【実施例】
【0047】
以下の実施例及び比較例で使用された分析機器は以下の通りである。
・XRD(X-Ray Diffraction)
試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IV((株)リガク)
線源:Cukα
1、40kV、30mA
・SEM(Scanning Electron Microscope)
JEOL JEM5500LV(日本電子(株))
加速電圧:15~25kV
・TEM (Transmission Electron Microscope)
JEOL JEM2010F(日本電子(株))
加速電圧:200kV
EDS(energy-dispersive X-ray spectroscopy)装置が付属しており、組成分析が可能である。試料は、メタノールを滴下して乳鉢でよく混合することにより粒径を細かくした後、銅製のメッシュ上に分散させることにより得られ、これを観察用とした。
・ラマンスペクトル
レーザーラマン分光装置:NRS-3300(日本分光(株))
測定条件:励起用レーザ波長:532 nm、
対物レンズ:20倍 露光時間:120秒×2
スリット:0.1×6 mm グレーティング:600 L/mm
試料条件:室温、大気中
・抵抗測定器(LORESTA-IP)
型式:MCP-T250、三菱化学(株)
4探針法(電極間距離:5m、温度:25℃)で測定した。
・触媒の定性・定量分析EPMA( Electron Probe Micro Analyzer)
JEOL JXA8900(日本電子(株))
加速電圧:15kV
・磁気特性評価 振動試料型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)
理研電子(株)
印加磁場:10KOe
掃引速度:5分(磁化曲線1サイクル)
(実施例1)
塊状の55質量%のニッケルと45質量%のアルミニウムとからなる合金触媒0.5gを載置した石英基板を石英反応管内に配置した。この石英反応管は、その全体が電気炉で加熱されることができるように、開閉型セラミックス管状炉内に、設置されている。電気炉内の温度を20分で600℃まで昇温し、その間、塩化水素ガスを電気炉内に流通させて塩化水素ガスを合金に接触させた。塩化水素ガスと合金中のアルミニウムとが反応して合金中のアルミニウムが塩化アルミニウムとなり、スポンジ状のニッケル触媒が形成された。電気炉内に流すガスを塩化水素ガスからメタンに変更し、流量500sccmで30分間メタンガスと触媒とを反応させることにより、石英基板の表面上に石英基板と同じ形状をしたシート状のカーボンナノファイバー集合体が形成された。形成されたシート状のカーボンナノファイバー集合体は基板から簡単に剥離した。剥離したシート状のカーボンナノファイバー集合体を縦にするとそのシート形状が崩壊することなく自立した。つまり、このシート状をしたカーボンナノファイバー集合体は自立性を有していた。このカーボンナノファイバー集合体の重量は4.5gであった。この重量は、カーボンナノファイバー本体とカーボンナノファイバーの一端に存在する触媒金属との総重量である。このカーボンナノファイバー集合体を乳鉢ですりつぶすことにより粉体のカーボンナノファイバーからなる集合物を得た。得られたカーボンナノファイバーの物性は次の通りであった。
【0048】
図3に、得られたカーボンナノファイバーのXRD測定の結果を示した。カーボンナノファイバーを示す(002)、(100)、(004)、(110)の回折ピークが観察された。
【0049】
図4に、前記のようにして得られたカーボンナノファイバーのSEM像を示した。カーボンナノファイバーが湾曲しながら無数に成長していることがわかる。
【0050】
図5に、カーボンナノファイバーの先端部を観察した透過型電子顕微鏡(TEM)画像と元素分析の結果を示した。カーボンナノファイバーの構造は、六角炭素網面で筒状に形成されたカーボンナノファイバーとカーボンナノファイバーの一端に遷移金属(ニッケル:Ni)を有する構造が観察された。カーボンナノファイバーの直径は70〜100nm、遷移金属Niの大きさは約50nmであった。更には、カーボンナノファイバーに内包された遷移金属(Ni)は、カーボンナノファイバーの軸線に沿った軸線を有すると共にカーボンナノチューブファイバーの軸線方向の外側に向かう台面部と、カーボンナノファイバーの軸線方向に沿ってカーボンナノファイバーの内部に形成された中空部に向かう鋭角の錐台部とを有する構造が観察された。
【0051】
図6に、カーボンナノファイバー本体の、つまりグラフェンシートの透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。カーボンナノファイバーの六角炭素網面はカップ積層構造であることが観察された。
【0052】
図7には、λ=532nmのYAGレーザ励起に関するカーボンナノファイバーのラマンスペクトルを示す。カーボンナノファイバーの基本骨格であるグラファイト層由来のGバンドが明確に観察された。
【0053】
(実施例2)
スポンジニッケル触媒(NDT-90川研ファインケミカル(株)製)0.5gを乗せた石英基板を電気炉に配置した。電気炉を600℃まで昇温した後、この電気炉内にメタンガスを流し、流量500 sccmで、30分反応させた。触媒も含めて4.5gのカーボンナノファイバー集合体を作製した。カーボンナノファイバーを乳鉢ですりつぶすことで粉体のカーボンナノファイバーを得た。
【0054】
XRD測定、SEM像測定、TEM像測定、ラマンスペクトル測定から、得られたカーボンナノファイバーは実施例1と同様の物性を持つことを確認した。
【0055】
(実施例3)
スポンジコバルト触媒(ODHT-60 川研ファインケミカル(株)製)を使用した以外は実施例2と同様にしてカーボンナノファイバー集合体及びカーボンナノファイバーを作製した。
【0056】
XRD測定、SEM像測定、TEM像測定、ラマンスペクトル測定から、得られたカーボンナノファイバーは実施例1と同様の物性を持つことを確認した。
【0057】
(実施例4)
スポンジコバルト触媒(PL-9T 川研ファインケミカル(株)製)を使用した以外は実施例2と同様にしてカーボンナノファイバー集合体及びカーボンナノファイバーを作製した。
【0058】
XRD測定、SEM像測定、TEM像測定、ラマンスペクトル測定から、得られたカーボンナノファイバーは実施例1と同様の物性を持つことを確認した。
【0059】
(実施例5)
Si基板の先端に触媒0.05gを設置した以外は実施例2と同様にしてカーボンナノファイバー集合体を作製した。基板上のカーボンナノファイバー集合体の、反応時間後5分、15分、30分の状態を撮影したものを
図8に示した。時間経過とともにカーボンナノファイバーの集合物が三次元方向に成長していくのではなく、Si基板の平面に沿って成長することがわかる。
【0060】
30分反応させて作製したSi基板上のカーボンナノファイバー集合体の任意のポイント10ヵ所について定性・定量分析を行った。その結果を表1に示す。全ての点において、カーボンナノファイバーの構成成分である炭素(C)とカーボンナノファイバーの先端部に含まれる金属の組成とスポンジ合金触媒中の成分(Ni、Al)とがほぼ同一組成であることが確認された。この結果は、カーボンナノファイバーの成長とともに、スポンジ合金触媒が崩壊しながらSi基板上を一方向に広がって行き、Si基板の上面を形状転写基材の表面としてSi基板の上面に優先的にカーボンナノファイバーが成形された。
【0061】
Si基板上のカーボンナノファイバー集合体の抵抗値は1.2Ω/□であった。
【0062】
【表1】
【0063】
(実施例6)
10mm径の球状ジルコニアの1点に実施例2で使用した触媒0.05gを設置した以外は実施例2と同様にしてカーボンナノファイバー集合体を作製した。球状ジルコニアの表面形状に合わせて優先的にカーボンナノファイバー集合体が成長することが確認された。
図9に球状ジルコニア(左側)とカーボンナノファイバー集合体で被覆された球状ジルコニア(右側)を示した。
【0064】
この例から明らかなように、球体の表面を形状転写基材の表面であるとして、この発明の方法によると、カーボンナノファイバー集合体が球状の被覆体として形成された。
【0065】
球状ジルコニアに被覆されたカーボンナノファイバー集合体の抵抗値は2.6Ω/□であった。
【0066】
(実施例7)
実施例1で作製したカーボンナノファイバー及びニッケル微粒子について磁気特性評価を行った。
図10に実施例1で作成したカーボンナノファイバーの磁化曲線と、比較のために酢酸ニッケル触媒から合成したNi内包カーボンナノファイバー及びニッケル微粒子の磁化曲線を示す。ニッケル微粒子単体の保磁力と比べ、本発明のカーボンナノファイバーの保磁力は約10倍(1000 Oe)であった。また、球状のNi内包カーボンナノファイバー(比較例4)の保磁力は、実施例1のカーボンナノファイバーと比べて小さかった。
【0067】
(比較例1)
スポンジニッケル触媒の代わりにNiメタルナノ粒子(平均粒径が100nm以下であるNi金属微粒子)を使用した以外は実施例2と同様の処理をしたが、カーボンナノファイバーを製造することができなかった。
【0068】
(比較例2)
スポンジニッケル触媒の代わりにCoメタルナノ粒子(平均粒径が100nm以下であるCo金属微粒子)を使用した以外は実施例2と同様の処理をしたが、カーボンナノファイバーを製造することができなかった。
【0069】
(比較例3)
スポンジニッケル触媒の代わりにFeメタルナノ粒子(平均粒径が100nm以下であるFe金属微粒子)を使用した以外は実施例2と同様の処理をしたが、カーボンナノファイバーを製造することができなかった。
【0070】
(比較例4)
スポンジニッケル触媒の代わりに酢酸ニッケル・4水和物触媒(和光純薬(株)製)を使用した以外は実施例2と同様にしてカーボンナノファイバー集合体及びカーボンナノファイバーの作製を行った。
【0071】
XRD測定、SEM像測定、ラマンスペクトル測定によりは、この比較例4において製造されたカーボンナノファイバーは実施例1において製造されたカーボンナノファイバーと同様の物性を持つことを確認したが、TEM像によると、この比較例4において製造されたカーボンナノファイバーに内包されたNiナノ粒子は球状であった。この比較例4で得られたカーボンナノファイバーの磁化曲線を
図10に示した。
図10に示されるように、この比較例4で得られたカーボンナノファイバーでは、実施例1で作成された特異形状を有するNiナノ粒子において発現した保磁力程の増大が確認されなかった。
【0072】
(比較例5)
スポンジニッケル触媒の代わりにSi基板の先端にCo担持Al
2O
3を0.05g設置した以外は実施例2と同様の処理をしたところ、製造されたカーボンナノファイバー集合体は、Si基板の表面全体を覆うように成長することがなく、Si基板の表面から垂直方向にカーボンナノファイバーが成長した。
【0073】
(比較例6)
スポンジニッケル触媒の代わりにSi基板の先端にNi担持MgOを0.05g設置した以外は実施例2と同様の処理をしたところ、製造されたカーボンナノファイバー集合体は、
図11に示されるように、Si基板の表面全体を覆うように成長することがなく、Si基板の表面から垂直方向にカーボンナノファイバーが成長した。