(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対の磁極が検査対象物の表面に沿って離間配置される磁化器、並びに前記磁化器の磁極間に前記検査対象物の表面に沿って配置される励磁コイル、第1検出コイル、及び第2検出コイルを備え、前記励磁コイルと前記第1検出コイルの並び方向に対して前記励磁コイルと前記第2検出コイルの並び方向が交差する、探傷プローブを用いる探傷方法であって、
前記磁化器で前記検査対象物に磁場を印加し、且つ、前記励磁コイルで前記検査対象物に交流磁場を印加しない第1探傷モードを実施し、
前記磁化器で前記検査対象物に磁場を印加せず、且つ、前記励磁コイルで前記検査対象物に交流磁場を印加する第2探傷モードを実施し、
前記磁化器で前記検査対象物に磁場を印加し、且つ、前記励磁コイルで前記検査対象物に交流磁場を印加する第3探傷モードを実施し、
前記第1探傷モードにおける前記第1検出コイル又は前記第2検出コイルの検出信号の有無を判定する第1判定を行い、
前記第2探傷モードにおける前記第1検出コイルの検出信号の位相と前記第2検出コイルの検出信号の位相との差分が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する第2判定を行い、
前記第3探傷モードにおける前記第1検出コイル及び前記第2検出コイルのうちの一方の検出コイルの検出信号の振幅が前記第2探傷モードにおける前記一方の検出コイルの検出信号の振幅以上であるか否かを判定する第3判定を行い、
前記第1判定の結果、前記第2判定の結果、及び前記第3判定の結果に基づき、きずの有無や方向を評価することを特徴とする探傷方法。
対の磁極が検査対象物の表面に沿って離間配置される磁化器、並びに前記磁化器の磁極間に前記検査対象物の表面に沿って配置される励磁コイル、第1検出コイル、及び第2検出コイルを備え、前記励磁コイルと前記第1検出コイルの並び方向に対して前記励磁コイルと前記第2検出コイルの並び方向が交差する、探傷プローブと、
前記磁化器で前記検査対象物に磁場を印加し且つ前記励磁コイルで前記検査対象物に交流磁場を印加しない第1探傷モード、前記磁化器で前記検査対象物に磁場を印加せず且つ前記励磁コイルで前記検査対象物に交流磁場を印加する第2探傷モード、前記磁化器で前記検査対象物に磁場を印加し且つ前記励磁コイルで前記検査対象物に交流磁場を印加する第3探傷モードを実施する制御部と、
前記第1探傷モードにおける前記第1検出コイル又は前記第2検出コイルの検出結果、前記第2探傷モードにおける前記第1検出コイル及び前記第2検出コイルの検出結果、並びに前記第3探傷モードにおける前記第1検出コイル及び前記第2検出コイルのうちの少なくとも一方の検出結果を表示する表示部とを備えたことを特徴とする探傷システム。
【背景技術】
【0002】
電磁非破壊探傷法は、検査対象物に磁場を印加して、その応答を磁場検出素子等で捉えるものであり、金属材の検査に利用されている。
【0003】
検査対象物が磁性体である場合は、一般的に、電磁非破壊探傷法の一つである漏洩磁束探傷法を利用する(例えば特許文献1参照)。漏洩磁束探傷法では、検査対象物に磁場を印加し、検査対象物のきずによって空間に漏洩した磁束を磁場検出素子で検出する。詳しく説明すると、電磁石又は永久磁石からなる磁化器を用いて、検査対象物に磁場を印加する。直流磁場であれば、磁場検出素子としてホール素子等を用い、交流磁場であれば、磁場検出素子としてコイル又はホール素子等を用いる。検査対象物にきずが存在する場合は、磁場の流れが妨げられ、その一部が空間に漏洩して、磁場検出素子で検出される。そして、健全部で得られる磁場検出素子の出力と比較することにより、きずの存在を確認することが可能である。
【0004】
また、他の電磁非破壊探傷法として渦電流探傷法がある(例えば特許文献2参照)。相互誘導形標準比較方式の渦電流探傷法では、励磁コイルを用いて検査対象物に交流磁場を印加して、検査対象物に渦電流を発生させ、その渦電流の変化を検出コイルの検出信号として得る。そして、健全部で得られる検出コイルの検出信号と比較することにより、きずの存在を確認することが可能である。
【0005】
検出信号の表示形態の一つとして、検出信号の振幅及び位相を表すリサージュ波形が知られている。詳細には、検出信号を基準信号の位相と同じ成分(X成分)Vxと90度異なる成分(Y成分)Vyに分解した後、それらX成分VxとY成分Vyを縦軸及び横軸にプロットすることで、検出信号の振幅|V|及び位相θを表現する(下記の式(1)及び式(2)参照)。
|V|=(Vx
2+Vy
2)
1/2 ・・・(1)
θ=tan
−1(Vy/Vx) ・・・(2)
【0006】
励磁コイル及び検出コイルと検査対象物との間の距離の変化(リフトオフ)が生じても、検出信号が発生する。そこで、特許文献2では、励磁コイルに対して一方側に配置された検出コイルの検出信号の位相と、励磁コイルに対して他方側に配置された検出コイルの検出信号の位相の位相が、同相であれば(言い換えれば、位相の差分が閾値未満であれば)、検出信号の要因がリフトオフであると評価している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態における探傷システムの構成を表すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態における探傷プローブの概略構造を表す側面図、及び探傷プローブのセンサ部の概略構造を表す平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における探傷方法の手順を表すフローチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施形態における評価パターンを表す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態における第1探傷モードを説明するための平面図及びリサージュ図であり、検査対象物にきずAがある場合を示す。
【
図6】本発明の第1の実施形態における第1探傷モードを説明するための側面図であり、検査対象物にきずAがある場合を示す。
【
図7】本発明の第1の実施形態における第1探傷モードを説明するための平面図及びリサージュ図であり、検査対象物にきずBがある場合を示す。
【
図8】本発明の第1の実施形態における第1探傷モードを説明するための側面図であり、リフトオフが生じる場合を示す。
【
図9】本発明の第1の実施形態における第2探傷モードを説明するための平面図及びリサージュ図であり、検査対象物にきずBがある場合を示す。
【
図10】本発明の第1の実施形態における第2探傷モードを説明するためのリサージュ図であり、リフトオフが生じる場合を示す。
【
図11】本発明の第1の実施形態における第2探傷モードを説明するためのリサージュ図であり、磁気ノイズがある場合を示す。
【
図12】本発明の第1の実施形態における第3探傷モードを説明するための図であり、磁界強度と検査対象物の内部の磁束密度の関係を表す。
【
図13】本発明の第1の実施形態における第3探傷モードを説明するための側面図であり、磁気ノイズがある場合を示す。
【
図14】本発明の第2の実施形態における探傷システムの構成を表すブロック図である。
【
図15】本発明の第1の変形例における探傷プローブの概略構造を表す側面図である。
【
図16】
図15中断面矢視XVI−XVIによる断面図である。
【
図17】本発明の第2の変形例における探傷プローブの概略構造を表す側面図、及び探傷プローブのセンサ部の概略構造を表す平面配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における探傷システムの構成を表すブロック図である。
図2(a)は、本実施形態における探傷プローブの概略構造を表す側面図であり、
図2(b)は、本実施形態における探傷プローブのセンサ部の概略構造を表す平面配置図である。
【0018】
本実施形態の探傷システムは、探傷プローブ1と、探傷プローブ1に接続された制御装置10と、制御装置10に接続された入力部20(詳細には、例えばキーボードやマウス等)と、制御装置10に接続された表示部21とを備えている。
【0019】
探傷プローブ1は、磁化器2を備えている。この磁化器2は、いわゆる電磁石であって、馬蹄形状(言い換えれば、コの字形状)の磁性材3と、この磁性材3に巻き付けられたコイル4とを有している。磁化器2の一端側の磁極5a及び他端側の磁極5bは、磁性体(例えばクロムモリブデンバナジウム鋼等)である検査対象物6の表面に沿って離間配置されるようになっている。
【0020】
磁化器2の磁極5aと磁極5bの間には、センサ部7が設けられている。このセンサ部7は、励磁コイル8及び検出コイル9a,9bを備えている。励磁コイル8及び検出コイル9a,9bは、検査対象物6の表面に沿って配置されるようになっている。また、励磁コイル8と検出コイル9aの並び方向Laに対して、励磁コイル8と検出コイル9bの並び方向Lbが所定の角度(本実施形態では90度程度)で交差している。また、励磁コイル8と検出コイル9aの間隔と、励磁コイル8と検出コイル9bの間隔が等しくなっている。また、励磁コイル8及び検出コイル9a,9bの軸方向(
図2(a)中上下方向)が検査対象物6の表面に対してほぼ垂直となっている。
【0021】
なお、本実施形態では、磁化器2の磁極5a,5bの離間方向(言い換えれば、磁化器2の磁場方向)に対し、励磁コイル8と検出コイル9aの並び方向Laが同じとなるように配置しているが、これに限られない。すなわち、磁化器2の磁極5a,5bの離間方向に対し、励磁コイル8と検出コイル9aの並び方向La及び励磁コイル8と検出コイル9bの並び方向が異なるように配置してもよい。
【0022】
制御装置10は、機能的構成として、探傷モード制御部11、磁化器制御部12、励磁コイル制御部13、検出信号処理部14、バッファメモリ15、データ記憶部16,17,18、及び表示制御部19を備えている。
【0023】
探傷モード制御部11は、第1探傷モード、第2探傷モード、及び第3探傷モードのうちのいずれかを選択して、その指示信号を磁化器制御部12、励磁コイル制御部13、及びバッファメモリ15等に出力するようになっている。探傷モード制御部11からの第1探傷モードの指示信号に応じて、磁化器制御部12が磁化器2のコイル4に交流電流を流させ、励磁コイル制御部13が励磁コイル8に交流電流を流させない。これにより、磁化器2で検査対象物6に交流磁場を印加し、励磁コイル
8で検査対象物6に交流磁場を印加しない。すなわち、漏洩磁束探傷法を行うようになっている。
【0024】
探傷モード制御部11からの第2探傷モードの指示信号に応じて、磁化器制御部12が磁化器2のコイル4に交流電流を流させず、励磁コイル制御部13が励磁コイル8に交流電流を流させる。これにより、磁化器2で検査対象物6に交流磁場を印加せず、励磁コイル
8で検査対象物6に交流磁場を印加する。すなわち、通常の渦電流探傷法を行うようになっている。
【0025】
探傷モード制御部11からの第3探傷モードの指示信号に応じて、磁化器制御部12が磁化器2のコイル4に交流電流を流させ、励磁コイル制御部13が励磁コイル8に交流電流を流させる。これにより、磁化器2で検査対象物6に交流磁場を印加し、励磁コイル
8で検査対象物6に交流磁場を印加する。すなわち、特殊な渦電流探傷法を行うようになっている。
【0026】
検出信号処理部14は、検出コイル9a,9bからの検出信号に対し所定の処理を行う。詳細には、例えば、基準信号の位相と同じ成分(X成分)と90度異なる成分(Y成分)に分解する。そして、処理後のデータをバッファメモリ15に一時的に記憶させる。
【0027】
バッファメモリ15は、探傷モード制御部11からの第1探傷モードの指示信号に応じて、第1探傷モードのデータ記憶部16にデータを転送して記憶させる。また、探傷モード制御部11からの第2探傷モードの指示信号に応じて、第2探傷モードのデータ記憶部17にデータを転送して記憶させる。また、探傷モード制御部11からの第3探傷モードの指示信号に応じて、第3探傷モードのデータ記憶部18にデータを転送して記憶させる。なお、データ記憶部16,18に転送するデータは、検出コイル9a,9bのデータでもよいが、本実施形態では、予め選択された一方の検出コイル(例えば検出コイル9a)のみのデータとしている。
【0028】
表示制御部19は、第1探傷モードのデータ記憶部16から検出コイル9aのデータを読込み、例えばX成分及びY成分を横軸及び縦軸にプロットしてリサージュ波形を作成し、表示部21に表示させる。また、第2探傷モードのデータ記憶部17から検出コイル9a,9bのデータを読込み、例えばX成分及びY成分を横軸及び縦軸にプロットしてリサージュ波形を作成し、表示部21に表示させる。また、第3探傷モードのデータ記憶部18から検出コイル9aのデータを読込み、例えばX成分及びY成分を横軸及び縦軸にプロットしてリサージュ波形を作成し、表示部21に表示させる。なお、好ましくは、検出信号の位相や振幅をそれぞれ演算して(上記の式(1)及び(2)参照)、それらの数値も表示させる。
【0029】
そして、検査者は、表示部21で表示された第1探傷モードの検出結果、第2探傷モードの検出結果、及び第3探傷モードの検出結果に基づき、きずの有無や方向を評価する。
【0030】
次に、上述したきずの有無や方向を評価する方法を含め、本実施形態における探傷方法を説明する。
図3は、本実施形態における探傷方法の手順を表すフローチャートである。
図4は、本実施形態における評価パターンを表す図である。
【0031】
ステップ100にて、制御装置10は、第1探傷モード(詳細には、磁化器2による磁場の印加)を実施する。これにより、第1探傷モードにおける検出コイル9aのデータをデータ記憶部16に記憶し、そのリサージュ波形を表示部21に表示する。ステップ110にて、制御装置10は、第2探傷モード(詳細には、励磁コイル8による磁場の印加)を実施する。これにより、第2探傷モードにおける検出コイル9a,9bのデータをデータ記憶部17に記憶し、そのリサージュ波形を表示部21に表示する。ステップ120にて、制御装置10は、第3探傷モード(詳細には、磁化器2及び励磁コイル8による磁場の印加)を実施する。これにより、第3探傷モードにおける検出コイル9aのデータをデータ記憶部18に記憶し、そのリサージュ波形を表示部21に表示する。なお、第1探傷モード、第2探傷モード、及び第3探傷モードの実施順は、これに限られない。
【0032】
そして、ステップ130にて、検査者は、表示部21で表示された第1探傷モードのリサージュ波形に基づき、第1探傷モードの検出信号が有るかどうか(詳細には、X成分又はY成分が予め設定された閾値以上であるかどうか)を判定する。例えば第1探傷モードの検出信号が有る場合は、ステップ130の判定が満たされ、ステップ140に移る。ステップ140にて、検査者は、表示部21で表示された第2探傷モードのリサージュ波形に基づき、第2探傷モードにおける検出コイル9aの検出信号の位相θa2と検出コイル9bの検出信号の位相θabが異相であるかどうか(詳細には、位相θa2と位相θb2との差分が予め設定された閾値以上であるかどうか)を判定する。
【0033】
例えば位相θa2と位相θb2が同相である場合は、ステップ140の判定が満たされず、ステップ150に進み、検査者は、検出信号の要因がリフトオフであると評価する。一方、例えば位相θa2と位相θb2が位相である場合は、ステップ160に進み、検査者は、検出信号の要因がきずA(詳細には、磁化器2の磁場方向に対して交差する方向に延在した、きず)であると評価する。
【0034】
また、ステップ130にて、例えば第1探傷モードの検出信号が無い場合は、その判定が満たされず、ステップ170に移る。ステップ170にて、検査者は、表示部21で表示された第3探傷モードのリサージュ波形及び第2探傷モードのリサージュ波形に基づき、第3探傷モードにおける検出コイル9aの検出信号の振幅|Va3|が第2探傷モードにおける検出コイル9aの検出信号の振幅|Vb3|以上であるかどうかを判定する。
【0035】
例えば振幅|Va3|が振幅|Va2|未満である場合は、ステップ170の判定が満たされず、ステップ180に進み、検査者は、検出信号の要因が磁気ノイズであると評価する。一方、例えば振幅|Va3|が振幅|Va2|以上である場合は、ステップ170の判定が満たされ、ステップ190に進み、検査者は、検出信号の要因がきずB(詳細には、磁化器2の磁場方向に対してほぼ平行方向に延在した、きず)であると評価する。
【0036】
次に、上述した評価パターンについて説明するため、各探傷モードの検出信号を説明する。
【0037】
(1)第1探傷モード(漏洩磁束探傷モード)
例えば
図5(a)で示すように、検査対象物6にきずA(詳細には、磁化器2の磁場方向に対して交差する方向に延在した、きず)が存在する場合は、磁化器2で印加した磁場の流れ(
図6中点線参照)が妨げられ、その一部が空間に漏洩して、センサ部7の検出コイル9a(又は9b)で検出される。そのため、例えば
図5(b)で示すようなリサージュ波形30が得られる。
【0038】
一方、例えば
図7(a)で示すように、検査対象物6にきずB(詳細には、磁化器2の磁場方向に対してほぼ平行方向に延在した、きず)が存在する場合は、磁化器2で印加した磁場の流れに影響がなく、その一部が空間に漏洩せず、センサ部7の検出コイル9a(又は9b)で検出されない。そのため、例えば
図7(b)で示すようなリサージュ波形31が得られる。
【0039】
また、例えば
図8に示すように、探傷プローブ1が検査対象物6から離れてしまい、探傷プローブ1と検査対象物6との間の距離が大きくなる場合(リフトオフ)、磁化器2の磁場(
図8中点線参照)が、検査対象物6の内部を渡るよりも、磁極5a,5b間の空間を渡るほうが多くなり、センサ部7の検出コイル9a(又は9b)で検出される。また、例えば検査対象物6に磁気特性分布のバラツキ(磁気ノイズ)がある場合、磁化器2の磁場への作用が小さく、センサ部7の検出コイル9a(又は9b)で検出されない。
【0040】
(2)第2探傷モード(通常の渦電流探傷モード)
例えば
図9(a)で示すように、検査対象物6にきずB(人工スリット)が存在する場合は、渦電流の変化が検出コイル9a,9bで検出される。そのため、例えば
図9(b)で示すように、検出コイル9aの検出信号のリサージュ波形32aと、検出コイル9bの検出信号のリサージュ波形32bが得られる。それらの位相は、異相となる。
【0041】
また、図示しないが、検査対象物6にきずAが存在する場合も、渦電流の乱れが検出コイル9a,9bで検出される。そのため、検出コイル9aの検出信号のリサージュ波形と、検出コイル9bの検出信号のリサージュ波形が得られる。それらの位相は、異相となる。
【0042】
また、リフトオフが生じた場合には、例えば
図10で示すように、検出コイル9aの検出信号のリサージュ波形33aと、検出コイル9bの検出信号のリサージュ波形33bが得られる。それらの位相は、同相となる。
【0043】
また、渦電流は、検査対象物6の透磁率や導電率で変化することから、検査対象物に磁気特性分布のバラツキ(磁気ノイズ)があっても変化する。すなわち、検査対象物6に磁気ノイズがある場合も、検出コイル9a,9bで検出される。そのため、例えば
図11で示すように、検出コイル9aの検出信号のリサージュ波形34
aと、検出コイル9bの検出信号のリサージュ波形34bが得られる。それらの位相は、異相となる。
【0044】
(3)第3探傷モード(特殊な渦電流探傷モード)
例えば検査対象物6にきずが存在する場合は、きずの周辺領域が磁化されにくい一方で、他の領域が磁化される。ここで、
図12は、磁界強度と検査対象物の内部の磁束密度の関係を表す図であり、図中の特性曲線の傾きが透磁率である。磁性体である検査対象物6は、磁界が作用すると透磁率が低くなる。飽和磁束密度に相当する強い磁界が印加されると、空気の透磁率と等しくなる。そのため、きずの周辺領域と他の領域は、透磁率が変化する。そして、第3探傷モードにおける検出コイル9a(又は9b)の検出信号(きず信号)の振幅は、透磁率の変化の影響が重複して、第2探傷モードにおける検出コイル9a(又は9b)の検出信号(きず信号)の振幅より大きくなる。
【0045】
一方、例えば
図13で示すように、検査対象物6に磁気ノイズの領域40が存在する場合は、磁気ノイズの領域40及びその周辺領域を含む領域41が磁化される。そのため、きずが存在する場合のような透磁率の変化が生じないし、全体的に透磁率が低くなる。そして、第3探傷モードにおける検出コイル9a(又は9b)の検出信号(磁気ノイズ信号)の振幅は、第2探傷モードにおける検出コイル9a(又は9b)の検出信号(磁気ノイズ信号)の振幅より小さくなる。
【0046】
以上のように、本実施形態では、上述した原理に基づき、きずをその他の要因と識別し、きずの有無及び方向を評価することができる。
【0047】
本発明の第2の実施形態を、
図14を用いて説明する。
図14は、本実施形態における探傷システムの構成を表すブロック図である。なお、本実施形態において、上記第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0048】
本実施形態の制御装置10は、上記第1の実施形態と同様、探傷モード制御部11、磁化器制御部12、励磁コイル制御部13、検出信号処理部14、バッファメモリ15、データ記憶部16,17,18、及び表示制御部19を備えている。さらに、上述した
図3のステップ140〜190の判定・評価を処理する判定・評価部22を備えている。そして、表示制御部19は、判定・評価部22の評価結果も表示部21に表示させるようになっている。
【0049】
このように構成された本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様、きずをその他の要因と識別し、きずの有無及び方向を評価することができる。
【0050】
なお、上記第1及び第2の実施形態において、特に、説明しなかったが、探傷プローブ1は、検査対象物6の表面の形状が異なる場合に対応可能な構成としてもよい。すなわち、例えば
図15及び
図16で示す変形例のように、磁化器2の磁極にボルト等で着脱可能な磁性部材23a.23bを設け、これら磁性部材23a,23bが検査対象物6の表面に沿うような形状を有していてもよい。さらに、センサ部7を検査対象物6に押し当てる支持機構24を設けてもよい。支持機構24は、磁化器2の両側(
図16中左右両側)にそれぞれ設けられた当金25と、センサ部7の両側にそれぞれ設けられた支持部材26とを有し、当金25の凸部27と支持部材26の長穴28が係合している。これにより、磁化器2に対してセンサ部7がスライド可能に支持されている。そして、磁化器2とセンサ部7との間に設けられたスプリング29によって、センサ部7を検査対象物6に押し当てるようになっている。
【0051】
また、上記第1及び第2の実施形態において、探傷プローブ1のセンサ部7は、1組の励磁コイル8及び検出コイル9a,9b(すなわち、3つのコイル)を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば
図17で示す変形例のように、センサ部7Aは、2組以上の励磁コイル8及び検出コイル9a,9b(すなわち、6つ以上のコイル)を備えていてもよく、励磁コイル8及び検出コイル9a,9bの組合せを順次切替えるようにしてもよい。
【0052】
また、上記第1及び第2の実施形態において、探傷プローブ1の磁化器2は、電磁石で構成された場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば永久磁石で構成してもよい。そして、例えば、検査対象物6の表面にセンサ部7を配置したまま、検査対象物6の表面と永久磁石の間の距離を変化させる機構を設け、これによって検査対象物に磁場を印加するか否かを切替えるようにしてもよい。