特許第6209163号(P6209163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アラーガン、インコーポレイテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209163
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ドライアイ治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/08 20060101AFI20170925BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/231 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/717 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/78 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 36/47 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 31/205 20060101ALI20170925BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61K9/08
   A61P27/02
   A61K31/231
   A61K31/717
   A61K31/047
   A61K31/69
   A61K31/78
   A61K36/47
   A61K31/205
   A61K47/02
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-534753(P2014-534753)
(86)(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公表番号】特表2014-528452(P2014-528452A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】US2012058893
(87)【国際公開番号】WO2013052760
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】61/544,151
(32)【優先日】2011年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100170944
【弁理士】
【氏名又は名称】岩澤 朋之
(72)【発明者】
【氏名】ビージ ジョセフ ジー
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ ピーター エイ
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−501228(JP,A)
【文献】 特表2008−520671(JP,A)
【文献】 特表平10−500414(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/047927(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0106104(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0015690(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/141648(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 27/00
A61K 31/00
A61K 36/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、ホウ酸、アクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、ひまし油、エリスリトール、レボカルニチン、水酸化ナトリウムおよび水を含む点眼用組成物(ただし、前記点眼用組成物は、ひまし油以外の油を含まず、またシクロスポリンAを含まない)。
【請求項2】
前記モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンが、約0.1%w/w〜約2%w/wの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カルボキシメチルセルロースナトリウムが、約0.1%w/w〜約2%w/wの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記グリセリンが、約0.2%w/w〜約5%w/wの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ホウ酸が、約0.02%w/w〜約2%w/wの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマーが、約0.02%w/w〜約0.5%w/wの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ひまし油が、約0.05%w/w〜約0.5%w/wの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記エリスリトールが、約0.05%w/wまたは約3%w/wの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記レボカルニチンが、約0.05%w/wまたは約3%w/wの濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
pHが約7.3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
約0.5%w/wのモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウム、約1.0%w/wのグリセリン、約0.6%w/wのホウ酸、約0.1%w/wのアクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、約0.25%w/wのひまし油、約0.25%w/wのエリスリトール、約0.25%w/wのレボカルニチン、水酸化ナトリウム、pHが約7.3および水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ドライアイ症候群を治療、診断、治癒、緩和、または予防するための、請求項1に記載の成物。
【請求項13】
前記点眼用組成物が、約0.5%w/wのモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウム、約1.0%w/wのグリセリン、約0.6%w/wのホウ酸、約0.1%w/wのアクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、約0.25%w/wのひまし油、約0.25%w/wのエリスリトール、約0.25%w/wのレボカルニチン、水酸化ナトリウム、pHが約7.3および水を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
安定化オキシクロロ錯体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記安定化オキシクロロ錯体が、約0.002%w/w〜約0.05%w/wの濃度で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
約0.01%w/wの安定化オキシクロロ錯体をさらに含む、請求項11に記載の成物。
【請求項17】
ドライアイ症候群を治療、診断、治癒、緩和、または予防するための、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記点眼用組成物が、約0.5%w/wのモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウム、約1.0%w/wのグリセリン、約0.01%w/wの安定化オキシクロロ錯体、約0.6%w/wのホウ酸、約0.1%w/wのアクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、約0.25%w/wのひまし油、約0.25%w/wのエリスリトール、約0.25%w/wのレボカルニチン、pHを約7.3にするための水酸化ナトリウム、および水を含む、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2011年10月6日出願の米国仮特許出願第61/544,151号の利益を主張するものであり、この開示全体は、本明細書中にこの具体的な参照により援用される。
【0002】
本発明は、ヒトまたは他の動物においてドライアイを治療する、あるいはドライアイ症候群を診断、治癒、緩和、治療、もしくは予防するために有益な点眼用組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ドライアイとは、不快感、視覚障害、眼の表面への潜在的な損傷を伴う涙液膜の不安定性をもたらす、涙および眼の表面の多因子性疾患である。正常な涙液膜は、相対的に安定な薄い膜であり、角膜および結膜表面の上皮に部分的に付着する粘液ゲル層と組み合わされた表面の油層および水層から構成される。正常な涙液膜は、眼の屈折面の潤滑および維持に重要である。ドライアイ症候群は、涙液膜の安定性の損失、涙液膜の浸透圧の釣り合いの高浸透圧へのシフト、および/または眼の表面上への不適切な量の液体を引き起こす、涙液膜の1つ以上から構成される機能不全により特徴づけられる複合疾患である。このことは、涙液膜の急速な崩壊、ならびに炎症/刺痛、異物感、痒み、および羞明を含む多くの症状により特徴づけられる。
【0004】
ドライアイ症候群の患者の多くは、人口涙液を処方または推奨される。また、瞼を圧迫し、洗浄すること、および食事に必須脂肪酸を加えることも推奨される。
【0005】
ドライアイ症候群は、涙産生の減少、涙の過度の蒸発、涙層中に見いだされる粘液または脂質の産生の異常の1つに起因する正常な涙液膜の一般的な障害である。
【0006】
水性(水様)涙欠乏症は、水様の涙の産生の欠乏、または水様の涙層の過度の蒸発のいずれかにより引き起こされる。
【0007】
涙腺による涙の産生の欠乏は、加齢、ホルモン変化、または、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、もしくはループスなどの多様な自己免疫疾患の結果であり得る。
【0008】
水様の涙層の蒸発性の損失は、通常、それを覆う油層が不十分である結果によるものである。抗ヒスタミン剤、抗うつ剤、β阻害薬、および経口避妊薬などのいくつかの薬物療法は、涙の産生を低下させ得る。まばたきが減少する、または眼瞼を閉じることができない場合、涙の蒸発により眼が乾燥し得る。
【0009】
読書、TV鑑賞、または眼を使用した細かな注意を必要とする作業は、まばたきを減少させ、涙を過度に蒸発させる。
【0010】
レーシックおよび他の視力矯正手法により、眼の表面にレーザが進入した後にドライアイが引き起こされ、角膜神経知覚が低減する可能性がある。その後、この眼は、潤滑の必要性を感知できなくなり、涙産生が不十分となる。
【0011】
眼を治療する新規の点眼用組成物およびドライアイを治療する方法が発見されている。
【発明の概要】
【0012】
ドライアイ症候群を治療する新規点眼用組成物であって、粘滑薬、または膜形成剤および等張化剤の組み合わせを含み得る点眼用組成物が新たに発見された。これらの組成物を、ヒトまたは他の動物においてドライアイを治療するか、あるいはドライアイ症候群を診断、治癒、緩和、治療、もしくは予防するために使用してもよい。これらの製剤は滅菌性であり、緩衝されている、眼の表面の刺激および眼の乾燥の症状を解消するために製剤化された、油および水のエマルジョンの人口涙となる生成物である。
【0013】
これらの組成物は、概して眼に許容可能な液体である。眼に許容可能な液体は、局所的な眼への使用に患者が耐えられる、製剤化された液体を含む。さらに、眼に許容可能な液体を、単一での使用のため、または混入を予防するための保存剤を含む複数回使用のため密封することができる。
【0014】
眼に適用するため、溶液または薬物を、主要なビヒクルとして生理食塩水を使用して調整してもよい。眼用の溶液を、適切な緩衝系を用いて快適なpHに維持してもよい。また、この製剤は、従来の薬学的に許容可能な保存剤、安定剤、および界面活性剤を含んでもよい。
【0015】
眼に許容可能な液体は、粘滑薬または膜形成剤を含んでもよい。粘滑薬の例は、限定するものではないが、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロクサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アクリレートなどの高分子化合物、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタンなどの界面活性剤、およびグリセリンを含んでもよい。この粘滑薬の量は変わってもよい。一部の実施形態において、上記に列挙したもののようないずれかの粘滑薬の量は、約0.1%w/w〜約2%w/w、または約0.3%w/w〜約0.7%w/w、または約0.3%w/w〜約0.5%w/w、または約0.5%w/wであってもよい。
【0016】
眼に許容可能な液体は、緩衝剤を含んでもよい。この緩衝剤は様々なものを使用することができ、望ましいpHの範囲を維持するために適した、任意の弱く結合した酸−塩基対を含んでもよい。この例は、限定するものではないが、酢酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、またはそれらの組み合わせを含む。酸または塩基を使用して、必要に応じてこれら製剤のpHを調整してもよい。使用する緩衝剤の量は変わってもよい。一部の実施形態においてこの緩衝剤は、約1nM〜約100mMの範囲の濃度を有してもよい。緩衝溶液のpHは、水酸化ナトリウムもしくは他の塩基を添加することにより上昇し、または塩酸もしくは他の酸を添加することにより低下してもよい。一部の実施形態において、本組成物のpHは、約7〜約7.5、約7.2〜約7.4、または約7.3であってもよい。
【0017】
眼に許容可能な液体は、保存剤を含んでもよい。この保存剤は様々なものを使用することができ、同一の容器からの多様な使用を目的とする眼の液体中の微生物の混入を予防するために適した任意の化合物または物質を含んでもよい。本明細書に開示される医薬組成物中に使用され得る保存剤は、限定するものではないが、塩化ベンザルコニウムおよびポリクアド(polyquad)などを含む4級アンモニウム化合物などの陽イオン性保存剤と、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、クロルヘキシジンなどを含むグアニジン系保存剤と、クロロブタノールと、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀などの水銀保存剤と、安定化させたオキシクロロ錯体(たとえばPurite(登録商標))などの酸化保存剤とを含む。Purite(登録商標)は、アラガン社の登録商標である。
【0018】
一部の実施形態において、本液体中の保存剤の量は、約0.0001%w/w〜約25%w/w、または約0.002%w/w〜約0.05%w/w、約0.005%w/w〜約0.02%w/w、または約0.01%w/wであってもよい。
【0019】
眼に許容可能な液体は、界面活性剤を含む。この界面活性剤は様々なものを使用することができ、界面活性であるか、またはミセルを形成可能な任意の化合物を含んでもよい。界面活性剤を、賦形剤または活性成分中に溶解させること、組成物中に固体または液体を分散させること、湿潤性を高めること、液滴の寸法を修正すること、エマルジョンを安定化させること、または多くの他の目的を補助するために使用してもよい。有益な界面活性剤は、限定するものではないが、以下の種類の界面活性剤を含む:アルコール、酸化アミン、ブロックポリマー、カルボキシル化アルコールもしくはアルキルフェノールエトキシレート、カルボン酸/脂肪酸、エトキシル化アルコール、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化アリールフェノール、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪酸エステルもしくは油(動物油および植物油)、脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、グリセロールエステル、グリコールエステル、ラノリン系誘導体、レシチンおよびレシチン誘導体、リグニンおよびリグニン誘導体、メチルエステル、モノグリセリドおよび誘導体、ポリエチレングリコール、高分子界面活性剤、プロポキシル化およびエトキシル化脂肪酸、アルコール、もしくはアルキルフェノール、タンパク質系界面活性剤、サルコシン誘導体、ソルビタン誘導体、スクロースエステルおよびグルコースエステルならびに誘導体。一部の実施形態において、本界面活性剤は、ポリエチレングリコール(15)ヒドロキシステアレート(CAS番号 70142−34−6、BASFからSolutol HS 15(登録商標)として入手可能)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(CAS番号9003−11−6、BASFからPluronic(登録商標)F−68として入手可能)、ポリオキシエチレン40スレアレート(POE40ステアレート)、ポリソルベート80またはモノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン(CAS番号9005−65−6)、ソルビタンモノステアレート(CAS番号1338−41−6、Croda International PLCからSpan(商標)60として入手可能)、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレアート35(CAS番号61791−12−6、BASFからCremophor EL(登録商標)として入手可能)を含んでもよい。この界面活性剤の量は変わってもよい。一部の実施形態において、上述に列挙したもののようないずれかの界面活性剤の量は、約0.001%w/w〜約5%w/w、または約0.1%w/w〜約2%w/w、または約0.3%w/w〜約0.7%w/w、または約0.3%w/w〜約0.5%w/w、または約0.1%w/w〜約1%w/w、または約0.5%w/wであってもよい。
【0020】
眼に許容可能な液体は、安定剤を含んでもよい。適切な安定剤の例は、限定するものではないが、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロクサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびアクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマーなどのアクリレート(たとえば、Pemulen(商標)RTM、Pemulen(商標)TR−2)を含む。アクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマーは販売されており、Pemulen(商標)TR−2として知られている。一部の実施形態において、安定剤の量は、約0.01〜約1%w/w、または約0.1〜約1%w/w、または約0.1%w/wであってもよい。
【0021】
眼に許容可能な液体は、等張化剤を含んでもよい。この等張化剤は様々なものを使用することができ、点眼用の液体の等張を調整するために有益である任意の化合物または物質を含んでもよい。この例は、限定するものではないが、塩、特に塩化ナトリウム、塩化カルシウム、マンニトールおよびグリセリン、または他のいずれかの眼に許容可能な等張調節剤を含む。この等張化剤の量は、望ましい液体が、等張、高張、または低張であるかどうかに応じて変わってもよい。一部の実施形態において、上記に列挙したもののようないずれかの等張化剤の量は、少なくとも約0.0001%w/w〜約5%w/w、または約0.2%w/w〜約5%w/w、または約0.5%w/w〜約2%w/w、または約1.0%w/wであってもよい。
【0022】
眼に許容可能な液体は、抗酸化剤を含んでもよい。この抗酸化剤は様々なものを使用することができ、眼に許容可能な液体中に存在するいずれかの化合物の酸化を低減させるのに有益な任意の化合物または物質を含んでもよい。この例は、限定するものではないが、メタ二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチルヒドロキシアニソール、およびブチルヒドロキシトルエンである。
【0023】
眼に許容可能な液体は、キレート剤を含んでもよい。このキレート剤は様々なものを使用することができ、金属をキレート可能な任意の化合物または物質を含んでもよい。有益なキレート剤は、エデト酸二ナトリウムであるが、他のキレート剤を代わりに使用してもよく、またはエデト酸二ナトリウムと組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本組成物は、水性溶液またはエマルジョン、または他のいくつかの許容可能な液体の形態である。エマルジョンでは、1つ以上の油を使用してエマルジョンを形成してもよい。適切な油は、限定するものではないが、アニス油、ひまし油、チョウジ油、カッシア油、ケイヒ油、アーモンド油、コーン油、落花生油、綿実油、サフラワー油、トウモロコシ油、亜麻仁油、菜種油、大豆油、オリーブ油、カラウエイ油、ローズマリー油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ヒマワリ油、ユーカリ油、ゴマ油などを含む。一部の実施形態において、上記に列挙したもののような油の量は、約0.0001%w/w〜約5%w/w、または約0.005%w/w〜約1%w/w、または約0.01%w/w〜約0.2%w/w、または約0.05%w/w〜約0.5%w/w、または約0.2%w/w〜約5%w/w、または約0.5%w/w〜約2%w/w、または約0.1%w/w〜約0.2%w/w、または約0.175%w/w、または約0.075%w/wであってもよい。
【0025】
他の賦形剤は、エリスリトール、L−カルニチン(レボカルニチン)またはR−カルニチンを含むカルニチンを含んでもよい。一部の実施形態において、エリスリトールの量は、約0.05〜約3%w/w、または約0.1〜約0.5%w/w、または約0.25%w/wであってもよい。
【0026】
一部の実施形態において、レボカルニチンの量は、約0.05%w/w〜約3%w/w、または約0.1%w/w〜約0.5%w/w、または約0.25%w/wであってもよい。
【0027】
表1は、ドライアイ組成物中に使用され得る成分の一覧を含む。
【表1】
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一部の実施形態は、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(低粘度)、グリセリン、Purite(登録商標)、ホウ酸、アクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、(Pemulen(商標)TR−2)、ひまし油、オリーブ油、エリスリトール、レボカルニチン、水酸化ナトリウムおよび水を含むか、またはこれらからなる。
【0029】
本発明の一部の実施形態は、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(低粘度)、グリセリン、Purite(登録商標)、ホウ酸、アクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、(Pemulen(商標)TR−2)、ひまし油、エリスリトール、レボカルニチン、水酸化ナトリウムおよび水を含むか、またはこれらからなる。
【0030】
本発明の一部の実施形態は、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(低粘度)、グリセリン、ホウ酸、アクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、(Pemulen(商標)TR−2)、ひまし油、エリスリトール、レボカルニチン、水酸化ナトリウムおよび水を含むか、またはこれらからなる。
【0031】
本発明の一部の実施形態は、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、ホウ酸、アクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、ひまし油、エリスリトール、レボカルニチン、水酸化ナトリウムおよび水を含むか、またはこれらからなる。
【0032】
本発明の一部の実施形態は、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、ホウ酸、アクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、安定化オキシクロロ錯体、ひまし油、エリスリトール、レボカルニチン、水酸化ナトリウムおよび水を含むか、またはこれらからなる。
【0033】
実施例1
表2に従って、人口涙生成物として使用するための製剤を調製する。
【表2】
ドライアイ症候群を軽減するために、1日あたり1〜10回、ドライアイ症候群の患者に表2の製剤を投与する。
【0034】
実施例2
表3にしたがって、人口涙生成物として使用するための製剤を調製する。
【表3】
ドライアイ症候群を軽減するために、1日あたり1〜10回、ドライアイ症候群の患者に表3の製剤を投与する。
【0035】
本発明の一部の実施形態は、以下を含む。
【0036】
1.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、ホウ酸、アクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、ひまし油、エリスリトール、レボカルニチン、水酸化ナトリウムおよび水を含む点眼用組成物。
【0037】
2.このモノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタンが、約0.1%w/w〜約2%w/wの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
【0038】
3.このカルボキシメチルセルロースナトリウムが、約0.1%w/w〜約2%w/wの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
【0039】
4.このグリセリンが、約0.2%w/w〜約5%w/wの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
【0040】
5.このホウ酸が、約0.02%w/w〜約2%w/wの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
【0041】
6.このアクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマーが、約0.02%w/w〜約0.5%w/wの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
【0042】
7.このひまし油が、約0.05%w/w〜約0.5%w/wの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
【0043】
8.このエリスリトールが、約0.05%w/wまたは約3%w/wの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
【0044】
9.このレボカルニチンが、約0.05%w/w〜約3%w/wの濃度で存在する、項目1に記載の組成物。
【0045】
10.pHが、約7.3である、項目1に記載の組成物。
【0046】
11.約0.5%w/wのモノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン、約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウム、約1.0%w/wのグリセリン、約0.6%w/wのホウ酸、約0.1%w/wのアクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、約0.25%w/wのひまし油、約0.25%w/wのエリスリトール、約0.25%w/wのレボカルニチン、水酸化ナトリウム、pHが約7.3および水を含む、項目1に記載の組成物。
【0047】
12.ドライアイ症候群を治療、診断、治癒、緩和、または予防する方法であって、項目1に記載の点眼用組成物の有効量を、それを必要とするヒトまたは他の動物の眼に投与することを含む、方法。
【0048】
13.この点眼用組成物が、約0.5%w/wのモノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン、約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウム、約1.0%w/wのグリセリン、約0.6%w/wのホウ酸、約0.1%w/wのアクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、約0.25%w/wのひまし油、約0.25%w/wのエリスリトール、約0.25%w/wのレボカルニチン、水酸化ナトリウム、pHが約7.3および水を含む、項目12に記載の方法。
【0049】
14.安定化オキシクロロ錯体をさらに含む、項目1に記載の組成物。
【0050】
15.この安定化オキシクロロ錯体が、約0.002%w/w〜約0.05%w/wの濃度で存在する、項目14に記載の組成物。
【0051】
16.約0.01%w/wの安定化オキシクロロ錯体をさらに含む、項目11に記載の点眼用組成物。
【0052】
17.ドライアイ症候群を治療、診断、治癒、緩和、または予防する方法であって、項目14に記載の点眼用組成物の有効量を、それを必要とするヒトまたは他の動物の眼に投与することを含む、方法。
【0053】
18.この点眼用組成物が、約0.5%w/wのモノオレイン酸ポリオキシエチレン(80)ソルビタン、約0.5%w/wのカルボキシメチルセルロースナトリウム、約1.0%w/wのグリセリン、約0.01%w/wの安定化オキシクロロ錯体、約0.6%w/wのホウ酸、約0.1%w/wのアクリレート/C10−30アルキルアクリレート架橋ポリマー、約0.25%w/wのひまし油、約0.25%w/wのエリスリトール、約0.25%w/wのレボカルニチン、pHを約7.3にするための水酸化ナトリウム、および水を含む、項目17に記載の方法。
【0054】
特段の断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲に使用される分子量、反応条件などの特性となる成分量を表す全ての数は、用語「約」により、全ての場合に修飾されると理解されるものである。したがって相反する記載のない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に明記される数字のパラメータは、得ようとする望ましい特性に応じて変動し得るように近似値である。少なくとも、特許請求の範囲の領域の均等物の原理の適用を限定するように試みるものではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効桁数を考慮し、従来の丸め技術を適用することによるものであると解釈されるべきである。
【0055】
用語「a」、「an」、「the」、および本発明を記載する文脈で(特に、以下の特許請求項の文脈中で)使用される同様の意味の用語は、本明細書に特に指示がなく、または文脈により明確に矛盾がない限り、単一および複数の両方を含むと解釈される。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特段の断りのない限り、または文脈により明確に矛盾がない限り、いずれかの適切な順序で実施することができる。本明細書に提供される実施例または例示的な言語(たとえば「など」)のあらゆる使用は、本発明の単なる良好な例示にすぎず、いずれの特許請求の範囲を限定するものでは全くない。本明細書中のどの言語も、特許請求の範囲に記載されていない要素を本発明の実施に必要であると示すと解釈されるべきではない。
【0056】
本明細書に開示される代替的な要素または実施形態の群分けは、限定として解釈されるものではない。各郡の構成物は、個々、または群の中の他の構成もしくは本明細書において見出される他の要素のいずれかとの組み合わせを指し、個々、または群の中の他の構成もしく本明細書において見出されるは他の要素のいずれかとの組み合わせを請求する。1つの群の中の1つ以上の構成物は、簡潔を期するため、および/または特許性の理由により、群の中に含まれるか、あるいは群から消去され得ることが予測される。このような包有または消去が起こる際、本明細書は、添付した特許請求の範囲に使用される全てのマーカッシュ群の記載を満たすように修正される群を含むとされる。
【0057】
本明細書中である特定の実施形態が記載されており、この実施形態は、本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態を含む。当然、記載される実施形態の変形は、以下の記載を読むことにより当業者には明白になるであろう。したがって、特許請求の範囲は、特許法により認められる特許請求の範囲に列挙される対象の全ての変形および同等物を含む。さらに、上述の要素の、可能性のあるそれら全ての変形でのいずれかの組み合わせが、本明細書中に特に指示のない限り、または文脈中で明白に矛盾のない限り、考慮される。
【0058】
臨床態様
行われた臨床試験は、ドライアイ疾患の兆候および症状を示す対象における、アラガンの既存のOPTIVE(商標)目薬中の、2つの候補物である製剤Aおよび製剤Bの安全性、効力、および許容性を評価することを目的とした。
【0059】
この結果から、製剤Aおよび製剤Bは臨床的に安全であり、ドライアイ疾患の兆候および症状を伴う患者に有効であることが示された。
【0060】
製剤Aは、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、Purite(登録商標)、ホウ酸、Pemulen(商標)TR−2、ひまし油、エリスリトール、レボカルニチン、水酸化ナトリウムおよび注射用精製水を含むマルチドーズ型(MD)製剤であり、15mlのマルチドーズ用のボトル中に供給される。この溶液は、臨床的に安全であり、ドライアイ疾患の兆候および症状を伴う対象に有効である。
【0061】
製剤Bは、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、ホウ酸、Pemulen(商標)TR−2、ひまし油、エリスリトール、レボカルニチン、水酸化ナトリウムおよび注射用精製水を含むユニットドーズ型(UD)製剤であり、0.4mlのユニットドーズ用バイアル中に供給される。この溶液は、臨床的に安全であり、ドライアイ疾患の兆候および症状を伴う対象に有効である。
【0062】
本試験は、OPTIVE(商標)マルチドーズ型潤滑目薬(Lubricant Eye Drops Multidose)(OPTIVE MD)に対する製剤A、ならびにOPTIVE(商標)ユニットドーズ型感応性無保存剤の潤滑目薬(Sensitive Preservative−free Lubricant Eye Drops Unit−dose)(OPTIVE UD)に対する製剤Bの安全性、効力、および許容性を比較するために設計された、多施設型、二重盲検型であり、ランダム化され、実薬対照の、4つの治療群の並行群試験であった。
【0063】
対照溶液OPTIVE(商標)Lubricant Eye Drops Multidose(OPTIVE MD)は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、レボカルニチン、エリスリトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、Purite(登録商標)、精製水、およびpHを7.3に調整するための水酸化ナトリウムを含み、15mlのマルチドーズ型のボトルで供給された。
【0064】
対照溶液OPTIVE(商標)Sensitive Preservative−free Lubricant Eye Drops Unit−dose(OPTIVE UD)は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセリン、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、レボカルニチン、エリスリトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、注射用精製水およびpHを7.3に調整するための水酸化ナトリウムを含み、0.4mlのユニットドーズ用バイアルで供給された。
【0065】
この試験期間は、各対象に対して30日間であり、最大3度スケジュール化された来院(1日目(ベースライン)、7日目、および30日(終了))からなる。1日目で、ドライアイ疾患の兆候および症状を有する好適な対象を、それぞれ、製剤A、OPTIVE MD、製剤B、またはOPTIVE UDを使用する、2:2:1:1の治療配分率で割り当てた。
【0066】
約5%の脱落率を想定して、288名の対象が完全に登録されるように、米国内の13〜14の場所で約300名の対象を登録した。試験への登録のため、各対象はある特定の患者基準と一致しており、除外基準から外れている必要があった。
【0067】
対象に、必要に応じて、ただし30日間少なくとも1日2回、各眼に割り当てられた試験製品を1〜2滴滴下するよう指導した。対象は、いつでも本試験を自発的に中止することができた。さらに、有害事象、経過観察の損失、プロトコル違反、または効力の不足の理由から、研究者により対象を本試験から離脱させることができた。
【0068】
製剤A、OPTIVE MDにランダムに当った対象は、試験製品の2つのマルチドーズ型のボトル(各ボトル中15ml)を含むキットを受け取り、空になるまで1つのボトルを使用し、その後、第2のボトルを使用するよう指導された。
【0069】
製剤BおよびOPTIVE UDにランダムに当った対象は、試験製品の180のユニットドーズ型バイアル(各バイアル中0.4ml)を含むキットを受け取り、両眼への投与あたり1バイアルを使用するように指導された。
【0070】
各対象は、必要に応じて、ただし、全試験期間(ランダム化された1日目から試験が終了する前の30日目まで)中、少なくとも1日2回、各眼に試験製品を1〜2滴、滴下しするよう指導された。
【0071】
対象および全試験現場スタッフに対して、本試験の治療を盲検化した。製品の盲検化を維持するため、製剤BおよびOPTIVE UDの液滴は、同一の0.4mLのユニットドーズ型のバイアル中に提供され、製剤AおよびOPTIVE MDの液滴は、同一の15mLのマルチドーズ型のボトルに提供された。
【0072】
主要な効力の測定
Ocular Surface Disease Index(著作権)(OSDI)アンケートを、インテント・トゥ・トリート(intent−to−treat)(ITT)集団において30日目に行うことにより、主要な効力の測定を行った。このOSDIアンケートは、5段階評価(0=全くなし、1=時々、2=半分ほど、3=たいてい、4=常時、であり、質問の一部は、「N/A」(該当せず)の回答となる可能性がある)での12の質問からなる(Schiffmanら、2000)。対象は、5段階評価を使用して、ドライアイの多様な症状の頻度、関連する視覚機能、および環境的な引き金を評価するために質問された。対象は、試験のため来院する前の1週間の症状の頻度に関する評価を基準とするように依頼された。このことは、眼ごとに評価せず、総合的に評価した。
【0073】
主要な効力の解析を、主要な効果としての治療およびベースラインOSDI層別化を用いて、2つの方法の分散分析(ANOVA)モデルを介して、30日目にOSDIスコアのベースラインからの変化について実施した。最終観察繰越法(LOCF)を使用して、欠損データを帰属させた。両側信頼区間(CI)を使用して非劣性を試験した。製剤BおよびOPTIVE UD間の、30日目でのOSDIスコアのベースラインによる治療の差(製剤B−OPTIVE UD)および95%CIを、ANOVAモデルに基づき計算した。95%CIの上限を、事前特定されたマージンである7.3未満である場合、非劣性を確立した。
【0074】
主要な効力の終点は一致した。30日目に、統計的有意差は、ITT集団中のOSDIスコアのベースラインからの平均変化(95%の信頼区間[−5.42,2.51])において、製剤BおよびOPTIVE UD群間で観察されなかった。OSDIスコアのベースラインからの変化による測定される乾燥の症状の重症度を低減することに関して、製剤BはOPTIVE UDよりも劣ってはいなかった。
【0075】
ITT集団と同様に、30日目のOSDIスコアのベースラインからの平均変化におけるパー・プロトコル(per−protocol)(PP)集団の製剤BおよびOPTIVE UD群の間に統計的有意差は見られなかった。30日目の来院の際の95%の信頼区間は、(−5.72、2.37)であり、上限が、臨床的に相関するマージンの7.3未満であった。
【0076】
4つ全ての治療群において、ITT集団およびPP集団の両方の、7日目および30日目の来院でのOSDIスコアのベースラインからの平均変化に、統計的有意差が見られた(p<0.001)。
【0077】
製剤Bの群は、30日目でのOSDIスコアのベースラインからの平均変化において、製剤Aの群よりも劣ってはいなかった。
【0078】
総合的に、製剤BおよびOPTIVE UD群の間、製剤Bおよび製剤Aの群の間、または製剤AおよびOPTIVE MD群の間に統計的有意差は存在しなかった。
【0079】
効力
この試験の結果から、製剤Bが、軽度〜重篤なドライアイを伴う対象の乾燥の症状の重症度を低下させるうえでOPTIVE UD製剤よりも劣ってはいないことが示される。
【0080】
安全性
製剤Bは、試験の間良好な耐性を有するようであった。試験にわたり、治療に関連する深刻な有害事象は存在しなかった。この安全性プロファイルは、OPTIVE UD、OPTIVE MD、および製剤Aと一致した。このことは、臨床的な使用において、製剤Bの安全性を支持するものであり、製剤Aの安全性を確認するものである。
【0081】
二次的な効力の測定
二次的な効力の測定を、TBUT(涙破壊時間)、角膜染色、結膜染色、およびシルマー試験により行った。
【0082】
TBUIを、角膜染色のために2分間待つ間に、各眼で3度(秒単位で)測定した。この試験のために供給したフルオレセインを、上側眼球結膜上に適用した。このフルオレセインナトリウムを1度滴下してTBUTおよび角膜染色のために使用した。しかしながら、もし必要である場合、フルオレセインを、TBUT後角膜染色のため再び適用することができた。この実験を、コバルトブルーの照明および黄色のバリアフィルターを使用して、10×倍率の細隙灯を用いて実施した。3つの連続したTBUTを各眼で実施し、3つ全ての測定を提供されるストップウォッチで計測した。
【0083】
(麻酔を用いた)シルマー試験を、他の全ての眼の試験の後に各眼で実施した。1滴の麻酔薬を滴下し、試験を、滴下してからきっかり4分後に開始した。この試験は、薄暗い室内で行われた。対象が上方を見ている間、下瞼をやさしく下向きにそして側頭向きに引いた。滅菌した試験紙の丸い湾曲端を、下側の結膜嚢に差し込み、各眼の側頭縁と下眼瞼の中央1/3の縁の接合点上に接触させた。5分後、前部の涙を、滅菌した試験紙上で記録し、測定した。
【0084】
これらの測定のそのままの値を、それぞれスケジュール化された来院でのLOCFを用いた欠損データの帰属を用いて、ITT集団にまとめた。治療間の比較のための治療差異および95%CIを計算した。製剤Bおよび製剤A間、製剤AおよびOPTIVE MD間の、30日目でのOSDIスコアのベースラインからの差異における治療差異および95%CIは、二次的な効力の変数としても解析された。
【0085】
製剤Bの群は、TBUT、角膜染色、結膜染色、およびシルマー試験の二次的効力の測定において、OPTIVE UDおよび製剤Aよりも劣ってはいなかった。
【0086】
効力の結果
現在の試験の目的は、ドライアイ疾患の兆候および症状を伴う対象における製剤Bの安全性、効力、および許容性を評価することである。この試験は、既存のOPTIVE UD製剤と製剤Bとの比較、および製剤Aと製剤Bとを比較するために実施された。主要な効力の終点は、この試験と一致した。
【0087】
30日目のOSDIスコアのベースラインからの平均変化における製剤B群および対照OPTIVE UD群の間に差異は見られなかった。製剤Bは、OSDIアンケートにより測定された乾燥の症状の重症度を低下するうえで、OPTIVE UDおよび製剤Aより劣ってはいなかった。(OSDIの層による)総合的な解析およびサブグループ解析における製剤Bおよび製剤A間に統計的有意差が見られ、製剤Bのグループが好ましかったが、本試験は、この2つの群の間の統計的優位性を試験するために設計されたものではなく、したがって、製剤B対製剤Aの優位性に関する確固たる決定を行うことができない。この試験は、4群試験であったため、製剤AおよびOPTIVE MD製剤の間の効力比較も同様に実施された。総合的に、製剤AおよびOPTIVE MD製剤間の効力に差異は見られなかった。
【0088】
製剤Bは、許容可能な安全プロファイルを有するようであった。
【0089】
効力:この試験の結果により、製剤Bが、軽度〜重篤なドライアイを伴う対象の乾燥の症状の重症度を低下させるうえで、OPTIVE UDよりも劣ってはいないことが示される。
【0090】
異なる試験において、製剤Bは、涙の蒸発を低減させ、それにより涙液膜の安定性、および高浸透圧シフトが起こった場合の涙液膜の浸透圧を保護することを補助することが示された。製剤Bは、ドライアイ症候群を有する対象およびドライアイ症候群を有さない対象の蒸発を低減させた。
【0091】
以下の非限定的な実施例は、本発明のさらなる特定の実施態様を例証する。
【0092】
実施例3
製剤Bの目薬を、ドライアイを訴える白色人種の52歳の男性患者の眼に投与した。2日間各眼に1日2回この目薬を投与した後、患者のドライアイの症状が軽減した。
【0093】
実施例4
製剤Aの目薬を、ドライアイ患者の各眼に1日1〜3回投与した。2日後、患者はドライアイ症候群が軽減したと感じた。
【0094】
本明細書に開示した実施形態は、特許請求の範囲の原則を例示的に示すものであることが理解される。使用され得る他の変形例は、特許請求の範囲内である。したがって、例えば限定されるものではないが、代替的な実施形態が、本明細書の教示により利用されてもよい。したがって、本特許請求の範囲は、図示および記載した実施形態に厳密に限定されない。