(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材の中に1つまたは複数の進入穴を形成する工程をさらに含み、各々の進入穴が、前記溝のうちの1つを前記それぞれの内部空間と流体連絡で接続する、請求項1に記載の方法。
前記基材の前記表面の少なくとも一部分上にコーティングを配置する工程をさらに含み、前記溝および前記コーティングが共に、前記構成部品を冷却するための1つまたは複数のリエントラント形状のチャネルを画定する、請求項1に記載の方法。
前記コーティングが、少なくとも1つの構造的コーティングと、追加的コーティングとを備え、各々の溝が、前記構造的コーティングの中に少なくとも部分的に形成される、請求項6に記載の方法。
外側表面と内側表面を有する基材であって、前記内側表面が少なくとも1つの内部空間を画定し、前記外側表面が1つまたは複数の溝を画定しており、各々の溝が、全体として涙型の溝を画成するように丸められた基部を含み、かつ、前記基材の前記表面に少なくとも部分的に沿って延び、その開口で狭まることによって各々の溝がリエントラント形状の溝を含み、各々の溝の断面積Aが、R=W*Dの面積のおよそ2倍からおよそ3倍の範囲内であり、ここでWは、前記リエントラント形状の溝の前記開口の幅であり、Dは、前記リエントラント形状の溝の深さである基材と、
前記基材の前記外側表面の少なくとも一部分上に配置された少なくとも1つのコーティングであって、前記溝および前記コーティングが共に、構成部品を冷却するための1つまたは複数のリエントラント形状のチャネルを画定するコーティングとを備える構成部品。
前記基材の中に1つまたは複数の進入穴が形成され、各々の進入穴が、前記それぞれの溝を前記それぞれの内部空間と流体連絡で接続する、請求項10に記載の構成部品。
前記基材の中に1つまたは複数の進入穴が形成され、各々の進入穴が、前記それぞれの溝を前記それぞれの内部空間と流体連絡で接続する、請求項17に記載の構成部品。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンでは、空気が圧縮機内で圧縮され、高温の燃焼ガスを発生させるために燃焼器内で燃料と混合される。そのガスから、圧縮機を駆動する高圧タービン(HPT)内で、また航空機のターボファンエンジン用途ではファンを駆動し、または海運および工業用途では外部シャフトを駆動する低圧タービン(LPT)内で、エネルギーが抽出される。
【0003】
エンジン効率は燃焼ガスの温度と共に上昇する。しかしながら、燃焼ガスはその流路に沿って様々な構成部品を加熱し、これは、許容できる長いエンジン寿命を達成するためにこれらの構成部品を冷却することを必要とする。通常、高温ガス経路の構成部品は、圧縮機から空気を流すことによって冷却される。この冷却処理は、流出ガスが燃焼過程に使用されないのでエンジン効率を下げる。
【0004】
ガスタービンエンジンの冷却技術は成熟しており、様々な高温ガス経路の構成部品における冷却用回路および特徴の様々な態様のための数多くの特許を含む。例えば、燃焼器は半径方向で外側と内側のライナを含み、これらは運転中に冷却を必要とする。タービンノズルは外側と内側のバンドの間に支持される中空のベーンを含み、これもやはり冷却を必要とする。タービンのロータブレードは中空であり、通常ではその中に冷却用回路を含み、これらのブレードはやはり冷却を必要とするタービンシュラウドによって取り囲まれる。高温の燃焼ガスは、やはり裏張りされて適切に冷却することができる排気口を通じて吐出される。
【0005】
これらの例示的なガスタービンエンジン構成部品の全てにおいて、構成部品重量を減らしてその冷却の必要性を最少にするために高強度の超合金金属の薄壁が通常では使用される。エンジン内のそれぞれ対応する環境にあるこれら個々の構成部品のために、様々な冷却用回路および特徴が調整される。例えば、一連の内部冷却用通路または屈曲通路が高温ガス経路の構成部品に形成されてもよい。冷却用流体はプレナムからこれら屈曲通路に供給されてもよく、冷却用流体は通路を通って流れて高温ガス経路の構成部品の基材およびいずれかの付随するコーティングを冷却してもよい。しかしながら、この冷却策は通常、比較的低い熱伝達率および不均一な構成部品温度プロファイルという結果につながる。
【0006】
マイクロチャネル冷却は、加熱された領域に可能な限り近接して冷却を設け、それにより所与の熱伝達率について主要な耐荷基材材料の高温側と低温側との間の温度差を減少させることによって、冷却要件を大幅に低減する可能性を有する。しかしながらマイクロチャネルを形成するための現行の技術は、犠牲となる充填物を使用することで、マイクロチャネル内にコーティングが堆積しないようにし、堆積する際にコーティングを支えるだけでなく、コーティングシステムが堆積した後、犠牲となる充填物を除去する必要があるのが典型的である。しかしながら一時的な材料によるチャネルの充填、およびその後の材料の除去は共に、現行のマイクロチャネル加工処理技術に関する潜在的な問題を提示している。例えば充填材は、基材およびコーティングと適合可能である必要があり、さらに収縮度は最小限であるが十分な強度を有する必要もある。犠牲となる充填物の除去には、抽出、エッチングまたは気化という、損傷させる可能性がある工程が伴い、通常、長時間を要する。残留した充填材の材料もまた問題である。
【0007】
したがって、高温ガス経路の構成部品内に、充填および除去工程の必要性をさらになくす冷却チャネルを形成するための方法を提供することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書の「第1」、「第2」などの用語はいずれかの順序、量、または重要性を意味するものではなく、むしろ1つの要素を他から区別するために使用される。本明細書の「1つの」(「a」および「an」)という用語は量の限定を意味するものではなく、言及された事物が少なくとも1つ存在することを意味する。量に結び付けて使用される修飾語句「約」は述べられた値を包含し、前後関係によって指示される意味を有する(例えば、特定の量の測定に付随する誤差の程度を含む)。さらに、「組み合わせ」という用語は配合、混合、合金、反応生成物などを包含する。
【0015】
さらに、本明細書では、(1つまたは複数の)(接尾辞「(s)」)は通常、それが修飾する用語の単数形と複数形の両方を含み、したがってその用語の1つまたは複数を含むことを意図する(例えば「通過穴」は別途特定しない限り1つまたは複数の通過穴を含み得る)。「一実施形態」、「他の実施形態」、「或る実施形態」などへの本明細書全体にわたる言及は、その実施形態と結び付けて述べられる特定の要素(例えば特徴、構造、および/または特性)が本明細書に述べられる少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態に有っても無くてもよいことを意味する。同様に、「特定の構成」という言及はその構成と結び付けて述べられる特定の要素(例えば特徴、構造、および/または特性)が本明細書に述べられる少なくとも1つの構成の中に含まれ、他の構成の中に有っても無くてもよいことを意味する。さらに、述べられる発明性のある特徴が様々な実施形態および構成でいずれの適切な方式で組み合わされてもよいことは理解されるはずである。
【0016】
図1はガスタービンシステム10の概略図である。このシステム10は1つまたは複数の圧縮機12、燃焼器14、タービン16、および燃料ノズル20を含んでもよい。圧縮機12およびタービン16は1つまたは複数のシャフト18によって連結されてもよい。
【0017】
ガスタービンシステム10はいくつかの高温ガス経路の構成部品100を含んでよい。高温ガス経路の構成部品は、システム10を通る高い温度のガスの流れに少なくとも部分的に曝露されるシステム10のいずれかの構成部品である。例えば、バケットアセンブリ(ブレードまたはブレードアセンブリとしても知られる)、ノズルアセンブリ(ベーンまたはベーンアセンブリとしても知られる)、シュラウドアセンブリ、トランジションピース、保持リング、およびタービン排気構成部品は全て高温ガス経路の構成部品である。しかしながら、本発明の高温ガス経路の構成部品100が上記の実例に限定されず、高い温度のガスの流れに少なくとも部分的に曝露されるいずれの構成部品であってもよいことを理解されたい。さらに、本開示の高温ガス経路の構成部品100がガスタービンシステム10の構成部品に限定されず、高い温度の流れに曝露されるいずれかの機械装置またはその構成部品であってもよいことを理解されたい。
【0018】
高温ガス経路の構成部品100が高温ガスの流れに曝露されると、高温ガス経路の構成部品100は高温ガスの流れによって加熱され、高温ガス経路の構成部品100が大幅に劣化または故障する温度に到達する可能性がある。したがって、システム10が、システム10の所望の効率、性能および/または寿命を達成するために必要な高い温度の高温ガス流で動作することを可能にするために、高温ガス経路の構成部品100のための冷却システムが必要とされる。
【0019】
一般的に、本開示の冷却システムは高温ガス経路の構成部品100の表面に形成された一連の小チャネルまたはマイクロチャネルを含む。工業的規模の動力発生タービン構成部品については、「小」または「マイクロ」チャネルの寸法は0.25mmから1.5mmの範囲のおよその深さと幅を包含すると考えられ、その一方で航空機産業規模のタービン構成部品のチャネル寸法は0.1mmから0.5mmの範囲のおよその深さと幅を包含することになる。高温ガス経路の構成部品は保護コーティングを施されてもよい。冷却用流体はプレナムからチャネルへ供給されてもよく、冷却用流体はチャネルを通って流れて高温ガス経路の構成部品を冷却してもよい。
【0020】
図2〜15を参照して製造方法が述べられる。例えば
図2に示されるように、この方法は、少なくとも1つの内部空間114を有する基材110を含む構成部品100を製造することを目的としている。基材110は通常では(1つまたは複数の)溝132を形成する前に鋳造される。本願明細書にその全体が参照によって組み入れられるMelvin R.Jacksonらの米国特許第5,626,462号、“Double−wall airfoil”で検討されるように、基材110はいずれの適切な材料から形成されてもよい。構成部品100について意図される用途に応じて、これはNi主成分、Co主成分、およびFe主成分の超合金を含み得る。Ni主成分の超合金はγ相とγ’相の両方を含むもの、特に、γ’相が超合金の体積で少なくとも40%を占めるγ相とγ’相の両方を含むものであってよい。そのような合金は、高温強度および高温クリープ耐性を含む望ましい特性が組み合わせられているため好都合であることが知られている。基材材料はまたNiAlの金属間合金を含んでもよく、その理由は、これらの合金もまた、航空機に使用されるタービンエンジン用途での使用に好都合である、高温強度および高温クリープ耐性を含む優れた特性の組み合わせを有することが知られているからである。Nb主成分合金の事例では、優れた抗酸化性を有するコーティングされたNb主成分合金が好ましく、特に、Nb−(27〜40)Ti−(4.5〜10.5)Al−(4.5〜7.9)Cr−(1.5〜5.5)Hf−(0〜6)Vを含む合金が好ましく、ここで組成範囲の単位は原子パーセントである。基材材料はケイ化物、炭化物、またはホウ化物を含むNb含有金属間化合物などの、少なくとも1つの二次相を含むNb主成分合金も含み得る。そのような合金は延性相(すなわちNb主成分合金)と強化相(すなわちNb含有金属間化合物)の複合材である。他の構成としては、基材材料はMo
5SiB
2および/またはMo
3Siの第2相を伴うモリブデンを主成分とする合金(固溶体)などのモリブデン主成分の合金を含む。他の構成としては、基材材料は炭化ケイ素(SiC)繊維で強化されたSiCマトリックスなどのセラミックマトリックス複合材(CMC)を含む。他の構成としては、基材材料はTiAl主成分の金属間化合物を含む。
【0021】
ここで
図3、
図4および
図6〜
図8を参照すると、製造方法は、構成部品100内に1つまたは複数の溝132を形成する工程を含んでいる。示されるように、例えば
図8では、各々の溝132は、基材110の外側表面112に少なくとも部分的に沿って延び、その開口136において狭くなることで、各々の溝132はリエントラント形状の溝132である。
図3に示される構成に関して、溝は、冷却剤を各々のフィルム冷却穴172に流す。溝132を形成するための例示的な技術には、限定するものではないが、研磨性液体ジェット、プランジ電解加工(ECM)、放電加工(EDM)、回転電極を備えた放電加工(ミリングEDM)およびレーザ加工が含まれる。例示的なレーザ加工技術は、本発明の譲受人に譲渡された、2010年1月29日出願の米国特許出願公開第12/697,005号、“Process and system for forming shaped air holes”に述べられており、これは本願明細書にその全体が参照によって組み入れられる。例示的なEDM技術は、本発明の譲受人に譲渡された、2010年5月28日出願の米国特許出願公開第12/790,675号、“Articles which include chevron film cooling holes,and related processes”に述べられており、これは本願明細書にその全体が参照によって組み入れられる。特定の処理では、溝132は、研磨性液体ジェットを使用して形成され、これは
図3〜
図5を参照して以下でより詳細に検討される。
【0022】
ここで
図7および
図10を参照すると、例えば各々の溝の断面積Aは、R=W*Dの面積のおよそ2倍からおよそ3倍の範囲内であり、ここでWは、リエントラント形状の溝132の開口136の幅であり、Dは、リエントラント形状の溝132の深さである。換言すると、面積Rは、開口においてリエントラント形状の溝と同一の幅を有し、それと同一の深さを有する仮想の方形の溝の断面積である。例えば、
図10のチャネルAおよびチャネルBは、2.33Rおよび2Rの面積をそれぞれ有する。有利なことにR=W*Dの面積のおよそ2倍からおよそ3倍の範囲内にある断面積Aを有する冷却チャネルは、コーティング処理においてごくわずかなコーティングがチャネルに内に堆積される可能性があり、犠牲となる充填物を使用する必要がない。
【0023】
特定の構成では、各々の溝132は中心線に対して対称である。本明細書で使用されるように「対称」とは、機械加工の精度により生じる溝の輪郭における軽微な偏差を包含するものと理解すべきである。例えば
図6〜
図8および
図10〜
図12に示される溝は、中心線に対して対称である。溝は、
図6〜
図8および
図10に示されるように平坦な基部134を有する場合もある。他の構成の場合、溝132の基部134が円形の場合もある。例えば溝は、
図11に示されるように涙型の場合もある。有利なことに、基本的に中心線に対して対称なチャネルは、例えば
図13に示されるものなどの非対称のチャネルに対して相対的により大きな断面積を有する(同一の深さと同一の開口幅の場合)。
【0024】
しかしながら他の構成では、例えば
図13に示されるように、各々の溝132が非対称の断面を有する場合もある。非対称の溝は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第13/664,458号で検討されており、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。非対称の断面は、構成部品の機械加工が難しい領域において、あるいは構成部品内に他の機能および/または制約を適応させるのに必要な場合がある。
【0025】
上記で指摘したように、いくつかの技術を使用して溝132を形成することができる。
図3および
図4に示される例示の処理に関して、各々の溝132は、基材110の外側表面112に研磨性液体ジェット160を向けることによって形成される。
図3および
図4に示される処理に関して、研磨性液体ジェット160を1回または複数回通過させる間に基材110の面112に対して水平方向の角度で研磨性液体ジェット160を向けることによって、少なくとも1つの溝132が形成される。
【0026】
例示的な研磨性液体ジェットによる研削処理およびシステムは、本発明の譲受人に譲渡された、2010年5月28日出願の米国特許出願公開第12/790,675号、“Articles which include chevron film cooling holes,and related processes”に提供されており、これは本願明細書にその全体が参照によって組み入れられる。米国特許出願公開第12/790,675号に説明されているように、研磨性液体ジェット処理は通常、高圧水流中に懸濁した研磨性の粒子(例えば研磨性の「グリット」)の高速流を利用する。液体の圧力は大幅に異なり得るが、多くの場合約35〜620MPaの範囲内にある。ガーネット、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、およびガラスビーズなどのいくつかの研磨性材料を使用することができる。有利なことに、研磨性液体ジェット加工技術の能力は様々な深さの段階で、加工される造作の形状を制御しながら材料を除去することを容易にする。
【0027】
加えて、米国特許出願公開第12/790,675号に説明されているように、ウォータージェットシステムは多軸のコンピュータ数値制御(CNC)ユニット210(
図4)を含んでもよい。CNCシステム自体は当技術分野で知られており、例えば、本願明細書にその全体が参照によって組み入れられる、米国特許出願公開第1005/0013926号(S.Rutkowskiら)に述べられている。CNCシステムはX、Y、およびZ軸、ならびに傾斜軸のいくつかに沿った切削工具の移動を可能にする。
【0028】
加えて、溝132を形成する工程はさらに、少なくとも1つの追加的な通過を実施する工程を含む場合があり、この場合研磨性液体ジェット160は、基材110の外側表面112に水平方向の角度と、この面に対してほぼ垂直な方向52の間の1つまたは複数の角度で溝132の基部134に向けられることで、溝132の基部134から材料が除去される(
図5を参照)。本明細書で使用されるように「基部」は、溝の下部であり、湾曲していても(
図11)あるいは平坦でも(
図10)よいことに留意されたい。
【0029】
ここで
図8および
図9を参照すると、製造方法はさらに、基材110内に1つまたは複数の進入穴140を形成する工程を含む場合がある。示されるように例えば
図14では、各々の進入穴140は、それぞれの溝132をそれぞれの内部空間114と流体連絡で接続する。
図8に示される穴140は、示される断面図に位置する別個の穴であり、基材を貫いて溝132の長さに沿って延びていないことに留意されたい。
【0030】
それぞれの溝を供給する内部進入穴140は、一定の断面の直線的な穴、成形した(例えば楕円形の)穴、あるいは集束もしくは散開する穴(図示せず)のいずれかとして研削されてよい。進入穴を形成するための方法は、本発明の譲受人に譲渡された、米国特許出願公開第13/210,697号(Ronald S. Bunker等)、“Components with cooling channels and methods of manufacture”に提供されており、これは本願明細書にその全体が参照によって組み入れられる。特定の処理では、進入穴140は、研磨性液体ジェットを使用して形成される場合があり、これは上記で述べられている。指摘されるように、有利なことに研磨性液体ジェット加工は、様々な深さの段階で、加工される造作の形状を制御しながら材料を除去することを容易にする。これはチャネルを供給する内部進入穴140を上記で指摘した形状に、すなわち一定の断面の直線的な穴、成形した穴、または集束もしくは散開する穴に研削することも可能にする。
【0031】
特定の構成では、溝132は、基材110の外側表面112内に形成される。例えば
図8および
図9を参照されたい。ここで
図8、
図9および
図12を参照すると、製造方法はさらに、基材110の表面112の少なくとも一部分上にコーティング150を堆積させる工程を含む場合がある。このような構成では、溝132およびコーティング150が共に、構成部品100を冷却するための1つまたは複数のリエントラント形状のチャネル130を画定する。コーティング150は、構造的コーティング層を備え、さらに任意選択で追加的コーティング層を含む場合がある。コーティング層は、多様な技術を使用して堆積させることができる。特定の処理では、構造的コーティングはイオンプラズマ蒸着(やはり当技術分野で陰極アーク蒸着として知られている)を実行することによって堆積させてもよい。イオンプラズマ蒸着の装置および方法の実例は、本発明の譲受人に譲渡された、Weaverらの米国特許出願公開第2008/0138529号、“Method and apparatus for cathodic arc ion plasma deposition”に提供されており、これは本願明細書にその全体が参照によって組み入れられる。簡単に述べると、イオンプラズマ蒸着は、所望のコーティング材料を作り出すための組成を有する消耗性の陰極を真空チャンバ内に配置する工程、基材110を真空環境の中に供給する工程、電流を陰極に供給して陰極表面上に陰極アークを形成し、結果としてアークで誘発される陰極表面からのコーティング材料の浸食を生じさせる工程、および陰極からのコーティング材料を基材表面112上に蒸着させる工程を含む。
【0032】
イオンプラズマ蒸着を使用して蒸着される構造的コーティングの非限定の実例はJacksonらの米国特許第5,626,462号、“Double−wall airfoil”に述べられている。或る高温ガス経路の構成部品100では、構造的コーティング54はニッケル主成分またはコバルト主成分の合金を含み、さらに具体的には超合金または(Ni,Co)CrAlY合金を含む。基材材料がγ相とγ’相の両方を含むNi主成分の超合金である場合、構造的コーティングは米国特許第5,626,462号で検討されているものと同様の材料組成を含んでもよい。さらに、超合金としては、構造的コーティング54はγ’−Ni
3Al系の合金を主成分とする組成を含んでもよい。
【0033】
さらに一般的には、構造的コーティングの組成は下層に在る基材の組成によって決定づけられると考えられる。例えば、炭化ケイ素(SiC)繊維で強化されたSiCマトリックスなどのCMC基材では、構造的コーティングは典型的にはケイ素を含むと考えられる。
【0034】
他の処理構成では、構造的コーティングは熱溶射処理およびコールドスプレー処理のうちの少なくとも1つを実行することによって堆積させられる。例えば、熱溶射処理は燃焼溶射またはプラズマ溶射を含んでもよく、燃焼溶射は高速酸素燃料溶射(HVOF)または高速空気燃料溶射(HVAF)を含んでもよく、プラズマ溶射は大気圧(空気または不活性ガスなど)プラズマ溶射または減圧プラズマ溶射(LPPS、真空プラズマ溶射またはVPSとしても知られている)を含んでもよい。1つの限定されない実例では、(Ni,Co)CrAlYコーティングはHVOFまたはHYAFによって堆積させられる。構造的コーティングを堆積させるための他の例示的な技術は、限定しないが、スパッタリング、電子ビーム物理蒸着、エントラップメントメッキ、および電気メッキを含む。
【0035】
米国特許出願公開第12/943,624号(Bunker等)、“Components with re−entrant shaped cooling channels and methods of manufacture”で検討されるように、マイクロチャネルを形成するための現行の技術は典型的には、犠牲となる充填物を利用することで、コーティングがマイクロチャネル内に堆積しないようにし、堆積する際にコーティングを支えるだけでなく、コーティングシステムが堆積した後、犠牲となる充填物を除去する必要がある。しかしながら一時的な材料でチャネル充填すること、およびその材料を後に除去することは共に、現行のマイクロチャネル加工処理技術に関する潜在的な問題を提示している。例えば充填物は、基材およびコーティングと適合可能である必要があり、さらに収縮度は最小限であるが十分な強度を有する必要もある。犠牲となる充填物の除去には、抽出、エッチングまたは気化という、損傷させる可能性がある工程が伴い、通常、長時間を要する。残留した充填材の材料もまた問題である。
【0036】
リエントラント形状の幾何学形状と、小さな頂部面の開口幅を有するチャネルを成形することで、コーティングの堆積物をチャネルの外に維持する助けをする。しかしながら充填物が利用されない場合、チャネルの開口幅は、コーティング材の堆積物をチャネルの外に維持するのに十分でない場合がある。
図12は、異なる断面積Aのチャネルに関する例示的な充填比を描いている。本明細書で使用されるように「充填比」は、チャネル内に堆積されるコーティング(
図12では参照番号162によって示される)が占めるチャネル領域の割合である。例えばコーティングがチャネル内に全く堆積されない場合、充填比は0である。同様にチャネルの断面積全体が堆積されたコーティングで充填される場合、充填比は100%である。
図12に示される例では、チャネルA〜Eは、均等な開口幅を有することに留意されたい。しかしながら
図12に示されるように、方形のチャネルの有意な部分がコーティングで充填されるのに対して、リエントラント形状のチャネルは、チャネルの外形がよりリエントラント形状になるにつれて(すなわちDからAに進むにつれて)、チャネルの断面積のごく一部として次第に少なくなるコーティング堆積物を有する。ゼロに近づくより小さな開口幅は、コーティング堆積物をチャネルの外に維持するのを助けることになるが、これは本明細書に見られる性質を説明していない。
【0037】
特定の理論に縛られることなく、有向の衝撃性の噴霧が、空気をチャネル空間内に閉じ込め、ある程度加圧する(恐らく加熱することによって)ものと考えられおり、この捕捉された空気は、コーティング粒子(ほとんどまたは全て)がチャネルの内部に進入するのを拒否する逆圧および妨害物として機能する。観察される現象に関するこのような物理的な説明は、例えば熱噴霧コーティングなど空気中で行われる何らかの処理に特に適用可能である。衝突性の噴霧は、チャネルの開口の大きさよりずっと大きな有効径を有するが、これは単独で観測される効果を提供するには十分ではない。加圧された妨害空気の十分な内部空間が必要であり、この空気はまたこの空間内で循環することができるため、観測される結果を提供するある範囲の望ましくかつ必要な比率のチャネルの断面積になる。
【0038】
特定の処理では、各々の溝の中に堆積されたコーティングの充填比は、20パーセント未満であり、より詳細には10パーセント未満である。例えば
図12のチャネルAおよびチャネルB、ならびに
図15のチャネルGを参照されたい。簡潔に言えば、
図15は、4つの円形の冷却チャネルG〜Jの中に堆積されたコーティングの量(それぞれの冷却チャネルの全体の断面積に対する)を示している。
図15に見ることができるように、冷却チャネルGに関してA>2であり、冷却チャネルHに関してA〜2であり、冷却チャネルIおよびJに関してA<2Rである。チャネルG〜Jの中に堆積されるコーティング162の量は、各々の冷却チャネルにおいてほぼ同じであるが、コーティング堆積物162が占める断面積の割合は、冷却チャネルJのものと比べて、冷却チャネルGではずっと小さくなる。有利なことには、相対的に塞がっていないチャネルを有することでチャネルを通る冷却流が改善される。
【0039】
ここで
図14を参照すると、コーティングは、少なくとも1つの構造的コーティング54と、追加的コーティング56とを含んでおり、各々の溝132は、構造的コーティング54の中に少なくとも部分的に形成される。特定の構成では(
図14)、溝は完全に構造的コーティング54の中に形成される。しかしながら他の構成では(図示せず)、溝は、構造的コーティングを貫いて基材110へと延びている。
【0040】
有利なことには、上記に述べた方法によって、犠牲となる充填物を使用せずに被冷却構成部品をコーティングすることが容易になる。開口136を犠牲となる充填物を使用せずにコーティング150によって橋渡しすることによって、従来のチャネル形成技術に関する2つの主要な処理工程(充填および抽出工程)をなくすことができる。
【0041】
本発明の構成部品100の実施形態が、
図2〜
図15を参照して述べられている。
図2に示されるように、構成部品100は、外側表面112と内側表面116とを有する基材110を含んでいる。基材110は上記に記載されている。
図2に示されるように、例えば内側表面116は、少なくとも1つの内部空間114を画定する。
図8に示されるように外側表面112は、1つまたは複数の溝132を画定する。各々の溝132は、基材110の表面112に少なくとも部分的に沿って延び、その開口136において狭くなることで、各々の溝132はリエントラント形状の溝132である。ここで
図7および
図10を参照すると、例えば各々の溝の断面積Aは、R=W*Dの面積のおよそ2倍からおよそ3倍の範囲内であり、ここでWは、リエントラント形状の溝132の開口136の幅であり、Dは、リエントラント形状の溝132の深さである。上記で指摘したように、面積Rは、開口においてリエントラント形状の溝と同一の幅を有し、それと同一の深さを有する仮想の方形の溝の断面積である。
【0042】
図8に示されるように、構成部品100はさらに、基材110の外側表面112の少なくとも一部分上に配置された少なくとも1つのコーティング150を含む。コーティング150は上記に記載されており、単独のまたは異なる組成を有する1つまたは複数のコーティング層を有することができる。
図8に示されるように、例えば溝132およびコーティング150は共に、構成部品100を冷却するための1つまたは複数のリエントラント形状のチャネル130を画定する。特定の構成では(
図8および
図12)、コーティング150が各々の溝132を完全に橋渡しすることで、コーティング150は、それぞれのマイクロチャネル130を密閉している。しかしながら他の構成では(例えば
図14を参照されたい、これは溝が構造的コーティングの層54の中に形成された場合の通気性の隙間144を示している)、コーティング150が、1つまたは複数の通気性の隙間144を画定するため、コーティング150は、各々の溝132を完全には橋渡ししていない。
【0043】
特定の構成では、各々の溝132は中心線に対して対称である。上記で指摘したように、「対称」とは、機械加工の精度により生じる溝の輪郭における軽微な偏差を包含するものと理解すべきである。例えば
図6〜
図8および
図10〜
図12に示される溝は、中心線に対して対称である。例えば
図6〜
図8に示されるように、溝が平坦な基部を有する場合もある。他の構成では、溝132の基部134が円形の場合もある。例えば溝は、
図11に示されるように涙型の場合もある。
【0044】
しかしながら他の構成では、各々の溝132が、例えば
図13に示されるように非対称の断面を有する場合もある。上記で指摘したように、非対称の溝は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第13/664,458号で検討されている。
【0045】
ここで
図8および
図9を参照すると、1つまたは複数の進入穴140を基材110内に形成することができる。
図14に示されるように、例えば各々の進入穴は、それぞれの溝132をそれぞれの内部空間114と流体連絡で接続している。上記で指摘したように、
図8に示される穴140は、示される断面図に配置された別々の穴であり、溝132の長さに沿って基材を貫いて延びていない。進入穴は、
図8および
図9を参照して上記で述べられている。
【0046】
特定の構成では、各々の溝に堆積されたコーティングの充填比は、20パーセント未満であり、より詳細には10パーセント未満である。例えば
図12のチャネルAおよびチャネルB、ならびに
図15のチャネルGを参照されたい。上記で指摘したように、「充填比」は、チャネル内に堆積されたコーティングが占めるチャネルの面積の割合である。有利なことには、比較的低い充填比を有することによって、チャネルは、所与のチャネル断面積に関して十分な冷却剤を運ぶことができる。
【0047】
上記に記載した構成部品の利点には、従来のように被冷却構成部品のコーティングに関する費用がかかる2つの処理工程(充填および抽出工程)をなくすことによって製造コストが低下した改善された冷却作用が含まれる。
【0048】
本発明の別の構成部品100の実施形態が、
図2〜
図15を参照して記載されている。
図2に示されるように、構成部品100は、外側表面112と内側表面116とを有する基材110を含んでいる。
図2に示されるように、例えば内側表面116は、少なくとも1つの内部空間114を画定する。基材110は上記に記載されている。
【0049】
図14に示されるように、構成部品100はさらに、基材110の表面112の少なくとも一部分上に配置された少なくとも1つのコーティング150を含む。
図14に示されるように、コーティング150は、基材110の外側表面112上に配置された構造的コーティング54と、追加的コーティング56の少なくとも1つの内側の層を含む。追加的コーティング56は、1つまたは複数の異なるコーティング層を有する場合がある。例えば追加的コーティング56は、追加の構造的コーティングおよび/または任意選択の追加的コーティング層、例えば接着コーティング、熱障壁コーティング(TBC)および酸化防止コーティングなどを含む場合がある。特定の構成では、追加的コーティング56は外側の構造的コーティング層を含んでもよい(これもやはり参照符号56で表示される)。特定の構成では、構造的コーティング54および追加的コーティング56は工業構成部品では0.1〜2.0ミリメートルの範囲、より具体的には0.2〜1ミリメートルの範囲、さらにより具体的には0.2〜0.5ミリメートルの範囲の組み合わせ後の厚さを有する。航空機構成部品では、この範囲は通常では0.1〜0.25ミリメートルである。しかしながら、特定の構成部品100のための要件に応じて他の厚さが利用されてもよい。
【0050】
図14に示される例示的な構成では、溝132は、構造的コーティング54の中に少なくとも部分的に形成される。各々の溝132は、基材110の表面112に少なくとも部分的に沿って延び、その開口136において狭くなることで、各々の溝132はリエントラント形状の溝(132)である。(このように基材に沿って溝が延在することは、溝が基材の中で形成された場合の
図8に示される構成と同様である。)
図10を参照して上記で検討したように、各々の溝の断面積Aは、R=W*Dの面積のおよそ2倍からおよそ3倍の範囲内であり、ここでWは、リエントラント形状の溝(132)の開口136の幅であり、Dは、リエントラント形状の溝132の深さである。例えば、
図10のチャネルAおよびチャネルBは、2.33Rおよび2Rの面積をそれぞれ有する。
図14に示されるように、溝132および追加的コーティング56は共に、構成部品100を冷却するための1つまたは複数のリエントラント形状のチャネル130を画定する。
【0051】
特定の構成では、各々の溝132は、構造的コーティング54の中に完全に配置される。例えば
図14を参照されたい。他の構成では(明確には示されていない)、各々の溝132は、構造的コーティング54を貫いて基材110へと延びている。特定の構成では、追加的コーティング56が、それぞれの溝132を完全に橋渡しすることで、追加的コーティング56がそれぞれのマイクロチャネル130を密閉する(例えば、溝が基材の中に形成される場合の
図6を参照されたい)。しかしながら他の構成では、追加的コーティング56が1つまたは複数の通気性の隙間144を画定することで、追加的コーティング150は、それぞれの溝132を完全には橋渡ししていない(例えば、
図14を参照)。
【0052】
溝の幾何学形状が上記に記載される。特定の構成では、各々の溝132は中心線に対して対称である。例えば
図6〜
図8および
図10〜
図12に示される溝は、中心線に対して対称である。上記で指摘したように、例えば
図14に示されるように、溝が平坦な基部134を有する場合もある。他の構成では、溝132の基部134が円形の場合もある。例えば溝は、
図11に示されるように涙型の場合もある。
【0053】
しかしながら他の構成では、各々の溝132が、例えば
図13に示されるように非対称の断面を有する場合もある。上記で指摘したように、非対称の溝は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第13/664,458号で検討されている。
【0054】
図8および
図9を参照して上記に記載したように、1つまたは複数の進入穴140を基材110の中に形成することができる。
図14に示されるように、例えば各々の進入穴は、それぞれの溝132をそれぞれの内部空間114と流体連絡で接続している。上記で指摘したように、
図8に示される穴140は、示される断面図に配置された別々の穴であり、溝132の長さに沿って基材を貫いて延びていない。
【0055】
特定の構成では、各々の溝に堆積させられたコーティングの充填比は、20パーセント未満であり、より詳細には10パーセント未満である。例えば
図12のチャネルAおよびチャネルB、ならびに
図15のチャネルGを参照されたい。上記で指摘したように、「充填比」は、チャネル内に堆積させたコーティングが占めるチャネルの面積の割合である。
【0056】
上記に記載した製造方法および構成部品の利点には、被冷却構成部品のコーティングに関して費用がかかる2つの処理工程(充填および抽出工程)をなくすことに関連して改善された冷却作用および製造コストの低下が含まれる。