特許第6209102号(P6209102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209102先端カバー及びそれを取付けた静電塗装機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209102
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】先端カバー及びそれを取付けた静電塗装機
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   B05B5/025 F
   B05B5/025 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-33855(P2014-33855)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-157260(P2015-157260A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2017年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390028495
【氏名又は名称】アネスト岩田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】岡川 哲也
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−36484(JP,A)
【文献】 特開2007−203158(JP,A)
【文献】 特開2005−125175(JP,A)
【文献】 特開昭54−122356(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0124779(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電塗装機の先端側に設けられる先端カバーであって、
第1開口とその反対側の第2開口とを有する筒状部材と、
前記第2開口側の内周に設けられ、静電塗装機本体の前記先端側に設けられるエアキャップに代えて、前記静電塗装機本体の前記先端側の外周に取付ける第2開口側取付け構造と、を備え、
前記筒状部材が、前記第2開口側取付け構造で、前記静電塗装機本体の前記先端側の外周に取付けられた状態において、前記第1開口に前記静電塗装機本体の前記先端側の塗料噴出部を連通させるとともに前記静電塗装機本体の前記先端側のエア供給口を閉塞させる閉塞部を備えることを特徴とする先端カバー。
【請求項2】
前記筒状部材が、前記第1開口側の内周に設けられ、前記静電塗装機本体の前記先端側であって前記静電塗装機本体の前記エア供給口に接続された前記エアキャップの外周に取付ける第1開口側取付け構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の先端カバー。
【請求項3】
前記第1開口側取付け構造が、前記第1開口側の内周に設けられ、弾性力で前記エアキャップの外周を把持する弾性体を有することを特徴とする請求項2に記載の先端カバー。
【請求項4】
静電塗装機であって、
先端側に塗料噴出部とエア供給口を有する静電塗装機本体と、
前記静電塗装機本体の先端側の外周に取付けられるエアキャップと、
前記静電塗装機本体および前記エアキャップに取付け可能な先端カバーと、を備え、
前記先端カバーが請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の先端カバーであることを特徴とする静電塗装機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端カバー及びそれを取付けた静電塗装機に関する。
【背景技術】
【0002】
静電塗装機は、たとえば特許文献1ないし特許文献3に開示されているように、その塗料噴出ノズル内に塗料噴出方向に延在して突出するピン状の荷電電極(ピン電極)が立設されている。このピン電極によって被塗装物との間に高電圧を発生させ、帯電された塗料が被塗装物に塗着されるようになっている。
【0003】
このような静電塗装機は、そのピン電極が極細となっているため、予期しない僅かな外力によっても変形してしまう恐れがある。そのため、従来から空気キャップにピン電極より延在するカバーを取付けることによってピン電極の破損を防いでいる。
【0004】
また、塗装終了後又は塗料の色替えをする際など塗料通路をシンナーなどの洗浄液によって洗浄する必要がある。しかしながら、塗料通路はエア供給口のすぐ傍に配置されており、塗料通路に洗浄液を流す際、エア供給口に洗浄液が侵入しないよう気を配る必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−224728号公報
【特許文献2】特許第3335937号公報
【特許文献3】特開2008−36484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、通常時および洗浄時においてもピン電極を外的障害から保護でき、洗浄の際にエア供給口に洗浄液等の侵入を阻止できる先端カバー及びそれを取付けた静電塗装機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の先端カバーは、静電塗装機の先端側に設けられる先端カバーであって、第1開口とその反対側の第2開口とを有する筒状部材と、前記第2開口側の内周に設けられ、静電塗装機本体の前記先端側に設けられるエアキャップに代えて、前記静電塗装機本体の前記先端側の外周に取付ける第2開口側取付け構造と、を備え、前記筒状部材が、前記第2開口側取付け構造で、前記静電塗装機本体の前記先端側の外周に取付けられた状態において、前記第1開口に前記静電塗装機本体の前記先端側の塗料噴出部を連通させるとともに前記静電塗装機本体の前記先端側のエア供給口を閉塞させる閉塞部を備える。
(2)本発明の先端カバーは、上記(1)の構成において、前記筒状部材が、前記第1開口側の内周に設けられ、前記静電塗装機本体の前記先端側であって前記静電塗装機本体の前記エア供給口に接続された前記エアキャップの外周に取付ける第1開口側取付け構造を備える。
(3)本発明の先端カバーは、上記(2)の構成において、前記第1開口側取付け構造が、前記第1開口側の内周に設けられ、弾性力で前記エアキャップの外周を把持する弾性体を有する。
(4)本発明の静電塗装機は、先端側に塗料噴出部とエア供給口を有する静電塗装機本体と、前記静電塗装機本体の先端側の外周に取付けられるエアキャップと、前記静電塗装機本体および前記エアキャップに取付け可能な先端カバーと、を備え、前記先端カバーが上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の構成である。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した先端カバー及びそれを取付けた静電塗装機によれば、通常時および洗浄時においてもピン電極を外的障害から保護でき、洗浄の際にエア供給口に洗浄液の侵入を阻止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の静電塗装機の全体を示す側面図である。
図2】静電塗装機本体の先端側におけるピン電極、塗料ノズル、エアキャップの構成の詳細を示した断面図である。
図3】静電塗装機本体の先端側に取付けられたエアキャップに嵌め込まれた先端カバーを示す拡大図である。
図4】静電塗装機の先端側を洗浄する場合において、該先端側に先端カバー70を取付けた状態を示した図である。
図5図4に示す状態において、先端カバーを、中心軸を含む平面に対し一方の側を破断させた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の静電塗装機の全体を示す側面図である。なお、該静電塗装機に取付けられる先端カバーの部分は断面図で示している。
【0012】
図1に示す静電塗装機10は、たとえばガンタイプからなっており、大略、先端側(図中左側)に塗料ノズル40を内蔵する本体(静電塗装機本体)20と、この本体の後方部(図中右側)に設けられた把持部30と、を有する。
【0013】
本体20の前方部(図中左側)には塗料チューブ21が接続され、この塗料チューブ21を通して塗料が塗料ノズル40に供給され、該塗料は塗料ノズル40の塗料噴出口41(図2参照)から噴出されるようになっている。塗料チューブ21は、その塗料供給口21Aにおいて、把持部30の底部に固定されるようになっている。
【0014】
また、把持部30の底部には空気供給口30Aが設けられ、この空気供給口30Aを通して供給される空気は把持部30、本体20の内部を通り、本体20の先端側に塗料ノズル40を囲んで取付けられるエアキャップ50の空気孔から噴出されるようになっている。
【0015】
塗料ノズル40から噴出される塗料は、エアキャップ50から噴出される空気によって霧化され前方(図中左側)に噴出されるようになっている。
【0016】
塗料ノズル40からの塗料の噴出およびエアキャップ50からの空気の噴出は、把持部30の前方において本体20に軸支された引金25の操作によって制御されるようになっている。
【0017】
また、本体20の先端側には、塗料ノズル40内において中心軸上に配置されたピン状の荷電電極であるピン電極26が該塗料ノズル40から前方に突出して配置されている。これにより、塗料ノズル40からの塗料はピン電極26の周囲を長手方向に沿って噴出されるようになっている。ピン電極26は、本体20に内蔵される高電圧発生器23による高電圧が印加されるようになっている。これにより、静電塗装機10は被塗装物(図示せず)との間に高電圧を発生させ、帯電された塗料は被塗装物に塗着されるようになっている。
【0018】
図2は、本体20の先端側において、上述したピン電極26、塗料ノズル40、エアキャップ50の構成の詳細を示した断面図である。なお、図2において、塗料ノズル40およびエアキャップ50は本体20から軸方向に取り外した状態で示している。
【0019】
図2に示すように、本体20の先端側には、塗料ノズル40の後端部を挿入するノズル挿入孔20Hを有している。なお、この明細書では、該ノズル挿入孔20Hを含めた近傍部を塗料噴出部と称する場合がある。そして、ノズル挿入孔20Hの中心軸上には先端が該ノズル挿入孔20Hから突出するようにしてピン電極26が配置されている。塗料ノズル40は、そのノズル孔40Aの中心軸上にピン電極26が配置されるようにして、本体20のノズル挿入孔20Hに嵌め込まれるようになっている。これにより、ピン電極26は塗料ノズル40の塗料噴出口41から前方に突出するようにして配置されるようになっている。
【0020】
なお、塗料ノズル40の本体20内の配置により、塗料ノズル40のノズル孔40Aには塗料チューブ21からの塗料が供給されるようになり、該塗料ノズル40の塗料噴出口41の開閉は該塗料ノズル40のノズル孔40Aの中心軸上に配置されるニードル20Nの軸方向の移動によって制御されるようになっている。ニードル20Nは、ノズル挿入孔20Hの中心軸上に配置され、その軸方向の移動は引金25(図1参照)の操作に連動してなされるようになっている。
【0021】
さらに、本体20内に配置された塗料ノズル40を被うようにして、本体20の先端側にはエアキャップ50が着脱自在に嵌め込まれるようになっている。
【0022】
エアキャップ50は、その中央に塗料ノズル40の塗料噴出口41の部分を突出させる孔51を有するとともに、先端面(図中左側の面)には該孔51を間にして一対の対向する角(つの)部52が取り付けられている。
【0023】
エアキャップ50を本体20の先端側に取付けた場合、本体20の先端面20Fのうち前記ノズル挿入孔20Hの周りに形成されたエア供給口27からの空気をエアキャップ50内に導き、各角(つの)部52の互いに対向する面に形成された孔54を通して噴出させるようになっている。孔54は、その軸方向が塗料ノズル40からの塗料の噴出方向に傾斜して交差するように設けられている。これにより、塗料ノズル40からの塗料はエアキャップ50の孔54からの空気によって霧化された状態で噴出されるようになる。この場合、霧化された塗料は、エアキャップ50の角(つの)部52の孔54からの空気量を変えることによって断面パターンを可変できるようになっている。なお、本体20の先端面20Fに形成されたエア供給口27には、本体20の空気通路(図示せず)を通して、把持部30(図1参照)の底面から供給される空気が導かれるようになっている。
【0024】
そして、図1に示すように、本体20の先端側において、塗料ノズル40(図2の参照)、エアキャップ50が順次嵌め込まれ、これらは、キャップカバー60を介して本体20に取付けられるようになっている。さらに、先端カバー70がピン電極26を充分に囲うようにしてエアキャップ50に着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0025】
図3は、本体20の先端側に取付けられたエアキャップ50に嵌め込まれた先端カバー70を示す拡大図である。
図3に示すように、先端カバー70は、円筒状部材からなり、エアキャップ50に嵌め込まれる側が第1開口70Aとなっている。先端カバー70の第1開口70Aの内周には、エアキャップ50の外周に取付けるための第1開口側取付け構造が設けられており、この第1開口側取付け構造は、第1開口70Aの該内周において周方向に沿って形成された溝70Dに弾性力でエアキャップ50の外周を把持する弾性体72が埋設されることで構成されている。弾性体72は、断面がたとえば円形となっており、エチレン系樹脂、ナイロン系樹脂およびフッ素系樹脂の中から選ばれるいずれか1つの樹脂からなっている。
【0026】
なお、先端カバー70の第1開口70Aは、その軸方向の中途部までは、その内径がエアキャップ50とほぼ同径となって該エアキャップ50を嵌合できるようになっているが、軸方向の中途部から第1開口70Aと反対側の第2開口70Bまでは、小径(第1開口70Aよりは小さな径という意味)となって該第2開口70Bに連通されるようになっている。
【0027】
ここで、先端カバー70の第2開口70B側の面には、該第2開口70Bを囲んで第2開口70Bと同軸に環状の凹陥部75が形成されている。この凹陥部75は、後に説明するが、静電塗装機10の先端側を洗浄する際に、該先端側に露出されるエア供給口27を閉塞させる閉塞部として機能させるようになっている。
【0028】
図3に示すようにして先端カバー70を取付けた静電塗装機10は、通常時において、該先端カバー70によってピン電極26を外的障害から保護できるようになる。
【0029】
図4は、静電塗装機10の先端側を洗浄する場合において、先端カバー70が、その第2開口70Bを静電塗装機10の先端側になるように取付けた状態を示した図である。この場合、図2に示したように静電塗装機10の本体20からエアキャップ50および塗料ノズル40を順次取り外し、ノズル挿入孔20Hからピン電極26、ニードル20Nが突出した本体20の先端側に先端カバー70を取り付けることによって行うようになっている。
【0030】
図4に示すように、先端カバー70は、第2開口70B側の凹陥部75の内周面に形成した螺子溝70Pが本体20の先端側の外周に形成した螺子溝20Pを螺合させることによって、本体20に取付けられるようになっている。すなわち、先端カバー70の第2開口70B側は、この凹陥部75の内周面に形成した螺子溝70Pからなる第2開口側取付け構造を有することによって、本体20の先端側の外周に取付けられるようになっている。この場合、本体20の先端側の外周に形成した螺子溝20Pはたとえばエアキャップ50を螺合させる螺子溝を兼用できるようになっている。
【0031】
なお、第2開口側取付け構造は、必ずしも、エアキャップ50を螺合させる螺子溝20Pと兼用するように構成される必要はなく、別途、本体20の先端側の外周にエアキャップに代えて取付けられる構造であればよい。但し、エアキャップ50を螺合させる螺子溝20Pと兼用するように構成することで本体20に新たな構造を設ける必要がないので既に市販されているものにも適用できる先端カバー70とすることが可能である。
【0032】
この場合、エアキャップ50および塗料ノズル40(図2参照)を取り外した本体20の先端側は、エア供給口27とともに、先端カバー70の第2開口70B側に形成された凹陥部75内に位置づけられるようになり、該エア供給口27が先端カバー70によって閉塞されるようになる。すなわち、凹陥部75は、静電塗装機10の先端側を洗浄する際に、該先端側のエア供給口27を閉塞させる閉塞部としての機能を有するようになる。
【0033】
図5は、図4に示す状態において、先端カバー70を、中心軸を含む平面に対し一方の側を破断させた斜視図である。図5から明らかになるように、本体20の先端側に露出されたエア供給口27は、先端カバー70の螺合によって、該先端カバー70の凹陥部75内に位置づけられ、先端カバー70によって閉塞された状態となり、水分等の侵入が妨げられるようになる。
【0034】
そして、本体20の先端側において、中央にピン電極26を立設されたノズル挿入孔20Hは、先端カバー70の第1開口70Aおよび第2開口70Bを通して露呈されるようになる。このため、洗浄時においてもピン電極26の充分な保護が図れるとともに、洗浄の際に、静電塗装機10の向きに関係なくエア供給口27に洗浄液の侵入を阻止できるようになる。
【0035】
(実施形態2)
実施形態1では、いわゆるガンタイプのものについて説明したものであるが、必ずしもこれに限定されることはなく、他のタイプのものであってもよいことはいうまでもない。
【0036】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
10 静電塗装機
20 本体(静電塗装機本体)
20H ノズル挿入孔
20N ニードル
20P 螺子溝
21 燃料チューブ
23 高電圧発生器
25 引金
26 ピン電極
27 エア供給口
30 把持部
30A 空気供給口
40 塗料ノズル
40A ノズル孔
41 塗料噴出口
50 エアキャップ
51、54 孔
52 角(つの)部
60 キャップカバー
70 先端カバー
70A 第1開口
70B 第2開口
70D 溝
70P 螺子溝
72 弾性体
75 凹陥部
図1
図2
図3
図4
図5