(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体と、イソシアネート化合物と、前記イソシアネート化合物と反応する官能基を有さず、且つ重量平均分子量が100万〜200万の無官能アクリル系共重合体と、を含み、
前記無官能アクリル系共重合体の含有量が、前記カルボキシル基を有するアクリル系共重合体100質量部に対して1質量部〜20質量部である粘着剤組成物。
前記カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、カルボキシル基を有するアクリルモノマーに由来する構成単位を0.1質量%〜5質量%含有する請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
前記イソシアネート化合物の含有量が、前記カルボキシル基を有するアクリル系共重合体100質量部に対して10質量部〜50質量部である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
前記テルペンフェノール系タッキファイヤの含有量が、前記カルボキシル基を有するアクリル系共重合体100質量部に対して1質量部〜10質量部である請求項6又は請求項7に記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の粘着剤組成物、並びにこれを用いた粘着剤付偏光板及び表示装置について詳細に説明する。
【0021】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体と、イソシアネート化合物と、前記イソシアネート化合物と反応する官能基を有さず、且つ重量平均分子量が100万〜200万の無官能アクリル系共重合体と、を含み、前記無官能アクリル系共重合体の含有量が、前記カルボキシル基を有するアクリル系共重合体100質量部に対して1質量部〜
20質量部である。
【0022】
また、本発明の粘着剤組成物は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体、イソシアネート化合物及び無官能アクリル系共重合体に加えて、必要に応じて、更に、その他の架橋剤、シランカップリング剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0023】
従来の粘着剤組成物では、イソシアネート化合物と確実に架橋するよう、カルボキシル基や水酸基等の官能基を有するアクリル系共重合体が用いられている。しかしながら本発明では、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体に加えて、カルボキシル基等の官能基を有さない無官能アクリル系共重合体を用いる。このような無官能アクリル系共重合体はイソシアネート化合物に対してフリーであることから、被着体である偏光フィルム等が寸法変化して粘着剤に応力が発生したとしても、その応力を緩和する能力を有すると考えられる。そのため、無官能アクリル系共重合体を含有する本発明の粘着剤組成物は、応力が大きく発生する大型の表示パネルでも、白抜けの発生が効果的に抑えられる。本発明の粘着剤組成物は、白抜け防止に優れるため、19インチ以上の大型の表示パネル(すなわち大型の表示装置)に好適に用いることが可能である。
【0024】
また、無官能アクリル系共重合体はガラス板に対して濡れ性を有しているため、無官能アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物は、接着性が改善される。更に、無官能アクリル系共重合体は100万〜200万の重量平均分子量を有しているため、耐久性に優れる。
【0025】
尚、一般にイソシアネート化合物の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して多くても5質量部程度に抑えられている。しかしながら、無官能アクリル系共重合体を含有する本発明の粘着剤組成物において、イソシアネート化合物を、アクリル系共重合体100質量部に対して10質量部〜50質量部と高含有量で含有させると、更に白抜けの発生を防ぐことができ、且つ大型の表示パネル及び小型の表示パネルの双方に使用しても、白抜けの発生を防ぐことが可能な粘着剤組成物が得られる。イソシアネート化合物を従来よりも高含有量で使用することで、粘着剤組成物が従来よりも硬くなり、大型の表示パネルの白抜けが改善するばかりでなく、小型の表示パネルにおいても応力の発生を抑制することができる。
【0026】
また、本発明の粘着剤組成物にテルペンフェノール系タッキファイヤを含有させることで、タック性を高めることができ、更に施工性に優れた粘着剤組成物となる。
以下に各成分について詳述する。
【0027】
(カルボキシル基を有するアクリル系共重合体)
本発明の粘着剤組成物は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体(以降「アクリル系共重合体」と略称する場合がある)を含有する。カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、カルボキシル基を有するアクリルモノマーに由来する構成単位を有し、その他のモノマーに由来する構成単位を更に有していてもよい。
【0028】
カルボキシル基を有するアクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、ω−カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、共重合反応時に他のモノマーとの反応性が高く、未反応のモノマーを低減できる点で、アクリル酸が好ましい。
【0029】
アクリル系共重合体中におけるカルボキシル基を有するアクリルモノマーに由来する構成単位の含有比率は、0.1質量%〜5質量%が好ましく、1質量%〜5質量%がより好ましく、1質量%〜3質量%が更に好ましい。その含有比率が0.1質量%以上であると、後述するイソシアネートによる架橋が効果的に行われ、5質量%以下であると、ポットライフが短くなるのを抑えることができる。
【0030】
その他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート等の官能基を有さないモノマーが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、粘着剤の凝集力と接着力を調整しやすい点で、炭素数が1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基を有するアルキルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートがより好ましく、n−ブチルアクリレートを主成分として用いてメチルアクリレートとn−ブチルアクリレートとを併用すること、又はn−ブチルアクリレートを主成分として用いてフェノキシエチルアクリレートとn−ブチルアクリレートとを併用すること、又はn−ブチルアクリレートを主成分として用いてメチルアクリレートとフェノキシエチルアクリレートとn−ブチルアクリレートとを併用することが更に好ましい。
【0031】
アクリル系共重合体中のn−ブチルアクリレート(BA)に由来する構成単位の含有率は、75質量%〜95質量%であることが好ましく、80質量%〜95質量%であることがより好ましく、80質量%〜90質量%であることが更に好ましい。
【0032】
その他のモノマーとして、メチルアクリレート(MA)及び/又はフェノキシエチルアクリレート(PHEA)とn−ブチルアクリレート(BA)とを併用する場合、BAに対するMA及び/又はPHEAの含有質量比((MA+PHEA)/BA)は、0.01〜1であることが好ましく、0.1〜1であることがより好ましく、0.1〜0.7であることが更に好ましい。MA及び/又はPHEAの含有質量比が0.01以上であると、樹脂の極性が高くなってイソシアネート化合物を多量に含ませても混ざりやすくなり、1以下であると、タック性を保持しやすい傾向にある。
【0033】
アクリル系共重合体中のMA及び/又はPHEA、並びにBAに由来する構成単位の総含有率は、95質量%〜99.9質量%が好ましく、95質量%〜99質量%がより好ましく、95質量%〜98質量%が更に好ましい。
【0034】
その他のモノマーとして、カルボキシル基以外の官能基を有するモノマーを更に併用することが好ましい。更に併用し得るカルボキシル基以外の官能基を有するその他のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)等の水酸基を有するモノマー、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)等のアミド基を有するモノマー、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE)、グリシジルメタクリレート(GMA)等のエポキシ基を有するモノマー等が挙げられ、凝集力の観点から水酸基を有するモノマーが好ましく、特に2-ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
アクリル系共重合体中、カルボキシル基以外の官能基を有するその他のモノマーに由来する構成単位の総量は、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることが更に好ましい。
【0035】
特に好ましいアクリル系共重合体としては、アクリル酸とn−ブチルアクリレートとメチルアクリレート及び/又はフェノキシエチルアクリレートとに由来する構成単位を少なくとも含む共重合体であり、具体的には、AA/BA/MAの共重合体、AA/BA/MA/2HEAの共重合体、AA/BA/PHEAの共重合体、AA/BA/2HEA/PHEAの共重合体、AA/BA/MA/2HEA/PHEAの共重合体が挙げられる。
【0036】
アクリル系共重合体の重量平均分子量は、300,000〜2,000,000であることが好ましく、500,000〜2,000,000であることがより好ましく、700,000〜1,800,000であることが更に好ましい。
【0037】
本明細書において、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定された値である。即ち、下記(1)〜(3)にしたがって測定される。
(1)アクリル系共重合体溶液を剥離シート(離型シート)上に塗工し、100℃で2分間乾燥させ、フィルム状のアクリル系共重合体を得る。
(2)前記(1)で得られたフィルム状のアクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2質量%になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
<条件>
・GPC:HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
・カラム:TSK−GEL GMHXL(4本使用)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準試料 :標準ポリスチレン
・流速 :0.6ml/min
・カラム温度:40℃
【0038】
アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)としては、−50℃〜−30℃の範囲が好ましく、−48℃〜−40℃の範囲がより好ましい。Tgが−50℃以上であると、弾性率に調整することができ、耐久性及び白抜け性に優れる。また、Tgが−30℃以下であると、粘性を極端に損なうことなくタック性及び貼合適正に優れる。
【0039】
本明細書において、アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、以下の計算により求められるモル平均ガラス転移温度である。下記式中のTg
1、Tg
2、・・・・・及びTg
nは、成分1、成分2、・・・・・及び成分nそれぞれの単独重合体のガラス転移温度であり、絶対温度(゜K)に換算し算出される。m
1、m
2、・・・・・及びm
nは、それぞれの成分のモル分率である。
【0040】
[ガラス転移温度(Tg)の算出式]
【数1】
【0041】
なお、ここでいう「単独重合体のガラス転移温度(Tg)」には、L.E.ニールセン著、小野木重治訳「高分子の力学的性質」第11〜35頁に記載されている単量体のガラス転移温度が適用される。
【0042】
粘着剤組成物中のアクリル系共重合体の含有率は、全固形分に対して、50質量%〜74質量%の範囲が好ましく、54質量%〜69質量%の範囲がより好ましい。アクリル系共重合体の含有率が前記範囲内であると、粘着剤に硬さが与えられ、応力の発生を抑制し、白抜けの発生が効果的に抑えられる。
【0043】
本発明におけるアクリル系共重合体の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法を適用することができる。処理工程が比較的簡単で、かつ短時間で行なえることから、溶液重合が好ましい。
【0044】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、モノマー、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流下で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。前記重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、例えばアゾ系化合物を用いることができる。
【0045】
(イソシアネート化合物)
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート化合物の少なくとも一種を含有する。
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート化合物が好適に挙げられる。トリレンジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネートの2量体若しくは3量体、又はトリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクト体などのトリレンジイソシアネートに由来するトリレンジイソシアネート化合物を用いることができる。これらは、一種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
トリレンジイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、日本ポリウレタン工業株式会社製の「コロネートL」(商品名)などを好適に使用することができる。
【0047】
イソシアネート化合物の含有量は特に限定されない。表示パネルの大小にかかわらず白抜けを防止する観点からは、イソシアネート化合物は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体の100質量部に対して、10質量部〜50質量部で含有されることが好ましく、15質量部〜50質量部であることがより好ましく、20質量部〜45質量部であることが更に好ましく、30質量部〜40質量部であることが特に好ましい。
【0048】
イソシアネート化合物の含有量が、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体の100質量部に対して10質量部以上の場合、従来よりも白抜けの発生を防ぐことができ、且つ大型の表示パネル及び小型の表示パネルの双方に使用しても、白抜けの発生を防ぐことが可能となる。イソシアネート化合物の含有量が50質量部以下の場合、イソシアネートの反応で発生する二酸化炭素に起因した白濁が抑えられ、外観が良好となる。なお、イソシアネート化合物の含有量を増やすと、タック性が低下する傾向にある。この場合、後述のテルペンフェノール系タッキファイヤを含有させることで、タック性に優れた粘着剤組成物となる。
【0049】
なお、イソシアネート化合物の含有量が10質量%未満の粘着剤組成物であっても、無官能アクリル系共重合体を含むことにより応力緩和能力が高まるため、大型の表示パネルでの白抜けの発生を防止することが可能である。
【0050】
(無官能アクリル系共重合体)
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート化合物と反応する官能基を有さず、且つ重量平均分子量が100万〜200万の無官能アクリル系共重合体を含有する。無官能アクリル系共重合体は、イソシアネート化合物と反応する官能基を有さないアクリルモノマーに由来する構成単位で構成される。ここでいう「イソシアネート化合物と反応する官能基」とは、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基等をいう。
【0051】
イソシアネート化合物と反応する官能基を有さないアクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、2種以上を組み合わせて用いる。2種以上を組み合わせた共重合体とすることで、上述のカルボキシル基を有するアクリル系共重合体との相溶性が向上する。
【0052】
中でも、粘着剤の凝集力と接着力を調整しやすい点で、イソシアネート化合物と反応する官能基を有さないアクリルモノマーとしては、炭素数が1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基を有するアルキルアクリレートがより好ましく、n−ブチルアクリレート(BA)を主成分として用いることが更に好ましい。
【0053】
無官能アクリル系共重合体中のn−ブチルアクリレート(BA)に由来する構成単位の含有率は、60質量%〜99質量%であることが好ましく、70質量%〜90質量%であることがより好ましく、80質量%〜90質量%であることが更に好ましい。
【0054】
n−ブチルアクリレートと併用するイソシアネート化合物と反応する官能基を有さないアクリルモノマーとしては、メチルアクリレート(MA)、フェノキシエチルアクリレート(PHEA)、2−メトキシエチルアクリレート(2−MTA)、t−ブチルアクリレート(tBA)、ラウリルアクリレート(LA)、イソステアリルアクリレート(ISTA)、シクロヘキシルアクリレート(CHA)、イソボロニルアクリレート(IBXA)、n-オクチルアクリレート(NOAA)、ステアリルアクリレート(STA)等を挙げることができ、中でもメチルアクリレート(MA)、フェノキシエチルアクリレート(PHEA)、2−メトキシエチルアクリレート(2−MTA)が好ましい。これらのアクリルモノマーを併用すると、得られる無官能アクリル系共重合体は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体と混ざりやすくなる。
【0055】
特に好ましい無官能アクリル系共重合体としては、n−ブチルアクリレートと、メチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート(PHEA)及び2−メトキシエチルアクリレート(2−MTA)から選択される少なくとも1種とに由来する構成単位を少なくとも含む共重合体であり、具体的には、BA/MAの共重合体、BA/PHEAの共重合体、BA/MA/PHEAの共重合体、及びBA/2−MTAの共重合体が挙げられる。
【0056】
無官能アクリル系共重合体の重量平均分子量は、100万〜200万であり、100万〜180万であることが好ましく、110万〜170万であることがより好ましい。無官能アクリル系共重合体の重量平均分子量が100万未満であると、耐久性に劣りやすく、200万を超えると合成しにくくなる。官能アクリル系共重合体の重量平均分子量の測定方法は、上記方法に準ずる。
【0057】
無官能アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、接着性を向上させる観点から、−30℃以下であることが好ましく、−40℃以下であることがより好ましい。無官能アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)の測定方法は、上記方法に準ずる。
【0058】
無官能アクリル系共重合体は、その溶解度パラメータがカルボキシル基を有するアクリル系共重合体の溶解度パラメータに近いほど相溶性が高まり好ましく、具体的には互いの溶解度パラメータの差は2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましく、0.25以下であることが特に好ましい。
また、本明細書において、アクリル系共重合体の溶解度パラメータ(SP値、単位:(cal/cm
3)
0.5)とは、樹脂を構成している構成単位の分子引力定数Gに基づき算出されるものである。アクリル系共重合体の場合は、その樹脂を構成する各構成単位のそれぞれの単独重合体のSP値を下記の計算式により算出し、それらのSP値のそれぞれに各構成単位のモル分率を乗じたものを合算して、溶解度パラメータが算出される。
単独重合体のSP値=dΣG/M
ここで、dは、単独重合体の密度(g/l)を表し、ΣGは、構成単位の分子中の分子引力定数の総和を表し、Mは、構成単位の分子量(g/mol)を表す。
【0059】
無官能アクリル系共重合体は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体との相溶性を高める観点から、無官能アクリル系共重合体を構成する主な構成単位と、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体を構成する主な構成単位とが近似又は同一であることが好ましく、同一であることがより好ましい。具体的には、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体を構成する構成単位がBA及びMAに由来する構成単位を主に含むとき、無官能アクリル系共重合体を構成する構成単位もBA及びMAに由来する構成単位を主に含むことが好ましい。無官能アクリル系共重合体とカルボキシル基を有するアクリル系共重合体とにおいて、主な構成単位とが近似又は同一する場合の好適な組み合わせの例を以下に示す。
【0060】
【表1】
上記表中、主成分とは、含有率が50質量%を超えるものをいう。
【0061】
無官能アクリル系共重合体の含有量は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体100質量部に対して1質量部〜50質量部の範囲であり、1質量部〜30質量部の範囲が好ましく、1質量部〜20質量部の範囲がより好ましく、5質量部〜15質量部が更にこのましい。無官能アクリル系共重合体の含有量が1質量部未満であると、無官能アクリル系共重合体の添加による効果が得られにくく、50質量部を超えると、硬さが損なわれ耐久性が低下する。
【0062】
(テルペンフェノール系タッキファイヤ)
本発明の粘着剤組成物は、テルペンフェノール系タッキファイヤを含有することが好ましい。テルペンフェノール系タッキファイヤは、テルペンモノマーとフェノール化合物とを共重合した樹脂である。テルペンフェノール系タッキファイヤは、イソシアネート化合物を従来よりも多く含有する粘着剤組成物中でも混ざりやすく、タック性を効果的に発揮することができる。
【0063】
テルペンフェノール系タッキファイヤは、粘着剤組成物での混合性の観点から、軟化点が130℃〜145℃であることが好ましく、130℃〜140℃であることがより好ましい。
【0064】
テルペンフェノール系タッキファイヤの軟化点は、JIS K 2207(2006年度版)に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値である。
【0065】
テルペンフェノール系タッキファイヤは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。テルペンフェノール系タッキファイヤとしては、例えば、α‐ピネン、β‐ピネン、ジペンテン(リモネン)等の単環式モノテルペンと、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール化合物との共重合体等を挙げることができる。
【0066】
テルペンフェノール系タッキファイヤは、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、ヤスハラケミカル株式会社の「YSポリスターTH130」(商品名、軟化点130℃)、「YSポリスターU115」(商品名、軟化点115℃)、「YSポリスターT145」(商品名、軟化点145℃)、「YSポリスターT140」(商品名、軟化点140℃)、「YSポリスターT130」(商品名、軟化点130℃)、「YSポリスターT115」(商品名、軟化点115℃)、「YSポリスター2130」(商品名、軟化点130℃)、「YSポリスター2115」(商品名、軟化点115℃)、「YSポリスターS145」(商品名、軟化点145℃)、「YSポリスターN125」(商品名、軟化点125℃)、「マイティーエースG150」(商品名、軟化点150℃)、「マイティーエースG125」(商品名、軟化点125℃)、「マイティーエースK125」(商品名、軟化点125℃)、荒川化学工業株式会社の「タマノル901」(商品名、軟化点130℃)などを好適に使用することができる。
【0067】
粘着剤組成物中のテルペンフェノール系タッキファイヤの含有量は、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体の合計量100質量部に対して、1質量部〜10質量部であることが好ましく、2質量部〜8質量部であることがより好ましい。テルペンフェノール系タッキファイヤの含有量が10質量部以下の場合には、応力抑制がより発揮される傾向にある。
【0068】
(シランカップリング剤)
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含んでもよい。粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、偏光板が組み込まれた表示装置(例えば液晶表示装置)が高温高湿環境下に曝されても、粘着剤層と偏光板又は液晶セルとの間が剥がれ難くなる傾向がある。
【0069】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有シラン化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有シラン系化合物、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するシラン化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
シランカップリング剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例として、信越化学工業株式会社製の「KBM−403」(商品名)などを好適に使用することができる。
【0071】
粘着剤組成物中のシランカップリング剤の含有量としては、アクリル系共重合体の合計量100質量部に対して、0.01質量部〜2.0質量部の範囲が好ましい。シランカップリング剤の含有量が前記範囲内であると、粘着剤層の耐久性をより向上させることができる。
【0072】
本発明の粘着剤組成物は、上記成分のほか、更に、紫外線吸収剤などの各種添加剤や溶剤などを適宜配合することができる。
【0073】
<粘着剤付偏光板>
本発明の粘着剤付偏光板は、少なくとも、偏光子と、偏光子上に設けられ、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を有する。
【0074】
偏光子としては、一般に、例えばポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどが使用される。偏光子は、例えばトリアセチルセルロース(TAC)等の保護用シートの間に保持された例えば3層構造(例えばTAC/偏光子/TAC)に構成された偏光板として用いることができる。
【0075】
例えば、TAC/偏光子/TACの3層構造の偏光板の少なくとも一方の面に、既述の本発明の粘着剤組成物を付与することにより粘着剤層を設けることで、粘着剤付偏光板が作製される。この場合、偏光板上に粘着剤組成物を付与してもよいが、好ましくは使用時に剥離される保護用シート(剥離シート)上に付与する。具体的には、本発明の粘着剤組成物を保護用シート(剥離シート)上に塗工し、乾燥させ、保護用シート上に粘着剤層を形成して粘着シートを作製した後、この粘着剤層を偏光板上に転写、養生させることで粘着剤付偏光板が作製される。粘着剤組成物の付与は、液体の粘着剤組成物を用いた浸漬法、塗布法、インクジェット法などの塗布方法により好適に行なえる。中でも、塗布法によることが好ましい。
【0076】
保護用シート(剥離シート)上に付与された粘着剤組成物は、熱風乾燥機等を用いて70℃〜120℃で1分〜3分程度の乾燥条件で乾燥されることが好ましい。
【0077】
更に、偏光板上に設けられた粘着層の露出面には、被着体に対する接触面を保護する観点から、露出面を保護するための保護用シート(剥離シート)を密着して設けておくことが好ましい。この保護用シートとしては、粘着層との間の剥離が容易に行なえるように、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン等の離型剤で離型処理を施したポリエステル等の合成樹脂シートが好適に用いられる。表示パネルのガラス板等に貼り付けるときには、保護用シートを剥離し、露出した粘着剤層の表面をガラス板等に密着させる。
また、偏光板の粘着剤層が設けられていない側の表面(露出面)には、その表面を保護する表面保護シートを更に設けてもよい。表面保護シートには、PETフィルムの片面に粘着加工されたプロテクトフィルム等が好適に用いられる。
【0078】
粘着剤層の厚さとしては、特に制限されるものではなく、乾燥後の厚さで1μm〜100μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましく、15μm〜30μmが更に好ましい。
【0079】
本発明の粘着剤付偏光板は、積層される液晶セルの大きさが19インチワイド(260mm×415mm)以上でも適用可能である。液晶セルの大きさが19インチワイド(260mm×415mm)以上であると、偏光板の熱や湿度の影響による膨張、収縮が大きくなる。したがって、従来の粘着剤付偏光板では、高温高湿下に曝された際に応力抑制が充分でないため、大型の表示装置(例えば液晶表示装置)の光源点灯時などにおいて、ベゼル周辺に発生する「白抜け」の発生を抑制することが困難である。これに対して、本発明の粘着剤付偏光板では、共重合体の樹脂設計並びに架橋剤の種類及び量を適正にした構成となっているため、高温高湿下に曝されても応力抑制が十分である。19インチワイド(260mm×415mm)以上の大きさの液晶セルにも好適であり、また19インチ未満(更には10インチ未満)の小型の表示装置(液晶表示装置)に適用されても、適度な応力緩和性により白抜けの発生が抑えられる。
また、従来の粘着剤組成物を付与した粘着シートでは、偏光板1枚のサイズに満たない部分は廃棄されていた。これに対し、本発明の粘着剤組成物は、偏光板のサイズに応じて使い分ける必要がないので、大型サイズの偏光板のサイズに満たない部分であっても、小型サイズの偏光板に使用することができ、粘着シートを無駄なく使用することができる。
【0080】
<表示装置>
本発明の表示装置は、画像を表示する表示パネルと、表示パネルの少なくとも一方面に配置された既述の本発明の粘着剤付偏光板とを設けて構成されている。表示パネルとしては、液晶化合物が封入された液晶表示パネルや、有機エレクトロルミネッセンス表示パネルなどが挙げられる。
【0081】
本発明の表示装置の例としては、液晶表示パネルの両面に本発明の粘着剤付偏光板を、それぞれについて粘着剤層が液晶表示パネルの表面(例えばガラス板の表面)に接触するように配置し、粘着剤層を介して液晶表示パネルの両面に偏光板を接着した構造(偏光板/粘着剤層/液晶表示パネル/粘着剤層/偏光板の構造)を備えた液晶表示装置を挙げることができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0083】
<カルボキシル基を有するアクリル系共重合体の製造>
(製造例B)
温度計、撹枠機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)90.25質量部、メチルアクリレート(MA)9.5質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.15質量部、アクリル酸(AA)0.1質量部、酢酸エチル(EAc)110質量部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.1質量部を入れて混合した後、反応器内を窒素置換した。その後、得られた混合物を撹拌しながら反応器内の混合物を65℃に昇温し、8時間保持して重合反応を行なった。重合反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈して固形分27.0質量%に調整した。このようにして、BA/MA/2HEA/AA共重合体である樹脂B(アクリル系共重合体)の溶液を得た。
【0084】
(製造例C〜J、A)
モノマーの組成及び配合比率を、下記表2に示すように変更したこと以外は、製造例Bと同様にして樹脂C〜J(アクリル系共重合体)の溶液及び比較例用の樹脂Aの溶液を得た。
【0085】
【表2】
【0086】
<無官能アクリル系共重合体の製造>
(製造例1)
温度計、撹枠機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)85質量部、メチルアクリレート(MA)15質量部、酢酸エチル(EAc)70質量部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.1質量部を入れて混合した後、反応器内を窒素置換した。その後、得られた混合物を撹拌しながら反応器内の混合物を65℃に昇温し、8時間保持して重合反応を行なった。重合反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈して固形分15.0質量%に調整した。このようにして、BA/MA共重合体である改質樹脂B(無官能アクリル系共重合体)の溶液を得た。得られた改質樹脂Bの重量平均分子量を下記(1)〜(3)にしたがって測定した。改質樹脂Bの重量平均分子量を下記表3に示す(表3では単に「分子量」と記載する)。
【0087】
(1)アクリル系共重合体溶液を剥離シート(離型シート)上に塗工し、100℃で2分間乾燥させ、フィルム状のアクリル系共重合体を得た。
(2)前記(1)で得られたフィルム状のアクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2質量%になるように溶解させた。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0088】
<条件>
・GPC:HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
・カラム:TSK−GEL GMHXL(4本使用)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準試料 :標準ポリスチレン
・流速 :0.6ml/min
・カラム温度:40℃
【0089】
(製造例2〜6)
モノマーの組成及び配合比率を、下記表3に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして改質樹脂C〜E(無官能アクリル系共重合体)の溶液及び比較例用の改質樹脂A、Fの溶液を得た。
【0090】
(製造例7、8)
製造例1において、重合反応の条件を、酢酸エチル(EAc)70質量部から、酢酸エチル(EAc)110質量部、酢酸エチル(EAc)60質量部にそれぞれ変更した以外は製造例1と同様にして、BA/MA共重合体である改質樹脂H、I(無官能アクリル系共重合体)の溶液を得た
【0091】
(製造例9、10)
製造例1において、重合反応の条件を、酢酸エチル(EAc)70質量部から、酢酸エチル(EAc)140質量部、酢酸エチル(EAc)40質量部、にそれぞれ変更した以外は製造例1と同様にして、BA/MA共重合体である比較例用の改質樹脂G、Jの溶液(無官能アクリル系共重合体)を得た
【0092】
【表3】
【0093】
(実施例1)
−粘着剤組成物の調製−
アクリル系共重合体として、前記製造例Bで得たBA/MA/2HEA/AA共重合体である樹脂Bの溶液370.4質量部(樹脂Bの固形分としては100質量部)と、無官能アクリル系共重合体として、前記製造例1で得たBA/MA共重合体である改質樹脂Bの溶液66.7質量部(改質樹脂の固形分としては10質量部)と、イソシアネート化合物としてコロネートLを40質量部(日本ポリウレタン工業杜製のイソシアネート系化合物、イソシアネート化合物の有効成分としては30質量部)と、テルペンフェノール系タッキファイヤとしてYSポリスターTH130(ヤスハラケミカル株式会社製、軟化点130℃)5質量部と、シランカップリング剤としてKBM−403を0.1質量部と、を充分に攪拌混合して、粘着剤組成物を得た。
【0094】
−光学フィルムサンプルの作製−
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルムの離型剤処理面に、乾燥後の塗工量が25g/cm
2となるように、粘着剤組成物を塗布した。次に、これを熱風循環式乾燥機により100℃で90秒間乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤層を形成した。続いて、偏光板〔ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを主体とする偏光子の両面にセルローストリアセテート(TAC)フィルムをラミネートしてTACフィルム/PVAフィルム/TACフィルムの積層構造を有するもの;厚さ約190μm〕の裏面と前記粘着剤層の表面とを重ねて貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、23℃、65%RHの環境条件下で10日間養生させ、光学フィルムサンプルとして、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板の積層構造を有する粘着剤付偏光板を作製した。
【0095】
−評価−
上記で作製した粘着剤付偏光板を用い、下記の評価を行なった。評価結果は、下記表4に示す。
【0096】
(1)耐久性(4.3インチ)
前記「光学フィルムサンプルの作製」において作製した粘着剤付偏光板を、吸収軸に対して長辺が45°になるようにカットした54mm×96mm(長辺)の試験片(4.3インチ)を用意し、この試験片から剥離フィルムを剥離した。剥離により露出した粘着剤層の表面を、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(#1737、コーニング社製)の片面に密着させることにより、試験片をガラス板上に重ね、ラミネーターを用いて貼付して積層体とした。次に、この積層体にオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、23℃、65%RHの条件下で24時間放置した。その後、高温低湿条件のDry環境(80℃、0%RH)、又は高温高湿条件のWET環境(60℃、90%RH)にそれぞれ500時間放置した。あるいは、高温低温を繰返す(−40℃30分、85℃30分を1サイクルとして300サイクル)H/S環境に投入した。
放置時間が経過した後、発泡、浮き、剥れの状態を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
【0097】
<評価基準>
A:発泡、浮き、剥れが全くみられなかった。
B:発泡、浮き、剥れが若干みられたが、許容範囲であった。
C:発泡、浮き、剥れが顕著にみられた。
【0098】
(2)白抜け
(2−1)白抜け現象(小型:7インチ)
前記「(1)耐久性(4.3インチ)」における試験片のサイズを88mm×156mm(7.0インチ)に変更した試験片を2枚用意し、厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(#1737、コーニング社製)の両面に偏光軸が互いに直交するように貼付して、試験サンプルを作製した。次に、この試験サンプルにオートクレーブ処理(50℃、5kg/m
2、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、ドライ環境(70℃、0%RH)下に500時間放置した。放置後、23℃、50%RHの条件下でそれぞれ液晶モニターのバックライト上に置き、白抜けの状態を目視で観察した。
【0099】
<評価基準>
A:白抜けがまったく認められなかった。
B:白抜けがほとんど認められなかった。
C:白抜けが若干認められたが、許容範囲であった。
D:白抜けが大きく認められた。
【0100】
(2−2)白抜け現象(大型:19インチ)
前記「(2−1)白抜け現象(7インチ)」において、粘着剤付偏光板をカットして得られる試験片のサイズを240mm×427mm(19インチ)に変更したこと以外は、「(2−1)白抜け現象(7インチ)」と同様の方法にて評価した。
【0101】
(3)外観
前記「(1)耐久性(4.3インチ)」と同様の方法で準備した積層体にオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)を施し、23℃、65%RHの条件下で24時間放置した。放置後の外観を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
【0102】
<評価基準>
A:白化が認められなかった。
B:白化した。
【0103】
(4)タック性(プローブタック)
プローブタック試験機TAC−1000(株式会社レスカ)を用い、荷重200gf/cm
2、速度5mm/minおよび接触時間0.1secの条件で試験した。
【0104】
<評価基準>
A:80(gf)以上であり、優れた施工性を有する。
B:80(gf)未満であり、施工性に劣る。
【0105】
(5)接着力
前記「光学フィルムサンプルの作製」において作製した粘着剤付偏光板を、25mm×150mmにカットした後、この偏光フィルム片を、卓上ラミネート機を用いて、コーニング社製の厚さ0.7mmの無アルカリガラス板「#1737」に圧着して試験サンプルとした。このサンプルをオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2、20分)した。次に、このサンプルを、23℃、65%RHの条件下で24時間放置した後、180度剥離における接着力(剥離速度:300mm/分)を測定した。
【0106】
<評価基準>
A:1N/inch以上30N/inch以下であり、優れた貼合性を有する。
B:1N/inch未満であり、貼合性に劣る。
【0107】
(実施例2〜29、比較例1〜8)
(但し、実施例23及び24は参考例)
実施例1において、アクリル系共重合体の種類、改質樹脂の種類又はその含有比率(質量部)、イソシアネート化合物の含有比率(質量部)、又はタッキファイヤの含有比率(質量部)を、下記表4に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物を用いて粘着剤付偏光板を作製し、評価を行なった。なお、表4中「未評価」とは、白化が認められたため、評価できなかったことを示す。
【0108】
【表4】
【0109】
表4に示されるように、実施例では、DRY環境、WET環境及びH/S環境に関わらず、発泡や浮きや剥がれの発生が抑えられており、良好な耐久性が得られた。また、実施例では、試験片の白抜けの発生も抑えられ、且つ良好な接着力を示した。