(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
径方向外周側に向けて突出する突出片を周方向に複数形成した磁性材料よりなる略平板状の中間加工部材を元にして前記各突出片を曲げ起こすことにより、略円環状の保持板部の外周から複数のステータ歯を立設させたステータと、
前記ステータ歯が周方向に交互に噛み合うように対向配置された2つ1組のステータの外周側に外挿配置される励磁コイルと、
N極及びS極を周方向に交互に配列した着磁面を外周に設けた略円柱状のマグネットロータが2つ同軸に配列された回転子と、
前記回転子の回転中心をなす回転軸を支持する軸受部と、を備え、前記2つ1組のステータに前記励磁コイルを外挿配置したステータブロックが各マグネットロータに外挿されたインダクタ型モータであって、
略環状を呈すると共に前記ステータ歯を支持するガイド部が内周側に設けられた支持部材を備えているインダクタ型モータ。
請求項1において、前記ステータブロックを構成する2つのステータのうちの一方のステータのステータ歯を支持する支持部材は、他方のステータに外挿配置された状態で保持されており、
前記他方のステータのステータ歯を支持する支持部材は、前記一方のステータに外挿配置された状態で保持されているインダクタ型モータ。
【背景技術】
【0002】
従来、回転子に永久磁石を採用したインダクタ型モータが知られている。インダクタ型モータとしては、例えば、
図14に示すごとく、周方向に交互にN極及びS極が現れる略円柱状のロータ(回転子)83に対してステータブロック81・82を外挿配置したインダクタ型モータが知られている(例えば特許文献1参照。)。このインダクタ型モータ8では、ステータ811・812により励磁コイル810を挟持したステータブロック81と、ステータ821・822により励磁コイル820を挟持したステータブロック82と、が2段にスタックされている。
【0003】
各ステータ811、812、821、822は、ロータ83の軸方向に沿って突出するステータ歯を略同一円周上に複数有している。ステータブロック81(82)では、互いに向けて突出するステータ歯同士が噛み合うように、ステータ811(821)とステータ812(822)とが対向配置されている。このインダクタ型モータ8では、ステータ歯の並びを平面上に展開した
図15のごとく、ステータブロック81に対してステータブロック82の位相、すなわち回転方向(周方向)の位置がずれている。ステータブロック81とステータブロック82との位相差Gは、例えば、ステータ歯の形成ピッチPの4分の1に当たる回転角に設定される。
【0004】
このインダクタ型モータ8が備える励磁コイル810(820)に通電すると、対向するステータ811(821)及びステータ812(822)が異なる極性に磁化される。通電中のステータブロック81(82)では、同一円周上に配列されたステータ歯が周方向に交互にN極あるいはS極を呈することになる。
【0005】
所定シーケンスに沿って正負が入れ替わる駆動電流を励磁コイル810、820に通電すると、各ステータ歯の極性が時間的に交互に切り替わる。このように各ステータ歯の極性が交互に切り替わると、ロータ83のN極あるいはS極と各ステータ歯との間で吸引力あるいは反発力が交互に発生する。インダクタ型モータ8では、上記のごとくステータブロック81、82の位相が回転方向にずれているため、各ステータ歯から作用する吸引力及び反発力によってロータ83に所定方向の回転トルクが生じ、ロータ83が回転する。
【0006】
インダクタ型モータ8の構成部品であるステータ811、812、821、822は、例えば、内周側に向かって突出する突出片が複数残るように打ち抜き加工を施した板状の中間加工部材を元にして作製される。中間加工部材の各突出片をその根本から曲げ起こせばステータ歯を形成でき、効率良くステータを作製できる。
【0007】
このインダクタ型モータ8では、中間加工部材の内周側に向けて突出する突出片を曲げ起こしてステータ歯を形成しているため、ステータの内径によりステータ歯の長さが律則される。ステータ歯を長くしようとするとステータの内径を拡大する必要が生じ、モータの大径化が不可避となる。インダクタ型モータを小径化しようとした場合、ステータ歯の長さを十分に確保できずに高出力特性を実現できないおそれがある。
【0008】
そこで、小径であっても大きな回転トルクを確保することを目的として、
図16に示すようなインダクタ型モータ9が提案されている(特許文献2参照。)。このインダクタ型モータ9の特徴は、外周側に向かう突出片を設けた略平板状の中間加工部材を元にし、各突出片を曲げ起こしてステータ歯921を形成したステータ92にある。このステータ92では、略円環状の保持板部922の外周側にステータ歯921が立設されている。なお、同図では、同軸配置された2つのステータブロック920のうちの一方のみ組付け構造が図示され、位相が異なる他方のステータブロックについてはケース95に収容されて図示されていない。
【0009】
このステータ92の中間加工部材では、保持板部922となる部分を中心として各突出片が径方向外周側に向けて突出している。各突出片の突出長さは、保持板部922の直径等の寸法仕様に何ら依存せず、自由に設定可能である。このステータ92では、インダクタ型モータに対して要求される外径寸法仕様等に関わらず、ステータ歯921の突出長さを自由に設定可能である。
【0010】
外径寸法に関係なくステータ歯921の突出長さを設定可能な
図16のインダクタ型モータ9では、ステータ歯921の突出長さを長くすることで高出力特性を実現可能である。例えば、インダクタ型モータ9の小径化が必要となった場合には、ステータ歯921を長くすることで所望の出力特性を実現できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の特許文献2のインダクタ型モータの構成を採用すれば、小径であっても高出力を実現できる一方、細く長いステータ歯の剛性を確保する必要がある。剛性が不十分であると、ロータ側から作用する吸着力によってステータ歯が内周側に撓むおそれがある。このようにステータ歯が撓むと、その内周側で回転するロータの外周面に干渉して、異音が発生したり、摩耗等に起因する機械的なトラブルが招来されるおそれがある。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、小径であっても高出力特性を実現可能な優れた特性のインダクタ型モータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、径方向外周側に向けて突出する突出片を周方向に複数形成した磁性材料よりなる略平板状の中間加工部材を元にして前記各突出片を曲げ起こすことにより、略円環状の保持板部の外周から複数のステータ歯を立設させたステータと、
前記ステータ歯が周方向に交互に噛み合うように対向配置された2つ1組のステータの外周側に外挿配置される励磁コイルと、
N極及びS極を周方向に交互に配列した着磁面を外周に設けた略円柱状のマグネットロータが2つ同軸に配列された回転子と、
前記回転子の回転中心をなす回転軸を支持する軸受部と、を備え、前記2つ1組のステータに前記励磁コイルを外挿配置したステータブロックが各マグネットロータに外挿されたインダクタ型モータであって、
略環状を呈すると共に前記ステータ歯を支持するガイド部が内周側に設けられた支持部材を備えているインダクタ型モータにある(請求項1)。
【0015】
本発明のインダクタ型モータの各ステータは、径方向外周側に向けて突出する突出片を形成した中間加工部材を元に、ステータ歯となる突出片を曲げ起こして形成される。中間加工部材の突出片を長くすれば、細長いステータ歯を備えたステータを作製できる。細長いステータ歯を有するインダクタ型モータであれば、小径であっても高出力特性を実現可能である。
【0016】
さらに、本発明のインダクタ型モータは、ステータ歯を支持する支持部材を備えている。この支持部材は、略環状を呈すると共に、その内周側に設けられたガイド部によってステータ歯を支持する。本発明のインダクタ型モータでは、支持部材によってステータ歯が支持されているため、マグネットロータ側から作用する吸着力によってステータ歯が内周側に撓むおそれが少ない。内周側へのステータ歯の撓みを抑制できれば、マグネットロータとの干渉を回避でき、異音の発生や機械的なトラブルの発生を抑制できる。さらに、外周側からステータ歯を支持するこの支持部材は、マグネットロータや軸受部など、内周側に配置される部材との干渉を回避しながら効率良く組み込み可能である。
【0017】
以上のように、本発明のインダクタ型モータは、小径であっても高出力特性を実現可能な優れた特性のモータである。
【0018】
本発明における支持部材の環状の形状としては、開口箇所が全くない完全な環状のほか、周方向に開口箇所を設けた不完全な環状が包含されている。
本発明における支持部材は、非磁性材料により形成することが良い。非磁性材料よりなる支持部材であれば、ステータを流れる磁束に影響を与えることなくステータ歯を支持できる。
【0019】
本発明における好適な一態様のインダクタ型モータでは、前記ステータブロックを構成する2つのステータのうちの一方のステータのステータ歯を支持する支持部材は、他方のステータに外挿配置された状態で保持されており、
前記他方のステータのステータ歯を支持する支持部材は、前記一方のステータに外挿配置された状態で保持されている(請求項2)。
【0020】
この場合には、前記2つ1組のステータにおいて、前記支持部材を介して互いのステータ歯を支え合う構造を実現できる。一方のステータに保持された支持部材により他方のステータ歯を支持する構造を採用すれば、前記2つ1組のステータについて位置精度を高くできる。
【0021】
本発明における好適な一態様のインダクタ型モータが備えるステータの保持板部は、径方向外周側に向けて突出する突出部を有しており、
前記支持部材は、前記ステータ歯の先端側からステータに対して外挿可能であると共に、前記突出部により抜け止めされている(請求項3)。
この場合には、ステータ歯の立設方向の反対側、すなわち保持板部側に支持部材が抜け落ちることがない。一方、インダクタ型モータの組立状態では、ステータ歯の立設する側には、他方のステータのステータ歯が存在しているので、こちら側に支持部材が抜け落ちることもない。前記支持部材は確実性高くステータに保持され、脱落するおそれなく組み付けられる。
【0022】
本発明における好適な一態様のインダクタ型モータが備えるガイド部は、
前記支持部材の内周側に設けられて周方向において隣り合うステータ歯の間隙
に突出しており、
前記支持部材は、周方向において隣り合うステータ歯の間隙に配置された前記ガイド部によって周方向に位置決めされている(請求項4)。
この場合には、前記ステータにより保持された支持部材について、周方向の位置精度を高く確保できる。周方向に位置精度高くステータに保持された支持部材であれば、前記2つ1組のステータに対して、周方向の位置精度を損なわせるような影響を与えることがない。
【0023】
本発明における好適な一態様のインダクタ型モータが備える支持部材の内周側に前記軸受部が貫通配置されている(請求項5)。
この場合には、環状を呈する前記支持部材の形状を活用して前記軸受部をスペース効率良く配置できる。このように径方向に重ねて部品を配置できれば、軸方向の寸法の拡大を回避できコンパクトなインダクタ型モータを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、インダクタ型モータ1に関する例である。この内容について、
図1〜
図13を用いて説明する。
【0026】
本例のインダクタ型モータ1は、
図1〜
図4に示すごとく、略円環状の保持板部22の外周から複数のステータ歯21を立設させたステータ2と、ステータ歯21が周方向に交互に噛み合うように対向配置された2つ1組のステータ2の外周側に外挿配置される励磁コイル25と、N極及びS極を周方向に交互に配列した着磁面401を外周に設けた略円柱状のマグネットロータ40が2つ同軸に配列された回転子4と、回転子4の回転シャフト(回転軸)41を軸支する軸受メタル(軸受部)54と、を備えている。このインダクタ型モータ1では、2つ1組のステータ2に励磁コイル25を外挿配置したステータブロック20が各マグネットロータ40にそれぞれ外挿されている。
このインダクタ型モータ1は、略環状を呈すると共にステータ歯21を支持するガイド部271(
図7)が内周側に設けられた支持部材27を備えている。
以下、この内容について詳しく説明する。
【0027】
本例のインダクタ型モータ1は、
図1〜
図3に示すごとく、いわゆるパーマネントマグネット型(永久磁石型)のブラシレス6極モータである。このインダクタ型モータ1は、所定のシーケンスで励磁コイル25に通電したとき、その通電シーケンスに同期して回転子4が回転するモータである。このインダクタ型モータ1は、ステータブロック20等を収容するモータケース5の軸方向長さが136mmであり、その直径が48mmの細長い形状を呈している。なお、インダクタ型モータ1の極数としては、本例の6極のほか、12極、24極等、様々な極数を設定することができる。
【0028】
モータケース5は、
図1〜
図3に示すごとく、SPCE(冷間圧延鋼板)により形成された円筒状のケース50と、ケース50の両端の開口部に取り付けられる側端プレート52と、回転子4の回転軸を軸支する軸受メタル54と、を含んで構成されている。なお、
図1では、ケース50の図示を省略している。
図2のごとく、ケース50の両端は、面一ではなく、軸方向に後退した凹み部501が形成されている(
図2参照。)。凹み部501は、周方向において対向する2箇所に配置されている。
【0029】
側端プレート52は、略円環状の板部材である。側端プレート52には、ステータ2の係合凸部231(
図4を参照して後述する。)を収容するための位置決め孔521が穿孔されている。本例のインダクタ型モータ1では、ステータ2側の係合凸部231と位置決め孔521との収容構造によって、側端プレート52に対するステータ2の周方向(回転方向)の位置が規制されている。
【0030】
側端プレート52の外周には、径方向に突出する凸部522が形成されている。ケース50の凹み部501に係合する凸部522は、周方向において対向する2箇所に設けられている。モータケース5では、ケース50の凹み部501と側端プレート52の凸部522との係合構造により、側端プレート52の周方向の位置が規制されている。
【0031】
側端プレート52の内周側には、貫通孔が形成され、この貫通孔には、回転子4の回転シャフト(回転軸)41を軸支するための軸受メタル54が貫通配置されている。軸受メタル54は、鉄系金属材料よりなるすべり軸受である。軸受メタル54は、円柱形状の一方の端部にフランジ状のつば540を設けて形成されている。軸受メタル54は、このフランジ状のつば540が軸方向内側に位置するように取り付けられ、このつば540によって抜け止めされている。
【0032】
このインダクタ型モータ1のステータ2は、
図4に示すごとく、中心に貫通孔220を設けた略円環状の保持板部22と、該保持板部22の外周から立設する6本のステータ歯21と、組み付け時のステータ2の取り付け姿勢を安定化させるためのスタビライザ(突出部)23と、を有している。スタビライザ23は、保持板部22から径方向外周側に突出するように形成されている。
【0033】
なお、本例のステータ2は、磁性材料である鋼板SPCEよりなる。ステータ2としては、その他、SPCD、SGCD、SUYB等の磁性材料よりなるものを採用することもできる。さらに、本例では、2個のステータブロック20を構成する4個のステータ2として、同じ仕様のものを採用し、これにより、構成部品の種類数を削減している。
【0034】
ステータ2における6本のステータ歯21は、
図4に示すごとく、略同一円周上の等間隔に配列するように保持板部22の外周から立設している。6本のスタビライザ23は、ステータ歯21の立設位置から周方向に30度ずつずらして等間隔に形成されている。6本のスタビライザ23のうちの1本おきの3本には、その先端に係合凸部231が形成されている。この係合凸部231は、ステータ歯21とは反対側に突出し、相手部材(本例では、
図1に示す中間プレート26、あるいは側端プレート52。)に係合するように形成してある。
【0035】
ここで、本例のステータ2を作製する方法について説明する。本例のステータ2は、磁性材料よりなる平板状の原材料(図示略)にプレス加工を施して作製したものである。ステータ2を作製するに当たっては、平板状の原材料に打ち抜き加工を施し、
図5に示すごとく中間加工部材29を得る。この中間加工部材29は、中心に貫通孔290を設けた略円環状のリング部292と、該リング部292の外周における周方向等間隔の6カ所から径方向外側に向けて突出する突出片291と、該突出片291の形成位置から30度ずらした各位置から径方向外側に向けて突出する凸状片293と、を有している。
【0036】
ステータ2は、
図4及び
図5に示すごとく、中間加工部材29を元にして、突出片291の折り曲げ加工を施して作成される。具体的には、リング部292に対して垂直をなすように各突出片291を折り曲げてステータ歯21を形成している。完成品であるステータ2における保持板部22は、リング部292よりなる。ステータ歯21は、突出片291よりなり、スタビライザ23は、凸状片293よりなる。
【0037】
ステータブロック20は、
図6のごとく、ステータ歯21が周方向に交互に噛み合うように2つ1組のステータ2を対向配置すると共に、ステータ歯21の外周側に励磁コイル25を外挿配置した中間部品である。本例のインダクタ型モータ1では、中間プレート26(
図1)を介在して軸方向に2つのステータブロック20が同軸配置されている。
【0038】
励磁コイル25は、
図3及び
図6に示すごとく、非磁性材料よりなる薄肉略円筒状のボビン250(
図3)の外周に電線251を巻き付けたものである。ボビン250は、ステータブロック20に対して隙間なく外挿できるように構成してある。ボビン250は、軸方向の両端に、電線251の巻き付けを容易にするための大径の側板252を有している。なお、本例では、非磁性材料である樹脂(PBT)よりなるボビン250を採用した。電線251としては、材質ポリウレタン銅線よりなるものを採用した。
【0039】
ボビン250の側板252の外形状は完全な円形ではなく、内周側に窪む凹み部255が外周に形成されている。この凹み部255は、励磁コイル25の給電リード線(図示略)等を収容するための形状である。
【0040】
ステータブロック20では、ステータ歯21の先端を支持する支持部材27を介在して2つのステータ2が組み合わされている。支持部材27は、ステータブロック20を構成する2つのステータ2にそれぞれ装着されている。支持部材27は、ステータ歯21の先端側から挿入されてステータ歯21の根本側に外挿配置される。このように装着された支持部材27は、装着された側のステータ2ではなく、対向配置された他方のステータ2のステータ歯21の先端を支持する。なお、
図1及び
図6の組立図では、支持部材27を図示するに当たって、挿入する側に当たるステータ歯21の先端側ではなく、装着される側である保持板部22側に図示してある。
【0041】
支持部材27は、
図7のごとく、ステータ歯21の配列円の外周側に位置する環状部273と、ステータ歯21を支持するように環状部273の内周側に設けられたガイド部271と、を有している。支持部材27は、ステータ2に外挿配置されて保持された状態で組み付けられる。支持部材27は、ステータ歯21の先端側から外挿され、ステータ2の保持板部22(
図4、
図6参照。)にガイド部271が当接する状態でステータ2に装着される。
【0042】
ガイド部271は、ステータ2に装着されたとき、周方向に隣り合うステータ歯21の間隙から内周側に突出するように形成されている。ガイド部271の周方向の位置は、ステータ2に設けられたスタビライザ23に一致している。ガイド部271には、ステータ歯21の先端を挿入する挿入孔270が穿設されている。この挿入孔270には、装着された側のステータ2ではなく、このステータ2に対して対向配置された他方のステータ2のステータ歯21の先端が収容される。
【0043】
支持部材27では、その厚さ方向においてガイド部271と環状部273とが段違いに形成されている。環状部273に対して段違いに形成されたガイド部271によれば、スタビライザ23の厚さ方向の寸法を回避でき、保持板部22に対して環状部273を面一に近く配置できる。このように保持板部22に対して面一に近く環状部273を配置できれば、支持部材27の厚さ分だけ励磁コイル25の軸方向の寸法を短縮等することにより、支持部材27を組み込むスペースを確保する必要が生じない。このように本例の支持部材27は、磁気的な特性を左右する寸法等を変更することなく、ステータブロック20へ組み込み可能である。
【0044】
なお、環状部273の外周形状は、完全な円形ではなく、周方向の1箇所に凹み部275が形成されている。この凹み部275は、励磁コイル25の給電リード線(図示略)等を収容するための形状である。
【0045】
回転子4は、
図1〜
図3に示すごとく、インダクタ型モータ1の回転出力を取り出すための回転シャフト(回転軸)41を有し、回転シャフト41に対して2個のマグネットロータ40を外挿固定したものである。マグネットロータ40は、ステータ2のステータ歯21がなす配設円の内周側に、回転可能な状態で内挿される。
【0046】
マグネットロータ40は、略円柱形状の外周面に、周方向に交互にN極及びS極が現れる着磁面401を有している。なお、本例では、材質ネオジウムよりなるマグネットロータ40を採用した。マグネットロータ40の材質としては、上記のほか、フェライト、サマリウムコバルト等を採用することができる。
【0047】
各マグネットロータ40は、他方のマグネットロータ40に隣接する端部に、断面半円形の係合部403(
図11)を有している。回転子4では、各マグネットロータ40の断面半円形の係合部403が円形状をなすように組み合わさって中間凹部42が形成されている(
図3)。インダクタ型モータ1の組立状態では、ステータ2の保持板部22及び中間プレート26がこの中間凹部42に外挿配置される。
【0048】
中間プレート26は、
図10に示すごとく、モータケース5(
図2)の内径に略一致する外径と、中間凹部42(
図3)よりも大きい内径と、を呈する略円環板状の板状部材である。この中間プレート26は、磁性材料よりなり、ステータブロック20を構成する2つ1組のステータ2を磁気的に接続する経路を構成している。なお、本例では、磁性材料であるSPCEよりなる中間プレート26を採用した。
【0049】
中間プレート26は、2つのステータ2を背中合わせの状態で保持可能なように構成されている。中間プレート26には、各ステータ2の係合凸部231(
図4参照。)を収容するための位置決め孔261が周方向に3カ所ずつ設けられている。一方のステータ2に対応する位置決め孔261と、他方のステータ2に対応する位置決め孔261とは、周方向に15度ずつずれた位置に設けられている。
【0050】
中間プレート26の位置決め孔261の周方向位置は、対応する側端プレート52の位置決め孔521の周方向位置に対して回転方向(周方向)に30度ずつずれている。このような構成により、この側端プレート52の位置決め孔521に係合凸部231を係合したステータ2と、中間プレート26の位置決め孔261に係合凸部231を係合したステータ2とを、回転方向に30度ずらして対向配置できる。
【0051】
なお、中間プレート26の外周形状は完全な円形ではなく、内周側に窪む凹み部262が周方向の1箇所に形成されている。この凹み部262は、励磁コイル25の給電リード線(図示略)等を収容するための形状である。
【0052】
次に、本例のインダクタ型モータ1の構成がさらに明確となるよう、
図11〜
図13を用いて各部品の組み付け手順を説明する。まず、本例のインダクタ型モータ1は、
図1に示すごとく、ステータ歯21が噛み合うようにステータ2を対向配置すると共に励磁コイル25を外挿したステータブロック20と、外周面にN極及びS極を交互に設けたマグネットロータ40を含む回転子4を、モータケース5に組み付けたものである。インダクタ型モータ1では、同軸上に2組配列されたステータブロック20の内周側に、マグネットロータ40がそれぞれ配置されている(
図1)。
【0053】
このインダクタ型モータ1を作製するに当たっては、中間プレート26を介して背中合わせの2つのステータ2が中間凹部42に外挿配置された状態で、2つのマグネットロータ40が同軸配置された回転子4(
図11参照。)を作製する。
この回転子4を作製するに当たって、本例では、中間プレート26及びステータ2を除いてマグネットロータ40のみを第1の回転シャフト411に外挿固定する第1のロータ外挿工程、第1の回転シャフト411に外挿固定した各マグネットロータ40の外周面を着磁するロータ着磁工程、第1の回転シャフト411から各マグネットロータ40を抜き取るロータ抜き取り工程、及び中間プレート26等と共にマグネットロータ40を第2の回転シャフト41に外挿固定する第2のロータ外挿工程を、この順番で実施した。
【0054】
上記第1のマグネットロータ外挿工程では、
図11及び
図12に示すごとく、生産治具としての第1の回転シャフト411に対して、着磁前の2個のマグネットロータ40を外挿、固定する。ここで、2個のマグネットロータ40を外挿固定するに当たっては、それぞれの断面半円形状の係合部403が組み合わさるよう、各マグネットロータ40の回転方向の相対位置を調整する。
【0055】
その後、上記ロータ着磁工程を実施し、各マグネットロータ40に多極着磁を施し、その外周面に着磁面401を設けた。このロータ着磁工程では、6カ所のN極及びS極が周方向に交互に現れる着磁面401を、各マグネットロータ40の外周面に形成した。本例のロータ着磁工程では、同軸上に配列した2個のマグネットロータ40について、各磁極の回転方向(周方向)の形成位置が同一となるように着磁した(
図12)。
【0056】
その後、上記ロータ抜き取り工程を実施し、生産治具としての上記第1の回転シャフト411から着磁済みの2個のマグネットロータ40を抜き取りし、上記第2のロータ外挿工程を実施する。この第2のロータ外挿工程は、2個のステータ2を保持した中間プレート26を軸方向の中間に位置させた状態で、着磁済の2個のマグネットロータ40を第2の回転シャフト41に外挿する工程である。
【0057】
第2のロータ外挿工程を実施するに当たっては、ステータ2及び支持部材27が中間プレート26の両面側に保持された中間部品(図示略)を準備する必要がある。中間プレート26の両面側にステータ2を保持させた後、ステータ歯21の先端側から支持部材27を装着すれば、この中間部品を準備できる。
【0058】
ここで、中間プレート26に各ステータ2を保持させるに当たっては、上記のごとく、中間プレート26の一方の3カ所の位置決め孔261(
図10参照。)に一方のステータ2の係合凸部231(
図4参照。)を係合させると共に、他方の3カ所の位置決め孔261に他方のステータ2の係合凸部231を係合させる。ここで、位置決め孔261と位置決め孔261とは、その穿孔位置を周方向に15度ずつずらしてある。それ故、上記のように2個のステータ2を中間プレート26に保持させれば、各ステータ2を周方向に15度ずらすことができる。
【0059】
中間プレート2の両面側に保持されたステータ2を元に上記の中間部品を完成させるに当たっては、各ステータ2のステータ歯21の先端側から支持部材27を外挿していく。ステータ歯21の根本に当たる保持板部22に対して環状部273がほぼ面一になるように支持部材27を装着する(
図8の状態)。
【0060】
第2のロータ外挿工程では、まず、ステータ2及び支持部材27を中間プレート26の両面側に保持した上記の中間部品を、回転子4の回転シャフト41となる第2の回転シャフト41に外挿する。
【0061】
その後、上記中間部品を外挿した回転シャフト41の両端側から、着磁済のマグネットロータ40を外挿する。回転シャフト41に対してマグネットロータ40を外挿するに当たっては、マグネットロータ40の一方の端部に設けた係合部403を挿入方向の先端とした。一方の端部からマグネットロータ40を外挿、固定した後、他方の端部からもう一方のマグネットロータ40を外挿する。
【0062】
ここで、マグネットロータ40を回転シャフト41に組み付けるに当たっては、上記第1のロータ外挿工程と同様、各マグネットロータ40の係合部403を組み合わせている。それ故、上記第2のロータ外挿工程によれば、各マグネットロータ40の回転方向の相対位置を、上記ロータ着磁工程を実施した際と同様に設定できる。
【0063】
さらに、
図1に示すごとく、軸方向両端側に位置するステータ2や励磁コイル25等を組み付けし、モータケース5に収容する最終の組み立て工程を実施する。この最終の組み立て工程を実施するに当たっては、組み付けるステータ2に対して支持部材27を装着しておく。上記と同様、支持部材27は、ステータ歯21の根本側に装着する(
図8)。
【0064】
最終の組み立て工程では、
図1及び
図2に示すごとく、ステータブロック20を組み付けた回転子4をケース50に挿入していく。ステータ2、中間プレート26、励磁コイル25、支持部材27が正しく組み付けられた回転子4であれば、各部品の外周に設けられた凹み部が略一直線上に配置され、励磁コイル25の給電リード線(図示略)等を収容可能な状態となる。
【0065】
ケース50に回転子4を収容した後、予め軸受メタル54を取り付けた側端プレート52を両端に取り付ける。このとき、側端プレート52の位置決め孔521にステータ2の係合凸部231が収容されるように周方向位置を調整しながら組み付けを行う。
【0066】
本例のインダクタ型モータ1は、長いステータ歯21を備えたことで、小径でありながら高出力特性のモータである。長いステータ歯21の場合にはステータ歯21の剛性の確保が重要となり、剛性が十分でないとステータ歯21がマグネットロータ40側に吸着されて内周側に撓み、マグネットロータ40の外周面に接触するおそれが生じる。
【0067】
これに対して、本例のインダクタ型モータ1では、ステータ歯21の先端を支持する支持部材27を備えているので、ステータ歯21が撓んでしまうおそれが少ない。さらに、この支持部材27は、外周側から吊り上げるようにステータ歯21の先端を支持する構造となっており、内周側は中空の構造となっている。内周側が中空の構造となっていれば、回転シャフト41を軸支する軸受メタル54等との干渉を未然に回避でき、軸受メタル54等を回避するための特別な構造を新たに設計等する必要が生じない。
【0068】
さらに、本例の支持部材27は、ステータ歯21の先端を支持するガイド部271と、ガイド部271が設けられた環状部273とが、支持部材27の厚さ方向に段違いに形成されている。この段違いの構造を採用した支持部材27では、環状部273とステータ2の保持板部22を面一に近づけることができ、励磁コイル25の軸方向の寸法を短縮させることなく支持部材27の組み込みが可能となっている。支持部材27の組み込みによってインダクタ型モータ1の磁気的特性が左右されるおそれが極めて少なく、インダクタ型モータ1の出力特性が損なわれることもない。
【0069】
以上のように構成されたインダクタ型モータ1を構成するステータ2は、径方向外周側に向けて突出する突出片を形成した中間加工部材29を元に、ステータ歯21となる突出片を曲げ起こして形成される。中間加工部材29の突出片を長くすれば、細長いステータ歯21を備えたステータ2を作製できる。細長いステータ歯21を有するインダクタ型モータ1であれば、小径であっても高出力特性を実現可能である。
【0070】
このインダクタ型モータ1は、ステータ歯21を支持する支持部材27を備えている。この支持部材27は、略環状を呈すると共に、その内周側に設けられたガイド部271によってステータ歯21を支持する。支持部材27によってステータ歯21が支持されているため、マグネットロータ40側から作用する吸着力によってステータ歯21が内周側に撓むおそれが少ない。内周側へのステータ歯21の撓みを抑制できれば、マグネットロータ40との干渉を回避でき、異音の発生や機械的なトラブルの発生を抑制できる。
【0071】
以上のように、本発明のインダクタ型モータ1は、小径であっても高出力特性を実現可能な優れた特性のモータである。
【0072】
本例のインダクタ型モータ1では、ステータ歯21の先端を支持する支持部材27を採用している。これに代えて、ステータ歯21の立設方向の中間的な位置を支持する支持部材を採用することも良い。さらに、ステータ歯21の立設方向の略中央に当たる位置を支持する支持部材についてガイド部を周方向に12箇所設ければ、2つ1組のステータ2の間で1つの支持部材を共用する構造を実現できる。
【0073】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更、あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。