特許第6209151号(P6209151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209151
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/00 20060101AFI20170925BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B60C15/00 K
   B60C15/06 B
   B60C15/06 C
   B60C15/06 N
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-210386(P2014-210386)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-78564(P2016-78564A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】山本 愛子
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−020665(JP,A)
【文献】 特開平11−020424(JP,A)
【文献】 特開2007−045333(JP,A)
【文献】 特開2002−200905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/00
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド、一対のサイドウォール、一対のクリンチ、一対のビード及びカーカス、一対のフィラー、一対のストリップを備えており、
それぞれのサイドウォールが、上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びており、
それぞれのクリンチが、上記サイドウォールの半径方向内側に位置しており、
それぞれのビードが、クリンチの軸方向内側に位置しており、
上記カーカスが、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されており、
上記ビードが、コアとこのコアから半径方向外向きの延びるエイペックスとを備えており
組み込まれる正規リムがフランジを備えており、このフランジが上記クリンチと当接する半径方向外側縁が位置して曲率半径Rで屈曲する屈曲外周面を形成しており、
この曲率半径Rの中心点Prを通って軸方向の延びる直線を第一基準線L1とし、この中心点Prとエイペックスの先端を通って延びる直線と第一基準線L1とのなす角度をエイペックスの先端の位置角度αとするとき、上記正規リムに組み込まれて正規内圧にされて正規荷重の120%の荷重が負荷された状態で、エイペックスの先端の位置角度αが0°以上90°以下であり、
それぞれのフィラーが、上記クリンチの軸方向内側に位置しており、
上記カーカスがカーカスプライを備えており、このカーカスプライが上記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返されており、この折り返しによりこのカーカスプライには主部と折り返し部とが形成されており、
上記折り返し部が上記フィラーと上記エイペックスとの間に位置しており、
それぞれのストリップが、上記エイペックスから半径方向外向きに延びており、
上記ストリップが上記カーカスプライの主部と折り返し部との間に位置しているタイヤ。
【請求項2】
上記ストリップの複素弾性率Es及び上記エイペックスの複素弾性率Eaが20MPa以上60MPa以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
上記位置角度αが、60°以下である請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
上記中心点Prを通って上記第一基準線L1に対して軸方向内側に向かって半径方向外向きに45°の傾きで延びる直線を第二基準線L2としたときに、上記正規リムに組み込まれて正規内圧にされて正規荷重の120%の荷重が負荷された状態で、この第二基準線L2に沿って測られるタイヤの厚さTtに対するフィラーの厚さTfの比が、0.05以上0.30以下である請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
上記中心点Prを通って上記第一基準線L1に対して軸方向内側に向かって半径方向外向きに45°の傾きで延びる直線を第二基準線L2としたときに、上記正規リムに組み込まれて正規内圧にされて正規荷重の120%の荷重が負荷された状態で、この第二基準線L2に沿って測られるタイヤの厚さTtに対するストリップの厚さTsの比が、0.05以上0.15以下である請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に装着されるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、トレッド、サイドウォール、ビード等を備えている。このビードは、コアとコアから半径方向に延びるエイペックスを備えている。このエイペックスは、タイヤの剛性や耐久性の向上に寄与する。従来のタイヤでは、耐久性や剛性の向上の観点から、エイペックスの高さはある程度高く設定されている。特に、大きな荷重が負荷されるタイヤでは、エイペックスの高さを高く設定している。
【0003】
車輌が走行すると、タイヤは路面を転がる。タイヤの接地面が周方向に移動する。タイヤのトレッド、サイドウォール、カーカス等の変形箇所は周方向に移動する。この変形箇所の移動により、トレッド、サイドウォール、カーカス等の各部は変形を繰り返す。サイドウォール及びビードでは、接地している側にある部分と接地していない側にある部分とで、荷重の負荷に大きな差がある。荷重の負荷の大きな差は、タイヤの歪みや発熱を大きくする。歪みや発熱の増大は、タイヤの耐久性を低下させる。特に、エイペックスの高さが高く設定されたタイヤでは、エイペックスの周辺に剥離等の損傷が発生し易く、タイヤの耐久性が低下し易い。
【0004】
特表2013−545671号公報や国際公開番号WO2012/18106には、エイペックスの高さを低くして、エイペックスの軸方向外側にストリップ等を備えたタイヤが開示されている。これらのタイヤは、エイペックスの変形が抑制されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013−545671号公報
【特許文献2】国際公開番号WO2012/18106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらのタイヤでも大きな荷重が負荷されると、エイペックスの先端部分は、大きな変形を繰り返す。特にエイペックスの先端近傍は、歪みが集中し易い。これらのタイヤでも、耐久性の観点から改善が望まれている。特に、大きな荷重を受けるタイヤでは、耐久性の更なる向上が求められている。
【0007】
本発明の目的は、ビードのエイペックスの耐久性に優れたタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤは、トレッド、一対のサイドウォール、一対のクリンチ、一対のビード及びカーカスを備えている。それぞれのサイドウォールは、上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びている。それぞれのクリンチは、上記サイドウォールの半径方向内側に位置している。それぞれのビードは、クリンチの軸方向内側に位置している。上記カーカスは、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されている。上記ビードは、コアとこのコアから半径方向外向きの延びるエイペックスとを備えている。組み込まれる正規リムは、フランジを備えている。このフランジは、上記クリンチと当接する半径方向外側縁が位置して曲率半径Rで屈曲する屈曲外周面を形成している。この曲率半径Rの中心点Prを通って軸方向の延びる直線を第一基準線L1とし、この中心点Prとエイペックスの先端を通って延びる直線と第一基準線L1とのなす角度をエイペックスの先端の位置角度αとする。このとき、上記正規リムに組み込まれて正規内圧にされて正規荷重の120%の荷重が負荷された状態で、エイペックスの先端の位置角度αは、0°以上90°以下である。
【0009】
好ましくは、上記位置角度αは、60°以下である。
【0010】
好ましくは、このタイヤは、一対のフィラーを備えている。それぞれのフィラーは、上記クリンチの軸方向内側に位置している。上記カーカスは、カーカスプライを備えている。このカーカスプライは、上記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、このカーカスプライには主部と折り返し部とが形成されている。上記折り返し部は、上記フィラーと上記エイペックスとの間に位置している。
【0011】
好ましくは、上記中心点Prを通って上記第一基準線L1に対して軸方向内側に向かって半径方向外向きに45°の傾きで延びる直線を第二基準線L2とする。このときに、上記正規リムに組み込まれて正規内圧にされて正規荷重の120%の荷重が負荷された状態で、この第二基準線L2に沿って測られるタイヤの厚さTtに対するフィラーの厚さTfの比は、0.05以上0.30以下である。
【0012】
好ましくは、このタイヤは、一対のストリップを備えている。それぞれのストリップは、上記エイペックスから半径方向外向きに延びている。このストリップは、カーカスプライの主部と折り返し部との間に位置している。
【0013】
好ましくは、上記中心点Prを通って上記第一基準線L1に対して軸方向内側に向かって半径方向外向きに45°の傾きで延びる直線を第二基準線L2とする。このときに、上記正規リムに組み込まれて正規内圧にされて正規荷重の120%の荷重が負荷された状態で、この第二基準線L2に沿って測られるタイヤの厚さTtに対するストリップの厚さTsの比は、0.05以上0.15以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るタイヤでは、エイペックスの変形が抑制されている。正規荷重の120%の荷重が負荷された状態でも、エイペックスの変形が抑制されている。このタイヤは、エイペックス近傍の繰り返し変形が抑制されている。エイペックス周辺の損傷の発生が抑制されている。このタイヤは、耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
図3図3は、図1のタイヤの正規リムの一部が示された断面図である。
図4図4は、図1のタイヤの使用状態が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0018】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、インナーライナー18、一対のチェーファー20、一対のストリップ22及び一対のフィラー24を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、ライトトラックに装着される。なお、ここでは、タイヤ2を例に説明するが、本発明に係るタイヤは、広く種々の車輌に装着されるタイヤに適用でき、チューブを備えるタイヤであってもよい。
【0019】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面26を形成する。トレッド4には、溝28が刻まれている。この溝28により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、ベース層30とキャップ層32とを有している。キャップ層32は、ベース層30の半径方向外側に位置している。キャップ層32は、ベース層30に積層されている。ベース層30は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層30の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層32は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0020】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側端は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側端は、クリンチ8と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
【0021】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。
【0022】
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置している。ビード10は、コア34と、このコア34から半径方向外向きに延びるエイペックス36とを備えている。コア34はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。
【0023】
エイペックス36は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス36は、高硬度な架橋ゴムからなる。エイペックス36の変形を抑制する観点から、エイペックス36の複素弾性率Eaは、好ましくは20MPa以上である。乗り心地の低下を抑制する観点から、この複素弾性率Eaは、好ましくは60MPa以下である。
【0024】
カーカス12は、第一プライ38及び第二プライ40からなる。第一プライ38及び第二プライ40は、両側のビード10の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。第一プライ38は、コア34の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第一プライ38には、主部38aと折り返し部38bとが形成されている。第二プライ40は、コア34の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、第二プライ40には、主部40aと折り返し部40bとが形成されている。第一プライ38の折り返し部の端38cは、半径方向において、第二プライ40の折り返し部の端40cよりも外側に位置している。
【0025】
第一プライ38及び第二プライ40は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス12が、1枚のプライから形成されてもよい。
【0026】
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス12と積層されている。ベルト14は、カーカス12を補強する。ベルト14は、内側層42及び外側層44からなる。図1に示されるように、軸方向において、内側層42の幅は外側層44の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層42及び外側層44のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト14の軸方向幅は、タイヤの最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト14が、3以上の層を備えてもよい。
【0027】
バンド16は、ベルト14の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド16の幅はベルト14の幅よりも大きい。図示されていないが、このバンド16は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド16は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト14が拘束されるので、ベルト14のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0028】
ベルト14及びバンド16は、補強層46を構成している。ベルト14のみから、補強層46が構成されてもよい。バンド16のみから、補強層46が構成されてもよい。
【0029】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置している。赤道面の近傍において、インナーライナー18は、カーカス12の内面に接合されている。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー18は、タイヤの内圧を保持する。
【0030】
それぞれのチェーファー20は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー20がリムと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。このタイヤ2では、チェーファー20は、布とこの布に含浸したゴムとからなっている。チェーファー20は、クリンチ8と一体であってもよい。従って、チェーファー20の材質はクリンチ8の材質と同じであってもよい。
【0031】
それぞれのストリップ22は、エイペックス36から半径方向外向きに延びている。ストリップ22は軸方向において第二プライ40の主部40aと折り返し部40bとの間に位置している。このストリップ22は、カーカス12のカーカスプライ(第一プライ38及び第二プライ40)の主部(主部38a及び主部40a)と折り返し部(折り返し部38b及び折り返し部40b)との間に位置している。ストリップ22は、シート状の架橋ゴムからなる。ストリップ22は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0032】
ストリップ22の複素弾性率Esが大きいタイヤ2は、剛性に優れている。これにより、撓みが効果的に抑えられる。このストリップ22は、タイヤ2の変形を抑制する。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、ストリップ22の複素弾性率Esは、好ましくは20MPa以上である。一方で、この複素弾性率Esが小さいタイヤ2は、乗り心地の低下が抑制される。この観点から、複素弾性率Esは好ましくは60MPa以下である。
【0033】
それぞれのフィラー24は、クリンチ8の軸方向内側に位置している。フィラー24は、第一プライ38の折り返し部38bの軸方向外側に位置している。フィラー24は、第二プライ40の折り返し部40bの軸方向外側に位置している。言い換えると、折り返し部38b及び折り返し部40bは、軸方向においてストリップ22及びエイペックス36とフィラー24との間に位置している。フィラー24は、半径方向外向きに先細りである。フィラー24は、半径方向内向きに先細りである。
【0034】
フィラー24の軸方向内面は、軸方向内側に突出する向きに湾曲している。フィラー24は、高硬度な架橋ゴムからなる。フィラー24の複素弾性率Efが大きいタイヤ2は、剛性に優れる。これにより、撓みが効果的に抑えられる。このフィラー24はエイペックス36の変形を抑制する。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、この複素弾性率Efは、好ましくは15MPa以上である。一方で、この複素弾性率Efが小さいタイヤ2は、乗り心地の低下が抑制される。この観点から、この複素弾性率Efは、好ましくは75MPa以下である。
【0035】
図2には、タイヤ2のビード10の周辺の拡大図が示されている。このビード10では、エイペックス36の半径方向高さが、一般的なその高さに比べて低くされている。エイペックス36の先端36aの位置は、一般的なその位置より半径方向内側に位置している。
【0036】
ストリップ22の半径方向外端22aは、第二プライ40の外端40cより半径方向内側に位置している。この外端22aは、第二プライ40の主部40aと折り返し部40bとの間に位置している。この外端22aは、サイドウォール6の内端6aより半径方向外側に位置している。ストリップ22の半径方向内端22bは、エイペックス36の先端36aより半径方向内側に位置している。ストリップ22の半径方向内側部は、エイペックス36の軸方向内側面に積層されている。ストリップ22の半径方向内側部は、エイペックス36の軸方向外側に積層されてもよい。
【0037】
フィラー24の半径方向外端24aは、エイペックス36の先端36aの半径方向外側に位置している。この外端24aは、クリンチ8の外端8aの半径方向内側に位置している。この外端24aは、外端8aの半径方向外側に位置してもよい。この場合、この外端24aは、サイドウォール6とカーカス12との間に位置する。フィラー24の半径方向内端24bは、エイペックス36の先端36aの半径方向内側に位置している。この内端24bは、クリンチ8の内端8bの半径方向外側に位置している。このタイヤ2では、フィラー24は、クリンチ8に覆われている。
【0038】
図3には、タイヤ2が組み込まれるリム48が示されている。このリム48は、タイヤ2の正規リムである。このリム48は、JATMA規格における「標準リム」である。図3の上下方法が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面に垂直な方向が周方向である。リム48は、バンプ50、ビードシート52及びフランジ54を備えている。図3は、周方向に垂直な断面形状を示しており、バンプ50、ビードシート52及びフランジ54は、周方向に一周して筒状にされている。図3の断面において、バンプ50は、軸方向略中央で半径方向内向きに凹んでいる。バンプ50から軸方向外向きにシートビード52が延びている。シートビード52の軸方向外側から半径方向外向きにフランジ54が延びている。フランジ54の半径方向外端部は、軸方向外向きに屈曲して延びている。
【0039】
ビードシート52は、シート面56を備えている。シート面56は、ビードシート52の外周面で形成されている。フランジ54は、当接面58を備えている。当接面58は、ビードシート52(シート面56)から半径方向外向きに延びている。軸方向一方の当接面58と他方の当接面58とは、互いに対向している。このリム50にタイヤ2が組み込まれると、チェーファー20はシート面56に当接し、クリンチ8は当接面58に当接する。
【0040】
図3の片矢印Drは、リム径を表している。両矢印Wrは、リム幅を表している。リム幅Wrは、軸方向一方の当接面58から他方の当接面58までの軸方向の距離として測定される。片矢印Rrは、シート面56から軸方向外向きに屈曲して延びる屈曲外周面60の曲率半径を示している。このリム径Dr、リム幅Wr及び曲率半径Rrは、リム48が依拠するJATMA規格で定められている。
【0041】
ここでは、JATMA規格における「標準リム」のリム48を例示するが、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」にも、このリム48の、シート面56、当接面58及び屈曲外周面60に相当する面が形成されている。これらのリムの屈曲外周面にも曲率半径Rrに相当する曲面が形成されている。
【0042】
図4には、タイヤ2がリム48に組み込まれたタイヤ組立体62の一部が示されている。このタイヤ2には、正規内圧の空気が充填されている。このタイヤ2には、正規荷重の120%の荷重Fが、半径方向内向きに負荷されている。このタイヤ2は、内圧と荷重Fとを受けて変形している。タイヤ2は、リム2のシート面56、当接面58及び屈曲外周面60の形状に沿って、変形している。図4の符号Pbは、タイヤ2の外面(クリンチ8の外面)とリム48のフランジ54とが接触する半径方向外縁の位置を示している。本発明では、この点Pbを、別離点と称する。この別離点Pbは、正規な内圧で荷重Fを負荷された状態で求められる。
【0043】
図4の点Prは、曲率半径Rrの中心点を表している。実線L1は、中心点Prを通って軸方向に延びる直線である。この直線L1は、本発明の第一基準線を表している。実線L2は、中心点Prを通って軸方向内側に向かって半径方向外向きに延びる直線であって、第一基準線L1に対して45°傾いて延びる直線である。この直線L2は、本発明の第二基準線を表している。実線Lαは、エイペックス36の先端36aと中心点Prとを通って延びる直線を表している。実線Lβは、別離点Pbと中心点Prとを通って延びる直線を表している。両矢印αは、第一基準線L1と直線Lαとがなす角度を表している。この角度αは、フランジ54に対する、エイペックス36の先端36aの位置を表している。本発明では、この角度αをエイペックス36の先端36aの位置角度と称する。両矢印βは、第一基準線L1と直線Lβとがなす角度を表している。この角度βは、フランジ54に対する、別離点Pbの位置を表している。本発明では、この角度βを別離点Pbの位置角度と称する。
【0044】
図4の両矢印Ttは、タイヤ2の厚さを表している。この厚さTtは、クリンチ8からインナーライナー18までの厚さを表している。両矢印Tsは、ストリップ22の厚さを表している。両矢印Tfは、フィラー24の厚さを表している。この厚さTt、厚さTs及び厚さTfは、タイヤ2が正規内圧にされてタイヤ2に荷重Fが負荷された状態で、第二基準線L2に沿って測られる。
【0045】
このタイヤ2では、タイヤ2が正規内圧にされてタイヤ2に荷重Fが負荷された状態で、エイペックス36の先端36aの位置角度αは、90°以下にされている。このエイペックス36の略全体は、フランジ54により変形が抑制される。このエイペックス36の変形が抑制されている。このタイヤ2では、エイペックス36とカーカス12との間で剥離が生じることが抑制されている。このタイヤ2は、大きな荷重が繰り返し負荷されても、耐久性に優れている。
【0046】
フランジ54は屈曲外周面60は曲率半径Rrで屈曲している。この位置角度αを小さくすることで、エイペックス36の変形が一層小さくされうる。この位相角度αを90°以下から60°以下にすることで、一層エイペックス36の変形が抑制されうる。この位置角度αを45°以下にすることで、更にエイペックス36の変形が抑制されうる。この位置角度αを30°以下にすることで、特にエイペックス36の変形が抑制されうる。
【0047】
一方で、このエイペクス36が高くされたタイヤ2では、エイペックス36の軸方向外側において、カーカス12の折り返し部38b及び折り返し部40bの湾曲の曲率半径が小さくなりすぎることが抑制される。この湾曲の曲率半径が大きいタイヤ2は、エイペックス36と折り返し部38b及び折り返し部40bとの剥離が抑制される。この湾曲の曲率半径が大きいタイヤ2は、耐久性の向上に寄与する。この観点から、この位置角度αは、0°以上であり、好ましくは5°以上であり、更に好ましくは10°以上であり、特に好ましくは15°以上である。
【0048】
このタイヤ2では、フィラー24がタイヤ2の剛性の向上に寄与する。カーカス12の折り返し部38b及び折り返し部40bがエイペックス36とフィラー24との間に挟み込むことで、主部38a及び主部40aに引張応力が発生する。これにより、サイドウォール6からビード10までの剛性が均一的に向上する。この様にして、このフィラー24は、エイペックス36と協働して、操縦安定性の向上にも寄与する。エイペックス36に、フィラー24を組み合わせることで、タイヤ2の乗り心地の向上に寄与する。更に、フィラー24は、ビード10の軸方向外側に位置して、ビード10を補強する。フィラー24は、エイペックス36の変形を抑制する。このフィラー24は、タイヤ2の耐久性の向上に寄与する。
【0049】
タイヤ2の厚さTtに対するフィラー24の厚さTfの比(Tf/Tt)が大きいタイヤ2は、剛性に優れている。このタイヤ2は、操縦安定性に優れている。また、エイペックス36と組み合わせにおいて、この比(Tf/Tt)が大きいタイヤ2は、乗り心地もに優れており、耐久性にも優れている。これらの観点から、この比(Tf/Tt)は、好ましくは0.05以上であり、更に好ましくは0.10以上であり、更に好ましくは0.15以上である。一方で、この比(Tf/Tt)が大きすぎると、タイヤ2に局所的な変形を生じ易い。この局所的な変形は、タイヤ2に耐久性を損なう。この観点から、この比(Tf/Tt)は、好ましくは0.30以下である。
【0050】
このタイヤ2では、ストリップ22は、タイヤ2の剛性の向上に寄与する。エイペックス36に、ストリップ22を組み合わせることで、操縦安定性及び乗り心地を損なうこと無く、耐久性が向上されうる。
【0051】
タイヤ2の厚さTtに対するストリップ22の厚さTsの比(Ts/Tt)が大きいタイヤ2は、乗り心地と操縦安定性とに優れている。この観点から、この比(Ts/Tt)は、好ましくは0.05以上であり、更に好ましくは0.10以上である。一方で、この比(Ts/Tt)が大きくなりすぎると、ストリップ22の剛性が大きくなりすぎる。この比(Ts/Tt)が大き過ぎるタイヤ2は、乗り心地が損なわれる。このタイヤ2は、更に、耐久性が損なわれる。この観点から、この(Ts/Tt)は、好ましくは0.15以下である。
【0052】
このタイヤ2では、フランジ54によりエイペックス36の変形が抑制される。これにより、エイペックス36とカーカス12との間で剥離が発生することが抑制されている。特に、エイペック36の先端36aの近傍に歪みが集中し易い。この先端36aの近傍でカーカス12との剥離が生じ易い。この剥離を抑制する観点から、タイヤ2が正規内圧にされてタイヤ2に荷重Fが負荷された状態で、エイペックス36の先端36aの位置角度αは、別離点Pbの位置角度βより小さいことが好ましい。
【0053】
本発明では、ストリップ22の複素弾性率Es、フィラー24の複素弾性率Ef及びエイペックス36の複素弾性率Eaは、「JIS K 6394」の規定に準拠して、下記の測定条件により、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製の商品名「VESF−3」)を用いて計測される。この計測では、ストリップ22、フィラー24及びエイペックス36のゴム組成物から板状の試験片(長さ=45mm、幅=4mm、厚み=2mm)が形成される。この試験片が、計測に用いられる。
初期歪み:10%
振幅:±2.0%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0054】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。特に言及されない限り、測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0056】
[実施例1]
ストリップ及びフィラーを備えていない他は、図1に示された構成を備えたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、LT265/75R16である。正規リムに組み込まれて正規内圧にされて正規荷重の120%の荷重が負荷された状態で、このタイヤのエイペックスの先端の位置角度αは、30°にされた。
【0057】
[比較例1]
従来の市販タイヤが準備された。このタイヤは、ストリップ及びフィラーを備えていない。エイペックスの先端の位置角度αは、100°であった。その他は、実施例1と同様の構成を備えていた。
【0058】
[実施例2−4及び比較例2−3]
エイペックスの先端の位置角度αを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0059】
[実施例5−6]
フィラーを備えた他は、実施例1と同様にされてタイヤを得た。正規リムに組み込まれて正規内圧にされて正規荷重の120%の荷重が負荷された状態で、タイヤの厚さTtに対するフィラーの厚さTfの比(Tf/Tt)は、表2に示す通りにされた。
【0060】
[実施例7−9]
ストリップを備えた他は、実施例1と同様にされてタイヤを得た。正規リムに組み込まれて正規内圧にされて正規荷重の120%の荷重が負荷された状態で、タイヤの厚さTtに対するストリップの厚さTsの比(Ts/Tt)は、表2に示す通りにされた。
【0061】
フィラー及びストリップを備えた他は、実施例1と同様にされてタイヤを得た。前述の比(Tf/Tt)及び比(Ts/Tt)は、表2に示す通りにされた。
【0062】
[耐久性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を550kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、20kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、100km/hの速度で、ドラムの上を走行させた。このタイヤを30000km走行させて、耐久性を評価した。耐久指数は、この耐久性を指数評価した数値である。この指数は、数値が大きいほど好ましい。更に、30000kmの走行後に、タイヤをカットした。そして、エイペックスとカーカスとの間に、剥離等の損傷の有無が確認された。ビード損傷には、損傷が確認されたものを有とし、確認できなかったものを無とした。このビード損傷は無が好ましい。
【0063】
[操縦安定性及び乗り心地]
タイヤを正規リムに組み込み、ライトトラックの後輪に装着した。このタイヤに内圧が550kPaとなるように、空気を充填した。前輪には市販タイヤをそのまま装着した。前輪のタイヤに内圧が340kPaとなるように、空気を充填した。これらのタイヤそれぞれに荷重11.38kNが負荷された状態で、ドライバーに、操縦安定性及び乗り心地を評価させた。この評価では、このライトトラックを5km走行させて、ドライバーが官能評価をした。その結果が、指数として下記の表1に示されている。操縦安定性は、実施例1の評価結果を100として、評価した。この指数は、数値が大きいほど好ましい。乗り心地は、実施例1の評価結果を3.0として、評価した。この指数も、数値が大きいほど好ましい。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1及び表2に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて、耐久性に優れている。更にフィラーやストリップを備えることで、操縦安定性及び乗り心地にも優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明された方法は、乗用車等を含む車輌に広く適用されるが、ライトトラック、トラック、バス等の大きな荷重が負荷されるタイヤに特に適している。
【符号の説明】
【0068】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
18・・・インナーライナー
20・・・チェーファー
22・・・ストリップ
24・・・フィラー
34・・・コア
36・・・エイペックス
38・・・第一プライ
40・・・第二プライ
48・・・リム
54・・・フランジ
56・・・シート面
58・・・当接面
60・・・屈曲外周面
62・・・タイヤ組立体
図1
図2
図3
図4