(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に開示される軸受シール構造では、軸受の片側だけが磁気シールされるため、軸受の内輪と支軸との嵌合部、軸受の外輪とラインローラとの間の嵌合部、および、ネジ締め付け部などを通じて浸み込んだ海水が軸受の内部に入って塩ガミする可能性があり、過酷な条件下で使用される釣糸案内部の支持部のシール構造として十分とは言えない。
【0006】
また、前記特許文献1に開示される軸受シール構造では、軸受の側部に磁気シール機構が並設される構成であるため、取り扱いが面倒であり、メンテナンス性が悪い。更に、軸受の片側だけが磁気シールされている関係上、防水性を向上させるべく内輪を軸方向に押圧して両側で当て付けた構成としているため、軸受の内外輪に軸方向の剪断力が作用して、軸受に無理な力が作用し、したがって、ラインローラの回転が重くなる。
【0007】
一方、前記特許文献2に開示される軸受シール構造は、軸受に磁性流体シールが一体に設けられて成る磁性流体シール付き軸受によってハンドル操作で回転駆動される駆動軸を回転可能に支持するようにしているため、取り扱い性、および、メンテナンス性は良好である。しかしながら、ハンドルの操作で回転駆動される駆動軸を支持する軸受のシール技術に留まり、高速回転して釣糸をシゴキながらスプールへと案内支持するラインローラの軸受部を確実にシールするという着想がない。また、特許文献1と同様、軸受の片側だけが磁気シールされるため、前述した特許文献1と同様の問題を伴う。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、軸受内への海水、異物等の浸入を確実に防止でき、悪環境下での使用に十分耐え得るとともに、回転性能、取り扱い性、および、メンテナンス性が良好な魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明は、ハンドルの回転操作によるロータの回転により該ロータに設けられたラインローラの案内によって釣糸をスプールに巻回する魚釣用スピニングリールであって、軸受に磁性流体シールが一体に設けられて成る磁性流体シール付き軸受を介して前記ラインローラが支軸に回転可能に支持され、前記磁性流体シール付き軸受は、磁性体から成る内輪と、磁性体から成る外輪と、内輪と外輪との間に転動可能に介挿される転動体とを有する軸受本体と、前記軸受本体
の両側に一体に保持され、前記内輪または前記外輪との間で磁気回路を形成して前記軸受本体の内部をシールする磁性流体シールとを備え、前記磁性流体シールは、前記内輪または前記外輪との間で磁気回路を形成する磁石と、該磁石を保持する保持板と、前記内輪または前記外輪と前記保持板または前記磁石との間に保持される磁性流体とを備え
、前記支軸に取り付けられてベールを支持する支持部材を更に備え、前記内輪と前記保持板との間の隙間に保持された前記磁性流体と該磁性流体に対向する前記支持部材の対向部位との間には、前記支持部材に対する磁性流体の付着を防止するための間隙が設けられ、前記内輪の外側端は、前記支軸の端部に被嵌される前記支持部材に対して押圧力を伴わずに当て付けられ、前記磁性流体シール付き軸受は、軸方向の移動が規制された状態で支持されることを特徴とする。
【0010】
上記した構成の魚釣用スピニングリールによれば、軸受に磁性流体シールが一体に設けられて成る磁性流体シール付き軸受によってラインローラを支軸に回転可能に支持するようにしているため、取り扱い性およびメンテナンス性(特に、高速回転して釣糸をシゴキながらスプールへと案内支持するラインローラでは、実釣の繰り返しによって様々な異物や海水の固化物等がラインローラの支持部周りに付着してしまうため、メンテナンス性の向上は非常に有益である)が良好になるとともに、高速回転して釣糸をシゴキながらスプールへと案内支持するラインローラの軸受部を確実にシールすることが可能になる。また、このようなユニット型の磁性流体シール付き軸受によれば、軸受の設置スペースとは別にシールのためのスペースを確保する必要がなくなる。そのため、小さいスペースでシールおよび軸受を設置でき、省スペース化を図ることができる。また、軸受の組み込みとは別に磁気シール機構を組み付ける必要がないため、組み込み性(作業性)が良く、生産性を向上できる(つまり、組み立て作業時間を短くでき、製造コストも低減できる)。
【0011】
また、上記構成では、磁性流体シールが軸受本体の両側に設けられ
ているため、特に、海水や異物等を多く付着した釣糸を高速回転してシゴキながらスプールへと案内するという過酷な環境下で使用されるラインローラにおいては非常に有益である。すなわち、磁性流体シールを軸受本体の両側に設けることにより、例えば、軸受の内輪と支軸との嵌合部、軸受の外輪とラインローラとの間の嵌合部、および、ネジ締め付け部などを通じて海水等が軸受の内部に入って塩ガミする可能性を確実に防止できる。また、このような作用効果は、磁性流体を内外輪の両方に対して設けることにより、具体的には、外輪と保持板または磁石との間に保持される外輪側磁性流体と、内輪と保持板または磁石との間に保持される内輪側磁性流体を設けることより向上される。
【0012】
また、このように磁性流体シールが軸受本体の両側に設けられれば、例えば特許文献1の軸受片側シール構造のように防水性を向上させるべく内輪を軸方向に押圧して両側で当て付けた構成とする必要がなくなる(軸受本体を支軸の軸方向で押圧することなく支軸上に(例えば所定の軸方向遊度をもって)支持することができる)。そのため、軸受の内外輪に軸方向の剪断力を作用させずに済み、軸受の回転、したがって、ラインローラの回転を軽くして(回転を滑らかにして)、ラインローラの回転性能を向上させることができる。
【0013】
また、上記構成では、
内輪と保持板との間の隙間に保持された磁性流体と該磁性流体に対向するベール支持部材の対向部位との間に、支持部材に対する磁性流体の付着を防止するための間隙が設けられ
ている。この場合、支持部材に磁性流体を逃がす逃げ部(例えば溝など)を設けるなど、間隙を形成する態様は任意である。このような間隙を設けると、毛細管現象、ロータ高速回転に伴う遠心力、および、熱膨張による圧力変化などに起因して磁性流体が外方に膨れ上がる際に、その膨れ上がった磁性流体が周囲の部材、特に支持部材に付着することが防止され、したがって、軸受の磁性流体が損なわれることを回避でき、シール機能を良好に維持することができるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸受内への海水、異物等の浸入を確実に防止でき、悪環境下での使用に十分耐え得るとともに、回転性能、取り扱い性、および、メンテナンス性が良好な魚釣用スピニングリールを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る魚釣用スピニングリールの一実施形態について説明する。
【0017】
図1〜
図3は本発明の魚釣用スピニングリールの一実施形態を示している。
図1に示されるように、本実施形態の魚釣用スピニングリールはリール本体1を有する。リール本体1内には、ハンドル3の回転操作によって回転駆動する駆動歯車(図示しない)が設けられており、この駆動歯車には、ピニオンが噛合している。ピニオン内には、スプール軸(図示しない)が軸方向に挿通されており、このスプール軸の先端には、釣糸が巻回されるスプール5が回転可能に取り付けられている。この場合、スプール軸(スプール5)は、駆動歯車に係合するオシレーティング機構(図示しない)を介して、駆動歯車の回転によって前後動するように構成されている。
【0018】
また、前記ピニオンの先端には、このピニオンと一体的に回転するロータ7が取り付けられており、このロータ7には、一対の支持アーム9が設けられている。これらの支持アーム9にはそれぞれ、支持部材11を介して、ベール13が釣糸放出状態と釣糸巻回状態とに回動可能に支持されている。そして、一方の支持部材11とベール13の端部との間には、釣糸をスプール5へと案内するための後述する釣糸案内装置15が介装されている。
【0019】
このような構成において、ハンドル3を回転操作すると、その回転運動は、駆動歯車を介して前記ピニオンに伝達され、このピニオンを介してロータ7を回転させると共に、前記オシレーティング機構を介してスプール軸に伝達され、スプール5を前後動させる。これにより、釣糸は、釣糸案内装置15を介してスプール5に片寄ること無く均等に巻回される。
【0020】
図2および
図3に示されるように、釣糸案内装置15は、一方の支持部材11にネジ19によって締結されており、このネジ19が螺入されるように軸方向に延出する支持部(支軸)17が形成されたラインスライダ21を有している。なお、支持部17は、図示のように、ラインスライダ21に一体形成されていても良いし、支持部材11側に一体形成されていても良い。
【0021】
ラインスライダ21にはベール13の一方の基端部が接続されており、釣糸巻取開始時にベール13を釣糸巻回状態に回動させると、釣糸が、ベール13からラインスライダ21を介して、釣糸案内装置15の一構成部材であるラインローラ23に案内されるようになっている。
【0022】
ラインローラ23は、軸受に磁性流体シールが一体に設けられて成る後述する磁性流体シール付き軸受25およびカラー27を介して支持部17に回転可能に支持されている。この場合、ラインローラ23は、中空の略筒体形状を成しており、その外周面は平滑化されている。これにより、釣糸巻取時にベール13からラインスライダ21を介して案内された釣糸は、ラインローラ23の外周面を滑らかに経由しながらスプール5に巻回される。なお、ラインローラ23の外周形状については、特に限定されることはない。
【0023】
また、本実施形態において、カラー27の存在は有益である。すなわち、本実施形態において、磁性流体シール付き軸受25を2つ並設してラインローラ23を回転可能に支持するようにすると、磁気シール機構を軸受内部に内蔵する構成上、この部分で軸方向寸法が大きくなるが、そのうちの一方をカラー27に代えてラインローラ23を回転可能に支持することにより、軸方向寸法を短く抑えることができる一方で、ラインローラ23を安定して支持することも同時に可能となる。この場合、カラー27は、軽量化して高速回転するロータの回転バランス化を図るために樹脂で形成することが好ましいが、アルミ等の金属によって形成しても構わない。
【0024】
磁性流体シール付き軸受25およびカラー27は、ラインローラ23の内周面と支持部17の外周面との間に介在されており、軸方向(ラインローラ23の回転軸に沿った方向)に互いに離間して並列配置されている。
【0025】
また、磁性流体シール付き軸受25およびカラー27の互いに対向する対向端(内側端)は、共に、ラインローラ23の内周面に突出形成された係止部29の両端面に当て付けられている。そして、カラー27の外側端は、支持部17に形成された段差係止部33と所定の隙間c(例えば0.1〜0.2mmの隙間;特に
図3参照)を介して当接可能に対向し、一方、磁性流体シール付き軸受25の外側端(具体的には、磁性流体シール付き軸受25の後述する軸受本体30の内輪30a)は、支持部材11に形成されて支持部17の端部に被嵌される被嵌係止部37に対して軸方向(支持部17の軸方向)の押圧力を伴わずに当て付けられている。つまり、磁性流体シール付き軸受25(したがって、磁性流体シール付き軸受25、カラー27、および、ラインローラ23から成るアセンブリ)は、支持部17の軸方向で押圧されることなく支持部17上に軸方向遊度(隙間c)をもって支持される。言い換えると、磁性流体シール付き軸受25およびカラー27は、所定の軸方向遊度(隙間c)をもって、各係止部29,33,37によって軸方向への移動が規制された状態で支持される。
【0026】
次に、釣糸案内装置15に配される磁性流体シール付き軸受25について説明する。
図2および
図3に明確に示されるように、磁性流体シール付き軸受25は、円筒状の内輪30aと、これを囲繞する円筒状の外輪30bと、内輪30aと外輪30bとの間に介装される複数の転動体(転がり部材)30cとを少なくとも有する軸受本体30を備える。
【0027】
本実施形態において、内輪30a、外輪30b、および、転動体30cは、磁性を有する材料、例えばクロム系ステンレス(SUS440C)によって形成されるが、転動体30cについては、必ずしも磁性体である必要はない。
【0028】
内輪30aおよび外輪30bの側部開口側には、軸受本体30に一体に保持されるとともに内輪30aまたは外輪30bとの間で磁気回路を形成して軸受本体30の内部をシールする磁性流体シール40が設置されている。なお、本実施形態では、内輪30aと外輪30bの両側の開口に、同じ構成の磁性流体シール40が配設されているため、以下の説明では、片側の構成(
図2および
図3の左側)について説明する。
【0029】
磁性流体シール40は、内輪30aまたは外輪30bとの間で磁気回路を形成するリング状に構成された磁石(以下、磁石と称する)42と、磁石42の軸方向外側面に接して配置される(磁石42を保持する)リング状の保持板(極板)44と、磁石42によって形成される磁気回路に保持される(内輪30aまたは外輪30bと保持板44または磁石42との間に保持される)磁性流体45とを有しており、これらの部材により、転動体30c内に、海水や異物等が浸入しないようにシールする機能を有している。なお、本実施形態において、磁性流体45は、外輪30bと保持板44または磁石42との間(本実施形態では、外輪30bと磁石42との間)に保持される外輪側磁性流体45bと、内輪30aと保持板44または磁石42との間(本実施形態では、内輪30aと保持板44との間)に保持される内輪側磁性流体45aとを有する。
【0030】
磁石42としては、磁束密度が高く、磁力が強い永久磁石、例えば、焼結製法によって作成されるネオジム磁石を用いることができ、予め軸方向(軸受25の軸芯方向)に磁極(S極、N極)が向くように着磁されている。また、磁石42の軸方向外側面には、保持板44が接するように配設される。なお、保持板44は、磁性を有する材料、例えばクロム系ステンレス(SUS440C)によって形成されている。
【0031】
磁石42および保持板44は、本実施形態では、予め接着されているが、接着していなくても良い。この場合、両者を予め接着しておくことで、磁石42の位置決めやセンター出しが容易に行える共に、磁石42と保持板44がユニット化され、組み込み作業が容易に行えるようになる。
【0032】
外輪側磁性流体45aおよび内輪側磁性流体45bは、例えばFe
3O
4のような磁性微粒子を、界面活性剤によってベースオイルに安定した状態で分散させて構成されたものであり、粘性があって磁石を近づけると反応する特性を備えている。このため、磁性流体45a,45bは、磁石42と、磁性材料で構成される内輪30a、外輪30b、および、保持板44との間で形成される磁気回路によって、所定の位置に安定して保持される。
【0033】
また、外輪30bの内面には、磁石42に対して転動体30c側に段差60が形成されており、この段差60により、外輪30bは、開口側が薄肉領域30bA、転動体側が厚肉領域30bBとなって、軸方向の外側の内外輪間隔が内側よりも大きく形成されている。この段差60は、磁性流体45を保持するための隙間(段差隙間)を生じさせるように形成されるが、本実施形態では、軸方向に対して垂直な面60aとなるように形成されている(垂直な面とすることにより、磁石42を吸着して、位置決め、固定することもできる)。なお、段差については、本実施形態のように、垂直な面に限定されるものではなく、磁石42との間で磁性流体45を安定して保持できるのであれば、階段状に形成されていたり、傾斜状(斜面)に形成されていても良い。この場合、斜面にすることで、磁石42の位置決めおよび磁性流体45の保持が可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、内輪30aの端面にも段差85が形成されている。この段差85は、軸受25の軸方向に対して垂直な面86を含んだ階段状に形成されており、保持板44は、軸方向の厚さの範囲内(A点(保持板44の幅方向外側端縁)とB点(保持板44の幅方向内側端縁)の間)に、段差85によって形成される内側エッジ80(段差85の上端縁;垂直な面86の上縁)が位置するように圧入されている。すなわち、このような階段状の段差85を形成したことにより、磁性流体45aは、保持板44の端面44aから盛り上がることなく、窪んだ位置にある垂直な面85との間で保持されるようになる。この場合、内側エッジ80の位置が、B点よりも軸受内側に入ってしまうと、保持板44と内輪30aとの間に磁性流体45aが十分に保持されなくなってしまう。また、内側エッジ80の位置点が、A点よりも軸受外側になってしまうと、磁性流体45aが盛り上がってしまい、外輪30b部分や内輪30a部分を指で摘まんだ際、指に付着し易くなってしまう。
【0035】
上記した段差85の構成では、その垂直な面86の径方向肉厚Dは、保持板44の内周端面から内側エッジ80までの隙間Gより大きく設定しておくことが好ましい。すなわち、径方向肉厚Dの厚さについては、特に限定されることはないが、ある程度距離を取っておく(隙間Gよりも大きく設定しておく)ことにより、磁性流体45aの盛り上がりを抑制することができ、内輪30aの端部領域に指が触れた際、その指に磁性流体が付着するのを効果的に防止することができるようになる。
【0036】
保持板44は、その外径が外輪30bの内周面(薄肉領域30bAの内周面)に対して僅かに大きく形成されており、接着した磁石42と共に、外輪30bの開口側に圧入されるようになっている。また、磁石42を接着した保持板44は、外輪30bに対して圧入した際、内輪30aの外周面との間で、所定の隙間が生じる大きさに形成されている。さらに、磁石42および保持板44の軸方向長さは、両者が接着された状態で圧入された際、段差60による垂直な面60aに対して、隙間が生じる大きさに形成されている。
【0037】
上記したように、軸方向に磁極が向くように着磁されている磁石42を接着した保持板44を外輪30bに圧入すると、内輪30a側および外輪30b側では、軸方向に対して対称となるような磁束が形成される。このため、上記した保持板44と内輪30aとの間の隙間、および、磁石42と外輪30bとの間の隙間に対しては、それぞれ内輪側磁性流体45aおよび外輪側磁性流体45bを保持させることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態において、磁性流体シール40の磁性流体45(本実施形態では、内輪側磁性流体45a)と該磁性流体45aに対向する支持部材11の対向部位との間には、支持部材11に対する磁性流体45aの付着を防止するための間隙sが設けられている。
図2および
図3では、この間隙sが、支持部材11に磁性流体を逃がす例えば溝状の逃げ部を設けることにより形成されるが、間隙sを確保するための形態はどのような形態であっても構わない。なお、
図2および
図3では、間隙sを確保するために支持部材11に形成される溝が垂直面を伴う段差溝であるが、
図4に示されるように傾斜11aを伴う溝であってもよい。このようにすると、厳しい実用条件下でも磁性流体シール機能を確実に発揮できるという効果が得られる。
【0039】
また、本実施形態において、ロータの回転に伴う遠心力などによって磁性流体45が飛散し得る方向には、例えば磁石42の磁力が作用する範囲内のラインローラ23の部位に、特にラインローラ23の端部の内面に、飛散する磁性流体45を受けるための受け部70が設けられる。この受け部70は、本実施形態では凹陥状の溝として形成されており、磁性流体溜部として機能する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用スピニングリールによれば、軸受に磁性流体シールが一体に設けられて成る磁性流体シール付き軸受25によってラインローラ23を支持部(支軸)17に回転可能に支持するようにしているため、取り扱い性およびメンテナンス性(特に、高速回転して釣糸をシゴキながらスプール5へと案内支持するラインローラ23では、実釣の繰り返しによって様々な異物や海水の固化物等がラインローラ23の支持部周りに付着してしまうため、メンテナンス性の向上は非常に有益である)が良好になるとともに、高速回転して釣糸をシゴキながらスプール5へと案内支持するラインローラ23の軸受部を確実にシールすることが可能になる。また、このようなユニット型の磁性流体シール付き軸受25によれば、軸受の設置スペースとは別にシールのためのスペースを確保する必要がなくなる。そのため、小さいスペースでシールおよび軸受を設置でき、省スペース化を図ることができる。また、軸受の組み込みとは別に磁気シール機構を組み付ける必要がないため、組み込み性(作業性)が良く、生産性を向上できる(つまり、組み立て作業時間を短くでき、製造コストも低減できる)。
【0041】
また、本実施形態の構成では、磁性流体シール40が軸受本体30の両側に設けられている。そのため、特に、海水や異物等を多く付着した釣糸を高速回転してシゴキながらスプール5へと案内するという過酷な環境下で使用されるラインローラ23においては非常に有益である。すなわち、磁性流体シール40を軸受本体30の両側に設けることにより、例えば、軸受25の内輪30aと支持部17との嵌合部、軸受25の外輪30bとラインローラ23との間の嵌合部、および、ネジ19の締め付け部などを通じて海水等が軸受25の内部に入って塩ガミする可能性を確実に防止できる。また、このような作用効果は、本実施形態のように磁性流体45a,45bを内外輪30a,30bの両方に対して設けることにより向上される。
【0042】
また、本実施形態のように磁性流体シール40が軸受本体30の両側に設けられれば、例えば特許文献1の軸受片側シール構造のように防水性を向上させるべく内輪を軸方向に押圧して両側で当て付けた構成とする必要がなくなる。実際に、本実施形態では、前述したように、軸受本体30を支軸の軸方向で押圧することなく支持部17上に(所定の軸方向遊度c(
図3参照)をもって)支持している。そのため、軸受25の内外輪30a,30bに軸方向の剪断力を作用させずに済み、軸受25の回転、したがって、ラインローラ23の回転を軽くして(回転を滑らかにして)、ラインローラ23の回転性能を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の構成では、磁性流体シール40の磁性流体45と該磁性流体45に対向するベール支持部材11の対向部位との間に、支持部材11に対する磁性流体45の付着を防止するための間隙sが設けられている。このような間隙sを設けると、毛細管現象、ロータ高速回転に伴う遠心力、および、熱膨張による圧力変化などに起因して磁性流体45が外方に膨れ上がる際に、その膨れ上がった磁性流体45が支持部材11に付着することが防止され、したがって、軸受25の磁性流体45が損なわれることを回避でき、シール機能を良好に維持することができるようになる。
【0044】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態において、外輪側磁性流体45bは、外輪30bと磁石42との間に保持されるが、外輪30bと保持板44との間に保持されてもよい。また、前述した実施形態において、内輪側磁性流体45aは、内輪30aと保持板44との間に保持されるが、内輪30aと磁石42との間に保持されてもよい。