく、具体的にはプロピレンの液相バルク前重合として選択され得る。前重合率は、2〜3000g重合体/g触媒、好ましくは3〜2000g重合体/g触媒、さらに好ましくは3〜1000g重合体/g触媒に制御されている。
【0016】
本発明において、用語「前重合率」とは、最初に加えた触媒の重量に対する前重合体の重量の比を指す。一般的に、バッチ前重合の場合、前重合率は、前重合体の重量を直接測定し、その重量を、加えた触媒の重量で割ることによって求められる。連続前重合の場合は、前重合率は通常、反応の滞留時間および重合温度を調節することによって間接的に制御される。前重合の保持時間が同一であっても、異なる触媒、異なる重合温度、異なる重合形態(気相、液相バルクなど)、および異なる重合圧力の場合は、前重合率も異なり、触媒の反応速度曲線に従った積分計算によって求めることができる。
【0017】
本発明の方法において、ステップ(2)における重合は、ステップ(1)で得られた前重合体の存在下で行われる。重合温度は91〜150℃、好ましくは91〜110℃であり、重合圧力は1.0〜6.0MPaである。この重合は、気相でも液相においても行うことができるが、気相重合の工程であることが好ましい。具体的には、気相横型反応器内で行うことができ、反応器には横型のミキサーシャフトおよび熱を除去するために急冷液が入っており、撹拌速度は10〜150rpmであり、Tタイプ、矩形、傾きのあるパドル、ドアタイプ、V字形、およびそれらの任意の組み合わせから選ばれるタイプの混合羽根が取り付けられている。重合時間または滞留時間は、0.5〜4.0時間に制御することができる。重合体のメルトフローレートは、分子量調節剤(一般的には、H2)を用いて調節することができる。得られる重合体のMFRは、0.01〜1000g/10分、好ましくは1〜1000g/10分、好ましくは1〜399g/10分、さらに好ましくは10〜100g/10分に制御することができる。
【0018】
ステップ(2)における重合温度を変更することによって、立体規則性(タクティシティ)の高いポリプロピレン生成物を、制御された方法において得ることができ、狭分子量分布を達成することができる。
【0019】
本発明の方法において、チーグラーナッタ触媒は、当該技術分野において公知のチーグラーナッタ触媒の中から選ぶことができ、好ましくは以下の成分:
(1)チタン含有固体触媒成分;
(2)アルキルアルミニウム化合物
好ましくはさらに(3)外部電子供与体化合物;
の反応生成物を含む。
【0020】
成分(1)のチタン含有固体触媒成分は、アルコキシマグネシウム化合物とチタン化合物と内部電子供与体化合物とを接触させた反応生成物である。
【0021】
チタン化合物は、式(I)で表される少なくとも1つの化合物から選ばれる:
【0022】
【化1】
式(I)において、
RはC1−C14脂肪族ヒドロカルボニルおよび芳香族ヒドロカルボニルから選ばれ;
Xはハロゲンであり;
nは0〜4から選ばれる整数であり;
nが2と同じか2より小さい場合、R基は同じでも異なっていてもよい。
【0023】
ハロゲン原子は、塩素、臭素、またはヨウ素であり得る。チタン化合物は、具体的には、テトラアルコキシチタン、四ハロゲン化チタン、アルコキシチタン三ハロゲン化物、ジアルコキシチタン二ハロゲン化物、およびトリアルコキシチタン一ハロゲン化物のうち少なくとも1つから選ばれる。より具体的には、テトラアルコキシチタンは、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラシクロヘキシルオキシチタン、およびテトラフェノキシチタンのうち少なくとも1つから選ばれる。四ハロゲン化チタンは、四塩化チタン、四臭化チタン、および四ヨウ化チタンのうち少なくとも1つから選ばれる。アルコキシチタン三ハロゲン化物は、メトキシチタン三塩化物、エトキシチタン三塩化物、プロポキシチタン三塩化物、n−ブトキシチタン三塩化物、およびエトキシチタン三臭化物のうち少なくとも1つから選ばれる。ジアルコキシチタン二ハロゲン化物は、ジメトキシチタン二塩化物、ジエトキシチタン二塩化物、ジ−n−プロポキシチタン二塩化物、ジイソプロポキシチタン二塩化物、およびジエトキシチタン二臭化物のうち少なくとも1つから選ばれる。トリアルコキシチタン一ハロゲン化物は、トリメトキシチタン一塩化物、トリエトキシチタン一塩化物、トリ−n−プロポキシチタン一塩化物、およびトリイソプロポキシチタン一塩化物のうち少なくとも1つから選ばれる。四ハロゲン化チタン化合物が好ましく、四塩化チタンが特に好ましい。
【0024】
アルコキシマグネシウム化合物としては、式(II)で表される少なくとも1つの化合物から選ばれる:
【0025】
【化2】
式(II)において、R1およびR2は同じでも異なっていてもよく、それぞれ直鎖状または分枝状のC1−C8アルキル基の1つから選ばれ、0≦m≦2である。好ましくは、R1およびR2はそれぞれ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、および(2−エチル)ヘキシルであり、好ましくは、R1がエチル、R2が(2−エチル)ヘキシルであり、0.001≦m≦0.5、好ましくは0.001≦m≦0.25、さらに好ましくは0.001≦m≦0.1である。ただし、上記式(II)で表されるアルコキシマグネシウムは、様々なアルコキシ基の組成含有量、すなわち、モル比を表すだけであって、アルコキシマグネシウムの具体的な構造を完全に表しているわけではないことを特に記す。具体的には、例えば、Mg(OEt)(OiPr)は単にアルコキシマグネシウム化合物におけるエトキシとイソプロポキシとのモル比が1であることを示しているだけである。すなわち、Mg(OEt)(OiPr)は、モル比1のジエトキシマグネシウムとジイソプロポキシマグネシウムとの混合物、もしくはエトキシイソプロポキシマグネシウム化合物、またはこれら3つの化合物の混合物であってもよく、エトキシとイソプロポキシとの合計モル比が1になるいくつかの構造を有するアルコキシマグネシウム化合物からなる混合物であってもよい。ここで、Etはエチルを表し、iPrはイソプロピルを表す。
【0026】
アルコキシマグネシウム化合物は、球体状の外観であり、平均粒径(D50)が10〜150μm、好ましくは15〜100μm、さらに好ましくは18〜80μmであり、粒径分布指数SPAN<1.1であり、好ましくは粒径分布指数SPAN<1.05であり、SPANは、下記式(III):
【0027】
【数1】
によって算出される。
【0028】
式(III)において、D90は90%の累積重量分率に相当する粒径を表し、D10は10%の累積重量分率に相当する粒径を表し、D50は50%の累積重量分率に相当する粒径を表す。
【0029】
本発明に係るアルコキシマグネシウム化合物は、微量のハロゲン化マグネシウム(例えば、MgI2またはMgCl2)またはそのアルコラートを含有してもよいが、式(II)のマグネシウム化合物の含有量として表される純度は、90%より高い、好ましくは95%より高い、さらに好ましくは98%より高いものであることが望ましい。
【0030】
本発明に係るアルコキシマグネシウム化合物は、不活性ガス雰囲気下において、マグネシウム金属と、アルコキシ基に対応するアルコール(R1OH、R2OH)と、混合ハロゲン化剤とを反応させることによって調製される。ここで、マグネシウム金属と混合ハロゲン化剤におけるハロゲン原子とのモル比は1:0.0002〜1:0.2であり、好ましくは1:0.001〜1:0.08である。アルコールとマグネシウムとの重量比は4:1〜50:1、好ましくは6:1〜25:1であり、R1OHとR2OHとのモル比xは3(2−m)/m>x>(2−m)/mである。反応温度は、30〜90℃、好ましくは30〜80℃、さらには好ましくは50〜75℃である。反応時間は2〜30時間である。実際的の操作の際は、反応の間に生成される水素ガスの放出の終了を観察することによって、反応の終了を判断することができる。
【0031】
本発明に係るアルコキシマグネシウムの調製において、アルコール中の含水量は特に限定されないが、含水量は、得られるアルコキシマグネシウムがより良好なパフォーマンスをするためになるべく少なくすることが望ましい。アルコール中の含水量は、概して、1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に制御されている。本発明において、用いられているマグネシウムは、マグネシウム金属であり、マグネシウムに良好な反応性がある限りその形状は特に限定されず、例えば、顆粒状、リボン状、または粉状とすることができる。マグネシウム金属は、生成したアルコキシマグネシウムの平均粒径を適切な範囲内に保ち、良好な形態を有する粒子にするために、平均粒径が好ましくは10〜360μm、さらに好ましくは50〜300μmの球体状の粒子である。さらに、マグネシウム金属の表面は特に限定されていないが、マグネシウム金属の表面に形成されたヒドロキシドなどの被膜は反応を遅め得るため、活性マグネシウムの合計含量は、好ましくは95%を超える量(>95%)であり、さらに好ましくは98%を超える量(>98%)である。
【0032】
混合ハロゲン化剤はハロゲンとハロゲン化合物との組み合わせであってもよく、ハロゲンおよびハロゲン化合物は、ヨウ素、臭素、塩素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、エトキシマグネシウムヨウ化物、メトキシマグネシウムヨウ化物、イソプロピルマグネシウムヨウ化物、塩化水素、クロロアセチル塩化物などから選ぶことができるが、これらに限定されない。混合ハロゲン化剤は、好ましくはヨウ素と塩化マグネシウムとの組み合わせである。ヨウ素と塩化マグネシウムとの重量比は、好ましくは1:0.02〜1:20、さらに好ましくは1:0.1〜1:10である。
【0033】
不活性ガス雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気が好ましい。
【0034】
本発明に係るアルコキシマグネシウム化合物の調製において、ハロゲン化剤を加える方法は特に限定されず、アルコールに溶解して加えてもよいし、固体状または液体状でマグネシウム金属およびアルコールに直接加えてもよいし、マグネシウム金属およびアルコール溶液を熱している間にハロゲン化剤のアルコール溶液へ滴下して加えてもよく、それによってアルコキシマグネシウム化合物を担体として調製するための反応を行う。
【0035】
本発明に係るアルコキシマグネシウム化合物の調製には、マグネシウム金属、アルコール、ハロゲン化剤、および不活性な溶媒を初めに一度に加えてもよいし、バッチにおいて加えてもよい。出発原料をバッチにおいて加えると、多量の水素ガスの瞬間的な発生を防ぐことができ、水素ガスの瞬間的な発生によるアルコールまたはハロゲン化剤の蒸気を防ぐことができるため、このような方法で加えることが安全性および反応均一性の点から好ましい。バッチの回数は、反応器の大きさおよび種々の原料の量に応じて決定することができる。反応終了後、得られた最終生成物であるジアルコキシマグネシウムを、乾燥して保存しても良いし、次のステップにおいて触媒固形成分を調製するために用いられる不活性な希釈剤に懸濁してもよい。
【0036】
上記調製の間、不活性な有機溶媒を選択的に用いることができ、C6〜C10アルカンまたは芳香族化合物の少なくとも1つから選ぶことができ、好ましくはヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはそれらの誘導体などから選ぶことができる。
【0037】
内部電子供与体化合物は、式(IV)で表される少なくとも1つのジエーテル化合物から選ばれる:
【0038】
【化3】
式(IV)において、
1およびR2は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状、分枝状、および環式のC1−C20脂肪族基から選ばれ;
3、R4、R5、R6、R7、およびR8は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して水素、ハロゲン原子、ならびに直鎖状または分枝状のC1−C20アルキル、C3−C20シクロアルキル、C6−C20アリール、C7−C20アルキルアリール、およびC7−C20アリールアルキルから選ばれ、任意でR3〜R8は互いに結合して環を形成することができる。
【0039】
好ましくは、R1およびR2は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1−C6アルキルから選ばれ;R5およびR6は同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1−C10アルキルおよびC3−C10シクロアルキルから選ばれる。
【0040】
具体的な化合物は以下のとおりである:2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ジ(メトキシメチル)フルオレン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチルジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンなど。
【0041】
本発明に係る触媒固形成分の調製の際、アルコキシマグネシウム化合物におけるチタン化合物とマグネシウムとの使用量のモル比は、(0.5〜100):1であり、好ましくは(1〜50):1である。
【0042】
本発明に係る触媒固形成分の調製の際、アルコキシマグネシウム化合物における内部電子供与体化合物とマグネシウムとの量のモル比は、(0.005〜10):1であり、好ましくは(0.01〜1):1である。
【0043】
本発明に係る触媒固形成分の調製の際、アルコキシマグネシウム化合物、内部電子供与体化合物、およびチタン化合物をどのような方法で接触および反応させて触媒固形成分を調製してもよい。例えば、以下の方法によって調製することができる。
【0044】
方法1:
1.アルコキシマグネシウム担体、内部電子供与体、および不活性な希釈剤を懸濁液へと調合し、その後チタン化合物および不活性な希釈剤から形成される混合物と反応させ、濾過する;
2.得られた固体をチタン化合物と不活性な希釈剤との混合物に加え、さらに反応させて、濾過する;
3.ステップ2の反応を2回〜4回繰り返す;
4.上記固体を不活性な溶媒で洗浄し、触媒固形成分を得る。
【0045】
方法2:
1.アルコキシマグネシウム担体、内部電子供与体の一部、および不活性な希釈剤を懸濁液へと調合し、その後チタン化合物および不活性な希釈剤から形成される混合物と反応させ、濾過する;
2.得られた固体をチタン化合物と不活性な希釈剤と残りの内部電子供与体との混合物に加え、さらに反応させて、濾過する;
3.得られた固体をさらに上記チタン化合物と不活性な希釈剤との混合物に加え、さらに反応させて、濾過する;
4.ステップ3の反応を2回〜4回繰り返す;
5.上記固体を不活性な溶媒で洗浄し、触媒固形成分を得る。
【0046】
方法3:
1.アルコキシマグネシウム担体および不活性な希釈剤を懸濁液へと調合し、チタン化合物および不活性な希釈剤から形成される混合物と反応させ、電子供与体化合物と共に加えてさらに反応させて、濾過する;
2.得られた固体をチタン化合物と不活性な希釈剤との混合物に加え、さらに反応させて、濾過する;
3.ステップ2の反応を2回〜4回繰り返す;
4.上記固体を不活性な溶媒で洗浄し、触媒固形成分を得る。
【0047】
方法4:
1.アルコキシマグネシウム担体、内部電子供与体の一部、および不活性な希釈剤を懸濁液へと調合し、チタン化合物および不活性な希釈剤から形成される混合物と反応させ、残りの電子供与体化合物と共に加えてさらに反応させて、濾過する;
2.得られた固体をチタン化合物と不活性な希釈剤との混合物に加え、さらに反応させて、濾過する;
3.ステップ2の反応を2回〜4回繰り返す;
4.上記固体を不活性な溶媒で洗浄し、触媒固形成分を得る。
【0048】
本発明に係る触媒固形成分の調製の際、不活性な希釈剤の量とアルコキシマグネシウム化合物におけるマグネシウムの量とのモル比は、(0.5〜100):1とすることができ、好ましくは(1〜50):1である。不活性な希釈剤はトルエンであることが好ましい。
【0049】
本発明に係る触媒固形成分の調製の際、アルコキシマグネシウム担体、内部電子供与体化合物、不活性な希釈剤、およびチタン化合物は、以下の条件下で反応させることが好ましい:反応温度は−40〜200℃、好ましくは−20〜150℃、反応時間は1分間〜20時間、好ましくは5分間〜8時間。
【0050】
本発明に係る触媒固形成分の調製の際、アルコキシマグネシウム担体、内部電子供与体化合物、不活性な希釈剤、およびチタン化合物を加える順序は特に限定されず、例えば、これらの成分を不活性な希釈剤の存在下で混合してもよいし、不活性な希釈剤で先に希釈してから混合してもよい。混合の回数は特に限定されず、一度に混合してもよいし、数回に分けて混合してもよい。
【0051】
本発明に係る触媒固形成分の調製の際、洗浄に使用する不活性な溶媒は、ヘキサンであることが好ましい。洗浄方法は特に限定されないが、好ましくはデカンテーション、濾過などであり得る。不活性な溶媒の使用量、洗浄時間、洗浄回数に特定の限定はない。1モルのマグネシウムに相当する化合物には、溶媒は通常1〜1000モルの量において用いられ、好ましくは10〜500モルであり、洗浄は通常1〜24時間行われ、好ましくは6〜10時間行われる。さらに、洗浄の均一性および効率の点から、洗浄の間は撹拌が行われていることが好ましい。
【0052】
本発明に係る触媒の成分(2)は、式(V)で表されるアルキルアルミニウム化合物(R’は水素または1〜20の炭素原子を有するヒドロカルボニルであり、X’はハロゲンであり、n’は1〜3の整数である)であり;具体的には、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウム一水素化物、ジイソブチルアルミニウム一水素化物、ジエチルアルミニウム一塩化物、ジイソブチルアルミニウム一塩化物、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウム二塩化物から選ぶことができ、好ましくはトリエチルアルミニウム、またはトリイソブチルアルミニウムである。
【0053】
【化4】
本発明に係るプロピレン重合触媒において、外部電子供与体成分は、当該技術分野において公知の全ての種類の外部電子供与体であり得、特に限定されない。好ましくは、式(VII)で表される有機ケイ素化合物である:
【0054】
【化5】
式(VII)において、
1''およびR2''は同じでも異なっていてもよく、それぞれハロゲン、水素原子、1〜20の炭素原子を有するアルキル、3〜20の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜20の炭素原子を有するアリール、および1〜20の炭素原子を有するハロゲン化アルキルのうちの1つであり;R3''は、1〜20の炭素原子を有するアルキル、3〜20の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜20の炭素原子を有するアリール、および1〜20の炭素原子を有するハロゲン化アルキルのうちの1つであり;m''およびn''はそれぞれ0〜3の整数であり、m''+n''<4である。有機ケイ素化合物の具体例は、トリメチルメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチルプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシル−tert−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジ(2−メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、イソペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランなどであり得る。これらの有機ケイ素化合物は単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いることもできる。さらに好ましくは、外部電子供与体としての化合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−tert−ブチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、およびイソブチルトリエトキシシランの少なくとも1つを含む。
【0055】
アルキルアルミニウム化合物の使用量は、当該技術分野における従来的な量であり得る。概して、アルキルアルミニウム化合物におけるアルミニウムと触媒固形成分におけるチタンとのモル比は、20〜500:1であり、好ましくは50〜500:1であり、さらに好ましくは25〜100:1である。
【0056】
本発明に係るプロピレン重合触媒において、外部電子供与体の使用量は特に限定されない。好ましい形態では、アルキルアルミニウム化合物におけるアルミニウムと外部電子供与体におけるケイ素とのモル比は、0.1〜500:1であり、好ましくは1〜200:1であり、さらに好ましくは3〜100:1である。
【0057】
ポリプロピレンを調製するステップ(2)において重合温度を上昇させることによって、本発明に係る方法は、狭分子量分布で良好なH調節感度のポリプロピレンを製造することができ、それによって、高いアイソタクチシティおよびより高い流動性をもって製品を製造することができる。外部電子供与体を加えることによって、該調製方法において得られる重合体生成物は、キシレン可溶分が著しく減少する。それと同時に、本発明の方法は、前重合後に高い重合温度で使用する場合に比較的に高い重合活性をなお有する特定の種類の触媒を使用することがさらに好ましい。したがって、本発明に係る方法は、産業分野において伸展および適用される見込みが高い。
【0058】
本発明の狭分子量分布ポリプロピレンは、スピニング、薄膜注入、およびキャスティングのプロセス、ならびに透明材料の調製などにおいて用いられ得る。
【0059】
〔実施例〕
本発明を、以下の実施例を参照してさらに説明する。本発明の保護範囲は、これら実施例に限定されず、添付の特許請求の範囲に規定されている。
【0060】
実施例を含む本明細書に開示されているパラメータまたはデータは、以下の測定方法に従って測定された。
【0061】
1.分子量分布幅指数 Mw/Mn:
試料の分子量分布を、PL−GPC220ゲル浸透クロマトグラフ(ポリマーラボラトリーズ社製、イギリス)とIR5赤外線検出器とを組み合わせて用いることによって測定した。Plgel 10μm MIXED−Bカラム3本を、カラム温度150℃で、連続的に用いた。1,2,4−トリクロロベンゼン(0.3g/1000mLの抗酸化剤2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを含有)を、溶媒および移動相として用い、流速は1.0mL/分であった。全測定は、狭分布ポリスチレン標準であるEasiCal PS−1(PL社製)を用いて行った。
【0062】
2.分子量分布幅における高分子量テールの多分散性指数PIHT
ピーク分子量Mp、重量平均分子量Mw、およびZ平均分子量Mzを上記方法1に従って測定した。単位はg/モルであり、式(1)を算出に用いた:
【0063】
【数2】
3.ペンタド[mmmm]含量の測定:
13C−NMRスペクトルでは、19.5〜22.5ppmの化学シフトを有するメチルカーボン領域がタクティシティ情報を比較的高精度で提供することができるため、この領域の測定結果を、[mmmm]アイソタクチシティを算出するために用いた。等式(2)を参照:
【0064】
【数3】
ここで、[mm]、[mr]、[rr]はそれぞれ、トリアドアイソタクチック、アイソタクチック−シンジオタクチック、シンジオタクチック−シンジオタクチックの含量を表しており、これらは上記スペクトルから簡単に算出することができる。
【0065】
測定は、400MHz核磁気共鳴分光計(NMR)Mode AVANCE III(Bruker社製、スイス)を用いて行った。溶媒は重水素化されたo−ジクロロベンゼンであり、250mg試料/2.5mL溶媒とした。溶解時およびデータ収集時の試料の酸化分解を防ぐために、2mgのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)抗酸化剤を試料に加えた。試料は140℃で溶解し、13C−NMR収集は、試験温度125℃で、10mmの仕様の検出ヘッドを用い、90°パルスで、サンプリング時間AQは5秒、遅延時間D1は1秒、およびスキャン回数が6000回の条件で行われた。スペクトルのピークの同定等に関して、さらに詳しくは参考文献(1)Hansen E W, Redford K. Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy of Polypropylene Homopolymers. In: Karger-Kocsis J, ed. Polypropylene: A-Z Reference. Dordrecht: Kluwer Publishers, 1999: 540-544;参考文献(2)Zambelli A, Macromolecules Vol. 8, No. 5, 1975: 687-688に記載されている。
【0066】
4.プロピレンの2,1−挿入および1,3−挿入に起因する位置不規則性の検出:
いくつかの触媒の存在下において、プロピレンモノマー重合時に起こるモノマーの「2,1」挿入および/または「1,3」挿入は、分子鎖構造のタクティシティの破壊を引き起こす。それによる欠陥構造を本書では「位置不規則性」と総称する。アイソタクチックなポリプロピレンの局所的な欠陥構造は、以下の構造的構成を有する:
【0067】
【化6】
13C−NMR分析によって、「2,1」挿入および「1,3」挿入の発生頻度を、さらに算出することができた。すなわち:
【0068】
【数4】
13C−NMRの試験条件は、方法3の場合と同様であり、スペクトルのピークおよびデータ処理の識別などさらに詳細な情報は、参考文献(1)Grassi A, Zambelli A. Macromolecules, 1988, 21: 617-622、参考文献(2)Tsutsui T, Ishimaru N, Mizuno A, et al. Polymer, 1989, 30: 1350-1356に記載されている。
【0069】
5.TREF(温度上昇溶離分別)可溶性画分SFの測定:
測定には、TREF−300 Analyzer(Poly CHAR社製)を用い、具体的なプロセスは以下のとおりである:試料80mgを量り、0.3%BHTを含む40mLのTCB(トリクロロベンゼン)溶媒に60分間、150℃で溶解させ、均一な溶液が形成するよう当該試料を十分に溶解させた。20mLの溶液をカラムに供給し、0.2℃/分の速度で35℃まで冷却したところ、結晶化キャパシティに従って温度を下げる間に、当該試料が徐々に結晶化し、分離し、カラムに沈殿した。10分間、35℃を保った後、温度を1.0℃/分の速度で140℃まで上昇させ、溶離を行った。溶離の間、溶媒ポンプにおける流速を0.5mL/分に制御し、溶解した試料を溶媒によって連続的に溶離し、試料の溶離と温度との相関を記録した。35℃における溶離液の含有率を、可溶性画分SFとして記録した。
【0070】
6.結晶化温度Tcの測定:
DIAMOND Mode DSC(PE社製)を用い、計器は金属インジウムおよび亜鉛標準で較正し、試料の重量は約5mgであり、雰囲気は窒素ガスであり、ガスフローは20mL/分であった。試験される特定の抗酸化剤含有試料を10℃/分の速度で210℃まで温め、熱履歴を除去するために5分間一定に保ち、次いで10℃/分の速度で50℃まで冷却した。結晶化発熱曲線を記録し、結晶化発熱曲線のピークに対応する温度を、結晶化温度Tcとして記録した。
【0071】
7.キシレン可溶分の測定:
測定は、ASTM D5492−98に従って行った。
【0072】
8.メルトフローレートMFR:
測定は、ISO 1133に従って、230℃、2.16kg負荷で行った。
【0073】
9.触媒固形成分およびプロピレン重合触媒成分におけるチタン原子の含有量は、分光光度計721(Anhemeng(Tianjin)Sci&Tech Development社製)を用いて測定した。
【0074】
10.アルコキシマグネシウムおよび触媒の粒径および粒径分布は、Malvern Mastersizer TM 2000レーザー回折方法を用いて測定し、n−ヘキサンを分散剤として用いた(ここでは、SPAN=(D90−D10)/D50)。
【0075】
11.担体のm値の測定:
担体0.1gを取り、1.2モル/L塩酸水溶液10mLに加え、24時間振とうすることによって分解し、その中のエタノールおよび2−エチルヘキサノールの含量を、ガスクロマトグラフィを用いて定量し、次いでm値を下記式に従って算出した:
【0076】
【数5】
ここで、w1は2−エチルヘキサノールの質量、およびw2はエタノールの質量である。
【0077】
12.プロピレン重合触媒成分における内部電子供与体の含量は、Waters 600E 液体クロマトグラフまたはガスクロマトグラフを用いて測定した。
【0078】
<実施例1>
1)出発原料:
メインの触媒の調製:
耐圧性の攪拌器付きの反応器(16L)を窒素ガスで十分に置換し、エタノール10L、2−エチルヘキサノール300mL、ヨウ素11.2g、塩化マグネシウム8g、およびマグネシウム粉末640gを加えた。それらを撹拌しながら、水素ガスが放出されなくなるまで、還流下で反応させるために系の温度を75℃まで上昇させた。反応が終了し、3Lのエタノールを用いて洗浄し、濾過および乾燥後、球体状の微粒子であるジアルコキシマグネシウム担体を得た。当該ジアルコキシマグネシウム担体は、D50=30.2μm、スパン値は0.81、m値は0.015であった。650gのジアルコキシマグネシウム担体、3250mLのトルエン、および65mLの2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンを懸濁液へと調合した。高純度窒素ガスと繰り返し置換した耐圧性の反応器(16L)に、2600mLのトルエンおよび3900mLの四塩化チタンを加え、80℃に熱した。次いで、上記調合した懸濁液を反応器に加え、1時間温度を保ち、65mLの2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンを加え、110℃までゆっくりと上昇させ、そのままさらに2時間温度を保ち、加圧濾過して固体にした。得られた固体を5070mLのトルエンおよび3380mLの四塩化チタンの混合液に加え、110℃で1時間撹拌処理した。この処理を3回繰り返した。加圧濾過後、得られた固体を1回につき600mLのヘキサンで4回洗浄し、加圧濾過し、乾燥し、メインの触媒固形成分を得た。得られた触媒固形成分は、チタン原子含量4.1重量%、および2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン含量11.9%であった。
【0079】
トリエチルアルミニウムを助触媒として用いた。重合グレードにおけるプロピレンおよび水素ガスを、使用前に脱水および酸素除去に供し、ヘキサンを使用前に供した。
【0080】
2)実験装置
実験装置は、連続前重合反応器と横型気相反応器とを連続的に用いる重合工程を行うものであった。前重合反応器は、縦型のジャケット冷却撹拌容器(容量5L)であり、使用した撹拌羽根はタービンタイプの傾きのあるパドルで、撹拌速度は500rpmであった。横型気相反応器は、容量が0.2m3の横型撹拌容器であり、使用した撹拌羽根はTタイプの傾きのあるパドルで、傾きの角度は10°、撹拌速度は100rpmだった。
【0081】
3)実験条件:
ステップ(1)の前重合:
反応圧力は2.5MPaであり、反応温度は10℃であり、反応滞留時間は12分間であった。メインの触媒は0.4g/時間、トリエチルアルミニウムは0.058モル/時間の速度でそれぞれ供給され、プロピレンは10kg/時間の速度で供給された。前重合率は65であった。
【0082】
ステップ(2)の気相重合:
反応温度は98℃であり、反応圧力は2.3MPaであり、反応滞留時間は60分間であった。プロピレンは30kg/時間の速度で供給され、水素ガスは0.24g/時間の速度で供給された。反応気相における水素ガス/プロピレンのモル比は、0.005であった。
【0083】
4)実験結果
実験は、上記の条件で48時間連続して行われた。装置の動作は安定していた。反応で得られた重合体を分析し、測定し、その結果を表1に示した。
【0084】
<実施例2>
1)出発原料(実施例1と同様)
2)実験装置(実施例1と同様)
3)実験条件
ステップ(1)の前重合:
反応圧力は2.5MPaであり、反応温度は10℃であり、反応時間は12分間であった。メインの触媒は0.4g/時間、トリエチルアルミニウムは0.058モル/時間の速度でそれぞれ供給された。プロピレンは10kg/時間の速度で供給された。前重合率は65であった。
【0085】
ステップ(2)の気相重合:
反応温度は91℃であり、反応圧力は2.3MPaであり、反応時間は60分間であった。プロピレンは30kg/時間の速度で供給された。水素ガスは0.4g/時間の速度で供給された。反応気相における水素ガス/プロピレンのモル比は0.008であった。
【0086】
4)実験結果
実験は、上記の条件で48時間連続して行われた。装置の動作は安定していた。反応で得られた重合体を分析し、測定し、その結果を表1に示した。
【0087】
<実施例3>
1)出発原料(実施例1と同様)
2)実験装置(実施例1と同様)
3)実験条件
ステップ(1)の前重合:
反応圧力は2.5MPaであり、反応温度は10℃であり、反応時間は12分間であった。メインの触媒、トリエチルアルミニウム、およびジシクロペンチルジメトキシシランDCPDMS(いわゆる「Dドナー」)は、それぞれ1.1g/時間、0.051モル/時間、0.0082モル/時間の速度で供給された。Al/Si(モル/モル)=6.2であった。プロピレンは10kg/時間の速度で供給された。前重合率は90であった。
【0088】
ステップ(2)の気相重合:
反応温度は98℃であり、反応圧力は2.3MPaであり、反応時間は60分間であった。プロピレンは30kg/時間の速度で供給された。水素ガスは0.6g/時間の速度で供給された。反応気相における水素ガス/プロピレンのモル比は0.012であった。
【0089】
4)実験結果
実験は、上記の条件で48時間連続して行われた。装置の動作は安定していた。反応で得られた重合体を分析し、測定し、その結果を表1に示した。
【0090】
<実施例4>
1)出発原料(実施例1と同様)
2)実験装置(実施例1と同様)
3)実験条件
ステップ(1)の前重合:
反応圧力は2.5MPaであり、反応温度は10℃であり、反応時間は12分間であった。メインの触媒、トリエチルアルミニウム、およびジイソブチルジメトキシシラン(DIBDMS、いわゆる「Bドナー」)は、それぞれ1.0g/時間、0.054モル/時間、0.0087モル/時間の速度で供給された。Al/Si(モル/モル)=6.2であった。プロピレンは10kg/時間の速度で供給された。前重合率は80であった。
【0091】
ステップ(2)の気相重合:
反応温度は91℃であり、反応圧力は2.3MPaであり、反応時間は60分間であった。プロピレンは30kg/時間の速度で供給された。水素ガスは0.75g/時間の速度で供給された。反応気相における水素ガス/プロピレンのモル比は0.015であった。
【0092】
4)実験結果
実験は、上記の条件で48時間連続して行われた。装置の動作は安定していた。反応で得られた重合体を分析し、測定し、その結果を表1に示した。
【0093】
<比較例1>
1)出発原料(実施例1と同様)
2)実験装置(実施例1と同様)
3)実験条件
ステップ(1)の前重合:
反応圧力は2.5MPaであり、反応温度は10℃であり、反応時間は12分間であった。メインの触媒およびトリエチルアルミニウムは、それぞれ0.4g/時間、0.058モル/時間の速度で供給された。プロピレンは10kg/時間の速度で供給された。前重合率は65であった。
【0094】
ステップ(2)の気相重合:
反応温度は66℃であり、反応圧力は2.3MPaであり、反応時間は60分間であった。プロピレンは30kg/時間の速度で供給された。水素ガスは1.25g/時間の速度で供給された。反応気相における水素ガス/プロピレンのモル比は0.025であった。
【0095】
4)実験結果
実験は、上記の条件で48時間連続して行われた。装置の動作は安定していた。反応で得られた重合体を分析し、測定し、その結果を表1に示した。
【0096】
<比較例2>
1)出発原料(実施例1と同様)
2)実験装置(実施例1と同様)
3)実験条件
ステップ(1)の前重合:
反応圧力は2.5MPaであり、反応温度は10℃であり、反応時間は12分間であった。メインの触媒、トリエチルアルミニウム、およびジシクロペンチルジメトキシシランDCPDMS(いわゆる「Dドナー」)は、それぞれ1.1g/時間、0.051モル/時間、0.0082モル/時間の速度で供給された。Al/Si(モル/モル)=6.2であった。プロピレンは10kg/時間の速度で供給された。前重合率は90であった。
【0097】
ステップ(2)の気相重合:
反応温度は66℃であり、反応圧力は2.3MPaであり、反応時間は60分間であった。プロピレンは30kg/時間の速度で供給された。水素ガスは2.5g/時間の速度で供給された。反応気相における水素ガス/プロピレンのモル比は0.05であった。
【0098】
4)実験結果
実験は、上記の条件で48時間連続して行われた。装置の動作は安定していた。反応で得られた重合体を分析し、測定し、その結果を表1に示した。
【0099】
<比較例3>
1)出発原料(実施例1と同様)
2)実験装置(実施例1と同様)
3)実験条件
前重合をせずに、触媒を直接、気相反応器に加えた。メインの触媒は0.4g/時間、トリエチルアルミニウムは0.058モル/時間の速度でそれぞれ供給された。気相重合温度は98℃であり、反応圧力は2.3MPaであり、反応時間は60分間であった。プロピレンは30kg/時間の速度で供給された。水素ガスは0.24g/時間の速度で供給された。反応気相における水素ガス/プロピレンのモル比は0.005であった。
【0100】
4)実験結果
実験は、上記の条件で行われた。重合活性は極めて低かった。結果を表1に示した。
【0101】
<比較例4>
高流動性と狭分子量分布を有する市販のポリプロピレン製品(H30Sの銘柄)を、過酸化物(Zhenhai Oil Refining and Chemical社製)を用いて分解することによって調製した。
【0102】
【表1】
表1のデータから下記のことがわかる。
【0103】
1.本発明に従って調製された狭分子量分布ポリプロピレンは、比較的高いアイソタクチシティを有しており、求める条件に応じて反応条件を調節することによって、複数の異なったアイソタクチシティを有するポリプロピレンを得ることができる。これらポリプロピレンには、プロピレンの2,1−挿入および1,3−挿入などに起因する位置不規則性がない。
【0104】
2.本発明の狭分子量分布ポリプロピレンと比較例4のポリプロピレンとを比較すると、重量平均分子量と数平均分子量との比として表される分子量分布幅は、分解プロセスの狭分子量分布のレベルと等しいかそれよりも大きくなる。同時に、本発明の生成物は直接重合によって得ることができ、分解を必要とないため、低コスト、環境保全、および省エネルギーを達成する。分子量分布幅における高分子量テールの多分散性指数PIHTは、分解プロセスの多分散性指数とは顕著に異なっているため、本発明のポリプロピレンの結晶化温度が分解プロセスにおける狭分子量分布ポリプロピレンよりも高いことは明らかである。これは、本発明のポリプロピレンが、分解プロセスに比べて成形サイクルが短く、成形効率を効果的に向上することができるということを示している。
【0105】
3.比較例1の結果は以下のことを示している:従来の重合によって66℃で得られた重合体生成物は、分子量分布が広い。比較例1と比較すると、本発明の狭分子量分布ポリプロピレン(実施例1および実施例2)の調製方法によって、狭分子量分布および良好なH−調節感度を有する重合体生成物を得ることができ、得られた重合生成物はキシレン可溶分が少なくなる。
【0106】
4.外部電子供与体の添加をせずに得た重合体と比較すると、外部電子供与体を添加して得た重合体(実施例3および実施例4)は、アイソタクチシティが著しく向上し、キシレン可溶分が著しく減少している。比較例2と比較すると、本発明の実施例3および実施例4におけるポリプロピレンは、より狭い分子量分布およびより良好なH−調節感度を有しており、得られた重合生成物はキシレン可溶分がより少なくなる。
【0107】
5.比較例3の結果は、前重合ステップなし、98℃という比較的高い温度での直接重合が、3000回しか重合活性を示さず、商業的な利用価値がないことを示している。