(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空環境を形成するチャンバと、このチャンバ内に基板を保持する基板保持部と、この基板保持部に対向して配置されプラズマを発生させる電極ユニットと、前記基板保持部と前記電極ユニットとの間に設けられた複数の原料ガス供給部とを備え、前記原料ガス供給部から供給される原料ガスをプラズマ環境に曝して基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、
前記電極ユニットは、誘導結合型の電極部を有しており、この電極部はU字状に形成されており、直線状に形成された直線状部分が、前記チャンバ内に配置され、かつ、同じ高さ位置で平行な状態で設けられ、
前記基板保持部は搬送機能を有しており、前記電極部の前記直線状部分を跨ぐ方向に走行するように構成され、
前記原料ガス供給部は、前記誘導結合型の電極部が形成するプラズマ領域が相対的に高密度になる電極部間領域を挟む位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記薄膜形成装置では、製膜レート(単位時間あたりの薄膜形成速度)を向上させることができないという問題があった。すなわち、誘導結合型の電極部104では、その電極部104間に他の領域よりも高密度なプラズマ領域(高密度プラズマ領域107という)がほぼ一様に形成される(
図9参照)。この高密度プラズマ領域107に原料ガスが供給されることにより、原料ガスが効率よくプラズマ処理され、基板102上に薄膜108を形成することができる。
【0005】
近年では、薄膜108の製膜コストを低減させることが要望されているため、薄膜108の製膜レートを向上させることにより製造効率を上げて製膜コストを下げることが考えられる。しかし、製膜レート向上のために原料ガス供給部106から供給される原料ガスの供給量を増加させると、
図10に示すように、基板102上には、噴出孔に近い領域で厚く、噴出孔から遠い領域では薄い薄膜108が形成される結果となり、原料ガス供給部106から遠い領域では同じ高密度プラズマ領域107でありながら薄膜108が形成されにくいという問題があった。すなわち、原料ガス供給部106からの原料ガス供給量を増加させて製膜レートを向上させようとしても、高密度プラズマ領域107を全域に亘って有効に使用することができず、その結果、膜厚分布が乱れるということとなり、容易には製膜レートを向上させることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、膜厚分布が乱れることなく、製膜レートを向上させることができる薄膜形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の薄膜形成装置は、真空環境を形成するチャンバと、このチャンバ内に基板を保持する基板保持部と、この基板保持部に対向して配置されプラズマを発生させる電極ユニットと、前記基板保持部と前記電極ユニットとの間に設けられた複数の原料ガス供給部とを備え、前記原料ガス供給部から供給される原料ガスをプラズマ環境に曝して基板上に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、前記電極ユニットは、誘導結合型の電極部を有しており、
この電極部はU字状に形成されており、直線状に形成された直線状部分が、前記チャンバ内に配置され、かつ、同じ高さ位置で平行な状態で設けられ、前記基板保持部は搬送機能を有しており、前記電極部の前記直線状部分を跨ぐ方向に走行するように構成され、前記原料ガス供給部は、前記誘導結合型の電極部が形成するプラズマ領域が相対的に高密度になる
電極部間領域を挟む位置にそれぞれ配置されていることを特徴としている。
【0008】
上記薄膜形成装置によれば、複数の原料ガス供給部が誘導結合型の電極部が形成する高密度プラズマ領域を挟む位置にそれぞれ配置されているため、それぞれの原料ガス供給部から噴出された原料ガスが高密度プラズマ領域に曝されることにより基板上全体に亘ってほぼ一定膜厚の薄膜を形成することができる。すなわち、原料ガス供給部が単体である場合には、原料ガス供給部から離れるに従って薄膜の膜厚が薄く形成されていたが、原料ガス供給部を高密度プラズマ領域を挟むようにそれぞれ配置されることにより、従来薄く形成されていた領域にも原料ガスを供給することができるため、従来薄く形成されていた領域の製膜量を増加させることができる。すなわち、薄膜は、高密度プラズマ領域を挟んで対称的に形成されることになり、基板上の製膜領域には、ほぼ均一厚さの薄膜を形成することができる。したがって、基板上にほぼ均一厚さの薄膜が形成されるため、原料ガスの供給量を増加させることにより、膜厚分布を乱すことなく、容易に製膜レートを向上させることができる。
【0009】
また、前記原料ガス供給部は、原料ガスが噴射される噴出孔が前記誘導結合型の電極部よりも
前記電極部間領域側に位置するように配置されている構成にしてもよい。
【0010】
この構成によれば、原料ガス供給部が高密度プラズマ領域側に位置することにより、原料ガスが高密度プラズマ領域に曝されやすくなり、原料ガスのプラズマ処理効率を高めて製膜レートを向上させることができる。
【0011】
また、さらに、前記原料ガス供給部は、原料ガスが噴射される噴出孔が
前記電極部間領域内に位置するように配置されている構成にすることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、噴出孔から供給される原料ガスが確実にプラズマ処理されるため、より一層、原料ガスのプラズマ処理効率を高めて製膜レートを向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薄膜形成装置によれば、膜厚分布が乱れることなく、製膜レートを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態における薄膜形成装置を示す概略的な正面図であり、
図2は、電極ユニットを上方から見た概略図である。
【0022】
図1、
図2に示すように、薄膜形成装置1は、チャンバ2とそのチャンバ2内に設けられる基板保持部4と電極ユニット3とを有しており、電極ユニット3によりプラズマを発生させた状態でチャンバ2内に原料ガスが供給されると、原料ガスが励起され製膜粒子が生成される。そして、基板Wに堆積することにより、水分、酸などの侵入を防止する封止膜等の薄膜Cが形成される。
【0023】
チャンバ2は、真空環境を形成し、その内部で発生した製膜粒子を堆積させて基板W上に薄膜Cを形成させるための密閉容器である。このチャンバ2には、基板Wを保持する基板保持部4と、プラズマを発生させる電極ユニット3とが互いに対向する位置に配置されており、基板保持部4と電極ユニット3との間に原料ガス供給部5が設けられている。すなわち、電極ユニット3、原料ガス供給部5、基板保持部4は、これらがこの順に鉛直方向上向きになるように配置されている。そして、原料ガス供給部5から原料ガスが供給されると、原料ガスが電極ユニット3で形成されたプラズマ環境に曝されることにより、基板保持部4に保持された基板W上に薄膜Cが形成される。
【0024】
基板保持部4は、基板Wを保持するためのものである。本実施形態では、基板Wを支持するハンド41により電極ユニット3上に支持されることにより保持されるようになっている。具体的には、基板Wは、矩形の平板形状を有しており、中央部分に薄膜Cを形成する製膜領域とその両端に薄膜非形成領域とを有している。ハンド41は、基板Wの薄膜非形成領域を支持することにより保持される。すなわち、基板Wは、基板保持部4により保持された状態では、薄膜Cを形成する面が電極ユニット3側(下向き)に向く姿勢で保持される。
【0025】
また、基板保持部4と原料ガス供給部5との間には、基板Wの製膜領域を制限するマスク8が設けられている。マスク8は、平板状部材であり、その中央部分に開口部81を有している。マスク8は、基板保持部4に保持された基板Wに対して一定距離をおいて配置されており、このマスク8により、基板Wの製膜領域に薄膜を形成することができる。すなわち、マスク8の開口部81は、基板Wの製膜領域とほぼ同じ形状に形成されており、基板Wが基板保持部4に保持された状態では、電極ユニット3、原料ガス供給部5、基板保持部4の配列方向に見て基板Wの製膜領域と開口部81の開口領域とが一致するように配置されている。したがって、原料ガスがプラズマ処理されて生成された製膜粒子は、マスク8の開口部81を通過したもののみが基板Wに堆積することにより、基板W上には薄膜が製膜領域に形成される。
【0026】
また、電極ユニット3は、プラズマを発生させるものである。本実施形態の電極ユニット3は、U字状の誘導結合型の電極部31と高周波電源9を有している。
【0027】
電極部31は、
図2に示すように、Cu等の導体で形成される電極本体31aと、ガラス等の非誘電体で形成される誘電体部31bとを有しており、電極本体31aを誘電体部31bで覆うように形成され全体としてU字状に形成されている。そして、電極部31は、
図2に示すように、外側からチャンバ2の壁面を貫通してチャンバ2内部に侵入し、貫通したチャンバ2の壁面に対面するチャンバ2の壁面を貫通するように延びている。そして、チャンバ2の外側で180°向きを変えて、さらにチャンバ壁を貫通してチャンバ2内部に入り、再度チャンバ壁を貫通して設けられている。すなわち、電極部31は、直線状に形成される部分がチャンバ2内で同じ高さ位置に位置した状態で設けられている。言い換えれば、電極部31は、直線状に延びる部分(直線状部分34)がほぼ平行な状態でチャンバ2内に位置しており、その他の部分がチャンバ2の外側に位置するように設けられている。
【0028】
また、電極部31の端部は、高周波電源9と接続されており、高周波電源9のスイッチが入れられることにより、チャンバ2内に位置する電極部31の平行な直線状部分34にプラズマが発生するようになっている。ここで、
図3は、電極部31付近のプラズマの出力状態を示す図である。
図3に示すように、直線状部分34の電極部31間でプラズマの出力35(破線で示す)が高くなり、電極部31間から電極部31の外側に向かって出力35が小さくなるように形成される。すなわち、電極部31間では、高出力35(高密度)のプラズマが一定領域形成され、電極部31付近で出力35が低下するように形成される。本実施形態では、電極部31間に形成される一定領域のプラズマ領域を高密度プラズマ領域36と呼ぶ。そして、この高密度プラズマ領域36では、プラズマの出力35が高いため、原料ガスが高効率でプラズマ処理される。すなわち、この電極部31にプラズマが発生する状態で、チャンバ2の壁面に設けられた放電ガス供給部21(
図1参照)から放電ガスが供給されると、放電ガスがプラズマに曝されることにより分解され反応ガスが形成される。そして、この反応ガスが原料ガスと反応することにより製膜粒子が形成される。なお、電極ユニット3と原料ガス供給部5との間には、アースされた金属製のメッシュ部材が設けられており、このメッシュ部材により、反応ガスと共に形成される不要な粒子が捕獲されるようになっている。
【0029】
なお、この製膜粒子の形成は、チャンバ2内を真空環境にして行われる。すなわち、このチャンバ2の天井部分の壁面には、チャンバ2内を排気する排出口22(
図1参照)が設けられている。この排出口22は、真空ポンプ(不図示)と配管で接続されており、真空ポンプを作動させることによりチャンバ2内を所定の真空度に調節できるようになっている。すなわち、製膜粒子の形成時(製膜時)には、真空ポンプを作動させることにより、チャンバ2内を所定の真空環境に調節して行われる。
【0030】
また、原料ガス供給部5は、チャンバ2内に薄膜Cを形成する原料ガスを供給するものである。ここで、
図5は、原料ガス供給部5を示す図であり、
図6はその断面図であり、(a)は、噴出口位置における断面図、(b)は噴出口以外の位置における断面図である。原料ガス供給部5は、噴出孔61を有しており、この噴出孔61から原料ガスを供給するようになっている。
【0031】
本実施形態の原料ガス供給部5は、
図1、
図3に示すように、2つ設けられており、それぞれが高密度プラズマ領域36を挟む位置に設けられている。すなわち、高密度プラズマ領域36の外縁付近に配置されており、互いに高密度プラズマ領域36に対して対称になる位置に配置されている。具体的には、原料ガス供給部5の噴出孔61が電極部31よりも高密度プラズマ領域36側に位置するように配置されており、基板Wの製膜領域に対し、互いに一方向に離れた位置に配置されている。すなわち、原料ガス供給部5が1つのみの場合には、
図4の実線で示すように、基板W上の薄膜C1が原料ガス供給部5付近で厚く形成され、原料ガス供給部5から離れるに従って薄く形成されるが、原料ガス供給部5を高密度プラズマ領域36に対して対称になる位置に配置することにより、高密度プラズマ領域36の出力35がほぼ一定であるため、互いの原料ガス供給部5の製膜量を補完し合うことにより、基板Wの製膜領域にほぼ均一厚みの薄膜C(破線)を形成することができる。
【0032】
なお、高密度プラズマ領域36に対して対称になる位置とは、完全に対称になる位置以外にも、装置の組み立て精度、製膜中心とのずれ等を考慮して、事実上、互いの原料ガス供給部5の製膜量を補完し合うことにより、薄膜が製品状問題ない程度に平坦に形成される対称位置を含む。
【0033】
これらの原料ガス供給部5は、同一の構造を有しており、
図5に示すように、複数の噴出孔61(
図6参照)を有する多孔ノズル5aである。原料ガス供給部5は、原料ガスタンク(不図示)と配管で接続されており、多孔ノズル5aを通じてチャンバ2内に原料ガスを供給する。
【0034】
多孔ノズル5aは、チャンバ2の壁面に取付けられる接続配管51と原料ガスが噴出される噴出部52とを有している。この噴出部52は、一方向に延びる略円筒形状の配管本体52aを有しており、その配管本体52aの中央部分で接続配管51と連結されている。すなわち、多孔ノズル5aは、略T字状の配管で形成されており、噴出部52が基板Wの表面に近接する状態で、噴出部52の配管本体52aの延びる方向が基板Wの幅方向とほぼ平行をなすように配置されている。そして、配管本体52aの長手方向寸法は、基板Wの幅方向寸法よりも大きい寸法に形成されており、噴出される原料ガスが基板Wの幅方向寸法に一様に供給されるようになっている。
【0035】
また、噴出部52は、原料ガスが噴出する噴出孔61と、製膜付着カバー7とを有している。本実施形態では、配管本体52a内に平板状の仕切板6が設けられており、この仕切板6に噴出孔61が設けられている。具体的には、仕切板6は、配管本体52a内に接続配管51と直交する姿勢で、接続配管51との接続部から所定間隔置いて設けられている。すなわち、仕切板6と接続配管51との間には、配管本体52a内に長手方向に延びる空間(貯留空間S)が形成される。そして、仕切板6には、仕切板6の厚さ方向に貫通する複数の噴出孔61が長手方向に等間隔に並んだ状態で一様に配置されている。
【0036】
この噴出孔61は、本実施形態では円形に形成されており、噴出孔61の開口面積は、接続配管51の開口面積に比べて遙かに小さくなるように形成されている。そして、噴出孔61の貫通方向は、基板Wの表面に向かう方向に設定されている。これにより、接続配管51を通じて供給される原料ガスが基板Wの幅方向全体に一様に供給される。すなわち、原料ガスタンクから接続配管51を通じて供給される原料ガスは、仕切板6で遮られることにより、貯留空間S内全体に広がり一時的に貯留される。そして、さらに原料ガスが供給されることにより貯留空間S内の圧力が高くなることにより、すべての噴出孔61から原料ガスが噴出される。したがって、仕切板6の長手方向に複数形成された噴出孔61から原料ガスが噴出されることにより、基板Wの幅方向に亘って原料ガスが一様に供給される。そして、噴出される原料ガスがプラズマ環境に曝されることにより製膜粒子が形成され、製膜粒子が基板W上に付着し堆積することにより薄膜Cが形成される。
【0037】
なお、本実施形態では、噴出孔61からHMDSガス(ヘキサメチルジシラザンガス)、放電ガス供給部21からアルゴンガス、水素ガスが供給されることにより、Si化合物(第1薄膜Cを形成する製膜粒子)が生成され、噴出孔61からHMDSガス、放電ガス供給部21から酸素ガスが供給されることにより、SiO2(第2薄膜Cを形成する製膜粒子)が生成される。これを交互に繰り返すことにより、基板W上(電子デバイス上)には第1薄膜C、第2薄膜Cを複数層備える薄膜C(封止膜)を形成することができる。
【0038】
また、製膜付着カバー7は、噴出孔61が直接プラズマ環境に曝されるのを抑えるためのものである。この製膜付着カバー7は、噴出孔61の位置よりも噴出側に突出するように設けられる。本実施形態では、製膜付着カバー7は、仕切板6の位置から噴出側(
図6の矢印方向)に延びる配管本体52aの一部によって形成されている。具体的には、仕切板6から噴出側に所定距離離れるようにして、仕切板6全体を覆うように形成されている。すなわち、一方向に並ぶ複数の噴出孔61の配列方向に沿って形成されており、噴出孔61の位置から噴出側に所定距離離れるようにして、これらの噴出孔61を覆うように設けられている。これにより、噴出孔61と電極部31との間に製膜付着カバー7が介在し、噴出孔61が電極部31により形成されるプラズマ環境に直接曝されることを回避することができる。すなわち、噴出孔61と電極部31との間に製膜付着カバー7が存在することにより、噴出孔61は、製膜付着カバー7の影に入ることになり、放電ガスがプラズマに曝されて形成される反応ガスが噴出孔61に到達しにくくなる。そのため、噴出孔61付近で反応ガスと原料ガスとが反応して形成される製膜粒子が噴出孔61に付着するという現象を抑えることができる。すなわち、噴出孔61に付着する製膜粒子の量を抑えることができるため、噴出孔61に形成された製膜粒子の膜により噴出孔61が塞がれるという問題を抑えることができる。なお、噴出側とは、噴出孔61から原料ガスが噴出される方向、すなわち、製膜付着カバー7側である。
【0039】
また、製膜付着カバー7には、開口部71が形成されている。本実施形態では、開口部71は円形を有する貫通孔であり、それぞれの噴出孔61に対応して噴出孔61から噴出方向に延長した位置に形成されている。したがって、噴出孔61から噴出される原料ガスは、この開口部71を通じてチャンバ2内に噴出される。この開口部71は、噴出孔61に比べて十分に大きく形成されており、開口部71の開口面積は、噴出孔61の開口面積よりも大きくなるように形成されている。具体的には、このような薄膜形成装置では、チャンバ2の真空状態を開放してメンテナンス作業が行われ付着した製膜粒子の膜P(
図6参照)が除去されるが、開口部71は、次のメンテナンス作業が行われるまでに開口部71が製膜粒子の膜Pで塞がれることのない程度の大きさに形成されている。すなわち、放電ガスがプラズマに曝されて形成される反応ガスは、開口部71を通じて噴出される原料ガスと反応することにより製膜粒子が形成される。そして、この製膜粒子は開口部71に付着し開口部71には製膜粒子によって形成される薄膜Cが成長する。しかし、開口部71は十分な大きさに形成されているため、開口部71が薄膜Cで塞がれることはない。よって、基板W上に薄膜Cを形成するのに必要な原料ガスを噴出孔61から噴出してチャンバ2内に供給することができる。
【0040】
また、
図7は、原料ガス供給部5の噴出孔61、高密度プラズマ領域36、基板Wとの関係を示す図である。上述の通り、これらの原料ガス供給部5は、高密度プラズマ領域36に対して対称となる位置に配置されており、
図7では片側のみの原料ガス供給部5を表している。原料ガス供給部5は、互いに高密度プラズマ領域36に対して対称になる位置であって、
図7に示す例では、噴出孔61が高密度プラズマ領域36内に位置するように配置されている。すなわち、すべての噴出孔61が高密度プラズマ領域36に完全に含まれるように原料ガス供給部5が配置されている。これにより、噴出孔61から開口部71を通じて噴出される原料ガスが噴出孔61及び開口部71を出てすぐに高密度なプラズマ環境に曝されるため、効率よく製膜粒子を生成することが可能になる。なお、双方の噴出孔61から原料ガスが噴出されるため、原料ガス供給部5が単体の場合に比べて生成される製膜粒子の量が多くなり、製膜粒子が原料ガス供給部5に付着する可能性が高くなるが、噴出部52に設けられた製膜付着カバー7により、噴出孔61が塞がれることなく安定して原料ガスを供給し製膜粒子を生成することができる。
【0041】
また、原料ガス供給部5の噴出孔61は、その噴射方向が基板Wの表面に向かう方向に設定されている。具体的には、噴出孔61の噴射方向は、基板Wの製膜領域に向かう方向に設定されており、噴出孔61は、その貫通方向がマスク8の開口部81を通じて製膜領域に向かう方向に形成されている。すなわち、原料ガス供給部5は、電極ユニット3、原料ガス供給部5、基板保持部4の配列方向に見て、噴出孔61がマスク8の開口部81内に位置するように配置されており、さらに貫通方向が基板Wの製膜領域に向かう方向に設定されていることにより、原料ガスの移動がマスク8で妨げられることなく、製膜領域に移動することができる。そして、原料ガスが製膜領域に向かって移動しつつプラズマ環境に曝されることにより、原料ガスから生成される製膜粒子も製膜領域に向かって移動しやすくなり基板W上に形成される薄膜の製膜レートを高めることができる。また、本実施形態では、噴出孔61の位置が、電極ユニット3、原料ガス供給部5、基板保持部4の配列方向に見て、マスク8の開口部81内に位置するように配置されているが、原料ガス供給部5、基板保持部4の配列方向に見て、マスク8の開口部81の外縁に位置する場合でも製膜レートを高めることができ、効率よく薄膜Cを形成することができる。なお、噴出孔61が開口部81の外側に位置した場合には、マスク8の外縁部分に製膜粒子が付着しやすくなり、マスク8交換の頻度が高めることとなる。
【0042】
このように、上記実施形態における薄膜形成装置によれば、複数の原料ガス供給部5が誘導結合型の電極部31が形成する高密度プラズマ領域36を挟む位置にそれぞれ配置されているため、それぞれの原料ガス供給部5から噴出された原料ガスが高密度プラズマ領域36に曝されることにより基板W上全体に亘ってほぼ一定膜厚の薄膜Cが形成される。すなわち、原料ガス供給部5が単体である場合には、原料ガス供給部5から離れるに従って薄膜Cの膜厚が薄く形成されていたが、原料ガス供給部5を高密度プラズマ領域36を挟むようにそれぞれ配置されることにより、従来薄く形成されていた領域にも原料ガスが供給でき、従来薄く形成されていた領域の製膜量を増加させることができる。すなわち、薄膜Cは、高密度プラズマ領域36を挟んで対称的に形成されることになり、基板W上の製膜領域には、ほぼ均一厚さの薄膜Cを形成することができる。したがって、基板W上にほぼ均一厚さの薄膜Cが形成されるため、原料ガスの供給量を増加させることにより、膜厚分布を乱すことなく、容易に製膜レートを向上させることができる。
【0043】
また、上記実施形態では、複数の原料ガス供給部5が2つ設けられる例について説明したが、高密度プラズマ領域36を挟むように配置すれば原料ガス供給部5を2つ以上配置してもよい。すなわち、高密度プラズマ領域36を挟むように高密度プラズマ領域36に対して対称的に配置することにより、互いの原料ガス供給部5の製膜量を補完し合うことができ、製膜レートを向上させつつ、基板W上にほぼ均一厚みの薄膜Cを形成することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、マスク8が設けられる例について説明したが、基板Wに製膜領域が設定されておらず、基板Wの表面全体に製膜する場合には、マスク8を省略してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、電極ユニットの電極部31、原料ガス供給部5、基板Wが、鉛直上向きにこの順に配置されている例について説明したが、これらが鉛直方向下向きに設定されていても製膜レートを向上させることができる。ただし、これらが鉛直上向きに配列されている方が、重力の影響で基板Wに異物が付着しにくくなるため、薄膜Cの膜質を向上させることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、基板Wが基板保持部4に保持されて静止している場合について説明したが、基板保持部4に搬送機能を設け、基板Wが電極部31を跨ぐ方向に走行するように構成してもよい。すなわち、高密度プラズマ領域36を通過するように基板Wを走行させることにより、高密度プラズマ領域36を挟むように配置された複数の原料ガス供給部5により供給される原料ガスが高効率でプラズマ雰囲気に基板Wが曝されるため、製膜レートを向上させつつ、基板W上にほぼ均一厚みの薄膜Cを形成することができる。