(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回り込み部は、前記主フレームに対して相対的に回動可能であり、前記回り込み部は、前記碍子連の下側に回り込まない姿勢をとっているときには前記碍子連の下側に回り込む向きに付勢されている、請求項3に記載の作業装置。
前記主フレームの下面には、前記碍子連の長手方向に沿った摺動移動中に前記碍子に引っかかることによって、前記上側カメラおよび前記下側カメラを、撮影のための所望の位置に位置決めすることができる位置決め凸部が設けられている、請求項1から5のいずれかに記載の作業装置。
前記主フレームは、接地器具の少なくとも一部を保持する接地器具保持部を備え、前記作業装置は、前記接地器具が帯電した電荷を除去すべき対象物に電気的に接続するために前記碍子連に沿って移動するものである、請求項1に記載の作業装置。
前記主フレームは、前記碍子連の長手方向に延在しつつ前記碍子連に当接する橇部材を備え、前記橇部材の前記長手方向の両端においては前記橇部材の下面が前記碍子連から遠ざかる向きに反り上がっている、請求項1から7のいずれかに記載の作業装置。
【背景技術】
【0002】
架空送電設備の一例を
図26に示す。架空送電設備においては、電力線1と鉄塔2との間を絶縁しつつ電力線1を支持するために、
図26に示すように、電力線1と鉄塔2との接続箇所に耐張装置20が用いられる。電力線1は、鉄塔2に直接触れることはなく、2つの耐張装置20によって支持されている。2つの耐張装置20の下方には電力線1がたるんだ状態で迂回する部分1aがある。耐張装置20の一例を
図27に示す。耐張装置20は、複数の碍子3を直列に連結して形成された碍子連10を含む。耐張装置20においては、電力線1の大きな張力に耐えられるように、
図27に示すように複数本の碍子連10を平行に並べて配置した構造とすることが一般的である。耐張装置20は、落雷対策として端部にアークホーン4と呼ばれる金属棒を備えることが一般的である。
図27に示した耐張装置20においては、2本の碍子連10が平行に配置されているが、3本以上の碍子連10を平行に配置した構成の耐張装置も実用化されている。
【0003】
碍子3は、通常、「懸垂碍子」と呼ばれるタイプの碍子である。碍子3としての懸垂碍子の一例を
図28に示す。懸垂碍子は笠状の磁器絶縁部の表裏両側に連結用金具をセメントなどで接合したものであり、笠の裏側には同心状のひだが設けられている。塩害、粉塵などの激しい場所では、通常の懸垂碍子に比べて笠の裏側のひだが深くなった形状の耐塩懸垂碍子も使われている。耐塩懸垂碍子も懸垂碍子の一種である。
【0004】
複数の碍子を直列に連結して形成された碍子連が複数本平行に並べて配置された構造を含む耐張装置において何らかの作業を行ないたい場合がある。従来、そのような耐張装置において作業を行なうためには、作業者が鉄塔に登り、身を乗り出して行なっていた。あるいは、作業すべき箇所が裏側であって作業者が回り込んで直接見ることができない場合には、操作棒の先端にミラーをつけたものを作業者が持って裏側も見えるようにしつつ作業が行なわれていた。
【0005】
このような耐張装置は鉄塔の上のような高所に設置されている場合が多く、鉄塔の上での作業は落下の危険を避けながらの作業であるため、作業者がとれる行動には限りがあった。しかも、停電にすることは極力避けなければならないため、作業は活線状態で行なうことが求められる。特に高圧送電線などでは、たとえ碍子などによって絶縁されているはずの場所であっても、誘導によって発生した電荷がもたらす高電圧による感電のおそれがあるため、作業者が触れることができる場所は限られていた。
【0006】
作業箇所に何らかの装置を近づけて行なうべき作業である場合は、作業箇所になるべく近い場所まで行った作業者が、作業に必要な装置を絶縁棒の先につけたものを手に持って、人力で絶縁棒を操作して必要な装置を耐張装置上の所望の箇所に近づけて作業を行なうことが考えられていた。
【0007】
たとえば作業が碍子の外観による点検作業であるならば、作業に必要な装置とは、たとえば点検用の撮影装置である。撮影装置を対象となる碍子に接近させて撮影を行なう必要がある。この場合の対処法のひとつとして、絶縁部材によって構成される操作棒の先端に撮影装置をつけたものを作業者が持って操作することについては、特開2011−87347号公報(特許文献1)および「1.架空送電保守用カメラ点検器の開発」、電気評論、第95巻第1号、平成22年1月20日発行、第103頁(非特許文献1)に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1における作業装置の平面図である。
【
図2】本発明に基づく実施の形態1における作業装置の正面図である。
【
図3】本発明に基づく実施の形態1における作業装置の側面図である。
【
図4】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を2本の碍子連に載せた状態の平面図である。
【
図5】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を2本の碍子連に載せた状態の正面図である。
【
図6】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を2本の碍子連に載せた状態の側面図である。
【
図7】本発明に基づく実施の形態1における作業装置が絶縁棒によって前後に移動する様子の説明図である。
【
図8】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を作業者が操作する様子の説明図である。
【
図9】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なオペレーションフックの平面図である。
【
図10】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なオペレーションフックの側面図である。
【
図11】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なオペレーションフックの正面図である。
【
図12】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なオペレーションフックの使用方法の第1の説明図である。
【
図13】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なオペレーションフックの使用方法の第2の説明図である。
【
図14】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なオペレーションフックの使用方法の第3の説明図である。
【
図15】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なテイクフックの平面図である。
【
図16】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なテイクフックの側面図である。
【
図17】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なテイクフックの使用方法の第1の説明図である。
【
図18】本発明に基づく実施の形態1における作業装置を操作するために使用可能なテイクフックの使用方法の第2の説明図である。
【
図19】テイクフックによって本発明に基づく実施の形態1における作業装置の回り込み部を持ち上げる様子の説明図である。
【
図20】本発明に基づく実施の形態2における作業装置の平面図である。
【
図21】本発明に基づく実施の形態2における作業装置の正面図である。
【
図22】本発明に基づく実施の形態2における作業装置の側面図である。
【
図23】本発明に基づく実施の形態2における作業装置を使用している様子の説明図である。
【
図24】本発明に基づく実施の形態2における作業装置を用いてクランプがアークホーンに固定された様子の斜視図である。
【
図25】本発明に基づく実施の形態2における作業装置が傾いた状態を示す正面図である。
【
図26】従来技術に基づく架空送電設備の一例の概念図である。
【
図27】従来技術に基づく耐張装置の一例の斜視図である。
【
図28】従来技術に基づく懸垂碍子の一例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
(構成)
図1〜
図6を参照して、本発明に基づく実施の形態1における作業装置について説明する。
【0017】
本実施の形態における作業装置101の平面図を
図1に示す。
図1における左右方向が作業装置101の移動方向である。
【0018】
作業装置101の正面図を
図2に示す。
図2は、作業装置101を
図1における右側から見た状態に相当する。作業装置101の側面図を
図3に示す。
図3は、作業装置101を
図1における下側から見た状態に相当する。
【0019】
作業対象となる2本の碍子連10に作業装置101を載せた状態の平面図、正面図、側面図を
図4〜
図6にそれぞれ示す。
図4および
図6においては、矢印91がいわゆる線路側、矢印92がいわゆるアース側を示す。通常、作業者はアース側の離れた場所に位置する。作業者は、先端にフックが付いた絶縁棒などを用いて作業装置101を操作する。
【0020】
本実施の形態における作業装置101は、複数の碍子3を直列に連結して形成された碍子連10が複数本平行に並べて配置された構造を含む耐張装置において作業を行なうための作業装置であって、前記耐張装置に含まれる複数本の碍子連10に対して横断するように上側からまたがり、碍子連10の長手方向に摺動可能な主フレーム31と、主フレーム31から下方に向かって延在する下部フレーム32とを備える。
【0021】
主フレーム31および下部フレーム32は、たとえばFRPで形成することができる。
本実施の形態では、下部フレーム32の先端はそれぞれ回り込み部33となっている。回り込み部33は、下部フレーム32の一部である。作業装置101は、主フレーム31の上側に下向きに上部カメラ37a,37bを備え、下部フレーム32の先端部である回り込み部33には上向きに下部カメラ38a,38bを備える。
図2および
図5に示すように、上部カメラ37a,37bは、撮影対象物の位置に応じて斜め下向きに設置してもよい。一方、下部カメラ38a,38bは、撮影対象物の位置に応じて斜め上向きに設置してもよい。回り込み部33においては、下部カメラ38a,38bが撮影しようとする側を照らすためのLED装置42が設置されている。LED装置42は、図示しないスイッチを適宜操作することにより、照明をON/OFFすることができる。
【0022】
回り込み部33は下部フレーム32の途中に設けられた回転軸を介して回動可能となっており、ばね41によって付勢されている。
【0023】
主フレーム31の中央には上側に突出するようにリング状の係止部35,36が設けられている。係止部35は主フレーム31の前側の端部近傍に配置されている。
図2では、係止部35は図示省略されている。主フレーム31の左右両端近傍には上側に突出するようにリング状の係止部39a,39bが設けられている。係止部35に絶縁棒の先端のフックを引っ掛けることによって、作業者は絶縁棒を通じて作業装置101を前後に移動させることができる。
【0024】
(作用・効果)
本実施の形態では、耐張装置に含まれる複数本の碍子連10に対して横断するように上側からまたがり、碍子連10の長手方向に摺動可能な主フレーム31を備えているので、碍子連10の長手方向に摺動することができる。これによって作業に必要な移動を容易にすることができる。さらに、主フレーム31から下方に向かって下部フレーム32が延在しており、下部フレーム32が碍子連10に対する引っ掛かりとなるので、作業装置101は、碍子連10から容易に外れて落下することもなく、複数本の碍子連10に対してまたがった姿勢を安定して維持することができる。すなわち、本実施の形態では、複数本の碍子連10に対して安定してまたがった状態で、主フレーム31を摺動させることができるので、耐張装置の長手方向のうちの所望の位置で作業を行なうことができる。
【0025】
作業装置101が2本の碍子連10に対してまたがった状態で、絶縁棒5によって前後に移動する様子を
図7に示す。絶縁棒5は、先端にフックが付いた棒であり、作業者が持つ部分は絶縁性の材料で形成されている。
【0026】
図8に示すように、作業者6は安全な足場7に立った状態で、絶縁棒5を介して作業装置101を碍子連10に沿って移動させ、所望の作業を行なうことができる。作業装置101は2本の碍子連10にまたがるように載っているので、姿勢が安定しており、作業装置101がふらつくことがない。したがって、絶縁棒5で作業のための細かい位置合わせをする必要はなく、絶縁棒5は前後方向の移動を伝えるための役割を果たせば足りる。よって、絶縁棒5を継ぎ足しによってかなり長く延長しても、安定して作業を行なうことができる。長い耐張装置においても作業員6は足場7からほとんど出ることなく、作業装置101を操作して、耐張装置の手前側の端から遠い側の端まで所望の作業を行なうことができる。このように、作業装置101によれば、容易に安定して安全に作業を行なうことができる。
【0027】
本実施の形態では、一例として、行なうべき「作業」が碍子の点検のための撮影作業であるものとして説明している。ここでいう撮影作業としては、碍子連10に含まれる碍子の各々、特に碍子同士の接続部分の外観を明瞭に撮影することが求められる。そのためには、本実施の形態では好ましいことに、さらに以下の構成を備えている。以下に順に説明する。
【0028】
本実施の形態で示したように、下部フレームの少なくとも一部が前記碍子連より下方にまで延在し、作業装置101は、主フレーム31に下向きに取り付けられた上側カメラ37a,37bと、下部フレーム32の碍子連10より下側となる部位に上向きに取り付けられた下側カメラ38a,38bとを備えることが好ましい。この構成を採用することにより、碍子連を上下の両方から一定した向きおよび距離で繰返し撮影することができる。これらのカメラは一定時間ごとに静止画撮影されるように設定して用いることも考えられるが、動画撮影モードにして、作業の間ずっと撮影し続けることが好ましい。
【0029】
下部フレーム32は、少なくとも1つの碍子連10の下側に回り込むように延在する回り込み部33を含み、下側カメラ38a,38bは回り込み部33に取り付けられていることが好ましい。この構成を採用することにより、下側カメラ38a,38bの位置を確実に碍子連の下方とすることができ、下方から見上げたアングルで碍子を撮影することができる。
【0030】
回り込み部33は、主フレーム31に対して相対的に変位することによって碍子連10の下側に回り込まない姿勢をとることができることが好ましい。この構成を採用することにより、作業装置101を碍子連に設置する際および碍子連から取り外す際に、回り込み部33が邪魔になるような場合にも、回り込み部33を変位させることによって退避させることができ、作業が容易となる。
【0031】
回り込み部33は、主フレーム31に対して相対的に回動可能であり、回り込み部33は、碍子連10の下側に回り込まない姿勢をとっているときには碍子連10の下側に回り込む向きに付勢されていることが好ましい。この構成を採用することにより、回り込み部33は、積極的に開いておかない限り、自然に碍子連10の下側に回り込んだ姿勢となるので、作業が容易となる。本実施の形態では、下部フレーム32の一部である回り込み部33は、主フレーム31に対して回動可能となっている。回り込み部33は、ばね41によって付勢されている。
【0032】
上側カメラ37a,37bおよび下側カメラ38a,38bは、絶縁体を主材料とする密閉ケースに収納された状態で設置されていることが好ましい。このような密閉ケースとしては、市販されている水中撮影用の樹脂製の密閉式カメラケースを利用することができる。この構成を採用することにより、周辺の高電圧がもたらす誘導によって上側カメラ37a,37bおよび下側カメラ38a,38bが破壊されることを防止することができる。
【0033】
主フレーム31の下面には、碍子連10の長手方向に沿った摺動移動中に碍子3に引っかかることによって、上側カメラ37a,37bおよび下側カメラ38a,38bを、撮影のための所望の位置に位置決めすることができる位置決め凸部34が設けられていることが好ましい。位置決め凸部34は、たとえば
図3に示すような楔形状の突起であってよい。特に丸みを帯びた楔形状であることが好ましい。位置決め凸部の形状は
図3などに示したものに限らない。位置決め凸部は、底辺が長く、高さが低く、頂点が丸みを帯びた三角形であることが好ましい。
【0034】
位置決め凸部34は、
図6に示すように碍子3に引っかかることによって一定の振動を作業者に伝える。作業者は絶縁棒5を介してこの振動を感じ取ることができ、作業装置101が作業すべき位置にきたことを知ることができる。位置決め凸部34は、低い突起に過ぎないので、作業者がさらに強く押すまたは引く動作をすれば、位置決め凸部34による碍子3への引っかかりは外れ、作業装置101はさらに移動することができる。このようにすれば、碍子連に含まれる各碍子に対してその都度停止して作業を確実に行なわせることができる。
【0035】
主フレーム31は、碍子連10の長手方向に延在しつつ碍子連10に当接する橇部材44を備え、橇部材44の前記長手方向の両端においては橇部材44の下面が碍子連10から遠ざかる向きに反り上がっていることが好ましい。この構成を採用することにより、作業装置101は碍子連10の上で円滑に移動することができる。
【0036】
主フレーム31は、フックを掛けることができる係止部を備えることが好ましい。本実施の形態では、例として
図1に示したように係止部35,36,39a,39bを備えている。これらの係止部の全てが必須というわけではないが、作業の便宜のためにはこれらの係止部をなるべく備えておくことが好ましい。係止部35は前側の端部近傍についているので、絶縁棒5を介して作業装置101を前後方向に移動させる際に好都合である。係止部36は、作業装置101のほぼ中心に設けられているので、作業装置101を吊り上げる際に好都合である。係止部39a,39bは作業装置101を安定して支持することができるので、係止部36を以て支持する作業者との間で作業装置101を受け渡す際に好都合である。
【0037】
本実施の形態で説明した係止部35,36,39a,39bなどの位置および数は、あくまで一例であり、これに限らない。
【0038】
作業装置101を前後方向に移動させるために用いられるフックとしては、たとえば、
図9〜
図11に示すようなものが使用されることが好ましい。このようなフックは「オペレーションフック」と呼ばれる。
図9はオペレーションフック45の平面図、
図10は側面図、
図11は正面図である。作業時にはこのようなオペレーションフック45を先端に取り付けた絶縁棒を用意しておくことが好ましい。オペレーションフック45を作業装置101の係止部35に係止させる際には、
図12に示すように、オペレーションフック45の尖った先端を係止部35の穴に側方からくぐらせ、次に手元の絶縁棒を90°ねじることによって
図13に示すように引っ掛け、さらに絶縁棒を90°ねじることによって
図14に示すようにオペレーションフック45を係止部35の縦棒部分に引っ掛ける。このように掛かっている状態であれば、作業中の不所望なタイミングで容易に外れてしまわないので好ましい。
【0039】
主フレーム31に係止部を設ける他に、
図2、
図3、
図5に示したように下部フレーム32にも係止部40a,40bが設けられている。このように下部フレーム32にも係止部が設けられていれば、姿勢を調整する際に好都合である。特に下部フレーム32の中でも回り込み部33に係止部が設けられていれば、回り込み部の回動状態を調整するために好都合である。特に、ばね41の付勢に逆らって回り込み部33を引き上げる向きに回動させようとする場合には係止部40a,40bが有用である。
【0040】
係止部39a,39bや、係止部40a,40bを介して操作をする際に用いられるフックとしては、たとえば、
図15〜
図16に示すようなものが使用されることが好ましい。このようなフックは「テイクフック」と呼ばれる。
図15はテイクフック46の平面図、
図16は側面図である。
図16では、テイクフック46の根元部分については断面が示されている。作業時には、このようなテイクフック46を先端に取り付けた絶縁棒も用意しておくことが好ましい。たとえばテイクフック46を作業装置101の係止部39aに係止させる際には、
図17に示すように螺旋形の部材の先端を係止部39aのリング状部分の内側に挿入し、さらに手元の絶縁棒を適宜ねじるなどして
図18に示すように深く挿入する。このように深く掛かっている状態であれば、作業中の不所望なタイミングで容易に外れてしまわないので好ましい。たとえば係止部40bを介して回り込み部33を持ち上げる際にも、
図19に示すようにテイクフック46を使って持ち上げることによって、ばね41の付勢に逆らって回り込み部33を持ち上げるように回動させることができる。
【0041】
(実施の形態2)
(構成)
図20〜
図23を参照して、本発明に基づく実施の形態2における作業装置について説明する。実施の形態1では碍子の点検のための撮影作業を行なうための作業装置の例を示したが、本実施の形態では、接地作業を行なうための作業装置の例を示す。
【0042】
ここでいう接地作業とは、誘導によって碍子連に生じているおそれのある電圧を解消するために、作業者が持ち込んだ接地線の先端をたとえばアークホーンに接続する作業をいう。接地線は、通常、接地棒と呼ばれる絶縁棒の一種に接続されている。接地棒の先にはアークホーンを保持するためのクランプが備わっている。従来は作業者が接地棒を持ってアークホーンまで届かせることによってクランプでアークホーンを保持させていた。クランプがアークホーンを保持すると、クランプは固定される。この状態に至れば、接地線はアークホーンと電気的に接続されたこととなり、接地が行なわれたといえる。しかし、作業者からアークホーンまでの距離が長い場合、接地棒は長いものが必要であり、あまりに長くなると接地棒がふらつくので、接地棒のクランプをアークホーンに固定することが困難であった。
【0043】
これに対して本実施の形態における作業装置102を利用することができる。接地器具とはたとえば接地棒である。この場合、作業装置102には、接地器具が対象物に届く位置に至るまで、碍子連に沿って前後に接地器具の先端を搬送する機能が求められる。
【0044】
本実施の形態における作業装置102の平面図を
図20に示す。作業装置102の正面図を
図21に、側面図を
図22に示す。
【0045】
本実施の形態における作業装置102は、複数の碍子を直列に連結して形成された碍子連10が複数本平行に並べて配置された構造を含む耐張装置において作業を行なうための作業装置であって、前記耐張装置に含まれる複数本の碍子連10に対して横断するように上側からまたがり、碍子連10の長手方向に摺動可能な主フレーム31と、主フレーム31から下方に向かって延在する下部フレーム32とを備える。
【0046】
作業装置102において、主フレーム31は、接地器具の少なくとも一部を保持する接地器具保持部47を備える。作業装置102は、前記接地器具が帯電した電荷を除去すべき対象物に電気的に接続するために前記碍子連に沿って移動するものである。帯電した電荷を除去すべき対象物とは、たとえばアークホーンであるが、これに限らない。他の部材であってもよい。
【0047】
作業装置102は主フレーム31の中央に接地器具保持部47を備え、接地器具保持部47を以て接地器具としての接地棒48と接続されている。接地器具保持部47は接地棒48の向きがある程度は変更可能なように接地棒48を保持している。接地棒48は先端にアークホーンなどに固定されるためのクランプ49を備えている。接地棒48は、クランプ49に対して電気的に接続されている接地線50を備える。
【0048】
作業装置102を使用している様子を
図23に示す。
図23では、作業者6が作業装置102を押し進めている様子を、作業装置102が到達すべきアークホーン4の側から見た様子である。すなわち、作業装置102は
図23における奥から手前に押されて進行している。接地線50には、通常、目印のために旗がつけられているが、ここでは旗は図示省略されている。作業装置102は2本の碍子連10の上にまたがった状態で接地棒48によって押し進められて移動し、最後にはアークホーン4に到達し、
図24に示すようにクランプ49がアークホーン4の横棒部分を挟み込む。こうして、クランプ49はアークホーン4に固定され、接地が完了する。接地を終了したいときには、作業者6が接地棒48をねじるように回転させることによって、クランプ49を開くことができ、その結果、クランプ49をアークホーン4から外すことができる。
【0049】
(作用・効果)
本実施の形態では、主フレーム31が接地器具保持部47を備え、作業装置102は、接地器具が帯電した電荷を除去すべき対象物に電気的に接続するために碍子連10に沿って移動するものであるので、容易に安定して安全に接地作業を行なうことができる。
【0050】
作業装置102では、作業中に多少傾いたとしても、
図25に示すように下部フレーム32が下方に延在しているので、下部フレーム32が碍子3に対して側方から当接することにより、一定以上は傾きが大きくなることを防止し、姿勢を安定させることができる。
【0051】
接地作業のための作業装置としても、ここで示した作業装置102はあくまで一例にすぎず、構造はこれに限らない。軽量化を優先する場合、余分な部材を適宜削減してもよい。たとえば下部フレーム32をここで示した長さよりも短くしてもよい。
【0052】
なお、本明細書では2本の碍子連10が平行に配置されたところに載せる作業装置として例示している。実際には、この作業装置を利用する場となる耐張装置においては、平行に配置される碍子連の本数は2本に限らず、3本以上であってもよい。作業装置の構成を適宜変更することによって3本以上の碍子連に対しても対応することができる。
【0053】
本明細書では主に、碍子の点検のための撮影作業のための作業装置、および、接地のための作業装置について説明したが、本発明に基づく作業装置が対象とする作業の種類はこれらに限らない。本発明に基づく作業装置は、他のさまざまな作業を行なう際にも適用可能である。
【0054】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。