(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。なお、実施形態では、表示パネル製造装置において製造される表示パネルの例として、液晶表示パネルを用いる。また、基板貼合装置において貼り合せされる一対の基板の例として、表示用パネルである液晶パネルと、液晶パネルをカバーする保護パネルを用いる。すなわち、液晶パネルと保護パネルを、接着層を介して積層して貼り合せることによって、液晶表示パネルが構成される。
【0016】
接着層は、液晶パネル及び保護パネルのいずれか一方の表面、あるいは両方の表面に接着材を付与することによって形成することができる。接着材は、例えば樹脂を用いた接着剤や、粘着フィルムを用いることができる。本実施形態の表示パネル製造装置においては、接着剤を使用して接着層を形成する場合を主に説明する。
【0017】
[構成]
(表示パネル製造装置)
図1に示すように、表示パネル製造装置100は、塗布部1、貼り合せ部2、硬化部3及び搬送部4を備える。表示パネル製造装置100は、また、制御装置7を備えている。制御装置7は、各部を構成する装置の動作の制御や、基板の搬送タイミングの制御を行う。
【0018】
搬送部4は、液晶パネルS1及び保護パネルS2を各部へ搬送する搬送手段とその駆動機構から構成される。搬送手段は、たとえば、ターンテーブル、コンベア等が考えられるが、上記各部の間で基板を搬送可能なものであれば、どのような装置であってもよい。
【0019】
液晶パネルS1及び保護パネルS2は、ローダ5によって表示パネル製造装置100に搬入され、搬送部4で搬送される。搬送部4に沿って塗布部1、貼り合せ部2及び硬化部3が配置されており、不図示のピックアップ手段によって、液晶パネルS1及び保護パネルS2の各部への搬入及び搬出がなされる。各部での、以下に詳述する工程を経て、液晶表示パネルLが製造され、アンローダ6によって表示パネル製造装置100から搬出される。
【0020】
(塗布部)
塗布部1は、
図2に示すように、基板の表面に接着剤Rを塗布する接着剤塗布装置10を備える。塗布部1は、本実施形態において、基板の表面に接着剤Rにより接着層を形成する接着層形成部として作用する。接着剤Rの塗布は、液晶表示パネルを構成する液晶パネルS1と保護パネルS2のいずれか一方に行っても良く、あるいは双方に行っても良い。本実施形態では、液晶パネルS1の表面に接着剤Rを塗布する例について説明する。
【0021】
接着剤塗布装置10は、搬送部4で搬送され、不図示のピックアップ手段によって塗布部1に搬入された液晶パネルS1が載置されるステージ11と、ステージ11上に配置された塗布ユニット12とUV照射ユニット13を備える。
【0022】
塗布ユニット12は、液晶パネルS1に対して接着剤Rを塗布する。塗布ユニット12は、接着剤Rを収容するタンクTと、配管を介してタンクTに接続されたディスペンサ14とを備えている
。ディスペンサ14として、たとえば、先端にスリット
状のノズルを備えたスリットコータを用いることができる。ディスペンサ14は走査装置(図示せず)によってステージ11上を移動可能に構成され、タンクTに収容された接着剤Rを液晶パネルS1に吐出する。また、走査装置によって接着剤Rの塗布領域を調整可能である。また、塗布ユニット12は、不図示の進退駆動手段を備えており、塗布ユニット12をステージ11に対して進退可能に駆動する。もちろん、塗布ユニット12とステージ11が相対的に移動されれば良く、ステージ11が駆動されても良い。
【0023】
図2(A)に示すように、塗布ユニット12がステージ11上に進入し、ディスペンサ14のノズルから液晶パネルS1に接着剤Rを吐出する。このディスペンサ14を、走査装置によって走査することによって、液晶パネルS1の表面全体に、接着剤Rが行き渡るように供給していく。なお、ディスペンサ14としてスリットコータを用いた場合、
図2(B)に示すように、外縁部に盛り上がりが生じる。塗布が完了すると、塗布ユニット12はステージ11上から退避する。
【0024】
UV照射ユニット13は、紫外線(UV)を発することができる1つまたは複数のランプやLED等から構成されており、ステージ11上に配置されている。
図2(C)に示すように、UV照射ユニット13は、液晶パネルS1の表面に塗布された接着剤Rに対して、UV照射を行う。
【0025】
本実施形態において、接着剤Rは紫外線(UV)硬化樹脂を用いる。そのため、UV照射によって接着剤Rは硬化する。ただし、この塗布部1におけるUV照射は、弱い照射強度で、あるいは酸素阻害が起きるように大気下で行われている。そのため、接着剤Rは、未硬化部分が残留した状態を広く含む、いわゆる仮硬化の状態となる。すなわち、UV照射ユニット13は表示パネル製造装置の仮硬化部として機能する。これによって、
図2(D)に示すように、液晶パネルS1の表面には、接着剤Rが仮硬化された、所定の厚みを有する接着層R1が形成される。なお、上述したようにディスペンサ14としてスリットコータを用いた場合には、接着層R1の上面側の外縁部は盛り上がり、そのすぐ内側には凹みが生じる。
【0026】
仮硬化の状態となることによって、接着層R1の流動が抑制され、後述する貼り合せまでの搬送等の時間や貼り合せにおいて、塗布形状のくずれやパネル外への接着層R1のはみ出しが防止される。なおかつ、未硬化部分が残留しているため、接着層R1の接着性やクッション性は維持される。
【0027】
ただし、仮硬化状態でも、接着層R1には若干の流動性が残る。上述したように、接着剤Rは液晶パネルS1の表面全体に行き渡るように塗布されるが、液晶パネルS1の縁部分をわずかに残すように塗布は行われる。これによって、後述の貼り合せにおいて、接着層R1はパネルのわずかに残った部分にも行き渡るとともにパネル外への過大なはみ出しが防止される。
【0028】
なお、
図2の例では、貼り合せ時に接着層R1が伸展することを考慮して、接着剤Rは液晶パネルS1の縁の部分をわずかに残すように塗布されるが、これはあくまで一例である。接着剤Rの粘度や仮硬化後の接着層R1の固さによっては、液晶パネルS1の縁まで届くように塗布しても良い。
【0029】
接着層R1が形成された液晶パネルS1は、不図示のピックアップ手段によって塗布部1から搬出され、搬送部4で搬送され、貼り合せ部2に搬入される。ここで、保護パネルS2も、貼り合せ部2に搬入される。液晶パネルS1と保護パネルS2の搬送タイミングは、貼り合せ部2で合流することができるように調整すれば良く、一つに限定されるものではない。
【0030】
例えば、保護パネルS2を液晶パネルS1と同時に表示パネル製造装置100に搬入するが、塗布部1は通過して先に貼り合せ部2に搬入する。そして、液晶パネルS1が塗布部1で接着剤Rを塗布されている間は、貼り合せ部2において待機していても良い。あるいは、保護パネルS2は、液晶パネルS1よりも後のタイミングで表示パネル製造装置100に搬入し、塗布部1での塗布が完了した液晶パネルS1と同じタイミングで貼り合せ部2に搬入するようにしても良い。
【0031】
なお、接着材として粘着フィルムを用いた場合には、表示パネル製造装置100に、塗布部1の代わりにフィルム貼着部を備えるようにすると良い。フィルム貼着部において、例えば、液晶パネルS1の表面に粘着フィルムを貼着する。粘着フィルムは両面に粘着面が形成され、一方の粘着面には剥離紙が貼着されたものを使用する。剥離紙が貼着されていない粘着面を液晶パネルS1の表面に重ね合わせて貼着し、剥離紙をはがすことによって、接着層を形成することができる。粘着フィルムの貼着及び剥離紙の剥離については、既存の装置を用いることができる。また、フィルム貼着部を設ける代わりに、表示パネル製造装置100への搬入前に、予め液晶パネルS1に粘着フィルムを貼着していてもよい。
【0032】
(貼り合せ部)
貼り合せ部2は、
図3(A)に示すように、液晶パネルS1と保護パネルS2を積層して貼り合せる基板貼合装置20を備える。基板貼合装置20は、チャンバ21内に下側プレート22と上側プレート23を対向配置した構成となっている。チャンバ21は上下動が可能であり、上方に移動すると下側プレート22と上側プレート23が外部に開放され液晶パネルS1と保護パネルS2が搬入可能となる。下方に移動すると下側プレート22と上側プレート23はチャンバ21内に収容され、チャンバ21内部に密閉空間が形成される。チャンバ21は不図示の排気手段によって内部圧力を調整可能となっている。つまり、液晶パネルS1と保護パネルS2が搬入されると、チャンバ21が下降して内部が密閉された上で減圧され、減圧雰囲気下で貼り合せが行われるようになっている。
【0033】
下側プレート22は、支持部として、プレート上に載置された基板を支持する。上側プレート23は、保持部として、基板を保持機構により保持する。本実施形態では、例として、下側プレート22に、接着剤Rが塗布された液晶パネルS1が支持され、上側プレート23に保護パネルS2が保持される場合を説明する。
【0034】
上側プレート23の保持機構として、たとえば、静電チャック、メカチャック、真空チャック、粘着チャック等、現在又は将来において利用可能なあらゆる保持機構が適用可能である。複数のチャックを併用することも可能である。上側プレート23には、駆動部として、昇降機構25が備えられている。この昇降機構25によって、上側プレート23は下側プレート22に接離可能に移動し、
図3(B)に示すように、上側プレート23に保持された保護パネルS2を下側プレート22に支持された液晶パネルS1に押し付けて積層する。液晶パネルS1と保護パネルS2は、液晶パネルS1の表面に形成された接着層R1を介して貼り合わされ、積層パネルS10が形成される。
【0035】
下側プレート22は、載置された液晶パネルS1の位置がずれないように、上側プレート23と同様の保持機構を備えていても良い。下側プレート22の、液晶パネルS1が載置される表面には、弾性シート24が取り付けられている。弾性シート24は所定の厚みを有するシートであり、厚みの分だけ下側プレート22の表面から突出している。したがって、下側プレート22は、この弾性シート24を介して液晶パネルS1を支持することになる。
【0036】
弾性シート24は、例えば、軟質樹脂から構成することができる。軟質樹脂としては、例えば、発泡樹脂を使用することができる。発泡樹脂は内部に空孔が多数形成され、その空孔に気体が内包されるため、弾力性が高い。さらに、発泡樹脂の内部に形成される空孔は独立孔であることが望ましい。独立孔は、一つ一つが閉塞され独立した孔である。一方、一つの空孔が他の空孔に繋がって連続しているものを連続孔という。空孔が連続孔であった場合、内包された気体が抜けやすく、弾性も維持しにくい。空孔が独立孔であれば、内包された気体が抜けにくく、安定した弾性を長期間維持することができる。独立孔が形成される発泡樹脂として、例えば、発泡シリコンを用いることができる。軟質樹脂として、他にも、例えば、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の樹脂ゴムやシリコンゲル等の樹脂ゲルを用いることができる。
【0037】
なお、必ずしも発泡樹脂のすべての空孔が独立孔である必要はなく、概ね80%以上が独立孔であれば、連続孔が存在していても良い。また、弾性シート24の表裏面には孔が存在せず、内部のみに存在していてもよい。また、表裏面に連続孔が形成され、内部
に独立孔が形成されていても良い。この場合は、内部の空孔の概ね80
%以上が独立孔であれ
ば良い。
【0038】
弾性シート24は、液晶パネルS1の表面に形成された接着層R1と相似形状かつ略同じ大きさになるように決定される。具体的には、弾性シート24の上面、すなわち液晶パネルS1と接触する面が、接着層R1の液晶パネルS1に付着している側の面と、相似形状かつ略同じ大きさを持つ。なお、下側プレート22に接触する弾性シート24の下面も、上面と相似形状で略同じ大きさ、すなわち接着層R1と相似形状で略同じ大きさであることが好ましい。弾性シート24の厚みは、接着層R1と同じでも良いが、異なっていても良い。液晶パネルS1が下側プレート22上に載置される際に、液晶パネルS1の表面に形成された接着層R1が、下側プレート22上に配置された弾性シート24と、上面から見て概ね重なるように、液晶パネルS1の位置合わせが行われる。
【0039】
この弾性シート24が貼り合せの際にどのように作用するかについて、
図4を用いて説明する。
図4(A)に示すように、上側プレート23が下降し、両パネルを介して下側プレート22を押圧すると、下側プレート22から上側プレート23を押圧する反力が生じる。ここで、下側プレート22と液晶パネルS1の間には弾性シート24が介在しているため、反力は弾性シート24を介して、液晶パネルS1から接着層R1に伝達される。接着層R1は押圧力を受けて伸展する。
図4(B)に示すように、接着層R1の外縁部の盛り上がりも押し潰されて、パネル外縁に及ぶ。弾性シート24も、同様に押圧力を受け、弾性により伸展する。
【0040】
ここで、基板貼合装置20が弾性シート24を備えておらず、液晶パネルS1が下側プレート22上に直接載置された場合に、生じ得る事態について説明する。
図5(A)に示すように、液晶パネルS1にうねりやしなりがあってその表面が不均一な状態であった場合には、下側プレート22と液晶パネルS1の間にはわずかな隙間が生じる。この隙間によって、接着層R1に下側プレート22の押圧力が接着層R1に均一に伝達されない可能性がある。特に、上述したように、接着剤Rの塗布にスリットコー
タを用いた場合には、接着層R1の外縁部に盛り上がりが生じ、さらにその内側に凹んだ部分が生じることがある。この盛り上がりを十分に伸展できなければ、
図5(B)に示すように、盛り上がりの内側の凹んだ部分が残ってしまう可能性がある。特に、接着剤の塗布後貼り合せ前に仮硬化を行った場合、接着剤は伸展し難くなるので、その影響は顕著となる。
【0041】
上述したように、チャンバ21内部は減圧されているため、基板の間に空気が入り込むことは多くはないが、このように接着層R1を伸展しきれず凹んだ部分が残ると、気泡状の間隙(真空泡)が形成されることがある。なお、このような真空泡の多くは貼り合せ部2から搬出されて大気圧に戻されると、大気圧によって押し潰されて消滅するが、接着剤の状態、特に表面形状によっては潰しきれずに残るものもある。
【0042】
一方、大気下で貼り合せを行った場合には、接着層R1が伸展しきれず残った凹みの部分には、当然空気が存在し、さらにこの空気が反発力を持つことによって、気泡が発生する可能性がより高まる。なお、上述の気泡状の間隙すなわち真空泡や気泡を合わせて、本実施形態ではボイドとして表現する。
【0043】
一方、弾性シート24がある場合には、
図6(A)に示すように、弾性シート24が撓んでうねりやしなりに沿うため、下側プレート22の押圧力は、接着層R1全面に均一に伝達される。
図6(B)に示すように、接着層R1の外縁部は十分に伸展され、内側の凹んだ部分を含め均されて均一にされる。これによって、ボイドの発生が低減される。
【0044】
さらに、上述したように、弾性シート24は接着層R1と相似形状かつ略同じ大きさであり、液晶パネルS1は、上面から見て接着層R1が弾性シート24と概ね重なるように位置合わせされる。これによって、液晶パネルS1の、接着層R1が形成されている部分のみが押圧されることになり、その他の部分には余分な力がかからない。あるいは、接着層R1が形成されている部分のうちの一部が十分に押圧されない、ということも回避できる。結果として、接着層R1が十分に伸展しなかったり、あるいは伸展を阻害されるという事態を防止することができる。
【0045】
ここで、比較例として、弾性シート24が接着層R1より大きい場合と、接着層R1より小さい場合に生じ得る事態について、
図7及び
図8を使って説明する。
【0046】
図7に示すように、弾性シート24が接着層R1より大きい
場合、液晶パネルS1の、接着層R1が形成されていない縁の部分が、弾性シート24によって余分に押し上げられることになる。それによって、液晶パネルS1の縁の部分がしなって、接着層R1を内側に押す力がはたらく。これによって接着層R1のパネル外縁方向への伸展が阻害され、外縁部の盛り上がりが十分に押し潰されず、凹み部分が残り、ボイドが生じてしまう可能性がある。
【0047】
図8に示すように、弾性シート24が接着層R1より小さい場合、接着層R1には弾性シート24によって押圧されない部分が生じる。特に接着層R1の外縁部が押圧されなければ、外縁部の盛り上がりは押し潰されず、その内側の凹みの部分も残ってしまい、ボイドが発生する可能性がある。
【0048】
以上述べたように、弾性シート24が接着層R1より大きい場合及び小さい場合のいずれも、接着層R1が十分に伸展せず、ボイドが発生する可能性が高まる。一方、本実施形態では、弾性シート24が接着層R1と相似形状かつ略同じ大きさであるため、接着層R1は弾性シート24を介して万遍なく押圧され、かつ接着層R1の形成されていないパネル部分に余分な力はかからない。これによって、接着層R1はパネル外縁まで伸展し、外縁部の盛り上がりや凹みをきちんと押し潰すことができるため、ボイドの発生が低減される。
【0049】
なお、本実施形態の目的から当然に導き出されることであるが、「相似形状で略同じ大きさ」とは、接着層R1と弾性シート24の形状及び大きさが同一であっても良いが、完全に同一である必要はないことを意味する。接着層R1と弾性シート24の形状及び大きさに多少の違いがあっても、
図7及び
図8に示したように、液晶パネルS1の接着層R1が形成されていない部分に余分な力がかかってボイドが生じたり、あるいは、接着層R1に押圧されない部分があることによってボイドが生じたりする現象が起こらない程度であれば、「相似形状で略同じ大きさ」に含まれる。
【0050】
なお、基板の形状及び大きさに応じて、その表面に形成される接着層R1の形状及び大きさも変化する。そこで、弾性シート24は、基板の種類に応じて交換可能とすると良い。例えば、ベースを用意し、両面テープ等でベースに貼り付けておいて、プレートに対してベースごと着脱可能にしても良い。あるいは、交換の都度下側プレート22に直接貼り付けてもよい。
【0051】
弾性シート24は、少なくともアスカーC硬度計で硬度を測定可能なものが良い。より好ましくは、弾性シートの硬度を15以上85以下としても良い。弾性シート24が柔らかすぎると、伸展し過ぎてしまい、
図7に示したように、弾性シート24が接着層R1よりも大きくなり、接着層R1の伸展が阻害される可能性があるからである。また、弾性シート24の材料によっては、伸展した弾性シート24が基板側にはみ出して貼りつき、押圧解放後に接着層R1の一部を引きはがし、結果としてボイドが発生する可能性もある。さらに、弾性シート24が押圧によって極端に潰れてしまい、弾性を失ってしまう。反対に、弾性シート24の硬度が高すぎると、液晶パネルS1のうねりやしなりに沿わなくなる可能性がある。さらに、弾性シート24を経時変化の影響を受けにくいものとするためには、弾性シート24の硬度を35としても良い。
【0052】
なお、接着材として粘着フィルムを用いた場合には、接着剤Rを用いた場合のように接着層R1に盛り上がりが生じることは考えにくい。ただし、液晶パネルS1にうねりやしなりが生じて不均一な状態であれば、粘着フィルムと液晶パネルS1との間にボイドが生じる可能性はある。したがって、接着剤Rの場合と同様に弾性シート24を用いることで、ボイドの発生を低減することができる。
【0053】
液晶パネルS1と保護パネルS2を貼り合せて形成された積層パネルS10は、不図示のピックアップ手段によって貼り合せ部2から搬出され、搬送部4
で搬送され、硬化部3に搬入される。
【0054】
(硬化部)
図9に示すように、硬化部3は、塗布部1において仮硬化された接着層R1を本硬化する硬化装置30を備える。硬化装置30は、積層パネルS10が載置されるステージ31と、ステージ31上に配置されたUV照射ユニット33を備える。UV照射ユニット33は、紫外線(UV)を発することができる1つまたは複数のUVランプやLED等から構成されている。UV照射ユニット33の照射強度は、塗布部1において仮硬化された接着層R1を完全に硬化するのに必要な紫外線を照射することができるように調節されている。もちろん、仮硬化を伴わない接着層を完全に硬化する場合も同様である。
【0055】
なお、接着材として粘着フィルムを用いる場合は、硬化部3は不要である。また、表示パネル製造装置は、塗布部1、貼り合せ部2及び硬化部3の前後又はその間に別の工程を行っても良い。そのために、表示パネル製造装置は、例えば、塗布部1の前段又は貼り合せ部2の前段で基板の外観を撮像して位置合わせを行う位置合わせ部や、完成した液晶表示パネルを梱包するテーピングユニット等を備えても良い。
【0056】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を説明する。
【0057】
まず、
図1に示すように、液晶パネルS1及び保護パネルS2が、ローダ5によって表示パネル製造装置100に搬入され、搬送部4
で搬送される。液晶パネルS1が不図示のピックアップ手段によって塗布部1に搬入され、
図2に示すように、接着剤塗布装置10のステージ11に載置される。
【0058】
液晶パネルS1がステージ11に載置されると、塗布ユニット12がステージ11上に進入する。タンクTに収容された接着剤Rがディスペンサ14を介して液晶パネルS1の表面に塗布される(
図2(A))。走査装置で走査することによって、
図2(B)に示すように、接着剤Rは液晶パネルS1の縁の部分をわずかに残して全面に行き渡るように塗布される。接着剤Rの塗布が終わると、塗布ユニット12はステージ11上から退避する。
【0059】
次いで、UV照射ユニット13によって、接着剤Rに対してUV照射が行われ、接着剤Rは仮硬化の状態となる(
図2(C)及び(D))。これによって液晶パネルS1の表面に所定の厚みを有する接着層R1が形成される。
【0060】
接着層R1が形成された液晶パネルS1は、塗布部1から搬出され、再び搬送部4
で搬送される。続いて、不図示のピックアップ手段によって貼り合せ部2に搬入され、
図3(A)に示すように、基板貼合装置20の下側プレート22に載置される。このとき、接着層R1が形成された表面が上を向くように載置される。保護パネルS2も貼り合せ部2に搬入され、上側プレート23に受け渡されて保持機構により保持される。このとき、チャンバ21は上方に移動しているため、下側プレート22と上側プレート23は開放されている。両パネルの搬送が完了するとチャンバ21は下方に位置するように駆動され、下側プレート22と上側プレート23をチャンバ21の内部に収容する。チャンバ21内部には密閉空間が形成され、図示しない排気手段によって密閉空間内が減圧される。
【0061】
そして、
図3(B)に示すように、上側プレート23が下側プレート22に向かって下降し、上側プレート23に保持されている保護パネルS2を、下側プレート22に支持されている液晶パネルS1に押し付ける。液晶パネルS1表面に形成された接着層R1は、液晶パネルS1を介して下側プレート22に押圧され、両パネルに密着することにより、両パネルを貼り合せる。貼り合せの際に、上側および下側プレートの平行度や平面度に多少の誤差があっても、また、液晶パネルS1の表面にうねりやしなりがあっても、下側プレート22に取り付けられた弾性シート24がうねりやしなりに沿う為、接着層R1は均一に押圧される。また、弾性シート24は接着層R1と相似形状で略同じ大きさとなっているため、液晶パネルS1のうち、接着層R1が形成された部分のみが押圧され、他の箇所に余分な力が掛からない。これによって接着層R1は液晶パネルS1と保護パネルS2に密着し、ボイドの発生が低減される。
【0062】
液晶パネルS1と保護パネルS2の貼り合せが完了すると、減圧状態が解除され、チャンバを上方に移動し、密閉空間が開放される。積層パネルS10は、貼り合せ部2から搬出され、再び搬送部4
で搬送される。続いて、不図示のピックアップ手段によって硬化部3へ搬入される。なお、貼り合せ部2から硬化部3への搬送の過程で、積層パネルS10を一定時間、大気中で放置しても良い。この放置時間において、積層パネルS10が大気圧によって押圧されて安定する。また、接着層R1にボイドが残留していても、十分な時間放置することによって、ボイドも低減させることができる。
【0063】
硬化部3においては、
図9に示すように、積層パネルS10はステージ31に載置され、UV照射ユニット33によって、仮硬化された接着層R1が完全に硬化するのに必要な強度の紫外線が照射され、接着層R1の本硬化が完了する。
【実施例】
【0064】
本実施形態の表示パネル製造装置及び基板貼合装置の各実施例及び比較例に対して、試験を行い、特性を評価した。
【0065】
各実施例及び比較例において、表示パネル製造装置及び基板貼合装置の全体的な構成は同じであるが、弾性シート24について、形状及び大きさ、材料並びに硬度をそれぞれ異ならせたものを用意した。
【0066】
[試験1]
各実施例及び比較例について、以下の条件で貼り合せ試験を行った。
・貼り合せ時押圧力…3.0kg/cm
2
・基板…ガラス製、152.4×91.4(mm)の長方形、厚さ0.7mm
・貼合せ時雰囲気圧力…30Pa
・接着材…粘度2900mPa・sの紫外線(UV)硬化樹脂
・接着層…約150×90(mm)(基板と略同形状(相似形状)及び略同じ大きさになるように形成した)
・接着剤塗布厚さ…200μm
・弾性シート…厚さ3mm
・仮硬化UV強度…積算光量631mJ/cm
2
接着層を形成する紫外線硬化樹脂は、基板の外縁から概ね1mm程度内側の範囲を塗布した。このように塗布することによって、貼り合せ時に接着層は基板とほぼ同じ形状及び大きさになる。
【0067】
貼り合わせ後、基板と接着層R1の間にボイドが発生しているかを、目視で確認した。ボイドがあるものについては、ボイドの発生箇所も確認した。各実施例及び比較例の弾性シートの条件と、ボイドの発生の有無を以下の表1に示す。
【表1】
【0068】
硬度は、日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)に基づいてアスカーC硬度計で測定したものである。なお、実施例3のシリコンゲルは柔らかすぎるため、アスカーC硬度計での硬度は測定不可能だった。実施例3のシリコンゲルは、日本標準規格(JIS K2207)に基づいて測定した針入度50〜55のものを使用した。実施例1〜4及び比較例4の弾性シート24は、紫外線硬化樹脂の塗布時の接着層と同じ大きさのもの、即ち150×90(mm)のものを用いた。上述したように、貼り合せ時に接着層は基板とほぼ同じ形状及び大きさになるが、弾性シート24との各辺の差は1〜2mm程度であり、弾性シート24と接着層は略同形状で略同じ大きさと言える。比較例2の弾性シート24は、接着層R1より各辺10mmずつ短いものを用いた。比較例3の弾性シート24は、接着層R1より各辺10mmずつ長いものを用いた。比較例1は弾性シート24を設置せずに貼り合せを行った。
【0069】
実施例1、実施例4、比較例2及び比較例3については、貼り合せ時の圧力分布の測定試験も行った。圧力分布の測定は、貼り合せ試験とほぼ同条件で行ったが、接着層R1は形成せず、
図10に示すように、基板貼合装置20の上側プレート23と弾性シート24の間にタクタイルセンサを配置した。上側プレート23に保持された基板と弾性シート24上に載置された基板でタクタイルセンサを挟み込むことで、基板にかかる圧力分布を測定した。
図11(A)に実施例1の圧力分布図、
図11(B)に実施例4の圧力分布図を示している。
図12(A)に比較例2の圧力分布図、
図12(B)に比較例3の圧力分布図を示す。
【0070】
各図において、圧力分布は基準圧力を100として、0〜100の数値範囲を16分割し、各範囲を以下のカラーチャートで示している。
0(濃青)〜36(薄青)〜50(緑)〜70(黄)〜94(赤)〜100(ピンク)
ただし、図面はカラーチャートをグレースケール表示に変換したものであるため、一部判別しにくい部分もある。判別しにくい部分については、説明を補う。なお、
図12〜
図14も同様にカラーチャートをグレースケール表示に変換したものである。
【0071】
以下、試験の結果について検討する。
<弾性シートの有無について>
弾性シート24を用いなかった比較例1は、基板の中央部と外縁付近、すなわち全面的にボイドが発生している。下側プレート22の押圧力が接着層R1に均一に伝達されなかったため、ボイドが全面的に発生したと考えられる。一方、弾性シートを用いた実施例1〜4では、ボイドが発生しないか、一部のみに発生した状態である。弾性シートを用いることによって下側プレート22の押圧力が接着層R1に均一に伝達されることによって、ボイドの発生が大きく低減されていることがわかる。
【0072】
<弾性シートの形状及び大きさについて>
実施例1、比較例2及び比較例3は、いずれも硬度35の発泡シリコンを用いて弾性シート24を構成しているが、それぞれ弾性シート24の形状及び大きさを変更している。実施例1は接着層R1と同じ形状及び大きさの弾性シート24を用いた。比較例2では、接着層R1よりも小さい弾性シート24を用いた。比較例3では、接着層R1よりも大きい弾性シート24を用いた。実施例1においてはボイドの発生はないが、比較例2及び比較例3は、基板の中央部にはボイドの発生は無いが、外縁付近にボイドが発生している。
【0073】
上述したように、弾性シート24が接着層R1より小さい場合、接着層R1の外縁付近に弾性シート24によって押圧されない部分が生じる。
図12(A)の比較例2の圧力分布図では、図中左右上に有る色の薄い部分が圧力の弱いところを示している。また、図中下部分と上部分での差は、押圧力が均一ではなく、やや傾いて押圧されていることを示している。この圧力分布を見てもわかるように、基板の外縁付近は圧力が弱いことがわかる。これによって、接着層R1の外縁部の盛り上がりが押し潰されずに凹みが残り、基板の周辺にボイドが発生したと考えられる。
【0074】
また、弾性シート24が接着層R1より大きい場合、上述したように、基板の外縁部分が弾性シート24によって余分に押し上げられることになる。そのため、接着層R1の伸展が阻害され、外縁付近にボイドが発生したと考えられる。
図12(B)の比較例3の圧力分布図を見てわかるように、図中の上下右に色が相違する部分があり、基板のこれらに相当する部分の圧力分布が不均衡であることが分かる。図中の下方外縁部はやや強く圧力が生じているが、その
上側や中央付近にある白い部分は圧力が弱い。図中右および上部分のやや白く見える部分も圧力が弱い。貼り合せ試験では、圧力分布に見られたほぼ外縁全体にわたる低圧力部分において、ボイドの発生が確認された。
【0075】
一方、接着層R1と同じ形状及び大きさの弾性シート24を用いた実施例1は、ボイドの発生が無い。
図11(A)の圧力分布図からわかるように、実施例1においては、概ね基準圧力の94%以上で圧力分布が均一になっている。したがって、弾性シート24を基板の接着層R1が形成された部分が均一に押圧され、ボイドが効果的に低減されていることがわかる。
【0076】
<弾性シートの材料について>
弾性シート24の材料として発泡シリコンを使用した実施例1及び実施例2は、ボイドの発生が無かった。発泡シリコンは独立孔が形成されているため、内包される空気によって高い弾力性を有し、接着層R1を均一に押圧できたからと考えられる。
【0077】
一方、比較例4で使用する発泡ウレタンは空孔を有するものではあるが、全面的にボイドが発生してしまっている。これは、発泡ウレタンが連続孔を有するものであり、内包する空気が逃げやすく、接着層R1を押圧する力が弱いためと考えられる。
【0078】
実施例3及び実施例4は、空孔の無いシリコンゲル及びニトリルゴムを使用している。実施例3及び実施例4とも、一部にはボイドが発生しているが、全面的なボイドの発生は防止できている。シリコンゲル及びニトリルゴムとも、空孔は形成されていないが弾性を有する材料であるため、ボイドをある程度低減できると考えられる。ただし、シリコンゲルにおけるボイドの発生には別の要因も考えられる。シリコンゲルは非常に柔らかい素材であるため、貼り合せの際シリコンゲルが伸展して下側プレートから基板側にはみ出し、押圧解放後も基板に貼りついてしまった。貼りついたシリコンゲルを剥がす際に接着層R1の一部も引きはがしてしまったため、基板の一辺に接着層R1によって接着されない部分が生じてしまった。結果としてボイドが発生することになったと考えられる。
【0079】
ニトリルゴムを用いた実施例4については、
図11(B)に圧力分布を示しているが、図中、中央部、上及び右側の縁部に圧力の低い部分が確認できる。図の中心は濃く見えるが、これはカラーチャートの下方の、圧力基準値の10%程度の圧力を示すものであり、圧力がかなり低いことが確認できる。上及び右側の縁部の薄く見える部分は、圧力基準値の50〜70%の圧力を示している。中央部の圧力の低い部分を取り囲んでいる部分は、圧力基準値のほぼ100%の圧力を示している。すなわち、実施例4では、ボイドを低減する効果はあるが、圧力差が大きいことがわかる。
【0080】
<弾性シートの硬度について>
上述したように、実施例3では接着層R1が一部引きはがされるという現象が確認されたが、その一因はシリコンゲルがアスカーC硬度計では測定不可能なほど柔らかい素材であったためと考えられる。この結果から、弾性シート24は少なくともアスカーC硬度計で測定可能な程度の硬度を有することが望ましい。さらに、実施例1,2及び4の硬度15,35,85の弾性シート24がいずれもボイドを低減する効果が確認できることから、硬度は15以上85以下であることが望ましい。
【0081】
[試験2]
弾性シート24の硬度は、弾性シート24の経時変化にも影響すると考えられる。そのため、硬度35の発泡シリコンを用いた実施例1と、硬度15の発泡シリコンを用いた実施例2と、硬度85のニトリルゴムを用いた実施例4に対して耐久試験を行った。
【0082】
耐久試験として、以下の条件で貼り合せ試験を600回行い、1回目の貼り合せと600回目の貼り合せにおける、各実施例のボイドの発生の有無を確認した。
・貼り合せ時押圧力…3.0kg/cm
2
・基板…ガラス製、152.4×91.4(mm)の長方形、厚さ0.7mm
・貼合せ時雰囲気圧力…30Pa
・接着材…厚さ150μmの粘着フィルム
・接着層…152.4×91.4(mm)(基板と同形状及び同じ大きさになるように粘着フィルムを裁断)
・弾性シート…厚さ3mm
耐久試験は試験1の貼り合せ試験とほぼ同条件であるが、接着材として紫外線硬化樹脂の代わりに粘着フィルムを用いている。そのため、仮硬化も行わなかった。
【0083】
更に、実施例1、実施例2及び実施例4について試験1と同じ条件で600回の圧力分布測定試験も行った。
【0084】
各試験の結果について、以下の表2に示す。
【表2】
【0085】
図13(A)は実施例1の1回目の圧力分布測定試験における圧力分布図であり、
図13(B)は実施例1の600回目の
圧力分布測定試験における圧力分布図である。
図14(A)は実施例2の1回目の圧力分布測定試験における圧力分布図であり、
図14(B)は実施例2の600回目の
圧力分布測定試験における圧力分布図である。
図15(A)は実施例4の1回目の圧力分布測定試験における圧力分布図であり、
図15(B)は実施例4の600回目の
圧力分布測定試験における圧力分布図である。
【0086】
硬度35の発泡シリコンを使用した実施例1では、600回の貼り合せを行っても、ボイドの発生は無かった。また、
図13(A)及び
図13(B)からわかるように、1回目においても600回目においても、圧力分布はほぼ均一だった。むしろ、600回目の方がより均一になっている。したがって、硬度35の発泡シリコンにおいては経時変化が少ないことがわかる。
【0087】
硬度15の発泡シリコンを用いた実施例2でも、600回の貼り合せを行っても、ボイドの発生は無かった。ただし、
図14(A)及び
図14(B)を比較するとわかるように、1回目において圧力分布は均一であったが、600回目においては、図中の上部に白い部分が生じており、やや圧力が弱い部分が発生している。すなわち、硬度15の発泡シリコンにおいては経時変化が認められた。
【0088】
硬度85のニトリルゴムを用いた実施例4では、試験1の結果と異なりボイドが確認されなかったが、これは、接着材として、縁部に盛り上がりが形成される接着剤の代わりに面が均一な粘着フィルムを用いたことが原因と考えられる。ただし、圧力分布は
図15(A)に示すように、中央に白い部分があり、基板中央部に圧力の弱い部分が確認できる。また、600回目においては
図15(B)に示すように、中央の白い部分が増えており、中央の圧力の弱い部分が拡大していることがわかる。そのため、粘着フィルムを用いていても、基板中央にボイドの発生が確認された。すなわち、硬度85のニトリルゴムにおいて経時変化が認められた。
【0089】
以上の結果から、弾性シート24を経時変化による影響を受けにくいものにするためには、弾性シートの硬度を硬度15よりも大きくし、85よりも小さくすることが望ましい。硬度が15以下であると、経時変化によって弾性シート24が沈み込みやすくなり、接着層を十分に押圧できなくなり、ボイドの発生が増加する可能性があると考えられる。また、硬度が85以上であると、経時変化によってより弾性シートが硬くなり、やはり接着層を十分に押圧できなくなり、ボイドの発生が増加する可能性があると考えられる。弾性シート24の硬度を35とすると、より望ましい結果が得られる。もちろん、これは経時変化の影響という観点からの望ましさであって、硬度15や硬度85であっても、定期的に弾性シート24を交換することによって、ボイドを適切に低減することができる。
【0090】
[効果]
(1)本実施形態の基板貼合装置20は、液晶パネルS1と保護パネルS2を、液晶パネルS1の表面に形成された接着層R1を介して貼り合わせるものであり、液晶パネルS1を支持する支持部としての下側プレート22と、保護パネルS2を液晶パネルS1に対向する位置において保持する保持部としての上側プレート23と、上側プレート23を駆動することにより接着層R1を介して液晶パネルS1と保護パネルS2を貼り合せる昇降機構25と、下側プレート22の表面上に設けられ、接着層R1と略同じ形状と大きさを有し、液晶パネルS1の接着層R1が形成された部分のみを押圧する弾性シート24と、を備える。具体的には、弾性シート24の液晶パネルS1と接する面が、接着層R1の液晶パネルS1に付着する面と、相似形状で略同じ大きさを持つ。
【0091】
液晶パネルS1と保護パネルS2を弾性シート24を介して貼り合せることにより、パネル表面に不均一な部分やうねりがあったり、上側プレート23及び下側プレート22の平行度や平面度に多少の誤差があっても、接着層R1に押圧力を均一に伝達することができる。また、弾性シート24を接着層R1と相似形状で略同じ大きさとすることによって、液晶パネルS1の接着層R1が形成された部分のみを押圧することができる。そのため、接着層R1が形成されていない部分には余分な力が掛からず、接着層R1は十分に伸展して液晶パネルS1と保護パネルS2に密着し、ボイドの発生を低減することができる。これによって、不良の少ない積層パネルS10を製造することが可能である。
【0092】
(2)弾性シート24は、独立孔を有する発泡樹脂から構成しても良い。弾性シートが、気体を内包しさらにその気体が抜けにくい独立孔を有することで、高い弾力性を長時間維持することができる。これによって、ボイドの発生をより低減することができる。
【0093】
(3)本実施形態の表示パネル製造装置100は、上述の基板貼合装置20を貼り合せ部2として備える。さらに、液晶パネルS1の表面に接着剤Rを塗布して接着層R1を形成する接着剤塗布装置10を塗布部1として備え、貼り合せ部2において貼り合わされた積層パネルS10の接着層R1を硬化させる硬化装置30を硬化部3として備え、液晶パネルS1及び保護パネルS2を、塗布部1、貼り合せ部2及び硬化部3の間で搬送する搬送部4とを備える。
【0094】
上記(1)で述べたように、基板貼合装置20においてボイドの発生を低減することができるため、本実施形態の表示パネル製造装置100は、品質の良好な液晶表示パネルLを製造可能であり、かつ製造効率も向上することができる。
【0095】
[その他の実施形態]
(1)上述の実施形態では、基板貼合装置20の上側プレート23が液晶パネルS1を支持し、下側プレート22が保護パネルS2を保持していたが、これに限られない。下側プレート22が保護パネルS2を支持し、上側プレート23が液晶パネルS1を保持しても良い。
【0096】
(2)上述の実施形態では、液晶パネルS1の表面に接着剤Rを塗布したが、代わりに保護パネルS2の表面に塗布しても良い。あるいは、液晶パネルS1及び保護パネルS2の両方の表面に塗布しても良い。
【0097】
(3)上述の実施形態では、下側プレート22に弾性シート24を取り付けたが、代わりに上側プレート23に弾性シート24を取り付けても良い。あるいは、下側プレート22と上側プレート23の両方に弾性シート24を取り付けても良い。
【0098】
(4)上述の実施形態では、上側プレート23に昇降機構を設けたが、代わりに下側プレート22に昇降機構を設けても良い。あるいは、下側プレート22と上側プレート23の両方に昇降機構を設けても良い。
【0099】
(5)上述の実施形態では、貼り合せを行う基板として、液晶パネルS1と保護パネルS2を例に説明したが、これに限られず、各種の基板を用いることができる。例えば、有機ELパネルや操作用のタッチパネルを用いることができる。また、貼り合せる基板も一対に限られない。液晶パネルや保護パネルの他にタッチパネルを貼り合せたり、あるいは保護パネルを上下に貼り合せる等して、3枚以上の基板や二対以上の基板を貼り合せても良い。
【0100】
(6)上述の実施形態では、表示パネル製造装置の塗布部1と貼り合せ部2は、別体の接着剤塗布装置10と基板貼合装置20として構成したが、同一の装置として構成しても良い。例えば、上側プレート23と下側プレート22が対向配置されたチャンバ21内に、塗布ユニット12とUV照射ユニット13を移動可能に設け、下側プレート22を塗布部1のステージ11として用いる。すなわち、下側プレート22に載置した液晶パネルS1に接着剤Rを塗布して仮硬化した後に、塗布ユニット12とUV照射ユニット13を下側プレート22上から退避させ、貼り合せを行っても良い。
【0101】
(7)上述の実施形態では、弾性シート24が、基板表面に形成される接着層R1と相似形状で略同じ大きさになるように、基板の形状と大きさに応じて弾性シート24を交換するようにしていたが、代わりに、塗布ユニット12において接着層Rの塗布領域を調整し、接着層R1を弾性シート24と相似形状で略同じ大きさになるようにしても良い。これによって、弾性シート24は固定の形状と大きさのものを用いることができる。
【0102】
(8)上述の実施形態では、接着剤塗布装置10の仮硬化部として、UV照射ユニット13を用いたが、これに限られない。例えば、電磁波照射ユニット、放射線照射ユニット、あるいは赤外線照射ユニットやヒーターを用いることができる。使用する接着剤についても、仮硬化の態様に合わせて、電磁波により硬化する樹脂、放射線により硬化する樹脂、あるいは熱硬化型樹脂を用いることができる。
【0103】
(9)上述の実施形態では、ディスペンサ14としてスリットコータを用いた場合の盛り上がりを押し潰す必要性を説明したが、マルチノズルを用いた場合にも本発明は適用可能である。すなわち、基板にマルチノズルで複数列に塗布した後に、接着剤を展延すると、形成された接着層R1の表面にはマルチノズル吐出の痕跡により凸凹が形成される。したがって、弾性シート24によってこの接着層R1を均一に押圧することによって、凹凸を押し潰すことができる。つまり、塗布の手段や基板のうねりやたわみの状態にかかわらず、ボイドのない貼り合わせを行なうことが出来るので、製品の品質を良好に安定させるとともにその製造コストも低減することが出来る。
【0104】
(10)上述の実施形態では、塗布部1において、接着剤Rの塗布後に仮硬化を行ったが、例えば接着剤Rの粘度が高く、塗布形状が崩れにくいような場合には、仮硬化を行わなくても良い。また、貼り合せ部2において、基板貼合装置20のチャンバ21内部を減圧して真空下で貼り合せを行ったが、大気下で貼り合せを行っても良い。これらの場合は、仮硬化や密閉し減圧する空間を形成するために必要な手段を設けなくて済むので、より低コストに装置を構成でき、低コストで表示パネルを製造できる。