【実施例1】
【0016】
図1は、本実施の形態に係る光電センサの機能を示すブロック図である。
図1において、1は投光部、2は受光部、3は光電センサによってその有無を検知せしめられる検出対象物である。投光部1は更に、例えばLEDからなる投光素子11、光量指示部12を備え、受光部2は更に、例えばフォトダイオードからなる受光素子21、検出部22、警告部23を備える。
【0017】
また、
図2は同じく光電センサの構造を示す概略構成図である。
図2において、13は投光素子からの光を検出領域に投光する投光窓、24は投光窓と対向して設けられ、検出領域から到来する光を受光素子に導く受光窓である。また、投光部1及び受光部2はそれぞれケーブル14、25を有し、ケーブル14には投光部1に電力を供給する電源ライン141、GNDライン142、投光部1に対し投光の指示信号を送信する信号ライン143が、ケーブル25には受光部2に電力を供給する電源ライン251、GNDライン252、受光部2において物体の有無を判断した結果を外部機器に送信する信号ライン253が、それぞれ内包される。なお、各電源ライン、GNDライン、信号ラインは説明のため、その一部を各ケーブルの先端に分けて記載しているが、実際には例えば図示しないコントローラ内の端子台に適宜接続されていれば良い。
【0018】
続いて、
図3を用いて本実施の形態に係る光電センサの動作を説明する。外部の制御機器、例えばPLCなどのコントローラ装置から信号ライン143を通して光量指示部12に対し投光指示信号が与えられた場合、光量指示部12はまず第一の光量にて投光を行うよう、投光素子11を制御する(第一のモード)。そして、光量指示部12は内部のタイマカウンタにて時間経過を計測し、所定時間経過後、投光素子11に対し、第二の光量で投光を行うよう制御を行う(第二のモード)。このとき、光量を変化させるにあたっては、投光素子11への印加電圧の変動や、ゲインの調整等の手段を用いれば良い。その後、投光指示信号が消えるのを待って、投光量を第二の光量から消灯状態へと変更する制御を行う。以降、投光指示信号が入力される都度、同様の処理を繰り返す。一例として、第一の光量を100%の光量としたとき、第二の光量は50%とし、また、第二の光量へと切り替えるまでの時間は、予め投光指示信号の長さの半分の長さを与えておくことが考えられるが、これに限らず、設置環境に応じて適宜設定すれば良い。
【0019】
このときの受光部2の動作を説明する。最初に第一の光量に基づく受光量を得た受光素子21は、当該受光量に基づく信号を、比較器及び必要なマイコン等の電子部品からなる検出部22に対し送出する。検出部22は受光素子21から得た信号と、予め設定された所定の閾値とを比較し、当該信号の大きさが閾値未満だった場合、投光部と受光部との間に位置する検知領域内に、投光部1からの光を遮る物体が存在すると判断し、その旨を示す信号を信号ライン253から外部のコントローラ装置に対し送出する。これに対し、比較の結果、信号の大きさが閾値以上であった場合、検知領域内に物体は存在しないものと判断し、その旨を示す信号を信号ライン253から外部のコントローラ装置に対し送出する。
【0020】
続いて、上述した光電センサの設置に際して投光部1と受光部2の光軸を調整する方法を、
図5を用いて説明する。まず、投光部1と受光部2を対向して配置し、検知領域内には遮光体となる物体を配置しない状態において、光量指示部12に対し投光指示信号を与え、そのときの受光部2からコントローラ装置へ送出される信号の内容を確認する。仮にこのとき、第一のモード中および第二のモード中のいずれにおいても、検知領域内に物体が存在することを示す信号が送出されていた場合、投光は正しく受光素子21へ届いていない、即ち光軸があっていないと判断することができるため、投光部1と受光部2のいずれか一方もしくは双方の位置を調整することで、光軸をあわせるよう調整したうえで、再度同様に投受光を行い、光軸があったか否かを確認する。
【0021】
このときの状態を模式的に示したものが
図5(a)である。15は投光部1の光軸を、26は受光部2の光軸を示し、41,42はそれぞれ第一のモード中、第二のモード中における、光軸からの距離と投光の強さの分布を示す。ここで示すように、投光の強さは、光軸15をピークとし、光軸15から離れるごとに弱く拡散するものとしてモデル化することができる。受光量は、受光窓24に、どれだけの強さの光が入光するかによって大きく左右される。即ち、受光窓24の両端から引いた点線と、投光量41,42とで囲まれた領域(図中にハッチングで示す)の面積と、受光量とは互いに関連するものである。
図5(a)においては、第一のモード時の受光量(右上から左下方向ハッチング領域の面積)と、第二のモード時の受光量(左上から右下方向ハッチング領域の面積)とのいずれも小さいため、受光量に基づいて受光素子21が検出部22に送出する信号は、所定の閾値未満であると判定される。
【0022】
また、仮に第一のモード中においては検知領域内に物体が存在しないものと判断され、第二のモード中においては検知領域内に物体が存在するものと判断されていた場合であれば、強い光(光芒幅が広い)であれば投光の一部が受光素子21へ届くものの、弱い光(光芒幅が狭い)の場合は投光が受光素子21へ届かないと考えられる。即ち、第一のモード時の光芒幅と、第二のモード時の光芒幅との差分以下相当だけ、投光部1と受光部2の光軸がずれていると判断できる。この場合、第一のモードでのみ物体検出を行うのであれば光軸調整を完了しても構わないが、本発明の趣旨においては、更に精緻に光軸をあわせるよう調整することが求められる。
【0023】
このときの状態を示したものが
図5(b)である。受光窓24の両端から引いた点線と、投光量41,42とで囲まれた領域の面積は
図5(a)におけるものよりも大きくなっており、受光量が増大していることを示す。但し、投光量42により囲まれた領域の面積は十分に大きくはなく、即ち第二のモード中においては受光素子21からの信号は所定の閾値以上、ひいては物体が存在するものと判断されるものである。なお、本願発明における光芒幅とは、投光のうち、一定以上の強さを有する箇所の幅を示すものである。
図5(b)に図中二点鎖線で強さの閾値を例示し、当該二点鎖線と投光41との交点をA,A‘、二点鎖線と投光42との交点をB、B’とすると、第一のモード中における光芒幅はA−A‘の長さで表すことができ、第二のモード中における光芒幅はB−B’の長さで表すことができる。
【0024】
そして、
図5(c)に示すように、第一のモード中、第二のモード中のいずれにおいても検知領域内に物体が存在しないものと判断されている場合は、第二のモードにおける光芒幅であっても投光が受光部2に正しく届いているのであるから、十分な精度で光軸が調整されていると判断することができる。
【0025】
以上のように光軸調整を行った光電センサにおける、実際の運用時の態様を説明する。
実際の運用においては第一のモードによる投光と、その間における受光部2の受光量をもって、検知領域内に物体が存在するか否かを判断する。
この運用過程においては、外部からの衝撃等の影響により投光部1と受光部2との光軸にわずかなずれが生じたり、経年劣化により投光素子11の投光量が減少してきた場合など、検知領域内に物体が存在したりといった要因、即ち受光量を減少させる要因が生じることが想定される。
本実施の形態に係る光軸調整を行った光電センサであれば、予め、投光量が減少した第二のモードの条件下であっても、換言すれば、投光量の減少に伴って受光量も減少した状態であっても、検知領域内に物体が存在しない場合、その旨を正しく検出できるよう調整されている(即ち、受光量減少に対し余裕度を持っている)ので、前述した各種要因により受光量が減少した場合であっても、その減少量が、調整時点における第一のモードと第二のモード切替に伴う受光量の減少量を上回らない限り、問題なく物体検出が可能となる。
【0026】
また、前述したような、第一のモードと第二のモード(複数パターンの投光量)を使用可能な光電センサを用いることで、光軸調整に限らず、実運用上においても多大な利点を奏することが可能となる。以下、その一例を説明する。
【0027】
本実施の形態に係る光電センサは、物体が存在しないと判断した場合、その後投光素子11が発する投光量が第二の光量に推移するに伴い、受光部2は受光量に係る診断を開始する。前述した第一の光量を得た場合と同様、第二の光量に基づく受光量を得た受光素子21は当該受光量に基づく信号を検出部22に対し送出する。検出部22は、第一の光量に基づいて物体の有無を判断した時点から、内部のタイマカウンタにて時間経過を計測し、投光部1に設定した所定時間と同じ時間が経過した際の信号の大きさと、前述の閾値とを比較する。そして、信号の大きさが閾値以上と判断した場合、仮に投光素子11が劣化したり、投光窓13や受光窓24に汚れが付着して多少の遮光効果を奏したとしても、正常に物体検出が可能であると判断する。これに対し、信号の大きさが閾値未満であると判断した場合、投光素子11が劣化したり、投光窓13や受光窓24に汚れが付着した場合に、第一の光量を以ってしても正常に物体検出が行えない可能性があると考えられるため、警告部23に対し、外部に警告を発するよう信号を送出する。ここで、警告部23として例えばブザーやLEDなど直接的な警報を生じるものを受光部2に設けても良いし、受光部2内に警告部23を設けず、あるいは警告部23と併せて、検出部22から外部のコントローラ装置へ送出された信号と、同コントローラ装置が光量指示部12に対し送出した投光指示信号とが正常に同期しているか否かに基づいて、コントローラ装置自体が第一の光量を以ってしても正常に物体検出が行えない可能性があることを判断し、例えばコントローラ装置に接続された外部モニタへ警告表示を生じさせるようにしても良い。
【0028】
なお、上記においては投光指示信号が消えるのを待って投光量を第二の光量から消灯状態へと変更する制御を行うものとして説明したがこれに限らず、第二の光量で投光する時間についても予め所定の値を与えておき、第一の光量による投光と同様、内部のタイマカウンタに基づく処理を行っても構わない。即ち、投光指示信号の立ち下がりのタイミングにかかわらず、立ち上がりのタイミングのみに基づいて投光を行うよう構成しても構わない。
【0029】
本実施例に述べる光電センサによれば、投光部に対する信号線が単一となり、より具体的には1bitのデジタル信号が送信されるのみの信号ライン143を備えるだけで、複数の投光量を用いた診断が可能となるため、その構造が簡易となる。例えば外部のコントローラ装置に光電センサの投光部を接続する際、本発明の光電センサの投光部は信号線を1本だけ接続すれば良いのであるから、複数の信号線を接続しなければならなかった従来製品に比べ、接続の手間が減少し、また、コントローラ装置における必要端子数を低減することができるなど、大きな効果を得ることが可能となる。
【実施例2】
【0030】
前述した実施例1では、第一のモードおよび第二のモードはそれぞれ異なる投光量を用いて光軸調整を行うものであったが、これに限らず、第一のモードおよび第二のモードは、投光量は一定のまま、検出部22が有する、受光素子21から得た信号と比較するための閾値を変更するものであってもよい。
【0031】
即ち、第一のモードに比べ、第二のモードでは閾値を高く設定するものとすることにより、一定の投光量に対し、(1)第一のモードおよび第二のモードのいずれの閾値においても、受光素子21から得た信号は閾値未満であった場合 (2)第一のモードでは、受光素子21から得た信号は閾値以上となったが、第二のモードでは、受光素子21から得た信号は閾値未満となった場合 (3)第一のモードおよび第二のモードのいずれの閾値においても、受光素子21から得た信号は閾値以上であった場合 の3通りの結果を得ることができる。
【0032】
そして、上記3通りの結果はそれぞれ前述した実施例1と同様、(1)光軸がずれており、投光が正しく受光素子21に届いていない状態 (2)光軸が若干ずれており、投光が十分に受光素子21に届いておらず、更なる光軸調整が求められる状態 (3)光軸があっている状態であり、光電センサの使用中、各種要因により受光量が減少した場合であっても、その光量減少量がもたらす、受光素子21からの信号の減少量が、調整時点における第一のモードと第二のモード切替に伴う閾値の減少量を上回らない限り、問題なく物体検出が可能な状態 を意味する。
【0033】
以上の通り、投光量は一定のまま、閾値のみを変化させる場合であっても、容易に光軸調整が可能であり、調整後の使用における受光量の余裕度を確保した運用が可能な光電センサの調整方法を提供することができる。